説明

リチウムイオン二次電池用負極の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池

【課題】安定した出力、容量等の特性を備えたリチウムイオン二次電池を形成することが可能なリチウムイオン二次電池用負極を容易に製造可能な製造方法を提供すること、そのようなリチウムイオン二次電池用負極を提供すること、安定した出力、容量等の特性を備えたリチウムイオン二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、負極集電体と負極材層とで構成された負極の製造方法であって、負極材と溶媒とを含む塗工液を調製する塗工液調製工程と、塗工液をシート状の負極集電体上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥する第1乾燥工程と、第1乾燥工程を経た前記塗膜に対して圧力を加える加圧工程と、加圧工程を経た前記塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥し、負極材層を形成する第2乾燥工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン二次電池の負極には、炭素材が使用されている。充放電サイクルが進行しても、炭素材料を使用した負極上にはデンドライト状リチウムが析出されにくく、安全性が保証されるためである。
【0003】
ところで、このようなリチウムイオン二次電池の負極は、一般に、炭素材が分散した塗工液を集電体上に塗工し、その後、乾燥、プレスすることにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の負極の製造方法では、炭素材で構成された層(負極材層)中に塗工液中の溶媒が十分に除去することができず、負極の性能の低下が生じるといった問題があった。その結果、得られるリチウムイオン二次電池の特性(出力、容量等)が低下するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−096623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、安定した出力、容量等の特性を備えたリチウムイオン二次電池を形成することが可能なリチウムイオン二次電池用負極を容易に製造可能な製造方法を提供すること、そのようなリチウムイオン二次電池用負極を提供すること、安定した出力、容量等の特性を備えたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(11)に記載の本発明により達成される。
(1) リチウムイオン二次電池に用いられ、負極集電体と負極材層とが積層した積層体で構成された負極の製造方法であって、
主として炭素材で構成された負極材と、溶媒とを含む塗工液を調製する塗工液調製工程と、
前記塗工液をシート状の前記負極集電体上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、
前記塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥する第1乾燥工程と、
前記第1乾燥工程を経た前記塗膜に対して圧力を加える加圧工程と、
前記加圧工程を経た前記塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥し、前記負極材層を形成する第2乾燥工程と、を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0008】
(2) 前記加圧工程と前記第2乾燥工程との間に、前記塗膜と前記負極集電体とで構成されたシートを所定の大きさに切るカット工程を有する上記(1)に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0009】
(3) 前記第2乾燥工程後に、前記負極材層と前記負極集電体とで構成されたシートを所定の大きさに切るカット工程を有する上記(1)に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0010】
(4) 前記炭素材は、ハードカーボンを含む上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0011】
(5) 前記炭素材中における前記ハードカーボンの含有量は、5〜45重量%である上記(4)に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0012】
(6) 以下の条件(A)〜(E)のもと、陽電子消滅法により測定した前記ハードカーボンの陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下であり、
(A)陽電子線源: 電子加速器を用いて電子・陽電子対から陽電子を発生
(B)ガンマ線検出器: BaFシンチレーターおよび光電子増倍管
(C)測定温度及び雰囲気: 25℃、真空中
(D)消滅γ線カウント数: 3×10以上
(E)陽電子ビームエネルギー:10keV
かつ、X−ray Photoelectron Spectroscopy(XPS法)により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下である上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0013】
(7) 前記炭素材は、黒鉛を含む上記(1)ないし(6)のいずれか記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0014】
(8) 前記黒鉛の含有量は、55〜95重量%である上記(7)に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0015】
(9) 前記炭素材は、ハードカーボンと炭素材とを含み、
前記黒鉛の含有量をA[重量%]、前記ハードカーボンの含有量をB[重量%]としたとき、1.2≦A/B≦19の関係を満足する上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【0016】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法により製造されたことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
【0017】
(11) 上記(10)に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、セパレータと、リチウムイオン二次電池用正極と、電解質と、を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0018】
発明によれば、安定した出力、容量等の特性を備えたリチウムイオン二次電池を形成することが可能なリチウムイオン二次電池用負極を容易に製造可能な製造方法を提供すること、そのようなリチウムイオン二次電池用負極を提供すること、安定した出力、容量等の特性を備えたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のリチウムイオン二次電池用負極の一例を示す断面図である。
【図2】消滅γ線のカウント数と、陽電子消滅時間との関係を示す図である。
【図3】リチウムイオン二次電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《リチウムイオン二次電池用負極の製造方法》
まず、本発明のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法の説明に先立ち、リチウムイオン二次電池用負極について説明する。
【0021】
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極の一例を示す断面図、図2は、消滅γ線のカウント数と、陽電子消滅時間との関係を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極(以下単に負極ともいう)10は、2つの負極材層1と、当該2つの負極材層1で挟持された負極集電体2とが積層した積層体で構成されている。
【0023】
負極材層1は、主として炭素材で構成された負極材で形成された層である。負極材については後に詳細に説明する。
【0024】
負極材層1の平均厚さは、5〜100μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのがより好ましい。
【0025】
負極集電体2は、例えば、銅箔またはニッケル箔等で構成されている。
負極集電体2の平均厚さは、5〜50μmであるのが好ましく、10〜20μmであるのがより好ましい。
【0026】
このようなリチウムイオン二次電池用負極は、例えば、以下のような製造方法により製造することができる。
【0027】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、負極材と溶媒とを含む塗工液を調製する塗工液調製工程と、当該塗工液をシート状の負極集電体2の両面に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、当該塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥する第1乾燥工程と、第1乾燥工程を経た塗膜に対して圧力を加える加圧工程と、塗膜と負極集電体とで構成されたシートを所定の大きさに切るカット工程と、塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥し、負極材層1を形成する第2乾燥工程とを有する。
【0028】
ところで、従来のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法では、炭素材で構成された層(負極材層)中に塗工液中の溶媒が十分に除去することができず、負極の性能の低下が生じる、加圧工程の際にプレス機に付着して電極の剥離が発生するといった問題があった。その結果、得られるリチウムイオン二次電池の特性(出力、容量等)が低下するといった問題があった。また、溶媒を完全に除去するために、高温で乾燥すると、負極材に含まれるバインダーに変質や分解が生じてしまい、これによって、電極の剥離が発生するといった問題があった。
【0029】
これに対して、本発明のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法では、第1乾燥工程と第2乾燥工程とを有することにより、負極材層中に溶媒が残存するのを効果的に防止することができ、安定した出力、容量等の特性を備えたリチウムイオン二次電池を形成することが可能なリチウムイオン二次電池用負極を容易に製造することができる。また、このように2段階に分けて所定の温度で所定時間乾燥することにより、バインダーの偏析・分解を抑制することができ、負極の特性の低下を防止することができる。
【0030】
以下、各工程について詳細に説明する。
<塗工液調製工程>
まず、負極材層1の形成に用いる塗工液を調製する。
【0031】
塗工液は、主として炭素材で構成された負極材と、これを分散する溶媒とを含んでいる。
【0032】
以下、塗工液中に含まれる成分について説明する。
[負極材]
上述したように負極材を構成する主材料としては、炭素材が用いられる。
【0033】
炭素材としては、ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)や黒鉛(グラファイト)等が挙げられる。
【0034】
特に、炭素材としては、ハードカーボンと黒鉛とを併用するのが好ましい。これにより、充放電効率を高いものとしつつ、サイクル時の安定性を高め、大電流の入出力特性を改善することができる。特に、ハードカーボンは、溶媒との親和性が高いため、溶媒が除去しにくいという傾向があるが、本発明の製造方法を用いることにより、確実に溶媒を除去することができる。なお、ハードカーボンおよび黒鉛については、後に説明する。
【0035】
また、負極材を構成する材料としては、炭素材の他、ポリエチレン、ポリプロピレン等を含むフッ素系高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBRラテックス)等のゴム状高分子、ポリイミド等をバインダーとして添加することができる。
【0036】
バインダーの添加量は、炭素材100重量部に対して、1〜30重量部であるのが好ましい。
【0037】
[溶媒]
溶媒は、塗工液の粘度を調整する機能を備えた成分である。
【0038】
このような溶媒としては、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0039】
塗工液中における溶媒の含有量は、20〜80重量%であるのが好ましく、30〜60重量%であるのがより好ましい。
【0040】
このような塗工液は、例えば、負極材と溶媒とを混合・混練してスラリー状にすることにより調製することができる。
【0041】
<塗工工程>
次に、得られた塗工液を、予め用意したシート状の負極集電体上に塗工し、塗膜を形成する。
【0042】
塗工は、例えば、グラビアコーター、スリットコーター、バーコーター、ドクターブレードコーター等の公知の装置を用いて行うことができる。
【0043】
<第1乾燥工程>
次に、形成した塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥する。
【0044】
本工程では、塗膜中のある程度の溶媒を除去する。すなわち、1回の乾燥で完全に乾燥させず、後述する第2乾燥工程において完全に乾燥させる。これにより、確実に溶媒を除去することができるとともに、続けて長時間高温にさらすことによる負極材の変質を効果的に防止できる。
【0045】
本発明において、第1乾燥工程における乾燥温度は、60〜200℃であるが、80〜150℃であるのが好ましい。これにより、より確実に溶媒を除去することができる。
【0046】
また、本発明において、第1乾燥工程における乾燥時間は、10分〜24時間であるが、10分〜3時間であるのが好ましい。これにより、溶媒を確実に除去しつつ、負極を効率よく製造することができる。
【0047】
第1乾燥工程は、大気圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。減圧下で行う場合、乾燥温度をより低くすることができるとともに、乾燥時間も短縮することができる。
【0048】
<加圧工程>
次に、第1乾燥工程を経た塗膜に対してプレス加工を施す(圧力を加える)。これにより、最終的に形成される負極材層1中における負極材の密度を高めることができ、負極の特性をより向上させることができる。また、プレス加工を施すことにより、塗膜内部に存在する溶媒を塗膜表面付近に染み出させることができ、後述する第2乾燥工程における乾燥をより効果的に行うことができる。
【0049】
本工程における塗膜に対する圧力は、50〜600MPaであるのが好ましく、100〜400MPaであるのがより好ましい。これにより、最終的に形成される負極材層1中における負極材の密度を適度なものとすることができ、負極の特性をより向上させることができる。また、後述する第2乾燥工程における乾燥効果をより向上させることができる。
【0050】
<カット工程>
次に、塗膜と負極集電体とで構成されたシートを所定の大きさにカットする。これにより、負極のサイズを最終的なリチウムイオン二次電池に適用可能なサイズとすることができる。
なお、このようなカット工程は、後述する第2乾燥工程の後に行ってもよい。
【0051】
<第2乾燥工程>
次に、塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間、さらに乾燥し、負極材層1を形成する。その結果、2つの負極材層1と、当該2つの負極材層1で挟持された負極集電体2とが積層した積層体で構成されたリチウムイオン二次電池用負極10が得られる。
【0052】
このように2段階に分けて乾燥させることにより、確実に溶媒を除去することができるとともに、続けて長時間高温にさらすことによる負極材の変質を効果的に防止できる。
【0053】
本発明において、第2乾燥工程における乾燥温度は、60〜200℃であるが、80〜150℃であるのが好ましい。これにより、より確実に溶媒を除去することができる。
【0054】
また、本発明において、第2乾燥工程における乾燥時間は、10分〜24時間であるが、10分〜3時間であるのが好ましい。これにより、溶媒を確実に除去しつつ、負極を効率よく製造することができる。
【0055】
第2乾燥工程は、上記第1乾燥工程と同様に、大気圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。減圧下で行う場合、乾燥温度をより低くすることができるとともに、乾燥時間も短縮することができる。
【0056】
《黒鉛およびハードカーボン》
次に、黒鉛およびハードカーボンについて詳細に説明する。
【0057】
(黒鉛)
黒鉛とは、炭素の同素体の1つであり、六炭素環が連なった層からできている層状格子をなす六方晶系、六角板状結晶の物質である。
【0058】
炭素材として黒鉛(グラファイト)を用いた場合、充放電効率(放電容量/充電容量)を高いものとすることができる。
【0059】
リチウムイオン二次電池用炭素材中における黒鉛の含有量は、55〜95重量%であるのが好ましく、60〜85重量%であるのがより好ましい。黒鉛の含有量が上記範囲であると、充放電効率を高いものとしつつ、サイクル時の安定性を高め、大電流の入出力特性を改善することができる。これに対して、黒鉛の含有量が前記下限値未満であると、十分な充放電効率が得られない。一方、黒鉛の含有量が前記上限値を超えると、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性の改善効果が十分なものとならない。
【0060】
(ハードカーボン)
ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)とは、グラファイト結晶構造が発達しにくい高分子を焼成して得られる炭素材であって、アモルファス(非晶質)な物質である。言い換えると、ハードカーボンとは、樹脂または樹脂組成物を炭化処理することにより得られる炭素素材である。
【0061】
炭素材としてハードカーボンを用いた場合、サイクル時の安定性を高め、大電流の入出力特性を改善したものとすることができる。
【0062】
リチウムイオン二次電池用炭素材中におけるハードカーボンの含有量は、5〜45重量%であるのが好ましく、15〜40重量%であるのがより好ましい。これにより、優れた充放電効率を損なうことなく、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性をより効果的に高いものとすることができる。
【0063】
黒鉛とハードカーボンとを併用する場合、黒鉛の含有量をA[重量%]、ハードカーボンの含有量をB[重量%]としたとき、1.2≦A/B≦19の関係を満足するのが好ましく、1.5≦A/B≦5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、優れた充放電効率を損なうことなく、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性をさらに効果的に高いものとすることができる。
【0064】
ハードカーボンの原材料となる、樹脂あるいは、樹脂組成物に含まれる樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいはエチレン製造時に副生する石油系のタールおよびピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分やピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチのような石油系または石炭系のタール若しくはピッチ、さらには前記タール、ピッチ等を架橋処理したものなどを含有することができ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
また、後述するように、樹脂組成物は、上記樹脂を主成分とするとともに、硬化剤、添加剤などを併せて含有することができ、さらには酸化等による架橋処理なども適宜実施することができる。
【0066】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、シアネート樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また、これらが種々の成分で変性された変性物を用いることもできる。
【0067】
また、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン、塩化ビニル、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、などが挙げられる。
【0068】
特にハードカーボンに用いられる主成分となる樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。これにより、ハードカーボンの残炭率をより高めることができる。
【0069】
特に、熱硬化性樹脂の中でも、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、及び、アニリン樹脂、およびこれらの変性物から選ばれるものであることが好ましい。これにより、炭素材の設計の自由度が広がり、低価格で製造することができる。また、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性をさらに高いものとすることができる。
また、熱硬化性樹脂を用いる場合には、その硬化剤を併用することができる。
【0070】
用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂、ポリアセタール、パラホルムなどを用いることができる。また、エポキシ樹脂の場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどのポリアミン化合物、酸無水物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、ノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノール型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など、エポキシ樹脂にて公知の硬化剤を用いることができる。
【0071】
なお、通常は所定量の硬化剤を併用する熱硬化性樹脂であっても、本実施形態で用いられる樹脂組成物においては、通常よりも少ない量を用いたり、あるいは硬化剤を併用しないで用いたりすることもできる。
【0072】
また、ハードカーボンの原材料としての樹脂組成物においては、上記成分の他、添加剤を配合することができる。
【0073】
ここで用いられる添加剤としては特に限定されないが、例えば、200〜800℃にて炭化処理した炭素材前駆体、有機酸、無機酸、含窒素化合物、含酸素化合物、芳香族化合物、および、非鉄金属元素などを挙げることができる。これら添加剤は、用いる樹脂の種類や性状などにより、1種または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
ハードカーボンの原材料として用いられる樹脂としては、後述する含窒素樹脂類を主成分樹脂として含んでいてもよい。また、主成分樹脂に含窒素樹脂類が含まれていないときには主成分樹脂以外の成分として、少なくとも1種以上の含窒素化合物を含んでいてもよいし、含窒素樹脂類を主成分樹脂として含むとともに含窒素化合物を主成分樹脂以外の成分として含んでいてもよい。このような樹脂を炭化処理することにより、窒素を含有するハードカーボンを得ることができる。ハードカーボン中に窒素が含まれると、窒素の有する電気陰性度により、ハードカーボン(リチウムイオン二次電池用炭素材)に好適な電気的特性を付与することができる。これにより、リチウムイオンの吸蔵・放出を促進させ、高い充放電特性を付与することができる。
【0075】
ここで、含窒素樹脂類としては、以下のものを例示することができる。
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、シアネート樹脂、ウレタン樹脂のほか、アミンなどの含窒素成分で変性されたフェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0076】
熱可塑性樹脂としては、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミドなどが挙げられる。
【0077】
また、含窒素樹脂類以外の樹脂としては、以下のものを例示することができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0078】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
【0079】
また、主成分樹脂以外の成分として含窒素化合物を用いる場合、その種類としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤であるヘキサメチレンテトラミン、エポキシ樹脂の硬化剤である脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミドなどのほか、硬化剤成分以外にも、硬化剤として機能しないアミン化合物、アンモニウム塩、硝酸塩、ニトロ化合物など窒素を含有する化合物を用いることができる。
【0080】
上記含窒素化合物としては、主成分樹脂に含窒素樹脂類を含む場合であっても含まない場合であっても、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0081】
ハードカーボンの原材料として用いられる樹脂組成物、あるいは樹脂中の窒素含有量としては特に限定されないが、5〜65重量%であることが好ましく、10〜20重量%であるのがより好ましい。
【0082】
このような樹脂組成物あるいは樹脂の炭化処理を行うことにより得られるハードカーボン中における炭素原子含有量は95wt%以上であるのが好ましく、さらに、窒素原子含有量が0.5〜5wt%であるのが好ましい。
【0083】
このように窒素原子を0.5wt%以上、特に1.0wt%以上含有することで、窒素の有する電気陰性度により、ハードカーボンに好適な電気的特性を付与することができる。これにより、リチウムイオンの吸蔵・放出を促進させ、高い充放電特性を付与することができる。
【0084】
また、窒素原子を5wt%以下、特に3wt%以下とすることで、ハードカーボンに付与される電気的特性が過剰に強くなってしまうことが抑制され、吸蔵されたリチウムイオンが窒素原子と電気的吸着を起こすことが防止される。これにより、不可逆容量の増加を抑制し、高い充放電特性を得ることができる。
【0085】
ハードカーボン中の窒素含有量は、上記樹脂組成物あるいは樹脂中の窒素含有量のほか、樹脂組成物あるいは樹脂を炭化する条件や、炭化処理の前に硬化処理やプレ炭化処理を行う場合には、それらの条件についても適宜設定することによって、調整することができる。
【0086】
例えば、上述したような窒素含有量である炭素材を得る方法としては、樹脂組成物あるいは樹脂中の窒素含有量を所定値として、これを炭化処理する際の条件、特に、最終温度を調整する方法があげられる。
【0087】
ハードカーボンの原材料として用いられる樹脂組成物の調製方法としては特に限定されず、例えば、上記主成分樹脂と、これ以外の成分とを所定の比率で配合し、これらを溶融混合する方法、これらの成分を溶媒に溶解して混合する方法、あるいは、これらの成分を粉砕して混合する方法などにより調製することができる。
本明細書中において、上記窒素含有量は熱伝導度法により測定したものである。
【0088】
本方法は、測定試料を、燃焼法を用いて単純なガス(CO、HO、およびN)に変換した後に、ガス化した試料を均質化した上でカラムを通過させるものである。これにより、これらのガスが段階的に分離され、それぞれの熱伝導率から、炭素、水素、及び窒素の含有量を測定することができる。
【0089】
なお、本明細書中では、パーキンエルマー社製・元素分析測定装置「PE2400」を用いて実施した。
【0090】
また、ハードカーボンは、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上480ピコ秒以下のものであるのが好ましく、380ピコ秒以上460ピコ秒以下のものであるのがより好ましい。
【0091】
陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下である場合には、後述するようにリチウムが出入りしやすいサイズの空隙がハードカーボンに形成されているといえ、リチウムイオン二次電池用炭素材の充電容量、放電容量をさらに高めることができる。
【0092】
なお、陽電子消滅法による陽電子寿命の測定は、以下の条件で行った。
(A)陽電子線源: 電子加速器を用いて電子・陽電子対から陽電子を発生
(B)ガンマ線検出器: BaFシンチレーターおよび光電子増倍管
(C)測定温度及び雰囲気: 25℃、真空中
(D)消滅γ線カウント数: 3×10以上
(E)陽電子ビームエネルギー:10keV
かつ、X−ray Photoelectron Spectroscopy(XPS法)により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下である。
【0093】
ここで、陽電子寿命と、空隙サイズとの関係について説明する。
陽電子寿命法とは、陽電子(e)が試料に入射してから、消滅するまでの時間を計測して、空隙の大きさを測定する方法である。
陽電子は、電子の反物質であり、電子と同じ静止質量を持つがその電荷は正である。
【0094】
陽電子は、物質中に入射すると、電子と対(陽電子−電子対(ポジトロニウム))になり、その後消滅することが知られている。炭素材に陽電子を打ち込むと、陽電子(e)は高分子中で叩き出された電子の1つと結合してポジトロニウムを形成する。ポジトロニウムは高分子材料中の電子密度の低い部分、すなわち高分子中の局所空隙にトラップされ、空隙壁から出た電子雲と重なり消滅する。ポジトロニウムが高分子中の空隙中に存在する場合、その空隙の大きさとポジトロニウムの消滅寿命は反比例の関係にある。すなわち、空隙が小さいとポジトロニウムと周囲電子との重なりが大きくなり、陽電子消滅寿命は短くなる。一方、空隙が大きいとポジトロニウムが空隙壁からしみ出した他の電子と重なって消滅する確率が低くなりポジトロニウムの消滅寿命は長くなる。したがって、ポジトロニウムの消滅寿命を測定することにより炭素材中の空隙の大きさを評価することができる。
【0095】
上述したように、炭素材に入射した陽電子は、エネルギーを失った後、電子とともに、ポジトロニウムを形成し消滅する。この際、炭素材からは、γ線が放出されることとなる。
従って、放出されたγ線が測定の終了信号となる。
【0096】
陽電子消滅寿命の測定には、陽電子源として電子加速器や汎用のものとしては放射性同位元素22Naがよく用いられる。22Naは22Neにβ崩壊するときに、陽電子と1.28MeVのγ線を同時放出する。炭素材中に入射した陽電子は、消滅過程を経て511keVのγ線を放出する。したがって、1.28MeVのγ線を開始信号とし、511kevのγ線を終了信号として、両者の時間差を計測すれば陽電子の消滅寿命を求めることができる。具体的には、図2に示すような、陽電子寿命スペクトルが得られる。この陽電子寿命スペクトルの傾きAが陽電子寿命を示しており、陽電子寿命スペクトルから炭素材の陽電子寿命を把握することができる。
【0097】
また、陽電子源として、電子加速器を使用する場合には、タンタルまたはタングステンからなるターゲットに電子ビームを照射することによって発生する制動X線により電子・陽電子対生成を引起こさせ、陽電子を発生させる。電子加速器の場合、陽電子ビームを試料に入射した時点を測定開始点(前記22Naにおける開始信号に相当)とし、終了信号は22Naの場合と同様の原理で測定を実施する。
【0098】
陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒未満の場合には、空孔サイズが小さすぎて、リチウムイオンを吸蔵、放出しにくくなる。また、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が480ピコ秒を超えると、リチウムを吸蔵量は多くなるが、電解液等他の物質の侵入により、静電容量の増加によりリチウムが放出しにくくなると推測される。
【0099】
また、ハードカーボンは、XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上1.8eV以下であるのが好ましく、0.9eV以上1.6eV以下であるのがより好ましい。XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が1.8eV以下である場合は、ハードカーボン表面に存在する元素のほとんどが不活性なC−C結合等によるものであり、リチウムイオン等のイオン伝導に関わる活性物質と反応する官能基や不純物が実質的に存在しない状態となる。また285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上の場合には、過度な結晶化などの問題が生じることがない。そのため、本発明の炭素材のようにXPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下の場合には、不可逆容量に起因する充放電効率の低下が抑制される。
【0100】
次に、XPS測定と表面状態との関係について説明する。
XPS測定法とは、固体試料表面にX線を照射し、それによって励起された原子から放出された光電子の運動エネルギーを測定することで、原子内における電子の結合エネルギー(原子により固有の値を持つ)が求められ、表面に存在する構成元素の同定を行う方法である。
【0101】
FT−IR法も表面状態を分析することができるが、これは表面から約1μmに存在する化学結合の同定を行うのに対し、XPS測定法では表面から数Åに存在する元素の同定を行うことができる。このことから、より表面に近い官能基の同定を行うにはXPS測定法を用いるのが好ましい。
【0102】
また、ハードカーボンは、広角X線回折法からBragg式を用いて算出される(002)面の平均面間隔d002が3.4Å以上、3.9Å以下であることが好ましい。平均面間隔d002が3.4Å以上、特に3.6Å以上である場合には、リチウムイオンの吸蔵に伴う層間の収縮・膨張が起こり難くなるため、充放電サイクル性の低下を抑制できる。
【0103】
一方で、平均面間隔d002が3.9Å以下、特に3.8Å以下である場合にはリチウムイオンの吸蔵・脱離が円滑に行われ、充放電効率の低下を抑制できる。
【0104】
さらに、ハードカーボンは、c軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下であることが好ましい。
【0105】
Lcを8Å以上、特に9Å以上とすることでリチウムイオンを吸蔵・脱離することができる炭素層間スペースが形成され、十分な充放電容量が得られるという効果があり、50Å以下、特に15Å以下とすることでリチウムイオンの吸蔵・脱離による炭素積層構造の崩壊や、電解液の還元分解を抑制し、充放電効率と充放電サイクル性の低下を抑制できるという効果がある。
【0106】
Lcは以下のようにして算出される。
X線回折測定から求められるスペクトルにおける002面ピークの半値幅と回折角から次のScherrerの式を用いて決定した。
【0107】
Lc=0.94λ/(βcosθ) (Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
【0108】
ハードカーボンにおけるX線回折スペクトルは、島津製作所製・X線回折装置「XRD−7000」により測定したものである。ハードカーボンにおける、上記平均面間隔の測定方法は以下の通りである。
【0109】
ハードカーボンのX線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔dを以下のBragg式より算出した。
【0110】
λ=2dhklsinθ (Bragg式)(dhkl=d002
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
【0111】
さらに、ハードカーボンは、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が15m/g以下、1m/g以上であることが好ましい。
【0112】
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が15m/g以下であることで、炭素材と電解液との反応を抑制できる。
【0113】
また、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積を1m/g以上とすることで電解液の炭素材への適切な浸透性が得られるという効果がある。
【0114】
比表面積の算出方法は以下の通りである。
下記(1)式より単分子吸着量Wmを算出し、下記(2)式より総表面積Stotalを算出し、下記(3)式より比表面積Sを求めた。
【0115】
1/[W(Po/P−1)=(C−1)/WmC(P/Po)/WmC・・(1)
式(1)中、P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、Po:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧、W:吸着平衡圧Pにおける吸着量、Wm:単分子層吸着量、C:固体表面と吸着質との相互作用の大きさに関する定数(C=exp{(E1−E2)RT})[E1:第一層の吸着熱(kJ/mol)、E2:吸着質の測定温度における液化熱(kJ/mol)]
Stotal=(WmNAcs)M・・・・・・・・・(2)
式(2)中、N:アボガドロ数、M:分子量、Acs:吸着断面積
S=Stotal/w・・・・・・(3)
式(3)中、w:サンプル重量(g)
【0116】
以上のようなハードカーボンは、樹脂あるいは、樹脂組成物の代表例では以下のようにして製造することができる。
はじめに、炭化処理すべき、樹脂あるいは、樹脂組成物を製造する。
【0117】
樹脂組成物の調製のための装置としては特に限定されないが、例えば、溶融混合を行う場合には、混練ロール、単軸あるいは二軸ニーダーなどの混練装置を用いることができる。また、溶解混合を行う場合は、ヘンシェルミキサー、ディスパーザなどの混合装置を用いることができる。そして、粉砕混合を行う場合には、例えば、ハンマーミル、ジェットミルなどの装置を用いることができる。
【0118】
このようにして得られた樹脂組成物は、複数種類の成分を物理的に混合しただけのものであってもよいし、樹脂組成物の調製時、混合(攪拌、混練など)に際して付与される機械的エネルギーおよびこれが変換された熱エネルギーにより、その一部を化学的に反応させたものであってもよい。具体的には、機械的エネルギーによるメカノケミカル的反応、熱エネルギーによる化学反応をさせてもよい。
ハードカーボンは、上記の樹脂組成物あるいは、樹脂を炭化処理してなるものである。
【0119】
ここで炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、常温から1〜200℃/時間で昇温して、800〜3000℃で0.1〜50時間、好ましくは0.5〜10時間保持して行うことができる。炭化処理時の雰囲気としては窒素、ヘリウムガスなどの不活性雰囲気下、もしくは不活性ガス中に微量の酸素が存在するような、実質的に不活性な雰囲気下、または還元ガス雰囲気下で行うことが好ましい。このようにすることで、樹脂の熱分解(酸化分解)を抑制し、所望の炭素材を得ることができる。
【0120】
このような炭化処理時の温度、時間等の条件は、ハードカーボンの特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
【0121】
また、XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下である炭素材を得るために、樹脂等に応じて適宜条件を定めればよいが、例えば炭化処理時の温度を1000℃以上にしたり、昇温速度を200℃/時間未満にするとよい。
【0122】
このようにすることで、ハードカーボン表面が不活性な官能基等によるものとなり、XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下であるハードカーボンを得ることができると推測される。
なお、上記炭化処理を行う前に、プレ炭化処理を行うことができる。
【0123】
ここでプレ炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、200〜600℃で1〜10時間行うことができる。このように、炭化処理前にプレ炭化処理を行うことで、樹脂組成物あるいは樹脂等を不融化させ、炭化処理工程前に樹脂組成物あるいは樹脂等の粉砕処理を行った場合でも、粉砕後の樹脂組成物あるいは樹脂等が炭化処理時に再融着するのを防ぎ、所望とする炭素材を効率的に得ることができるようになる。
【0124】
このとき、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下であるハードカーボンを得るための方法の一例としては、還元ガス、不活性ガスが存在しない状態で、プレ炭化処理を行うことがあげられる。
【0125】
また、ハードカーボン製造用の樹脂として、熱硬化性樹脂や重合性高分子化合物を用いた場合には、このプレ炭化処理の前に、樹脂組成物あるいは樹脂の硬化処理を行うこともできる。
【0126】
硬化処理方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に硬化反応が可能な熱量を与えて熱硬化する方法、あるいは、樹脂と硬化剤とを併用する方法などにより行うことができる。これにより、プレ炭化処理を実質的に固相でできるため、樹脂の構造をある程度維持した状態で炭化処理またはプレ炭化処理を行うことができ、ハードカーボンの構造や特性を制御することができるようになる。
【0127】
なお、上記炭化処理あるいはプレ炭化処理を行う場合には、上記樹脂組成物に、金属、顔料、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤などを添加して、所望する特性を炭素材に付与することもできる。
【0128】
上記硬化処理および/またはプレ炭化処理を行った場合は、その後、上記炭化処理の前に、処理物を粉砕しておいてもよい。こうした場合には、炭化処理時の熱履歴のバラツキを低減させ、ハードカーボンの表面状態の均一性を高めることができる。そして、処理物の取り扱い性を良好なものにすることができる。
【0129】
さらに、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下のハードカーボンを得るために、たとえば、必要に応じて炭化処理後において、還元ガスまたは不活性ガスの存在下で、800〜500℃まで自然冷却し、その後、100℃以下となるまで100℃/時間で冷却してもよい。
【0130】
このようにすることで、急速冷却によるハードカーボンの割れが抑制され、形成された空隙が維持できるという理由により、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下であるハードカーボンを得ることができると推測される。
【0131】
《リチウムイオン二次電池》
次に、上記リチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池の一例について説明する。
【0132】
図3は、リチウムイオン二次電池の模式図である。
二次電池100は、図3に示すように、負極10と、正極20と、セパレータ30と、電解液40とを有している。
【0133】
負極10は、上述したように、2つの負極材層1と、当該2つの負極材層1で挟持された負極集電体2とで構成されている。
【0134】
正極20は、図3に示すように、正極材層3と正極集電体4とを有しており、正極集電体4を2つの正極材層3で挟持した積層体で構成されている。
【0135】
正極材層3を構成する正極材としては、特に限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)などの複合酸化物や、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子などを用いることができる。
正極集電体4としては、例えば、アルミニウム箔を用いることができる。
【0136】
そして、本実施形態における正極20は、既知の正極の製造方法により製造することができる。
【0137】
セパレータ30は、負極10と正極20との間に設けられている。
セパレータ30としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの多孔質フィルム、不織布等を用いることができる。
【0138】
電解液40は、正極20と負極10との間を満たすものであり、充放電によってリチウムイオンが移動する層である。
【0139】
電解液40としては、非水系溶媒に電解質となるリチウム塩を溶解したものが用いられる。
【0140】
この非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類などの混合物などを用いることができる。
【0141】
電解質としては、LiClO、LiPFなどのリチウム金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩などを用いることができる。また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどに混合し、固体電解質として用いることもできる。
【0142】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施例、比較例で示される「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0144】
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
1.陽電子寿命法による陽電子寿命の測定方法
陽電子・ポジトロニウム寿命測定・ナノ空孔計測装置(産業技術総合研究所製)を用いて、陽電子が消滅する際に発生する電磁波(消滅γ線)を測定し、陽電子寿命を測定した。
【0145】
具体的には、以下のようである。
(A)陽電子線源:産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門の電子加速器を用い
て、電子・陽電子対生成から陽電子を発生(前記電子加速器は、ター
ゲット(タンタル)に電子ビームを照射して、電子・陽電子対生成を
引きおこし、陽電子を発生)
(B)ガンマ線検出器:BaFシンチレーターおよび光電子増倍管
(C)測定温度及び雰囲気:25℃、真空中(1×10−5Pa(1×10−7Torr))
(D)消滅γ線カウント数:3×10以上
(E)陽電子ビームエネルギー:10keV
(F)試料サイズ:粉末を試料ホルダ(アルミ板)に厚み0.1mmで塗布
【0146】
2.XPS測定による表面状態の分析
Escalab−220iXL(サーモフィッシャー サイエンティフィック社製)を用い、下記の条件にて測定を実施し、得られた285eV付近に認められるピークの半値幅を下記の計算方法で算出した。
【0147】
(測定条件)
X線源:Mg−Kα
出力:12kV−10mA
【0148】
(計算方法)
得られたスペクトルを基に、以下のようにしてピーク強度及びピーク半値幅を求める。
ピーク強度を求めるには、対象のピークの両端からベースラインを引き、このベースラインからピーク頂点までの強度をピーク強度とする。これは通常得られるスペクトルのベースラインは、測定時の環境やサンプルの違い等により変化するからである。なお、得られたスペクトルにおいて、複数のピークが重複した場合は、それら重複ピークの両端からベースラインを引く。またピーク半値幅は、ピーク頂点から前記で求めたピーク強度の1/2の強度の点からベースラインに平行に線を引き、ピーク両端との交点のエネルギーを読み取ることで求める。
【0149】
3.平均面間隔(d002)、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc)
島津製作所製・X線回折装置「XRD−7000」を使用して平均面間隔を測定した。
炭素材のX線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔d002を以下のBragg式より算出した。
λ=2dhklsinθ (Bragg式)(dhkl=d002
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
【0150】
また、Lcは以下のようにして測定した。
X線回折測定から求められるスペクトルにおける002面ピークの半値幅と回折角から次のScherrerの式を用いて決定した。
Lc=0.94λ/(βcosθ) (Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
【0151】
4.比表面積
ユアサ社製のNova−1200装置を使用して窒素吸着におけるBET3点法により測定した。具体的な算出方法は、前記実施形態で述べた通りである。
【0152】
5.炭素含有率、窒素含有率
パーキンエルマー社製・元素分析測定装置「PE2400」を用いて測定した。測定試料を、燃焼法を用いてCO、HO、およびNに変換した後に、ガス化した試料を均質化した上でカラムを通過させる。これにより、これらのガスが段階的に分離され、それぞれの熱伝導率から、炭素、水素、及び窒素の含有量を測定した。
【0153】
ア)炭素含有率
得られたハードカーボンを、110℃/真空中、3時間乾燥処理後、元素分析測定装置を用いて炭素組成比を測定した。
イ)窒素含有率
得られたハードカーボンを、110℃/真空中、3時間乾燥処理後、元素分析測定装置を用いて窒素組成比を測定した。
【0154】
6.二次電池評価用二極式コインセル
各実施例、各比較例で得られた負極を用意した。
【0155】
正極はリチウム金属を用いて二極式コインセルにて評価を行った。電解液として体積比が1:1のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合液に過塩素酸リチウムを1モル/リットル溶解させたものを用いた。
【0156】
7.充電容量、放電容量、充放電効率
(1)充電容量、放電容量の評価
充電条件は電流25mA/gの定電流で1mVになるまで充電した後、1mV保持で1.25mA/gまで電流が減衰したところを充電終止とした。また、放電条件のカットオフ電位は、1.5Vとした。
【0157】
(2)充放電効率の評価
上記(1)で得られた値をもとに、下記式により算出した。
充放電効率(%)=[放電容量/充電容量]×100
【0158】
8.実施例
(実施例1)
樹脂組成物として、フェノール樹脂PR−217(住友ベークライト(株)製)を以下の工程(a)〜(f)の順で処理を行い、炭素材を得た。
【0159】
(a)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無しで、室温から500℃まで、100℃/時間で昇温
(b)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無しで、500℃で2時間脱脂処理後、冷却
(c)振動ボールミルで微粉砕
(d)不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1200℃まで、100℃/時間で昇温
(e)不活性ガス(窒素)流通下、1200℃で8時間炭化処理
(f)不活性ガス(窒素)流通下、600℃まで自然放冷後、600℃から100℃以下まで、100℃/時間で冷却
【0160】
得られた炭素材100部に対して、結合剤(バインダー)としてスチレンブタジエンゴム2部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース2部、希釈溶媒として水を120部加え混合し、スラリー状の負極混合物(塗工液)を調製した(塗工液調製工程)。
【0161】
調製した塗工液を18μmの銅箔(負極集電体)の片面に塗布し、その後、塗膜を80℃で0.5時間真空乾燥した(第1乾燥工程)。
【0162】
その後、塗膜に対してプレス加工を施した。この際の塗膜にかけた圧力は、100MPaであった(加圧工程)。
【0163】
次に、130℃1時間真空乾燥した(第2乾燥工程)。
その後、所定の大きさにカットし(カット工程)、評価用負極を得た。負極材層の平均厚さは、50μmであった。
【0164】
(実施例2、3)
第1乾燥工程および第2乾燥工程における乾燥温度および乾燥時間を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして負極を製造した。
【0165】
(実施例4)
実施例1においてフェノール樹脂にかえて、アニリン樹脂(以下の方法で合成したもの)を用いた。
【0166】
アニリン100部と37% ホルムアルデヒド水溶液697部、蓚酸2部を攪拌装置及び冷却管を備えた3つ口フラスコに入れ、100℃で3時間反応後、脱水し、アニリン樹脂110部を得た。得られたアニリン樹脂の重量平均分子量は約800であった。
【0167】
以上のようにして得られたアニリン樹脂100部とヘキサメチレンテトラミン10部を粉砕混合し得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の工程で処理を行い、炭素材を得、負極を製造した。
【0168】
(実施例5)
実施例4と同様の樹脂組成物を使用した。
【0169】
また、樹脂組成物の処理に際して、実施例1の(d)、(e)の工程を以下のようにした点以外は、実施例10と同様にして負極を得た。
【0170】
(d)不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1100℃まで、100℃/時間で昇温
(e)不活性ガス(窒素)流通下、1100℃で8時間炭化処理
【0171】
(実施例6)
炭素材として、黒鉛(メソフェーズカーボンマイクロビーズ)から構成されるものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして負極を製造した。
【0172】
(比較例1)
第2乾燥工程を行わなかった以外は、前記実施例と同様にして負極を製造した。
【0173】
(比較例2)
第2乾燥工程を行わず、第1乾燥工程における乾燥温度および乾燥時間を表1に示すように変更した以外は、前記実施例と同様にして負極を製造した。
【0174】
(比較例3〜6)
第1乾燥工程および第2乾燥工程における乾燥温度および乾燥時間を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして負極を製造した。なお、比較例6においては、負極を製造するのに時間がかかり、容易に製造できるものではなかった。
【0175】
上記各実施例および各比較例における第1乾燥工程および第2乾燥工程における乾燥温度、乾燥時間および乾燥時の減圧の有無、第1乾燥工程後の塗膜の含水率、第2乾燥工程の負極材層の含水率、加圧工程における、電極のはがれの有無を表1に示し、また、陽電子寿命、XPS、平均面間隔、結晶子の大きさ、比表面積、炭素含有率、窒素含有率を表2に示す。
【0176】
また、各実施例、各比較例で得られた炭素材を負極として使用した場合の充電容量、放電容量、充放電効率を同じく表2に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

【0179】
表2から解るように、本発明の製造方法で製造したリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池では、いずれの項目においても安定した特性を発揮するものであった。これに対して、比較例では、十分な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0180】
10 負極
1 負極材層
2 負極集電体
20 正極
3 正極材層
4 正極集電体
30 セパレータ
40 電解液
100 リチウムイオン二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池に用いられ、負極集電体と負極材層とが積層した積層体で構成された負極の製造方法であって、
主として炭素材で構成された負極材と、溶媒とを含む塗工液を調製する塗工液調製工程と、
前記塗工液をシート状の前記負極集電体上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、
前記塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥する第1乾燥工程と、
前記第1乾燥工程を経た前記塗膜に対して圧力を加える加圧工程と、
前記加圧工程を経た前記塗膜を60〜200℃の温度で10分〜24時間乾燥し、前記負極材層を形成する第2乾燥工程と、を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項2】
前記加圧工程と前記第2乾燥工程との間に、前記塗膜と前記負極集電体とで構成されたシートを所定の大きさに切るカット工程を有する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項3】
前記第2乾燥工程後に、前記負極材層と前記負極集電体とで構成されたシートを所定の大きさに切るカット工程を有する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項4】
前記炭素材は、ハードカーボンを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項5】
前記炭素材中における前記ハードカーボンの含有量は、5〜45重量%である請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項6】
以下の条件(A)〜(E)のもと、陽電子消滅法により測定した前記ハードカーボンの陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下であり、
(A)陽電子線源: 電子加速器を用いて電子・陽電子対から陽電子を発生
(B)ガンマ線検出器: BaFシンチレーターおよび光電子増倍管
(C)測定温度及び雰囲気: 25℃、真空中
(D)消滅γ線カウント数: 3×10以上
(E)陽電子ビームエネルギー:10keV
かつ、X−ray Photoelectron Spectroscopy(XPS法)により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項7】
前記炭素材は、黒鉛を含む請求項1ないし6のいずれか記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
前記黒鉛の含有量は、55〜95重量%である請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
前記炭素材は、ハードカーボンと炭素材とを含み、
前記黒鉛の含有量をA[重量%]、前記ハードカーボンの含有量をB[重量%]としたとき、1.2≦A/B≦19の関係を満足する請求項1ないし8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法により製造されたことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項11】
請求項10に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、セパレータと、リチウムイオン二次電池用正極と、電解質と、を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−80660(P2013−80660A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220975(P2011−220975)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】