説明

リチウム二次電池用の負活性材料およびその製造方法

【課題】可逆容量が高く、充電/放電効率が優れているアノード活性材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】超微細Si相粒子および該超微細Si相粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体、および炭素材料を含んでなる、リチウム二次電池用の、可逆容量が高く、充電/放電効率が優れているアノード活性材料、およびその製造方法を提供する。
本発明は、リチウム二次電池用のアノード活性材料の製造方法であって、酸化ケイ素と、酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および負酸化物形成エンタルピーも有する材料とを、メカノケミカル製法により混合するか、またはそれらを熱化学反応にかけて酸化ケイ素を還元することにより、超微細Si粒子および該超微細Si粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体を製造すること、および該Si相含有酸化物複合体および炭素材料を混合することを含んでなる、方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用の負活性材料およびその製造方法、より詳しくは、リチウム二次電池用の、可逆容量が高く、充電/放電効率が優れているアノード活性材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池用のアノード活性材料としては、炭素系材料が主として使用されている。しかし、炭素材料から構成されるアノードは、最大理論容量が372mAh/g(844mAh/cc)に過ぎず、従って、その容量増加を制限している。アノード材料として研究されているリチウム金属は、エネルギー密度が高く、従って、高容量を実現できるが、デンドライトの成長による安全性、および電池の充電/放電を繰り返すにつれて充電/放電サイクル寿命が短くなることに関する問題がある。
【0003】
さらに、高容量を示し、リチウム金属を置き換えられる材料として使用できるリチウム合金に関して多くの研究および提案がなされている。ケイ素(Si)は、リチウムとの反応を通してリチウムを可逆的に吸蔵および放出し、最大理論容量が約4020mAh/g材料であり、そのため、高容量アノード材料として有望である。しかし、電池の充電/放電により、Siは、リチウムとの反応の結果として起こる体積変化のために亀裂を生じ、Si活性材料の粒子が破壊される。この理由から、充電/放電サイクルを繰り返すと、電池の容量が急速に低下し、その充電/放電サイクル寿命が短くなる。
【0004】
これらの問題を克服するために、リチウムと反応する活性相およびリチウムと反応しない不活性相から構成される複合活性材料形態に関して研究および提案されているが、本発明のアノード材料およびその製造方法におけるような、使用する材料の最適性能を発揮できる複合化合物組成を有する、様々な非水性電解質系二次電池用のアノード材料、およびその製造方法に関しては提案されていない。
【0005】
発明の概要
従って、本発明は、上記の問題を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、Li吸蔵および放出量が高く、従って、非水性電解質系二次電池用のアノード材料として使用した時に、充電/放電容量が高く、初期不可逆容量損失量が小さく、充電/放電サイクル寿命が優れている、非水性電解質系二次電池用のアノード活性材料、およびその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明により、上記の、および他の目的は、超微細Si相粒子および該超微細Si相粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体、および炭素材料を含んでなる、リチウム二次電池用のアノード活性材料を提供することにより達成することができる。
【0007】
本発明の別の態様では、超微細Si相粒子および該超微細Si相粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体を含んでなる、リチウム二次電池用のアノード活性材料を提供する。
【0008】
本発明の別の態様では、リチウム二次電池用のアノード活性材料の製造方法であって、
酸化ケイ素(SiO)、および酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および負酸化物形成エンタルピーも有する材料を、メカノケミカル製法により混合するか、またはそれらを熱化学反応にかけて酸化ケイ素を還元することにより、超微細Si粒子および該超微細Si粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体を製造すること、および
該複合体および炭素材料を混合すること
を含んでなる、方法を提供する。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、リチウム二次電池用のアノード活性材料の製造方法であって、
酸化ケイ素、および酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および負酸化物形成エンタルピーも有する材料を、メカノケミカル製法により混合するか、またはそれらを熱化学反応にかけて酸化ケイ素を還元することにより、超微細Si粒子および該超微細Si粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体を製造すること
を含んでなる、方法を提供する。
【0010】
本発明の上記および他の目的、特徴および他の利点は、添付の図面を参照する下記の詳細な説明から、より深く理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のアノード活性材料は、超微細Si相およびその超微細Si相を取り囲む酸化物の複合体、またはこの複合体と炭素材料の混合物から構成されている。上記の酸化物は、リチウムと反応しない非反応性材料であり、制限効果を効率的に示すには、Si相粒子のサイズを最小に抑えるのが好ましい。そのような微細Si相の配分は、機械的合金化またはメカノケミカル反応方法により、効率的に行うことができる。本発明のSi相粒子は、ナノスケール粒子である。
【0013】
本発明のアノード活性材料は、アノード活性材料とリチウムの反応によるアノード活性材料の体積変化が制限および緩和されるために、活性材料の機械的破壊が防止され、それによって、高容量および充電/放電サイクル寿命の改善を実現することができる。
【0014】
ここで、本発明のアノード活性材料の製造方法を説明する。
【0015】
超微細Si粒子およびその超微細Si粒子を取り囲む酸化物を含む複合体は、酸化ケイ素、および酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および同時に負酸化物形成エンタルピーを有する材料を、メカノケミカル製法により混合するか、またはそれらを熱化学反応にかけて酸化ケイ素を還元することにより、製造することができる。
【0016】
酸化ケイ素材料としては、SiO、SiO、SiZO(SnSiO、MnSiO、FeSiO、LiTiSiO、ZnSiO、LiSiON)または機械的に活性化された酸化ケイ素を使用することができる。ここでZはSn、Mn、Fe、Li、ZnまたはTiである。機械的に活性化された酸化ケイ素とは、超微細粒子径を有する酸化物を意味する。ボールミル加工方法により、機械的に活性化された酸化物を得ることができる。超微細粒子径を有する機械的に活性化された酸化物は、機械的ひずみの増加、表面積の増加および反応性の改良のような効果を示す。従って、機械的に活性化された酸化物を使用することにより、メカノケミカルおよび熱化学反応の反応時間を短縮し、複合体の粒子径を微調整することができる。
【0017】
酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および負酸化物形成エンタルピーを有する材料としては、酸化ケイ素を還元し得る元素状金属またはこれらの元素状金属を含む化合物を使用できる。元素状金属の好ましい例としては、Al、Fe、Li、Mn、Ni、Co、Sn、V、In、Cr、Y、Ge、Ta、Mg、Ca、Mo、Sb、Ti、Zr、Nb、P、B、LiN、等がある。
【0018】
メカノケミカル製法は、例えば高エネルギーボールミル加工を包含し、この製法により、以下に記載するように合金化反応が起こる。さらに、合金化反応は、熱化学反応の際にも起こることがある。熱化学反応は、反応物を熱処理し、合金化反応を誘発する。熱処理合金化反応は、好ましくは反応物を温度約150〜1500℃で不活性雰囲気(例えばアルゴン雰囲気)下で熱処理し、続いて炉冷却または急冷することにより行う。
SiO+M→Si+M
【0019】
酸化ケイ素(SiO)は、Mにより元素状Siに還元され、得られる酸化物Mが、Siを取り囲む親相として機能する。Si相がLiと反応する時、親相の体積変化制限およびひずみ緩和効果、および親相によるリチウムイオンの導電性を改良するために、リチウム化合物、例えば、LiO、Li、LiNOおよびLiS、を機械的合金化の際にMと共に添加することができる。これらのリチウム化合物は、酸化物の親相中に分散させるか、または酸化物と化学結合させ、複合体酸化物を形成することができる。それによって、酸化物の親相中に分散した超微細Si相を含む複合体を得ることができる。
【0020】
好ましくは、Mは、酸化ケイ素1モルに対して0.3〜4モルの量で使用する。Mを0.3モル未満の量で使用すると、酸化ケイ素は、ナノSiの他に残存し、最初の充電/放電における不可逆容量が著しく高くなる。4モルを超えるMを使用すると、過剰のMが体積膨潤を助長し、充電/放電サイクル特性が損なわれることがある。リチウム化合物は、好ましくは酸化ケイ素1モルに対して0〜0.6モルの量で使用する。
【0021】
こうして得られるSi相含有酸化物複合体は、そのままアノード活性材料として使用するか、または複合体を炭素物との混合物でアノード活性材料として使用することができる。炭素材料と混合することにより、Si相含有酸化物複合体の導電性を増加し、ひずみ緩和効果を高めることができる。
【0022】
炭素材料は、無定形炭素または結晶性炭素を包含することができる。無定形炭素の例としては、軟質炭素(低温か焼炭素)または硬質炭素(高温か焼炭素)がある。結晶性炭素としては、例えば板状、球状または繊維状の天然または人造グラファイトがある。さらに、リチウム二次電池の低温特性を改良するために、表面処理した結晶性炭素(グラファイト)を使用するのも好ましい。プロピレンカーボネートを電解質として使用する場合も、この表面処理した結晶性炭素は、リチウム吸蔵により剥離現象を示さない。結晶性炭素を表面処理する方法としては、結晶性炭素を低結晶性または無定形炭素前駆物質で被覆し、熱処理して炭素前駆物質を炭化させる方法を使用できる。この被覆方法は、乾式および湿式混合の両方を包含することができる。さらに、堆積方法、例えば化学蒸着、を使用できる。
【0023】
好ましくは、Si相含有酸化物複合体および炭素材料は、重量比5〜90:95〜10で混合する。Si相含有酸化物複合体が5重量%未満である場合、電池の容量に大きく貢献しない。他方、Si相含有酸化物複合体が90重量%を超えると、体積膨潤に関連する問題のために、充電/放電サイクル特性が損なわれる。
【0024】
Si相含有酸化物複合体および炭素材料は、それらの混合物で使用するか、またはこの混合物をボールミル加工し、これらの材料間に化学結合を誘発し、それによって、一様な複合体化合物を効果的に得ることができる。しかし、炭素材料のボールミル加工により引き起こされる表面積増加のために、不可逆容量が増加することがある。特に、グラファイトを炭素材料として使用する場合、不可逆容量はより大きく減少する。ナノSi相含有酸化物複合体−炭素材料を、低結晶性または無定形炭素で被覆し、その表面を変性することにより、この炭素材料のために、この不可逆容量が大きく低下し、従って、充電/放電サイクル特性を改良することができる。
【0025】
ナノSi相含有酸化物複合体−炭素材料の表面を変性する方法としては、酸化物複合体−炭素材料を低結晶性または無定形炭素前駆物質で被覆し、熱処理して炭素前駆物質を炭化する方法を使用できる。この被覆方法は、乾式および湿式混合の両方を含むことができる。さらに、堆積方法、例えば化学蒸着も使用できる。
【実施例】
【0026】
ここで、本発明を下記の例を参照しながら、より詳細に説明する。これらの例は、本発明を例示するためにのみ記載するのであって、本発明の範囲および精神を制限するものではない。
【0027】
例1
SiO、AlおよびLiをモル比1:1:0.2で混合し、ボールミル加工し、機械的合金化反応により、ナノサイズのSiを取り囲むAl−Li−O酸化物マトリックスを製造した。このSi含有酸化物複合体および炭素(SFG 44、グラファイト)を重量比50:50で混合し、次いでボールミル加工し、ナノ−Si含有酸化物複合体−グラファイトアノード活性材料を製造した。図1は、アノード活性材料のX線回折パターンとボールミル加工時間(5、10および30分間)の関係を示す。粉砕時間が増加するにつれて、グラファイトはその構造における変化を示すが、ナノケイ素複合体ではそのような変化は無い。さらに、Scherrerの等式およびX線回折パターンを使用してSiのクリスタライト結晶粒径を計算した時、Siは、ナノ−結晶構造が16.2nmであることが分かった。
【0028】
ナノSi含有酸化物複合体−グラファイト活性材料(10分間粉砕)の充電/放電容量曲線と充電/放電サイクルの関係を図2に示す。図2で、□は放電容量を示し、○は充電容量を示す。図2に示すように、製造されたアノード活性材料は、約600mAh/gの高容量および優れた充電/放電サイクル特性を示した。
【0029】
例2
低結晶性炭素材料で被覆するために、例1で製造したナノSi含有酸化物複合体−グラファイトアノード活性材料(10分間粉砕)を、融解工程により炭化する炭素前駆物質(コールタールピッチ)と混合し、アルゴン雰囲気下、温度900℃で1時間熱処理した。こうして得られたアノード材料の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を図3に示す。図3は、このアノード材料が、グラファイトの理論的容量(372mAh/g)よりも大きな容量約420mAh/g、および優れた充電/放電サイクル特性を有することを示している。さらに、図3で分かるように、初期不可逆容量が、例1の、低結晶性炭素材料の被覆による表面処理を行っていないアノード材料と比較して、大きく低下したことが分かる。
【0030】
従って、低結晶性炭素材料で被覆することにより、初期不可逆容量が低下するのみならず、充電/放電サイクル特性も大幅に改良される。
【0031】
例3
低結晶性炭素材料で被覆するために、例1で製造したナノSi含有酸化物複合体−グラファイトアノード活性材料(5分間粉砕)を、炭素前駆物質(コールタールピッチ)と混合し、アルゴン雰囲気下、温度900℃で1時間熱処理した。こうして得られたアノード材料のX線回折パターンと充電/放電サイクルの関係を図4に示す。グラファイトピークの低下から、複合体の表面が低結晶性炭素層で十分に覆われていることが分かる。熱処理温度が900℃であったにも関わらず、ケイ素またはアルミナ(Al)のピークは大きく増加せず、それらはナノ結晶性状態で存在していた。Scherrerの等式およびX線回折パターンを使用してSiのクリスタライト結晶粒径を計算した時、Siは、ナノ−結晶構造が14.8nmであることが分かった。これは、熱処理を行わなかった例1のX線回折パターン(図1)と類似している。すなわち、メカノケミカル製法により合成された例1のアノード活性材料の場合、ケイ素がナノ粒子として存在するか、またはマトリックスがあるために、900℃における高温熱処理にも関わらず、ナノ結晶性状態がそのまま維持されていた。
【0032】
図5は、例3におけるアノード材料の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す。図5で分かるように、このアノード材料は、約465mAh/gの高い容量および優れた充電/放電サイクル特性および低い初期不可逆容量を示す。
【0033】
図6は、例3によるアノード材料の、充電に続く10分間の休止時間後の開路電圧(open circuit voltage(OCV))と充電/放電サイクルの関係を示す。図6で分かるように、開路電圧(OCV)は、反復サイクルにより変化せず、一定である。しかし、充電/放電により、リチウムとの反応の結果、体積が変化するために、ケイ素が亀裂を生じる。また、Si活性材料粒子が破壊されるために、内部抵抗が増加する。従って、開路電圧(OCV)は、充電/放電サイクルに対して増加する。従って、OCVに変化が無いということは、炭素被覆されたナノケイ素−炭素複合体が、以前にケイ素で最も重大な点として指摘されている、ケイ素の、リチウムとの反応の結果として起こる体積変化による亀裂発生のような事象を防止することを示している。
【0034】
これらの結果の例を、例4に関して、より詳細に説明する。
【0035】
例4
SiO、AlおよびLiSをモル比3:4.2:0.3で混合し、ボールミル加工し、機械的合金化反応により、ナノサイズのSiを取り囲むAl−Li−O−S複合体酸化物マトリックスアノード活性材料を製造した。図7および8は、このSi含有複合体酸化物の充電/放電容量および開路電圧(OCV)と充電/放電サイクルの関係をそれぞれ示す。図7および8に示すように、充電/放電容量は、充電/放電サイクルの増加と共に減少し(線a)、OCVも、充電/放電曲線と同様に、低い電圧に向かって減少する(線a)。これは、充電/放電により、Siが、リチウムとの反応の結果、体積が変化するために、亀裂を生じ、Si活性材料粒子が破壊され、それによって、充電/放電容量が減少し、内部抵抗が増加することを示している。
【0036】
しかし、乳鉢だけを使用してSi含有複合体酸化物および炭素(グラファイト、SFG 44)を混合し、Si含有複合体酸化物−炭素複合体を形成することにより製造したアノード活性材料の場合、図7および8に示すように、充電/放電容量(線b)および開路電圧(OCV)(線b)は、それぞれ一定に維持されている。
【0037】
図9は、Si含有酸化物複合体−炭素アノード活性材料の、40回充電/放電後の電極のSEM顕微鏡写真を示す。図9で分かるように、Si含有酸化物複合体−炭素アノード活性材料は亀裂をほとんど示していない。
【0038】
例5
SiO、AlおよびLiをモル比1:1:0.2で混合し、ボールミル加工し、機械的合金化反応により、ナノサイズのSiを取り囲むAl−Li−O複合体酸化物マトリックスを製造した。このSi含有複合体酸化物および炭素(SFG 6、グラファイト)を重量比50:50で混合し、次いでボールミル加工し、Si含有複合体酸化物−炭素複合体を製造した。この複合体および炭素前駆物質(コールタールピッチ)を混合し、アルゴン雰囲気下、温度900℃で1時間熱処理し、アノード材料を得た。図10は、こうして得られたアノード材料の放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す。図10に示すように、このアノード材料は、約530mAh/gの高い容量および優れた充電/放電サイクル特性を有する。これは、形態および粒子径が異なった炭素を添加しても、優れた特性が得られることを示している。
【0039】
例6
SiO、AlおよびLiをモル比1:1:0.2で混合し、ボールミル加工し、機械的合金化反応により、ナノサイズのSiを取り囲むAl−Li−O複合体酸化物マトリックスを製造した。このSi含有複合体酸化物および炭素(SFG 6、グラファイト)を重量比60:40で混合し、次いでボールミル加工し、Si含有酸化物複合体−炭素アノード活性材料を製造した。このアノード活性材料および炭素前駆物質を混合し、アルゴン雰囲気下、温度900℃で1時間熱処理し、アノード材料を得た。図11は、こうして得られたアノード材料の充電/放電曲線を示す。図11に示すように、充電/放電曲線が低電圧で現れ、リチウム二次電池用のアノード材料として好適であることを示している。
【0040】
図12は、上記アノード材料の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す。図11で分かるように、このアノード材料は、約550mAh/gの高い容量および優れた充電/放電サイクル特性を示す。
【0041】
例7
図13は、SiO、AlおよびLiをモル比1:0.67:0.2で混合した後、メカノケミカル反応だけで製造した、ナノサイズのSiを取り囲むAl−Li−O酸化物マトリックス、および熱化学反応により製造したナノサイズSi含有酸化物複合体(粉末化したSiO、AlおよびLiを混合し、アルゴン雰囲気下、温度500℃で5時間熱処理した)のX線回折パターンをそれぞれ示す。メカノケミカル反応および熱化学反応により得られたSi含有酸化物複合体は、類似のX線回折パターンを示し、従って、熱化学反応でも、ナノサイズSi含有酸化物複合体を容易に得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のアノード活性材料は、リチウムとの反応により引き起こされる体積変化を制限および緩和し、アノード活性材料の機械的破壊を防止することにより、高い容量および改良された充電/放電サイクル寿命を実現することができる。
【0043】
本発明の好ましい実施態様を例示目的に説明したが、当業者には明らかなように、請求項に記載する本発明の範囲および精神から離れることなく、様々な修正、追加および置き換えが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】Si含有酸化物複合体および炭素の混合物のX線回折パターンとボールミル加工時間の関係を示す図。
【図2】ナノSi含有酸化物複合体およびグラファイトの混合物(10分間粉砕)の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す図。
【図3】例2によるアノード材料の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す図。
【図4】例3によるアノード材料のX線回折パターンを示す図。
【図5】例3によるアノード材料の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す図。
【図6】例3によるアノード材料の充電に続く10分間の休止時間の後の開路電圧(OCV)と充電/放電サイクルの関係を示す図。
【図7】例4によるSi含有酸化物複合体の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す図。
【図8】例4によるSi含有酸化物複合体の開路電圧(OCV)を示す図。
【図9】例4によるSi含有酸化物複合体−炭素アノード材料の、40回充電/放電後の電極のSEM顕微鏡写真。
【図10】例5によるアノード材料の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す図。
【図11】例6によるアノード材料の充電/放電曲線を示す図。
【図12】例6によるアノード材料の充電/放電容量と充電/放電サイクルの関係を示す図。
【図13】例7によるSi含有酸化物複合体のX線回折パターンを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超微細Si相粒子および前記Si相粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体、および炭素材料を含んでなる、リチウム二次電池用のアノード活性材料。
【請求項2】
前記酸化物が、Al、Ti、Zr、Nb、Cr、Fe、Li、Mn、Ni、Co、Sn、V、In、Y、Ge、Ta、Mg、Ca、Mo、Sb、P、B、Nおよびそれらの2種類以上の混合物からなる群から選択された材料を含んでなる、請求項1に記載のアノード活性材料。
【請求項3】
前記アノード活性材料が、前記アノード活性材料を低結晶性または無定形炭素材料で被覆することにより、表面変性される、請求項1に記載のアノード活性材料。
【請求項4】
Si相粒子および前記Si相粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体を含んでなる、リチウム二次電池用のアノード活性材料。
【請求項5】
リチウム二次電池用アノード活性材料の製造方法であって、
酸化ケイ素と、前記酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および負酸化物形成エンタルピーも有する材料とを、メカノケミカル製法により混合するか、またはそれらを熱化学反応にかけて酸化ケイ素を還元することにより、超微細Si粒子および前記超微細Si粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体を製造すること、および
前記複合体および炭素材料を混合すること
を含んでなる、方法。
【請求項6】
前記酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および負酸化物形成エンタルピーも有する前記材料が、Al、Ti、Zr、Nb、Cr、Fe、Li、Mn、Ni、Co、Sn、V、In、Y、Ge、Ta、Mg、Ca、Mo、Sb、P、B、LiNおよびそれらの2種類以上の混合物からなる群から選択された材料を含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Si相含有酸化物複合体および炭素材料をボールミル加工し、複合材料を形成することをさらに含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記Si相含有酸化物複合体および炭素材料の複合材料を形成すること、および前記複合材料を低結晶性または無定形炭素材料で被覆することをさらに含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
LiO、Li、LiNO、LiS、およびそれらの2種類以上の混合物からなる群から選択されたリチウム化合物を加えることをさらに含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
リチウム二次電池用アノード活性材料の製造方法であって、
酸化ケイ素と、前記酸化ケイ素の酸化物形成エンタルピーの絶対値よりも大きい酸化物形成エンタルピー(ΔHfor)の絶対値および負酸化物形成エンタルピーも有する材料とを、メカノケミカル製法により混合するか、またはそれらを熱化学反応にかけて酸化ケイ素を還元することにより、超微細Si粒子および前記超微細Si粒子を取り囲む酸化物から構成された複合体を製造することを含んでなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−500421(P2007−500421A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521788(P2006−521788)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001914
【国際公開番号】WO2005/011030
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【出願人】(506032060)カンウォン、ナショナル、ユニバーシティー、インダストリー、コーオパレーション、ファウンデーション (2)
【氏名又は名称原語表記】KANGWON NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY COOPERATION FOUNDATION
【Fターム(参考)】