説明

リチウムの蒸発及びリチウム・ディスペンサのための混合物

リチウム塩類と還元剤の間の混合物を提供し、リチウム塩類がチタン酸塩(Li2TiO3)、タンタル酸塩(LiTaO3)、ニオブ酸塩(LiNbO3)、タングステン酸塩(Li2WO4)、及びジルコン酸塩(Li2ZrO3)の中で選択され、前記還元剤がアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタニウム、又はジルコニウム、若しくはチタニウムの合金中で選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業への応用で要求されるリチウム蒸発で利用される混合物及びこれらの混合物を使用するリチウム・ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムは、電子工学分野で長く利用される。特に、この金属は、感光面、例えば、光増幅器、又は光電子増倍管の製造のために過去に使用された。合金、又は塩類の形態のリチウムの他の重要な用途は、バッテリ要素の形成である。
【0003】
リチウムの応用の新しい分野は、OLED(「有機ELディスプレイ」)スクリーンである。この応用の重要性のために、以下では、特にこのOLEDだけが参照されるが、本発明は更に一般的な適用範囲を有する。
【0004】
要するに、OLEDは、(ガラス、又はプラスチックで作られた)第1の平坦で透明な支持体と、必ずしも透明である必要はなく、ガラス、金属、又はプラスチックで作られ、本質的に平坦であって第1の支持体に対して平行であり、閉じた空間を形成するように周辺に沿って固定される第2の支持体と、前記空間内での結像のための活性構造で形成される。次に、活性構造は、第1のシリーズの透明で直線の互いに平行な電極で構成され、陽極機能を一般に有し、第1の支持体に堆積し、第1のシリーズの電極に体積し、異なる有機EL材料のマルチレイヤは、電子の材料導体の少なくとも1つのレイヤであって、電子空格子点の材料導体の1レイヤ、第1のシリーズの直線で互いに平行な電極に対して垂直で、陰極機能を有し、2つのシリーズの電極の間に含まれるように、有機材料のマルチレイヤの反対側と接触する第2のシリーズの直線の互いに平行な電極を含む。例えば、OLEDスクリーンの構造と動作原理の更に詳細な説明のために、ヨーロッパ特許出願EP-A-845924号、EP-A-949696号、日本特許出願JP-A-9-078058号、米国特許第6,013,384号を参照できる。
【0005】
最近、少量の電子供与体材料をOLED構造に付加することが、スクリーン、及びこれらのエネルギー消費の機能を果たすために2つのシリーズの電極に印加される電位差の減少を可能にすることが分かった。特に、米国特許第6,013,384号は、有機マルチレイヤの1又は複数のレイヤのドーピングのためにこれらの金属を使用することを開示し、米国特許第6,255,774は、陰極と隣接有機レイヤの間に(5ナノメートル未満の)非常に薄いレイヤを形成することを開示する。これらの米国特許を読めば(特に、実施例から)明らかな様に、この目的に特に適している元素はリチウムであって、恐らくその小さな寸法によって、特に薄い連続レイヤの製造、又は有機基質の中の分散を可能にする。
【0006】
大気ガスと湿気に対する高い反応性のために、(任意のアルカリ金属と同様に)一般にリチウムは純金属の形態では工業的に利用されないが、むしろ化合物の形態では、室温において空気中で安定である。最も一般的に使用される化合物は、重クロム酸塩、Li2Cr27、又は、更に一般的には、クロム酸塩、Li2CrO4であり、混合物中では還元剤を有する。これらの混合物を500℃より高い温度で加熱することによって反応が起こり、その反応によって、リチウムを蒸気として解放する結果、更に低い原子価にクロムは還元される。一般に、還元剤として、アルミニウム、ケイ素、又はゲッター合金、即ち、チタニウムベースの、又はジルコニウムベースの合金が、アルミニウム、又は1又は複数の遷移元素と一緒に使用される。これらの混合物の使用は、例えば、米国特許第2,117,735号、及び米国特許第3,578,834号で開示される。一般に、混合物は、固体粒子を保持できるが、例えば、米国特許第3,579,459号、及び米国特許第4,233,936号に示される様なアルカリ金属の蒸気に対して浸透性の表面の少なくとも一部を有する適切なディスペンサの内側で使用される。
【0007】
しかし、アルカリ金属のクロム酸塩、及び重クロム酸塩は、六価クロムを含む短所を有し、六価クロムは接触、嚥下、又は吸入によって炎症を起し、長時間露出した場合に発癌性である。
【0008】
クロム塩の使用を回避するために、例えば、アルミニウムとのリチウム合金の利用が提案されてきた。その種の合金の実施例は、記事「“Simple source of Li metal for evaporators in ultrahigh vacuum (UHV) applications”, by F.J. Esposto et al, published on J. Vac. Sci. Technol., pages 3245-7, Vol. 12, no. 6 of 1994」で与えられる。類似の用途の他の実施例は、日本国特許出願第2004-164992号で与えられる。しかし、これらの合金を採用することは、金属の急な放出を伴う、リチウム蒸発の非常に不規則な特性のために困難であり、これらの合金が工業生産において本質的に使用に適さないようにする。
【0009】
国際特許出願公報 WO 2004/066337 A1, WO 2004/066338 A1 及び WO 2004/066339 A1 は、これらの放出のために、アルカリ金属のタングステン酸塩、モリブデン酸塩、及びバナジウム酸塩を各々記載するが、リチウム塩類について特に記載、又は参照していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の問題点を克服する、リチウム蒸発のための混合物を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、これらの混合物を利用するリチウム・ディスペンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これら、及び他の目的が、リチウム塩類と還元剤の間の混合物を扱い、リチウム塩類がチタン酸塩(Li2TiO3)、タンタル酸塩(LiTaO3)、ニオブ酸塩(LiNbO3)、タングステン酸塩(Li2WO4)、及びジルコン酸塩(Li2ZrO3)の中で選択されることを特徴とする本発明によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明者は、上記の中で選択されたリチウム塩類と1又は複数の還元剤の混合物が、六価クロムの化合物に頼る必要性を除去するだけでなく、産業上の利用に有利な追加特性を有することを見出した。第1に、リチウム蒸発の特徴(特に、速度)は容易に制御でき、再現できる。更に、上記のリチウム塩類はクロム塩類よりも吸湿性が非常に低く、リチウム蒸発の間に湿気も蒸発するリスクを減少させ、リチウム蒸発の間に湿気も蒸発するリスクは、OLEDの機能に対して極めて危険である。引用した塩類の中では、好ましいのはチタン酸塩である。何故ならば、チタン酸塩がリチウムの最も高い重量百分率の含有量を示すものだからであり、発明者によって実施された試験で、この塩類が、蒸発のために僅かなエネルギーを要することが分かったからであり、その上、リチウムチタン酸塩が特に円滑なリチウム蒸発を生じさせ、円滑なリチウム蒸発は容易に制御可能であることが分かったからである。
【0014】
発明者の米国特許第6,753,648号は、セシウムの蒸発のための、本発明の塩類に類似の塩類を記載する。しかし、(特に、減少した寸法、及びCs+に対するイオンLi+の高い分極率による)リチウムとセシウムの間の化学的特性の違いのために、引用された米国特許の教示はリチウムの場合に直接適用できず、例えば、モリブデン酸塩の陰イオンは、アルカリ金属の蒸発のために有用な塩類をセシウムを用いて形成し、一方で、モリブデン酸塩の陰イオンは、リチウムを用いて急な制御不能な蒸発を生じさせ、産業への応用には適さず、これに反して、極度に含水性なので、セシウムチタン酸塩は実際の役に立たず、一方で、リチウムチタン酸塩は、リチウム蒸発のために好ましい塩類であることが判明した。
【0015】
本発明の混合物で利用される還元剤は、クロム酸塩に基づくディスペンサ(例えば、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、又はチタニウム)、又は出願人によってSt101(登録商標)の名称で製造され販売されるジルコニウム、又はチタニウムを含む合金(例えば、Zr84%,Al16%の重量成分百分率の合金)、又は出願人によってSt198(登録商標)の名称で製造され販売されるZr76.5%,Fe23.5%の重量成分を有する合金で利用される既知の成分の1つである。複数の還元剤の混合物を使用することも可能である。
【0016】
リチウムの化合物と還元剤の間の接触を改善するために、これらは粉末形態で利用されることが好ましい。一般に、両方の混合物成分は1mmより小さい粒径を有し、500μmより小さい粒径が好ましく、粒径が10〜125μmの間であることが更に好ましい。一般に、10μmより小さい粒径を有する粉末は、製造における扱い、及びディスペンサの内側に維持することが困難であり、更に、還元剤の場合には、過度に細かい粉末が製造プラントにおける安全上の問題を生じさせ得る。これに反して、混合物の2つの成分の間の接触に示される粒径より大きな粒径を有する粉末は更に悪くなり、リチウム蒸発をもたらす反応が減速する。
【0017】
リチウム塩類と還元剤の間の重量比は、広範囲の中で変化し得る。その種の比率は、10:1と1:10の間であることが好ましい。還元剤に関して過度にリチウム塩類を使用することは、実際的な利点を提供せず、逆に、特に還元剤がゲッター合金(例えば、St101(登録商標)合金)であるとき、リチウム塩類との反応に巻き込まれない一部分が、反応の間に放散されるガスを吸収する効果を有し得るので、混合物中の過剰分は有用であり得る。リチウム塩類と還元剤の間の好ましい重量比は、1:5である。
【0018】
混合物は、ルース粉末の形態で使用できる。しかし、ペレットの形態で使用されることが好ましく、混合物成分の間の接触を更に向上させる利点を有し、容器に装填する操作を容易にする。発明者によって見出された、粉末と比較したペレットの他の利点は、実施例によって更に詳細に記載されるように、ペレットがリチウム蒸発のために更に少ない量のエネルギーを必要とすること、及び混合物のリチウム装填が更に完全に使用されることである。
【0019】
容器は、用途に適合する任意の材料、及び形状で作られる。
【0020】
特に、材料に関する限り、これは処理雰囲気、及びリチウムを分配する混合物に対して、使用中に予測できる任意の温度(1000℃を超え得る)において、更に、使用温度において化学的に不活性であるべきであり、材料形成容器は、例えば、機械的強度、又は形状を変更する実質的な物理的変性を受けるべきではなく、出来るだけ低い値のガス放出を示さなければならない。これらの特徴を有する材料は、例えば、金属、合金、セラミック、又はグラファイトである。更に容易な加工性、及び成形性のために、金属、及び合金を利用することが好ましい。金属、及び合金を使用する他の利点は、容器壁を通して単に電流を流すことによってリチウム蒸発の温度でディスペンサが加熱できることである。容器を作るために好ましい金属、及び合金は、モリブデン、タンタル、タングステン、ニッケル、鋼鉄、及びニッケル−クロム、又はニッケル−クロム−鉄合金である。
【0021】
容器の形状は、米国特許第3,578,834号、米国特許第3,579,459号、米国特許第3,598,384号、米国特許第3,636,302号、米国特許第3,663,121号、米国特許第4,233,936号、及び米国特許第6,753,648号で既知の任意の形状であり得る。また、種々の形状、及び材料の容器も、例えば、 Austrian company Plansee 又は US company Midwest Tungsten Service によって取り引きされる。本発明のディスペンサの第1の可能な形状が、図1に示される。ディスペンサ10は、内側に本発明の混合物を有する容器を含む。容器は上部11、及び下部12のアセンブリによって形成され、2つの部分が金属で作られることが好ましく、例えば、スポット溶接によって互いに結合される。下部は(例えば、コールドスタンプによって得られる)凹部を中央部に示し、そこに収納された本発明の混合物を有し、上部はリチウム蒸気の放出を許容する多数の開口部13,13’,...,(図面では、部分12の凹部に対応する点線によって定められる領域)を有する。図示されるように、本発明の混合物は、部分12の凹部に粉末形態で存在し、混合物は構成要素14として図示され、他の実施例では、混合物のペレットを形成することが可能であり、凹部をそれらで満たす。ディスペンサ10は2つの端部に「翼部」15,15’を有し、翼部15,15’は、直流電流によってディスペンサを加熱するための電気端子との接続に特に適応する。
【0022】
ディスペンサの他の可能な形状が、図2に示される。この容器は、イタリア国特許出願第MI2004A002279号に更に詳細に記載される。ディスペンサ20は、中心容器21、及びシールド22から形成される。図面では、容器21は、開口部23以外は閉じられ、容器は3つの開口部を有し、3つの開口部の1つがシールドによって隠されるが、これらは任意の数だけ存在し得る。シールド22は容器21の周りで同心円状に配置され、スペーサ24(1つだけ図示される)によって正しい位置に保持され、シールドは開口部23に対して半径方向に対応する位置に開口部25を有する。容器の中では、本発明の混合物がリチウム塩類と還元剤の間に存在し、この場合、混合物は複数のペレット26として示され、容器の底部に互いに別に配置される。リチウムの蒸発は、容器の加熱によって(例えば、(1つだけ図示された)接点27を通って端部に電流を供給することによって)起きる。
【0023】
以下の実施例によって、本発明は更に詳細に示される。
【実施例1】
【0024】
図1に示される容器に類似の容器は、0.2mmの厚さを有するインコネル(ニッケル−クロムを主に含み、少量の他の金属をプラスした合金)のシートを利用することによって製造される。容器は、横方向寸法100*24mm、凹部の高さ6mmを有し、約10gの混合物で合金St101と重量比5:1のLi2TiO3の間を満たし、混合物は、約1700kgの圧力下での粉末混合物の圧縮によって得られる、直径6mm、高さ3mmを有するペレットの形態で利用される。
【0025】
ディスペンサは、真空チャンバの底部に配置され、横方向寸法3*3cmの小さなガラスプレートが、ディスペンサの上方の約20cmの位置に配置される。容器の端部(図1の「翼部」15,15’)に約6時間の間100Aの電流が加えられ、電流はディスペンサを約800℃の温度まで加熱し、混合物成分とリチウム蒸発の間に反応を起こし、少量の蒸発したリチウムがガラスプレートで凝縮して、そこに薄膜を形成する。
【0026】
テストの間、チャンバは、蒸発の間に放出されるガスの量をモニタするために質量分析計のサンプルラインへ接続される(明らかに、リチウムを除く。チャンバの冷壁への凝縮のために、この元素は質量分析計に送られない)。実体のあるガス放出は、全体テストの間は観測されない。
【0027】
テストの終わりで、蒸発したリチウムの量が、インライン質量分析の結果を考慮することにより、テストの前後のディスペンサの質量差を測定することによって推定される。質量差はリチウム蒸発へ完全に帰し、従って、100%の金属蒸発をもたらす。
【0028】
また、ガラスプレートに形成された薄膜の分析も、純度をチェックするために、HCl溶液に溶かすこと、及び得られた溶液を原子吸光により化学分析することによって実行され、薄膜は1重量%未満の量の不純物を含有する。
【0029】
チャンバでは、ガラスプレート付近に、そこに堆積した材料の重みで機能する水晶振動周波数の変化を利用することによって薄膜の成長速度を測定する当該分野で既知の装置である水晶振動子モニタ(QCM)も実装され、金属リチウムの密度、及び音響インピーダンスの知識から、重量増加は時間と共に増加する薄膜厚さに関連し、従って、約0.2オングストローム/秒(Å/s)の値を有する一定速度の薄膜堆積を得る。
【実施例2】
【0030】
図2で示されるものに類似のリチウム・ディスペンサが、両方が厚さ0.2mmのステンレス鋼で作られた円筒型中心容器、及びシールドを含むことが好ましい。容器は長さ10cm、直径3.1cmで、上部の線に沿って5cm間隔を空けられた直径2.5mmの2つの穴を有し、容器の周りで同心円状に配置されたシールドは、同じ長さで、直径3.4cmを有し、直径11mmの4つの穴が有り、2つの穴は容器表面の穴と向き合い、他の2つの穴は最初の2つの穴の間に配置され、12mmだけ互いに間隔を空けられる。容器は、110gの混合物で、合金St101と重量比1:1のLi2TiO3の間を満たされ、混合物はルース粉末の形態で利用される。
【0031】
ディスペンサは真空チャンバの底部に配置され、中心容器の端部に直流を供給することによって加熱され、従ってリチウム蒸発を起こす。テストは、約40時間続く。チャンバでは、リチウム薄膜の成長速度を測定するためにディスペンサから36cm離れた位置にQCMが存在し、リチウム薄膜の成長速度は、ディスペンサからの同じ金属の蒸発速度に比例する。QCMはフィードバック・ループを介して電源に接続され、0.28Å/sの成長速度を得るようにシステムが調整される。蒸発が進むにつれて、ディスペンサに残されるリチウムの量は少なくなり、蒸発速度を維持するために必要な温度は上昇し、これは更に大きな電力を必要とすることを意味し、電流の値が時間と共に最大電流値300A(システムが供給できる限界値)まで上昇する。
【0032】
図3では、このテストの結果が報告され、曲線1は、薄膜堆積率(FDR、グラフの左側の軸でÅ/sで測定される)の傾向を堆積したリチウム薄膜の厚さ(T、Åで測定される)の関数として示し、曲線2は、テストの間のディスペンサの端部において測定された電圧(V、グラフの右側の軸でボルトで測定される)の傾向を示す。
【実施例3】
【0033】
実施例2のテストが繰り返され、唯一の相違点は、この場合、リチウムを分配する混合物が、直径6mm、高さ3mmのペレットの形態で存在し、各々の重量は約0.3gであり、約1700kgの圧力下での粉末混合物の圧縮によって得られることである。
【0034】
このテストの結果は図3に報告され、曲線3は、蒸発速度の傾向を示し、曲線4は、テストの間にディスペンサの端部で測定された電圧の傾向を示す。曲線2は、粉末、又はペレットを充填されたディスペンサの異なる振る舞いが観察される末端部分は別にして、テストの最初から曲線1に本質的に重ね合わされる。
【0035】
実施例(特に、実施例1)のテストで観察されるように、急激な現象なしに一定特性の金属蒸発を示すので、本発明の混合物は産業上のプロセスで使用するのに適切であり、潜在的に有害なガスの実質的な放出(例えば、水)を生じさせず、高純度のリチウム薄膜を再現可能な方法、及び一定速度で成長させることを可能にする。実施例2、及び実施例3で得られた結果の比較は、粉末、及びペレットの両方が本発明のディスペンサの目的には適切であるが、より長い時間にわたって、一定の蒸発速度で(約25800Åの薄膜厚さまでは、図3の曲線3、粉末を用いて得られる約22350Åの厚さは、図3の曲線1)リチウムを蒸発させることを可能にするので、ペレットを充填されたディスペンサが好ましいことを示す。この振る舞いの理由は、まだ完全には明らかではないが、蒸発の動作温度にでは、ペレットよりもルース粉末の方がより良好な表面接触を有し、従って、より良好な導電体として振る舞い、その結果、電流が粉末を流れるとき、ペレットと比較して少ない熱が発生し、粉末を使用する全体的な効果について、リチウム蒸発を起こすのに有効な温度値まで混合物を加熱するために更に大電流が必要であると信じられる。この解釈は、テスト全体を通して、ルース粉末を充填されたディスペンサと比較して、ペレットを充填されたディスペンサの端部における高い電圧降下を示す図3の2つの曲線3,4によって確認されるようである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるリチウム・ディスペンサの可能な形態の一部断面斜視図である。
【図2】本発明によるリチウム・ディスペンサの好ましい形態の一部断面斜視図である。
【図3】本発明の混合物を使用するディスペンサのリチウム蒸発特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10,20 ディスペンサ
11 上部
12 下部
13,13’,23,25 開口部
14 構成要素
15,15’ 翼部
21 中心容器
22 シールド
24 スペーサ
26 ペレット
27 接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム蒸発のための混合物であって、リチウム塩類及び還元剤を含み、前記リチウム塩類がチタン酸塩(Li2TiO3)、タンタル酸塩(LiTaO3)、ニオブ酸塩(LiNbO3)、タングステン酸塩(Li2WO4)、及びジルコン酸塩(Li2ZrO3)の中で選択されることを特徴とする混合物。
【請求項2】
前記還元剤が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタニウム、又はジルコニウム若しくはチタニウムの合金の中で選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記合金が、Zr84%,Al16%の重量成分百分率の合金、又はZr76.5%,Fe23.5%の重量成分を有する合金の中で選択される、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
前記リチウム塩類及び前記還元剤が粉末形態である、請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
前記粉末が1mmより小さい粒径を有する、請求項4に記載の混合物。
【請求項6】
前記粉末が500μmより小さい粒径を有する、請求項5に記載の混合物。
【請求項7】
前記粉末が10〜125μmの間の粒径を有する、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
前記リチウム塩類と前記還元剤の間の重量比が、10:1と1:10の間である、請求項1に記載の混合物。
【請求項9】
前記重量比が1:5である、請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
前記粉末の前記混合物がペレットの形態である、請求項4に記載の混合物。
【請求項11】
請求項1の混合物を含むことを特徴とする、リチウム・ディスペンサ(10,20)。
【請求項12】
リチウム蒸気の放出のための少なくとも1つの開口部(13,13’,23,25)を備える金属容器として形成される、請求項11に記載のディスペンサ。
【請求項13】
前記容器が金属、合金、セラミック、又はグラファイトの中で選択される材料で作られる、請求項11に記載のディスペンサ。
【請求項14】
前記容器が、モリブデン、タンタル、タングステン、ニッケル、鋼鉄、及びニッケル−クロム、又はニッケル−クロム−鉄合金の中で選択される材料で作られる、請求項13に記載のディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−512570(P2008−512570A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530857(P2007−530857)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/IT2005/000509
【国際公開番号】WO2006/027814
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(500275854)サエス ゲッタース ソチエタ ペル アツィオニ (54)
【Fターム(参考)】