リチウム電池
【目的】 小形で充放電エネルギーが大きいリチウム電池を安価に提供する。
【構成】 ニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として正極合剤ペレット6中に含み、負極活物質はリチウムまたはその化合物をリチウム負極4とし、前記正極活物質および前記負極活物質に対して化学的に安定であり、かつリチウムイオンが前記正極活物質あるいは前記負極活物質と電気化学反応をするための移動を行ない得る物質を電解質物質としたことを特徴とする。
【効果】 小形で充放電エネルギーが大きいリチウム電池を安価に構成することができ、携帯用の種々の電子機器の電源を始め、様々な分野に利用できるという利点を有する。
【構成】 ニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として正極合剤ペレット6中に含み、負極活物質はリチウムまたはその化合物をリチウム負極4とし、前記正極活物質および前記負極活物質に対して化学的に安定であり、かつリチウムイオンが前記正極活物質あるいは前記負極活物質と電気化学反応をするための移動を行ない得る物質を電解質物質としたことを特徴とする。
【効果】 小形で充放電エネルギーが大きいリチウム電池を安価に構成することができ、携帯用の種々の電子機器の電源を始め、様々な分野に利用できるという利点を有する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム電池、さらに詳細には充放電可能なリチウム二次電池に関し、特に大容量充放電が可能な正極活物質の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術および問題点】リチウム等のアルカリ金属およびその合金を負極活物質とする非水電解液電池は、負極金属イオンの正極活物質へのインサーションもしくはインターカレーション反応によって、その大放電容量と充電可逆性を両立させている。従来から、リチウムを負極活物質として用いる二次電池としては、二硫化チタンや五酸化バナジウムなどの層状もしくはトンネル状酸化物を正極活物質に用いた電池が提案されているが、これらは電圧が低く、またリチウムイオン導電性が悪く充放電容量、ひいては充放電エネルギーも充分とは言えなかった。
【0003】以上のような欠点を克服する方法として、リチウムを含有する化合物を正極活物質として利用することが提案されており、特に初期充電でリチウムを電気化学的に脱離し同時に正極活物質の酸化反応を行なうことにより、電圧が4V付近と高く、しかもリチウムイオン導電性に優れたリチウム電池を可能としている。この例としてはLiMn2O4(特開昭58−34414号など)、LiCoO2(Mizushima et al., Mat.Res.Bull., 15, 783(1990)など)、LiNiO2(J.B.Goodenough et al., Mat.Res.Bull., 20, 1137(1985)など)が挙げられるが、何れも高電圧部の充放電容量が充分でないという問題点があった。この理由については、LiMn2O4ではLi/Mn>0.5以上の放電をするとヤーンテラー効果により電圧が3V以下に降下するためであると考えられており(T.Ohzuku et al., J.Electrochem. Soc., 137, 769(1990)など)、またLiCoO2およびLiNiO2ではリチウムイオン導電性が充分でなく活物質利用率が低いことが原因であると考えられる。また特にLiCoO2の場合、原材料のコバルト化合物が非常に高価であるという欠点があるため、LiCoO2と同一構造を持ち安価な原材料で合成できるLiNiO2、あるいはLiCoxNi1-xO2の大容量化が試みられてきたが、特にニッケルのモル数がコバルトのモル数に比べて多い場合(0≦X≦0.5)には充分な充放電容量が得られていない(T.Ohzuku et al., Chem.Express., 5, 733(1990)など)。これは、従来用いられていた粉末の乾式混合、焼成による合成法では、原料のコバルト酸化物、およびニッケル酸化物の反応性が低く、充分な反応性を得るために900℃以上の高温焼成を行なうと、焼成物のリチウムイオン導電性が充分でなく、電池の活物質として利用した際に充分な充放電容量が得られないものと考えられる。
【0004】
【発明の目的】本発明の目的は上記現状の問題点を改良して、小形で充放電エネルギーが大きいリチウム電池を安価に提供することにある。
【0005】
【問題点を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明リチウム電池では、共通のアニオンを対イオンとして有するニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後700℃以上900℃以下で加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として含み、リチウムまたはその化合物を負極活物質とし、前記正極活物質および前記負極活物質に対して化学的に安定であり、かつリチウムイオンが前記正極活物質あるいは前記負極活物質と電気化学反応をするための移動を行ない得る物質を電解質物質としたことを特徴としている。
【0006】本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】上述のように共通のアニオンを対イオンとして有するニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後700℃以上900℃以下で加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として用いることにより、従来のリチウム電池より充放電エネルギーが大きく、サイクル性に優れたリチウム電池を構成できることを確かめ、その認識の下に本発明を完成した。
【0008】本発明のリチウム電池が従来技術に比べ大容量化が図られている理由は次のように推定される。すなわち湿式混合法では、塩の溶解によりコバルト、ニッケル、リチウムの各元素がイオン化されてランダムに混合され、再析出後の焼成において比較的低温で充分な反応性が得られるため、リチウムイオンが存在する面の形成が促進され、電池の活物質として利用した際にリチウムイオン導電性がよく、活物質利用率が高い材料が合成できると推定される。
【0009】また前記コバルト塩、ニッケル塩、およびリチウム塩については、共通のアニオンを対イオンとして有する塩を用いることにより、溶媒を蒸発させて塩を再析出させる課程において塩の偏析が起こらず一様な析出が可能となり、混合状態がよく充分な反応性が得られるため、焼成時にリチウムイオンの導電面形成を阻害する温度まで昇温することなくLiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)の生成反応を完了することができる。
【0010】焼成温度については、700℃未満ではLiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)の生成反応が完了せず、900℃を越える場合は前述のごとくリチウムイオンの導電面形成が阻害されるため、700℃以上、900℃以下にすることにより、従来技術に比べ大容量化が可能になる。
【0011】また本発明で用いる合成方法は、極めて簡便な方法であり、さらに高価なコバルトに代わり安価なニッケルを利用できることも、産業上の価値が高い。
【0012】コバルト塩、ニッケル塩、およびリチウム塩には、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化合物などを用いることができ、特に溶媒への溶解度を考えると硝酸塩を用いることが好ましい。
【0013】溶媒としては、水、アルコール、酸などを用いることができ、特に溶質の溶解性を考えると水を用いることが好ましい。
【0014】この正極活物質を用いて正極を形成するには、前記複酸化物粉末とポリテトラフルオロエチレンのごとき結着剤粉末との混合物をステンレス等の支持体上に圧着成型する。あるいは、かかる混合物粉末に導電性を付与するためアセチレンブラックのような導電性粉末を混合し、これにさらにポリテトラフルオロエチレンのような結着剤粉末を所要に応じて加え、この混合物を金属容器に入れる、あるいは前述の混合物をステンレス等の支持体に圧着成型する、あるいは前述の混合物をスラリー状にして金属基板上に塗布する、等の手段によって形成される。
【0015】負極活物質であるリチウムは一般のリチウム電池のそれと同様にシート状として、またはそのシートをニッケル、ステンレス等の導電体網に圧着して負極として形成される。また負極活物質としては、リチウム以外にリチウム−アルミニウム合金などのリチウム合金を用いることができる。さらに炭素など、いわゆるロッキングチェアー電池用の負極を用いることもでき、本発明の場合、充電反応により正極から供給されるリチウムイオンをドープし、炭素−リチウム負極などとすることができる。
【0016】電解質としては、例えばジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、メチルホルメート、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の有機溶媒に、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiClO4等のルイス酸を溶解した非水電解質溶液が使用できる。
【0017】さらに、セパレータ、構造材料(電池ケース等)等のほかの要素についても従来公知の各種材料が使用でき、特に制限はない。
【0018】
【実施例】以下実施例によって本発明の方法をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、実施例において電池の作成および測定はアルゴン雰囲気下のドライボックス中で行なった。
【0019】
【実施例1】図1は本発明による電池の一具体例であるコイン型電池の断面図であり、図中1は封口板、2はガスケット、3は正極ケース、4はリチウム負極、5はセパレータ、6は正極合剤ペレットを示す。
【0020】正極活物質には、LiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を700℃で12時間焼成することにより得たLiNiO2を用いた。
【0021】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図2に示す。
【0022】得られたLiNiO2粉末を導電剤(アセチレンブラック粉末)、結着剤(ポリテトラフルオロエチレン)と共に混合の上、ロール成型し、正極合剤ペレット6(厚さ0.5mm、直径15mm)とした。まず、ステンレス製の封口板1上に金属リチウム負極4を加圧配置したものをポリプロピレン製のガスケット2の凹部に挿入し、金属リチウム負極4の上にポリプロピレン製で微孔性のセパレータ5、正極合剤ペレット6をこの順序に配置し、電解液としてプロピレンカーボネートと2−ジメトキシエタンの等容積混合溶媒にLiClO4を溶解させた1規定溶液を適量注入して含浸させた後に、ステンレス製の正極ケース3を被せてかしめることにより、厚さ2mm、直径23mmのコイン型電池を作製した。
【0023】このようにして作製したLiNiO2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図3に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0024】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0025】
【実施例2】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0026】まずLiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0027】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図4に示す。
【0028】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図5に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0029】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0030】
【実施例3】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0031】まずLiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を900℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0032】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図6に示す。
【0033】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図7に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0034】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0035】
【実施例4】正極活物質に以下のようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0036】まずLiNO3とCo(NO3)2・6H2OとNi(NO3)2・6H2Oを4:1:3のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiCo0.25Ni0.75O2を得た。
【0037】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図8に示す。
【0038】このようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図9に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0039】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0040】
【実施例5】正極活物質に以下のようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0041】まずLi(CH3CO2)とCo(CH3CO2)2・4H2OとNi(CH3CO2)2・4H2Oを4:1:3のモル比で4規定の酢酸水溶液に溶解させ、4時間撹拌した後溶媒を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiCo0.25Ni0.75O2を得た。
【0042】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図10に示す。
【0043】このようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図11に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0044】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0045】
【実施例6】正極活物質に以下のようにして合成したLiCo0.5Ni0.5O2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0046】まずLiNO3とCo(NO3)2・6H2OとNi(NO3)2・6H2Oを2:1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiCo0.5Ni0.5O2を得た。
【0047】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図12に示す。
【0048】このようにして合成したLiCo0.5Ni0.5O2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図13に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0049】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0050】実施例1〜6では出発物質、焼成温度、コバルトとニッケルの含有比の異なるLiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質に用いて作製した電池の特性について示したが、これらの出発物質、焼成温度、コバルトとニッケルの含有比に限定されるものではなく、共通アニオンを対イオンとして有するニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後700℃以上900℃以下で加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として用いる場合は同様な効果を生じることは言うまでもない。
【0051】
【比較例1】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0052】まずLiNO3とNiOを1:1のモル比でらいかい、混合し、得られた粉末を800℃で12時間焼成したところ、X線回折分析の結果NiOに帰着されるピークが強く観察されたため、さらに1000℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0053】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図14に示す。
【0054】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を、0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図15に示す。この電池と比較すると、本発明の実施例1〜6で作製した電池は放電容量が大きく、優れた性能を示すことがわかる。
【0055】
【比較例2】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0056】まずLiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を1000℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0057】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図16に示す。
【0058】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を、0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図17に示す。この電池と比較すると、本発明の実施例1〜6で作製した電池は放電容量が大きく、優れた性能を示すことがわかる。
【0059】
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、小形で充放電エネルギーが大きいリチウム電池を安価に構成することができ、携帯用の種々の電子機器の電源を始め、様々な分野に利用できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるコイン電池の構成例を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図3】本発明の実施例1におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図4】本発明の実施例2におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図5】本発明の実施例2におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図6】本発明の実施例3におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図7】本発明の実施例3におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図8】本発明の実施例4におけるLiCo0.25Ni0.75O2のX線回折特性図。
【図9】本発明の実施例4におけるLiCo0.25Ni0.75O2の充放電特性図。
【図10】本発明の実施例5におけるLiCo0.25Ni0.75O2のX線回折特性図。
【図11】本発明の実施例5におけるLiCo0.25Ni0.75O2の充放電特性図。
【図12】本発明の実施例6におけるLiCo0.5Ni0.5O2のX線回折特性図。
【図13】本発明の実施例6におけるLiCo0.5Ni0.5O2の充放電特性図。
【図14】本発明の比較例1におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図15】本発明の比較例1におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図16】本発明の比較例2におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図17】本発明の比較例2におけるLiNiO2の充放電特性図。
【符号の説明】
1 封口板
2 ガスケット
3 正極ケース
4 リチウム負極
5 セパレータ
6 正極合剤ペレット
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム電池、さらに詳細には充放電可能なリチウム二次電池に関し、特に大容量充放電が可能な正極活物質の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術および問題点】リチウム等のアルカリ金属およびその合金を負極活物質とする非水電解液電池は、負極金属イオンの正極活物質へのインサーションもしくはインターカレーション反応によって、その大放電容量と充電可逆性を両立させている。従来から、リチウムを負極活物質として用いる二次電池としては、二硫化チタンや五酸化バナジウムなどの層状もしくはトンネル状酸化物を正極活物質に用いた電池が提案されているが、これらは電圧が低く、またリチウムイオン導電性が悪く充放電容量、ひいては充放電エネルギーも充分とは言えなかった。
【0003】以上のような欠点を克服する方法として、リチウムを含有する化合物を正極活物質として利用することが提案されており、特に初期充電でリチウムを電気化学的に脱離し同時に正極活物質の酸化反応を行なうことにより、電圧が4V付近と高く、しかもリチウムイオン導電性に優れたリチウム電池を可能としている。この例としてはLiMn2O4(特開昭58−34414号など)、LiCoO2(Mizushima et al., Mat.Res.Bull., 15, 783(1990)など)、LiNiO2(J.B.Goodenough et al., Mat.Res.Bull., 20, 1137(1985)など)が挙げられるが、何れも高電圧部の充放電容量が充分でないという問題点があった。この理由については、LiMn2O4ではLi/Mn>0.5以上の放電をするとヤーンテラー効果により電圧が3V以下に降下するためであると考えられており(T.Ohzuku et al., J.Electrochem. Soc., 137, 769(1990)など)、またLiCoO2およびLiNiO2ではリチウムイオン導電性が充分でなく活物質利用率が低いことが原因であると考えられる。また特にLiCoO2の場合、原材料のコバルト化合物が非常に高価であるという欠点があるため、LiCoO2と同一構造を持ち安価な原材料で合成できるLiNiO2、あるいはLiCoxNi1-xO2の大容量化が試みられてきたが、特にニッケルのモル数がコバルトのモル数に比べて多い場合(0≦X≦0.5)には充分な充放電容量が得られていない(T.Ohzuku et al., Chem.Express., 5, 733(1990)など)。これは、従来用いられていた粉末の乾式混合、焼成による合成法では、原料のコバルト酸化物、およびニッケル酸化物の反応性が低く、充分な反応性を得るために900℃以上の高温焼成を行なうと、焼成物のリチウムイオン導電性が充分でなく、電池の活物質として利用した際に充分な充放電容量が得られないものと考えられる。
【0004】
【発明の目的】本発明の目的は上記現状の問題点を改良して、小形で充放電エネルギーが大きいリチウム電池を安価に提供することにある。
【0005】
【問題点を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明リチウム電池では、共通のアニオンを対イオンとして有するニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後700℃以上900℃以下で加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として含み、リチウムまたはその化合物を負極活物質とし、前記正極活物質および前記負極活物質に対して化学的に安定であり、かつリチウムイオンが前記正極活物質あるいは前記負極活物質と電気化学反応をするための移動を行ない得る物質を電解質物質としたことを特徴としている。
【0006】本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】上述のように共通のアニオンを対イオンとして有するニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後700℃以上900℃以下で加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として用いることにより、従来のリチウム電池より充放電エネルギーが大きく、サイクル性に優れたリチウム電池を構成できることを確かめ、その認識の下に本発明を完成した。
【0008】本発明のリチウム電池が従来技術に比べ大容量化が図られている理由は次のように推定される。すなわち湿式混合法では、塩の溶解によりコバルト、ニッケル、リチウムの各元素がイオン化されてランダムに混合され、再析出後の焼成において比較的低温で充分な反応性が得られるため、リチウムイオンが存在する面の形成が促進され、電池の活物質として利用した際にリチウムイオン導電性がよく、活物質利用率が高い材料が合成できると推定される。
【0009】また前記コバルト塩、ニッケル塩、およびリチウム塩については、共通のアニオンを対イオンとして有する塩を用いることにより、溶媒を蒸発させて塩を再析出させる課程において塩の偏析が起こらず一様な析出が可能となり、混合状態がよく充分な反応性が得られるため、焼成時にリチウムイオンの導電面形成を阻害する温度まで昇温することなくLiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)の生成反応を完了することができる。
【0010】焼成温度については、700℃未満ではLiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)の生成反応が完了せず、900℃を越える場合は前述のごとくリチウムイオンの導電面形成が阻害されるため、700℃以上、900℃以下にすることにより、従来技術に比べ大容量化が可能になる。
【0011】また本発明で用いる合成方法は、極めて簡便な方法であり、さらに高価なコバルトに代わり安価なニッケルを利用できることも、産業上の価値が高い。
【0012】コバルト塩、ニッケル塩、およびリチウム塩には、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化合物などを用いることができ、特に溶媒への溶解度を考えると硝酸塩を用いることが好ましい。
【0013】溶媒としては、水、アルコール、酸などを用いることができ、特に溶質の溶解性を考えると水を用いることが好ましい。
【0014】この正極活物質を用いて正極を形成するには、前記複酸化物粉末とポリテトラフルオロエチレンのごとき結着剤粉末との混合物をステンレス等の支持体上に圧着成型する。あるいは、かかる混合物粉末に導電性を付与するためアセチレンブラックのような導電性粉末を混合し、これにさらにポリテトラフルオロエチレンのような結着剤粉末を所要に応じて加え、この混合物を金属容器に入れる、あるいは前述の混合物をステンレス等の支持体に圧着成型する、あるいは前述の混合物をスラリー状にして金属基板上に塗布する、等の手段によって形成される。
【0015】負極活物質であるリチウムは一般のリチウム電池のそれと同様にシート状として、またはそのシートをニッケル、ステンレス等の導電体網に圧着して負極として形成される。また負極活物質としては、リチウム以外にリチウム−アルミニウム合金などのリチウム合金を用いることができる。さらに炭素など、いわゆるロッキングチェアー電池用の負極を用いることもでき、本発明の場合、充電反応により正極から供給されるリチウムイオンをドープし、炭素−リチウム負極などとすることができる。
【0016】電解質としては、例えばジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、メチルホルメート、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の有機溶媒に、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiClO4等のルイス酸を溶解した非水電解質溶液が使用できる。
【0017】さらに、セパレータ、構造材料(電池ケース等)等のほかの要素についても従来公知の各種材料が使用でき、特に制限はない。
【0018】
【実施例】以下実施例によって本発明の方法をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、実施例において電池の作成および測定はアルゴン雰囲気下のドライボックス中で行なった。
【0019】
【実施例1】図1は本発明による電池の一具体例であるコイン型電池の断面図であり、図中1は封口板、2はガスケット、3は正極ケース、4はリチウム負極、5はセパレータ、6は正極合剤ペレットを示す。
【0020】正極活物質には、LiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を700℃で12時間焼成することにより得たLiNiO2を用いた。
【0021】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図2に示す。
【0022】得られたLiNiO2粉末を導電剤(アセチレンブラック粉末)、結着剤(ポリテトラフルオロエチレン)と共に混合の上、ロール成型し、正極合剤ペレット6(厚さ0.5mm、直径15mm)とした。まず、ステンレス製の封口板1上に金属リチウム負極4を加圧配置したものをポリプロピレン製のガスケット2の凹部に挿入し、金属リチウム負極4の上にポリプロピレン製で微孔性のセパレータ5、正極合剤ペレット6をこの順序に配置し、電解液としてプロピレンカーボネートと2−ジメトキシエタンの等容積混合溶媒にLiClO4を溶解させた1規定溶液を適量注入して含浸させた後に、ステンレス製の正極ケース3を被せてかしめることにより、厚さ2mm、直径23mmのコイン型電池を作製した。
【0023】このようにして作製したLiNiO2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図3に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0024】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0025】
【実施例2】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0026】まずLiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0027】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図4に示す。
【0028】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図5に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0029】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0030】
【実施例3】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0031】まずLiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を900℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0032】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図6に示す。
【0033】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図7に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0034】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0035】
【実施例4】正極活物質に以下のようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0036】まずLiNO3とCo(NO3)2・6H2OとNi(NO3)2・6H2Oを4:1:3のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiCo0.25Ni0.75O2を得た。
【0037】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図8に示す。
【0038】このようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図9に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0039】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0040】
【実施例5】正極活物質に以下のようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0041】まずLi(CH3CO2)とCo(CH3CO2)2・4H2OとNi(CH3CO2)2・4H2Oを4:1:3のモル比で4規定の酢酸水溶液に溶解させ、4時間撹拌した後溶媒を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiCo0.25Ni0.75O2を得た。
【0042】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図10に示す。
【0043】このようにして合成したLiCo0.25Ni0.75O2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図11に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0044】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0045】
【実施例6】正極活物質に以下のようにして合成したLiCo0.5Ni0.5O2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0046】まずLiNO3とCo(NO3)2・6H2OとNi(NO3)2・6H2Oを2:1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を800℃で12時間焼成することによりLiCo0.5Ni0.5O2を得た。
【0047】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図12に示す。
【0048】このようにして合成したLiCo0.5Ni0.5O2を正極活物質とする電池を0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図13に示す。4V付近で平坦な放電曲線を描いており、高エネルギー密度電池用正極材料として利用できる利点を有している。
【0049】またこの電池を、0.5mA/cm2の充放電電流密度で3.0V−4.5Vの電圧規制充放電をさせた際の容量維持率(放電容量値を第一回目の放電容量値で割った割合(%))を表に示す。これから明らかなようにサイクルによる容量低下が少ないことがわかる。
【0050】実施例1〜6では出発物質、焼成温度、コバルトとニッケルの含有比の異なるLiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質に用いて作製した電池の特性について示したが、これらの出発物質、焼成温度、コバルトとニッケルの含有比に限定されるものではなく、共通アニオンを対イオンとして有するニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後700℃以上900℃以下で加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として用いる場合は同様な効果を生じることは言うまでもない。
【0051】
【比較例1】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0052】まずLiNO3とNiOを1:1のモル比でらいかい、混合し、得られた粉末を800℃で12時間焼成したところ、X線回折分析の結果NiOに帰着されるピークが強く観察されたため、さらに1000℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0053】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図14に示す。
【0054】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を、0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図15に示す。この電池と比較すると、本発明の実施例1〜6で作製した電池は放電容量が大きく、優れた性能を示すことがわかる。
【0055】
【比較例2】正極活物質に以下のようにして合成したLiNiO2を用いる他は、実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0056】まずLiNO3とNi(NO3)2・6H2Oを1:1のモル比で水に溶解させ、4時間撹拌した後水を蒸発させ、得られた粉末を1000℃で12時間焼成することによりLiNiO2を得た。
【0057】この化合物の銅Kα線を用いたX線回折特性図を図16に示す。
【0058】このようにして合成したLiNiO2を正極活物質とする電池を、0.5mA/cm2の電流密度で4.5Vまで充電しその後3.0Vまで放電させた際の充放電曲線を図17に示す。この電池と比較すると、本発明の実施例1〜6で作製した電池は放電容量が大きく、優れた性能を示すことがわかる。
【0059】
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、小形で充放電エネルギーが大きいリチウム電池を安価に構成することができ、携帯用の種々の電子機器の電源を始め、様々な分野に利用できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるコイン電池の構成例を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図3】本発明の実施例1におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図4】本発明の実施例2におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図5】本発明の実施例2におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図6】本発明の実施例3におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図7】本発明の実施例3におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図8】本発明の実施例4におけるLiCo0.25Ni0.75O2のX線回折特性図。
【図9】本発明の実施例4におけるLiCo0.25Ni0.75O2の充放電特性図。
【図10】本発明の実施例5におけるLiCo0.25Ni0.75O2のX線回折特性図。
【図11】本発明の実施例5におけるLiCo0.25Ni0.75O2の充放電特性図。
【図12】本発明の実施例6におけるLiCo0.5Ni0.5O2のX線回折特性図。
【図13】本発明の実施例6におけるLiCo0.5Ni0.5O2の充放電特性図。
【図14】本発明の比較例1におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図15】本発明の比較例1におけるLiNiO2の充放電特性図。
【図16】本発明の比較例2におけるLiNiO2のX線回折特性図。
【図17】本発明の比較例2におけるLiNiO2の充放電特性図。
【符号の説明】
1 封口板
2 ガスケット
3 正極ケース
4 リチウム負極
5 セパレータ
6 正極合剤ペレット
【特許請求の範囲】
【請求項1】ニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として含み、リチウムまたはその化合物を負極活物質とし、前記正極活物質および前記負極活物質に対して化学的に安定であり、かつリチウムイオンが前記正極活物質あるいは前記負極活物質と電気化学反応をするための移動を行ない得る物質を電解質物質としたことを特徴とするリチウム電池。
【請求項2】ニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意に添加されるコバルト塩が共通のアニオンを対イオンとして有することを特徴とする請求項1記載のリチウム電池。
【請求項3】前記加熱焼成が700℃以上、900℃以下でなされることを特徴とする請求項1および2記載のリチウム電池。
【請求項1】ニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意にコバルト塩を溶媒中に溶解させ湿式混合した後加熱焼成して得られる複酸化物LiCoxNi1-xO2(0≦X≦0.5)を正極活物質として含み、リチウムまたはその化合物を負極活物質とし、前記正極活物質および前記負極活物質に対して化学的に安定であり、かつリチウムイオンが前記正極活物質あるいは前記負極活物質と電気化学反応をするための移動を行ない得る物質を電解質物質としたことを特徴とするリチウム電池。
【請求項2】ニッケル塩およびリチウム塩、さらに任意に添加されるコバルト塩が共通のアニオンを対イオンとして有することを特徴とする請求項1記載のリチウム電池。
【請求項3】前記加熱焼成が700℃以上、900℃以下でなされることを特徴とする請求項1および2記載のリチウム電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開平5−325966
【公開日】平成5年(1993)12月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−149998
【出願日】平成4年(1992)5月18日
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【公開日】平成5年(1993)12月10日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)5月18日
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
[ Back to top ]