説明

リソグラフィー用共重合体の評価方法

【課題】リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときのリソグラフィー特性を、実際にリソグラフィー用組成物を調製しなくても評価できる方法を提供する。
【解決手段】下記工程を含むリソグラフィー用共重合体の評価方法:
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)前記試験溶液の濁度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加する工程;
(4)貧溶媒添加後の試験溶液の濁度を測定する工程;
(5)前記貧溶媒の添加によって、前記試験溶液の濁度が、所定の濁度に変化するまでの貧溶媒添加量を求める工程;
(6)前記工程(5)において求められる貧溶媒添加量により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィー用共重合体の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶素子等の製造工程においては、近年、リソグラフィーによるパターン形成の微細化が急速に進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。
最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術及びEUVエキシマレーザー(波長:13nm)リソグラフィー技術が研究されている。
また、例えば、照射光の短波長化およびパターンの微細化に好適に対応できるレジスト組成物として、酸の作用により酸脱離性基が脱離してアルカリ可溶性となる重合体と、光酸発生剤とを含有する、いわゆる化学増幅型レジスト組成物が提唱され、その開発および改良が進められている。
【0003】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用共重合体としては、波長193nmの光に対して透明なアクリル系共重合体が注目されている。
例えば下記特許文献1には、単量体として、(A)ラクトン環を有する脂環式炭化水素基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、(B)酸の作用により脱離可能な基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、および(C)極性の置換基を有する炭化水素基または酸素原子含有複素環基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステルを用いてなるレジスト用の共重合体が記載されている。
【0004】
ところで、レジスト用の共重合体は、これを含有するレジスト組成物を使用して良好なパターンを形成できるかどうかが重要である。かかるレジスト用共重合体の評価は、実際にレジスト組成物を調製して、該レジスト組成物の各種現像特性等を測定する方法が一般的である。
また下記特許文献2、3には、レジスト用共重合体を含む樹脂をレジスト溶剤に溶解させ、該溶液についての動的光散乱を測定して得られる特定のパラメータから、該樹脂を用いたレジスト組成物における現像欠陥の発生度合い、パターン寸法のばらつき(LER)の度合い、または液中異物発生の度合いを予測する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−145955号公報
【特許文献2】特開2005−91407号公報
【特許文献3】特開2009−37184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2、3に記載では、実際にレジスト組成物を調製して現像を行わなくてもレジスト性能を評価できるものの、分子量分布や組成分布を精密に制御している次世代レジスト用共重合体においては、構造の差異や現像特性の差異が僅かであり、その共重合体同士の差は、上記特許文献2,3に記載の方法では、検出することができず、次世代に求められる微細パターンに対応した寸法の均一性や現像欠陥の発生頻度を反映する評価方法となっていないのが現状であり、レジスト用共重合体溶液の濃度を変化させながら光散乱測定を行うため、操作が煩雑であった。
【0007】
また、レジスト用共重合体以外のリソグラフィー用共重合体、例えばリソグラフィー工程において、レジスト膜の上層若しくは下層に形成される反射防止膜、ギャップフィル膜、トップコート膜等の薄膜形成に用いられる共重合体についても同様に、これを含有するリソグラフィー用組成物が、高精度の微細加工を行うための性能(リソグラフィー特性)を備えているかどうかが重要である。そして、実際にリソグラフィー用組成物を調製してリソグラフィー工程を行わなくても、リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときの性能を簡便に評価できる方法が望まれていた。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときのリソグラフィー特性を、実際にリソグラフィー用組成物を調製しなくても評価でき、且つ、レジスト用溶剤やアルカリ現像液への溶解性能の均一性を厳格に、且つ、簡便に評価できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の要旨は、下記工程を含むリソグラフィー用共重合体の評価方法に関する。
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)前記試験溶液の濁度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加する工程;
(4)貧溶媒添加後の試験溶液の濁度を測定する工程;
(5)前記貧溶媒の添加によって、前記試験溶液の濁度が、所定の濁度に変化するまでの貧溶媒添加量を求める工程;
(6)前記工程(5)において求められる貧溶媒添加量により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、リソグラフィー用共重合体を含むリソグラフィー用組成物の特性を、実際にリソグラフィー用組成物を調製しなくても評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
【0012】
<リソグラフィー用共重合体>
本発明において精製の対象となるリソグラフィー用共重合体は、リソグラフィー工程に用いられる共重合体であれば、特に限定されずに適用することができる。
例えば、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用共重合体、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、またはレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用共重合体、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜用共重合体、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用共重合体が挙げられる。
【0013】
レジスト用共重合体の例としては、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上と、極性基を有する構成単位の1種以上とを含む共重合体が挙げられる。
【0014】
反射防止膜用共重合体の例としては、吸光性基を有する構成単位と、レジスト膜と混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する構成単位とを含む共重合体が挙げられる。
吸光性基とは、レジスト組成物中の感光成分が感度を有する波長領域の光に対して、高い吸収性能を有する基であり、具体例としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造(任意の置換基を有していてもよい。)を有する基が挙げられる。特に、照射光として、KrFレーザ光が用いられる場合には、アントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合には、ベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。
【0015】
上記任意の置換基としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、又はアミド基等が挙げられる。
これらのうち、吸光性基として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有するものが、良好な現像性・高解像性の観点から好ましい。
上記吸光性基を有する構成単位・単量体として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
ギャップフィル膜用共重合体の例としては、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有し、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する構成単位を含む共重合体、具体的にはヒドロキシスチレンと、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体が挙げられる。
液浸リソグラフィーに用いられるトップコート膜用共重合体の例としては、カルボキシル基を有する構成単位を含む共重合体、水酸基が置換したフッ素含有基を有する構成単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0017】
これらのリソグラフィー用共重合体を分子設計通りに共重合反応させることは容易でなく、分子量や単量体の組成比にばらつきが生じる。また分子設計が同じでも、製造方法が違うと、分子量や単量体の組成比におけるばらつきの度合いが異なり、リソグラフィー工程にあってはかかる製造方法の違いだけでも性能に差が生じ得る。本発明の評価方法によれば、そのような製造方法の違いによる性能の差も評価できるため、リソグラフィー用共重合体は本発明における評価対象の共重合体として好ましい。
【0018】
<レジスト用共重合体>
以下、リソグラフィー用共重合体の代表例としてレジスト用共重合体(以下、単に共重合体ということもある。)を挙げて本発明を説明するが、他のリソグラフィー用共重合体も同様に適用できる。
レジスト用共重合体は、レジスト膜の形成に用いられる共重合体であれば、特に限定されずに適用することができる。
【0019】
具体的には、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上と、極性基を有する構成単位の1種以上とを含むレジスト用共重合体が好ましい。該レジスト用共重合体は、酸脱離性基を有する単量体の1種以上と、極性基を有する単量体の1種以上とからなる単量体混合物を重合して得られる。
【0020】
[酸脱離性基を有する構成単位・単量体]
「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が共重合体の主鎖から脱離する基である。
酸脱離性基を有する構成単位を含む共重合体は、レジスト組成物として用いた場合、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターンの形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の含有量は、感度および解像度の点から、共重合体を構成する全構成単位のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0021】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基、および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
【0022】
酸脱離性基を有する単量体の具体例として、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0023】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
[極性基を有する構成単位・単量体]
「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基などが挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用共重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに後述の親水性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0025】
(ラクトン骨格を有する構成単位・単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
共重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0026】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0027】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(親水性基を有する構成単位・単量体)
本明細書における「親水性基」とは、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用共重合体は、親水性基としてヒドロキシ基、シアノ基を有することが好ましい。
共重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0029】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。
【0030】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
<重合開始剤>
重合開始剤を使用する重合では、重合開始剤のラジカル体が反応溶液中に生じ、このラジカル体を起点として単量体の逐次重合が進行する。本発明のレジスト用共重合体の製造に用いられる重合開始剤は、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましく、10時間半減期温度が重合温度条以下であるものを用いることが好ましい。例えばリソグラフィー用重合体を製造する場合の好ましい重合温度は50〜150℃であり、重合開始剤としては10時間半減期温度が50〜70℃のものを用いることが好ましい。また重合開始剤が効率的に分解するためには、重合開始剤の10時間半減期温度と重合温度との差が10℃以上であることが好ましい。
重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ化合物、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物;が挙げられる。アゾ化合物がより好ましい。
【0032】
<溶媒>
本発明の重合体の製造方法においては重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(例えばジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン(以下、「THF」と記すこともある。)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記すこともある。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
重合溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、重合反応終了時の反応器内の液(重合反応溶液)の固形分濃度が20〜40質量%程度となる量が好ましい。
【0033】
<リソグラフィー用共重合体の製造方法>
以下、リソグラフィー用共重合体の製造方法の代表例としてレジスト用共重合体の製造方法を挙げて説明するが、他のリソグラフィー用共重合体も同様に適用できる。
レジスト用共重合体は、ラジカル重合法によって得ることができる。重合方法は特に限定されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法を適宜用いることができる。
特に、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する工程を容易に行える点、重合体の分子量を比較的低くしやすい点から、溶液ラジカル重合法が好ましい。そのうちで、製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体を簡便に得やすい点から、滴下重合法が更に好ましい。
【0034】
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体及び重合開始剤を、各々独立に、又は任意の組み合わせで、重合容器内に滴下する。単量体は、単量体のみで滴下してもよく、又は単量体を溶媒に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。重合容器に予め溶媒を仕込んでもよく、仕込まなくてもよい。重合容器に予め溶媒を仕込まない場合、単量体または重合開始剤は、溶媒がない状態で重合容器中に滴下される。
【0035】
上記重合開始剤は、単量体に直接に溶解させてもよく、単量体溶液に溶解させてもよく、又は溶媒のみに溶解させてもよい。単量体及び重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく、各々独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよい。または、各々独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合して、重合容器中に滴下してもよい。上記単量体及び重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
なお、滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、又は単量体や重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。滴下は、連続的又は間欠的に行ってもよい。
【0036】
上記溶液ラジカル重合による滴下重合法を用いる場合、重合初期に重合開始剤及び/又は単量体の供給速度を上げて高分子量体の生成を抑制する方法を用いることができる。
一般的に、滴下重合法において、単量体と重合開始剤を同一滴下時間、かつ均一速度で滴下する場合、重合初期に高分子量体が生成する傾向がある。そこで、重合初期に重合開始剤の供給速度を上げることにより、重合開始剤の分解を促進させて、ラジカルの生成・失活を定常的に発生させ、該ラジカル中に単量体を滴下することで、重合初期における高分子量体の生成を抑制することができる。具体的には、二種以上の滴下液を調製し、各々の滴下液の供給速度を多段階に変化させる方法や、重合容器内に予め溶剤と重合開始剤の一部量又は全量を仕込み、次いで、各種単量体及び/又は残りの重合開始剤等を含有する滴下液を滴下する方法等が挙げられる。
【0037】
また一般的に、滴下重合法において、反応性の異なる2種以上の単量体と重合開始剤を同一滴下時間、かつ均一速度で滴下する場合、反応性の高い単量体の重合が先に進行し、その結果、特に重合初期に生成する高分子量体の中に、組成が不均一な共重合体が多く含まれる傾向がある。
かかる重合初期における、組成の不均一な高分子量体の生成を抑制する方法として、例えば、重合に用いられる各単量体の反応性比に応じて、反応器内にモノマーを先仕込みして、重合初期から定常状態で重合させることにより、組成の均一なポリマーを製造する方法がある。
【0038】
更に、上記重合初期における高分子量体の生成を抑制する方法と、上記重合初期における、組成の不均一な高分子量体の生成を抑制する方法とを組み合わせると、分子量及び組成が更に均一な共重合体を得ることができるため好ましい。
【0039】
上記製造方法によれば、共重合体における構成単位の組成比や分子量のばらつきが小さくなりやすい。構成単位の組成比や分子量のばらつきが小さいと、溶媒への溶解性が良好であり、かつレジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる。
【0040】
<評価方法>
本発明の評価方法は、下記工程を含む:
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)前記試験溶液の濁度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加する工程;
(4)貧溶媒添加後の試験溶液の濁度を測定する工程;
(5)前記貧溶媒の添加によって、前記試験溶液の濁度が、所定の濁度に変化するまでの貧溶媒添加量を求める工程;
(6)前記工程(5)において求められる貧溶媒添加量により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。
【0041】
<(1)工程>
上記試験溶液は、レジスト用共重合体を良溶媒に溶解させて調製する。試験溶液中におけるレジスト用共重合体の含有量は、良溶媒に完全に溶解する範囲であればよく、0.5質量%〜30質量%が好ましく、2質量%〜25質量%が更に好ましい。
本評価方法では、貧溶媒の添加によって、共重合体の溶媒に対する溶解性を低下させていき、共重合体が析出し始める貧溶媒の添加量(曇点)を濁度変化によって評価している。0.5質量%〜30質量%の濃度であれば、共重合体が良溶媒に完全に溶解するとともに、濁度を検知しやすいため、好適である。また、本評価方法では、濁度によって評価しているため、貧溶媒を添加していない状態で濁りが生じていると正確に評価できない可能性があることから、完全に溶解していない溶液は、本評価方法には望ましくない。
【0042】
本明細書における良溶媒とは、常温(25℃)において、レジスト用共重合体を、5質量倍量以下の溶媒量で完全に溶解できる溶媒をいう。特に3質量倍量以下の溶媒量でレジスト用共重合体を完全に溶解できるものを用いることが好ましい。試験溶液に用いる良溶媒は1種単独の溶媒でもよく2種以上の混合物でもよい。混合溶媒の場合は、混合後に上記良溶媒の条件を満たすものであれば、良溶媒として用いることができる。
【0043】
良溶媒としては、レジスト組成物を調製する際に用いられる公知のレジスト溶媒から適宜選択して用いることができる。1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましい良溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4―ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0044】
<(2)工程>
上記試験溶液について、濁度を測定する。濁度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、紫外可視分光光度計による光の透過率測定や、JIS K0101やISO7027にて規定されているような、透過光式、散乱光式、積分球式、表面散乱式の濁度計による濁度測定などが挙げられる。光の透過率測定においては、例えば、レジスト用共重合体がアクリル系重合体である場合、測定波長として可視光領域の波長が好ましく、具体的には380〜780nmが好適である。
【0045】
<(3)工程>
前記試験溶液に、貧溶媒を添加する。
本明細書における貧溶媒とは、常温(25℃)において、レジスト用共重合体に対し、5質量倍量の単独溶媒を加えて撹拌しても全く溶解しない溶媒をいう。特に10質量倍量の単独溶媒を加えても全く溶解しないものを用いることが好ましい。混合溶媒の場合は、混合後に上記貧溶媒の条件を満たすものであれば、貧溶媒として用いることができる。
【0046】
貧溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピリエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水などを用いることができる。貧溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、評価対象のレジスト用共重合体がアクリル系共重合体である場合、良溶媒としてPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、乳酸エチルを用い、貧溶媒としてIPE(ジイソプロピルエーテル)、ヘキサン、ヘプタン、メタノールを用いることが好ましい。
【0047】
<(4)工程>
貧溶媒添加後の試験溶液の濁度を測定する。
上記(2)工程と同様に、濁度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、紫外可視分光光度計による光の透過率測定や、JIS K0101やISO7027にて規定されているような、透過光式、散乱光式、積分球式、表面散乱式の濁度計による濁度測定などが挙げられる。光の透過率測定においては、例えば、レジスト用共重合体がアクリル系重合体である場合、測定波長として可視光領域の波長が好ましく、具体的には380〜780nmが好適である。
【0048】
<(5)工程>
上記貧溶媒の添加によって、上記試験溶液の濁度が、所定の濁度に変化するまでの貧溶媒添加量を求める上記貧溶媒の添加によって、上記試験溶液が所定の濁度に変化するまでの貧溶媒添加量を求める。所定の濁度は、確認が容易である等の観点から、曇点における濁度であることが好ましい。
なお、上記工程(3)において、所定の濁度に変化するまでの貧溶媒添加量を確認するために、上記工程(3)において、貧溶媒を徐々に添加し、濁度測定と貧溶媒の添加を繰り返しながら、所定の濁度を確認し、添加された貧溶媒の合計量を求めることできる。
【0049】
例えば、波長450nm光の透過率を用いて濁度変化を測定する場合、曇点となる透過率の基準は、75〜90(%)が好ましく、82〜88(%)がより好ましい。試験溶液の透過率が上記範囲になる曇点を比較することによって、リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときの性能を評価することができる
【0050】
濁度測定においては、例えば、ホルマジン標準液を基準としたホルマジン度による測定が挙げられ、ホルマジン度を用いて濁度変化を測定する場合、曇点となるホルマジン度の基準は、8〜32(度)が好ましく、11〜21(度)がより好ましい。前述の透過率と同様に、試験溶液の濁度が上記範囲になる貧溶媒添加量(曇点)を比較することによって、リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときの性能を評価することができる。
【0051】
上記貧溶媒添加量は、測定する試験溶液に含まれる共重合体の物性、共重合体の重量平均分子量や組成の相違、溶液の濃度等により値が異なるため、同組成・同分子量で、重合方法等の異なる共重合体同士の比較などに用いることが好ましい。
【0052】
上記濁度の測定温度は、特に限定されないが、15℃〜35℃が好ましく、より好ましくは、20℃〜30℃である。共重合体の溶媒への溶解性は、溶液温度によって異なるため、同一の温度で評価することが好ましく、そのため、温度が安定しやすい、室温に近い温度で測定を行うことが好ましい。
【0053】
<(6)工程>
上記(5)工程において求められる貧溶媒添加量により、上記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する。
【0054】
上記貧溶媒添加量は、後述の実施例に示されるように、レジスト用共重合体をレジスト組成物としたときの感度と相関している。すなわち、共重合体の物性、共重合体の重量平均分子量や組成等の相違がない場合には、上記貧溶媒添加量が大きいほど感度が良い。したがって、上記貧溶媒添加量を用いて感度の評価を行うことができる。
また、感度が良いということは、レジスト組成物の露光後のアルカリ溶解性が良好であることを意味しており、例えば、現像欠陥(ディフェクト)、およびパターン寸法のばらつき(LER)等の現像特性も良いと推測される。すなわち、感度が良いということは、現像特性等のリソグラフィー特性も良いと推測される。
【0055】
なお、後述の実施例に示されるように、貧溶媒添加によって溶剤への溶解性が低下し、析出してくる成分は、共重合体のうちでも比較的高分子量の成分であり、かつ構成単位の組成が設計値から比較的大きく外れている成分である。このことから、該成分は共重合体の不均一性を増大させる成分であると考えられる。そして本発明における上記貧溶媒添加量が大きいほど、かかる共重合体における均一性が高いことを意味し、均一性が高いために感度等の現像特性が良くなっていると考えられる。
したがって、本発明の評価方法を用いることによって、レジスト用組成物の現像特性の評価だけでなく、リソグラフィー用共重合体の均一性によって変動するリソグラフィー特性の評価が可能である。
【0056】
本発明の評価方法における貧溶媒添加量が大きいリソグラフィー用共重合体およびこれを含有するリソグラフィー組成物は、共重合体全体における分子量の均一性が高い。したがって、共重合体の分子量の均一性が高いと向上するリソグラフィー特性が良好である。
【0057】
同様に、上記貧溶媒添加量は、後述の実施例に示されるように、反射防止膜用共重合体を反射防止膜用共組成物としたときの溶媒に対する溶解性と相関している。すなわち、共重合体の物性、共重合体の重量平均分子量や組成等の相違がない場合には、上記貧溶媒添加量が大きいほど溶媒に対する溶解性が良い。したがって、上記貧溶媒添加量を用いて溶媒に対する溶解性の評価を行うことができる。
また、溶媒に対する溶解性が良いということは、ディフェクト要因となりうる不溶解成分の発生を抑制できるため、成膜性等が良好であることを意味しており、例えば、反射防止性能等も良いと推測される。すなわち、溶媒に対する溶解性が良いということは、反射防止性能等のリソグラフィー特性も良いと推測される。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
表1、表2、表3に記載の配合を用い、下記合成手順にて、共重合体A−1〜4、B−1〜2、および、C−1〜2を合成した。
【0060】
共重合体の合成に使用した溶剤、重合開始剤を以下に示す。
溶剤(S)
S−1:乳酸エチル
S−2:PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
S−3:メタノール
S−4:水
重合開始剤(R)
R−1:ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V−601(製品名))
R−2:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
【0061】
共重合体の合成に使用した単量体(M−1)〜(M−6)を以下に示す。
【0062】
【化1】

【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
共重合体A、Bの合成
(工程1)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、表1、表2の工程1部分に記載の混合比で調製した混合溶液を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。上記混合比は、各共重合体における目標組成と、重合に用いられる各単量体の反応性とを加味して予め求められた組成であり、反応器内にこの混合比で単量体が存在すると、後述の工程2に記載した混合溶液を滴下した際に、滴下直後に生成される重合体分子の構成単位の含有比率が目標組成と同じになる。
(工程2)表1、表2の工程2部分に記載の混合比で調製した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程3)工程2における混合溶液の滴下開始と同時に、表1、表2の工程3部分に記載の混合比で調製した混合溶液を別の滴下漏斗より0.1時間かけてフラスコ内に滴下した。本工程で滴下する重合開始剤量によって、重合工程の初期に生成する共重合体の重量平均分子量が変化するが、各共重合体の目標とする重合平均分子量に近くなるよう設定している。
(工程4)次いで、表1、表2の工程4部分に記載の混合比で調製した混合溶媒を、得られた反応溶液の約7倍量準備し、攪拌しながら反応溶液を滴下して、白色のゲル状物の沈殿を得て、濾別した。
(工程5)表1、表2の工程5部分に記載の混合比で調製した混合溶媒を、工程4と同量準備し、濾別した沈殿をこの混合溶媒中に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、各共重合体の粉末を得た。
【0067】
共重合体Cの合成
(工程1)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、表3の工程1部分に記載の混合比で調製した混合溶液を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。上記混合比は、各共重合体における目標組成と、重合に用いられる各単量体の反応性とを加味して予め求められた組成であり、反応器内にこの混合比で単量体が存在すると、後述の工程2に記載した混合溶液を滴下した際に、滴下直後に生成される重合体分子の構成単位の含有比率が目標組成と同じになる。
(工程2)表3の工程2部分に記載の混合比で調製した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で6時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を1時間保持した。
(工程3)工程2における混合溶液の滴下開始と同時に、表3の工程3部分に記載の混合比で調製した混合溶液を別の滴下漏斗より0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。本工程で滴下する重合開始剤量によって、重合工程の初期に生成する共重合体の重量平均分子量が変化するが、各共重合体の目標とする重合平均分子量に近くなるよう設定している。
(工程4)次いで、IPE(ジイソプロピルエーテル)を、得られた反応溶液の約7倍量準備し、攪拌しながら反応溶液を滴下して、白色のゲル状物の沈殿を得て、濾別した。
(工程5)IPE(ジイソプロピルエーテル)を、工程4と同量準備し、濾別した沈殿をこの混合溶媒中に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、各共重合体の粉末を得た。
【0068】
(リソグラフィー用共重合体の重量平均分子量)
共重合体A−1〜4、B−1〜2、C−1〜2について重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を以下の方法で測定した。
約20mgのサンプルを5mLのTHFに溶解し、0.5μmのメンブランフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置:HCL−8220(製品名)を用いて、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。この測定において、分離カラムは、昭和電工社製、Shodex GPC LF−804L(製品名)を3本直列にしたものを用い、溶剤はTHF(テトラヒドロフラン)、流量1.0mL/min、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mLで、標準ポリマーとしてポリスチレンを使用した。測定結果を表8、表9、表10に示す。
【0069】
(リソグラフィー用共重合体における構成単位の組成比)
リソグラフィー用共重合体における、各構成単位の組成比(単位:モル%)を、H−NMRの測定により求めた。
この測定において、日本電子(株)製、JNM−GX270型 超伝導FT−NMRを用い、約5質量%のサンプル溶液(溶媒は重水素化ジメチルスルホキシド)を直径5mmφのサンプル管に入れ、観測周波数270MHz、シングルパルスモードにて、H 64回の積算を行った。測定温度は60℃で行った。測定結果を表8、表9、表10に示す。
【0070】
(試験溶液の調製)
まず、共重合体A−1〜4、B−1〜2を、共重合体濃度が2.5質量%となるようにPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に溶解させて共重合体溶液A−1〜4、B−1〜2を得た。また、共重合体C−1〜2を、共重合体濃度が2.5質量%となるようにPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に溶解させて共重合体溶液C−1〜2を得た。溶液の温度は常温(25℃)とした。
【0071】
(紫外可視分光光度計(透過率)による曇点評価)
紫外可視分光光度計として、島津製作所社製、UV−3100PC(製品名)を用い、光路長10mmの石英製角型セルに測定用溶液を入れ、波長450nmにおける透過率を測定する方法で、共重合体溶液、および共重合体を溶解させる前の溶媒(PGMEAおよびPGME)について光透過率を測定した。共重合体溶液A−1〜4、B−1〜2、C−1〜2の透過率は100%であり、各共重合体溶液において共重合体が完全に溶解していることが確認された。
【0072】
次に、共重合体溶液A−1〜4、B−1〜2、C−1〜2のそれぞれに対して、上記の測定方法で波長450nmにおける透過率をモニターしながら、表4、表5、表6に記載の各貧溶媒を徐々に添加し、透過率が85±3%の範囲となる貧溶媒添加量を算出した。共重合体溶液A−1〜4、B−1〜2、C−1〜2の各100質量部に対する貧溶媒添加量、および得られた試験溶液A−1〜4、B−1〜2、C−1〜2における波長450nmにおける透過率の値を表4、表5、表6に示す。
【0073】
(濁度計による曇点評価)
濁度計として、オプテックス社製、TD−M500(製品名)を用い、ビーカーに測定用溶液を入れ、濁度検出部を測定用溶液に浸漬させて、共重合体溶液、および共重合体を溶解させる前の溶媒(PGMEA)について濁度(ホルマジン度)を測定した。共重合体溶液A−1〜4の濁度は0度であり、各共重合体溶液において共重合体が完全に溶解していることが確認された。
【0074】
次に、共重合体溶液A−1〜4のそれぞれに対して、上記の測定方法で濁度をモニターしながら、貧溶媒であるn−ヘプタンを徐々に添加し、濁度が16±5度の範囲となる貧溶媒添加量を算出した。共重合体溶液A−1〜4の各100質量部に対する貧溶媒添加量、および得られた試験溶液A−1〜4における濁度の値を表7に示す。
【0075】
(実施例1)
【表4】

【0076】
(実施例2)
【表5】

【0077】
(実施例3)
【表6】

【0078】
(実施例4)
【表7】

【0079】
[感度評価]
リソグラフィー用共重合体A−1〜4、B−1〜2をそれぞれ用いてリソグラフィー用のレジスト組成物を調製し、これを用いてドライリソグラフィーを行ったときの感度を以下の方法で測定した。
(レジスト組成物の調製)
下記の配合成分を混合してレジスト組成物を得た。
レジスト用共重合体:10部、
光酸発生剤(みどり化学(株)社製、製品名:TPS−105、トリフェニルスルホニウムトリフレート):0.2部、
レベリング剤(日本ユニカー(株)社製、製品名:L−7001):0.2部、
溶媒(PGMEA):90部。
【0080】
(ドライリソグラフィー)
上記で得たレジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えて18ショットの露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−790)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像し、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。各露光量ごとに、初期膜厚に対する、60秒間現像した時点での残存膜厚の割合(以下、残膜率という。単位:%)を求めた。
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm)の対数と、残膜率(%)との関係をプロットした曲線(以下、露光量残膜率曲線という)を作成し、前記露光量残膜率曲線が残膜率=0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)(以下、Ethという)の値を求めた。Ethとは、残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。Ethが小さいほど感度が高い。結果を表8、表9に示す。
【0081】
[溶解性評価]
リソグラフィー用共重合体D−1〜2をそれぞれ用いて溶解性評価用の溶液を調製し、溶液の温度は常温(25℃)とした。紫外可視分光光度計として、島津製作所社製、UV−3100PC(製品名)を用い、光路長10mmの石英製角型セルに測定用溶液を入れ、波長450nmにおける透過率(濁度)を測定する方法で、溶解性評価を行った。前記透過率が高い(濁度が低い)ほど溶解性が良好であり、基材上に塗膜した際の面内におけるリソグラフィー性能のばらつき低減に結びつく。結果を表10に示す。
(溶解性評価用の溶液調製)
下記の配合成分を混合して評価用溶液を得た。
リソグラフィー用共重合体:2.5部、
溶媒1(PGME):100部、
溶媒2(IPE):16部。
【0082】
(参考例1)
【表8】

【0083】
(参考例2)
【表9】

【0084】
(参考例3)
【表10】

【0085】
表8(参考例1)に示すとおり、上記共重合体A−1〜4は、同等の組成・分子量の共重合体であって、重合方法が異なる共重合体同士である。これらは重合方法の違いにより、共重合体における組成比の均一性等に差異を有する。
同様に、表9(参考例1)に示すとおり、上記共重合体B−1〜2は同等の組成・分子量共重合体であって、重合方法が異なる共重合体同士である。これらは重合方法の違いにより、共重合体における組成比の均一性等に差異を有する。
同様に、表10(参考例3)に示すとおり、上記共重合体C−1〜2は同等の組成・分子量の共重合体であって、重合方法が異なる共重合体同士である。これらは重合方法の違いにより、共重合体における組成比の均一性等に差異を有する。
なお、上記濁度評価では、貧溶媒の添加量が多いほど、共重合体における組成比が均一性等を有することを示す。
上記表4〜7(実施例1〜4)に示すとおり、上記共重合体同士の比較において、これらの本発明の評価法である曇点評価結果は、表8〜10(参考例1〜3)に示した現像欠陥やLERと関連性のあるEth、または溶解性に関連のある透過率に相関関係が示され、間接的にリソグラフィー特性を評価することができることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含むリソグラフィー用共重合体の評価方法:
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)前記試験溶液の濁度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加する工程;
(4)貧溶媒添加後の試験溶液の濁度を測定する工程;
(5)前記貧溶媒の添加によって、前記試験溶液の濁度が、所定の濁度に変化するまでの貧溶媒添加量を求める工程;
(6)前記工程(5)において求められる貧溶媒添加量により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。

【公開番号】特開2012−68471(P2012−68471A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213851(P2010−213851)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】