説明

リソース提供システム、リソース提供方法および仮想化装置

【課題】複数台の仮想化装置のコンピュータリソースを提供するコンピュータリソース提供システムにおけるコンピュータリソースの利用効率を上げる。
【解決手段】複数のリソース提供装置が、自装置の配下として対応付けられた複数の仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報を記憶し、配下の仮想化装置から負荷状況値を収集して記憶し、仮想化装置から仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると配下仮想化装置識別情報として記憶し、ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて配下の仮想化装置にコンピュータリソースを提供させ、仮想化装置が、複数のリソース提供装置からそのリソース提供装置の配下の仮想化装置の負荷状況値を収集し、収集した負荷状況値の比較結果に基づいて、複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定して追加要求を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じてコンピュータリソースの提供を行なうリソース提供システム、リソース提供方法および仮想化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ装置のプロセッサやメモリ、ディスクなどのコンピュータリソースを仮想化し、1台の物理マシンに複数の仮想マシンを起動させる仮想化技術が研究されている。また、このような仮想化機能を備える複数の仮想化装置を用意し、ネットワークを介してユーザ端末から送信されるリソース提供要求に応じて仮想化装置に仮想マシンを起動させ、ユーザ端末に利用可能に提供するリソース提供システムが研究されている。このようなリソース提供システムによって提供されるクラウドサービスなどとも呼ばれるリソース提供サービスによれば、コンピュータのハードウェアやソフトウェアを買い取りやリースではなく従量制の課金により利用したり、必要な時に必要なだけ利用したりすることが可能である。
このようなリソース提供システムは、データセンタ等に大量に用意された物理マシンのコンピュータリソースを、インターネットを介して広く公開して提供するいわゆるパブリッククラウドが一般的であった。これに加えて、近年ではこのようなクラウドを特定の企業等の組織内等の閉じられた環境内におけるコンピュータシステムに適用するいわゆるプライベートクラウドが研究されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「クラウド大全 サービス詳細から基盤技術まで」、日経BP社、2009年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リソース提供システムの提供者は、ユーザ端末からのリソース提供要求に応じてコンピュータリソースを即時に提供するために、要求されるコンピュータリソース量が最大となる時に合わせた規模のコンピュータリソースを予め用意しておく必要がある。ただし、要求されるコンピュータリソース量には、時間帯や曜日、季節などに応じた揺らぎがあると考えられる。このため、サービスを提供する事業者が、要求されるコンピュータリソース量が最大となる時に合わせた規模のコンピュータリソースを用意すると、提供要求量の少ない期間にはコンピュータリソースの余剰が発生することとなりコンピュータリソースを有効に利用できない。特に大規模なプライベートクラウドを構築する場合、クラウド内の物理マシンを複数のクラスタに分割し、クラスタ毎に異なる組織等に利用させることが考えられる。このとき、複数のクラスタのそれぞれについて予め一定台数の仮想化装置を用意することになるため、パブリッククラウドのように全体として大量の仮想化装置を用意する場合と比べて、提供要求に応じたコンピュータリソース量に過不足が発生することが多くなる可能性があると考えられる。ここで、限られた範囲のユーザにコンピュータリソースを提供する複数のリソース提供システムにおいても、コンピュータリソースの利用効率を上げ、ユーザからのリソース提供要求に応じて即時にコンピュータリソースを提供する安定したリソース提供システムを提供することが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、コンピュータリソースの利用効率を上げ、ユーザからのリソース提供要求に応じて即時にコンピュータリソースを提供する安定したリソース提供システム、リソース提供方法および仮想化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、ネットワークを介して接続されたユーザ端末に、仮想化した自装置のコンピュータリソースを提供する複数の仮想化装置と、ネットワークを介して複数の仮想化装置に接続された複数のリソース提供装置とを備えたリソース提供システムであって、リソース提供装置は、複数の仮想化装置のうち自装置の配下として対応付けられた複数の仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報が記憶される配下仮想化装置情報記憶部と、配下仮想化装置識別情報によって識別される複数の仮想化装置の負荷状況を示す負荷状況値が記憶される負荷状況値記憶部と、配下仮想化装置識別情報によって識別される仮想化装置から、仮想化装置の負荷状況値を収集して負荷状況値記憶部に記憶させる第1の負荷状況値収集部と、仮想化装置から仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると、識別情報を配下仮想化装置識別情報として配下仮想化装置情報記憶部に記憶させる配下仮想化装置更新部と、ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、配下仮想化装置情報記憶部に記憶された配下仮想化装置識別情報によって識別される仮想化装置にコンピュータリソースを提供させる仮想化装置判定部と、を備え、仮想化装置は、複数のリソース提供装置から、リソース提供装置の配下負荷状況値記憶部に記憶された負荷状況値を収集する第2の負荷状況値収集部と、第2の負荷状況値収集部によって収集された複数のリソース提供装置毎の負荷状況値を比較した比較結果に基づいて、複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定する帰属リソース提供装置判定部と、帰属リソース提供装置判定部によって自装置を帰属させると判定したリソース提供装置に、自装置の識別情報が含まれる追加要求を送信する追加要求送信部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、ネットワークを介して接続された複数の仮想化装置には、リソース提供装置に追加要求を送信することによって自装置の帰属するリソース提供装置を変更する遊撃仮想化装置と、追加要求を送信せずに自装置の帰属するリソース提供装置を変更しない専属仮想化装置とが含まれ、リソース提供装置の配下仮想化装置情報記憶部には、ユーザ端末に対して提供することが定められたコンピュータリソースの量に応じた専属仮想化装置を識別する専属配下仮想化装置識別情報と、追加要求を送信した遊撃仮想化装置を識別する遊撃配下仮想化装置識別情報とが記憶されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、リソース提供装置の仮想化装置判定部が、ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、配下仮想化装置情報記憶部に記憶された配下仮想化装置識別情報のうち、遊撃配下仮想化装置識別情報よりも専属配下仮想化装置識別情報を優先的に選択して、選択した配下仮想化装置識別情報によって識別される仮想化装置にコンピュータリソースを提供させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、仮想化装置の追加要求送信部が、定められた条件が満たされる場合に、追加要求を送信することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、仮想化装置の第2の負荷状況値収集部が、複数回に亘って複数のリソース提供装置から負荷状況値を収集し、帰属リソース提供装置判定部は、第2の負荷状況値収集部によって収集された複数の負荷状況値の遷移状況に応じて、複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、ネットワークを介して接続されたユーザ端末に、仮想化した自装置のコンピュータリソースを提供する複数の仮想化装置であって、複数の仮想化装置のうち自装置の配下として対応付けられた複数の仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報が記憶される配下仮想化装置情報記憶部と、配下仮想化装置識別情報によって識別される複数の仮想化装置の負荷状況を示す負荷状況値が記憶される負荷状況値記憶部とを備える仮想化装置と、ネットワークを介して複数の仮想化装置に接続された複数のリソース提供装置とを備えたリソース提供システムのリソース提供方法であって、リソース提供装置が、配下仮想化装置識別情報によって識別される仮想化装置から、仮想化装置の負荷状況値を収集して負荷状況値記憶部に記憶させるステップと、仮想化装置が、複数のリソース提供装置から、リソース提供装置の配下負荷状況値記憶部に記憶された負荷状況値を収集するステップと、収集した複数のリソース提供装置毎の負荷状況値を比較した比較結果に基づいて、複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定するステップと、帰属リソース提供装置判定部によって自装置を帰属させると判定したリソース提供装置に、自装置の識別情報が含まれる追加要求を送信するステップと、リソース提供装置が、仮想化装置から仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると、識別情報を配下仮想化装置識別情報として配下仮想化装置情報記憶部に記憶させるステップと、ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、配下仮想化装置情報記憶部に記憶された配下仮想化装置識別情報によって識別される仮想化装置にコンピュータリソースを提供させるステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、ネットワークを介して接続されたユーザ端末に、仮想化した自装置のコンピュータリソースを提供する複数の仮想化装置と、ネットワークを介して複数の仮想化装置に接続された複数のリソース提供装置であって、複数の仮想化装置のうち自装置の配下として対応付けられた複数の仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報が記憶される配下仮想化装置情報記憶部と、配下仮想化装置識別情報によって識別される複数の仮想化装置の負荷状況を示す負荷状況値が記憶される負荷状況値記憶部と、配下仮想化装置識別情報によって識別される仮想化装置から、仮想化装置の負荷状況値を収集して負荷状況値記憶部に記憶させる第1の負荷状況値収集部と、仮想化装置から仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると、識別情報を配下仮想化装置識別情報として配下仮想化装置情報記憶部に記憶させる配下仮想化装置更新部と、ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、配下仮想化装置情報記憶部に記憶された配下仮想化装置識別情報によって識別される仮想化装置にコンピュータリソースを提供させる仮想化装置判定部と、を有するリソース提供装置とを備えたリソース提供システムにおける仮想化装置であって、複数のリソース提供装置から、リソース提供装置の配下負荷状況値記憶部に記憶された負荷状況値を収集する第2の負荷状況値収集部と、第2の負荷状況値収集部によって収集された複数のリソース提供装置毎の負荷状況値を比較した比較結果に基づいて、複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定する帰属リソース提供装置判定部と、帰属リソース提供装置判定部によって自装置を帰属させると判定したリソース提供装置に、自装置の識別情報が含まれる追加要求を送信する追加要求送信部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、複数のリソース提供装置が、自装置の配下として対応付けられた複数の仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報を記憶し、配下の仮想化装置から負荷状況値を収集して記憶し、仮想化装置から仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると配下仮想化装置識別情報として記憶し、ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて配下の仮想化装置にコンピュータリソースを提供させ、仮想化装置が、複数のリソース提供装置からそのリソース提供装置の配下の仮想化装置の負荷状況値を収集し、収集した負荷状況値の比較結果に基づいて、複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定して追加要求を送信するようにしたので、コンピュータリソースの利用効率を上げ、ユーザからのリソース提供要求に応じて即時にコンピュータリソースを提供する安定したリソース提供システムを提供することが可能となる。例えば、リソース提供システムによりプライベートクラウドを提供する場合、仮想化装置が、自身の帰属するクラスタを負荷状況に応じて判定して変更することができるため、負荷状況に応じてクラスタ間でのコンピュータリソースを融通させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態によるリソース提供システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるクラスタコントローラのノードコントローラ記憶部に記憶されるノードコントローラ情報の項目例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態によるクラスタコントローラのインスタンス記憶部に記憶されるインスタンス情報の項目例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるクラスタコントローラのリソース状況記憶部に記憶されるリソース状況情報の項目例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態によるクラスタコントローラのノードコントローラ記憶部に記憶されるノードコントローラ情報のデータ例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるノードコントローラの構成例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態によるノードコントローラが記憶するインスタンス情報のデータ例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態によるノードコントローラが記憶するリソース状況情報のデータ例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態によるノードコントローラが記憶するクラスタコントローラ情報のデータ例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態によるノードコントローラのリソース状況収集部423が一定時間毎に収集するリソース状況情報の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態によるノードコントローラが記憶する自装置が帰属するクラスタコントローラ情報のデータ例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態によるリソース提供システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるリソース提供システム1の構成を示すブロック図である。リソース提供システム1は、ユーザ端末100と、クラウドコントローラ200と、複数台のクラスタコントローラ300−N(クラスタコントローラ300−1、クラスタコントローラ300−2、・・・)と、複数台のノードコントローラ400(専属ノードコントローラ410−1、専属ノードコントローラ410−2、専属ノードコントローラ410−3、専属ノードコントローラ410−4、・・・、遊撃ノードコントローラ420−1、遊撃ノードコントローラ420−2、・・・)とのコンピュータ装置を備えている。これらのコンピュータ装置はネットワークを介して接続される。ここで、複数台のノードコントローラ400は自身のコンピュータリソースを仮想化してユーザ端末100に提供する機能を備えており、特に専属ノードコントローラ410−Nと遊撃ノードコントローラ420−Nとを区別する必要のない場合にはノードコントローラ400として説明する。
【0016】
ここで、複数のクラスタコントローラ300−Nは同様の構成であり、特に区別の必要がない場合にはクラスタコントローラ300として説明する。クラスタコントローラ300は、複数のノードコントローラ400のうち自装置に帰属するノードコントローラ400を配下のノードコントローラ400として管理する。すなわち、ノードコントローラ400は自装置を配下とするひとつのクラスタコントローラ300に帰属し、ひとつのクラスタコントローラ300は自装置に帰属する複数のノードコントローラ400を配下に持つ。ここでは、クラスタコントローラ300−1によって管理されるクラスタをクラスタAとし、クラスタコントローラ300−2によって管理されるクラスタをクラスタBとする。例えば、ノードコントローラ400が、クラスタAのクラスタコントローラ300−1からのコンピュータリソースの提供要求(インスタンスの起動要求)に応じてコンピュータリソースを提供するとき、そのノードコントローラ400はクラスタコントローラ300−1(クラスタA)に帰属している。具体的には、後述するように、ノードコントローラ400は自身が帰属するクラスタコントローラ300のIDを自身の記憶領域に記憶し、クラスタコントローラ300は自身に帰属するノードコントローラ400のIDを自身の記憶領域に記憶する。
【0017】
ノードコントローラ400は、ネットワークを介して接続されたユーザ端末100に、仮想化した自装置のコンピュータリソースを提供するコンピュータ装置である。複数のノードコントローラ400は、リソース提供サービスを提供する単位であるクラスタ毎に分割され、複数のクラスタコントローラ300のうちいずれかのクラスタコントローラ300に帰属する。ここで、ネットワークを介して接続された複数のノードコントローラ400には、クラスタコントローラ300に帰属情報変更要求を送信することによって自装置の帰属するクラスタコントローラ300を変更する遊撃ノードコントローラ420−Nと、帰属情報変更要求を送信せずに自装置の帰属するクラスタコントローラ300を変更しない専属ノードコントローラ410−Nとが含まれる。複数台の専属ノードコントローラ410−Nは同様の構成であり、特に区別の必要がない場合には専属ノードコントローラ410として説明する。同様に、複数台の遊撃ノードコントローラ420−Nは同様の構成であり、特に区別の必要がない場合には遊撃ノードコントローラ420として説明する。ここでは、専属ノードコントローラ410−1と、専属ノードコントローラ410−2と、遊撃ノードコントローラ420−1とがクラスタAに帰属し、専属ノードコントローラ410−3と、専属ノードコントローラ410−4と、遊撃ノードコントローラ420−2とがクラスタBに帰属するとして説明する。
【0018】
ユーザ端末100は、クラウドコントローラ200にコンピュータリソースの提供要求を送信し、送信した提供要求に応じて提供されるコンピュータリソースを利用するコンピュータ端末である。ユーザ端末100は、例えばインターネットブラウザの機能を備えており、予め定められたURL(Uniform Resource Locator)に基づいて、クラウドコントローラ200によって提供されるウェブサイトに接続する。ユーザ端末100は、クラウドコントローラ200にコンピュータリソースの提供要求を送信し、コンピュータリソースの提供元であるノードコントローラ400において起動されたインスタンスのIP(Internet Protocol)アドレスをクラウドコントローラ200から受信する。ユーザ端末100は、受信したIPアドレスに基づいてノードコントローラ400に接続し、ノードコントローラ400のコンピュータリソースを利用する。ここで、インスタンスとは、ノードコントローラ400のCPU、メモリ、ディスクなどの物理的なハードウェアリソースを仮想化して特定の単位として切り出した仮想的なコンピュータリソースであるスロット上に起動された仮想マシンである。
【0019】
クラウドコントローラ200は、ユーザ端末100からリソース提供サービスへのインタフェースであるウェブサイトを提供し、ユーザ端末100から送信されるコンピュータリソースの提供要求を受信する。クラウドコントローラ200は、受信した提供要求に応じたクラスタコントローラ300に、コンピュータリソースの提供要求を送信する。例えば、クラウドコントローラ200は、コンピュータリソースを提供するユーザ端末100に対応するユーザアカウントを自身の記憶領域に予め記憶しておく。また、ユーザアカウント毎にコンピュータリソースを提供するクラスタコントローラ300を対応付けて記憶しておく。クラウドコントローラ200は、ユーザ端末100からコンピュータリソースの提供要求を受信すると、提供要求を送信したユーザ端末100に対応するクラスタを管理するクラスタコントローラ300に、コンピュータリソースの提供要求を送信する。また、クラウドコントローラ200には、ノードコントローラ400に起動される仮想マシンのイメージファイルが記憶されている。
【0020】
クラスタコントローラ300は、ネットワークを介して複数のノードコントローラ400に接続され、自身の配下のノードコントローラ400の動作を制御するコンピュータ装置である。クラスタコントローラ300は、ノードコントローラ記憶部310と、インスタンス記憶部320と、リソース状況記憶部330と、リソース状況収集部340と、ノードコントローラ情報更新部350と、ノードコントローラ判定部360とを備えている。
【0021】
ノードコントローラ記憶部310には、ネットワークを介して接続された複数のノードコントローラ400のうち、自装置の配下として対応付けられた複数のノードコントローラ400を識別するノードコントローラIDが含まれるノードコントローラ情報が記憶される。ここで、ノードコントローラ記憶部310に記憶されるノードコントローラ情報には、ユーザ端末100に対して提供することが定められたコンピュータリソースの量に応じた専属ノードコントローラ410を識別するノードコントローラIDと、自身に帰属する遊撃ノードコントローラ420を識別するノードコントローラIDとが含まれる。また、ノードコントローラ記憶部310には、ノードコントローラIDによって識別される複数のノードコントローラ400のリソース状況を示すリソース状況情報が記憶される。
【0022】
図2は、ノードコントローラ記憶部310に記憶されるノードコントローラ情報の項目例を示す図である。ここでは、ノードコントローラIDと、ノードコントローラのIPアドレスと、ノードコントローラのメモリ容量と、ノードコントローラの空きメモリ容量と、ノードコントローラのディスク容量と、ノードコントローラの空きディスク容量と、ノードコントローラのCPU数と、ノードコントローラの空きCPU数と、そのノードコントローラが遊撃ノードコントローラ420であるか否か(専属ノードコントローラ410であるか)を示す真偽値(フラグ)とが対応付けられて記憶される。ここで、ノードコントローラの空きメモリ容量と、ノードコントローラの空きディスク容量と、ノードコントローラの空きCPU数とのリソース状況情報は、リソース状況収集部340によって取得されて記憶される。遊撃ノードコントローラ420であるか否かを示すフラグは、例えば値が「0」であれば対応するノードコントローラが専属ノードコントローラ410であることを示し、値が「1」であれば対応するノードコントローラが遊撃ノードコントローラ420であることを示す。
【0023】
インスタンス記憶部320には、自装置の配下のノードコントローラ400において起動しているインスタンスに関するインスタンス情報が記憶される。図3は、インスタンス情報の項目例を示す図である。インスタンス情報には、インスタンスIDと、インスタンスを動作させているノードコントローラのノードコントローラIDと、インスタンスに割り当てられているメモリ容量と、インスタンスに割り当てられているディスク容量と、インスタンスに割り当てられているCPU数とが対応付けられて記憶される。
【0024】
リソース状況記憶部330には、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたノードコントローラIDによって識別される複数のノードコントローラ400のリソース状況の合計値が含まれるリソース状況情報が記憶される。図4は、リソース状況情報の項目例を示す図である。リソース状況情報には、クラスタ全体のメモリ総量と、クラスタ全体の空きメモリ総量と、クラスタ全体のディスク総量と、クラスタ全体の空きディスク総量と、クラスタ全体のCPU総数と、クラスタ全体の空きCPU総数とが対応付けられて記憶される。リソース状況情報は、ノードコントローラ記憶部310に記憶されているリソース状況情報に基づいてリソース状況収集部340によって生成され、記憶される。ここで、コンピュータリソースの空き容量は、予め定められたコンピュータリソース量に応じたスロットを単位として記憶されるようにしても良い。例えば、メモリ容量1GB、ディスク容量20GB、CPU数1のコンピュータリソース量を1スロットとして、スロット単位でコンピュータリソースの空き容量が記憶されるようにしても良い。
【0025】
リソース状況収集部340は、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたノードコントローラIDによって識別されるノードコントローラ400から、そのノードコントローラ400のリソース状況情報を収集して、ノードコントローラ記憶部310およびリソース状況記憶部330に記憶させる。リソース状況収集部340は、例えばSOAP(Simple Object Access Protocol)通信やSNMP(Simple Network Management Protocol)通信などにより、定期的にリソース状況情報を取得する。ここで、リソース状況収集部340は、自身の配下であるノードコントローラ400のそれぞれから、メモリ容量と、空きメモリ容量と、ディスク容量と、空きディスク容量と、CPU数と、空きCPU数とのコンピュータリソース状況情報を受信して、ノードコントローラ記憶部310に記憶させる。また、リソース状況収集部340は、自身の配下の全てのノードコントローラ400からコンピュータリソース状況情報を収集した後に、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたコンピュータリソース状況情報の各値の合計値を算出し、リソース状況記憶部330に記憶させる。
【0026】
ノードコントローラ情報更新部350は、遊撃ノードコントローラ420から送信される帰属情報変更要求に応じて、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたノードコントローラ情報を更新して記憶させる。例えば、ノードコントローラ情報更新部350は、遊撃ノードコントローラ420からその遊撃ノードコントローラ420のノードコントローラIDが含まれる追加要求が送信されると、受信したノードコントローラIDに対応するノードコントローラ情報をノードコントローラ記憶部310に追加して記憶させる。また、ノードコントローラ情報更新部350は、遊撃ノードコントローラ420からその遊撃ノードコントローラ420のノードコントローラIDが含まれる削除要求が送信されると、受信したノードコントローラIDに対応するノードコントローラ情報をノードコントローラ記憶部310から削除する。これにより、帰属情報変更要求を送信したノードコントローラの帰属先のクラスタコントローラ300が変更される。
【0027】
ノードコントローラ判定部360は、ユーザ端末100から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたノードコントローラIDによって識別されるノードコントローラ400にコンピュータリソース提供要求を送信し、ユーザ端末100にコンピュータリソースを提供させる。ここで、ノードコントローラ判定部360は、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたノードコントローラ400のリソース状況情報を参照して、要求された量のコンピュータリソースが提供可能なノードコントローラ400を抽出する。また、ノードコントローラ判定部360は、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたノードコントローラIDのうち、遊撃ノードコントローラ420を示すノードコントローラIDよりも専属ノードコントローラ410を示すノードコントローラIDを優先的に選択して、選択したノードコントローラIDによって識別されるノードコントローラ400にコンピュータリソースを提供させる。
【0028】
例えば、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたノードコントローラ情報が、図5に示すように記憶されているとする。ここで、メモリ1G、ディスク容量20G、CPU数1(1スロット)のコンピュータリソースの提供要求がユーザ端末100から送信されたとする。ノードコントローラ判定部360は、コンピュータリソースの提供要求に含まれるコンピュータリソースの要求量と、ノードコントローラ記憶部310に記憶されたリソース状況情報を比較して、専属ノードコントローラ410−2または遊撃ノードコントローラ420−1によって提供要求量に応じたコンピュータリソースを提供可能であると判定する。ノードコントローラ記憶部310は、フラグを参照して、専属ノードである専属ノードコントローラ410−2のノードコントローラIDを優先的に選択する。このように、ノードコントローラ判定部360は、遊撃ノードコントローラよりも専属ノードコントローラを優先的に選択してコンピュータリソースを提供することで、遊撃ノードコントローラ420の稼働を減らし、クラスタを移動しやすい状態に保つことができる。すなわち、遊撃ノードコントローラ420が帰属するクラスタとは異なるクラスタにおけるリソースが不足してきた場合に、自身のコンピュータリソース上に動作するインスタンスを他のノードコントローラ400に移動させて、その異なるクラスタに帰属先を変更する可能性を高めることができる。
【0029】
専属ノードコントローラ410は、定められたクラスタに固定して帰属するノードコントローラ400である。ここでは、専属ノードコントローラ410と遊撃ノードコントローラ420とが同様に持つ機能部について、図6に示すノードコントローラ400を参照して説明する。ノードコントローラ400は、自身のコンピュータリソースを仮想化してユーザ端末100に提供するコンピュータ装置である。ノードコントローラ400は、ノード管理部401と、仮想化部402と、コンピュータリソース404とを備える。ノード管理部401は、クラスタコントローラ300や他のノードコントローラ400が備えるノード管理部401と通信を行い、ノードコントローラ400によるコンピュータリソースの提供を制御する。仮想化部402は、コンピュータリソース404を仮想化し、仮想化したコンピュータリソース上にインスタンス403(仮想マシン)を起動させる。ここで、仮想化部402は、予め定められたコンピュータリソースの量に応じた複数のスロットの区画をコンピュータリソース404上に定め、スロット単位でインスタンスを起動させるようにしても良い。
【0030】
ここで、ノード管理部401は、自装置のコンピュータリソース404の利用状況を測定してリソース状況情報を自身の記憶領域に記憶させる。図7と図8は、ノード管理部401が自身の記憶領域に記憶させる情報の項目例を示す図である。図7に示すように、ノード管理部401は、自装置のコンピュータリソース404上に起動されたインスタンスを識別するインスタンスIDを記憶する。また、図8に示すように、ノード管理部401は、自装置のコンピュータリソース404のリソース状況情報を記憶する。リソース状況情報には、自装置のメモリ容量と、自装置の空きメモリ容量と、自装置のディスク容量と、自装置の空きディスク容量と、自装置のCPU数と、自装置の空きCPU数とが対応付けられて記憶される。また、ノード管理部401は、他のノードコントローラ400のノード管理部401と通信を行うことによって、自装置のコンピュータリソース404に起動された複数のインスタンス403を、他のノードコントローラ400に移動させる機能(ライブマイグレーション)を有する。
【0031】
図1に戻り、専属ノードコントローラ410は、ノード管理部411と、仮想化部412とを備えている。ノード管理部411と仮想化部412とは、ノードコントローラ400が備える上述の同名の機能部に対応する。専属ノードコントローラ410は、遊撃ノードコントローラ420が備えるリソース状況収集部423〜帰属情報変更要求部425の機能部を備えても良いが、これらを動作させて自身の帰属先のクラスタコントローラ300を変更させることがない。これに対し、遊撃ノードコントローラ420は、クラスタコントローラ300のリソース状況に合わせて自身が帰属するクラスタコントローラ300を変更する。すなわち、リソース提供システム1によるリソース提供サービスの提供者は、ユーザとのSLA(Service Level Agreement)などの契約に基づいて定められたコンピュータリソース量に応じた量の専属ノードコントローラ410を、クラスタコントローラ300に帰属させる。このような専属ノードコントローラ410により、特定のクラスタコントローラ300の配下に常に一定以上のコンピュータリソースを保つことができる。
【0032】
遊撃ノードコントローラ420は、クラスタコントローラ300に帰属情報変更要求を送信することによって自装置の帰属するクラスタコントローラ300を変更するノードコントローラ400である。遊撃ノードコントローラ420は、ノード管理部421と、仮想化部422と、リソース状況収集部423と、帰属クラスタ判定部424と、帰属情報変更要求部425とを備えている。ノード管理部421と仮想化部422とは、専属ノードコントローラ410が備える上述の同名の機能部と同様の構成である。
【0033】
リソース状況収集部423は、複数のクラスタコントローラ300から、そのクラスタコントローラ300のリソース状況記憶部330に記憶されたリソース状況情報を収集し、自身の記憶領域に記憶する。ここで、リソース状況収集部423は、図9に示すような、自身が帰属する親となりうるクラスタコントローラ300の一覧を自身の記憶領域に予め記憶している。リソース状況収集部423は、このような一覧に含まれるクラスタコントローラ300のリソース状況記憶部330に記憶されているリソース状況情報を収集して自身の記憶領域に記憶する。また、リソース状況収集部423は、複数回に亘ってクラスタコントローラ300からリソース状況情報を収集して記憶するようにしても良い。例えば、リソース状況収集部423は、定められた一定時間毎にクラスタコントローラ300からリソース状況情報を収集し、一定時間毎のリソース状況情報を履歴として記憶する。これにより、帰属クラスタ判定部424は、リソース状況の遷移に応じて帰属クラスタを判定することが可能となる。
【0034】
帰属クラスタ判定部424は、リソース状況収集部423によって収集された複数のクラスタコントローラ300毎のリソース状況情報を比較し、比較結果に基づいて、複数のクラスタコントローラ300のうちいずれのクラスタコントローラ300に自装置を帰属させるかを判定する。例えば、帰属クラスタ判定部424は、複数のクラスタコントローラ300のリソース状況情報を比較して、空き容量がより少ないクラスタコントローラ300に自装置を帰属させると判定する。
【0035】
ここで、帰属クラスタ判定部424は、リソース状況収集部423によって複数のリソース状況情報が収集されていれば、複数のリソース状況情報の遷移状況に応じて、複数のクラスタコントローラ300のうちいずれのクラスタコントローラ300に自装置を帰属させるかを判定するようにしても良い。図10は、リソース状況収集部423によってt1、t2、t3、t4の時点でそれぞれ収集されたリソースの空き状況の例を示す図である。クラスタAのリソース空き状況は概ね変化がないことに対し、クラスタBのリソース空き状況は減少している。帰属クラスタ判定部424は、このようなリソース状況の変化の傾きを算出し、次の計測時点ではクラスタBのリソース空き状況がクラスタAのリソース空き状況を下回ると判定すると、クラスタBに自装置を帰属させると判定する。また、帰属クラスタ判定部424は、自装置のコンピュータリソースにおけるメモリ、ディスク、CPUの種別と、クラスタ毎に不足しているコンピュータリソースの種別とに応じて帰属先のクラスタを判定するようにしても良い。例えば、自装置のCPUが他のノードコントローラのCPUに比べて性能の良い(周波数の高い)CPUを有している場合には、CPUが不足しているクラスタを優先的に選択して帰属先のクラスタであると判定するようにしても良い。
【0036】
帰属情報変更要求部425は、クラスタコントローラ300に、自装置の帰属先の変更を要求する帰属情報変更要求を送信する。帰属情報変更要求には、例えば、自装置のノードコントローラIDを含んだ追加要求と削除要求とが存在する。帰属情報変更要求部425は、自装置が帰属するクラスタコントローラ300を変更する場合には、まず自身が帰属するクラスタコントローラ300に対して、自身の帰属を削除する削除要求を送信する。一方、帰属情報変更要求部425は、帰属クラスタ判定部424によって自装置を帰属させると判定したクラスタコントローラ300に、自装置を帰属させて配下とすることを要求する追加要求を送信する。ここで、帰属情報変更要求部425は、自身の記憶領域に、図11に示されるような自身が帰属するクラスタコントローラ300のIDを記憶する。
【0037】
ここで、帰属情報変更要求部425は、一定期間毎にリソース状況収集部423によって収集されたリソース状況情報に基づいて帰属クラスタ判定部424に判定された判定結果に応じて帰属先変更要求を送信しても良いし、定められた他の条件が満たされる場合に帰属先変更要求を送信するようにして良い。例えば、ノード管理部421に記憶されている自装置のリソース状況情報を参照して、自装置のコンピュータリソースに一定以上の空き容量が発生した場合に、帰属先変更要求を送信して帰属先を変更するようにして良い。
【0038】
次に、本実施形態によるリソース提供システム1の動作例を説明する。図12は、リソース提供システム1における遊撃ノードコントローラ420が自身の帰属先を変更させる動作例を示すシーケンス図である。
ここで、遊撃ノードコントローラ420−1は、初期段階ではクラスタコントローラ300−1(クラスタA)に帰属する。クラスタコントローラ300−1のリソース状況収集部340は、自身の配下である専属ノードコントローラ410−1、(専属ノードコントローラ410−2、)遊撃ノードコントローラ420−1から、リソース状況情報を受信する(ステップS1)。一方、クラスタコントローラ300−2のリソース状況収集部340は、自身の配下である専属ノードコントローラ410−3(、専属ノードコントローラ410−4、遊撃ノードコントローラ420−2)から、リソース状況情報を受信する(ステップS2)。
【0039】
遊撃ノードコントローラ420−1のリソース状況収集部423は、クラスタコントローラ300−1およびクラスタコントローラ300−2から、リソース状況情報を受信する(ステップS3、4)。遊撃ノードコントローラ420の帰属クラスタ判定部424は、クラスタコントローラ300−1のリソース状況情報とクラスタコントローラ300−2のリソース状況情報とを比較し(ステップS5)、比較結果に基づいて自装置の帰属先を判定する(ステップS6)。帰属クラスタ判定部424が、自装置をクラスタBに帰属させると判定すると、帰属情報変更要求部425は、クラスタコントローラ300−1に帰属先の削除要求を送信する(ステップS7)。
【0040】
クラスタコントローラ300−1は、自身が備えるインスタンス記憶部320を参照して、遊撃ノードコントローラ420−1上にインスタンスが存在するか否かを判定する。クラスタコントローラ300−1は、遊撃ノードコントローラ420−1上にインスタンスが存在すると判定した場合、遊撃ノードコントローラ420−1のコンピュータリソース上で動作しているインスタンスの移動先を判定する。クラスタコントローラ300−1が、遊撃ノードコントローラ420−1のコンピュータリソース上で動作しているインスタンスを専属ノードコントローラ410−1に移動させると判定すると、クラスタコントローラ300−1は、遊撃ノードコントローラ420−1に専属ノードコントローラ410−1へのインスタンス移動要求を送信する(ステップS8)。遊撃ノードコントローラ420−1のノード管理部421は、クラスタコントローラ300−1から送信される専属ノードコントローラ410−1へのインスタンス移動要求に応じて、自装置のコンピュータリソースで動作しているインスタンスを専属ノードコントローラ410−1に移動させる(ステップS9)。専属ノードコントローラ410−1は、遊撃ノードコントローラ420−1から移動されたインスタンスを自装置のコンピュータリソース上で動作させる。
【0041】
クラスタコントローラ300−1のノードコントローラ情報更新部350は、ノードコントローラ記憶部310に記憶された遊撃ノードコントローラ420−1のノードコントローラ情報を削除する(ステップS10)。また、クラスタコントローラ300−1は、遊撃ノードコントローラ420−1上で起動されていたインスタンスに対応するインスタンス情報をインスタンス記憶部320から削除する。また、遊撃ノードコントローラ420−1が自身の配下から削除されたことによって減少したコンピュータリソース量を、リソース状況記憶部330に記憶されたリソース状況情報から減算して更新する。遊撃ノードコントローラ420−1の帰属情報変更要求部425は、クラスタコントローラ300−2に対して、自身をクラスタコントローラ300−2の配下に帰属させる追加要求を送信する(ステップS11)。クラスタコントローラ300−2のノードコントローラ情報更新部350は、遊撃ノードコントローラ420−1から送信される追加要求を受信すると、受信した追加要求の送信元である遊撃ノードコントローラ420−1のノードコントローラ情報をノードコントローラ記憶部310に追加して記憶させる(ステップS12)。また、クラスタコントローラ300−2は、遊撃ノードコントローラ420−1上に起動されたインスタンス情報をインスタンス記憶部320に追加する。また、遊撃ノードコントローラ420−1が自身に帰属することによって増加したコンピュータリソース量を、リソース状況記憶部330に記憶されたリソース状況情報に増加させて更新する。これにより、遊撃ノードコントローラ420−1はクラスタコントローラ300−2の配下のノードコントローラとして記憶され、帰属先がクラスタAからクラスタBに変更される。
【0042】
以後、クラスタコントローラ300−2がユーザ端末100からのコンピュータリソース提供要求を受信すると、自身の配下の専属ノードコントローラ410の空きリソースが不足していれば、自身の配下である遊撃ノードコントローラ420−1にインスタンス起動要求を送信する(ステップS14)。遊撃ノードコントローラ420−1は、コンピュータリソース提供要求に応じたイメージファイルをクラウドコントローラ200から読み出し、自身のコンピュータリソース上にインスタンスを起動させる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のリソース提供システム1によれば、特定のクラスタに帰属する専属ノードコントローラ410によってSLA等に応じた一定以上のコンピュータリソースを常に確保する一方、遊撃ノードコントローラ420を、状況に応じて複数のクラスタのいずれかに帰属させることができる。これにより、コンピュータリソースの利用効率を上げ、ユーザからのリソース提供要求に応じて即時にコンピュータリソースを提供する安定したリソース提供サービスを提供することが可能となる。
【0044】
例えば、特定のクラスタに帰属するコンピュータリソースが提供要求に対して不足する場合、従来の技術では、リソース提供サービスの提供者が新たな物理マシンを購入してその特定のクラスタに接続させる必要がある。しかしながら、このような場合に他のクラスタにおいてコンピュータリソースの余剰が発生していることが考えられる。このとき、コンピュータリソースの余剰が存在するクラスタから、コンピュータリソースが不足している他のクラスタにコンピュータリソースの帰属先を変更させることができれば、限られたコンピュータリソースをより効率よく利用することが可能となる。そこで、本実施形態のリソース提供システム1によれば、遊撃ノードコントローラ420の帰属するクラスタを変更することができるため、限られたコンピュータリソースをより効率よく利用することが可能となる。また、実際に提供されるコンピュータリソースを提供するのはノードコントローラ400であり、ノードコントローラ400の帰属先はノードコントローラ400自身が判定している。このため、例えばクラスタコントローラ300によって帰属先が変更される場合に比べて、大規模なシステム変更が不要であり、プライベートクラウド全体としてのシステム保守性を高めることができる。
【0045】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりコンピュータリソースの提供を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0046】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 リソース提供システム
100 ユーザ端末
200 クラウドコントローラ
300 クラスタコントローラ
310 ノードコントローラ記憶部
320 インスタンス記憶部
330 リソース状況記憶部
340 リソース状況収集部
350 ノードコントローラ情報更新部
360 ノードコントローラ判定部
400 ノードコントローラ
401 ノード管理部
402 仮想化部
403 インスタンス
404 コンピュータリソース
410 専属ノードコントローラ
411 ノード管理部
412 仮想化部
420 遊撃ノードコントローラ
421 ノード管理部
422 仮想化部
423 リソース状況収集部
424 帰属クラスタ判定部
425 帰属情報変更要求部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続されたユーザ端末に、仮想化した自装置のコンピュータリソースを提供する複数の仮想化装置と、前記ネットワークを介して当該複数の仮想化装置に接続された複数のリソース提供装置とを備えたリソース提供システムであって、
前記リソース提供装置は、
前記複数の仮想化装置のうち自装置の配下として対応付けられた複数の前記仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報が記憶される配下仮想化装置情報記憶部と、
前記配下仮想化装置識別情報によって識別される複数の前記仮想化装置の負荷状況を示す負荷状況値が記憶される負荷状況値記憶部と、
前記配下仮想化装置識別情報によって識別される前記仮想化装置から、当該仮想化装置の負荷状況値を収集して前記負荷状況値記憶部に記憶させる第1の負荷状況値収集部と、
前記仮想化装置から当該仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると、当該識別情報を前記配下仮想化装置識別情報として前記配下仮想化装置情報記憶部に記憶させる配下仮想化装置更新部と、
前記ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、前記配下仮想化装置情報記憶部に記憶された前記配下仮想化装置識別情報によって識別される前記仮想化装置にコンピュータリソースを提供させる仮想化装置判定部と、を備え、
前記仮想化装置は、
複数の前記リソース提供装置から、当該リソース提供装置の前記配下負荷状況値記憶部に記憶された前記負荷状況値を収集する第2の負荷状況値収集部と、
前記第2の負荷状況値収集部によって収集された前記複数のリソース提供装置毎の前記負荷状況値を比較した比較結果に基づいて、当該複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定する帰属リソース提供装置判定部と、
前記帰属リソース提供装置判定部によって自装置を帰属させると判定した前記リソース提供装置に、自装置の識別情報が含まれる追加要求を送信する追加要求送信部と、を備える
ことを特徴とするリソース提供システム。
【請求項2】
前記ネットワークを介して接続された前記複数の仮想化装置には、前記リソース提供装置に追加要求を送信することによって自装置の帰属する前記リソース提供装置を変更する遊撃仮想化装置と、前記追加要求を送信せずに自装置の帰属する前記リソース提供装置を変更しない専属仮想化装置とが含まれ、
前記リソース提供装置の前記配下仮想化装置情報記憶部には、前記ユーザ端末に対して提供することが定められたコンピュータリソースの量に応じた前記専属仮想化装置を識別する専属配下仮想化装置識別情報と、前記追加要求を送信した前記遊撃仮想化装置を識別する遊撃配下仮想化装置識別情報とが記憶される
ことを特徴とする請求項1に記載のリソース提供システム。
【請求項3】
前記リソース提供装置の前記仮想化装置判定部は、
前記ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、前記配下仮想化装置情報記憶部に記憶された配下仮想化装置識別情報のうち、前記遊撃配下仮想化装置識別情報よりも専属配下仮想化装置識別情報を優先的に選択して、選択した当該配下仮想化装置識別情報によって識別される前記仮想化装置にコンピュータリソースを提供させる
ことを特徴とする請求項2に記載のリソース提供システム。
【請求項4】
前記仮想化装置の追加要求送信部は、
定められた条件が満たされる場合に、前記追加要求を送信する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のリソース提供システム。
【請求項5】
前記仮想化装置の、
前記第2の負荷状況値収集部は、複数回に亘って前記複数のリソース提供装置から前記負荷状況値を収集し、
帰属リソース提供装置判定部は、
前記第2の負荷状況値収集部によって収集された複数の前記負荷状況値の遷移状況に応じて、前記複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のリソース提供システム。
【請求項6】
ネットワークを介して接続されたユーザ端末に、仮想化した自装置のコンピュータリソースを提供する複数の仮想化装置であって、当該複数の仮想化装置のうち自装置の配下として対応付けられた複数の前記仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報が記憶される配下仮想化装置情報記憶部と、前記配下仮想化装置識別情報によって識別される複数の前記仮想化装置の負荷状況を示す負荷状況値が記憶される負荷状況値記憶部とを備える前記仮想化装置と、前記ネットワークを介して当該複数の仮想化装置に接続された複数のリソース提供装置とを備えたリソース提供システムのリソース提供方法であって、
前記リソース提供装置が、
前記配下仮想化装置識別情報によって識別される前記仮想化装置から、当該仮想化装置の負荷状況値を収集して前記負荷状況値記憶部に記憶させるステップと、
前記仮想化装置が、
複数の前記リソース提供装置から、当該リソース提供装置の前記配下負荷状況値記憶部に記憶された前記負荷状況値を収集するステップと、
収集した前記複数のリソース提供装置毎の前記負荷状況値を比較した比較結果に基づいて、当該複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定するステップと、
前記帰属リソース提供装置判定部によって自装置を帰属させると判定した前記リソース提供装置に、自装置の識別情報が含まれる追加要求を送信するステップと、
前記リソース提供装置が、
前記仮想化装置から当該仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると、当該識別情報を前記配下仮想化装置識別情報として前記配下仮想化装置情報記憶部に記憶させるステップと、
前記ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、前記配下仮想化装置情報記憶部に記憶された前記配下仮想化装置識別情報によって識別される前記仮想化装置にコンピュータリソースを提供させるステップと、
を備えることを特徴とするリソース提供方法。
【請求項7】
ネットワークを介して接続されたユーザ端末に、仮想化した自装置のコンピュータリソースを提供する複数の仮想化装置と、前記ネットワークを介して当該複数の仮想化装置に接続された複数のリソース提供装置であって、前記複数の仮想化装置のうち自装置の配下として対応付けられた複数の前記仮想化装置を識別する配下仮想化装置識別情報が記憶される配下仮想化装置情報記憶部と、前記配下仮想化装置識別情報によって識別される複数の前記仮想化装置の負荷状況を示す負荷状況値が記憶される負荷状況値記憶部と、前記配下仮想化装置識別情報によって識別される前記仮想化装置から、当該仮想化装置の負荷状況値を収集して前記負荷状況値記憶部に記憶させる第1の負荷状況値収集部と、前記仮想化装置から当該仮想化装置の識別情報が含まれる追加要求が送信されると、当該識別情報を前記配下仮想化装置識別情報として前記配下仮想化装置情報記憶部に記憶させる配下仮想化装置更新部と、前記ユーザ端末から送信されるコンピュータリソースの提供要求に応じて、前記配下仮想化装置情報記憶部に記憶された前記配下仮想化装置識別情報によって識別される前記仮想化装置にコンピュータリソースを提供させる仮想化装置判定部と、を有する前記リソース提供装置とを備えたリソース提供システムにおける前記仮想化装置であって、
複数の前記リソース提供装置から、当該リソース提供装置の前記配下負荷状況値記憶部に記憶された前記負荷状況値を収集する第2の負荷状況値収集部と、
前記第2の負荷状況値収集部によって収集された前記複数のリソース提供装置毎の前記負荷状況値を比較した比較結果に基づいて、当該複数のリソース提供装置のうちいずれのリソース提供装置に自装置を帰属させるかを判定する帰属リソース提供装置判定部と、
前記帰属リソース提供装置判定部によって自装置を帰属させると判定した前記リソース提供装置に、自装置の識別情報が含まれる追加要求を送信する追加要求送信部と、を備える
ことを特徴とする仮想化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−150480(P2011−150480A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10217(P2010−10217)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)