説明

リチウムイオンバッテリー

構成要素(a)から(e)を含む、ハウジング内のリチウムイオンバッテリー:(a)アノード、(b)カソード、(c)セパレータ、(d)リチウム塩と非水溶剤とを含む電解質、(e)非イオン界面活性物質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、改善された特性を有する、たとえば初期化の際にもしくは充電駆動/放電駆動時に容量損失が少なくなる二次バッテリー、特にリチウムイオンバッテリーに関する。本発明は、バッテリーの製造方法とバッテリーの使用法とにも関する。
【背景技術】
【0002】
二次バッテリー特にリチウムイオン二次バッテリーは、そのエネルギー密度の高さと容量の大きさゆえに、モバイル情報装置用の駆動力として使用される。さらに、そのようなバッテリーは、工具、電気駆動の自動車、ハイブリッド駆動装置を有する自動車のためにも使用される。
【0003】
そのようなバッテリーには、容量とエネルギー密度に関して高い要求がなされる。本願発明の主旨において、望ましい特性を達成するためにとりわけ有利でもあるのは、バッテリー内に含まれる電極と特にセパレータとの細孔ができるだけ一様であり、かつ電解質で完全に充填されていなくてはならないことである。しかし前述の細孔を完全に充填するには、一般的にコストが掛かる。なぜなら細孔内に含まれるガスを電解質から排出しなくてはならないからである。これは比較的時間の掛かる、たいてい量的には進まないプロセスである。真空に充填する前にガスを取り除く方法は、再生可能にはほとんど実現され得ない。
【0004】
特許文献1は、電解質と電極との間のインピーダンスを下げるために、リチウムイオンバッテリーのための電解質に、フッ素を含有する非イオン物質を添加することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6960410号明細書(国際公開第02/091497号)
【特許文献2】欧州特許第1017476号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/021477号
【特許文献4】国際公開第2004/021499号
【特許文献5】欧州特許第0571717号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、充電駆動/放電駆動時にバッテリーの容量ができる限り大きく維持され得るよう、電極とセパレータの細孔が電解質で充填されている、もしくは電解質で充填され得る二次バッテリー特にリチウムイオン二次バッテリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、構成要素(a)から(e)を含むリチウムイオンバッテリーによって解決される。
(a)アノード、
(b)カソード、
(c)セパレータ、
(d)リチウム塩と非水溶剤とを含む電解質、
(e)少なくとも1つの非イオン界面活性物質。
【0008】
その際セパレータは、好ましくは電子伝導せずあるいは電子伝導しにくく、かつ好適には、少なくとも部分的に物質透過性のある支持体を備え、当該支持体は好適には、少なくとも1つの面が無機材料でコーティングされており、少なくとも部分的に物質透過性のある支持体として、好適には不織フリースとして構成されている有機材料が用いられ、有機材料は好適にはポリマー、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、有機材料は、好適にはイオン伝導性のある、さらに好適には−40℃から200℃の温度範囲でイオン伝導する無機材料でコーティングされており、無機材料は好ましくは、Zr,Al,Liの少なくとも1つの元素の酸化物、リン酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩のグループから成る少なくとも1つの化合物特に好ましくは酸化ジルコニウムを含み、イオン伝導性のある無機材料は好ましくは、最大直径が100nmよりも小さい粒子を備える。
【0009】
以下においては、「リチウムイオンバッテリー」と「リチウムイオン二次バッテリー」の用語は、同義に用いられる。これらの用語は、「リチウムバッテリー」、「リチウムイオン蓄電池」と「リチウムイオンセル」の用語をも含んでいる。リチウムイオン蓄電池は一般的に、個々のリチウムイオンセルの直列接続からできている。これは、「リチウムイオンバッテリー」の用語が、従来技術においては一般的な前述の用語の総称として用いられることを意味する。
【0010】
「正極(positive Elektrode)」の用語は、バッテリーを消費物たとえば電気モータに接続する際に、電子を受け取ることのできる電極を意味する。それで、正極はカソードである。「負極(negative Elektrode)」の用語は、駆動時に電子を放出できる電極を意味する。それで、負極はアノードである。
【0011】
本発明に係るバッテリーのアノード(a)は、リチウムイオン電解質を有するバッテリーの使用に適する多数の材料から作られてよい。たとえば、負極は、リチウム金属あるいは合金の形状でのリチウムを、ホイルか格子の形状あるいは適切なバインダーによって結合される粒子の形状で含んでよい。酸化チタンリチウムのようなリチウム金属酸化物の使用も同様に可能である。原則的に、リチウムと層間化合物を形成することができるすべての材料を用いることができる。それで、負極に適した材料は、たとえばグラファイト、人造黒鉛、カーボンブラック、メソカーボン、ドープカーボン、フラーレン、五酸化ニオブ、錫合金、二酸化チタン、二酸化錫と、これらの物質の混合物とを含む。
【0012】
本発明に係るバッテリーのカソード(b)は好適には、化学式LiMPOを有する化合物を含み、Mは、元素周期表の第1列の少なくとも1つの遷移金属カチオンであり、この遷移金属カチオンは好適には、Mn,Fe,Ni,Tiから成るグループあるいはこれらの元素の組み合わせから選択されており、化合物は好適には、オリビン構造好適には上位のオリビンを備え、Feが特に好ましい。
【0013】
本発明に係るリチウムイオンバッテリーには、組成式LiFePOのオリビン構造を有するリン酸鉄リチウムが用いられてよい。しかし、Mn,Cr,Co,Cu,Ni,V,Mo,Ti,Zn,Al,Ga,B,Nbから成るグループから選択される元素Mを含むリン酸鉄リチウムを用いることも可能である。さらに、リン酸鉄リチウムは導電性を高めるために炭素を含んでいることも可能である。
【0014】
さらなる実施形態においては、正極を作るために用いられる、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウムが、0.05≦x≦1.2と0≦y≦0.8の組成式LiFe1−yPOを備えており、Mは、Mn,Cr,Co,Cu,Ni,V,Mo,Ti,Zn,Al,Ga,B,Nbから成るグループから選択される少なくとも1つの元素である。
【0015】
一実施形態においては、x=1とy=0である。
【0016】
正極は、リン酸鉄リチウムを好適にはナノ粒子の形状で含んでいる。ナノ粒子は任意の形状を取ることができる。すなわち、ナノ粒子はほぼ球形あるいは細長くてよい。
【0017】
一実施形態においては、リン酸鉄リチウムは、粒子の大きさが、d95値で測定して、15μmよりも小さい。好適には粒子の大きさは、10μmよりも小さい。
【0018】
さらなる実施形態においては、リン酸鉄リチウムは、粒子の大きさが、d95値で測定して、0.005μmから10μmの間である。
【0019】
さらなる実施形態においては、リン酸鉄リチウムは、粒子の大きさが、d95値で測定して、10μmよりも小さく、d50値は4μm±2μmであり、d10値は1.5μmよりも小さい。
【0020】
挙げられた値は、静的なレーザー光拡散(レーザー回折法)を用いての測定によって決定され得る。当該方法は、従来技術から知られている。
【0021】
カソードは、好ましい実施形態に従えば、マンガン酸リチウム好適にはスピネルタイプのLiMnあるいはコバルト酸リチウム好適にはLiCoOあるいはニッケル酸リチウム好適にはLiNiOあるいはこれらの酸化物の2つあるいは3つの混合物あるいは、ニッケル、マンガン、コバルト(NMC)を含むリチウム混合酸化物を備えてよい。
【0022】
カソードは、好ましい実施形態においては、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物(NMC)から成る少なくとも1つの活性材料を含んでおり、当該リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物はスピネル構造で存在しておらず、スピネル構造のリチウム・マンガン酸化物(LMO)との混合物で存在する。
【0023】
活性材料は、カソード電極の活性材料の総モル数に対して(すなわち、活性材料に加えてさらに導電性添加物、バインダー、安定剤などを含んでいるかもしれないカソード電極全体に対してではない)それぞれ、少なくとも30モル%、好適には少なくとも50モル%のNMCを含み、同時に少なくとも10モル%、好適には少なくとも30モル%のLMOを含むことが好ましい。
【0024】
NMCとLMOとが一緒になって、カソード電極の活性材料の総モル数に対して(すなわち、活性材料に加えてさらに導電性添加物、バインダー、安定剤などを含んでいるかもしれないカソード電極全体に対してではない)それぞれ、活性材料の少なくとも60モル%を構成し、さらに好ましくは少なくとも70モル%、さらに好ましくは少なくとも80モル%、さらに好ましくは少なくとも90モル%を構成することが好ましい。
【0025】
リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物は、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物内の遷移金属の総モル数に対してそれぞれ、リチウムの他に少なくともそれぞれ5モル%好ましくはそれぞれ少なくとも15モル%、さらに好ましくはそれぞれ少なくとも30モル%のニッケルとマンガンとコバルトとを含んでいなくてはならないという以外に、原則的に、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物の組成に関して制限はない。上述の最小モル量のNi,Mn,Coが存在することが保証される限りにおいて、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物は、任意の別の金属特に遷移金属でドープされていてよい。
【0026】
その際、以下の化学量論のリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物、すなわちLi[Co1/3Mn1/3Ni1/3]Oが特に好ましく、Li,Co,Mn,Ni,Oの割合は、それぞれ+/−5%で変化してよい。
【0027】
正極(b)において、用いられるリン酸鉄リチウムもしくは酸化リチウム、および負極(a)に用いられる材料は、一般的に、これらの材料を電極に留めるバインダーによって結合される。たとえば、ポリマーバインダーが用いられてよい。バインダーとして、好適にはポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸塩、エチレン(プロピレンジエン単量体)共重合体(EPDM)と、それらの混合物と共重合体とが用いられてよい。
【0028】
バッテリーに用いられるセパレータ(c)は、正極と負極との間でリチウムイオンのイオン伝導を保証するために、リチウムイオンが透過可能でなくてはならない。他方で、セパレータは、電子が絶縁されなくてはならない。
【0029】
本発明に係るバッテリーのセパレータは、「不織布(non-woven fabrics)」としても知られる、導電性のない不織ポリマー繊維から成るフリースを備える。「フリース」という用語は、「ニット」あるいは「フェルト」のような用語と同義に用いられる。「不織」という用語の代わりに、「織られていない」という用語も用いられる。
【0030】
好適にはフリースはフレキシブルで、厚さが30μmより薄い。そのようなフリースの製造方法は、従来技術から知られている。
【0031】
好適にはポリマー繊維は、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエーテルから成るポリマーのグループから選択される。
【0032】
適切なポリオレフィンは、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンである。
【0033】
好ましいポリエステルは、好適にはポリエチレンテレフタレートである。
【0034】
好ましい実施形態においては、セパレータは、片面あるいは両面が無機材料でコーティングされているフリースを備える。「コーティング」という用語は、イオン伝導性のある無機材料がフリースの片面あるいは両面だけでなく、フリースの内部にも存在し得るということも含む。コーティングに用いられる材料は、好適には、ジルコニウム、アルミニウムあるいはリチウムの少なくとも1つの元素の酸化物、リン酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩のグループから成る少なくとも1つの化合物である。
【0035】
イオン伝導性のある無機材料は、好適には、−40℃から200℃の温度範囲でイオン伝導する、すなわちリチウムイオンを伝導する。
【0036】
好ましい実施形態においては、イオン伝導性のある材料は、酸化ジルコニウムを含むかあるいは酸化ジルコニウムから成る。
【0037】
さらに、電子伝導しないあるいは電子伝導しにくい、少なくとも部分的に物質透過性のある支持体から成るセパレータが用いられてよい。この支持体は、少なくとも1つの面が無機材料でコーティングされている。少なくとも部分的に物質透過性のある支持体として、不織フリースとして構成されている有機材料が用いられる。当該有機材料は、ポリマー繊維好適にはポリエチレンテレフタレート(PET)のポリマー繊維の形状で構成されている。フリースは、イオン伝導性のある、好適には−40℃から200℃の温度範囲でイオン伝導する無機材料でコーティングされている。イオン伝導性のある無機材料は好ましくは、ジルコニウム、アルミニウム、リチウムの少なくとも1つの元素を有する酸化物、リン酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩のグループから成る少なくとも1つの化合物特に好ましくは酸化ジルコニウムを含む。好ましくは、イオン伝導性のある無機材料は、最大直径が100nmよりも小さい粒子を備える。
【0038】
そのようなセパレータは、たとえばエボニック株式会社(Evonik AG)の「セパリオン(Separion)」(R)の商品名でドイツにおいて販売されている。
【0039】
そのようなセパレータの製造方法は、従来技術たとえば特許文献2、特許文献3、特許文献4から知られている。
【0040】
原則的に、二次バッテリーで用いられるセパレータの大きすぎる細孔と穴は、内部ショートを引き起こしかねない。バッテリーは、危険な反応で、非常に急速に自ら放電しかねない。この時あまりに大きな電流が発生しかねないので、最悪の場合には閉鎖されたバッテリーセルが爆発さえしかねない。この理由から、セパレータが、リチウム高出力バッテリーあるいはリチウム高エネルギーバッテリーの安全性の有無に、決定的な貢献をする。
【0041】
ポリマーセパレータは、一般的に特定の温度(およそ120℃にあるいわゆる「シャットダウン温度」)以上で、電解質を通る各電流輸送を中止する。これは、この温度でセパレータの細孔構造が崩壊し、すべての細孔が閉じられることによって起こる。イオンがもはや輸送され得ないことによって、爆発を起こしかねない危険な反応が中断する。しかしセルが外部の状況でさらに加熱されるならば、およそ150℃から180℃でいわゆる「ブレイクダウン温度」を超える。この温度以上でセパレータの溶融が起こり、収縮する。バッテリーセルの多くの箇所で、2つの電極間の直接接触に至り、それによって広範囲の内部ショートに至る。この内部ショートは、セルの爆発で終わりかねない制御不能の反応を引き起こすか、もしくは対応する圧力が、しばしば火災を起こしつつ、圧力安全弁(破裂板)によって下げられなくてはならない。
【0042】
本発明に係るバッテリーで用いられる、不織ポリマー繊維から成るフリースと無機コーティングとを備えるセパレータでは、高温によって支持材料のポリマー構造が溶融して、無機材料の細孔に入り込み、それによって細孔を閉鎖すれば、シャットダウン(遮断)のみが起こる。それに対し、当該セパレータではブレイクダウン(機能停止)には至らない。なぜなら、無機粒子のおかげでセパレータの完全な溶融が起こり得ないようになっているからである。それによって、広範囲の内部ショートが生じかねない駆動状態が存在しないよう保証されている。
【0043】
厚さと透過性との特に良好に適切な組み合わせを備える、使用されるフリースの種類によって、高出力バッテリー特にリチウム高出力バッテリーのセパレータの要求に添うことのできるセパレータを作ることができる。粒子の大きさが正確に合わされた酸化物粒子を、透過性のある(セラミックスの)コーティングを作るために同時に用いることによって、作られるセパレータの特に高い透過性が達成されるが、細孔は依然として充分に小さいため、「リチウムホイスカ」がセパレータを通って望ましからざる成長をするのを防ぐことができる。
【0044】
しかしながら、細孔にデッドスペースが生じないように、セパレータの高い透過性に基づいて配慮しなくてはならない。
【0045】
本発明に従えば、セパレータの細孔を電解質で完全にあるいは少なくともほぼ完全に充填するのは、界面活性物質(e)の存在によって達成される。
【0046】
本発明に使用されるセパレータには、セパレータ材料の無機表面に、導電塩のアニオンが部分的に付着し、それによって解離の改善とひいては高電流領域でのより良好なイオン伝導性とがもたらされるという利点がある。
【0047】
本発明に係るバッテリーに用いられるセパレータは、フリースの上と中とにある透過性のある無機コーティングを有するフレキシブルなフリースを備え、当該フリースの材料は、不織の導電性のないポリマー繊維から選択されているが、そのようなセパレータは、当該フリースが30μmより薄い厚さと、50%より大きい好適には50%から97%の透過性と、細孔のすくなくとも50%が75μmから150μmの細孔径を備える細孔径分布とを備えることによって優れている。
【0048】
特に好ましくは、セパレータは、厚さが5μmから30μm好適には10μmから20μmのフリースを備える。特に重要なのは、上述のようなフリース内でのできる限り均等な細孔径分布である。フリース内でのさらに均等な細孔径分布は、最適に合わされた特定の大きさの酸化物粒子と関連して、セパレータの最適な透過性をもたらす。
【0049】
基質の厚さは、セパレータの特性に対して大きな影響を有する。なぜならば、一方では、電解質を浸み込ませたセパレータの柔軟性と表面抵抗とは、基質の厚さに依存するからである。厚さが薄いと、電解質の使用において、特に小さいセパレータの電気抵抗が達成される。セパレータ自身は非常に大きい電気抵抗を備える。なぜならば、セパレータ自身は絶縁特性を備えていなくてはならないからである。その上、より薄いセパレータによって、パッテリー積重物内のパッケージの密度を高くすることが可能であり、その結果同じ容積でより大きなエネルギー量を貯蔵することができる。
【0050】
好適にはフリースは、60%から90%特に好ましくは70%から90%の透過性を備える。その際透過性は、フリースの容積(100%)からフリースの繊維の容積すなわち、フリースの容積の、材料で占められていない割合を引いたものとして、定義されている。フリースの容積はその際、フリースの寸法から算出することができる。繊維の容積は、考察されるフリースの測定された重量とポリマー繊維の密度とからもたらされる。基質の透過性が大きければ、セパレータの透過性も大きくなることが可能になり、それゆえセパレータが電解質をより多く受容することを達成できる。
【0051】
絶縁特性を有するセパレータを得ることができるようにするために、セパレータはフリース用のポリマー繊維として、上で定義されたように、好適には、ポリアクリロニトリル(PAN)、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルおよび/あるいは、たとえばポリプロピレン(PP)あるいはポリエチレン(PE)のようなポリオレフィン(PO)あるいはそのようなポリオレフィンの混合物から選択されている、好適には導電性のないポリマーの繊維を備える。
【0052】
フリースのポリマー繊維は、好適には直径が0.1μmから10μmであり、特に好ましくは1μmから4μmである。
【0053】
特に好ましいフレキシブルなフリースは、単位面積質量が20g/mより小さく、好適には5g/mから10g/mである。
【0054】
セパレータは、フリースの上と中とに、透過性のある電気的に絶縁性のあるセラミックスのコーティングを備える。好適には、フリースの上と中とにある透過性のある無機コーティングは、平均の粒子の大きさが0.5μmから7μm、好ましくは1μmから5μm、まったく特に好ましくは、1.5μmから3μmのLi,Al,Siおよび/あるいはZr元素の酸化物粒子を備える。特に好ましくは、セパレータは、フリースの上と中とにある透過性のある無機コーティングを備え、当該無機コーティングは、平均の粒子の大きさが0.5μmから7μm、好ましくは1μmから5μm、まったく特に好ましくは、1.5μmから3μmであって、ZrあるいはSi元素の酸化物で接着されている酸化アルミニウム粒子を備える。できる限り高い透過性を達成するために、すべての粒子の50重量%より多く、特に好ましくは80重量%より多くが上述の平均の粒子の大きさの境界にある。すでに上で記述されたように、粒子の最大の大きさは、使用されるフリースの厚さの好適には1/3から1/5、特に好ましくは1/10以下である。
【0055】
好適にはセパレータは、透過性が30%から80%、好ましくは40%から75%、特に好ましくは45%から70%である。その際透過性は、到達可能なつまり開いている細孔に関係している。その際透過性は、水銀ポロシメトリーの既知の方法によって特定され得、あるいは開いている細孔のみ存在すると仮定すれば、用いられる供給材料の容積と密度とから算出され得る。
【0056】
本発明に係るバッテリーに用いられるセパレータは、少なくとも1N/cm好適には少なくとも3N/cm、まったく特に好ましくは3N/cmから10N/cmの抗張力を備え得ることによっても優れている。セパレータを好適には、破損することなく、各半径が下に100mmまで好適には下に50mmまで、まったく特に好ましくは下に1mmまで曲げることができる。セパレータの高い抗張力と良好な曲げ特性とには、バッテリーの充電時と放電時に起こる、電極の幾何学形状の変化にセパレータが、破損することなる加わることができるという利点がある。その上曲げ特性には、このセパレータに商業的に規格化された巻回セルを生産できるという利点がある。このセルでは、規格化された大きさの電極/セパレータ層が、互いに螺旋状に巻回され接触させられる。
【0057】
リチウムイオンバッテリーの電解質(d)は、多数のリチウム塩を含んでいる。好ましくはリチウム塩は、不活性のアニオンを備え、無毒である。適切なリチウム塩は好適には、六フッ化リン酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、塩化リチウムと、これらの混合物である。
【0058】
一実施形態において、リチウム塩は、0≦x≦8の、LiPF,LiBF,LiClO,LiAsF,LiCFSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO,LiSO2x+1,LiN(SO2x+1あるいはLiC(SO2x+1と、これらの塩の2つ以上の混合物から選択される。
【0059】
好適には電解質は、電解質溶液として存在する。適切な溶剤は、好適には不活性である。適切な溶剤は、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−メチル―1,3オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジエトキシメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、メチルアセテート、エチルアセテート、ニトロメタン、1,3−プロパンスルトンと、これらの溶剤の2つ以上の混合物を含む。
【0060】
構成要素(e)における「界面活性物質」という用語は、少なくとも1つの親水性の構造的部分と少なくとも1つの疎水性の構造的部分によって、固体表面と液体との間の界面張力を減少させることができる物質を意味する。結果として液体は、固体表面から流れ出たり転がり落ちることなく、当該固体表面に少なくとも部分的に付着したままである。
【0061】
専門の文献ではしばしば「界面活性剤(Netzmittel)」とも呼ばれるそのような界面活性物質は、従来技術から知られている。
【0062】
一実施形態においては、本発明に係るバッテリーで用いられる界面活性物質(e)は、カルボン酸エステルとカルボン酸アミド、スルホン酸エステルとスルホン酸アミド、アルキルポリエチレングリコールとアルキルポリエチレンエーテル、ポリアルキレングリコールエーテルから選択されている。
【0063】
カルボン酸エステルとカルボン酸アミドは、好適には脂肪酸エステルと脂肪酸アミドであり、好適には脂肪酸ポリグリコールエーテルと脂肪酸アミドポリグリコールエーテルである。
【0064】
スルホン酸エステルとスルホン酸アミドは、好適にはアルキルスルホン酸エステルおよび/あるいはアリルスルホン酸エステルとアルキルスルホン酸アミドおよび/あるいはアリルスルホン酸アミドである。例として、ベンゼンスルホン酸エステルとベンゼンスルホン酸アミド、ドデシルベンゼンスルホン酸エステルとドデシルベンゼンスルホン酸アミド、ベンゼンスルホン酸ドデシルエステルが挙げられるであろう。
【0065】
アルキルポリエチレングリコールは、好適にはアルキルフェノールポリグリコールエーテル(アルキルフェノールエトキシレート)である。
【0066】
ポリアルキレングリコールエーテルの代表として、例としてポリオキシエチレン−2−ステアリルエーテルが挙げられるであろう。
【0067】
上述の界面活性物質(e)の代表は、商業的に入手可能である。これらは単に、界面活性物質の例であって、界面活性物質(e)を上述の例に限定するわけではない。
【0068】
好適には界面活性物質は、フッ素を含有する。
【0069】
特に好ましいのは、界面活性物質がペルフルオロアルキル基を備えることである。
【0070】
「ペルフルオロアルキル基」という用語は、アルキル基のすべての水素原子がフッ素原子と置換されているということを意味する。
【0071】
フッ素を含有するもしくはペルフルオロアルキル基を含有する界面活性物質は、バッテリー内で支配的な条件下で一般的に不活性であり、および/あるいは、バッテリーの駆動を阻害しかねない分解生成物を生み出さない。
【0072】
しかも、そのような物質は、本発明に係るバッテリーの電極とセパレータとを一般的に非常に良好に湿らせることが可能である。これは、電極やセパレータに含まれる細孔を電解質で充填するのを容易にする。
【0073】
例示的かつ適切な化合物は、既知のあるいは既知の方法に従って製造可能なペルフルオロオクタンカルボン酸エステルとペルフルオロオクタンスルホン酸エステルである。さらに挙げられるのは、特許文献5に開示されているような、ペルフルオロアルキルエチレングリコールであろう。特許文献1に開示されているような、スルホン基を有する化合物も同様に挙げられるであろう。フルオロ脂肪酸エステル、たとえば商標名ノベック(Novec)(R)で知られる、たとえばノベック(R)FC−4430のような、フルオロ脂肪酸エステルも適している。
【0074】
上述の化合物は単に、フッ素を含有する界面活性物質の例であって、フッ素を含有する界面活性物質を上述の化合物に限定するわけではない。
【0075】
電解質(d)内にフッ素を含有するリチウム塩を使用すれば、特に、これらの塩が同様にペルフルオロアルキル基を備えていれば、界面活性物質(e)の効果を相乗的に促進することができる。
【0076】
一実施形態においては、界面活性物質は、電解質の総量に対して0.001重量%から10重量%の量の界面活性物質が使用され、好適には0.05重量%から5重量%、特に好ましくは0.1重量%から1重量%が使用される。
【0077】
驚くべきことに、バッテリーを電解質で充填させる際に界面活性物質(e)を用いれば、バッテリーの初期化時に不可逆的な容量損失を、界面活性物質(e)を用いない場合と比較して、明らかに減少させることができるということが発見された。これは、充電駆動/放電駆動時すなわちたとえば電気モータを駆動するために用いられるときの容量をできる限り大きく維持しなくてはならないバッテリーにとって、極めて好都合である。
【0078】
「初期化」あるいは「バッテリーの初期化」という用語は、電極の活物質を充電された状態に転換させるための1回目の電気的充電を意味する。
【0079】
不可逆的な容量損失は、1回目の充電の後と1回目の放電の後のバッテリーの容量もしくは2回目の充電の後と2回目の放電の後のバッテリーの容量を特定することによって、特定され得る。
【0080】
それに応じて、本発明に係るリチウムイオンバッテリーの一実施形態においては、界面活性物質は好適には、バッテリーの初期化の際の不可逆的な容量損失が、バッテリーが界面活性物質なしに初期化される場合のバッテリーの不可逆的な容量損失よりも少なくなるように、選択される。
【0081】
前述の容量の具合におけるすでに小さな改善たとえば1%から5%の改善が、重要な改善とみなされる。
【0082】
好適には界面活性物質は、不可逆的な容量損失が、バッテリーが界面活性物質なしに初期化される場合のバッテリーの不可逆的な容量損失の最大95%、好適には最大90%、特に好ましくは最大85%となるように、選択される。
【0083】
負極(a)と正極(b)とを、特にセパレータ(c)と電解質(d)と界面活性物質(e)と組み合わされば、バッテリーの初期化の際のかつ充電駆動/放電駆動時の不可逆的な容量損失を減少させるだけでなく、有利には、初期化後の交流電流内部抵抗の上昇も減少させ、バッテリーの充電後の直流電圧内部抵抗の上昇を減少させ、かつバッテリーの充電後の不可逆的な容量損失の上昇を減少させるリチウムイオンバッテリーができる。
【0084】
それに応じて、本発明に係るリチウムイオンバッテリーは、バッテリーの初期化の際の交流電流内部抵抗が、バッテリーが界面活性物質なしに初期化される場合のバッテリーの交流電流内部抵抗よりも小さく、および/あるいはバッテリー充電後のバッテリーの不可逆的な容量損失が、バッテリーが界面活性物質なしに充電される場合のバッテリーの不可逆的な容量損失よりも少なく、および/あるいはバッテリー充電後の直流電圧内部抵抗が、バッテリーが界面活性物質なしに充電される場合の直流電圧内部抵抗よりも小さいことを特徴とする。
【0085】
本発明に係るリチウムイオンバッテリーの製造は、原則的に、従来技術で知られているような方法に従って行われてよい。
【0086】
たとえば正極を作るために、用いられる活物質たとえばリン酸鉄リチウムが粉末として、場合によってはバインダーが用いられて電極に堆積させられ、かつ薄いフィルムに圧縮されてよい。別の電極が、第1の電極に積層されてよく、セパレータはホイルの形状で予め負極あるいは正極に積層される。正極とセパレータと負極とを、同時に互いに積層させつつ処理することも可能である。電極とセパレータとから成る合成物は、それからハウジングによって取り囲まれる。従来技術の冒頭で記述されたように、電解質が注入され得る。
【0087】
特別な一実施形態においては、本発明に係るリチウムイオンバッテリーの製造方法は、ステップ(i)とステップ(ii)とを備える。
(i)構成要素(a)から(c)を含むバッテリーに界面活性物質(e)を入れ、
(ii)バッテリーに電解質(d)を入れる。
【0088】
ステップ(i)をステップ(ii)と同時に実施することは、基本的に可能である。好適にはそれから、界面活性物質が電解質と混合され、さらに好ましくは電解質に溶かされる。
【0089】
しかし、ステップ(i)をステップ(ii)の前に実施、あるいはステップ(i)をステップ(ii)の後に実施することも、可能である。好適にはそれから、界面活性物質は、電解質でも用いられるような非水溶剤に溶かされる。
【0090】
好適には、界面活性物質を用いることなくなされる方法と比較すると、ステップ(ii)に従ってバッテリーに電解質を入れることも加速することができる。
【0091】
それに応じて、ステップ(ii)に従ってバッテリーに電解質を加速して入れることも、本発明に係るバッテリーによって可能である。
【0092】
改善された特性のこのような組み合わせは、充電駆動/放電駆動時に本発明に係るリチウムイオンバッテリーを、モバイル情報装置、工具、電気駆動の自動車、ハイブリッド駆動装置を有する自動車のための駆動力として用いるために、極めて好都合である。
【0093】
[事例]
40Ahのリチウムバッテリーが、電解質で充填された。この電解質は、電解質に対して0.5重量%の界面活性物質(3M社のノベック(R)FC−4430)を含んでいた。ノベック(R)FC−4430は、安全性データシートによると、フルオロ脂肪酸ポリマーエステルを含んでいる(B)。
【0094】
比較のために、同構造のバッテリーが、同じではあるがノベック(R)FC−4430を含んでいない電解質で充填された(A)。
【0095】
2つのバッテリーの初期化容量は、以下の表において互いに比較される。
【0096】
【表1】

【0097】
電解質が界面活性物質を含んでいれば、初期化サイクル直後の放電容量でも、2回目の放電プロセスでの放電容量でも、比較すれば明らかにより大きい容量とひいてはバッテリーの容量減少の低下が見られ得る。
【0098】
交流電流内部抵抗ACは、ノベック(R)FC−4430を含むバッテリーではより小さくなった。
【0099】
驚くべきことに、ノベック(R)FC−4430を有するバッテリーは、およそ60℃のより高温で充電されると、より良好な充電の安定性も備えた。
【0100】
この場合、60℃で8週間充電した後の、界面活性物質を含むバッテリーの容量損失は、界面活性物質のないバッテリーよりも明らかに小さかった。
【0101】
有利なことに、界面活性物質を含むバッテリーの直流電圧内部抵抗も、界面活性物質を含まないバッテリーよりも小さかった。
【0102】
対応する値は、以下の表において互いに比較される(それぞれ2つのバッテリーで実行された結果の平均値)。
【0103】
【表2】

【0104】
結果から示され得るのは、比較的大きなバッテリーを電解質で充填する場合、界面活性物質なしで充填されると、電極とセパレータの細孔にしみ渡らせるのに問題が生じるということである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素(a)から(e)、すなわち、
(a)アノード、
(b)カソード、
(c)セパレータ、
(d)リチウム塩と非水溶剤とを含む電解質、
(e)少なくとも1つの非イオン界面活性物質
を含むことを特徴とするリチウムイオンバッテリー。
【請求項2】
前記セパレータは、電子伝導せずあるいは電子伝導しにくく、かつ好適には、少なくとも部分的に物質透過性のある支持体を備え、該支持体は好適には、少なくとも1つの面が無機材料でコーティングされており、少なくとも部分的に物質透過性のある支持体として、好適には不織フリースとして構成されている有機材料が用いられ、該有機材料は好適にはポリマー、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、前記有機材料は、好適にはイオン伝導性のある、さらに好適には−40℃から200℃の温度範囲でイオン伝導する無機材料でコーティングされており、該無機材料は好ましくは、Zr,Al,Liの少なくとも1つの元素の酸化物、リン酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩のグループから成る少なくとも1つの化合物特に好ましくは酸化ジルコニウムを含み、前記イオン伝導性のある無機材料は好ましくは、最大直径が100nmよりも小さい粒子を備えることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオンバッテリー。
【請求項3】
前記リチウム塩は、0≦x≦8の、LiPF,LiBF,LiClO,LiAsF,LiCFSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO,LiSO2x+1,LiN(SO2x+1あるいはLiC(SO2x+1と、これらの塩の2つ以上の混合物から選択されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のリチウムイオンバッテリー。
【請求項4】
前記非水溶剤は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−メチル―1,3オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジエトキシメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、メチルアセテート、エチルアセテート、ニトロメタン、1,3−プロパンスルトンと、これらの溶剤の2つ以上の混合物から選択されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウムイオンバッテリー。
【請求項5】
前記非イオン界面活性物質は、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、スルホン酸エステル、スルホン酸アミド、アルキルポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコールエーテルであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオンバッテリー。
【請求項6】
前記非イオン界面活性物質は、フッ素を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムイオンバッテリー。
【請求項7】
前記非イオン界面活性物質は、ペルフルオロアルキル基を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウムイオンバッテリー。
【請求項8】
電解質の総量に対して0.001重量%から10重量%の非イオン界面活性物質が使用され、好適には0.05重量%から5重量%、特に好ましくは0.1重量%から1重量%が使用されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウムイオンバッテリー。
【請求項9】
バッテリーの初期化の際の不可逆的な容量損失を減らすための、請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウムイオンバッテリーの使用法であって、このために前記非イオン界面活性物質は、バッテリーの初期化の際の不可逆的な容量損失が、バッテリーが前記非イオン界面活性物質なしに初期化される場合のバッテリーの不可逆的な容量損失よりも少なくなるように選択されることを特徴とする使用法。
【請求項10】
不可逆的な容量損失が、バッテリーが前記非イオン界面活性物質なしに初期化される場合のバッテリーの不可逆的な容量損失の最大95%、好適には最大90%、特に好ましくは最大85%となることを特徴とする請求項9に記載の使用法。
【請求項11】
バッテリーの初期化の際の交流電流内部抵抗が、バッテリーが前記非イオン界面活性物質なしに初期化される場合のバッテリーの交流電流内部抵抗よりも小さく、および/あるいはバッテリー充電後のバッテリーの不可逆的な容量損失が、バッテリーが前記非イオン界面活性物質なしに充電される場合のバッテリーの不可逆的な容量損失よりも少なく、および/あるいはバッテリー充電後の直流電圧内部抵抗が、バッテリーが前記非イオン界面活性物質なしに充電される場合の直流電圧内部抵抗よりも小さいことを特徴とする請求項9あるいは10に記載の使用法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項で定義されるようなリチウムイオンバッテリーの製造方法であって、ステップ(i)とステップ(ii)、すなわち、
(i)構成要素(a)から(c)を含むバッテリーに前記非イオン界面活性物質(e)を入れ、
(ii)前記バッテリーに前記電解質(d)を入れることを特徴とするステップを備える方法。
【請求項13】
ステップ(i)がステップ(ii)と同時に実施され、あるいは
ステップ(i)がステップ(ii)の前に実施され、あるいは
ステップ(i)がステップ(ii)の後に実施されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
充電駆動/放電駆動時における、モバイル情報装置、工具、電気駆動の自動車、ハイブリッド駆動装置を有する自動車のための駆動力としての、請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウムイオンバッテリーの使用法、あるいは、請求項12あるいは13のいずれか一項に従って製造されたリチウムイオンバッテリーの使用法。

【公表番号】特表2013−514609(P2013−514609A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543498(P2012−543498)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007063
【国際公開番号】WO2011/072792
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511173550)リ−テック・バッテリー・ゲーエムベーハー (85)
【Fターム(参考)】