説明

リソグラフィー用共重合体の評価方法および製造方法

【課題】リソグラフィー用共重合体の、パターン形成における性能を、パターンを形成せずに評価する方法を提供する。
【解決手段】下記工程(1)〜(3)を含むリソグラフィー用共重合体の評価方法。
(1)リソグラフィー用共重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むリソグラフィー組成物を用いて、基材上に薄膜を形成する工程。
(2)前記薄膜を露光した後、現像する工程。
(3)現像後、現像処理した薄膜の表面状態を評価する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィー用共重合体の評価方法および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶素子等の製造工程においては、近年、リソグラフィーによるパターン形成の微細化が急速に進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。
最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術及びEUVエキシマレーザー(波長:13nm)リソグラフィー技術が研究されている。
また、例えば、照射光の短波長化およびパターンの微細化に好適に対応できるレジスト組成物として、酸の作用により酸脱離性基が脱離してアルカリ可溶性となる共重合体と、光酸発生剤とを含有する、いわゆる化学増幅型レジスト組成物が提唱され、その開発および改良が進められている。
【0003】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用共重合体としては、波長193nmの光に対して透明なアクリル系共重合体が注目されている。
例えば特許文献1には、単量体として、(A)ラクトン環を有する脂環式炭化水素基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、(B)酸の作用により脱離可能な基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、および(C)極性の置換基を有する炭化水素基または酸素原子含有複素環基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステルを用いてなるレジスト用の共重合体が記載されている。
【0004】
ところで、レジスト用の共重合体は、これを含有するレジスト組成物を使用して良好なパターンを形成できるかどうかが重要である。かかるレジスト用共重合体の評価方法としては、実際にレジスト組成物を調製し、該レジスト組成物を用いてパターンを形成して、パターン形成における性能(現像特性等)を測定する方法が一般的である。しかしながら、この方法は、パターンを形成するための操作を必要とするため煩雑であり、パターニングを行うための装置は高解像度が要求されるため、高価である。また、パターンサイズやパターンの形状など、パターニング時の影響も含んでしまうため、共重合体に起因する性能の差を高精度に評価することは難しい。
【0005】
そこで、実際に、レジスト組成物を調製して露光現像を行ってパターンを形成しなくても、リソグラフィー用共重合体の、パターン形成における性能を、簡便な操作で代用的に評価する方法が求められている。
例えば特許文献2には、基板上に共重合体の薄膜を形成し、その弾性率の面内均一性を評価することによって、レジストパターンを形成したときのラインエッジラフネス(LER)、ラインウィドスラフネス(LWR)を評価する方法が記載されている。該特許文献2では、レジスト用樹脂の溶解性は、樹脂中の高分子鎖末端の存在密度(末端密度)に影響されると推定され、また樹脂弾性率も末端密度に影響されると推定されること、およびレジストパターンを形成したときのラインエッジラフネス(LER)、ラインウィドスラフネス(LWR)は樹脂の溶解性の不均一によって発生していると考えられることから、レジスト膜の面内弾性率の均一性によって、LERおよびLWRを間接的に評価できる、と関連づけている。
【0006】
また、非特許文献1には、重合速度の均一性が高い単量体を共重合させて得られた共重合体(Similar)と、互いの重合速度の差が大きい単量体を共重合させて得られた共重合体(Different)を、それぞれ用いて2種のレジスト組成物を調製し、それぞれのレジスト組成物を基板上に塗膜し、必要露光量(Eth)の90%の条件で露光して現像した後の、レジスト膜の表面粗さを測定したところ、共重合体(Similar)の方が表面粗さが小さく、実際にレジスト組成物を用いてパターンを形成したときのラインエッジラフネス(LER)も小さかったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−145955号公報
【特許文献2】特開2008−203226号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Photopolym.Sci.Technol.Vol.16,No.3,2003 467−474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2や非特許文献1に記載されている方法では、必ずしも充分ではない。例えば、特許文献2に記載されている方法では、面内弾性率の均一性を評価しているため、ナノレベルという最先端のパターンサイズまでは精度が得られない。また非特許文献1には、単量体の組成を操作して、モデル的に構成単位の配列のランダム性を変えた共重合体における差異を見出したことが記載されているにすぎず、実際にレジスト性能を満たすように単量体組成が設定された共重合体どうしの微小な差異についての知見はない。
本発明は、従来の方法とは異なる方法で、リソグラフィー用共重合体の、パターン形成における性能を、実際にパターンを形成しなくても評価できる評価方法、および該評価方法を用いたリソグラフィー用共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明のリソグラフィー用共重合体の評価方法は、リソグラフィー用共重合体の、パターン形成における性能を、パターンを形成せずに評価する方法であって、下記工程(1)〜(3)を含む評価方法である。
(1)リソグラフィー用共重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むリソグラフィー組成物を用いて、基材上に薄膜を形成する工程。
(2)前記薄膜を露光した後、現像する工程。
(3)現像後、現像処理した薄膜の表面状態を評価する工程。
【0011】
前記工程(3)において、走査型プローブ顕微鏡を用いて、現像処理した薄膜の表面状態を評価することが好ましい。
【0012】
前記工程(2)においてポジ型現像を行うことができる。
前記工程(2)においてポジ型現像を行う場合、前記工程(3)において、現像処理した薄膜の露光された領域における不溶解成分の残存状態を測定することが好ましい。
前記工程(2)においてポジ型現像を行う場合、前記工程(2)において、希釈した現像液を用いて現像を行うことが好ましい。
前記工程(2)においてポジ型現像を行う場合、前記工程(2)において、25℃におけるpHが12.5以下である現像液を用いて現像を行うことが好ましい。
【0013】
前記工程(2)においてネが型現像を行うことができる。
前記工程(2)においてネが型現像を行う場合、前記工程(3)において、現像処理した薄膜の露光された領域における薄膜表面の溶解状態を測定することが好ましい。
前記工程(2)においてネが型現像を行う場合、前記工程(2)において、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行うことが好ましい。
前記工程(2)においてネが型現像を行い、かつ有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行う場合、前記現像液が、2種類以上の有機溶剤を含有することが好ましい。
【0014】
本発明は、リソグラフィー用共重合体の製造方法であって、
2種以上の単量体を重合して共重合体を得る工程と、得られた共重合体を、請求項1〜10のいずれか一項に記載の評価方法により評価する工程とを含む、リソグラフィー用共重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、リソグラフィー用共重合体の、パターン形成における性能を、パターン形成を行うことなく、簡便に評価することができる。
本発明のソグラフィー用共重合体の製造方法によれば、2種以上の単量体を重合して製造した共重合体を、本発明の評価方法により評価する工程を設けることにより、パターン形成における性能が均一なリソグラフィー用共重合体を安定的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】例1のSPMによる測定結果を示す図であり、(a)は立体形状の測定結果、(b)は中央部の断面形状の測定結果である。
【図2】例2のSPMによる測定結果を示す図であり、(a)は立体形状の測定結果、(b)は中央部の断面形状の測定結果である。
【図3】例3のSPMによる測定結果を示す図であり、(a)は立体形状の測定結果、(b)は中央部の断面形状の測定結果である。
【図4】例4のSPMによる測定結果を示す図であり、(a)は立体形状の測定結果、(b)は中央部の断面形状の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
本明細書において、「構成単位」は、共重合体において1個の単量体から誘導される単位を意味する。
本明細書において、単量体の組成比とは、共重合体を構成する全構成単位(100モル%)のうち各単量体に由来する構成単位の含有比率(単位:モル%)を意味する。
【0018】
<リソグラフィー用共重合体>
本発明におけるリソグラフィー用共重合体は、リソグラフィー工程において、露光および現像によるパターン形成に使用される共重合体であれば、特に限定されずに適用することができる。
例えば、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用共重合体、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、またはレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用共重合体、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜用共重合体、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用共重合体が挙げられる。
【0019】
レジスト用共重合体の例としては、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上と、極性基を有する構成単位の1種以上とを含む共重合体が挙げられる。
【0020】
反射防止膜用共重合体の例としては、吸光性基を有する構成単位と、レジスト膜と混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する構成単位とを含む共重合体が挙げられる。
吸光性基とは、レジスト組成物中の感光成分が感度を有する波長領域の光に対して、高い吸収性能を有する基であり、具体例としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造(任意の置換基を有していてもよい。)を有する基が挙げられる。特に、照射光として、KrFレーザ光が用いられる場合には、アントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合には、ベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。
【0021】
上記任意の置換基としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、又はアミド基等が挙げられる。
これらのうち、吸光性基として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有するものが、良好な現像性・高解像性の観点から好ましい。
上記吸光性基を有する構成単位・単量体として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
ギャップフィル膜用共重合体の例としては、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有し、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する構成単位を含む共重合体、具体的にはヒドロキシスチレンと、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体が挙げられる。
液浸リソグラフィーに用いられるトップコート膜用共重合体の例としては、カルボキシル基を有する構成単位を含む共重合体、水酸基が置換したフッ素含有基を有する構成単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0023】
これらのリソグラフィー用共重合体を分子設計通りに共重合反応させることは容易でなく、分子量や単量体の組成比にばらつきが生じる。また分子設計が同じでも、製造方法が違うと、分子量や単量体の組成比におけるばらつきの度合いが異なり、パターン形成時には、かかる製造方法の違いだけでも性能に差が生じ得る。本発明の評価方法によれば、そのような製造方法の違いによる、パターン形成における性能の差も評価することができる。
【0024】
<レジスト用共重合体>
以下、リソグラフィー用共重合体の代表例としてレジスト用共重合体(以下、単に共重合体ということもある。)を挙げて本発明を説明するが、他のリソグラフィー用共重合体も同様に適用できる。
レジスト用共重合体は、レジスト膜の形成に用いられる共重合体であれば、特に限定されずに適用することができる。
【0025】
具体的には、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上と、極性基を有する構成単位の1種以上とを含むレジスト用共重合体が好ましい。該レジスト用共重合体は、酸脱離性基を有する単量体の1種以上と、極性基を有する単量体の1種以上とからなる単量体混合物を重合して得られる。
【0026】
[酸脱離性基を有する構成単位・単量体]
「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が共重合体の主鎖から脱離する基である。
酸脱離性基を有する構成単位を含む共重合体は、レジスト組成物として用いた場合、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターンの形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の含有量は、感度および解像度の点から、共重合体を構成する全構成単位のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基材等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0027】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基、および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
【0028】
酸脱離性基を有する単量体の具体例として、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0029】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
[極性基を有する構成単位・単量体]
「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基などが挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用共重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに後述の親水性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0031】
(ラクトン骨格を有する構成単位・単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
共重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基材等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0032】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基材等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0033】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(親水性基を有する構成単位・単量体)
本明細書における「親水性基」とは、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用共重合体は、親水性基としてヒドロキシ基、シアノ基を有することが好ましい。
共重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0035】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。
【0036】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基材等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<重合開始剤>
重合開始剤を使用する重合では、重合開始剤のラジカル体が反応溶液中に生じ、このラジカル体を起点として単量体の逐次重合が進行する。本発明において用いられる重合開始剤は、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましく、10時間半減期温度が重合温度条以下であるものを用いることが好ましい。例えばリソグラフィー用重合体を製造する場合の好ましい重合温度は50〜150℃であり、重合開始剤としては10時間半減期温度が50〜70℃のものを用いることが好ましい。また重合開始剤が効率的に分解するためには、重合開始剤の10時間半減期温度と重合温度との差が10℃以上であることが好ましい。
重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ化合物、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物;が挙げられる。アゾ化合物がより好ましい。
【0038】
<溶媒>
共重合体の製造方法においては重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(例えばジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン(以下、「THF」と記すこともある。)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記すこともある。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
重合溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、重合反応終了時の反応器内の液(重合反応溶液)の固形分濃度が20〜40質量%程度となる量が好ましい。
【0039】
<リソグラフィー用共重合体の製造方法>
本発明のリソグラフィー用共重合体の製造方法は、2種以上の単量体を重合して共重合体を得る工程と、得られた共重合体を、本発明の評価方法により評価する工程とを含む。評価方法については後述する。
2種以上の単量体を重合して共重合体を得る工程は、公知の方法を適宜用いて行うことができる。
以下、リソグラフィー用共重合体の製造方法の代表例としてレジスト用共重合体の製造方法を挙げて、2種以上の単量体を重合して共重合体を得る工程を説明するが、他のリソグラフィー用共重合体も同様に適用できる。
レジスト用共重合体は、ラジカル重合法によって得ることができる。重合方法は特に限定されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法を適宜用いることができる。
特に、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する工程を容易に行える点、共重合体の分子量を比較的低くしやすい点から、溶液ラジカル重合法が好ましい。そのうちで、製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある共重合体を簡便に得やすい点から、滴下重合法が更に好ましい。
【0040】
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体及び重合開始剤を、各々独立に、又は任意の組み合わせで、重合容器内に滴下する。単量体は、単量体のみで滴下してもよく、又は単量体を溶媒に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。重合容器に予め溶媒を仕込んでもよく、仕込まなくてもよい。重合容器に予め溶媒を仕込まない場合、単量体または重合開始剤は、溶媒がない状態で重合容器中に滴下される。
【0041】
上記重合開始剤は、単量体に直接に溶解させてもよく、単量体溶液に溶解させてもよく、又は溶媒のみに溶解させてもよい。単量体及び重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく、各々独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよい。または、各々独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合して、重合容器中に滴下してもよい。上記単量体及び重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
なお、滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、又は単量体や重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。滴下は、連続的又は間欠的に行ってもよい。
【0042】
上記溶液ラジカル重合による滴下重合法を用いる場合、重合初期に重合開始剤及び/又は単量体の供給速度を上げて高分子量体の生成を抑制する方法を用いることができる。
一般的に、滴下重合法において、単量体と重合開始剤を同一滴下時間、かつ均一速度で滴下する場合、重合初期に高分子量体が生成する傾向がある。そこで、重合初期に重合開始剤の供給速度を上げることにより、重合開始剤の分解を促進させて、ラジカルの生成・失活を定常的に発生させ、該ラジカル中に単量体を滴下することで、重合初期における高分子量体の生成を抑制することができる。具体的には、二種以上の滴下液を調製し、各々の滴下液の供給速度を多段階に変化させる方法や、重合容器内に予め溶剤と重合開始剤の一部量又は全量を仕込み、次いで、各種単量体及び/又は残りの重合開始剤等を含有する滴下液を滴下する方法等が挙げられる。
【0043】
また一般的に、滴下重合法において、反応性の異なる2種以上の単量体と重合開始剤を同一滴下時間、かつ均一速度で滴下する場合、反応性の高い単量体の重合が先に進行し、その結果、特に重合初期に生成する高分子量体の中に、組成が不均一な共重合体が多く含まれる傾向がある。
かかる重合初期における、組成の不均一な高分子量体の生成を抑制する方法として、例えば、重合に用いられる各単量体の反応性比に応じて、反応器内にモノマーを先仕込みして、重合初期から定常状態で重合させることにより、組成の均一なポリマーを製造する方法がある。
【0044】
更に、上記重合初期における高分子量体の生成を抑制する方法と、上記重合初期における、組成の不均一な高分子量体の生成を抑制する方法とを組み合わせると、分子量及び組成が更に均一な共重合体を得ることができるため好ましい。
【0045】
上記製造方法によれば、共重合体における構成単位の組成比や分子量のばらつきが小さくなりやすい。構成単位の組成比や分子量のばらつきが小さいと、溶媒への溶解性が良好であり、かつレジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる。
【0046】
<リソグラフィー組成物の調製>
本発明の評価方法では、リソグラフィー用共重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)とを含むリソグラフィー組成物を用いる。リソグラフィー組成物は、リソグラフィー用共重合体と、光酸発生剤と、溶媒と、必要に応じた成分を混合して調製できる。
【0047】
リソグラフィー組成物を調製する際に用いる溶媒は、公知のリソグラフィー用溶媒から適宜選択して用いることができる。1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましい良溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4―ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0048】
光酸発生剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線による露光により酸を発生する物質である。上記光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
光酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光酸発生剤の配合量は、感度および現像性を確保する観点から、共重合体100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部である。この光酸発生剤の配合量が上記範囲であると、本発明の評価方法に必要な感度および現像性が得られると同時に、放射線に対する十分な透明性が得られる。
【0049】
またリソグラフィー組成物には、必要に応じて、酸拡散抑制剤、界面活性剤、増感剤、ハレーション防止剤、接着助剤、保存安定化剤、消泡剤等、公知の添加剤を適宜配合することができる。
本発明におけるリソグラフィー用共重合体は、好ましくはレジスト用共重合体であり、リソグラフィー組成物は、好ましくはレジスト組成物である。
【0050】
<評価方法>
本発明の評価方法は、下記工程(1)〜(3)を含む。
(1)リソグラフィー用共重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むリソグラフィー組成物を用いて、基材上に薄膜を形成する工程。
(2)前記薄膜を露光した後、現像する工程。
(3)現像後、現像処理した薄膜の表面状態を評価する工程。
本発明の評価方法では、工程(2)においてパターンを形成しない。通常、リソグラフィー工程においては、微細な領域を選択的に露光し、現像してパターンを形成するために、高解像度(例えば解像度が0.3μm以下)の露光方法および露光装置を必要とする。本発明において「パターンを形成しない」とは、かかる高解像度の露光方法および露光装置を必要とするような微細なパターンを形成しないことを意味する。
【0051】
<工程(1)>
基材は特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。基材の材質として、例えば、ガラス、石英、シリコンが挙げられる。
工程(1)では基材上に、評価の対象とするリソグラフィー用共重合体を含むリソグラフィー組成物の溶液を塗布してから、60℃〜160℃の温度で乾燥することで形成することができる。薄膜の膜厚は、共重合体の濃度で制御でき、50nm〜1000nmが好ましく、100nm〜500nmがより好ましい。
薄膜を作成する方法は、特に限定されるものではないが、レジスト膜を作成する際に慣用されている方法、例えばスピンコーティング法などを用いることができる。
【0052】
<工程(2)>
[露光]
基材上に形成した薄膜に対して、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線により露光を行う。
本発明の評価方法では、パターン形成は必要ないことから、評価に必要な領域を露光することができればよく、露光方法は特に限定されない。
工程(2)において露光される領域の大きさ(1つの領域の大きさ)は、最小の幅(該領域が線状の場合)または最小径が1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。この範囲であると、高解像度の露光方法および露光装置を必要とせず、簡易な露光装置でも露光可能であり、また工程(3)における不溶解成分の残存状態の測定などの、表面状態の評価を確実に行うことができる。
上限は特に限定されないが、装置および操作の簡便性の点で、露光される領域の最大の幅または最大径が50mm以下であることが好ましく、30mm以下がより好ましい。
例えば、ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用いて、10mm×10mmの領域全体に対して全面露光を行う方法を好適に用いることができる。
露光後、必要に応じて、ベーク処理を行う。ベーク処理条件は特に限定されないが、例えば、60℃〜160℃の処理温度、および30秒〜180秒の処理時間から、適宜、好適な条件を選択することができる。
【0053】
[現像]
露光後、現像処理を行うことにより、基材上の薄膜の一部を溶解させる。現像方法は、ポジ型、ネガ型のどちらでもよい。ポジ型の場合は、露光された領域の薄膜が溶解する。ネガ型の場合は、露光された領域以外の薄膜が溶解する。現像後は洗浄液で洗浄処理する。
ポジ型現像の場合、現像を終えたときの、露光された領域の薄膜の溶解状態が、ちょうど完全に溶解した状態か、またはわずかに溶け残り(不溶解成分)が生じた状態(以下、「ポジ型の場合の評価に好ましい状態」ということもある。)となるように、露光および現像を行うことが好ましい。
ネガ型現像の場合、現像を終えたときの、露光された領域に存在する薄膜が、完全に不溶化しておらず、わずかに溶解部分が生じた状態(以下、「ネガ型の場合の評価に好ましい状態」ということもある。)となるように、露光および現像を行うことが好ましい。
【0054】
現像方法は特に限定されないが、例えば、現像液が満たされた槽中に基材を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基材表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基材表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基材上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
【0055】
[現像時間]
工程(2)における現像時間をTとすると、現像時間Tは2〜90秒程度が好ましく、5〜60秒がより好ましい。2秒以上であると評価結果にばらつきが生じにくい。90秒以下であると現像時間が長すぎず、評価を効率良く行うことができる。
【0056】
[現像液]
ポジ型現像を行う場合は、アルカリ現像液を使用することが好ましい。アルカリ現像液としてはアルカリ性水溶液が好適に用いられる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類;等の水溶液を使用することができる。
ポジ型現像の後に行う洗浄処理における洗浄液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0057】
ネガ型現像を行う際には、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液ともいう。)を使用することが好ましい。ネガ型現像を行う際に使用する有機系現像液としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;等を使用することができる。
ネガ型現像の後に行う洗浄工程に用いる洗浄液としては、不溶化した薄膜を溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。
【0058】
本発明において、前述の現像時間で評価を行うために、実際にパターンを形成する際に用いられる現像液とは、薄膜の溶解性が異なるものを用いることが好ましい。
現像を行う場合は、実際のパターン形成時に用いられる現像液よりも溶解速度(現像速度)が遅い現像液を用いることが好ましい。
露光された領域の薄膜が現像液に溶解する溶解速度(現像速度)が遅くなるように現像液を調製することによって、本発明の方法による評価の精度を向上させることができる。例えば、複数の薄膜において、現像液に対する溶解性の差がわずかである場合、薄膜が溶解する溶解速度(現像速度)が遅いほど、現像後の不溶解成分の残存状態の測定結果に差が生じやすいため、評価の精度が向上する。
【0059】
具体的には、既存の現像液を希釈することによって、または2種以上混合することによって、現像速度を遅くすることができる。
また工程(2)においてアルカリ現像液で現像を行う場合は、現像液のpHを低くすることによって現像速度を遅くすることができる。本発明における、希釈した現像液とは、実際のパターン形成時に用いられるアルカリ現像液(例えば公知のアルカリ性水溶液からなる現像液)を、純水、酸性水溶液、またはアルコール類等によって希釈することによって、pHを低くしたものを意味する。
本発明の方法による評価の精度を充分に向上させるためには、アルカリ現像液の25℃におけるpHが、12.5以下であることが好ましく、11.5以下がさらに好ましい。該pHの下限値は9.0以上が好ましく、10.0以上がより好ましい。
なお、レジストパターンを形成する際に、アルカリ現像液として一般的に用いられる、濃度2.38%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液の25℃におけるpHは13.5である。
【0060】
工程(2)において有機溶剤を含有する有機系現像液で現像を行う場合は、有機系現像液の溶解度パラメーターを制御することによって溶解能を制御することができる。溶解度パラメーターは、例えば、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、第4版(Wiley-Interscience、2003、VII-675頁〜VII-711頁)に記載の方法により求めることができる。
有機系現像液の溶解度パラメーターの調整方法は、所望の溶解度パラメータを有する有機溶剤を選択し、これを1種単独で用いる方法でもよい。または、2種以上の有機溶剤を混合する方法でもよい。
例えば、酢酸ブチル(溶解度パラメーター:17.4MPa1/2)を現像液として用いる場合、メタノール(溶解度パラメーター:29.7MPa1/2)、エタノール(溶解度パラメーター:26.0MPa1/2)、イソプロピルアルコール(溶解度パラメーター:23.5MPa1/2)などのアルコール類;n−ヘキサン(溶解度パラメーター:14.9MPa1/2)、n−ヘプタン(溶解度パラメーター:15.1MPa1/2)などの脂肪族炭化水素類等を、酢酸ブチル現像液に混合して、溶解度パラメーターを制御することによって、現像液の溶解能を制御することができる。
【0061】
[露光量]
工程(2)における露光量は、評価を行う条件下での必要露光量(以下、評価時必要露光量という。)の値とすることが好ましい。
すなわち、工程(1)で設定された膜厚の薄膜を、所定の露光量で露光した後に、工程(2)と同じ現像液で現像するときの、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定する。この測定を、露光量を変更しながら繰り返す。現像前の初期膜厚に対する、T秒間現像した時点での残存膜厚の割合(以下、残膜率という。単位:%)を求める。得られたデータを基に、露光量(mJ/cm)の対数と、残膜率(%)との関係をプロットした曲線(以下、露光量残膜率曲線という。)を作成する。
ポジ型現像を行う場合は、露光量残膜率曲線が残膜率=0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)の値を評価時必要露光量とする。
ネガ型現像を行う場合は、露光量残膜率曲線が残膜率=x%(xは残膜率が100%の近くでサチュレーションする値)の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)の値を評価時必要露光量とする。
【0062】
本発明の評価方法で、複数のリソグラフィー用共重合体について評価を行う場合、評価の対象とする複数のリソグラフィー用共重合体の、単量体の組成比が同程度で、かつ該リソグラフィー用共重合体の重量平均分子量が同程度であれば、評価時必要露光量は共通の値を用いることが好ましい。
複数のリソグラフィー用共重合体の、単量体の組成比が同程度であるとは、各共重合体を構成している単量体の種類が互いに同じで、かつ各単量体の組成比の差の絶対値が、いずれの単量体についても、好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下であることを意味する。
また、複数のリソグラフィー用共重合体の、重量平均分子量が同程度であるとは、各共重合体の重量平均分子量の差の絶対値が、好ましくは1500以下、より好ましくは1000以下であることを意味する。
このように、複数のリソグラフィー用共重合体について共通の条件で評価を行うことにより、単量体の組成比および重量平均分子量以外のファクターに起因する、現像液に対する溶解性のわずかな差を検出することが可能となる。
特に、レジストパターンが微細になると、このような溶解性のわずかな差によって、パターン形成における欠陥が発生したり、しなかったりするため、単量体の組成比および重量平均分子量が同等である複数のリソグラフィー用共重合体の中から、パターン形成における欠陥を発生しにくいリソクグラフィー用共重合体を選択して使用することは重要である。
【0063】
<工程(3)>
工程(3)では、現像後、現像処理した薄膜の表面状態を評価する。
例えば、原子間力顕微鏡(AFM)や走査型トンネル顕微鏡(STM)などの走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて表面形状を測定する方法、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの電子顕微鏡を用いて表面形状を測定する方法、ナノインデンテーション法により表面形状を測定する方法などを用いて、表面状態を評価することができる。これらのうちで、解像度、感度、および評価の簡便性の点で、SPMを用いる方法が好ましい。
ポジ型現像の場合、現像処理した薄膜の露光された領域の薄膜が、現像によって溶解した後の不溶解成分の残存状態を測定することが好ましい。
ネガ型現像の場合、現像処理した薄膜の露光された領域において、薄膜が完全に不溶化しておらず、薄膜表面に溶解が生じた状態(好ましくはわずかに溶解部分が生じた状態)で、該薄膜表面の溶解状態を測定することが好ましい。
【0064】
[ポジ型現像の場合]
露光された領域における不溶解成分の残存状態を測定する場合、測定する場所は、露光された領域内であれば特に限定されないが、露光された領域と、露光されない領域との界面付近が、不溶解成分を検知しやすく、評価に好適である。また、露光された領域と、露光されない領域との界面を鮮明にし、該界面付近の不溶解成分をより検知しやすくするため、工程(2)での露光時に、放射線を遮光する遮光部材を、露光される領域に隣接する部位に貼付することが好ましい。
遮光部材は、露光に用いる放射線を透過させない材料であれば、特に限定されないが、例えば、ArFエキシマレーザーによる露光であれば、アルミ板などを用いることができる。また、露光された領域と、露光されない領域との界面をより鮮明にするため、遮光板の厚さは薄い方が好ましく、具体的には10μm以下の厚さであることが好ましい。遮光板がこの厚さであれば、干渉による影響も受けず、鮮明な界面を得ることができる。
【0065】
本発明における、不溶解成分の残存状態の測定方法は、少なくとも不溶解成分の存在の有無を判断でき、かつ不溶解成分の存在量を比較できる方法であればよい。
例えば、上述した走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて表面形状を測定する方法、電子顕微鏡を用いて表面形状を測定する方法、ナノインデンテーション法により表面形状を測定する方法などが挙げられる。これらのうちで、解像度、感度、および評価の簡便性の点で、SPMを用いる方法が好ましい。
【0066】
ポジ型現像後に、露光された領域に生じる溶け残り(不溶解成分)は、現像液に溶解しにくい成分である。該不溶解成分は、共重合体の中でも、比較的高分子量の成分や、組成比が平均値から大きく外れているために現像液への溶解性が乏しい成分であり、パターン形成における性能を低下させる要因となる。したがって、本発明によれば、前記不溶解成分の残存状態によって、パターン形成における性能を評価することができる。
具体的には、現像液に対する溶解性の高低、または溶解速度の均一性によって影響を受ける性能を評価することができる。例えば、前記不溶解成分の存在量が少ないほど、高い感度が得られる。前記不溶解成分の存在量が少ないほど、現像欠陥が生じにくい。また前記不溶解成分の存在量が少ないほど、パターン寸法のばらつき(LER)が小さい。
【0067】
[ネガ型現像の場合]
露光された領域において、薄膜表面の溶解状態を測定する場合、測定する場所は、露光された領域内であればよく、特に限定されない。例えば露光された領域の中央部分が好ましい。
本発明における、薄膜表面の溶解状態の測定方法は、薄膜表面における溶解の均一性を比較できる方法が好ましい。具体的には、薄膜の表面形状を測定し、該表面形状の均一性を比較する方法を好適に用いることができる。
薄膜の表面形状を測定する方法としては、例えば、上述した走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて表面形状を測定する方法、電子顕微鏡を用いて表面形状を測定する方法、ナノインデンテーション法により表面形状を測定する方法などが挙げられる。これらのうちで、解像度、感度、および評価の簡便性の点で、SPMを用いる方法が好ましい。
表面形状の均一性を比較する方法としては、例えばJIS−B0601に準処する測定方法による平均面粗さ(Ra)を好適に用いることができる。平均面粗さ(Ra)の値が小さいほど、表面形状の均一性が高いことを意味する。
【0068】
ネガ型現像において、露光された薄膜に溶解が生じた状態で、その表面形状が不均一であるということは、薄膜を構成する成分が露光によって不溶化された状態で、溶解性に差がある成分が存在していることを意味する。かかる溶解性の不均一の原因となる成分は、共重合体の中でも、分子量や組成比が平均値から大きく外れている成分であり、パターン形成における性能を低下させる要因となる。したがって、本発明によれば、前記現像後の薄膜表面の溶解状態を測定することによって、パターン形成における性能を評価することができる。
具体的には、現像液に対する溶解性の高低、または溶解速度の均一性によって影響を受ける性能を評価することができる。例えば、前記露光による不溶化が不十分となりやすい成分の存在量が少ないほど、高い感度が得られ、現像欠陥が生じにくく、パターン寸法のばらつき(LER)が小さい。
【0069】
本発明の評価方法において、工程(2)における露光条件または現像条件(例えばアルカリ現像液のpH)を変化させて、現像時の薄膜の溶解性を変化させてもよい。すなわち、評価対象のリソグラフィー用共重合体を変化させずに、工程(2)における露光条件または現像条件を変化させることによって、露光後の薄膜を現像液で現像した際に、露光された領域の薄膜が現像液に溶解する程度(薄膜の溶解性)を変化させる。この場合、工程(3)における、露光された領域の表面状態の差異は、変化させた条件(例えばアルカリ現像液のpH)の差異に基づく薄膜の溶解性の差異を表す。このような評価を、複数のリソグラフィー用共重合体について行い、変化させた条件(例えばアルカリ現像液のpH)の差異に基づく薄膜の溶解性の差異を互いに比較することにより、該複数のリソグラフィー用共重合体どうしにおける、パターン形成における性能の差異を相対的に評価することができる。またこの方法を用いて、前記「ポジ型の場合の評価に好ましい状態」または「ネガ型の場合の評価に好ましい状態」を得るための、好ましい露光条件および/または現像条件を求めることができる。
または、本発明の評価方法において、工程(2)における露光条件および現像条件を変化させずに、評価対象のリソグラフィー用共重合体を変化させて評価を行うことにより、該リソグラフィー用共重合体どうしにおける、パターン形成における性能の差異を相対的に評価することができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。
【0071】
<ポジ型現像の実施例>
下記の例1、2において用いた単量体は、いずれも下記単量体(m−1)、(m−2)、(m−3)であり、溶剤および重合開始剤も同じものを使用した。例1と例2とでは重合の手順が異なる。
【0072】
【化1】

【0073】
[例1:共重合体Aの製造]
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下漏斗から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下漏斗から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
【0074】
(第1の溶液)
単量体m−1を1.42部、
単量体m−2を8.68部、
単量体m−3を3.52部、
乳酸エチルを42.6部、
PGMEAを42.6部。
(第2の溶液)
単量体m−1を18.09部、
単量体m−2を20.83部、
単量体m−3を21.15部、
乳酸エチルを38.6部、
PGMEAを45.1部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.435部。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを6.5部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.152部。
【0075】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=95/5容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、共重合体Aの白色粉体(54.1g)を得た。
【0076】
[例2:共重合体Bの製造]
例1において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。すなわち、例1と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを54.5部、PGMEAを23.3部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m−1)が51.17部、単量体(m−2)が37.32部、単量体(m−3)が30.44部、乳酸エチルが98.0部、PGMEAが16.4部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が5.538部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後の操作は例1と同様にして、白色の析出物の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行い、共重合体Bの白色粉体(51.0g)を得た。
【0077】
[共重合体における重量平均分子量の測定]
例1、2で得た共重合体A、Bについて、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を以下の条件(GPC条件)でGPCにより、ポリスチレン換算で求めた。測定結果を表1に示す。
(GPC条件)
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:THF、
試料:共重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0078】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0079】
[共重合体における単量体の組成比の測定]
例1、2で得た共重合体A、Bについて、各構成単位の組成比(単位:モル%)を、H−NMRの測定により求めた。
この測定において、日本電子(株)製、JNM−GX270型 超伝導FT−NMRを用い、約5質量%のサンプル溶液(溶媒は重水素化ジメチルスルホキシド)を直径5mmφのサンプル管に入れ、観測周波数270MHz、シングルパルスモードにて、H 64回の積算を行った。測定温度は60℃で行った。測定結果を表1に示す。
【0080】
[共重合体の評価(不溶解成分の残存状態)]
(レジスト組成物の調製)
まず、共重合体A(例1)、共重合体B(例2)をそれぞれ用いて、リソグラフィー用のレジスト組成物を調製した。すなわち、下記の配合成分を混合してレジスト組成物を得た。
共重合体:10部、
光酸発生剤(みどり化学(株)社製、製品名:TPS−105、トリフェニルスルホニウムトリフレート):0.2部、
レベリング剤(日本ユニカー(株)社製、製品名:L−7001):0.2部、
溶媒(PGMEA):90部。
【0081】
(評価時必要露光量の測定)
上記で得たレジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えて18ショットの露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−790)を用い、温度25℃、濃度0.001規定の水酸化ナトリウム水溶液(25℃におけるpH:10.6)で35秒間現像し、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。各露光量ごとに、初期膜厚に対する、30秒間現像した時点での残存膜厚の割合(以下、残膜率という。単位:%)を求めた。
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm)の対数と、残膜率(%)との関係をプロットした曲線(露光量残膜率曲線)を作成し、前記露光量残膜率曲線が残膜率=0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)の値を評価時必要露光量とした。
共重合体Aを含むレジスト組成物(例1)、共重合体Bを含むレジスト組成物(例2)の両方について、評価時必要露光量の測定を行い、値が小さい方の評価時必要露光量を、露光工程における露光量として採用した。
共重合体Aを含むレジスト組成物(例1)の評価時必要露光量は20mJ/cm、共重合体Bを含むレジスト組成物(例2)の評価時必要露光量は22mJ/cmであり、露光工程における露光量は20mJ/cmとした。
【0082】
(薄膜の形成)
上記で得たレジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。
(露光・ベーク)
ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、20mJ/cmの露光量にて露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。このとき、露光部と未露光部との界面を鮮明にするために、露光される矩形領域の一辺に隣接する部位に、厚さ1μmのアルミ板を貼付して遮光した状態で、露光を行った。
次いで、アルミ板を除去した後、110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行って評価用ウエハーを得た。
【0083】
(現像)
評価用ウエハーが浸るのに十分な量の、温度25℃、濃度0.001規定の水酸化ナトリウム水溶液(25℃におけるpH:10.6)を、シャーレ中に入れ、上記評価用ウエハーを液中に浸透させ、攪拌しながら、30秒間現像処理を行った。30秒経過後、液中からすばやく取り出し、純水にて評価用ウエハーを洗浄した。
付着した純水を除去し、露光時にアルミ板で遮光した未露光部と、露光部との界面部分を切り出し、不溶解成分の残存状態を測定するための、現像後のサンプルを得た。
【0084】
(SPMによる不溶解成分の残存状態の測定)
上記の方法で得られた現像後のサンプルについて、SPM観察による不溶解成分の残存状態の測定を行った。SPM装置は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、S−image(製品名)を用い、カンチレバーには、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SI−DF20(製品名)を使用した。DFMモードにて、上記現像後のサンプルの露光部と未露光部との界面部分について、立体形状の測定、および界面に平行な方向における中央部の断面形状の測定を行った。測定範囲は1視野(1箇所)につき10μm×10μmとした。共重合体A(例1)についての測定結果を図1に示し、共重合体B(例2)についての測定結果を図2に示す。各図において(a)は立体形状、(b)は中央部の断面形状である。図2(a)では、露光部と未露光部の界面全域に不溶解成分の残存が見られ、図2(b)の結果より、該不溶解成分の厚さは約40nm以下であることがわかる。
同様にして、各サンプルにつき3視野(3箇所)の測定を行い。その測定結果に基づいて、下記の評価基準にて不溶解成分の残存状態の評価を行った。結果を表1に示す。
○:測定範囲の全域に渡って、不溶解成分が残存しない。
△:未露光部分との界面に、部分的に、不溶解成分が残存する。
×:未露光部分との界面全域に、不溶解成分が残存する。
【0085】
[レジスト組成物のポジ型現像における感度評価]
前記共重合体A,Bの評価に用いたレジスト組成物を用いてドライリソグラフィーを行ったときの感度を以下の方法で測定した。
感度評価に用いる厚さ300nmの薄膜は、前記共重合体の評価に用いたものと同様の条件で作製した。
【0086】
(ドライリソグラフィー)
6インチシリコンウエハー上に形成された厚さ300nmの薄膜を、ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えて18ショットの露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−790)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像し、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。各露光量ごとに、初期膜厚に対する、60秒間現像した時点での残存膜厚の割合(残膜率)を求めた。
得られたデータを基に露光量残膜率曲線を作成し、ポジ型現像における必要露光量(Eth)を求めた。このEthは、上記のレジストパターン形成時の現像条件において残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。Ethが小さいほど感度が高い。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
<ネガ型現像の実施例>
下記の例3、4において用いた単量体は、いずれも下記単量体(m−4)、(m−5)、(m−6)、(m−3)であり、溶剤および重合開始剤も同じものを使用した。例3と例4とでは重合の手順が異なる。
【0089】
【化2】

【0090】
[例3:共重合体Cの製造]
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下漏斗から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下漏斗から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
【0091】
(第1の溶液)
単量体m−4を3.63部、
単量体m−5を3.85部、
単量体m−6を1.31部、
単量体m−3を0.97部、
乳酸エチルを47.1部、
γ−ブチロラクトンを47.1部。
(第2の溶液)
単量体m−4を35.96部、
単量体m−5を29.48部、
単量体m−6を10.61部、
単量体m−3を9.56部、
乳酸エチルを18.0部、
γ−ブチロラクトンを102.7部。
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.328部。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを7.7部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.566部。
【0092】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=75/25容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=85/15容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、共重合体Cの白色粉体(63.0g)を得た。
【0093】
[例4:共重合体Dの製造]
例3において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。すなわち、例3と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを39.5部、γ―ブチロラクトンを39.5部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m−4)が39.46部、単量体(m−5)が33.58部、単量体(m−6)が11.79部、単量体(m−3)が10.09部、乳酸エチルが28.5部、γ―ブチロラクトンが113.9部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が5.382部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後の操作は例1と同様にして、白色の析出物の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行い、共重合体Dの白色粉体(61.9g)を得た。
【0094】
[共重合体における重量平均分子量の測定]
例3、4で得た共重合体C、Dについて、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を、GPCによりポリスチレン換算で求めた。測定方法および測定条件は前記共重合体A、Bについての測定と同じである。測定結果を表2に示す。
【0095】
[共重合体における単量体の組成比の測定]
例3、4で得た共重合体C、Dについて、各構成単位の組成比(単位:モル%)を、H−NMRの測定により求めた。
測定方法および測定条件は前記共重合体A、Bについての測定と同じである。測定結果を表2に示す。
【0096】
[共重合体の評価(薄膜の表面状態)]
(レジスト組成物の調製)
まず、共重合体C(例3)、共重合体D(例4)をそれぞれ用いて、リソグラフィー用のレジスト組成物を調製した。すなわち、下記の配合成分を混合してレジスト組成物を得た。
共重合体:10部、
光酸発生剤(みどり化学(株)社製、製品名:TPS−105、トリフェニルスルホニウムトリフレート):0.2部、
レベリング剤(日本ユニカー(株)社製、製品名:L−7001):0.2部、
溶媒(PGMEA):90部。
【0097】
(評価時必要露光量の測定)
上記で得たレジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えて18ショットの露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−790)を用い、温度25℃、酢酸ブチルで35秒間現像し、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。各露光量ごとに、初期膜厚に対する、30秒間現像した時点での残存膜厚の割合(以下、残膜率という。単位:%)を求めた。
【0098】
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm)の対数と、残膜率(%)との関係をプロットした曲線(露光量残膜率曲線)を作成し、前記露光量残膜率曲線が残膜率=x%(xは残膜率が100%の近くでサチュレーションする値)の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)の値を評価時必要露光量とした。
共重合体Cを含むレジスト組成物(例3)、共重合体Dを含むレジスト組成物(例4)の両方について、評価時必要露光量の測定を行い、値が小さい方の評価時必要露光量を、露光工程における露光量として採用した。
共重合体Cを含むレジスト組成物(例3)において、前記xは97.7%であり、評価時必要露光量は0.3mJ/cmであった。共重合体Dを含むレジスト組成物(例4)において、前記xは97.9%であり、評価時必要露光量は0.4mJ/cmであった。露光工程における露光量は0.3mJ/cmとした。
【0099】
(薄膜の形成)
上記で得たレジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。
(露光・ベーク)
ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、0.3mJ/cmの露光量にて露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。
次いで、110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行って評価用ウエハーを得た。
【0100】
(現像)
評価用ウエハーが浸るのに十分な量の、温度25℃、酢酸ブチルを、シャーレ中に入れ、上記評価用ウエハーを液中に浸透させ、攪拌しながら、30秒間現像処理を行った。30秒経過後、液中からすばやく取り出し、純水にて評価用ウエハーを洗浄した。
付着した純水を除去し、露光部を切り出し、表面状態を測定するための、現像後のサンプルを得た。
【0101】
(SPMによる表面状態の測定)
上記の方法で得られた現像後のサンプルについて、SPM観察による表面状態の測定を行った。SPM装置は前記と同じである。DFMモードにて、上記現像後のサンプルの露光部分について、立体形状の測定、および中央部の断面形状の測定を行った。測定範囲は1視野(1箇所)につき10μm×10μmとした。重合体C(例3)についての測定結果を図3に示し、共重合体D(例4)についての測定結果を図4に示す。各図において(a)は立体形状、(b)は中央部の断面形状である。
同様にして、各サンプルにつき3視野(3箇所)の測定を行い、1視野につき2箇所の2μm×2μm領域を用いて、JIS−B0601の方法により、計6領域の平均面粗さ(Ra)を算出した。各サンプルにおける6領域平均のRa算出結果を表2に示す。
【0102】
[レジスト組成物のネガ型現像における感度評価]
前記共重合体C、Dの評価に用いたレジスト組成物を用いて、ネガ型現像によるドライリソグラフィーを行ったときの感度を以下の方法で測定した。
感度評価に用いる厚さ300nmの薄膜は、前記共重合体の評価に用いたものと同様の条件で作製した。
【0103】
(ドライリソグラフィー)
6インチシリコンウエハー上に形成された厚さ300nmの薄膜を、ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えて18ショットの露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−790)を用い、23.5℃にて酢酸ブチルで65秒間現像し、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。各露光量ごとに、初期膜厚に対する、60秒間現像した時点での残存膜厚の割合(残膜率)を求めた。
得られたデータを基に露光量残膜率曲線を作成し、ネガ型現像における必要露光量(Ei)を求めた。このEiは、上記のレジストパターン形成時の現像条件において残膜率が0%ではなくなる(露光部に残膜が発生する)最小の露光量であり、感度を表す。Eiが小さいほど感度が高い。結果を表2に示す。
【0104】
[レジスト組成物のポジ型現像における感度評価]
前記共重合体C、Dの評価に用いたレジスト組成物を用いて、ポジ型現像によるドライリソグラフィーを行ったときの感度を以下の方法で測定した。
感度評価に用いる厚さ300nmの薄膜は、前記共重合体の評価に用いたものと同様の条件で作製した。
【0105】
(ドライリソグラフィー)
6インチシリコンウエハー上に形成された厚さ300nmの薄膜を、ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えて18ショットの露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−790)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像し、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。各露光量ごとに、初期膜厚に対する、60秒間現像した時点での残存膜厚の割合(残膜率)を求めた。
得られたデータを基に露光量残膜率曲線を作成し、ポジ型現像における必要露光量(Eth)を求めた。このEthは、上記のレジストパターン形成時の現像条件において残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。Ethが小さいほど感度が高い。結果を表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
ポジ型現像の評価結果である表1に示されるように、共重合体A、Bは、重量平均分子量および単量体の組成比がほぼ同じであるが、本発明の評価方法により不溶解成分の残存状態を測定すると、共重合体Aは残存が見られないのに対して、共重合体Bは残存が顕著に見られた。また、ポジ型現像におけるレジストパターン形成時の現像条件での感度(Eth)を測定したところ、共重合体Aの方が感度が顕著に高かった。
また、ネガ型現像の評価結果である表2に示されるように、共重合体C、Dは、重量平均分子量および単量体の組成比がほぼ同じであるが、本発明の評価方法により表面の溶解状態を測定すると、平均面粗さ(Ra)において違いが確認された。また、ネガ型現像におけるレジストパターン形成時の現像条件での感度(Ei)を測定したところ、共重合体Cの方が感度が顕著に高かった。
さらに、共重合体C、Dを含むレジスト組成物について、ポジ型現像におけるレジストパターン形成時の現像条件での感度(Eth)を測定したところ、表2に示されるように、共重合体Cの方が感度が顕著に高かった。
【0108】
これは、共重合体Aと共重合体Bの重合方法の違いによって、共重合体Aの方が分子量分布が小さく、組成比の均一性もやや高くなっていることに起因していると考えられ、また、共重合体Cと共重合体Dの重合方法の違いによって、共重合体Cの方が分子量分布が小さく、組成比の均一性もやや高くなっていることに起因していると考えられる。
このように、本発明の評価方法によって、共重合体の物性のわずかな違いによる、パターン形成における性能の違いを、パターンを形成せずに、簡便かつ代用的に、高精度に評価することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィー用共重合体の、パターン形成における性能を、パターンを形成せずに評価する方法であって、下記工程(1)〜(3)を含む、リソグラフィー用共重合体の評価方法。
(1)リソグラフィー用共重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むリソグラフィー組成物を用いて、基材上に薄膜を形成する工程。
(2)前記薄膜を露光した後、現像する工程。
(3)現像後、現像処理した薄膜の表面状態を評価する工程。
【請求項2】
前記工程(3)において、走査型プローブ顕微鏡を用いて、現像処理した薄膜の表面状態を評価する、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記工程(2)においてポジ型現像を行う、請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記工程(3)において、現像処理した薄膜の露光された領域における不溶解成分の残存状態を測定する、請求項3に記載の評価方法。
【請求項5】
前記工程(2)において、希釈した現像液を用いて現像を行う、請求項3または4のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記工程(2)において、25℃におけるpHが12.5以下である現像液を用いて現像を行う、請求項3〜5のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項7】
前記工程(2)においてネが型現像を行う、請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項8】
前記工程(3)において、現像処理した薄膜の露光された領域における薄膜表面の溶解状態を測定する、請求項7に記載の評価方法。
【請求項9】
前記工程(2)において、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行う、請求項7または8に記載の評価方法。
【請求項10】
前記現像液が、2種類以上の有機溶剤を含有する、請求項9に記載の評価方法。
【請求項11】
リソグラフィー用共重合体の製造方法であって、
2種以上の単量体を重合して共重合体を得る工程と、得られた共重合体を、請求項1〜10のいずれか一項に記載の評価方法により評価する工程とを含む、リソグラフィー用共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−189982(P2012−189982A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220842(P2011−220842)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】