説明

リチウム二次電池

【課題】電池異常の際に正極活物質の熱分解による不具合が発生することを未然に防止することができる電池を提供すること。
【解決手段】本発明によって提供されるリチウム二次電池は、正極66および負極を備える電極体と、前記電極体と電解質とを収容するケースとを備えている。正極は、正極集電体62上に形成された正極活物質67を主体とする正極層64を備えており、負極は、負極集電体上に形成された負極活物質を主体とする負極層を備えている。正極層と負極層の少なくとも一方の電極層は、所定の温度で固体から液体への相変化を示す物質からなる吸熱材69を含んでおり、吸熱材は、その表面が吸熱材を構成する物質の酸化物からなる酸化皮膜により被覆された二重構造であり、前記電極層の温度が前記所定の温度に達したときには、吸熱材が固体から液体へと相変化して電極層の内域に流出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関し、詳しくは内部短絡や過充電等の電池誤用時に電池温度上昇を抑制する吸熱材を備えたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンが正極と負極との間を行き来することにより充電および放電するリチウム二次電池(例えば、リチウムイオン電池)は、軽量で高エネルギー密度が得られることから、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源に好ましく用いられるものとして重要性が高まっている。
【0003】
リチウム二次電池を充電処理する際、不良電池の存在や充電装置の故障による誤作動によって電池に通常以上の電流が供給されて過充電状態に陥る場合や、内部短絡によって正極と負極との間に短絡電流が流れる場合が想定される。かかる過充電等の際には、電池反応が急速に進行して電池ケースの内部でガスが発生してケース内部の内圧が上昇すると共に、活物質の表面において電解液が分解反応することや電極中の活物質が発熱することによって電池内部の温度が上昇することがあり得る。このとき、電池に安全弁等が設けられていると安全弁等の作動によりガスが外部に排出されてケースの変形等の不具合を防止すると共に電流を遮断することができる。
しかしながら、内部で発生したガスが外部に排出され電池の電流を遮断したとしても、電池反応が継続して活物質(典型的には正極活物質)自体の温度が非常に高温となった場合には、正極活物質自体の熱分解反応が進行して電池内温度が急激に上昇して電池自体に不具合が発生する虞がある。このような異常時に対応すべく、従来技術として、特許文献1及び2が挙げられる。特許文献1には、正極層中に相変化を伴う吸熱物質を添加しておくことで、非常時の電池内の温度上昇を抑制しようとする技術が記載されている。特許文献2には、相変化を伴う材料を不活性材料製のカプセル内に入れたものを電極活物質に添加することによってバッテリーの通常時および異常時の温度上昇を効率的に抑制し、バッテリーの寿命と安全性を向上しようとする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−040200号公報
【特許文献2】特開2008−509519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各特許文献に記載の技術では、電池の通常使用時の電池反応によっても予め添加しておいた吸熱物質等の変質、溶解等が生じてしまう虞がある。その結果、過充電等によって電池内部の温度が上昇するような異常時に吸熱物質等が適切に作用せず、正極活物質の熱分解等に起因する不都合を未然に防止できない虞がある。
そこで本発明は、上述した従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、電池異常の際に正極活物質の熱分解による不具合が発生することを未然に防止することができる電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって、正極および負極を備える電極体と、前記電極体と電解質とを収容するケースとを備えたリチウム二次電池が提供される。ここで開示されるリチウム二次電池において、上記正極は、正極集電体上に形成された正極活物質を主体とする正極層を備えており、上記負極は、負極集電体上に形成された負極活物質を主体とする負極層を備えている。上記正極層と上記負極層のうちの少なくとも一方(以下、正極層と負極層を総称して電極層という。)は、所定の温度で固体から液体への相変化(相転移)を示す物質からなる吸熱材を含んでいる。そして、上記吸熱材は、その表面が上記吸熱材を構成する物質の酸化物からなる酸化皮膜により被覆された二重構造であり、上記吸熱材を含む電極層の温度が上記所定の温度に達したときは、上記吸熱材が固体から液体へと相変化して上記電極層の内域に流出するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
なお、本明細書において「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間のリチウムイオンの移動によって充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。
また、本明細書において「正極活物質」とは、二次電池において電荷担体となる化学種(ここではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および離脱)可能な正極側の活物質をいう。
さらにまた、本明細書において「負極活物質」とは、二次電池において電荷担体となる化学種(ここではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および離脱)可能な負極側の活物質をいう。
【0008】
本発明によって提供されるリチウム二次電池は、正極層または負極層の少なくとも一方の電極層内に、所定の温度で固体から液体への相変化を示す物質からなる吸熱材を含んでおり、該吸熱材の表面は該吸熱材を構成する物質の酸化物からなる酸化皮膜によって被覆された二重構造(典型的には金属材と該金属材の酸化皮膜とからなる構造)である。そして、吸熱材を含む電極層の温度が上記所定の温度に達したときは、吸熱材が固体から液体へと相変化して電極層の内域に流出する。
このように、電極層に含まれている吸熱材は該吸熱材の酸化物からなる酸化皮膜によって被覆された二重構造であるため、リチウム二次電池の通常使用時の充放電電位域(典型的には、3.0V〜4.1V)において吸熱材が溶解してイオンとして溶け出すことを防止することができる。そして、電池異常の際に吸熱材を含む電極層の温度が所定の温度(吸熱材の融点)に達したとき、吸熱材は、活物質や電解液の分解による熱を吸収して固体から液体に相変化(相転移)するので、電極層の更なる温度上昇を抑制することができる。さらに、電極層内に含まれている吸熱材が固体から液体へと相変化して、液状化した(溶融した)吸熱材が電極層の内域に流れ出ることによって当該溶融(液体)状態の吸熱材が活物質の表面を覆う。これによって、活物質の表面積が小さくなるため活物質表面における電解液の分解反応が停止または少なくなり該分解反応に起因する発熱を抑えると共に、活物質の表面からリチウムイオンの放出および/または吸蔵が阻止されて電流の流れをシャットダウンするため、活物質での発熱を抑制することができる(これによって活物質での発熱反応は収束していく)。
従って、本発明によると、電池異常の際に活物質の急激な熱分解反応によって電池に不具合が発生することなく安全性と信頼性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【0009】
ここで開示される二次電池の好適な一態様では、上記吸熱材は、前記正極活物質が熱分解反応を起こす温度よりも低い温度で溶融する物質により構成されていることを特徴とする。正極活物質が熱分解反応を起こす温度よりも低い溶融温度(融点)を有する吸熱材を電極層に含めることによって、電池異常の際に電極層の温度が上昇しても吸熱材によって温度の更なる上昇が抑制されるため正極活物質の熱分解反応が起こる温度に到達せず、熱分解反応に伴う電池の不具合の発生を未然に防止することができる。
【0010】
ここで開示される二次電池の好適な一態様では、上記吸熱材は、金属材、特にスズ若しくはスズを主成分とするはんだ合金で構成されていることを特徴とする。スズ若しくはスズを主成分とするはんだ合金の融点は比較的低く、電極層に含まれている活物質が熱分解反応を起こす温度と同程度かそれよりも低い。従って、過充電等の電池異常時であっても活物質の熱分解反応が起こる前に吸熱材の相変化によって電極層の温度上昇を抑えられるか、または活物質の熱分解反応が起こっていても直ちに吸熱材の相変化によって電極層の温度上昇を抑えることができる。さらに液状化した(溶融した)吸熱材が活物質の表面を被覆することによって電池反応をシャットダウンするので電池に不具合が発生するのを未然に防ぐことができる。
【0011】
ここで開示される二次電池の好適な一態様では、上記吸熱材は、少なくとも上記正極層に含まれていることを特徴とする。正極活物質は負極活物質に比べて活物質自体の熱分解反応が起こる温度が低い。従って、正極層中に上記二重構造の吸熱材を含めておくことで、負極層よりも低温域で生じ得る正極層における正極活物質の熱分解反応をより効果的に防止することができる。
【0012】
また、本発明によると、ここに開示されるいずれかのリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)を備える車両が提供される。本発明によって提供されるリチウム二次電池は、車両に搭載されるリチウム二次電池として適した品質(例えば、リチウム二次電池の安全性と信頼性の更なる向上)を示すものであり得る。従って、かかるリチウム二次電池は、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用の電源として好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係るリチウム二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う縦断面図である。
【図3】一実施形態に係る正極集電体に塗布された正極層を示す模式図である。
【図4】一実施形態に係る負極集電体に塗布された負極層を示す模式図である。
【図5】SOCと電池温度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係るリチウム二次電池を備えた車両(自動車)を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
ここで開示されるリチウム二次電池に備えられる正極は、本発明を特徴付ける性状の吸熱材を備えるほかは従来と同様の構成をとり得る。かかる正極を構成する正極集電体としては、従来のリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)の正極に用いられている集電体と同様、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を用いることができる。正極集電体の形状は、リチウム二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。典型的にはシート状のアルミニウム製の正極集電体が用いられる。
【0016】
次に、上記正極集電体の表面に形成された正極層を構成する材料について説明する。上記正極集電体の表面には、正極活物質、導電材、結着材、吸熱材等を適当な溶媒に混合されてなる組成物(典型的にはペースト状に形成された組成物、以下正極層形成用ペーストという。)が用いられて形成された正極層を有している。
【0017】
ここで開示されるリチウム二次電池の正極に形成される正極層に含まれる正極活物質としては、リチウムを吸蔵および放出可能な粒状の活物質材料が用いられる。典型的な正極活物質として、リチウムおよび少なくとも1種の遷移金属元素を含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルトリチウム複合酸化物(LiCoO)、ニッケルリチウム複合酸化物(LiNiO)、マンガンリチウム複合酸化物(LiMn)、あるいは、ニッケル・コバルト系のLiNiCo1−x(0<x<1)、コバルト・マンガン系のLiCoMn1−x(0<x<1)、ニッケル・マンガン系のLiNiMn1−x(0<x<1)やLiNiMn2−x(0<x<2)で表わされるような、遷移金属元素を2種含むいわゆる二元系リチウム含有複合酸化物、或いは、遷移金属元素を3種含むニッケル・コバルト・マンガン系のような三元系リチウム含有複合酸化物でもよい。
なお、上記正極活物質として一般式がLiMAO(ここでMは、Fe,Co,NiおよびMnから成る群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、Aは、P,Si,SおよびVから成る群から選択される元素である。)で表記されるポリアニオン型化合物も好ましく用いられる。
【0018】
このような正極活物質を構成する化合物は、例えば、従来公知の方法で調製し、提供することができる。例えば、原子組成に応じて適宜選択されるいくつかの原料化合物を所定のモル比で混合し、当該混合物を適当な手段で所定温度で焼成することによって該酸化物を調製することができる。また、焼成物を適当な手段で粉砕、造粒および分級することにより、所望する平均粒径および/または粒径分布を有する二次粒子によって実質的に構成された粒状の正極活物質粉末を得ることができる。なお、正極活物質(リチウム含有複合酸化物粉末等)の調製方法自体は本発明を何ら特徴付けるものではない。
【0019】
また、ここで開示される正極に形成される正極層に含まれる導電材としては、従来この種の二次電池で用いられているものであればよく、特定の導電材に限定されない。例えばカーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料を用いることができる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末、等のカーボン粉末を用いることができる。これらのうち一種又は二種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
また、ここで開示される正極に形成される正極層に含まれる吸熱材としては、所定温度で固体から液体に相変化する物質、例えば、比較的低融点(例えば融点が250℃以下、好ましくは200℃〜250℃または200℃以下)の金属や、該金属を主成分とする種々の合金材料が挙げられる。融点が250℃以下もしくは200℃以下であるような金属材料として例えば、はんだ材料、好ましくはスズ(Sn)若しくはスズを主成分とするはんだ合金が挙げられる。はんだ合金としては、自然環境や人体に対する影響を考慮して鉛フリーはんだ(無鉛はんだ)が好ましい。はんだ材料は、正極活物質の熱分解反応が進行する温度(熱分解温度、典型的には200℃〜300℃程度の温度域)よりも低い融点を持つ材料であることが好ましい。はんだ材料としては、Sn(融点232℃)、Sn−Cu系(融点227℃)、Sn−Ag系(融点221℃)、Sn−Ag−Cu系(融点217℃〜219℃)、Sn−Ag−Cu−Bi系(融点211℃〜221℃)、Sn−Ag−Bi−In系(融点170℃〜206℃)、Sn−Zn系(融点199℃)、Sn−Bi系(融点139℃)、Sn−Cu−Ni系(融点227℃)、Sn−Pb系(融点183℃)等が挙げられる。なお、ビスマス(Bi)やインジウム(In)或いはこれらを主成分とするはんだ合金を用いてもよい。
吸熱材(典型的にははんだ材料)の量は適宜決定されるが、正極層の導電性を妨げない程度、即ち正極活物質100質量部に対して1〜30質量部程度の使用が好ましい。さらに好ましくは5〜15質量部程度である。
また、吸熱材(はんだ材料)の電子顕微鏡(SEMまたはTEM等)観察に基づく(或いは光散乱法に基づく)平均粒径としては、0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1μm〜10μmの範囲内である。
【0021】
一般的に、吸熱材の全体が酸化皮膜に覆われていない場合、リチウム二次電池の正常時の充放電電位域(典型的には、3.0V〜4.1V)において、吸熱材を構成する物質がイオンとなって電解液中に溶け出してしまう。このため、イオンとして電解液中に溶け出した吸熱材は、過充電等の電池異常時にケース内の熱(典型的には電極層の熱)を吸収することができないため、正極活物質の熱分解反応が進行し電極層の温度が急激に上昇して電池に不具合が生じる虞がある。しかしながら、本発明では、上記吸熱材(典型的にははんだ材料)は、その表面が吸熱材を構成する物質の酸化物からなる酸化皮膜によって被覆された二重構造である(吸熱材の全体が酸化皮膜によって被覆されている状態であって、吸熱材の構成物(即ち酸化皮膜の内部)と外部(例えば、空気や電解液等)とが直接接触していない状態である。)。このため、リチウム二次電池の正常時の充放電電位域において吸熱材が電解液中に溶け出すことがなく、電池異常時に電極層の熱を吸収することができるため電池に不具合を生じることを未然に防止することができる。
なお、上述した平均粒径の吸熱材は従来公知の種々の方法によって製造することができる。例えば、噴霧熱分解法等の各種液相法や化学気相析出法等の各種気相法等によって製造することができる。
上記吸熱材の表面に酸化皮膜を形成する方法としては、例えば、吸熱材の粉末を吸熱材の融点より低い温度において酸素雰囲気下で熱処理する方法が挙げられる。また、ゾルゲル法やコーティング法等の従来公知の方法と同様の技法によっても酸化皮膜を形成することができる。
【0022】
さらに、ここで開示される正極に形成される正極層に含まれる結着材(バインダー)としては、例えば、上記正極層を形成する組成物として水系の液状組成物を用いる場合には、水に溶解または分散するポリマー材料を好ましく採用し得る。水に溶解する(水溶性の)ポリマー材料としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);等が例示される。また、水に分散する(水分散性の)ポリマー材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル共重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類;が例示される。あるいは、正極層を形成する組成物として溶剤系の液状組成物(典型的にはペースト状またはスラリー状に調製された組成物、以下、正極層形成用ペーストという。)を用いる場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等のポリマー材料を用いることができる。なお、上記で例示したポリマー材料は、結着材として用いられる他に、上記組成物の増粘剤その他の添加剤として使用されることもあり得る。
【0023】
ここで、「水系の液状組成物」とは、活物質の分散媒として水または水を主体とする混合溶媒(水系溶媒)を用いた組成物を指す概念である。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。「溶剤系の液状組成物」とは、活物質の分散媒が主として有機溶媒(非水系溶媒)である組成物を指す概念である。有機溶媒としては、例えば、N‐メチルピロリドン(NMP)等を用いることができる。
【0024】
ここで開示される正極は、例えば概ね以下の手順で好適に製造することができる。上述した正極活物質、導電材、吸熱材および有機溶媒に対して可溶性である結着材等を有機溶媒に分散させてなる正極層形成用ペーストを調製する。調製した該ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥させた後、圧縮(プレス)することによって、正極集電体と該正極集電体上に形成された正極層とを備える正極を作製することができる。
ここで、マンガンリチウム複合酸化物(LiMnを正極活物質とする正極層)は熱的安定性に比較的優れておりその熱分解温度は典型的には300℃〜330℃程度である。また、コバルトリチウム複合酸化物の熱分解温度は典型的には240℃〜270℃程度であり、ニッケルリチウム複合酸化物の熱分解温度は典型的には210℃〜230℃程度ある。
【0025】
次に、ここで開示されるリチウム二次電池の負極の各構成要素について説明する。ここで開示される負極は、負極集電体と該集電体上に形成された負極層とを備えるリチウム二次電池用の負極である。かかる負極を構成する負極集電体としては、例えば、銅やニッケル或いはそれらを主成分とする合金を用いることができる。
また、ここで開示される負極に形成される負極層に含まれる負極活物質としては、リチウムを吸蔵および放出可能な材料であればよく、例えば、黒鉛(グラファイト)等の炭素材料、リチウム・チタン酸化物(LiTi12)等の酸化物材料、スズ、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)等の合金からなる合金材料、等が挙げられる。典型例として、黒鉛等から成る粉末状の炭素材量が挙げられる。特に黒鉛粒子は、粒径が小さく単位体積当たりの表面積が大きいことからより急速充放電(例えば高出力放電)に適した負極活物質となり得る。
【0026】
ここで開示される負極に形成される負極層には、上記負極活物質の他に、上記正極層に配合され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有させることができる。そのような材料として、上記の正極層の構成材料として列挙したような結着材や吸熱材として機能し得る各種の材料を同様に使用し得る。吸熱材(典型的にははんだ材料)の量は負極活物質100質量部に対して1〜40質量部程度の使用が好ましい。さらに好ましくは5〜20質量部程度である。
ここで開示される負極は、上記正極と同様の手法により製造することができる。負極活物質と吸熱材と結着材等とを適当な溶媒に分散させてなるペースト状(或いはスラリー状)の組成物(以下、負極層形成用ペーストという)を調製する。調製した該負極層形成用ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させた後、圧縮(プレス)することによって、負極集電体と該負極集電体上に形成された負極層とを備える負極を作製することができる。
【0027】
また、正極と負極と共に使用されるセパレータとしては、従来と同様のセパレータを使用することができる。例えばポリオレフィン樹脂から成る多孔質のシート(多孔質フィルム)等を使用することができる。或いはまた、高分子固体電解質をセパレータとして使用することができる。
【0028】
電解質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる非水系の電解質(典型的には電解液)と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水系の電解質は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO等からなる群から選択された一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
また、ここで開示されるリチウム二次電池用正極および負極が採用される限りにおいて、構築されるリチウム二次電池の形状(外形やサイズ)には特に制限はない。外装がラミネートフィルム等で構成される薄型シートタイプであってもよく、電池外装ケースが円筒形状や直方体形状の電池でもよく、或いは小型のボタン形状であってもよい。
【0029】
以下、ここで開示される吸熱材を含有する正極および負極を備えるリチウム二次電池の一形態を図面を参照しつつ説明するが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
【0030】
図1は、一実施形態に係るリチウム二次電池を模式的に示す斜視図である。図2は、図1中のII−II線に沿う縦断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池10は、上記のリチウム二次電池構成材料(正負極それぞれの活物質、正負極それぞれの集電体、セパレータ等)を具備する電極体50と、該電極体50および適当な非水系の電解質(電解液)を収容する扁平な直方体形状(すなわち角型)の電池ケース15とを備える。
【0031】
ケース15は、上記扁平直方体形状における幅狭面の一つが開口部20となっている箱型のケース本体30と、その開口部20に取り付けられて(例えば溶接されて)該開口部20を塞ぐ蓋体25とを備えている。ケース15を構成する材質としては、一般的なリチウム二次電池で使用されるものと同様のものを適宜使用することができ、特に制限はない。例えば、金属(例えばアルミニウム、スチール等)製の容器、合成樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂等)製の容器等を好ましく用いることができる。本実施形態に掛かるケース15は例えばアルミニウム製である。
蓋体25は、ケース本体30の開口部20の形状に適合する長方形状に形成されている。さらに、蓋体25には、外部接続用の正極端子60と負極端子70とがそれぞれ設けられており、これらの端子60,70の一部は蓋体25からケース15の外方に向けて突出するように形成されている。また、従来のリチウム二次電池のケースと同様に、蓋体25には、電池異常の際にケース15内部で発生したガスをケース15の外部に排出するための安全弁(図示せず)が設けられている。安全弁は、ケース15内部の圧力が所定レベルを超えて上昇したときに、開弁してケース15の外部にガスを排出する機構を備えていれば特に制限無く使用することができる。
【0032】
図2に示すように、リチウム二次電池10は、通常のリチウム二次電池と同様に捲回電極体50(以下「電極体50」と略称する場合がある。)を備えている。電極体50は、捲回軸が横倒しとなる姿勢(すなわち、上記開口部20が捲回軸に対して横方向に位置する向き)でケース本体30に収容されている。電極体50は、長尺シート状の正極集電体62の表面に正極層(電極層)64が形成された正極シート(正極)66と、長尺シート状の負極集電体72の表面に負極層(電極層)74が形成された負極シート(負極)76とを2枚の長尺シート状のセパレータ80と共に重ね合わせて捲回し、得られた電極体50を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に形成されている。
【0033】
また、捲回される正極シート66において、その長手方向に沿う一方の端部には正極層64が形成されずに正極集電体62が露出しており、一方、捲回される負極シート76においても、その長手方向に沿う一方の端部は負極層74が形成されずに負極集電体72が露出している。そして、正極集電体62の上記露出している端部に正極端子60が接合され、上記扁平形状に形成された捲回電極体50の正極シート66と電気的に接続されている。同様に、負極集電体72の上記露出している端部に負極端子70が接合され、負極シート76と電気的に接続されている。なお、正負極端子60,70と正負極集電体62,72とは、例えば、超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合され得る。
【0034】
上記構成の捲回電極体50を構成する材料および部材自体は、正極としてここで開示される正極層が正極集電体上に形成された正極(ここでは正極シート66)と負極としてここで開示される負極層が負極集電体上に形成された負極(ここでは負極シート76)を採用する以外、従来のリチウム二次電池の電極体と同様でよく特に制限はない。図3は、一実施形態に係る正極集電体62に塗布された正極層64を示す模式図である。図4は、一実施形態に係る負極集電体72に塗布された負極層74を示す模式図である。
【0035】
正極シート66は、長尺状の正極集電体(例えば長尺状のアルミニウム箔)62の上に正極層64を形成することによって作製される。即ち、正極活物質(例えばLiCoO)67、導電材(例えばグラファイト)68、吸熱材(例えばスズ)69および有機溶媒に対して可溶性である結着材(例えばPVDF)を有機溶媒(例えばNMP)に分散させてなる正極層形成用ペーストを調製する。調製した該ペーストを正極集電体62に塗布し、乾燥させた後、圧縮(プレス)することによって正極層64が形成される。
ここで、正極集電体62に上記ペーストを塗付する方法としては、従来公知の方法と同様の技法を適宜採用することができる。例えば、スリットコーター、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の適当な塗付装置を使用することにより、正極集電体62に該ペーストを好適に塗付することができる。また、圧縮方法としては、従来公知のロールプレス法、平板プレス法等の圧縮方法を採用することができる。かかる厚さを調整するにあたり、膜厚測定器で該厚みを測定し、プレス圧を調整して所望の厚さになるまで複数回圧縮してもよい。
【0036】
負極シート76は、長尺状の負極集電体(例えば長尺状の銅箔)72の上に負極層74を形成することによって作製される。即ち、負極活物質(例えばグラファイト)77、吸熱材(例えばスズ)79および有機溶媒に対して可溶性である結着材(例えばPVDF)を有機溶媒(例えばNMP)に分散させてなる負極層形成用ペーストを調製する。調製した該ペーストを負極集電体72に塗布し、乾燥させた後、圧縮(プレス)することによって負極層74が形成される。負極層74の形成方法自体は、正極側と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0037】
上記作製した正極シート66および負極シート76を2枚のセパレータ(例えば多孔質ポリオレフィン樹脂)80と共に積み重ね合わせて捲回し、得られた捲回電極体50をケース本体30内に捲回軸が横倒しとなるように収容するとともに、適当な支持塩(例えばLiPF等のリチウム塩)を適当量(例えば濃度1M)含むECとDMCとの混合溶媒(例えば質量比1:1)のような非水電解質(電解液)を注入した後、開口部20に蓋体25を装着し封止する(例えばレーザ溶接)ことによって本実施形態のリチウム二次電池10を構築することができる。
なお、吸熱材は正極層と負極層のうちの少なくとも一方の電極層に含められているが、好ましくは正極層に含められており、さらに好ましくは正極層および負極層のそれぞれに含められている。本実施形態では正極層64と負極層74のそれぞれに吸熱材(スズ)69,79が含まれている。
【0038】
次に、過充電等の電池異常時における本実施形態に係るリチウム二次電池10の機能(作用、効果)について詳細に説明する。
リチウム二次電池(リチウムイオン電池)10の過充電等の電池異常時には、正極活物質67が自己発熱を起こしたり、正極活物質67および負極活物質77のそれぞれの表面において電解液の分解が進行して発熱したりして、正極層64および負極層74の温度が上昇する虞があるところ、本実施形態に示すように、正極層64内および負極層74内にそれぞれ含まれている吸熱材69,79は、正極層64および負極層74の熱を吸収して、吸熱材69,79の融点に達した際に固体から液体へと相変化し始める。吸熱材69,79が相変化をしている間は吸熱材69,79が正極層64および負極層74の熱を吸収しているため正極層64および負極層74の温度の上昇を抑制することができる。また、液状化した(溶融した)吸熱材69,79は、正極層64の内域および負極層74の内域に流れ出し正極活物質67および負極活物質77の表面をそれぞれ被覆(コーティング)する。表面を吸熱材69,79で覆われた(コーティングされた)活物質67,77は、電解液と接触する表面積がゼロまたは小さくなるため、活物質67,77の表面での電解液の分解反応が停止または抑制されて発熱量がゼロになるまたは減少する。さらに、表面を吸熱材69でコーティングされた正極活物質67において、その表面からリチウムイオンが放出されなくなるため、電流の流れをシャットダウンすることができ電池10の温度上昇を抑制することができる。これにより、正極層64および負極層74の発熱反応は収束していくので正極活物質67は酸素放出を伴う熱分解反応が進行する温度に達することがなく、熱分解反応に伴う温度の急上昇によるリチウム二次電池10の不具合の発生を未然に防止することができる。
【0039】
また、他の実施形態として、吸熱材(例えばSn)の融点が正極活物質(例えばLiNiO)の熱分解反応が進行する温度よりも高い(例えば数℃〜数十℃程度)場合であっても、少なくとも正極層に吸熱材を含めておくことで、正極層の温度が吸熱材の融点に達したとき、吸熱材は正極層の熱を吸収して固体から液体へと相変化するため、正極層のさらなる温度上昇を抑制することができる。また、液状化した(溶融した)吸熱材が正極活物質の表面を被覆することで、正極活物質の表面における電解液の分解反応を停止または減少させると共に正極活物質の熱分解反応を抑制し、正極活物質の分解に伴う酸素の放出を防止することができるため、電池ケース内の蒸発した有機溶媒との反応を抑制することができる。これにより、正極層の発熱反応は収束していき、熱分解反応に伴う電池の不具合の発生を未然に防止することができる。
【0040】
上記リチウム二次電池を構築することにより、電池異常時での安全性と信頼性に優れたリチウム二次電池を構築できることを確認するため、実施例として以下の実験を行った。なお、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0041】
[実施例に係るリチウム二次電池の構築]
本実施例では、以下のようにしてリチウム二次電池(18650型セル)を構築した。まず、実施例に係るリチウム二次電池の正極を作製した。すなわち、吸熱材としてのスズ粉末(平均粒径10μm以下)を酸素雰囲気下、スズの融点(232℃)以下の200℃に3時間晒し、スズの表面にスズの酸化物からなる酸化皮膜を形成した。そして、正極活物質としてのコバルト酸リチウムとカーボンブラックとPVDFと上記酸化皮膜により被覆されたスズ(表面酸化スズ)とを含みこれら材料の質量比が80:5:5:10となるように秤量し、これら材料をNMPに分散させて正極層形成用ペースト(ペースト状組成物)を調整した。該ペーストをアルミニウム箔から構成される正極集電体(厚さ15μm)の両面に当該ペーストの塗工量が12mg/cmとなるように塗布し乾燥させた。乾燥後、該塗布物プレスして、正極層の厚さ80μm、正極層の密度2.5g/cmの正極層を成形した。このようにしてシート状の正極(正極シート)を作製した。
次に、実施例に係るリチウム二次電池の負極を作製した。すなわち、負極活物質としてのグラファイト粉末と結着材であるPVDFとを含みこれら材料の質量比が93:7となるように秤量し、これら材料をNMPに分散させて負極層形成用ペーストを調整した。該ペーストを銅箔から構成される負極集電体(厚さ15μm)の両面に当該ペーストの塗工量が8mg/cmとなるように塗布し乾燥させた。乾燥後、該塗布物をプレスして、負極層の厚さ40μm、負極層の密度1.4g/cmの負極層を成形した。このようにしてシート状の負極(負極シート)を作製した。
【0042】
上記作製した正極シートと負極シートとを二枚の長尺状のセパレータ(ここでは多孔質ポリプロピレンシートを用いた。)とともに積層し、その積層シートを長尺方向に捲回して捲回電極体を作製した。この電極体と電解質とを安全弁を備えた容器に収容して、直径18mm、高さ65mm(18650型)の円筒型リチウム二次電池を構築した。電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との3:7(体積比)混合溶媒に1mol/LのLiPFを溶解させた組成の非水電解液を用いた。
【0043】
[比較例に係るリチウム二次電池の構築]
本比較例では、以下のようにしてリチウム二次電池(18650型セル)を構築した。まず、比較例に係るリチウム二次電池の正極を作製した。すなわち、上記酸化皮膜に被覆されたスズ(表面酸化スズ)を用いることなく、正極活物質としてのコバルト酸リチウムとカーボンブラックとPVDFとを含みこれら材料の質量比が80:15:5となるように秤量し、これら材料をNMPに分散させて正極層形成用ペースト(ペースト状組成物)を調整した。そして、上記実施例と同様の手順で、比較例に係る正極を作製した。
本比較例では、上記作成した正極を使用する以外は、実施例と同様の負極を用いて
実施例と同様の手順で、本比較例に係るリチウム二次電池を構築した。
【0044】
[過充電試験]
上記で構築した実施例および比較例に係るリチウム二次電池に適当なコンディショニング処理(0.1Cの充電レートで4.1Vまで定電流定電圧で充電する操作と、0.1Cの放電レートで3.0Vまで定電流定電圧放電させる操作を3回繰り返す初期充放電処理)を行った後、SOC80%の充電状態に調整した。そして、実施例と比較例の各リチウム二次電池に対して室温(25℃)の温度条件下において5Cの充電レートでSOC500%まで定電流充電を行い(すなわち、充電が完了した後のリチウム二次電池に強制的に充電電流を流し続ける試験である。)各電池の不具合(熱暴走)の発生の有無を確認した。その結果を図5及び表1に示す。図5において、横軸がSOC(%)を、縦軸が電池表面温度(℃)を表している。
【0045】
【表1】

【0046】
図5に示すように、実施例および比較例のいずれもSOC185%付近(図5の点線で囲った部分)でケースに備えられている安全弁が開弁した。比較例に係る電池は安全弁が開弁した後もさらに温度が上昇して正極活物質の熱分解反応が進行する温度(図5の点線で示す温度)を超えて不具合が発生したのが確認できた。一方、実施例に係る電池は安全弁が開弁した後も温度は上昇しているが、正極活物質の熱分解反応が進行する温度に達するまでには至らずに不具合の発生(例えば発煙)も確認されなかった。以上より、実施例に係るリチウム二次電池は、過充電による電池異常時であっても電池に不具合が発生することのない安全性と信頼性に優れているリチウム二次電池であることが示された。
【0047】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、本発明は、上述した角型の電池に限られず、種々の形状(例えば円筒型等)のリチウム二次電池に適用することができる。電極体の構成は上述のような捲回タイプに限られず、例えば、正負の電極シートをセパレータシートと共に交互に積層して成る積層タイプの電極体(積層電極体)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るリチウム二次電池(例えばリチウムイオン電池)は、大電流出力が可能であり上記のとおり安全性と信頼性に優れることから、特に自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用電源として好適に使用し得る。従って本発明は、図6に模式的に示すように、かかるリチウム二次電池10(典型的には当該電池10を複数個直列接続してなる組電池)を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料自動車のような電動機を備える自動車)100を提供する。
【符号の説明】
【0049】
10 リチウム二次電池
15 電池ケース
20 開口部
25 蓋体
30 ケース本体
50 捲回電極体
60 正極端子
62 正極集電体
64 正極層(電極層)
66 正極シート(正極)
67 正極活物質
68 導電材
69 吸熱材
70 負極端子
72 負極集電体
74 負極層(電極層)
76 負極シート(負極)
77 負極活物質
79 吸熱材
80 セパレータ
100 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を備える電極体と、前記電極体と電解質とを収容するケースと、
を備えたリチウム二次電池であって、
前記正極は、正極集電体上に形成された正極活物質を主体とする正極層を備えており、
前記負極は、負極集電体上に形成された負極活物質を主体とする負極層を備えており、
前記正極層と前記負極層のうちの少なくとも一方の電極層は、所定の温度で固体から液体への相変化を示す物質からなる吸熱材を含んでおり、
前記吸熱材は、その表面が前記吸熱材を構成する物質の酸化物からなる酸化皮膜により被覆された二重構造であり、前記電極層の温度が前記所定の温度に達したときには、前記吸熱材が固体から液体へと相変化して前記電極層の内域に流出するように構成されていることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
前記吸熱材は、前記正極活物質が熱分解反応を起こす温度よりも低い温度で溶融する物質により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記吸熱材は、スズ若しくはスズを主成分とするはんだ合金で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記吸熱材は、少なくとも前記正極層に含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のリチウム二次電池を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−103181(P2011−103181A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256693(P2009−256693)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】