説明

リチウム空気電池用電解質及びこれを含むリチウム空気電池

【課題】リチウム空気電池用電解質及びこれを含むリチウム空気電池を提供する。
【解決手段】本発明は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極と、リチウムイオン伝導性固体電解質膜と、酸素を正極活物質とする正極と、を含み、前記正極とリチウムイオン伝導性固体電解質膜との間に、リチウムイオン伝導性高分子及びリチウム塩を含む電解質を含むリチウム空気電池に関する発明である。リチウムイオン伝導性高分子としては、親水性マトリックス高分子を使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム空気電池用電解質及びこれを含むリチウム空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム空気電池は、リチウムイオンの吸蔵/放出可能な負極、空気中の酸素を正極活物質とする酸素の酸化還元触媒を含む正極を備え、前記正極と負極との間にリチウムイオン伝導性媒体を備えると知られている。
【0003】
前記リチウム空気電池の理論エネルギー密度は3000Wh/kg以上であり、これは、リチウムイオン電池の約10倍のエネルギー密度に該当する。さらに、リチウム空気電池は環境にやさしく、リチウムイオン電池より改善された安定性を提供できるため、多くの開発がなされつつある。
【0004】
かかるリチウム空気電池では、前記リチウムイオン伝導性媒体として非水系電解質または水系電解質を使用できる。ところが、前記電解質の蒸発によって電池の性能が低下するため、これを改善する方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、蒸発が抑制されたリチウム空気電池用電解質及びこれを含むことで電気的特性が改善されたリチウム空気電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によって、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極と、リチウムイオン伝導性固体電解質膜と、酸素を正極活物質とする正極と、を含み、前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜と正極との間には、リチウムイオン伝導性高分子、下記化学式1で表示される化合物及びリチウム塩を含む電解質(以下、“第1電解質”という)を含むリチウム空気電池が提供される。
[化学式1]
【化1】

【0007】
前記化学式1のうち、R及びRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、または置換または非置換のC−C20の炭素環基であり、RないしRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルコキシカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20の炭素環基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20のアルキルカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリールカルボニル基、または置換または非置換のC−C30のヘテロアリールカルボニル基を表し、nは、1ないし20である。
【0008】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は負極と正極との間に介在され、負極の一表面上に形成されている。
【0009】
前記負極とリチウムイオン伝導性固体電解質膜との間に第2電解質をさらに含む。前記第2電解質は、非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜またはその組み合せ物である。
【0010】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜と正極との間にセパレータをさらに備える。
【0011】
本発明の他の側面によって、リチウムイオン伝導性高分子、下記化学式1の化合物及びリチウム塩を含むリチウム空気電池用電解質が提供される。
[化学式1]
【化2】

【0012】
前記化学式1のうち、R及びRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、または置換または非置換のC−C20の炭素環基であり、RないしRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルコキシカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20の炭素環基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20のアルキルカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリールカルボニル基、または置換または非置換のC−C30のヘテロアリールカルボニル基を表し、nは、1ないし20である。
【0013】
本発明のさらに他の側面によって、前述した電解質を含むリチウム空気電池が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一具現例によるリチウム空気電池用電解質では、蒸発が効果的に抑制される。したがって、かかる電解質を用いれば、セル性能の改善されたリチウム空気電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一具現例によるリチウム空気電池の動作原理を示す図面である。
【図2】本発明の一具現例によるリチウム空気電池の構造を示す概略図である。
【図3】製造例1及び比較製造例1によって製造された電解質における経時的な重量変化を観察したグラフである。
【図4】実施例1、比較例1及び比較例2によるリチウム空気電池の放電グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一態様によるリチウム空気電池は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極と、リチウムイオン伝導性固体電解質膜と、酸素を正極活物質とする正極と、を含み、前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜と正極との間には、リチウムイオン伝導性高分子、下記化学式1で表示される化合物及びリチウム塩を含む電解質(以下、“第1電解質”という)を含む。
【0017】
[化学式1]
【化3】

【0018】
前記化学式1のうち、R及びRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、または置換または非置換のC−C20の炭素環基であり、RないしRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルコキシカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20の炭素環基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20のアルキルカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリールカルボニル基、または置換または非置換のC−C30のヘテロアリールカルボニル基を表し、nは、1ないし20である。
【0019】
また前記リチウムイオン伝導性高分子、前記化学式1の化合物及びリチウム塩を含むリチウム空気電池用電解質(第1電解質)、並びにこれを含むリチウム空気電池が提供される。
【0020】
リチウム空気電池は、正極とリチウムイオン伝導性固体電解質膜との間に存在する電解質として、水系電解質または非水系電解質を使用できる。
【0021】
電解質として非水系電解質を使用する場合、下記の反応式1のような反応メカニズムを表す。
<反応式1>
4Li+O⇔2LiO E=2.91V
2Li+O⇔Li=3.10V
【0022】
放電時、負極から由来するリチウムが正極から導入される酸素と出合ってリチウム酸化物が生成され、酸素は還元される(oxygen reduction reaction:ORR)。また、逆に充電時、リチウム酸化物が還元され、酸素が酸化して発生する(oxygen evolution reaction:OER)。
【0023】
ところが、かかるリチウム空気電池では、正極側の電解質蒸発によっていろいろな問題点が発生する。例えば、正極と電解質との界面面積が低減して電池の容量が縮まる。また電解質からリチウム塩が析出されるか、及び/またはリチウム塩の濃度が相対的に増大し、かつ放電生成物濃度が増大することで、電池の放電特性及び寿命が低下する。
【0024】
本発明の一具現例によるリチウム空気電池は、リチウムイオン伝導性固体電解質膜と正極との間にリチウムイオン伝導性高分子と、化学式1の化合物と、リチウム塩を含む電解質を使用して電解質の蒸発が効果的に抑制される。
【0025】
図1を参照して、一具現例によるリチウム空気電池の動作原理について説明すれば、次の通りである。
【0026】
リチウム空気電池10は、正極11と負極12との間にリチウムイオン伝導性固体電解質膜13が配された構造を持つ。前記正極11には、リチウムイオン伝導性高分子14と、前記化学式1の化合物15と、リチウム塩(図示せず)を含む電解質16の一部または全部が含浸されうる。
【0027】
前記電解質16でリチウムイオン伝導性高分子14は、化学式1の化合物15の蒸発を抑制する。例えば、前記リチウムイオン伝導性高分子14は、図1に示したように、高分子マトリックス内に化学式1の化合物15を含めて溶媒の蒸発を抑制する効果が優秀である。
【0028】
一具現例によれば、前記電解質は、リチウムイオン伝導性高分子である酸化ポリエチレンと、化学式1の化合物であるテトラグリム{CHO−(CHCHO)−CH}と、リチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)とを含む。
【0029】
前記酸化ポリエチレンとテトラグリムとは、基本ユニットが類似して互いに混合された状態で相互作用が強いため、テトラグリムの蒸発抑制効果が優秀である。
【0030】
以下、一具現例によるリチウム空気電池の第1電解質及びこれを含むリチウム空気電池についてさらに詳細に説明する。
【0031】
第1電解質は、リチウムイオン伝導性高分子、前記化学式1の化合物及びリチウム塩を含む。
【0032】
前記リチウムイオン伝導性高分子としては、リチウムイオン伝導性を持つ親水性マトリックス高分子を使用できる。
【0033】
前記親水性マトリックス高分子としては、酸化アルキレン系高分子、親水性アクリル系高分子、親水性メタクリル系高分子からなる群から選択された一つ以上を使用できる。
【0034】
前記酸化アルキレン系高分子は、アルキレン基とエーテル酸素とが交互に配列された分子鎖である酸化アルキレン鎖を持つ高分子であり、酸化アルキレン鎖が分枝を持ってもよい。
【0035】
前記酸化アルキレン系高分子の例としては、酸化ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、酸化エチレン/酸化プロピレン共重合体からなる群から選択された一つ以上を使用できる。
【0036】
前記リチウムイオン伝導性高分子の重量平均分子量は2000以上、例えば、2000ないし100万であるが、必ずしもこれらの範囲に限定されるものではなく、電池でデンドライドの成長を抑制できる範囲ならば、いずれも使用できる。
【0037】
前記親水性アクリル系高分子及び親水性メタクリル系高分子とは、それぞれ親水性基を持つアクリル系高分子及びメタクリル系高分子をいう。
【0038】
前記親水性基としては、親水性を付与できる官能基ならばいずれも使用でき、例えば、燐酸基、スルホン酸基などがある。
【0039】
前記化学式1の化合物について、前記化学式1でR及びRは、それぞれ水素原子またはC1−C10アルキル基であり、RないしRは、それぞれ水素原子またはC1−C10アルキル基であり、nは、1ないし8である。
【0040】
前記化学式1の化合物の例には、テトラグリム{CHO−(CHCHO)−CH}がある。
【0041】
前記リチウムイオン伝導性高分子の含有量は、電解質で化学式1の化合物100重量部を基準として1ないし90重量部である。
【0042】
前記電解質は、溶媒をさらに含む。
【0043】
前記リチウム塩の含有量は、化学式1の化合物とリチウムイオン伝導性高分子との総重量100重量部を基準として0.1ないし70重量部である。
【0044】
化学式1の化合物及びリチウム塩の含有量が前記範囲である場合、電解質が適当な伝導度及び粘度を持つので優秀な電解質性能を表すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0045】
前記第1電解質は、非プロトン性溶媒及び水から選択された一つ以上をさらに含む。
【0046】
前記非プロトン性溶媒及び水からなる群から選択された一つ以上の含有量は、化学式1の化合物100重量部を基準として0.1ないし100重量部である。
【0047】
前記非プロトン性溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アミン系またはホスフィン系溶媒を使用できる。
【0048】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使われる。
【0049】
前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、テルトブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノリド、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトンなどが使われる。
【0050】
前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使われ、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使われる。
【0051】
また前記アミン系溶媒としては、トリエチルアミン系、トリフェニルアミンなどが使われる。前記ホスフィン系溶媒としては、トリエチルホスフィンなどが使われうるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、該技術分野で使われうる非プロトン性溶媒ならば、いずれも使われうる。
【0052】
また、非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは、炭素数2ないし20の直鎖状、分枝状、または環状の炭化水素基であり、二重結合、芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、スルフォラン(sulfolane)または1,3-ジオキサン(1,3-dioxolane)も使われうる。
【0053】
前記非プロトン性溶媒は、単独または二つ以上混合して使用でき、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は、電池性能によって適当に調節でき、これは当業者に明らかである。
【0054】
また、前記電解質はイオン性液体を含む。
【0055】
イオン性液体としては、直鎖状、分枝状に置換されたアンモニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム陽イオンと、PF、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、(CN)などの陰イオンとからなる化合物を使用できる。
【0056】
一具現例による電解質で溶媒が過激溶媒である場合には、リチウムイオン伝導性親水性高分子を共に使用すれば、電解質の蒸発を抑制する効果が非常に優秀になる。
【0057】
一具現例によれば、前記電解質は、酸化ポリエチレンとテトラグリムとリチウム塩とを含む。ここでリチウム塩としては、リチウムビストリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用する。
【0058】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜と正極との間に存在する電解質は、一部または全部が正極に含浸されうる。
【0059】
前記電解質は、例えば、リチウムイオン伝導性高分子、前記化学式1の化合物及びリチウム塩を混合し、これを40ないし80℃、例えば、約60℃で10分以上混合する過程を経て製造できる。かかる過程を経れば、電解質を構成する各成分が均一に分散される。
【0060】
前記電解質でリチウム塩は、化学式1の化合物に溶解して電池内でリチウムイオンの供給源として作用でき、例えば、負極とリチウムイオン伝導性電解質膜と正極との間でリチウムイオンの移動を促進できる。
【0061】
前記リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは自然数である)、LiF、LiBr、LiCl、LiI及びLiB(C(リチウムビスオキサレートボラート;LiBOB)からなる群から選択される一つまたは二つ以上を使用できる。
【0062】
前記リチウム塩の含有量は、0.01ないし10M、例えば、0.1ないし2.0Mでありうる。リチウム塩の含有量が前記範囲である時、電解質が適切な伝導度及び粘度を持つので優秀な電解質性能を表すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0063】
前記リチウム塩以外に他の金属塩をさらに含むことができ、例えば、AlCl、MgCl、NaCl、KCl、NaBr、KBr、CaClなどがある。
【0064】
一方、酸素を正極活物質として使用する正極には、導電性材料が使われうる。前記導電性材料はまた、多孔性でありうる。したがって、正極として前記多孔性及び導電性を持つものならば制限なしに使用でき、例えば、多孔性を持つ炭素系材料を使用できる。かかる炭素系材料としては、カーボンブラック類、グラファイト類、グラフェン類、活性炭類、炭素繊維類などを使用できる。また、金属繊維、金属メッシュなどの金属性導電性材料を使用できる。また、銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属性粉末を含む。ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料を使用できる。前記導電性材料は、単独または混合して使われる。
【0065】
前記正極には、酸素の酸化/還元のための触媒が添加され、かかる触媒としては、白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウムなどの貴金属系触媒、マンガン酸化物、鉄酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物などの酸化物系触媒、またはコバルトフタロシアニンなどの有機金属系触媒を使用できるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、該技術分野で酸素の酸化/還元触媒として使われうるものならば、いずれも使用できる。
【0066】
また、前記触媒は担体に担持される。前記担体は、酸化物、ゼオライト、粘土系鉱物、カーボンなどでありうる。前記酸化物は、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの酸化物を一つ以上含む。Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Tm、Yb、Sb、Bi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo及びWから選択される一つ以上の金属を含む酸化物でありうる。前記カーボンは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック類、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛などの黒鉛類、活性炭類、炭素繊維類などであるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、該技術分野で担体として使われうるものならば、いずれも使用できる。
【0067】
前記正極は、バインダーをさらに含む。前記バインダーは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含む。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などを単独または混合して使用できるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、該技術分野でバインダーとして使われうるものならば、いずれも使用できる。
【0068】
前記正極は、例えば、前記酸素酸化/還元触媒、導電性材料及びバインダーを混合した後、適当な溶媒を添加して正極スラリーを製造した後、集電体表面に塗布及び乾燥させるか、選択的に電極密度の向上のために集電体に圧縮成形して製造できる。また、前記正極は、選択的にリチウム酸化物を含む。また、選択的に前記酸素酸化/還元触媒は省略できる。
【0069】
集電体としては、酸素の拡散を速やかにするために網状またはメッシュ状の多孔体が用いられ、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウムなどの多孔性金属板を使用できるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、該技術分野で集電体として使われうるものならば、いずれも使用できる。前記集電体は、酸化を防止するために耐酸化性の金属または合金被膜で被覆される。
【0070】
前記リチウム空気電池で前記負極において、負極としてはLi金属、Li金属基盤の合金またはLiを吸蔵、放出できる物質が可能であるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、該技術分野で負極として使われうるものであって、リチウムを含むか、またはリチウムを吸蔵放出できるものならば、いずれも使用できる。前記負極がリチウム空気電池の容量を定めるので、前記負極は、例えば、リチウム金属でありうる。前記リチウム金属基盤の合金としては、例えば、リチウムと、アルミニウム、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、チタン、バナジウムから選択された一つ以上の合金を挙げられる。
【0071】
また前記正極と負極との間には、セパレータを配してもよい。かかるセパレータとしては、リチウム空気電池の使用範囲に耐えられる組成ならば限定されず、例えば、ポリプロピレン素材の不織布やポリフェニレンサルファイド素材の不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の多孔性フィルムを例示でき、これらを2種以上併用してもよい。
【0072】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、負極のリチウムを電解質から保護する保護膜の役割を行うように負極の表面上に形成される。
【0073】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、有機物質及び高分子固体電解質成分からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0074】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス・セラミック固体電解質であるか、またはガラス・セラミック固体電解質と高分子固体電解質との積層構造体でありうる。かかるリチウムイオン伝導性固体電解質膜についてさらに詳細に説明すれば、次の通りである。
【0075】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜としては、リチウムイオン伝導性ガラス、リチウムイオン伝導性結晶(セラミックまたはガラス・セラミック)、またはこれらの混合物を含む無機物質を例示できる。化学的安定性を考慮する時、前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は酸化物を例として挙げることができる。
【0076】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜がリチウムイオン伝導性結晶を多く含む場合、高いイオン伝導度が得られるので、例えば、リチウムイオン伝導性結晶を固体電解質膜全体重量に対して、例えば、50重量%以上、または55重量%以上の量で含む。
【0077】
前記リチウムイオン伝導性結晶としては、LiN、LISICON類、La0.55Li0.35TiOなどのリチウムイオン伝導性を持つ灰チタン石(perovskite)構造を持つ結晶、NASICON型構造を持つLiTi12、またはこれら結晶を析出させるガラス・セラミックを使用できる。
【0078】
前記リチウムイオン伝導性結晶としては、例えば、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−y12(但し、O≦x≦1、O≦y≦1であり、例えば、0≦x≦0.4、0<y≦0.6であり、または、0.1≦x≦0.3、0.1<y≦0.4である)を挙げられる。前記リチウムイオン伝導性結晶が高いイオン伝導度を持つためには、イオン伝導を妨害する結晶粒界を含んではならない。例えば、ガラス・セラミックは、イオン伝導を妨害する気孔や結晶粒界をほとんど持っていないため、イオン伝導性が高く、かつ優秀な化学的安定性を持つ。
【0079】
前記リチウムイオン伝導性ガラス・セラミックを例示すれば、リチウム−アルミニウム−ゲルマニウム−燐酸塩(LAGP)、リチウム−アルミニウム−チタン−燐酸塩(LATP)、リチウム−アルミニウム−チタン−シリコン−燐酸塩(LATSP)などを挙げられる。
【0080】
例えば、マザーガラスがLiO−Al−TiO−SiO−P系組成を持ち、前記マザーガラスを熱処理して結晶化する場合、この時の主結晶相はLi1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦1、O≦y≦1)になり、この時、x及びyは、例えば、0≦x≦0.4、または0<y≦0.6、または0.1≦x≦0.3、0.1<y≦0.4である。
【0081】
ここで、イオン伝導を妨害する孔や結晶粒界とは、リチウムイオン伝導性結晶を含む無機物質全体の伝導度を、前記無機物質中のリチウムイオン伝導性結晶それ自体の伝導度に対して1/10以下の値に低減させる孔や結晶粒界などのイオン伝導性阻害物質を称する。
【0082】
また、前記ガラス・セラミックとは、ガラスを熱処理することでガラス相中に結晶相を析出させて得られる材料であり、非晶質固体及び結晶からなる材料を称し、さらに、ガラス相のいずれも結晶相に相転移させた材料、例えば、材料中の結晶量(結晶化度)が100重量%である材料を含む。そして、100重量%結晶化させた材料であっても、ガラス・セラミックの場合には結晶粒子間や結晶中に穴がほとんど存在しない。
【0083】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は前記ガラスセラミックを多く含むことで、高いイオン伝導率が得られるため、前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜中に80重量%以上のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックを含むことができ、さらに高いイオン伝導率を得るためには、前記リチウムイオン伝導性ガラスセラミックを85重量%以上または90重量%以上の量で含む。
【0084】
前記ガラス・セラミックに含まれたLiO成分は、Liイオンキャリアを提供し、リチウムイオン伝導性を得るのに有用な成分である。良好なイオン伝導率をさらに容易に得るためには、前記LiO成分の含有量が12重量%以上、13重量%以上、または14重量%のものを例示できる。一方、LiO成分の含有量があまりにも多い場合には、ガラスの熱的安定性が劣化しやすく、ガラスセラミックの伝導率も容易に低下するため、前記LiO成分の含有量上限は18重量%、17重量%または16重量%の値を持つ。
【0085】
前記ガラス・セラミックに含まれたAl成分は、マザーガラスの熱的安定性を向上させると同時に、Al3+イオンが前記結晶相に固溶されて、リチウムイオン伝導率向上にも効果がある。さらに容易にこの効果を得るためには、前記Al成分の含有量下限が5重量%、5.5重量%または6重量%のものを例示できる。しかし、前記Al成分の含有量が10重量%を超過する場合には、かえってガラスの熱的安定性が劣化しやすく、前記ガラスセラミックの伝導率も低下しやすいため、前記Al成分の含有量上限は10重量%、9.5重量%または9重量%のものを例示できる。
【0086】
前記ガラス・セラミックに含まれたTiO成分はガラスの形成に寄与し、前記結晶相の構成成分でもあり、ガラス及び前記結晶において有用な成分である。ガラス化するために、そして前記結晶相が主相としてガラスから析出されて、高いイオン伝導率をより容易に得るためには、前記TiO成分の含有量下限が35重量%、36重量%または37重量%のものが例示できる。一方、前記TiO成分の含有量があまりにも多い場合には、前記ガラスの熱的安定性が劣化しやすく、前記ガラスセラミックの伝導率も容易に低下するため、前記TiO成分含有量の上限が45重量%、43重量%、または42重量%のものを例示できる。
【0087】
前記ガラス・セラミックに含まれたSiO成分は、マザーガラスの溶融性及び熱的安定性を向上させると同時に、Si4+イオンが前記結晶相に固溶されて、リチウムイオン伝導率の向上にも寄与する。この効果をさらに十分に得るためには、前記SiO成分含有量の下限が1重量%、2重量%、または3重量%のものを使用できる。しかし、前記SiO成分の含有量があまりにも多い場合には、かえって伝導率が低下しやすいので、前記SiO成分の含有量上限が10重量%、8重量%または7重量%のものを例示できる。
【0088】
前記ガラス・セラミックに含まれたP成分はガラスの形成に有用な成分であり、さらに前記結晶相の構成成分でもある。前記P成分の含有量が30重量%未満である場合にはガラス化し難いので、前記P成分の含有量下限が30重量%、32重量%、または33重量%のものを例示できる。一方、前記P成分の含有量が40重量%を超過する場合には、前記結晶相がガラスから析出され難く、所望の特性を得難くなるため、前記P成分の含有量上限が40重量%、39重量%または38重量%のものを例示できる。
【0089】
前記組成の場合、溶融ガラスをキャストして容易にガラスを得ることができ、このガラスを熱処理して得られた前記結晶相を持つガラスセラミックは、1×10−3S・cm−1の高いリチウムイオン伝導性を持つようになる。
【0090】
また、前記組成以外にも、類似した結晶構造を持つガラスセラミックを使用する場合ならば、Al成分をGa成分に、TiO成分をGeO成分に、その一部または全部を置換してもよい。さらに、前記ガラスセラミックの製造時、その融点を低下させるか、またはガラスの安定性を向上させるために、イオン伝導性を大きく劣化させない範囲で他の原料を微量添加してもよい。
【0091】
前記のようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス・セラミック成分以外に高分子固体電解質成分をさらに含む。かかる高分子固体電解質はリチウム塩のドーピングされた酸化ポリエチレンであり、前記リチウム塩としては、LiN(SOCFCF、LiBF、LiPF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiN(SOCF、LiCSO、LiAlClなどを例示できる。
【0092】
前記高分子固体電解質は、前記ガラス・セラミックとのとき層構造体を形成でき、前記成分を含む第1高分子固体電解質と第2高分子固体電解質との間に前記ガラス・セラミックが介在される。
【0093】
前述したようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜は、リチウムイオンを吸蔵/放出できる負極の一表面上に形成されて、負極が第1電解質と反応しないように保護し、リチウムイオンのみ通過させる。
【0094】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、単層または複数層膜として使われる。
【0095】
前記負極とリチウムイオン伝導性固体電解質膜との間には第2電解質が配される。
【0096】
前記第2電解質は、非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質、CuN、LiN、LiPONなどの無機固体電解質膜、高分子電解質膜またはその組み合せ物を使用できる。
【0097】
前記非水系溶媒は、前述した第1電解質の非プロトン性溶媒及び化学式1の化合物を含む。
【0098】
一具現例によるリチウム空気電池は、正極側の電解質である第1電解質の蒸発が抑制されて、電解質蒸発による問題点を未然に防止できる。したがって、電極と電解質間の界面脱離が防止可能になって、寿命、電気的性能などのセル性能が改善される。
【0099】
本明細書で使われる用語である“空気(air)”は大気の空気に制限されるものではなく、酸素を含むガスの組み合わせ、または純粋酸素ガスを含みうる。かかる用語“空気”についての広い定義が、あらゆる用途、例えば、空気電池、空気正極などに適用される。
【0100】
前記リチウム空気電池は、リチウム1次電池、リチウム2次電池のいずれにも使用できる。またその形状は特別に限定されるものではなく、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒形、扁平型、角型などを例示できる。また電気自動車などに用いる大型電池にも適用できる。
【0101】
前記リチウム空気電池の一例を図2に模式的に図示する。リチウム空気電池20は、活物質として酸素を使用し、第1集電体22上に形成された正極23、本発明の一具現例に係るリチウムイオン伝導性高分子とリチウム塩を含む第1電解質21、リチウムイオン伝導性固体電解質膜26及び第2集電体24上に形成された負極25を備えている。
【0102】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜26と負極25との間には、セパレータ(図示せず)が配される。前記セパレータと負極25との間には、第2電解質膜(図示せず)が形成される。
【0103】
前記図2の各構成要素は、図面に示された厚さ範囲に限定されるものではない。
【0104】
化学式で使われる置換基の定義について説明すれば、次の通りである。
【0105】
化学式で使われる用語“アルキル”は、完全飽和された分枝状または非分枝状(または直鎖または線形)炭化水素基をいう。
【0106】
前記アルキルの非制限的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2、3−ジメチルペンチル、n−ヘプチルなどを挙げられる。
【0107】
前記“アルキル”のうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子に置換されたC−C20のアルキル基(例:CF、CHF、CHF、CClなど)、C−C20のアルコキシ基、C−C20のアルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基やその塩、スルホニル基、スルファモイル基、スルホン酸基やその塩、燐酸やその塩、またはC−C20のアルキル基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、C−C20のヘテロアルキル基、C6−C20のアリール基、C7−C20のアリールアルキル基、C2−C20のヘテロアリール基、C3−C20のヘテロアリールアルキル基、C2−C20のヘテロアリールオキシ基、またはC3−C20のヘテロアリールオキシアルキル基に置換できる。
【0108】
用語“ハロゲン原子”は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。
【0109】
化学式で使われる用語“アルコキシ”は、アルキル−O−を表し、前記アルキルは前述した通りである。前記アルコキシの非制限的な例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどがある。前記アルコキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0110】
前記化学式で、非置換のアルケニル基は、前記非置換のアルキル基の中間や最終端に一つ以上の炭素−炭素二重結合を含有していることを意味する。例えば、エテニル、プロフェニル、ブテニルなどがある。これら非置換のアルケニル基のうち少なくとも一つ以上の水素原子は、前述した置換されたアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0111】
前記化学式で、非置換のアルキニル基は、前記定義されたようなアルキル基の中間や最終端に一つ以上の炭素−炭素三重結合を含有していることを意味する。これらアルキニル基のうち少なくとも一つ以上の水素原子は、前述した置換のアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0112】
前記置換または非置換のアルキニル基の例としては、アセチレン、プロピレン、フェニルアセチレン、ナフチルアセチレン、イソプロピルアセチレン、t−ブチルアセチレン、ジフェニルアセチレンなどがある。
【0113】
化学式で使われる用語“アリール”は単独または組み合わせて使われ、一つ以上の環を含む芳香族炭化水素を意味する。
【0114】
前記用語“アリール”は、芳香族環である。
【0115】
前記アリールの非制限的な例として、フェニル、ナフチルなどがある。
【0116】
また前記アリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0117】
化学式で使われる用語“ヘテロアリール”は、N、O、PまたはSから選択された一つ以上のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である芳香族有機化合物を意味する。前記ヘテロアリール基は、例えば、1〜5個のヘテロ原子を含み、5〜10環員を含む。前記SまたはNは酸化していろいろな酸化状態を持つ。
【0118】
単環式ヘテロアリール基としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、イソチアゾール−3−イル、イソチアゾール−4−イル、イソチアゾール−5−イル、オキサゾール−2−イル、オキサゾール−4−イル、オキサゾール−5−イル、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−5−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,3−トリアゾール−5−イル、テトラゾリル、ピリド−2−イル、ピリド−3−イル、2−ピラジン−2−イル、ピラジン−4−イル、ピラジン−5−イル、2−ピリミジン−2−イル、4−ピリミジン−2−イル、または5−ピリミジン−2−イルを挙げられる。
【0119】
用語“ヘテロアリール”は、ヘテロ芳香族環が一つ以上のアリール、脂環族、またはヘテロサイクルに融合された場合を含む。
【0120】
二環式ヘテロアリールの例には、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニルなどがある。これらのヘテロアリールのうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0121】
用語“スルホニル”は、R”−SO−を意味し、R”は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール・アルキル、ヘテロアリール・アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シクロアルキルまたはヘテロ環基である。
【0122】
用語“スルファモイル”は、HNS(O)−、アルキル−NHS(2)−、(アルキル)NS(O)−アリール−NHS(O)−、アルキル−(アリール)−NS(O)−、(アリール)NS(O)、ヘテロアリール−NHS(O)−、(アリール−アルキル)−NHS(O)−、または(ヘテロアリール−アルキル)−NHS(O)−を含む。
【0123】
前記スルファモイルのうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じく置換できる。
【0124】
前記用語“アミノ”は、窒素原子が少なくとも一つの炭素またはヘテロ原子に共有結合された場合を示す。アミノ基は、例えば、−NH及び置換されたモイエティを含む。
【0125】
前記用語“アルキルアミノ”は、窒素が少なくとも一つの付加的なアルキル基に結合されたアルキルアミノ、窒素が少なくとも一つまたは二つ以上が独立して選択されたアリール基に結合されたアリールアミノ及びジアリールアミノ基を含む。
【0126】
前記用語“炭素環”は、シクロヘキシル基のように5ないし10炭素原子で構成された環基を称し、前記炭素環のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0127】
前記アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びヘテロアリールカルボニル基は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0128】
以下では、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0129】
製造例1
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)7gを、テトラグリム20mL及び4gの酸化ポリエチレン(PEO:Polyethylene oxide、粘度平均分子量約600,000、Aldrich社製)と混合して第1電解質を用意した。
【0130】
比較製造例1
7gのLiTFSIを20mLのテトラグリムと混合して、1M LiTFSIのテトラグリム溶液を製造して第1電解質を用意した。
【0131】
比較製造例2
0.5gのLiTFSIを50mLのアセトニトリルに溶解し、これに酸化ポリエチレン(PEO)(重量平均分子量約600,000、Aldrich社製)1.4gを添加して12時間攪拌した。次いで、PTFE皿に前記溶液を加えた後、窒素ガス下で20℃で24時間乾燥し、120℃で24時間真空乾燥して第1電解質を得た。
【0132】
実施例1:リチウム空気電池の製作
7gのLiTFSIをプロピレンカーボネート(PC)20mlに溶解して、1M LiTFSIのPC溶液を第2電解質として用意した。
【0133】
前記第2電解質の1M LiTFSIのPC溶液をセルガード社製のポリプロピレンセパレータ(セルガード3501)に含浸して、1M LiTFSIのPC溶液が含浸されたセパレータを用意した。
【0134】
これと別途に、酸化ポリエチレン(PEO)(重量平均分子量約600,000、Aldrich社製)4g、テトラグリム20ml及びLiTFSI 7gを約60℃で混合して第1電解質を製造した。
【0135】
厚さ約150μmのLATP固体電解質膜、前記1M LiTFSIのPC溶液が含浸されたセパレータ、約100μm厚さのNiタブ及び約20μm厚さの銅集電体を約20μm厚さのアルミニウムポーチで包装して、前記LATP固体電解質膜のウィンドウを持つ構造物を製造した。
【0136】
前記LATP(Li1.4Ti1.6Al0.412)固体電解質膜は、5cm×5cmサイズのアルミニウムフィルムの中央に1cm×1cmの孔をあけ、エポキシ接着剤を用いて1.4cm×1.4cmサイズのLATPフィルム(Ohara corporation製)で孔を閉塞して、一部分がLATPからなっているアルミニウムフィルムを製造した。
【0137】
前記構造物のウィンドウに前記過程によって得た第1電解質を注入した後、正極を積層してリチウム空気電池を製作した。
【0138】
前記正極は、カーボン(Super−P)40重量部、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)10重量部、N−メチルピロリドン(NMP)50重量部を混合して正極スラリーを製造した後、このスラリーを正極集電体にコーティング及び乾燥させて正極を得た。
【0139】
比較例1
前記正極用電解質である第1電解質として、比較製造例1の1M LiTFSIのテトラグリム溶液を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって行ってリチウム空気電池を製造した。
【0140】
比較例2
前記第1電解質として比較製造例2の固体電解質を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって行ってリチウム空気電池を製造した。
【0141】
評価例1:電解質の蒸発速度評価
製造例1及び比較製造例1によって製造された第1電解質で経時的な重量変化を観察し、電解質の蒸発速度を評価した。
【0142】
前記評価結果は、図3に示した通りである。
【0143】
図3を参照すれば、製造例1の第1電解質は、比較製造例1の第1電解質に比べて蒸発速度が抑制されるということが分かる。
【0144】
評価例2:リチウム空気電池の放電特性評価
25℃、1atmで実施例1、比較例1及び2で製造されたリチウム空気電池において、0.2mA/cmの定電流で2.2V(vs.Li)まで放電を行い、その結果を図4に示した。
【0145】
図4を参照すれば、実施例1のリチウム空気電池は、比較例1及び2のリチウム空気電池に比べて放電特性が改善されるということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は、リチウム空気電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0147】
20 リチウム空気電池
21 第1電解質
22 第1集電体
23 正極
24 第2集電体
25 負極
26 リチウムイオン伝導性固体電解質膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極と、
リチウムイオン伝導性固体電解質膜と、
酸素を正極活物質とする正極と、を含み、
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜と正極との間には、リチウムイオン伝導性高分子、下記化学式1で表示される化合物及びリチウム塩を含む電解質を含むリチウム空気電池:
[化学式1]
【化1】

前記化学式1のうち、R及びRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、または置換または非置換のC−C20の炭素環基であり、
ないしRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルコキシカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20の炭素環基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20のアルキルカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリールカルボニル基、または置換または非置換のC−C30のヘテロアリールカルボニル基を表し、
nは、1ないし20である。
【請求項2】
前記リチウムイオン伝導性高分子は、
親水性マトリックス高分子である請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項3】
前記親水性マトリックス高分子は、
酸化アルキレン系高分子、親水性アクリル系高分子及び親水性メタクリル系高分子からなる群から選択された一つ以上である請求項2に記載のリチウム空気電池。
【請求項4】
前記化学式1で、R及びRは、それぞれ水素原子またはC1−C10アルキル基であり、
ないしRは、それぞれ水素原子またはC1−C10アルキル基であり、
nは、1ないし8である請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項5】
前記化学式1の化合物は、
テトラグリム{CHO−(CHCHO)−CH}である請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項6】
前記リチウムイオン伝導性高分子は、酸化アルキレン系高分子である請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項7】
前記リチウムイオン伝導性高分子の含有量は、前記化学式1の化合物100重量部を基準として1ないし90重量部である請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項8】
前記電解質は、非プロトン性溶媒及び水からなる群から選択された一つ以上をさらに含む請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項9】
前記リチウム塩の含有量は、
前記化学式1の化合物とリチウムイオン伝導性高分子との総重量100重量部を基準として0.1ないし70重量部である請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項10】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は前記負極と正極との間に介在され、前記負極の一表面上に形成されたものである請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項11】
前記電解質の一部または全部は、
前記正極に含浸された請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項12】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、
無機物質及び高分子固体電解質成分からなる群から選択された一つ以上を含む請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項13】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、
ガラス・セラミック固体電解質であるか、またはガラス・セラミック固体電解質と高分子固体電解質との積層構造体である請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項14】
前記負極とリチウムイオン伝導性固体電解質膜との間に第2電解質をさらに含むことの請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項15】
前記第2電解質は、
液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜またはその組み合せ物である請求項14に記載のリチウム空気電池。
【請求項16】
前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜と正極との間にセパレータをさらに備える請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項17】
前記正極は、多孔性炭素系物質を含む請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項18】
前記電解質は、リチウムイオン伝導性高分子、前記化学式1の化合物及びリチウム塩を40ないし80℃で混合して得られたものである請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項19】
リチウムイオン伝導性高分子、下記化学式1の化合物及びリチウム塩を含むリチウム空気電池用電解質:
[化学式1]
【化2】

前記化学式1のうち、R及びRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、または置換または非置換のC−C20の炭素環基であり、
ないしRは、互いに独立して水素原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルコキシカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリール基、置換または非置換のC−C20の炭素環基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20のアルキルカルボニル基、置換または非置換のC−C30のアリールカルボニル基、または置換または非置換のC−C30のヘテロアリールカルボニル基を表し、
nは、1ないし20である。
【請求項20】
前記リチウムイオン伝導性高分子は、
親水性マトリックス高分子である請求項19に記載のリチウム空気電池用電解質。
【請求項21】
前記親水性マトリックス高分子は、
酸化アルキレン系高分子、親水性アクリル系高分子及び親水性メタクリル系高分子からなる群から選択された一つ以上である請求項20に記載のリチウム空気電池用電解質。
【請求項22】
前記化学式1の化合物は、
テトラグリム{CHO−(CHCHO)−CH}である請求項19に記載のリチウム空気電池用電解質。
【請求項23】
前記リチウムイオン伝導性高分子は、酸化アルキレン系高分子である請求項19に記載のリチウム空気電池用電解質。
【請求項24】
前記リチウムイオン伝導性高分子の含有量は、
前記化学式1の化合物100重量部を基準として1ないし90重量部である請求項19に記載のリチウム空気電池用電解質。
【請求項25】
請求項19ないし請求項24のうちいずれか1項に記載の電解質を含むリチウム空気電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−98176(P2013−98176A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236617(P2012−236617)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】