リチウムイオン二次電池
【課題】極板群の変形を抑制するための技術を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池100は、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を備えている。これらは、巻かれた極板群4を形成するように組み合わされている。極板群4は、巻き始め部41及び発電部43を有する。巻き始め部41は、負極板6のみ又は負極板6及びセパレータ7のみによって形成されている。極板群4の中心部において、巻き始め部41の占める巻き回数は1回以上である。負極板6は、巻き始め部41を形成している予備部分6sと、発電部43を形成している本体部分6tとを含む。予備部分6s及び本体部分6tの両方が複数の柱状体11によって形成された負極活物質層26を有している。
【解決手段】リチウムイオン二次電池100は、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を備えている。これらは、巻かれた極板群4を形成するように組み合わされている。極板群4は、巻き始め部41及び発電部43を有する。巻き始め部41は、負極板6のみ又は負極板6及びセパレータ7のみによって形成されている。極板群4の中心部において、巻き始め部41の占める巻き回数は1回以上である。負極板6は、巻き始め部41を形成している予備部分6sと、発電部43を形成している本体部分6tとを含む。予備部分6s及び本体部分6tの両方が複数の柱状体11によって形成された負極活物質層26を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化及び高機能化が進むにつれて、小型及び軽量であり、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池への要望が高くなってきている。リチウムイオン二次電池の負極活物質として、黒鉛などの炭素系材料が実用化されている。しかし、負極活物質の容量密度は、現在では黒鉛の理論容量密度372mAh/gに限りなく近づいてきており、高容量化に限界が見え始めている。容量及びエネルギー密度を更に高めるために、負極活物質として、ケイ素、スズ、これらの酸化物、合金などが検討されている。これらの負極活物質の理論容量密度は、ケイ素で4200mAh/g、スズで990mAh/gと黒鉛に比べて極めて大きい。特に、ケイ素又はケイ素酸化物は、安価であるため、盛んに検討されている。これらの材料は、蒸着法、スパッタ法などの気相法で薄膜化することが検討されている。
【0003】
これらの材料の薄膜を用いたリチウムイオン二次電池は、次の課題を持っている。すなわち、リチウムの挿入及び脱離に伴い、活物質粒子が大きく膨張及び収縮する。この際に生じる応力によって、集電体から活物質層が剥離したり、活物質粒子が割れたり、活物質粒子が微粉化したりする。その結果、活物質粒子間の導電性が低下し、十分な充放電サイクル特性が得られない。
【0004】
特許文献1〜3には、活物質粒子の体積変動に伴う活物質層の剥離を防止するための技術が記載されている。具体的に、特許文献1には、集電体の上に所定パターンで選択的に隙間を持たせた構造を形成することが記載されている。特許文献2には、規則的に突起を配列させた集電体の上に活物質層を形成することが記載されている。特許文献3には、極板群の巻き始めに補強部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−127561号公報
【特許文献2】特開2008−146840号公報
【特許文献3】特開2004−356047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2の構成だけでは応力を十分に緩和することができず、極板群の内部で変形が生じる場合がある。特許文献3に記載された構成において、補強部は、正極板、負極板又はセパレータによって形成される。しかし、セパレータの強度は非常に低いので、セパレータのみで補強部を形成したとしても十分な補強効果を得ることは難しい。正極板又は負極板で補強部を形成することが現実的であるが、補強部で活物質層が剥離又は脱落することを防止するために、活物質層を有さない集電体のみの部分を形成する必要がある。
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は、極板群の変形を抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
正極板と、
負極集電体と、前記負極集電体の上に互いに離れて配置された複数の柱状体で構成された負極活物質層とを有し、合金系活物質で前記複数の柱状体のそれぞれが作られている負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、を備え、
巻かれた極板群を形成するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが組み合わされており、
前記巻かれた極板群は、前記負極板のみ又は前記負極板及び前記セパレータのみによって形成された巻き始め部と、前記巻き始め部の外側に位置するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータによって形成された発電部とを含み、
前記極板群の中心部において、前記巻き始め部の占める巻き回数が1回以上であり、
前記負極板は、前記巻き始め部を形成している予備部分と、前記発電部を形成している本体部分と、を含み、
前記予備部分及び前記本体部分の両方が前記負極活物質層を有している、リチウムイオン二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明において、巻かれた極板群は、巻き始め部及び発電部を有する。巻き始め部は、負極板のみ又は負極板及びセパレータのみで構成されている。極板群の中心部において、巻き始め部の占める巻き回数が1回以上である。負極板は、巻き始め部を形成している予備部分と、発電部を形成している本体部分とを含む。そして、予備部分及び本体部分の両方が負極活物質層を有している。つまり、巻き始め部にも複数の柱状体が存在している。
【0010】
複数の柱状体は、負極板の強度を高める効果を奏する。高強度を有する負極板で巻き始め部が構成されているので、巻き始め部も高強度を有する。つまり、巻き始め部が極板群の芯材として機能する。極板群の中心部の強度が向上することにより、充放電サイクルに伴う極板群の変形を抑制することができる。高強度を有する負極板で巻き始め部を形成するので、巻き始め部の占める巻き回数も比較的少ない回数で足りる。従って、極板群の変形を抑制しつつ、発電に寄与しない部分を最小限に抑えることができる。
【0011】
また、複数の柱状体は、負極集電体の上に互いに離れて配置されている。そのため、小さい曲率半径で負極板が巻かれたとしても、負極集電体から柱状体が脱落しにくい。従って、特許文献3に記載された構成と異なり、負極板が負極集電体のみで形成された部分を有している必要がない。このような負極板は容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の縦断面図
【図2】極板群の概略横断面図
【図3A】負極板の部分拡大断面図
【図3B】負極板の概略全体図
【図4】負極集電体の平面図
【図5】真空蒸着装置の構成図
【図6】扁平型電池に使用できる極板群の概略横断面図
【図7】充放電サイクル前における実施例1の電池のX線CTスキャン像
【図8】実施例1、比較例1及び比較例2の電池の充放電サイクル特性を示すグラフ
【図9】500回の充放電サイクル後における実施例1の電池のX線CTスキャン像
【図10】175回の充放電サイクル後における比較例1の電池のX線CTスキャン像
【図11】280回の充放電サイクル後における比較例2の電池のX線CTスキャン像
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、巻かれた極板群4と、極板群4を収容している外装ケース1とを有する。極板群4は、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を含む。一対のセパレータ7は、負極板6の両面及び正極板5の両面を覆うように、正極板5と負極板6との間に配置されている。極板群4の中心部には中空ピン45が配置されている。極板群4には電解液が含浸されている。外装ケース1の開口部は封口板2で塞がれている。封口板2の周囲に絶縁パッキン3が配置されている。極板群4の上面及び下面には、それぞれ、絶縁リング8が配置されている。
【0015】
正極板5は、正極集電体15及び正極活物質層25で構成されている。正極活物質層25は、正極集電体15の両面にそれぞれ形成されている。正極板5には正極リード5cの一端が接続されている。正極リード5cの他端は封口板2の裏面に接続されている。負極板6は、負極集電体16及び負極活物質層26で構成されている。負極活物質層26は、負極集電体16の両面にそれぞれ形成されている。負極板6には負極リード6cの一端が接続されている。負極リード6cの他端は外装ケース1の底面に接続されている。
【0016】
図2に示すように、極板群4は、巻き始め部41及び発電部43を有する。巻き始め部41は、極板群4の中心部に位置している部分であって、負極板6及び一対のセパレータ7のみによって形成されている。つまり、巻き始め部41は、電池反応に寄与しない部分である。巻き始め部41において、一対のセパレータ7は、それぞれ、負極板6の両面を覆っている。巻き始め部41において、負極板6は正極板5に対向していない。ただし、巻き始め部41は、負極板6のみによって形成されていてもよい。つまり、巻き始め部41にセパレータ7が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。さらに、一対のセパレータ7のうち、一方のセパレータ7が巻き始め部41に含まれていてもよい。セパレータ7による強度の向上は、あまり期待できないからである。発電部43は、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7によって形成された部分であって、巻き始め部41の外側に位置している。発電部43は、電池反応に寄与する部分であり、極板群4の大部分を占めている。
【0017】
図3Aに示すように、負極活物質層26は、負極集電体16の上に互いに離れて配置された複数の柱状体11で構成されている。複数の柱状体11は、それぞれ、合金系活物質で作られている。負極集電体16は、その表面において、互いに離れて形成された複数の突起12を有する。複数の柱状体11は、それぞれ、複数の突起12に接合されている。隣り合う柱状体11の間には、十分な広さの隙間が確保されている。このような隙間は、柱状体11の膨張及び収縮に伴う応力を緩和する効果を奏する。
【0018】
図3Bに示すように、負極板6は、予備部分6s及び本体部分6tを有する。予備部分6sは、巻き始め部41を形成している部分である。本体部分6tは、発電部43を形成している部分である。予備部分6s及び本体部分6tの両方が負極活物質層26を有している。つまり、予備部分6sにも柱状体11が形成されている。柱状体11を有する負極板6の強度(例えば、引張強度)は、負極集電体16の強度よりも高い。従って、予備部分6sも高強度を有する。予備部分6sが高強度を有しているので、巻き始め部41が極板群4の芯材としての機能を果たし、極板群4の中心部の強度(剛性)が向上する。これにより、充放電サイクルに伴う極板群4の変形を抑制することができる。
【0019】
極板群4の中心部において、巻き始め部41の占める巻き回数は1回以上である。例えば、図2に示す例では、巻き始め部41の占める巻き回数は約3回である。極板群4の中心部において巻き始め部41の占める巻き回数は、例えば、2回以上7回以下に調節されていてもよい。発電に寄与しない巻き始め部41の占める巻き回数がこのような範囲に調節されていると、極板群4の変形を抑制する効果を十分に得ながら、放電容量の減少を最小限に抑えることができる。
【0020】
本明細書では、極板群4のうち、負極板6の一方の面が正極板5に対向する位置までの部分が「巻き始め部41」と定義される。
【0021】
負極集電体16において、複数の突起12は、規則的な配列を有していてもよいし、ランダムな配列を有していてもよい。ただし、規則的な配列は、負極集電体16の強度が均一に保たれるので好ましい。
【0022】
複数の突起12の配列は、例えば、以下の方法で特定することができる。図4に示すように、負極集電体16の平坦面内で複数の第1の仮想直線401及び複数の第2の仮想直線402をそれぞれ定義する。複数の第1の仮想直線401は、互いに平行であり、第1の間隔S1で等間隔に配列している。複数の第2の仮想直線402は、第1の仮想直線401に垂直な直線であり、第2の間隔S2で等間隔に配列している。第2の間隔2は、第1の間隔S1よりも小さい。突起12は、第1の仮想直線401と第2の仮想直線402との交点に形成されている。突起12は、さらに、互いに隣接する2つの第1の仮想直線401と、互いに隣接する2つの第2の仮想直線402とによって囲まれた矩形の領域の中心に形成されている。
【0023】
交点に形成された突起12から矩形の領域の中心に形成された突起12までの距離Sは、例えば、3〜100μmの範囲に調節されている。距離Sは、10〜100μm、20〜80μm又は40〜80μmの範囲に調節されていてもよい。距離Sは、突起12の中心間距離に対応している。突起12の中心は、突起12を内部に含む最小の円の中心に一致する。
【0024】
突起12を有する負極集電体16は、金属箔に凹凸を形成する技術を利用して作製できる。例えば、めっき法及びローラ加工法が挙げられる。めっき法は、凹凸のパターンを有するめっきレジストを金属箔の上に形成し、金属箔の上に複数の突起12としてのめっき層を形成する方法である。ローラ加工法は、凹凸を有するローラの間に金属箔を通過させつつ金属箔を加圧し、これにより、金属箔に複数の突起12を形成する方法である。これらの方法によれば、複数の突起12を簡単かつ効率よく形成することができる。
【0025】
負極集電体16の材料としては、リチウムイオンとの反応性に乏しく(合金化しにくい)、電子伝導性に優れる金属材料を好適に使用できる。そのような金属材料としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼などが挙げられる。
【0026】
負極板6は、例えば、気相法(乾式成膜法)によって負極集電体16に負極活物質を堆積させることによって作製することができる。気相法として、蒸着法、スパッタリング法又は化学気相堆積法(CVD法)を採用できる。中でも、蒸着法が効率的に負極活物質層26を形成する観点から望ましい。図3Aを参照して説明したように、柱状体11で構成された負極活物質層26を形成するために、いわゆる斜め成膜法を採用できる。「斜め成膜法」とは、基板の法線に対して傾いた方向から活物質の粒子を入射させる成膜技術を意味する。
【0027】
図5は、斜め成膜法を実施しうる真空蒸着装置の概略構成図である。真空蒸着装置50は、真空槽52、基板搬送機構58、遮蔽板57及び蒸着源59を備えている。基板搬送機構58、遮蔽板57及び蒸着源59は、真空槽52の中に配置されている。真空槽52には真空ポンプ55が接続されている。蒸着時において、真空槽52の内部は真空ポンプ55によって負極活物質層26の形成に適した圧力(例えば1.0×10-2〜1.0×10-4Pa)に保たれる。
【0028】
基板搬送機構58は、巻き出しローラ53、複数のガイドローラ54及び巻き取りローラ56によって構成されている。基板として、長尺の形状を有する負極集電体16が巻き出しローラ52に準備される。各ガイドローラ54は、負極集電体16の搬送経路に沿って配置されている。成膜領域を形成するように、負極集電体16の搬送経路に向かって、遮蔽板57に開口部51が設けられている。
【0029】
蒸着源59は、ルツボ59aに収容された蒸着材料59bを電子ビーム加熱、抵抗加熱又は電磁誘導加熱で蒸発させるように構成されている。蒸着材料59bを蒸発させながら酸素ガス、窒素ガス、又はこれらのガスのイオン若しくはラジカルを蒸着源59の上方に供給することによって、反応性蒸着を行ってもよい。
【0030】
遮蔽板57は、基板搬送機構58と蒸着源59とを隔てるように真空槽52の内部に配置されている。遮蔽板57の開口部51によって、負極集電体16の表面における成膜領域が規定されている。蒸着源59からの粒子は、負極集電体16に対して主に斜め方向から入射する。すなわち、突起12を有する負極集電体16に対して斜め方向から蒸着すべき材料を入射させる斜め蒸着によって、負極活物質層26を負極集電体16の上に形成できる。斜め蒸着によると、自己陰影効果によって、柱状体11で構成された負極活物質層26を形成できる。詳細には、蒸着を複数回繰り返すことによって、負極集電体16の突起12に活物質が選択的に堆積し、柱状体11が形成される。
【0031】
柱状体11の高さ(負極活物質層16の厚さ)は、リチウムイオン二次電池100の性能などに応じて適宜設定されるものであり、特に限定されない。柱状体11の高さは、例えば、3〜40μmの範囲にあり、5〜30μmの範囲又は8〜25μmの範囲にあってもよい。柱状体11がこれらの範囲内の高さを有していると、負極板6の全体に占める負極活物質の体積割合を十分に確保できるので、高いエネルギー密度を有する電池100を提供できる。また、柱状体11の高さが適切に調節されていると、負極集電体16と柱状体11との界面で過大な応力が発生しにくいので、負極板6の変形を抑制することができる。なお、柱状体11の高さは、突起12の頂部から柱状体11の頂部までの距離で特定される。
【0032】
負極板6に用いられた負極活物質は、単結晶でもよく、多結晶でもよく、微結晶でもよく、アモルファスでもよい。ここで、多結晶の活物質は複数の結晶子(結晶粒:crystallite)を含む。微結晶の活物質は、例えば50nm以下の大きさの結晶子を含む。活物質が非晶質であること又は活物質が微結晶であることは、X線回折(XRD)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて確認できる。結晶子の粒径は、活物質のXRD測定で得られる回折パターンにおいて、2θ=15〜40°の範囲で最も強度の大きなピークの半価幅から、Scherrerの式によって算出される。回折パターンにおいて、2θ=15〜40°の範囲にシャープなピークが見られず、ブロードなハローパターンだけが観測される場合、活物質は実質的に非晶質であると判断できる。
【0033】
高容量の負極板6を作製する観点より、柱状体11は、合金系活物質で作られていることが好ましい。合金系活物質には、リチウムと合金化しうる金属、リチウムと合金化しうる半金属、リチウムと合金化しうる金属を含む合金、リチウムと合金化しうる半金属を含む合金、リチウムと合金化する金属とリチウムと合金化する半金属とを含む合金、リチウムと合金化しうる金属の酸化物、リチウムと合金化しうる半金属の酸化物などが含まれる。具体的に、合金系活物質としては、ケイ素、ケイ素化合物、スズ及びスズ化合部からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用できる。材料コストなどの観点から、ケイ素を含む合金系活物質を好適に使用できる。
【0034】
ケイ素を含む合金系活物質(負極活物質)としては、ケイ素、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、ケイ素と窒素とを含む化合物、ケイ素と酸素と窒素とを含む化合物などが挙げられる。ケイ素と酸素とを含む化合物は、ケイ素酸化物であることが好ましい。特に、SiOx(0<x<1.2)で表される組成を有するケイ素酸化物が好ましい。酸素元素の含有量を示すx値は、0.01≦x≦1であることがさらに好ましい。負極活物質は、ケイ素と酸素との比率が互いに異なる複数のケイ素酸化物の複合物を含んでもよい。
【0035】
次に、正極板5について説明する。
【0036】
正極活物層25に含まれた正極活物質は特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池用の正極活物質を適宜使用できる。具体的には、LiCoO2、LiNiO2、Li2Mn2O4のようなリチウム含有遷移金属酸化物、これらの混合物、これらの固溶体、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4のようなオリビン型化合物などを使用できる。
【0037】
正極板5は、公知の湿式成膜法によって作製できる。まず、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒を含むペーストを準備する。正極集電体15としての金属箔の上にペーストを塗布する。塗膜を乾燥させることによって正極板5が得られる。正極板5を作製するための別の方法としては、蒸着法、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、パルスレーザーデポジション法などの薄膜形成方法が挙げられる。
【0038】
正極集電体15としては、軽量かつ優れた電子伝導性を有する金属材料を使用できる。そのような金属材料としては、アルミニウム箔が代表的である。その他にも、ニッケル箔、ステンレス箔及びチタン箔を正極集電体15として使用できる。
【0039】
セパレータ7としては、ポリオレフィン多孔質膜などの樹脂多孔質膜を好適に使用できる。ポリオレフィン多孔質膜としては、ポリエチレン多孔質膜及びポリプロピレン多孔質膜が代表的である。これらのポリオレフィン多孔質膜を単独又は組み合わせて使用できる。
【0040】
電池100に使用できる電解質としては、有機溶媒にリチウム塩を溶解させることによって得られた液状電解質を使用できる。有機溶媒としては、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)などの炭酸エステル、γ−ブチローラクトン(GBL)、δ−バレローラクトンなどのラクトン類が挙げられる。これらの有機溶媒を単独又は混合して使用できる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、C4BO8Li(LiBOB:リチウムビスオキサレートボラート)などが挙げられる。複数の種類のリチウム塩を有機溶媒に溶解させてもよい。
【0041】
電解質には、過充電の防止、サイクル特性の向上といった目的で種々の添加材が含まれていてもよい。さらに、電解質として、高分子固体電解質、無機固体電解質又はゲル電解質を使用することもできる。
【0042】
極板群4は、以下の方法で正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を組み合わせることによって作製できる。まず、負極板6の両面を一対のセパレータ7でそれぞれ覆う。その後、巻き始め部41が形成されるように、負極板6及び一対のセパレータ7の積層体を巻き芯に数回巻き付ける。さらに、積層体に正極板5を重ね合わせ、発電部43が形成されるように、正極板5、負極板6及びセパレータ7を最後まで巻き、巻き終わり部を粘着テープで固定する。これにより、極板群4が得られる。巻き始め部41を負極板6のみで形成する場合には、負極板6のみを巻き芯に数回巻き付ける。その後、負極板6に正極板5及びセパレータ7を重ね合わせ、発電部43が形成されるように、正極板5、負極板6及びセパレータ7を最後まで巻く。極板群4を外装ケース1に入れた後、外装ケース1に電解液を注入し、外装ケース1を封口する。これにより、リチウムイオン二次電池100が得られる。
【0043】
本実施形態によれば、複数の柱状体11によって負極活物質層26が形成されている。隣り合う柱状体11の間には十分な広さの隙間が確保されている。この隙間によって、巻き始め部41を形成するときに負極板6に生じうる応力が緩和される。小さい巻回半径を有する巻き始め部41において、負極活物質層26にクラックが生じたり、負極集電体16から負極活物質層26(柱状体11)が剥離したり、負極集電体16から負極活物質層26が脱落したりしにくい。また、負極集電体16から負極活物質層26を予め剥離する必要がないので、余分な工程が増えず、負極板6を巻き取り式の成膜方法で作製する場合に好都合である。
【0044】
図1に示すリチウムイオン二次電池100において、極板群4は、円筒の形状を有している。ただし、極板群4の形状は円筒に限定されない。図6に示すように、極板群4は、平面視で方形かつ扁平な形状を有していてもよい。図6に示す極板群4は、角型のケース又はラミネート包材を用いた電池に好適に使用される。負極リード6cは、巻き始め部41において負極板6に取り付けられている。負極板6と一対のセパレータ7との積層体を扁平な形状に数回巻き、巻き始め部41を形成する。その後、正極リード5cが取り付けられた正極板5を負極板6に対向させ、発電部43が形成されるように、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を扁平な形状に巻く。これにより、扁平な形状の極板群4が得られる。なお、正極リード5cの取り付け面と反対側の面が負極リード6cの取り付け面の反対側の面に対向し、極板群4の厚さ方向で重ならないように、これらのリード5c及び6cが配置されていることが好ましい。このような構成によれば、極板群4の変形を抑制する効果が高まる。リード5c及び6cによって正極板5と負極板6との間に隙間が生じることを抑制できる。なお、「正極リード5cの取り付け面」とは、帯状の正極リード5cの2つの面のうち、正極板5に接合された面を意味する。「負極リード6cの取り付け面」とは、帯状の負極リード6cの2つの面のうち、負極板6に接合された面を意味する。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
(1)負極板の作製
レーザー加工によって、直径50mmの鍛鋼製ローラの表面に直径20μm、深さ8μmの円形の凹部を形成し、突起形成用ローラを得た。中心間距離がローラの表面に沿って20μmとなるように、凹部の中心点を二次元三角格子状に(千鳥格子状パターンとして)配置した。同一の突起形成用ローラを2本作製し、互いのローラの軸が平行になるように配置した。このようにして、一対のニップローラを準備した。
【0046】
厚さ20μmの銅合金箔(日立電線社製、商品名:HCL−02Z、ジルコニアを全体の0.03重量%含有する銅合金)を一対のニップローラの間に通し、銅合金箔に突起を形成した。このとき、一対のニップローラの間に線圧2.0kgf/cm(約19.6N/cm)の荷重をかけた。銅合金箔を走査型電子顕微鏡で観察した結果、銅合金箔の表面及び裏面には、それぞれ、約8μmの最大高さRzを有する複数の突起が形成されていた。
【0047】
次に、真空蒸着法により、負極集電体の上にケイ素酸化物で作られた柱状体で構成された負極活物質層を形成した。真空蒸着は、図5を参照して説明した真空蒸着装置を使用して行った。蒸着条件は次の通りであった。
【0048】
負極活物質(蒸着源):ケイ素、純度99.9999%、高純度化学研究所社製
蒸着源の上方に供給した酸素:純度99.7%、日本酸素社製
酸素流量:20sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)
蒸着源の加熱手段としての電子ビームの加速電圧:−8kV
エミッション:500mA
【0049】
負極活物質層の厚さは16μmであった。なお、負極活物質層の厚さは次のようにして求めた。負極板の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、突起の表面に形成された10個の柱状体について、突起の頂部から柱状体の頂部までの長さそれぞれを求めた。得られた10個の測定値の平均値を負極活物質層の厚さとした。また、柱状体に含まれた酸素量をオージェ電子分光法により定量した。柱状体に含まれたケイ素酸化物の組成は、SiO0.3であった。
【0050】
(2)正極活物質の作製
0.815mol/リットルの濃度で硫酸ニッケルを含み、かつ0.15mol/リットルの濃度で硫酸コバルトを含む第1水溶液を調製した。他方、0.035mol/リットルの濃度で硫酸アルミニウムを含む第2水溶液を調製した。第1水溶液及び第2水溶液を反応槽に供給し、混合水溶液を得た。混合水溶液のpHが10〜13になるように反応槽に水酸化ナトリウムを滴下しながら、正極活物質の前駆体を合成した。得られた固形物を十分に水洗し、乾燥させた。その結果、Ni0.815Co0.15Al0.035(OH)2で表される水酸化物を得た。リチウムとコバルトとニッケルとアルミニウムとのモル比が1:0.815:0.15:0.035になるように、前駆体及び炭酸リチウムを混合した。得られた混合物を酸素雰囲気下、500℃で7時間仮焼成し、粉砕した。粉砕された焼成物を750℃で更に15時間焼成し、粉砕及び分級した。その結果、LiNi0.815Co0.15Al0.035O2で表される正極活物質を得た。
【0051】
(3)正極板の作製
LiNi0.815Co0.15Al0.035O2の粉末100g、アセチレンブラック(導電材)2g、人造黒鉛(導電材)2g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)3g及び有機溶媒(NMP)50mlを混合して合剤ペーストを調製した。合剤ペーストを厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した。塗膜を乾燥後、圧延して、厚さ72μmの正極板を得た。単位面積あたりの正極板の容量は3.8mAh/cm2であった。
【0052】
(4)リチウムイオン二次電池の作製
正極板を幅57mm、長さ830mmの大きさに切断した。負極板を幅58.5mm、長さ938mmの大きさに切断した。正極板の長手方向の中央部にニッケル製の正極リードを取り付けた。負極板の長手方向の終端部に銅製の負極リードを取り付けた。
【0053】
ポリエチレン製の一対のセパレータ(旭化成社製、厚さ16μm)で負極板の両面を覆った。負極板及び一対のセパレータのみを有する巻き始め部が形成されるように、30mmの長さの負極板及び一対のセパレータを巻き芯に巻き付けた。巻き始め部の占める巻き回数は約2.25回であった。その後、正極板、負極板及び一対のセパレータを有する発電部が形成されるように、正極板を組み合わせ、正極板、負極板及び一対のセパレータを最後まで巻き芯に巻き付け、巻き終わり部を粘着テープで固定した。これにより、巻かれた極板群を得た。
【0054】
極板群を円筒型電池のケース(18650サイズ)に入れた。エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比2:3:5の割合で含む混合溶媒にLiPF6を1.4mol/リットルの濃度で溶解させ、電解液を得た。電解液をケースに注入したのち、封口してリチウムイオン二次電池を得た。得られたリチウムイオン二次電池の理論容量は3.6Ahであった。
【0055】
X線CT装置(X-ray computed tomography scanner)を用い、充放電サイクル試験を実施する前の実施例1の電池の内部構造を非破壊で撮影した。結果を図7に示す。白い部分は負極集電体であり、灰色の部分は正極活物質層である。セパレータ及び正極集電体は像に現れていない。三日月形の黒い部分は、正極リード(像に現れず)である。
【0056】
(比較例1)
厚さ20μmの銅合金箔(日立電線社製、商品名:HCL−02Z)をそのまま負極集電体として使用し、実施例1と同じ方法で幅58.5mm、長さ908mmの負極板を作製した。さらに、最初から正極板、負極板及び一対のセパレータを組み合わせて極板群を作製した。その後、実施例1と同じ方法でリチウムイオン二次電池を作製した。つまり、比較例1において、負極集電体は突起を有していない。比較例1の電池の極板群は、巻き始め部も有していない。
【0057】
(比較例2)
負極板の寸法が幅58.5mm及び長さ908mmであり、最初から正極板、負極板及び一対のセパレータを組み合わせて極板群を作製したことを除き、実施例1と同じ方法でリチウムイオン二次電池を作製した。つまり、比較例2において、負極集電体は突起を有している。ただし、比較例2の電池の極板群は、巻き始め部を有していない。
【0058】
[初期放電容量の測定]
実施例1の電池を以下の条件で充電及び放電させ、その初期放電容量(1回目の放電容量)を確認した。初期放電容量は3585mAhであり、概ね設計通りの容量であった。
【0059】
充電条件:定電流720mA、定電圧4.2V、180mAカット
放電条件:定電流720mA、2.75Vカット
周囲温度:25℃
【0060】
[充放電サイクル試験]
実施例1、比較例1及び比較例2の電池に対し、以下の条件で充放電サイクル試験を実施した。ただし、20サイクル毎に実容量を確認するために、定電流720mA、2.75Vカットの放電条件で放電試験を実施した。
【0061】
充電条件:定電流1.8A、定電圧4.2V、180mAカット
放電条件:定電流1.8A、2.75Vカット
周囲温度:25℃
【0062】
結果を図8に示す。図8において、横軸は充放電の回数を表し、縦軸は、初期放電容量(3585mAh)に対する各サイクルでの放電容量を表している。20サイクル毎にプロットされたデータが実容量を表している。実施例1の電池は、500サイクルで容量維持率73%と良好なサイクル特性を示した。これに対し、比較例1の電池の容量維持率は、175サイクルで63%まで低下した。比較例2の電池の容量維持率は、280サイクルで74%まで低下した。
【0063】
X線CT装置を用い、充放電サイクルの回数が500回に到達した時点で、実施例1の電池の内部構造を非破壊で撮影した。結果を図9に示す。500回の充放電を繰り返した後においても、実施例1の電池の極板群には、大きな変形及び電極板(正極板及び負極板)の間の隙間の拡張は認められなかった。さらに、実施例1の電池を分解し、極板群を解いた状態で電極板を目視観察した。その結果、電極板の破断及び負極集電体からの負極活物質層(柱状体)の脱落は認められなかった。小さい巻回半径を有する巻き始め部において、負極活物質層にクラックが生じず、負極活物質層の剥離も脱落も観察されなかった理由としては、次のように考えられる。すなわち、複数の柱状体によって負極活物質層が形成され、隣り合う柱状体の間に十分な広さの隙間が確保されているので、巻き始め部を形成するときの応力が十分に緩和されていると考えられる。
【0064】
同様に、X線CT装置を用い、充放電サイクルの回数が175回に到達した時点で、比較例1の電池の内部構造を非破壊で撮影した。結果を図10に示す。比較例1の電池の極板群の中心部において、大きな変形及び電極板の間の隙間の拡張が生じていた。電極板の破断も発生していた。充放電に伴う活物質の膨張による応力が極めて大きかったため、変形及び破断が生じたものと考えられる。比較例1の電池を分解し、極板群を解いた状態で電極板を目視観察した。その結果、数か所に破断が生じていた。極板群の中心部に相当する部分において、負極活物質層にクラックが生じ、負極集電体から負極活物質層が剥離及び脱落していた。上記のような現象がサイクル特性の早期劣化を招いたと考えられる。
【0065】
X線CT装置を用い、充放電サイクルの回数が280回に到達した時点で、比較例2の電池の内部構造を非破壊で調べた。結果を図11に示す。比較例2の電池の極板群の中心部において、大きな変形及び電極板の間の隙間の拡張が生じていた。ただし、電極板の破断は生じていなかった。比較例2の電池を分解し、極板群を解いた状態で電極板を目視観察した。その結果、変形が生じた部分において、負極集電体から負極活物質層が剥離及び脱落していた。ただし、比較例1と比較例2を対比すると、比較例2の電池の変形度合いは、比較例1の電池の変形度合いよりも小さかった。
【0066】
負極活物質層に膨張応力を緩和する隙間を持たせることが有効であることは、比較例1の電池に対して比較例2の電池が良好なサイクル特性を示したことから明らかである。しかし、比較例2の電池においても、電極板の変形、電極板の間の隙間の拡張、及び負極集電体からの活物質層の脱落といった課題があり、満足できるサイクル特性は得られなかった。
【0067】
これに対し、実施例1の電池によれば、負極板及びセパレータのみで構成された巻き始め部が極板群の中心部に設けられている。これにより、極板群の変形、電極板の間の隙間の拡張、及び負極集電体からの負極活物質層の脱落は観察されず、良好なサイクル特性を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯電子機器の電源、輸送機器の電源、無停電電源装置などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0069】
4 極板群
5 正極板
6 負極板
6s 予備部分
6t 本体部分
7 セパレータ
11 柱状体
12 突起
15 正極集電体
16 負極集電体
25 正極活物質層
26 負極活物質層
41 巻き始め部
43 発電部
100 リチウムイオン二次電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化及び高機能化が進むにつれて、小型及び軽量であり、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池への要望が高くなってきている。リチウムイオン二次電池の負極活物質として、黒鉛などの炭素系材料が実用化されている。しかし、負極活物質の容量密度は、現在では黒鉛の理論容量密度372mAh/gに限りなく近づいてきており、高容量化に限界が見え始めている。容量及びエネルギー密度を更に高めるために、負極活物質として、ケイ素、スズ、これらの酸化物、合金などが検討されている。これらの負極活物質の理論容量密度は、ケイ素で4200mAh/g、スズで990mAh/gと黒鉛に比べて極めて大きい。特に、ケイ素又はケイ素酸化物は、安価であるため、盛んに検討されている。これらの材料は、蒸着法、スパッタ法などの気相法で薄膜化することが検討されている。
【0003】
これらの材料の薄膜を用いたリチウムイオン二次電池は、次の課題を持っている。すなわち、リチウムの挿入及び脱離に伴い、活物質粒子が大きく膨張及び収縮する。この際に生じる応力によって、集電体から活物質層が剥離したり、活物質粒子が割れたり、活物質粒子が微粉化したりする。その結果、活物質粒子間の導電性が低下し、十分な充放電サイクル特性が得られない。
【0004】
特許文献1〜3には、活物質粒子の体積変動に伴う活物質層の剥離を防止するための技術が記載されている。具体的に、特許文献1には、集電体の上に所定パターンで選択的に隙間を持たせた構造を形成することが記載されている。特許文献2には、規則的に突起を配列させた集電体の上に活物質層を形成することが記載されている。特許文献3には、極板群の巻き始めに補強部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−127561号公報
【特許文献2】特開2008−146840号公報
【特許文献3】特開2004−356047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2の構成だけでは応力を十分に緩和することができず、極板群の内部で変形が生じる場合がある。特許文献3に記載された構成において、補強部は、正極板、負極板又はセパレータによって形成される。しかし、セパレータの強度は非常に低いので、セパレータのみで補強部を形成したとしても十分な補強効果を得ることは難しい。正極板又は負極板で補強部を形成することが現実的であるが、補強部で活物質層が剥離又は脱落することを防止するために、活物質層を有さない集電体のみの部分を形成する必要がある。
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は、極板群の変形を抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
正極板と、
負極集電体と、前記負極集電体の上に互いに離れて配置された複数の柱状体で構成された負極活物質層とを有し、合金系活物質で前記複数の柱状体のそれぞれが作られている負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、を備え、
巻かれた極板群を形成するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが組み合わされており、
前記巻かれた極板群は、前記負極板のみ又は前記負極板及び前記セパレータのみによって形成された巻き始め部と、前記巻き始め部の外側に位置するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータによって形成された発電部とを含み、
前記極板群の中心部において、前記巻き始め部の占める巻き回数が1回以上であり、
前記負極板は、前記巻き始め部を形成している予備部分と、前記発電部を形成している本体部分と、を含み、
前記予備部分及び前記本体部分の両方が前記負極活物質層を有している、リチウムイオン二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明において、巻かれた極板群は、巻き始め部及び発電部を有する。巻き始め部は、負極板のみ又は負極板及びセパレータのみで構成されている。極板群の中心部において、巻き始め部の占める巻き回数が1回以上である。負極板は、巻き始め部を形成している予備部分と、発電部を形成している本体部分とを含む。そして、予備部分及び本体部分の両方が負極活物質層を有している。つまり、巻き始め部にも複数の柱状体が存在している。
【0010】
複数の柱状体は、負極板の強度を高める効果を奏する。高強度を有する負極板で巻き始め部が構成されているので、巻き始め部も高強度を有する。つまり、巻き始め部が極板群の芯材として機能する。極板群の中心部の強度が向上することにより、充放電サイクルに伴う極板群の変形を抑制することができる。高強度を有する負極板で巻き始め部を形成するので、巻き始め部の占める巻き回数も比較的少ない回数で足りる。従って、極板群の変形を抑制しつつ、発電に寄与しない部分を最小限に抑えることができる。
【0011】
また、複数の柱状体は、負極集電体の上に互いに離れて配置されている。そのため、小さい曲率半径で負極板が巻かれたとしても、負極集電体から柱状体が脱落しにくい。従って、特許文献3に記載された構成と異なり、負極板が負極集電体のみで形成された部分を有している必要がない。このような負極板は容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の縦断面図
【図2】極板群の概略横断面図
【図3A】負極板の部分拡大断面図
【図3B】負極板の概略全体図
【図4】負極集電体の平面図
【図5】真空蒸着装置の構成図
【図6】扁平型電池に使用できる極板群の概略横断面図
【図7】充放電サイクル前における実施例1の電池のX線CTスキャン像
【図8】実施例1、比較例1及び比較例2の電池の充放電サイクル特性を示すグラフ
【図9】500回の充放電サイクル後における実施例1の電池のX線CTスキャン像
【図10】175回の充放電サイクル後における比較例1の電池のX線CTスキャン像
【図11】280回の充放電サイクル後における比較例2の電池のX線CTスキャン像
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、巻かれた極板群4と、極板群4を収容している外装ケース1とを有する。極板群4は、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を含む。一対のセパレータ7は、負極板6の両面及び正極板5の両面を覆うように、正極板5と負極板6との間に配置されている。極板群4の中心部には中空ピン45が配置されている。極板群4には電解液が含浸されている。外装ケース1の開口部は封口板2で塞がれている。封口板2の周囲に絶縁パッキン3が配置されている。極板群4の上面及び下面には、それぞれ、絶縁リング8が配置されている。
【0015】
正極板5は、正極集電体15及び正極活物質層25で構成されている。正極活物質層25は、正極集電体15の両面にそれぞれ形成されている。正極板5には正極リード5cの一端が接続されている。正極リード5cの他端は封口板2の裏面に接続されている。負極板6は、負極集電体16及び負極活物質層26で構成されている。負極活物質層26は、負極集電体16の両面にそれぞれ形成されている。負極板6には負極リード6cの一端が接続されている。負極リード6cの他端は外装ケース1の底面に接続されている。
【0016】
図2に示すように、極板群4は、巻き始め部41及び発電部43を有する。巻き始め部41は、極板群4の中心部に位置している部分であって、負極板6及び一対のセパレータ7のみによって形成されている。つまり、巻き始め部41は、電池反応に寄与しない部分である。巻き始め部41において、一対のセパレータ7は、それぞれ、負極板6の両面を覆っている。巻き始め部41において、負極板6は正極板5に対向していない。ただし、巻き始め部41は、負極板6のみによって形成されていてもよい。つまり、巻き始め部41にセパレータ7が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。さらに、一対のセパレータ7のうち、一方のセパレータ7が巻き始め部41に含まれていてもよい。セパレータ7による強度の向上は、あまり期待できないからである。発電部43は、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7によって形成された部分であって、巻き始め部41の外側に位置している。発電部43は、電池反応に寄与する部分であり、極板群4の大部分を占めている。
【0017】
図3Aに示すように、負極活物質層26は、負極集電体16の上に互いに離れて配置された複数の柱状体11で構成されている。複数の柱状体11は、それぞれ、合金系活物質で作られている。負極集電体16は、その表面において、互いに離れて形成された複数の突起12を有する。複数の柱状体11は、それぞれ、複数の突起12に接合されている。隣り合う柱状体11の間には、十分な広さの隙間が確保されている。このような隙間は、柱状体11の膨張及び収縮に伴う応力を緩和する効果を奏する。
【0018】
図3Bに示すように、負極板6は、予備部分6s及び本体部分6tを有する。予備部分6sは、巻き始め部41を形成している部分である。本体部分6tは、発電部43を形成している部分である。予備部分6s及び本体部分6tの両方が負極活物質層26を有している。つまり、予備部分6sにも柱状体11が形成されている。柱状体11を有する負極板6の強度(例えば、引張強度)は、負極集電体16の強度よりも高い。従って、予備部分6sも高強度を有する。予備部分6sが高強度を有しているので、巻き始め部41が極板群4の芯材としての機能を果たし、極板群4の中心部の強度(剛性)が向上する。これにより、充放電サイクルに伴う極板群4の変形を抑制することができる。
【0019】
極板群4の中心部において、巻き始め部41の占める巻き回数は1回以上である。例えば、図2に示す例では、巻き始め部41の占める巻き回数は約3回である。極板群4の中心部において巻き始め部41の占める巻き回数は、例えば、2回以上7回以下に調節されていてもよい。発電に寄与しない巻き始め部41の占める巻き回数がこのような範囲に調節されていると、極板群4の変形を抑制する効果を十分に得ながら、放電容量の減少を最小限に抑えることができる。
【0020】
本明細書では、極板群4のうち、負極板6の一方の面が正極板5に対向する位置までの部分が「巻き始め部41」と定義される。
【0021】
負極集電体16において、複数の突起12は、規則的な配列を有していてもよいし、ランダムな配列を有していてもよい。ただし、規則的な配列は、負極集電体16の強度が均一に保たれるので好ましい。
【0022】
複数の突起12の配列は、例えば、以下の方法で特定することができる。図4に示すように、負極集電体16の平坦面内で複数の第1の仮想直線401及び複数の第2の仮想直線402をそれぞれ定義する。複数の第1の仮想直線401は、互いに平行であり、第1の間隔S1で等間隔に配列している。複数の第2の仮想直線402は、第1の仮想直線401に垂直な直線であり、第2の間隔S2で等間隔に配列している。第2の間隔2は、第1の間隔S1よりも小さい。突起12は、第1の仮想直線401と第2の仮想直線402との交点に形成されている。突起12は、さらに、互いに隣接する2つの第1の仮想直線401と、互いに隣接する2つの第2の仮想直線402とによって囲まれた矩形の領域の中心に形成されている。
【0023】
交点に形成された突起12から矩形の領域の中心に形成された突起12までの距離Sは、例えば、3〜100μmの範囲に調節されている。距離Sは、10〜100μm、20〜80μm又は40〜80μmの範囲に調節されていてもよい。距離Sは、突起12の中心間距離に対応している。突起12の中心は、突起12を内部に含む最小の円の中心に一致する。
【0024】
突起12を有する負極集電体16は、金属箔に凹凸を形成する技術を利用して作製できる。例えば、めっき法及びローラ加工法が挙げられる。めっき法は、凹凸のパターンを有するめっきレジストを金属箔の上に形成し、金属箔の上に複数の突起12としてのめっき層を形成する方法である。ローラ加工法は、凹凸を有するローラの間に金属箔を通過させつつ金属箔を加圧し、これにより、金属箔に複数の突起12を形成する方法である。これらの方法によれば、複数の突起12を簡単かつ効率よく形成することができる。
【0025】
負極集電体16の材料としては、リチウムイオンとの反応性に乏しく(合金化しにくい)、電子伝導性に優れる金属材料を好適に使用できる。そのような金属材料としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼などが挙げられる。
【0026】
負極板6は、例えば、気相法(乾式成膜法)によって負極集電体16に負極活物質を堆積させることによって作製することができる。気相法として、蒸着法、スパッタリング法又は化学気相堆積法(CVD法)を採用できる。中でも、蒸着法が効率的に負極活物質層26を形成する観点から望ましい。図3Aを参照して説明したように、柱状体11で構成された負極活物質層26を形成するために、いわゆる斜め成膜法を採用できる。「斜め成膜法」とは、基板の法線に対して傾いた方向から活物質の粒子を入射させる成膜技術を意味する。
【0027】
図5は、斜め成膜法を実施しうる真空蒸着装置の概略構成図である。真空蒸着装置50は、真空槽52、基板搬送機構58、遮蔽板57及び蒸着源59を備えている。基板搬送機構58、遮蔽板57及び蒸着源59は、真空槽52の中に配置されている。真空槽52には真空ポンプ55が接続されている。蒸着時において、真空槽52の内部は真空ポンプ55によって負極活物質層26の形成に適した圧力(例えば1.0×10-2〜1.0×10-4Pa)に保たれる。
【0028】
基板搬送機構58は、巻き出しローラ53、複数のガイドローラ54及び巻き取りローラ56によって構成されている。基板として、長尺の形状を有する負極集電体16が巻き出しローラ52に準備される。各ガイドローラ54は、負極集電体16の搬送経路に沿って配置されている。成膜領域を形成するように、負極集電体16の搬送経路に向かって、遮蔽板57に開口部51が設けられている。
【0029】
蒸着源59は、ルツボ59aに収容された蒸着材料59bを電子ビーム加熱、抵抗加熱又は電磁誘導加熱で蒸発させるように構成されている。蒸着材料59bを蒸発させながら酸素ガス、窒素ガス、又はこれらのガスのイオン若しくはラジカルを蒸着源59の上方に供給することによって、反応性蒸着を行ってもよい。
【0030】
遮蔽板57は、基板搬送機構58と蒸着源59とを隔てるように真空槽52の内部に配置されている。遮蔽板57の開口部51によって、負極集電体16の表面における成膜領域が規定されている。蒸着源59からの粒子は、負極集電体16に対して主に斜め方向から入射する。すなわち、突起12を有する負極集電体16に対して斜め方向から蒸着すべき材料を入射させる斜め蒸着によって、負極活物質層26を負極集電体16の上に形成できる。斜め蒸着によると、自己陰影効果によって、柱状体11で構成された負極活物質層26を形成できる。詳細には、蒸着を複数回繰り返すことによって、負極集電体16の突起12に活物質が選択的に堆積し、柱状体11が形成される。
【0031】
柱状体11の高さ(負極活物質層16の厚さ)は、リチウムイオン二次電池100の性能などに応じて適宜設定されるものであり、特に限定されない。柱状体11の高さは、例えば、3〜40μmの範囲にあり、5〜30μmの範囲又は8〜25μmの範囲にあってもよい。柱状体11がこれらの範囲内の高さを有していると、負極板6の全体に占める負極活物質の体積割合を十分に確保できるので、高いエネルギー密度を有する電池100を提供できる。また、柱状体11の高さが適切に調節されていると、負極集電体16と柱状体11との界面で過大な応力が発生しにくいので、負極板6の変形を抑制することができる。なお、柱状体11の高さは、突起12の頂部から柱状体11の頂部までの距離で特定される。
【0032】
負極板6に用いられた負極活物質は、単結晶でもよく、多結晶でもよく、微結晶でもよく、アモルファスでもよい。ここで、多結晶の活物質は複数の結晶子(結晶粒:crystallite)を含む。微結晶の活物質は、例えば50nm以下の大きさの結晶子を含む。活物質が非晶質であること又は活物質が微結晶であることは、X線回折(XRD)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて確認できる。結晶子の粒径は、活物質のXRD測定で得られる回折パターンにおいて、2θ=15〜40°の範囲で最も強度の大きなピークの半価幅から、Scherrerの式によって算出される。回折パターンにおいて、2θ=15〜40°の範囲にシャープなピークが見られず、ブロードなハローパターンだけが観測される場合、活物質は実質的に非晶質であると判断できる。
【0033】
高容量の負極板6を作製する観点より、柱状体11は、合金系活物質で作られていることが好ましい。合金系活物質には、リチウムと合金化しうる金属、リチウムと合金化しうる半金属、リチウムと合金化しうる金属を含む合金、リチウムと合金化しうる半金属を含む合金、リチウムと合金化する金属とリチウムと合金化する半金属とを含む合金、リチウムと合金化しうる金属の酸化物、リチウムと合金化しうる半金属の酸化物などが含まれる。具体的に、合金系活物質としては、ケイ素、ケイ素化合物、スズ及びスズ化合部からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用できる。材料コストなどの観点から、ケイ素を含む合金系活物質を好適に使用できる。
【0034】
ケイ素を含む合金系活物質(負極活物質)としては、ケイ素、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、ケイ素と窒素とを含む化合物、ケイ素と酸素と窒素とを含む化合物などが挙げられる。ケイ素と酸素とを含む化合物は、ケイ素酸化物であることが好ましい。特に、SiOx(0<x<1.2)で表される組成を有するケイ素酸化物が好ましい。酸素元素の含有量を示すx値は、0.01≦x≦1であることがさらに好ましい。負極活物質は、ケイ素と酸素との比率が互いに異なる複数のケイ素酸化物の複合物を含んでもよい。
【0035】
次に、正極板5について説明する。
【0036】
正極活物層25に含まれた正極活物質は特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池用の正極活物質を適宜使用できる。具体的には、LiCoO2、LiNiO2、Li2Mn2O4のようなリチウム含有遷移金属酸化物、これらの混合物、これらの固溶体、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4のようなオリビン型化合物などを使用できる。
【0037】
正極板5は、公知の湿式成膜法によって作製できる。まず、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒を含むペーストを準備する。正極集電体15としての金属箔の上にペーストを塗布する。塗膜を乾燥させることによって正極板5が得られる。正極板5を作製するための別の方法としては、蒸着法、CVD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、パルスレーザーデポジション法などの薄膜形成方法が挙げられる。
【0038】
正極集電体15としては、軽量かつ優れた電子伝導性を有する金属材料を使用できる。そのような金属材料としては、アルミニウム箔が代表的である。その他にも、ニッケル箔、ステンレス箔及びチタン箔を正極集電体15として使用できる。
【0039】
セパレータ7としては、ポリオレフィン多孔質膜などの樹脂多孔質膜を好適に使用できる。ポリオレフィン多孔質膜としては、ポリエチレン多孔質膜及びポリプロピレン多孔質膜が代表的である。これらのポリオレフィン多孔質膜を単独又は組み合わせて使用できる。
【0040】
電池100に使用できる電解質としては、有機溶媒にリチウム塩を溶解させることによって得られた液状電解質を使用できる。有機溶媒としては、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)などの炭酸エステル、γ−ブチローラクトン(GBL)、δ−バレローラクトンなどのラクトン類が挙げられる。これらの有機溶媒を単独又は混合して使用できる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、C4BO8Li(LiBOB:リチウムビスオキサレートボラート)などが挙げられる。複数の種類のリチウム塩を有機溶媒に溶解させてもよい。
【0041】
電解質には、過充電の防止、サイクル特性の向上といった目的で種々の添加材が含まれていてもよい。さらに、電解質として、高分子固体電解質、無機固体電解質又はゲル電解質を使用することもできる。
【0042】
極板群4は、以下の方法で正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を組み合わせることによって作製できる。まず、負極板6の両面を一対のセパレータ7でそれぞれ覆う。その後、巻き始め部41が形成されるように、負極板6及び一対のセパレータ7の積層体を巻き芯に数回巻き付ける。さらに、積層体に正極板5を重ね合わせ、発電部43が形成されるように、正極板5、負極板6及びセパレータ7を最後まで巻き、巻き終わり部を粘着テープで固定する。これにより、極板群4が得られる。巻き始め部41を負極板6のみで形成する場合には、負極板6のみを巻き芯に数回巻き付ける。その後、負極板6に正極板5及びセパレータ7を重ね合わせ、発電部43が形成されるように、正極板5、負極板6及びセパレータ7を最後まで巻く。極板群4を外装ケース1に入れた後、外装ケース1に電解液を注入し、外装ケース1を封口する。これにより、リチウムイオン二次電池100が得られる。
【0043】
本実施形態によれば、複数の柱状体11によって負極活物質層26が形成されている。隣り合う柱状体11の間には十分な広さの隙間が確保されている。この隙間によって、巻き始め部41を形成するときに負極板6に生じうる応力が緩和される。小さい巻回半径を有する巻き始め部41において、負極活物質層26にクラックが生じたり、負極集電体16から負極活物質層26(柱状体11)が剥離したり、負極集電体16から負極活物質層26が脱落したりしにくい。また、負極集電体16から負極活物質層26を予め剥離する必要がないので、余分な工程が増えず、負極板6を巻き取り式の成膜方法で作製する場合に好都合である。
【0044】
図1に示すリチウムイオン二次電池100において、極板群4は、円筒の形状を有している。ただし、極板群4の形状は円筒に限定されない。図6に示すように、極板群4は、平面視で方形かつ扁平な形状を有していてもよい。図6に示す極板群4は、角型のケース又はラミネート包材を用いた電池に好適に使用される。負極リード6cは、巻き始め部41において負極板6に取り付けられている。負極板6と一対のセパレータ7との積層体を扁平な形状に数回巻き、巻き始め部41を形成する。その後、正極リード5cが取り付けられた正極板5を負極板6に対向させ、発電部43が形成されるように、正極板5、負極板6及び一対のセパレータ7を扁平な形状に巻く。これにより、扁平な形状の極板群4が得られる。なお、正極リード5cの取り付け面と反対側の面が負極リード6cの取り付け面の反対側の面に対向し、極板群4の厚さ方向で重ならないように、これらのリード5c及び6cが配置されていることが好ましい。このような構成によれば、極板群4の変形を抑制する効果が高まる。リード5c及び6cによって正極板5と負極板6との間に隙間が生じることを抑制できる。なお、「正極リード5cの取り付け面」とは、帯状の正極リード5cの2つの面のうち、正極板5に接合された面を意味する。「負極リード6cの取り付け面」とは、帯状の負極リード6cの2つの面のうち、負極板6に接合された面を意味する。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
(1)負極板の作製
レーザー加工によって、直径50mmの鍛鋼製ローラの表面に直径20μm、深さ8μmの円形の凹部を形成し、突起形成用ローラを得た。中心間距離がローラの表面に沿って20μmとなるように、凹部の中心点を二次元三角格子状に(千鳥格子状パターンとして)配置した。同一の突起形成用ローラを2本作製し、互いのローラの軸が平行になるように配置した。このようにして、一対のニップローラを準備した。
【0046】
厚さ20μmの銅合金箔(日立電線社製、商品名:HCL−02Z、ジルコニアを全体の0.03重量%含有する銅合金)を一対のニップローラの間に通し、銅合金箔に突起を形成した。このとき、一対のニップローラの間に線圧2.0kgf/cm(約19.6N/cm)の荷重をかけた。銅合金箔を走査型電子顕微鏡で観察した結果、銅合金箔の表面及び裏面には、それぞれ、約8μmの最大高さRzを有する複数の突起が形成されていた。
【0047】
次に、真空蒸着法により、負極集電体の上にケイ素酸化物で作られた柱状体で構成された負極活物質層を形成した。真空蒸着は、図5を参照して説明した真空蒸着装置を使用して行った。蒸着条件は次の通りであった。
【0048】
負極活物質(蒸着源):ケイ素、純度99.9999%、高純度化学研究所社製
蒸着源の上方に供給した酸素:純度99.7%、日本酸素社製
酸素流量:20sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)
蒸着源の加熱手段としての電子ビームの加速電圧:−8kV
エミッション:500mA
【0049】
負極活物質層の厚さは16μmであった。なお、負極活物質層の厚さは次のようにして求めた。負極板の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、突起の表面に形成された10個の柱状体について、突起の頂部から柱状体の頂部までの長さそれぞれを求めた。得られた10個の測定値の平均値を負極活物質層の厚さとした。また、柱状体に含まれた酸素量をオージェ電子分光法により定量した。柱状体に含まれたケイ素酸化物の組成は、SiO0.3であった。
【0050】
(2)正極活物質の作製
0.815mol/リットルの濃度で硫酸ニッケルを含み、かつ0.15mol/リットルの濃度で硫酸コバルトを含む第1水溶液を調製した。他方、0.035mol/リットルの濃度で硫酸アルミニウムを含む第2水溶液を調製した。第1水溶液及び第2水溶液を反応槽に供給し、混合水溶液を得た。混合水溶液のpHが10〜13になるように反応槽に水酸化ナトリウムを滴下しながら、正極活物質の前駆体を合成した。得られた固形物を十分に水洗し、乾燥させた。その結果、Ni0.815Co0.15Al0.035(OH)2で表される水酸化物を得た。リチウムとコバルトとニッケルとアルミニウムとのモル比が1:0.815:0.15:0.035になるように、前駆体及び炭酸リチウムを混合した。得られた混合物を酸素雰囲気下、500℃で7時間仮焼成し、粉砕した。粉砕された焼成物を750℃で更に15時間焼成し、粉砕及び分級した。その結果、LiNi0.815Co0.15Al0.035O2で表される正極活物質を得た。
【0051】
(3)正極板の作製
LiNi0.815Co0.15Al0.035O2の粉末100g、アセチレンブラック(導電材)2g、人造黒鉛(導電材)2g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)3g及び有機溶媒(NMP)50mlを混合して合剤ペーストを調製した。合剤ペーストを厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した。塗膜を乾燥後、圧延して、厚さ72μmの正極板を得た。単位面積あたりの正極板の容量は3.8mAh/cm2であった。
【0052】
(4)リチウムイオン二次電池の作製
正極板を幅57mm、長さ830mmの大きさに切断した。負極板を幅58.5mm、長さ938mmの大きさに切断した。正極板の長手方向の中央部にニッケル製の正極リードを取り付けた。負極板の長手方向の終端部に銅製の負極リードを取り付けた。
【0053】
ポリエチレン製の一対のセパレータ(旭化成社製、厚さ16μm)で負極板の両面を覆った。負極板及び一対のセパレータのみを有する巻き始め部が形成されるように、30mmの長さの負極板及び一対のセパレータを巻き芯に巻き付けた。巻き始め部の占める巻き回数は約2.25回であった。その後、正極板、負極板及び一対のセパレータを有する発電部が形成されるように、正極板を組み合わせ、正極板、負極板及び一対のセパレータを最後まで巻き芯に巻き付け、巻き終わり部を粘着テープで固定した。これにより、巻かれた極板群を得た。
【0054】
極板群を円筒型電池のケース(18650サイズ)に入れた。エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比2:3:5の割合で含む混合溶媒にLiPF6を1.4mol/リットルの濃度で溶解させ、電解液を得た。電解液をケースに注入したのち、封口してリチウムイオン二次電池を得た。得られたリチウムイオン二次電池の理論容量は3.6Ahであった。
【0055】
X線CT装置(X-ray computed tomography scanner)を用い、充放電サイクル試験を実施する前の実施例1の電池の内部構造を非破壊で撮影した。結果を図7に示す。白い部分は負極集電体であり、灰色の部分は正極活物質層である。セパレータ及び正極集電体は像に現れていない。三日月形の黒い部分は、正極リード(像に現れず)である。
【0056】
(比較例1)
厚さ20μmの銅合金箔(日立電線社製、商品名:HCL−02Z)をそのまま負極集電体として使用し、実施例1と同じ方法で幅58.5mm、長さ908mmの負極板を作製した。さらに、最初から正極板、負極板及び一対のセパレータを組み合わせて極板群を作製した。その後、実施例1と同じ方法でリチウムイオン二次電池を作製した。つまり、比較例1において、負極集電体は突起を有していない。比較例1の電池の極板群は、巻き始め部も有していない。
【0057】
(比較例2)
負極板の寸法が幅58.5mm及び長さ908mmであり、最初から正極板、負極板及び一対のセパレータを組み合わせて極板群を作製したことを除き、実施例1と同じ方法でリチウムイオン二次電池を作製した。つまり、比較例2において、負極集電体は突起を有している。ただし、比較例2の電池の極板群は、巻き始め部を有していない。
【0058】
[初期放電容量の測定]
実施例1の電池を以下の条件で充電及び放電させ、その初期放電容量(1回目の放電容量)を確認した。初期放電容量は3585mAhであり、概ね設計通りの容量であった。
【0059】
充電条件:定電流720mA、定電圧4.2V、180mAカット
放電条件:定電流720mA、2.75Vカット
周囲温度:25℃
【0060】
[充放電サイクル試験]
実施例1、比較例1及び比較例2の電池に対し、以下の条件で充放電サイクル試験を実施した。ただし、20サイクル毎に実容量を確認するために、定電流720mA、2.75Vカットの放電条件で放電試験を実施した。
【0061】
充電条件:定電流1.8A、定電圧4.2V、180mAカット
放電条件:定電流1.8A、2.75Vカット
周囲温度:25℃
【0062】
結果を図8に示す。図8において、横軸は充放電の回数を表し、縦軸は、初期放電容量(3585mAh)に対する各サイクルでの放電容量を表している。20サイクル毎にプロットされたデータが実容量を表している。実施例1の電池は、500サイクルで容量維持率73%と良好なサイクル特性を示した。これに対し、比較例1の電池の容量維持率は、175サイクルで63%まで低下した。比較例2の電池の容量維持率は、280サイクルで74%まで低下した。
【0063】
X線CT装置を用い、充放電サイクルの回数が500回に到達した時点で、実施例1の電池の内部構造を非破壊で撮影した。結果を図9に示す。500回の充放電を繰り返した後においても、実施例1の電池の極板群には、大きな変形及び電極板(正極板及び負極板)の間の隙間の拡張は認められなかった。さらに、実施例1の電池を分解し、極板群を解いた状態で電極板を目視観察した。その結果、電極板の破断及び負極集電体からの負極活物質層(柱状体)の脱落は認められなかった。小さい巻回半径を有する巻き始め部において、負極活物質層にクラックが生じず、負極活物質層の剥離も脱落も観察されなかった理由としては、次のように考えられる。すなわち、複数の柱状体によって負極活物質層が形成され、隣り合う柱状体の間に十分な広さの隙間が確保されているので、巻き始め部を形成するときの応力が十分に緩和されていると考えられる。
【0064】
同様に、X線CT装置を用い、充放電サイクルの回数が175回に到達した時点で、比較例1の電池の内部構造を非破壊で撮影した。結果を図10に示す。比較例1の電池の極板群の中心部において、大きな変形及び電極板の間の隙間の拡張が生じていた。電極板の破断も発生していた。充放電に伴う活物質の膨張による応力が極めて大きかったため、変形及び破断が生じたものと考えられる。比較例1の電池を分解し、極板群を解いた状態で電極板を目視観察した。その結果、数か所に破断が生じていた。極板群の中心部に相当する部分において、負極活物質層にクラックが生じ、負極集電体から負極活物質層が剥離及び脱落していた。上記のような現象がサイクル特性の早期劣化を招いたと考えられる。
【0065】
X線CT装置を用い、充放電サイクルの回数が280回に到達した時点で、比較例2の電池の内部構造を非破壊で調べた。結果を図11に示す。比較例2の電池の極板群の中心部において、大きな変形及び電極板の間の隙間の拡張が生じていた。ただし、電極板の破断は生じていなかった。比較例2の電池を分解し、極板群を解いた状態で電極板を目視観察した。その結果、変形が生じた部分において、負極集電体から負極活物質層が剥離及び脱落していた。ただし、比較例1と比較例2を対比すると、比較例2の電池の変形度合いは、比較例1の電池の変形度合いよりも小さかった。
【0066】
負極活物質層に膨張応力を緩和する隙間を持たせることが有効であることは、比較例1の電池に対して比較例2の電池が良好なサイクル特性を示したことから明らかである。しかし、比較例2の電池においても、電極板の変形、電極板の間の隙間の拡張、及び負極集電体からの活物質層の脱落といった課題があり、満足できるサイクル特性は得られなかった。
【0067】
これに対し、実施例1の電池によれば、負極板及びセパレータのみで構成された巻き始め部が極板群の中心部に設けられている。これにより、極板群の変形、電極板の間の隙間の拡張、及び負極集電体からの負極活物質層の脱落は観察されず、良好なサイクル特性を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯電子機器の電源、輸送機器の電源、無停電電源装置などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0069】
4 極板群
5 正極板
6 負極板
6s 予備部分
6t 本体部分
7 セパレータ
11 柱状体
12 突起
15 正極集電体
16 負極集電体
25 正極活物質層
26 負極活物質層
41 巻き始め部
43 発電部
100 リチウムイオン二次電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、
負極集電体と、前記負極集電体の上に互いに離れて配置された複数の柱状体で構成された負極活物質層とを有し、合金系活物質で前記複数の柱状体のそれぞれが作られている負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、を備え、
巻かれた極板群を形成するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが組み合わされており、
前記巻かれた極板群は、前記負極板のみ又は前記負極板及び前記セパレータのみによって形成された巻き始め部と、前記巻き始め部の外側に位置するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータによって形成された発電部とを含み、
前記極板群の中心部において、前記巻き始め部の占める巻き回数が1回以上であり、
前記負極板は、前記巻き始め部を形成している予備部分と、前記発電部を形成している本体部分と、を含み、
前記予備部分及び前記本体部分の両方が前記負極活物質層を有している、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記極板群の中心部において前記巻き始め部の占める巻き回数が2回以上7回以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記負極集電体が、その表面において、互いに離れて形成された複数の突起を有し、
前記複数の柱状体が、それぞれ、前記複数の突起に接合されている、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記複数の突起が規則的な配列を有する、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記複数の突起がめっき法又はローラ加工法で形成されたものである、請求項3又は4に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記負極集電体が銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金又はステンレス鋼で作られている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記複数の柱状体が、真空蒸着法、スパッタ法又は化学気相成長法で形成されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記合金系活物質がケイ素、ケイ素化合物、スズ及びスズ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記合金系活物質がSiOx(0<x<1.2)で表される酸化ケイ素を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項1】
正極板と、
負極集電体と、前記負極集電体の上に互いに離れて配置された複数の柱状体で構成された負極活物質層とを有し、合金系活物質で前記複数の柱状体のそれぞれが作られている負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、を備え、
巻かれた極板群を形成するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが組み合わされており、
前記巻かれた極板群は、前記負極板のみ又は前記負極板及び前記セパレータのみによって形成された巻き始め部と、前記巻き始め部の外側に位置するように、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータによって形成された発電部とを含み、
前記極板群の中心部において、前記巻き始め部の占める巻き回数が1回以上であり、
前記負極板は、前記巻き始め部を形成している予備部分と、前記発電部を形成している本体部分と、を含み、
前記予備部分及び前記本体部分の両方が前記負極活物質層を有している、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記極板群の中心部において前記巻き始め部の占める巻き回数が2回以上7回以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記負極集電体が、その表面において、互いに離れて形成された複数の突起を有し、
前記複数の柱状体が、それぞれ、前記複数の突起に接合されている、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記複数の突起が規則的な配列を有する、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記複数の突起がめっき法又はローラ加工法で形成されたものである、請求項3又は4に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記負極集電体が銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金又はステンレス鋼で作られている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記複数の柱状体が、真空蒸着法、スパッタ法又は化学気相成長法で形成されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記合金系活物質がケイ素、ケイ素化合物、スズ及びスズ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記合金系活物質がSiOx(0<x<1.2)で表される酸化ケイ素を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−101755(P2013−101755A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243455(P2011−243455)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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