説明

リチウム二次電池用炭素陰極材、その製造方法及びそれを用いたリチウム二次電池

芯材炭素材料と、前記芯材炭素材料を被覆する炭素材料(被覆用炭素材料)及び炭素繊維を含む被覆層とを有することを特徴とするリチウム二次電池用炭素陰極材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池用炭素陰極材(陰極活物質)に関し、より詳細には炭素繊維を含み、電極の損傷を防止し、導電性を向上させることができるリチウム二次電池用炭素陰極材、その製造方法及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、ノート型パソコン、電気自動車などの電池を使用する電子機器の急速な普及に伴って、小型軽量でありながらも相対的に高容量であるリチウム二次電池に対する需要が増大しており、このような傾向はさらに加速している。
【0003】
リチウム二次電池用陰極活物質の芯材炭素材料として広く用いられている天然黒鉛は初期放電容量には優れるが、充放電サイクルが繰り返されながら急激に充放電効率及び充放電容量が低下するという問題が提起されている物質である。このような問題点は高結晶性天然黒鉛のエッジ(edge)部分で発生する電解液分解反応に起因することが知られている。
【0004】
これを克服するための方策としては、天然黒鉛にピッチを被覆する技術が広く用いられている。また、天然黒鉛にピッチを被覆して陰極活物質を製造した後、電池の極板製造時に、電気伝導度を向上させるためにKetjen Black(登録商標)、Super P(登録商標)などの導電材を極板製造用スラリー(slurry)に添加する方法も用いられている。
【0005】
一方、最近では、天然黒鉛を使用するリチウム二次電池用陰極に炭素繊維などの導電性添加剤を添加して導電性を向上させる技術が紹介されている。これに関し、PCT/JP2004/019835(特許文献1)には炭素質陰極活物質の製造を完了した後、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などのバインダーと、1〜1000nmの繊維直径を有する炭素繊維を混合して混練した後、金属集電板に塗布することで、リチウム二次電池用陰極を構成する技術が開示されている。
【0006】
しかし、上記のような従来技術によると、リチウム電池用炭素質陰極活物質に炭素繊維が均一に分散されず炭素繊維の再凝集が生じ、電気化学的特性が劣化するという問題が発生する。また、電極バインダーとしてSBR水分散液を使用する場合には、疎水性の炭素繊維が陰極活物質に十分に分散され難いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/JP2004/019835号(国際公開第2005/067081号パンフレット)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題点を解決するため、炭素陰極材を製造する際、炭素繊維を添加し、分散が十分均一に行われるようにすることにより、電極の損傷を防止し、電気化学的特性を向上させることができるリチウム二次電池用炭素陰極材、その製造方法及びそれを用いたリチウム二次電池を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、芯材炭素材料と、上記芯材炭素材料を被覆する炭素材料(被覆用炭素材料)及び炭素繊維を含む被覆層とを有することを特徴とするリチウム二次電池用炭素陰極材を提供する。
【0010】
上記芯材炭素材料は天然黒鉛であり、上記被覆用炭素材料はピッチであることが好ましい。
【0011】
上記芯材炭素材料はその結晶系において、c軸方向の結晶子サイズ(Size)が90nm以上であることが好ましい。
【0012】
上記芯材炭素材料は全粒子のうち、90%以上の粒子が5〜50μm範囲の直径を有することが好ましい。
【0013】
上記芯材炭素材料は、BET比表面積が0.5〜30m2/gであることが好ましい。
【0014】
上記炭素繊維は、それぞれの繊維フィラメントのアスペクト比が10〜15000であり、2000℃以上の熱処理により黒鉛化された気相成長炭素繊維であることが好ましい。この気相成長炭素繊維のそれぞれの繊維フィラメントはその中心軸に沿って延びる中空を有し、分岐状炭素繊維フィラメントを含む。この気相成長炭素繊維において、X線回折法により測定された(002)結晶面での平均層(面)間距離は0.344nm以下である。
【0015】
上記炭素繊維は0.1〜100000ppmのホウ素を含むことが好ましい。
【0016】
被覆用炭素材料として用いられるピッチは石油系ピッチであって、粉砕により平均粒径が約1〜20μmになるように加工され、下記のような特性を有することができる。
【0017】
1)V.M(Volatile matter;揮発性物質)含量:20〜60wt%、F.C(Fixed Carbon;固定炭素)含量:40〜80wt% KS方式[KS E 2197−96]、
【0018】
2)軟化点:80〜300℃、メトラー(Mettler)法[ASTM−D3104−77]、
【0019】
3)QI(quinoline insoluble;キノリン不溶分)含量:0.01〜6.0wt%[ASTM−D2318−98]、
【0020】
4)TI(toluene insoluble;トルエン不溶分)含量:20〜70wt%[ASTM−D4027−98]、
【0021】
上記被覆用炭素材料として用いられるピッチは、その内部に含まれる脂肪族化合物に対する芳香族化合物のモル比が0.5以上であることが好ましい。
【0022】
上記ピッチは、その内部に含まれる全元素数に対する炭素元素数の割合が60%以上であることが好ましい。
【0023】
上記ピッチは、その全重量に対し、キノリン不溶分(QI)の含量が5wt%以下であることが好ましい。
【0024】
上記ピッチは、軟化点が100℃以上であることが好ましい。
【0025】
上記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にした上記被覆用炭素材料の量は0.01〜20wt%であることが好ましい。
【0026】
上記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にした上記炭素繊維の量は0.05〜15wt%であることが好ましい。上記炭素繊維の量は0.05〜5wt%であることがより好ましい。
【0027】
上記被覆用炭素材料及び炭素繊維は、上記芯材炭素材料上で低結晶性の表面を形成することが好ましい。
【0028】
本発明の他の特徴によれば、(a)高結晶性芯材炭素材料と、上記芯材炭素材料の表面を被覆する低結晶性炭素材料(低結晶性被覆用炭素材料)及び炭素繊維を所定量秤量する工程と、(b)上記秤量した高結晶性芯材炭素材料に被覆炭素材料と炭素繊維を同時に混合する工程と、(c)混合物を焼成し、分級して微粉を除去する工程とを含むリチウム二次電池用炭素陰極材の製造方法が提供される。
【0029】
上記芯材炭素材料としては天然黒鉛を使用し、上記被覆用炭素材料としてはピッチを使用することが好ましい。
【0030】
上記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にして、上記被覆用炭素材料は0.01〜20wt%になるように秤量することが好ましい。
【0031】
上記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にして、上記炭素繊維は0.05〜15wt%になるように秤量することが好ましい。
【0032】
上記焼成温度は900℃以上であることが好ましい。
【0033】
本発明のさらに他の特徴によれば、芯材炭素材料と、上記芯材炭素材料に同時に被覆された被覆用炭素材料及び炭素繊維を含む炭素陰極材を有することを特徴とするリチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書に添付する次の図面は、本発明の望ましい実施例を示すものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想を理解させるためのものであり、本発明は図面に記載された事項に限定されるものではない。
【0035】
【図1】本発明の好ましい実施例によるリチウム二次電池用炭素陰極材の製造過程を示すフロー図である。
【図2】本発明の実施例1により提供される天然黒鉛/ピッチ/炭素繊維混合物(リチウム二次電池用炭素陰極材)の炭素繊維の分散の程度を示す走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【図3】本発明の実施例2により提供される天然黒鉛/ピッチ/炭素繊維混合物(リチウム二次電池用炭素陰極材)の炭素繊維の分散の程度を示す走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【図4】本発明の実施例3により提供される天然黒鉛/ピッチ/炭素繊維混合物(リチウム二次電池用炭素陰極材)の炭素繊維の分散の程度を示す走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【図5】本発明の実施例4により提供される天然黒鉛/ピッチ/炭素繊維混合物(リチウム二次電池用炭素陰極材)の炭素繊維の程度を示す走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【図6】本発明の比較例により製造された炭素陰極材/炭素繊維混合物の炭素繊維の分散の程度を示す走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲に用いられている用語及び単語は通常的または辞書的な意味に限定されるものではない。出願人は発明を説明するために用語及び単語の意味を適切に定義することができるという原則に基づき、定義に従って本発明の技術的思想が解釈されるべきである。本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではなく、これらの多様な均等物及び変形例が本発明の技術思想に含まれる。
【0037】
図1は、本発明の好ましい実施例によるリチウム二次電池用炭素陰極材の製造過程を示すフロー図である。
【0038】
図1に示す通り、本発明による炭素陰極材の製造方法は、原料混合工程(S100)、混合物焼成工程(S110)、及び微粉除去工程(S120)を含む。
【0039】
原料混合工程(S100)では、高結晶性の芯材炭素材料、芯材炭素材料の表面を被覆するための低結晶性被覆用炭素材料、及び炭素繊維を秤量して用意した後、上記高結晶性芯材炭素材料に上記被覆用炭素材料と炭素繊維を同時に混合する工程を行う。
【0040】
高結晶性の芯材炭素材料としては天然黒鉛を使用し、低結晶性の被覆用炭素材料としてはピッチを使用する。また、炭素繊維としては少量でも高い導電性を提供することができるようにアスペクト比の大きい気相成長炭素繊維を採用することが好ましい。
【0041】
上記芯材炭素材料として用いられる黒鉛は、その結晶系において、c軸方向の結晶子サイズ(Size)が90nm以上で、レーザー回折法により測定される粒度は全粒子の90%以上が5〜50μm範囲の直径を有するように分布し、通常のBET(Brunauer & Emmett & Teller)装置により測定される比表面積が0.5〜30m2/gであることが好ましい。
【0042】
気相成長炭素繊維はそれぞれの繊維フィラメントのアスペクト比が10〜15000で、2000℃以上の熱処理により黒鉛化された炭素繊維である。この黒鉛系炭素繊維には0.1〜100000ppmのホウ素が含まれることが好ましい。
【0043】
この気相成長炭素繊維のそれぞれの繊維フィラメントは、その中心軸に沿って延びる中空を有し、分岐状炭素繊維フィラメントを含む。この気相成長炭素繊維において、X線回折法により測定された(002)結晶面での平均層(面)間距離は0.344nm以下である。
【0044】
被覆用炭素材料であるピッチとしては、石油系ピッチで、粉砕により平均粒径が約1〜20μmに加工され、下記の特性を有するものを使用することができる。
【0045】
1)揮発性物質(Volatile matter)(VM)含量:20〜60wt%、固定炭素(Fixed Carbon)(FC)含量:40〜80wt%(KS方式;KS E 2197−96)、
【0046】
2)軟化点:80〜300℃(メトラー法;ASTM−D3104−77)、
【0047】
3)キノリン不溶分(quinoline insoluble)(QI)含量:0.01〜6.0wt%(ASTM−D2318−98)、
【0048】
4)トルエン不溶分(toluene insoluble;)(TI)含量:20〜70wt%(ASTM−D4027−98)。
【0049】
ピッチはその内部に含まれる脂肪族化合物に対する芳香族化合物のモル比が0.5以上で、その内部に含まれる全元素数に対する炭素元素数の割合で表される炭素含量が60%以上で、その全重量に対するキノリン不溶分(QI)の含量が5wt%以下で、軟化点が100℃以上であることが好ましい。
【0050】
本発明により提供される効果を最大にするためには、天然黒鉛、ピッチ及び炭素繊維の総量に対し、ピッチの量は0.01〜20wt%であることが好ましく、炭素繊維の量は0.05〜15wt%であることが好ましい。より好ましくは上記炭素繊維の量は0.05〜5wt%である。
【0051】
原料混合工程(S100)が完了すると、天然黒鉛上にピッチと炭素繊維で構成された被覆層が形成され、低結晶性の表面を有する混合物が得られる。
【0052】
その後、混合物を焼成した後、分級して微粉を除去すると、リチウム二次電池用炭素陰極材が得られる(工程S110及びS120)。このとき、焼成工程は炭素繊維を含む混合物の組成を考慮し、900℃以上の温度で行うことが好ましい。
【0053】
このように製造されたリチウム二次電池用炭素陰極材をスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散水溶液などの電極バインダーとともに混練した後、銅ホイル上に塗布して乾燥及び成形することにより、リチウム二次電池用炭素電極を製造することができる(工程S130及びS140)。
【実施例】
【0054】
以下に、リチウム二次電池用炭素陰極材のより具体的な製造方法とその方法で製造した炭素陰極材を採用した電池の電気化学的特性を説明する。
【0055】
実施例1
【0056】
球状の天然黒鉛、所定重量比のピッチ及び所定量の炭素繊維(昭和電工社製VGCF(登録商標))を、逆円錐型のケーシングと多次元運動方式で自転及び公転を同時に行うスクリューを備えたナウター・ミキサー(nauta mixer)に投入し、1時間混合した。この混合物を少量採取し、走査電子顕微鏡(SEM)で炭素繊維の分布を観察した。そして、残った混合物は1100℃で焼成し、分級して微粉を除去し、陰極活物質を製造した。このように製造された炭素陰極材100gを500mlの反応器に入れてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散水溶液を投入した後、ミキサーを利用して混練し、約100μmの厚さで銅ホイル上に塗布した。その後、乾燥しロ−ル圧縮により成形した。製造された電極の体積当たりの密度は1.6g/cm3になるように調整した。製造された電極を評価するためにコイン電池(coin cell)を製造し、充放電効率とサイクル特性を評価した。
【0057】
実施例2
【0058】
球状の天然黒鉛、所定重量比のピッチ及び所定量の炭素繊維をナウター・ミキサー(nauta mixer)を利用して1時間混合した後、円筒状の容器の下部に撹拌刃が装着された混合機を利用し、25m/sの高速で10分間混合したこと以外は、上記実施例1と同様の工程を行った。
【0059】
実施例3
【0060】
球状の天然黒鉛、所定重量比のピッチ及び所定量の炭素繊維を円筒状の容器の下部に撹拌刃が装着された混合機を利用し、25m/sの速度で10分間混合したこと以外は、上記実施例1と同様の工程を行った。
【0061】
実施例4
【0062】
球状の天然黒鉛、所定重量比のピッチ及び所定量の炭素繊維を円筒状の容器の下部に撹拌刃が装着された混合機を利用し、25m/sの速度で20分間混合したこと以外は、上記実施例1と同様の工程を行った。
【0063】
比較例1
【0064】
球状の天然黒鉛と所定重量比のピッチを円筒状の容器の下部に撹拌刃が装着された混合機を利用し、25m/sの高速で10分間混合した。この混合物を1100℃で焼成し、分級して微粉を除去し、陰極活物質を製造した。このように製造された炭素陰極材と所定量の炭素繊維を乾式混合せずに、同時に500mlの反応器に入れてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散水溶液を投入し、ミキサーを利用して混練した後、約100μmの厚さで銅ホイル上に塗布した。
【0065】
その後、乾燥し、ロ−ル圧縮により成形した。製造された電極の体積当たりの密度は1.6g/cm3になるように調整した。製造された電極を評価するためにコイン電池(coin cell)を製造し、充放電効率とサイクル特性を評価した。
【0066】
比較例2
【0067】
球状の天然黒鉛と所定重量比のピッチを円筒状の容器の下部に撹拌刃が装着された混合機を利用し、25m/sの高速で、10分間混合した。この混合物を1100℃で焼成し、分級して微粉を除去し、陰極活物質を製造した。このように製造された炭素陰極材と所定量の炭素繊維をスターラー・ミキサー(stirrer mixer)を利用し、200rpmで30分間、乾式で混合した後、少量を採取して走査電子顕微鏡(SEM)で炭素繊維の分布を観察した。そして、残った混合物100gを500mlの反応器に入れてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散水溶液を投入し、ミキサーを利用して混練した後、約100μmの厚さで銅ホイル上に塗布した。
【0068】
その後、乾燥し、ロ−ル圧縮により成形した。製造された電極の体積当たりの密度は1.6g/cm3になるように調整した。製造された電極を評価するためにコイン電池(coin cell)を製造し、充放電効率とサイクル特性を評価した。
【0069】
比較例3
【0070】
球状の天然黒鉛と所定重量比のピッチを円筒状の容器の下部に撹拌刃が装着された混合機を利用し、25m/sの高速で10分間混合した。この混合物を1100℃で焼成し、分級して微粉を除去し、陰極活物質を製造した。このように製造された炭素陰極材を炭素繊維を混合せずに100gを500mlの反応器に入れてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散水溶液を投入し、ミキサーを利用して混練した後、約100μmの厚さで銅ホイル上に塗布した。
【0071】
その後、乾燥し、ロ−ル圧縮により成形した。製造された電極の体積当たりの密度は1.6g/cm3になるように調整した。製造された電極を評価するためにコイン電池(coin cell)を製造し、充放電効率とサイクル特性を評価した。
【0072】
炭素繊維分散特性の評価
【0073】
以上の実施例1〜4と比較例2により製造された混合物に対し、日立社製走査電子顕微鏡(SEM)を利用して1000倍率と3000倍率でイメージを撮影し炭素繊維の分散の程度を確認した。
【0074】
図2〜5(実施例1〜4)と図6(比較例2)を参照すると、本発明の実施例による炭素陰極材は、比較例とは異なり、炭素繊維の凝集が少なく(矢印部分参照)十分均一に分散していることを確認することができる。
【0075】
電池特性の評価
【0076】
上記実施例1〜4と比較例1〜3により製造されたコイン電池に対し、充放電試験を行った。コイン電池テストで、エチレンカーボネート(EC)3質量部とジエチルカーボネート(DEC)7質量部の混合物に電解質としてLiPF6(1mol/L)を溶解した電解液を使用した。
【0077】
電位を0〜1.5Vの範囲に制御し、充電電流0.5mA/cm2で0.01Vになるまで充電し、また、0.01Vの電圧を保持しながら充電電流が0.02mA/cm2になるまで充電を続けた。放電試験は放電電流0.5mA/cm2で、1.5Vまで放電を行った。このような過程を繰り返してサイクル特性を確認した結果を表1に示す。表1において、充放電効率(Cycle効率参照)は一番目の過程中に充電した電気容量に対する放電電気容量の割合を示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1から、本発明の実施例によるコイン電池が比較例によるコイン電池に比べて放電容量が高く、充放電効率がよく、優れたサイクル特性(Cycle retention参照)を提供することが確認できる。このような本発明によるリチウム二次電池は、その放電容量が340mAh/g以上で、その充放電効率が90%以上であれば、好ましいものと評価される。
【0080】
以上説明したように、本発明は芯材炭素材料上に被覆用炭素材料と炭素繊維が同時に被覆された構造を有する炭素陰極材を提供する。このような本発明は分散が困難である炭素繊維が陰極活物質内で十分均一に分散し、充放電効率とサイクル特性を改善する性能を発現させることができるという特徴を明確に確認することができる。
【0081】
以上、本発明を実施例と図面により説明したが、本発明はこれらに限定されず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者により本発明の技術思想と添付の特許請求の範囲の均等な範囲内で多様な修正及び変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、従来技術に比べて炭素繊維を陰極活物質内でより均一に分散することができ、電極製造のためのプレス(press)工程で電極の導電経路と電解質溶液の浸透経路が損傷される現象を防止し、電極の導電性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材炭素材料と、前記芯材炭素材料を被覆する炭素材料(被覆用炭素材料)及び炭素繊維を含む被覆層とを有することを特徴とするリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項2】
前記芯材炭素材料が天然黒鉛である請求項1に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項3】
前記芯材炭素材料が、その結晶系において、c軸方向の結晶子サイズが90nm以上である請求項2に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項4】
前記芯材炭素材料の全粒子の90%以上が5〜50μm範囲の直径を有する請求項2に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項5】
前記芯材炭素材料のBET比表面積が0.5〜30m2/gである請求項2に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項6】
前記被覆用炭素材料がピッチである請求項1に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項7】
前記被覆用炭素材料の内部に含まれた脂肪族化合物に対する芳香族化合物のモル比が0.5以上である請求項6に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項8】
前記被覆用炭素材料の内部に含まれた全元素数に対する炭素元素数の割合が60%以上である請求項6に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項9】
前記被覆用炭素材料の全重量に対し、キノリン不溶分(QI)の含量が5wt%以下である請求項6に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項10】
前記被覆用炭素材料の軟化点が100℃以上である請求項6に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項11】
前記炭素繊維が気相成長炭素繊維である請求項1に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項12】
前記炭素繊維が、2000℃以上で熱処理された黒鉛系炭素繊維である請求項1に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項13】
前記炭素繊維が、0.1〜100000ppmのホウ素を含む黒鉛系炭素繊維である請求項1に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項14】
前記炭素繊維が、その結晶系での(002)面の平均面間隔が0.344nm以下である請求項1に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項15】
前記炭素繊維の内部に中空が形成されている請求項1に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項16】
前記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にした前記被覆用炭素材料の量が0.01〜20wt%である請求項1〜15のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項17】
前記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にした前記炭素繊維の量が0.05〜15wt%である請求項1〜15のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項18】
前記被覆用炭素材料及び炭素繊維が、前記芯材炭素材料上で低結晶性の表面を形成する請求項1〜15のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項19】
(a)高結晶性芯材炭素材料、前記芯材炭素材料の表面を被覆する低結晶性炭素材料(低結晶性被覆用炭素材料)及び炭素繊維を秤量する工程と、(b)前記秤量した高結晶性芯材炭素材料に被覆炭素材料と炭素繊維を同時に混合する工程と、(c)混合物を焼成し、分級して微粉を除去する工程とを含むリチウム二次電池用炭素陰極材の製造方法。
【請求項20】
前記芯材炭素材料として天然黒鉛を使用し、前記被覆用炭素材料としてピッチを使用する請求項19に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材の製造方法。
【請求項21】
前記工程(a)において、前記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にして、前記被覆用炭素材料を0.01〜20wt%秤量する請求項19に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材の製造方法。
【請求項22】
前記工程(a)において、前記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準にして、前記炭素繊維を0.05〜15wt%秤量する請求項19に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材の製造方法。
【請求項23】
前記工程(c)において、900℃以上の温度で前記混合物を焼成する請求項19に記載のリチウム二次電池用炭素陰極材の製造方法。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれか1項に記載された製造方法により製造されたリチウム二次電池用炭素陰極材。
【請求項25】
芯材炭素材料と、前記芯材炭素材料を同時に被覆する炭素材料(被覆用炭素材料)及び炭素繊維を含む炭素陰極材を有するリチウム二次電池。
【請求項26】
前記芯材炭素材料が天然黒鉛である請求項25に記載のリチウム二次電池。
【請求項27】
前記被覆用炭素材料がピッチである請求項25に記載のリチウム二次電池。
【請求項28】
前記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準とした前記被覆用炭素材料の量が0.01〜20wt%である請求項25〜27のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項29】
前記芯材炭素材料、被覆用炭素材料及び炭素繊維の総量を基準とした前記炭素繊維の量が0.05〜15wt%である請求項25〜27のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項30】
充放電効率が90%以上で、放電容量が340mAh/g以上である請求項25〜29のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519132(P2011−519132A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506184(P2011−506184)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001966
【国際公開番号】WO2009/131332
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508303139)エルエス エムトロン リミテッド (16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】