リッドおよびベースおよび電子部品用パッケージ
【課題】 電子部品用パッケージの気密封止部における耐熱性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを提供する。
【解決手段】
リッド3は平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部30の表面に金属ろう部31が形成された構成である。金属ろう部31は下ろう部31aと上ろう部31bとからなる。金属ろう部31は多数個の凹部311が形成されている。凹部311は上ろう部31bは貫通した構成で、下ろう部31aは有底の構成からなり、全体として有底の小孔が多数個形成された凹部構成となっている。ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。前記金属ろう部31が前記堤部の上面に対応し、開口部を塞ぐようにリッド3をベース1に搭載する。
【解決手段】
リッド3は平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部30の表面に金属ろう部31が形成された構成である。金属ろう部31は下ろう部31aと上ろう部31bとからなる。金属ろう部31は多数個の凹部311が形成されている。凹部311は上ろう部31bは貫通した構成で、下ろう部31aは有底の構成からなり、全体として有底の小孔が多数個形成された凹部構成となっている。ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。前記金属ろう部31が前記堤部の上面に対応し、開口部を塞ぐようにリッド3をベース1に搭載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイス等に使用される電子部品用パッケージおよび当該電子部品用パッケージに用いられるリッドおよびベースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品用パッケージのキャビティ(内部空間)は、当該キャビティ内に収納した電子部品素子の特性劣化を防止し、安定した特性を得るために気密封止されている。このような構成の例として電子部品素子として水晶振動素子を用いた水晶振動子や水晶発振器をあげることができる。
【0003】
近年、このような気密封止には鉛フリーハンダが用いられる。特開2002−359312号には、少なくとも接合面に鉛フリーはんだを塗布したフタ部により密閉容器構造を成す電子部品容器において、該フタ部に塗布する鉛フリーはんだ部と当接する容器部には、金スズ合金めっき膜を形成することを特徴とする電子部品容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2002−359312号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献には鉛フリーハンダの例として、Sn―Ag―Cu系やSn―Cu系等の合金が例示されているが、このような合金は融点が比較的低いため耐熱性に劣る問題があった。例えば、鉛フリーハンダにより気密封止された電子部品容器は、電子機器等の実装基板にリフローソルダリング技術を用いて接合されることが多いが、当該リフローソルダリング時の温度条件によっては前記鉛フリーハンダが溶融あるいは軟化し、電子部品の特性が悪化することがあった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、電子部品用パッケージの気密封止部における耐熱性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載したように、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースの前記開口部を気密封止するリッドであって、少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部に凹部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部側に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記上ろう部および下ろう部の一部に凹部が形成されている構成であるので、金属ろう部により溶融接合する際、上部にある上ろう部の錫または錫合金が軟化または溶融し、前記凹部に一部が入り込む機会が増える。このように凹部に錫または錫合金が入り込む状態で気密封止が行われた構成により、接合した金属ろう部においては、平面視すなわち開口部側から見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)をつくり出すことができる。なお、これら各領域は前記錫合金の共晶温度より高い融点となっている。このような領域構成がつくり出されることによりリフローソルダリングを行ったとしても、高融点領域の存在により、金属ろう部全体としての耐熱性が向上する。
【0009】
前記金属ろう部に形成された凹部は、上ろう部は厚さ方向に貫通し、下ろう部は有底の構成であってもよい。
【0010】
上記構成であれば、上記作用に加えて溶融後の錫合金の錫濃度を制御することができ、接合した金属ろう部に平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を安定的につくり出すことができる。
【0011】
また前記金属ろう部に形成された凹部は複数の小孔からなり、金属ろう部の一部または全部に分散配置されている構成であってもよい。
【0012】
上記構成であれば、上記各作用に加えて接合した金属ろう部に、平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を金属ろう部全体に渡って複数個安定的につくり出すことができる。
【0013】
また前記金属ろう部に形成された凹部がリッドの最外周領域において周状に形成された構成であってもよい。
【0014】
上記構成であれば、上記各作用に加えて、接合した金属ろう部において、最外周部分に錫または錫合金が移動し、錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)を周状につくり出し、その内側に当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を周状につくり出すことができる。このような構成により、リッドの内側部分に高融点領域の金属ろう部をつくることができるので、リフローソルダリング時においてもパッケージ内部に軟化溶融した金属ろう部を構成する金属ろう材が入り込むことを抑制できる。
【0015】
上記金属ろう部の構成を堤部と電子備品素子収納部を有するベースに適用してもよく、リッドにより気密接合される周状の堤部と当該堤部により形成される電子部品素子収納部を有するベースであって、前記リッドと接合される堤部の上面に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、堤部上面にリッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記上ろう部および下ろう部の一部に凹部が形成されている構成であってもよい。
【0016】
上記構成であれば、金属ろう部により溶融接合する際、上部にある上ろう部の錫または錫合金が軟化または溶融し、前記凹部に一部が入り込む機会が増える。このように凹部に錫または錫合金が入り込む状態で気密封止が行われた構成により、接合した金属ろう部においては、平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)をつくり出すことができる。なお、これら各領域は前記錫合金の共晶温度より高い融点となっている。このような領域構成がつくり出されることによりリフローソルダリングを行ったとしても、高融点領域の存在により、金属ろう部全体としての耐熱性が向上する。
【0017】
さらに上記各構成のリッドと、開口部と当該開口部につながる電子部品収納部を有するベースと、からなる電子部品用パッケージであって、前記ベースの開口部をリッドで気密封止した電子部品用パッケージであってもよい。
【0018】
上記構成によれば、金属ろう部により溶融接合する際、上部にある上ろう部の錫または錫合金が軟化または溶融し、前記凹部に一部が入り込む機会が増える。このように凹部に錫または錫合金が入り込む状態で気密封止が行われた構成により、接合した金属ろう部に平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)をつくり出すことができる。このような領域構成がつくり出されることによりリフローソルダリングを行ったとしても、高融点領域の存在により、金属ろう部全体としての耐熱性が向上する。
【0019】
また、溶融後の錫合金の錫濃度を制御することができ、接合した金属ろう部に平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を安定的につくり出すことができる。
【0020】
さらに接合した金属ろう部に錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を金属ろう部全体に渡って安定的につくり出すことができる。
【0021】
また、接合した金属ろう部において、最外周部分に錫または錫合金が移動し、錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)を周状につくり出し、その内側に当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を周状につくり出すことができる。このような構成により、リッドの内側部分に高融点領域の金属ろう部をつくることができるので、リフローソルダリング時においてもパッケージ内部に金属ろう部を構成する軟化溶融した金属ろう材が入り込む機会を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接合後の金属ろう部の耐熱性が向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による第1の実施形態に用いるリッドの平面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】本発明による第1の実施形態を示す圧電振動デバイスの内部構造図
【図4】図3の部分拡大図
【図5】本発明による第2の実施形態を示すベースの内部構造を示す断面図
【図6】本発明による第3の実施形態に用いるリッドの平面図
【図7】図6のB−B断面図
【図8】本発明による第4の実施形態に用いるリッドの平面図
【図9】金属ろう部の構成を示す他の例
【図10】金属ろう部の構成を示す他の例
【図11】金属ろう部の構成を示す他の例
【図12】金属ろう部の構成を示す他の例
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイスを例にとり図1乃至図4とともに説明する。
【0025】
図3に示すように表面実装型水晶振動デバイスは、上部が開口した凹部を有するベース1と、当該ベースの中に収納される圧電振動板である水晶振動板2と、パッケージの開口部に接合されるリッド3とからなる。
【0026】
リッド3は平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部30の表面に金属ろう部31が形成された構成である。コア部30はコバール材(鉄-ニッケル-コバルト合金)からなり、当該コア部30のベース1との接合面にはリッドの外周近傍に沿って周状の金属ろう部31が形成されている。なおコア部30の金属ろう部31を形成した反対面にニッケル層を形成してもよい。またコア部はコバール材にニッケルメッキされた構成や、コバール材とニッケルを圧延にてクラッド化した構成や、コバール材をニッケルで挟み込んだ状態で圧延にてクラッド化した構成であってもよい。
【0027】
金属ろう部31は下ろう部31aと上ろう部31bとからなる。下ろう部31aはコア部30に接して形成され、また上ろう部31bは下ろう部31aの上部に形成されている。下ろう部31aは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部31bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。なお、錫と銅の比率は共晶合金でなくてもよく、錫100%〜錫85%程度の比率であってもよい。
【0028】
上ろう部と下ろう部の構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば下ろう部に銅層、上ろう部に錫層を形成してもよい。また下ろう部に金層、上ろう部に錫層または金錫層を形成した構成であってもよく、上ろう部に錫または錫と他の金属からなる錫合金、下ろう部に前記他の金属を形成した構成であればよい。特に上述したように鉛フリー材料を用いることにより環境対応させることができる。
【0029】
また金属ろう部31は多数個の凹部311が形成されている。凹部311は上ろう部31bは貫通した構成で、下ろう部31aは有底の構成からなり、全体として有底の小孔が多数個形成された凹部構成となっている。図1に示すように、凹部は平面視長方形構成であり、金属ろう部の長辺には当該凹部が2列並列に並んだ構成で、かつ短辺には1列並んだ構成となっており、金属ろう部全体に凹部が分散配置された構成となっている。なお、これら凹部の構造および配置は一例であり、この例に限定されるものではない。例えば、凹部が平面視円形または楕円形であってもよい。この場合、軟化または溶融した錫または錫合金の凹部への流れ込みがスムースになり、高融点領域の形成を促進することができる。
【0030】
ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。本実施の形態においては、ベースはセラミックスを基体として、内外部に金属膜からなる導通電極が形成された構成である。なおベースの材料としてホウケイ酸ガラス等のガラス材を用いてもよい。
【0031】
堤部11は底部10の外周から上方に伸長する状態に形成され、このような構成により、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部Cが形成され、当該電子部品素子収納部Cの内側には内側壁が形成されている。また前記段部1cの上面は平坦面であり、当該上面に電極パッド12,13(13は図示せず)が所定の間隔をもって設けられている。
【0032】
またベースに周状に形成された堤部11の上面には金属層111が周状に形成され、当該金属層111は後述のリッドと気密接合される領域となる。金属層111は例えばベースのセラミックに接してタングステン層、ニッケル層、金層、銅層の順で積層形成される。なお、タングステン層はセラミックと一体焼成され、ニッケル、金、銅の各層はめっきまたは真空蒸着等の手法により形成される。なお、当該金属層構成は一例であり、最上層の銅層は形成しない構成も可能であり、また他の金属材料からなる層構成であってもよい。
【0033】
水晶振動板2はATカット水晶振動板であり、平面視矩形状で長辺と短辺を有している。水晶振動板2の主面中央部には表裏に励振電極21,22が形成されている。当該励振電極21,22も平面視矩形状で水晶振動板と相似しており、長辺と短辺を有している。表裏の各励振電極21,22は一方の励振電極の短辺から一方の水晶振動板の短辺に引出電極(図示せず)が引き出されている。なお、ATカット水晶振動板以外に音叉型水晶振動板やその他の圧電振動板を用いてもよい。
【0034】
励振電極および引出電極は金属膜からなり、例えば水晶振動板に接して、下地層としてクロム膜が形成され、当該クロム膜の上部に上層として金膜が形成された2層構成となっている。当該金属膜構成は他の金属材料であってもよく、例えば下地層にチタン膜やニッケル膜を用いてもよい。また上層に銀膜や銅膜等の材料あるいは金合金、銀合金、銅合金の各合金膜を用いてもよい。
【0035】
上記電極形成された水晶振動板は、前記電極パッド12,13に導電接合材Sを用いて短辺が片持ち保持され、前記引出電極と導電接合される。導電接合材Sは鉛フリーハンダや導電フィラーを含む樹脂接着剤が用いられる。
【0036】
前記金属ろう部31が前記堤部の上面に対応し、開口部を塞ぐようにリッド3をベース1に搭載する。そして、ベース1とリッド3とを前記金属ろう部で接合することにより、内部に収納された水晶振動板2が気密収納される。内部の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスや真空雰囲気が用いられるが、本実施の形態では真空雰囲気を用いている。
【0037】
気密接合後においては、金属ろう部は平面で見て低融点領域および高融点領域が形成された構成としている。ただし前記各領域は錫銅合金の共晶温度より高い融点を有している。これにより金属ろう部の耐熱性が全体として向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。なお、高融点領域は銅比率が増加した錫と銅による金属化合物が形成されやすくなる。この場合、強度に脆さの生じる可能性があるが、銅比率の比較的低い低融点領域により補強を行っている。
【0038】
次に本実施の形態に使用したリッドの製造方法および当該リッドを用いた圧電振動デバイスの製造方法について説明する。
【0039】
図1に示すようにコバールからなるコア部30のベースとの接合面に多数個の凹部を有する金属ろう部31を形成する。具体的には例えばコア部30にフォトリソグラフィ技術を用いてリッドの中央部分をレジストでマスキングを行い、この状態で銅メッキを行い、その後錫銅メッキを行う。これにより銅からなる下ろう部31aと錫銅からなる上ろう部31bを有する金属ろう部31がリッドの外周近傍に周状に形成される。なお、錫銅からなる枠状のプリフォーム材を上ろう部として下ろう部上に融着形成してもよい。
【0040】
その後小孔からなる凹部を形成する。具体的には例えばレーザービーム等の局所彫り込み手段を用いて金属ろう部の全体に渡って多数個の小孔からなる凹部を形成する。当該凹部の形成により、上ろう部を貫通し下ろう部の途中まで彫り込まれた状態となっている。なお、上ろう部の途中までの彫り込みであってもよいし、下ろう部も貫通する構成としてもよい。このような彫り込み深さは錫合金の比率や接合後の金属ろう部の所望の融点によって設定すればよい。
【0041】
ベース1の電極パッド12,13に水晶振動板2を搭載し、導電性接合材Sにより導電接合を行う。導電接合材Sを硬化させ、励振電極21,22に対する周波数調整(膜厚調整)を行った後、アニール等の熱安定化処理を行う。その後前記金属ろう部を金属層111に対向させた状態で、ベース1にリッド3を搭載し開口部を塞いだ状態で加熱を行う。加熱は加熱炉によりベース1とリッド3からなる電子部品用パッケージ全体を金属ろう部の溶融する温度で加熱する。例えば錫と銅からなる金属ろう部の場合、温度が250℃〜380℃、時間が1分〜30分の範囲で、所定の温度プロファイルに従って加熱を行う。
【0042】
図4は図3のMで示す領域の拡大図である。図4に示すように、このような加熱により前記凹部の外側にある凸部から軟化溶融した錫または錫銅合金の一部が凹部に流れ込み、全体として凹部領域が錫高濃度領域、前記凸部領域が錫低濃度領域となる。溶融し硬化した後の金属ろう部は全体として錫銅合金を形成するが、平面で見て前記錫高濃度領域は錫リッチな低融点領域313となり、前記錫低濃度領域は銅リッチな高融点領域312となる。このような高融点領域312および低融点領域313が平面で見て複数形成されることにより、接合後の金属ろう部は全体として耐熱性が向上した状態となる。以上の加熱封止により気密封止された圧電振動デバイスを得ることができる。なお、ベースとリッド間に10〜100g程度の荷重かけた状態で加熱を行うことにより、高融点領域312および低融点領域313がより効率的に形成できる。
【0043】
本発明による第2の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイス用のベースを例にとり図5とともに説明する。ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。本実施の形態においては、ベースはセラミックスを基体として、内外部に金属膜からなる導通電極が形成された構成である。なおベースの材料としてホウケイ酸ガラス等のガラス材を用いてもよい。
【0044】
堤部11は底部10の外周から上方に伸長する状態に形成され、このような構成により、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部Cが形成され、当該電子部品素子収納部Cの内側には内側壁が形成されている。また前記段部1cの上面は平坦面であり、当該上面に電極パッド12,13(13は図示せず)が所定の間隔をもって設けられている。
【0045】
またベースに周状に形成された堤部11の上面には金属層111が周状に形成され、当該金属層111は後述のリッドと気密接合される領域となる。金属層111は例えばベースのセラミックに接してタングステン層またはモリブデン層、ニッケル層、金層、銅層の順で積層形成される。なお、タングステン層はセラミックと一体焼成され、ニッケル、金、銅の各層はめっきまたは真空蒸着等の手法により形成される。なお、当該金属層構成は一例であり、最上層の銅層は形成しない構成も可能であり、また他の金属材料からなる各層構成であってもよい。
【0046】
当該金属層111の上面には金属ろう部41が形成されている。金属ろう部41は第1下ろう部41a、第2下ろう層41bと上ろう部41cとからなる。第1下ろう部41aは金属層111に接して形成され、また第2下ろう部41bは第1下ろう部41aの上に形成され、さらに上ろう部41cは第2下ろう部41bの上部に形成されている。第1下ろう部41aおよび第2下ろう部41bは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部41bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。
【0047】
上ろう部と下ろう部の構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば下ろう部に銅層、上ろう部に錫層を形成してもよい。また下ろう部に金層、上ろう部に錫層または金錫層を形成した構成であってもよく、上ろう部に錫または錫と他の金属からなる錫合金、下ろう部に前記他の金属を形成した構成であってもよい。
【0048】
また金属ろう部41は多数個の凹部411が形成されている。凹部411は上ろう部41cおよび第2下ろう部41bともに貫通した構成であり、全体として有底の小孔が多数個形成された凹部構成となっている。図5に示すように、凹部は堤部の幅方向に2つ設けた構成であり、これら凹部が各辺に複数形成された構成である。
【0049】
なお、これら凹部の構造および配置は一例であり、この例に限定されるものではない。例えば、凹部が平面視円形または楕円形であってもよい。この場合、軟化または溶融した錫または錫合金の凹部への流れ込みがスムースになり、高融点領域の形成を促進することができる。
【0050】
ベースに電子部品素子(水晶振動板)を搭載した後、前記ベースの金属ろう部にリッドを搭載し、ベースの開口部を塞ぐ。そして、ベース1とリッド3とを前記金属ろう部で加熱接合することにより、内部に収納された水晶振動板2が気密収納される。内部の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスや真空雰囲気が用いられるが、本実施の形態では真空雰囲気を用いている。なお、リッドにはベースとの接合領域に錫や錫銅合金を形成してもよい。この場合、ベースに形成された上ろう部は割愛してもよい。
【0051】
気密接合後においては、金属ろう部は平面で見て低融点領域および高融点領域が形成された構成としている。ただし前記各領域は錫銅合金の共晶温度より高い融点を有している。これにより金属ろう部の耐熱性が全体として向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。
【0052】
本発明による第3の実施の形態を図6乃至図8とともに説明する。図6に示すようにリッド5は平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部の表面に金属ろう部51が形成された構成である。コア部はコバール材(鉄ニッケルコバルト合金)からなり、当該コア部のベース1との接合面にはリッドの外周近傍に沿って周状の金属ろう部51が形成されている。なおコア部の金属ろう部51を形成した反対面にニッケル層を形成してもよい。
【0053】
図7に示すように金属ろう部51は下ろう部51aと上ろう部51bとからなる。下ろう部51aはコア部50に接して形成され、また上ろう部51bは下ろう部51aの上部に形成されている。下ろう部51aは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部51bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。
【0054】
下ろう部51aは薄肉部51aaと厚肉部51abを有する構成であり、薄肉部51aaはリッドの最外周部分に形成され、厚肉部51abは薄肉部51aaの内側に続いて形成されている。上ろう部51bは下ろう部51a上に均一な膜厚で形成されている。これによりリッドの最外周部分において金属ろう部51が薄肉化された段差部51baが形成されている。
【0055】
また図8に示すように、リッド6の外周に薄肉部6aを形成した構成であってもよい。薄肉部6aとその一部内側の表面には金属ろう部61が形成されている。金属ろう部61は下ろう部61aと上ろう部61bが形成されているが、いずれも均一な厚さを有しており、薄肉部6aの薄さ分の段差部61baが形成されている。
【0056】
上記実施の形態では、凹部の構成が複数の小孔や最外周が薄肉化された構成を示したが、これら構成に限定されるものではなく、例えば図9乃至図12に示す構成であってもよい。図9に示す構成は、金属ろう部7に対して凹部71が帯状に延びて形成された構成であり、外周部分から対向辺近傍まで一辺側から他辺側、他辺側から一辺側に相互に延びる構成である。図10に示す構成は、金属ろう部7に対して凹部72が帯状に延びて形成された構成であり、外周部分から対向辺まで複数延びた構成である。
【0057】
図11に示す構成は、金属ろう部7に対して平面視円形の凹部73が多数個分散配置された構成である。図12に示す構成は、金属ろう部7に対して平面視楕円形の凹部74が多数個分散配置され、かつこれら凹部が帯状の連結部74aで連結された構成である。連結部によりろう材の流れ込みがスムースになり、低融点領域と高融点領域を形成しやすくなる。
【0058】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
電子部品用パッケージの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 ベース
10 底部
11 堤部
2 水晶振動板(圧電振動板)
3、5 リッド
31,51,7 金属ろう部
311,71,72,73,74 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイス等に使用される電子部品用パッケージおよび当該電子部品用パッケージに用いられるリッドおよびベースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品用パッケージのキャビティ(内部空間)は、当該キャビティ内に収納した電子部品素子の特性劣化を防止し、安定した特性を得るために気密封止されている。このような構成の例として電子部品素子として水晶振動素子を用いた水晶振動子や水晶発振器をあげることができる。
【0003】
近年、このような気密封止には鉛フリーハンダが用いられる。特開2002−359312号には、少なくとも接合面に鉛フリーはんだを塗布したフタ部により密閉容器構造を成す電子部品容器において、該フタ部に塗布する鉛フリーはんだ部と当接する容器部には、金スズ合金めっき膜を形成することを特徴とする電子部品容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2002−359312号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献には鉛フリーハンダの例として、Sn―Ag―Cu系やSn―Cu系等の合金が例示されているが、このような合金は融点が比較的低いため耐熱性に劣る問題があった。例えば、鉛フリーハンダにより気密封止された電子部品容器は、電子機器等の実装基板にリフローソルダリング技術を用いて接合されることが多いが、当該リフローソルダリング時の温度条件によっては前記鉛フリーハンダが溶融あるいは軟化し、電子部品の特性が悪化することがあった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、電子部品用パッケージの気密封止部における耐熱性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載したように、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースの前記開口部を気密封止するリッドであって、少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部に凹部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部側に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記上ろう部および下ろう部の一部に凹部が形成されている構成であるので、金属ろう部により溶融接合する際、上部にある上ろう部の錫または錫合金が軟化または溶融し、前記凹部に一部が入り込む機会が増える。このように凹部に錫または錫合金が入り込む状態で気密封止が行われた構成により、接合した金属ろう部においては、平面視すなわち開口部側から見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)をつくり出すことができる。なお、これら各領域は前記錫合金の共晶温度より高い融点となっている。このような領域構成がつくり出されることによりリフローソルダリングを行ったとしても、高融点領域の存在により、金属ろう部全体としての耐熱性が向上する。
【0009】
前記金属ろう部に形成された凹部は、上ろう部は厚さ方向に貫通し、下ろう部は有底の構成であってもよい。
【0010】
上記構成であれば、上記作用に加えて溶融後の錫合金の錫濃度を制御することができ、接合した金属ろう部に平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を安定的につくり出すことができる。
【0011】
また前記金属ろう部に形成された凹部は複数の小孔からなり、金属ろう部の一部または全部に分散配置されている構成であってもよい。
【0012】
上記構成であれば、上記各作用に加えて接合した金属ろう部に、平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を金属ろう部全体に渡って複数個安定的につくり出すことができる。
【0013】
また前記金属ろう部に形成された凹部がリッドの最外周領域において周状に形成された構成であってもよい。
【0014】
上記構成であれば、上記各作用に加えて、接合した金属ろう部において、最外周部分に錫または錫合金が移動し、錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)を周状につくり出し、その内側に当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を周状につくり出すことができる。このような構成により、リッドの内側部分に高融点領域の金属ろう部をつくることができるので、リフローソルダリング時においてもパッケージ内部に軟化溶融した金属ろう部を構成する金属ろう材が入り込むことを抑制できる。
【0015】
上記金属ろう部の構成を堤部と電子備品素子収納部を有するベースに適用してもよく、リッドにより気密接合される周状の堤部と当該堤部により形成される電子部品素子収納部を有するベースであって、前記リッドと接合される堤部の上面に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、堤部上面にリッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記上ろう部および下ろう部の一部に凹部が形成されている構成であってもよい。
【0016】
上記構成であれば、金属ろう部により溶融接合する際、上部にある上ろう部の錫または錫合金が軟化または溶融し、前記凹部に一部が入り込む機会が増える。このように凹部に錫または錫合金が入り込む状態で気密封止が行われた構成により、接合した金属ろう部においては、平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)をつくり出すことができる。なお、これら各領域は前記錫合金の共晶温度より高い融点となっている。このような領域構成がつくり出されることによりリフローソルダリングを行ったとしても、高融点領域の存在により、金属ろう部全体としての耐熱性が向上する。
【0017】
さらに上記各構成のリッドと、開口部と当該開口部につながる電子部品収納部を有するベースと、からなる電子部品用パッケージであって、前記ベースの開口部をリッドで気密封止した電子部品用パッケージであってもよい。
【0018】
上記構成によれば、金属ろう部により溶融接合する際、上部にある上ろう部の錫または錫合金が軟化または溶融し、前記凹部に一部が入り込む機会が増える。このように凹部に錫または錫合金が入り込む状態で気密封止が行われた構成により、接合した金属ろう部に平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)をつくり出すことができる。このような領域構成がつくり出されることによりリフローソルダリングを行ったとしても、高融点領域の存在により、金属ろう部全体としての耐熱性が向上する。
【0019】
また、溶融後の錫合金の錫濃度を制御することができ、接合した金属ろう部に平面で見て錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を安定的につくり出すことができる。
【0020】
さらに接合した金属ろう部に錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)と当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を金属ろう部全体に渡って安定的につくり出すことができる。
【0021】
また、接合した金属ろう部において、最外周部分に錫または錫合金が移動し、錫濃度が高く融点が低い領域(低融点領域)を周状につくり出し、その内側に当該低融点領域より当該錫濃度が低く融点が高い領域(高融点領域)を周状につくり出すことができる。このような構成により、リッドの内側部分に高融点領域の金属ろう部をつくることができるので、リフローソルダリング時においてもパッケージ内部に金属ろう部を構成する軟化溶融した金属ろう材が入り込む機会を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接合後の金属ろう部の耐熱性が向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による第1の実施形態に用いるリッドの平面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】本発明による第1の実施形態を示す圧電振動デバイスの内部構造図
【図4】図3の部分拡大図
【図5】本発明による第2の実施形態を示すベースの内部構造を示す断面図
【図6】本発明による第3の実施形態に用いるリッドの平面図
【図7】図6のB−B断面図
【図8】本発明による第4の実施形態に用いるリッドの平面図
【図9】金属ろう部の構成を示す他の例
【図10】金属ろう部の構成を示す他の例
【図11】金属ろう部の構成を示す他の例
【図12】金属ろう部の構成を示す他の例
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイスを例にとり図1乃至図4とともに説明する。
【0025】
図3に示すように表面実装型水晶振動デバイスは、上部が開口した凹部を有するベース1と、当該ベースの中に収納される圧電振動板である水晶振動板2と、パッケージの開口部に接合されるリッド3とからなる。
【0026】
リッド3は平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部30の表面に金属ろう部31が形成された構成である。コア部30はコバール材(鉄-ニッケル-コバルト合金)からなり、当該コア部30のベース1との接合面にはリッドの外周近傍に沿って周状の金属ろう部31が形成されている。なおコア部30の金属ろう部31を形成した反対面にニッケル層を形成してもよい。またコア部はコバール材にニッケルメッキされた構成や、コバール材とニッケルを圧延にてクラッド化した構成や、コバール材をニッケルで挟み込んだ状態で圧延にてクラッド化した構成であってもよい。
【0027】
金属ろう部31は下ろう部31aと上ろう部31bとからなる。下ろう部31aはコア部30に接して形成され、また上ろう部31bは下ろう部31aの上部に形成されている。下ろう部31aは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部31bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。なお、錫と銅の比率は共晶合金でなくてもよく、錫100%〜錫85%程度の比率であってもよい。
【0028】
上ろう部と下ろう部の構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば下ろう部に銅層、上ろう部に錫層を形成してもよい。また下ろう部に金層、上ろう部に錫層または金錫層を形成した構成であってもよく、上ろう部に錫または錫と他の金属からなる錫合金、下ろう部に前記他の金属を形成した構成であればよい。特に上述したように鉛フリー材料を用いることにより環境対応させることができる。
【0029】
また金属ろう部31は多数個の凹部311が形成されている。凹部311は上ろう部31bは貫通した構成で、下ろう部31aは有底の構成からなり、全体として有底の小孔が多数個形成された凹部構成となっている。図1に示すように、凹部は平面視長方形構成であり、金属ろう部の長辺には当該凹部が2列並列に並んだ構成で、かつ短辺には1列並んだ構成となっており、金属ろう部全体に凹部が分散配置された構成となっている。なお、これら凹部の構造および配置は一例であり、この例に限定されるものではない。例えば、凹部が平面視円形または楕円形であってもよい。この場合、軟化または溶融した錫または錫合金の凹部への流れ込みがスムースになり、高融点領域の形成を促進することができる。
【0030】
ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。本実施の形態においては、ベースはセラミックスを基体として、内外部に金属膜からなる導通電極が形成された構成である。なおベースの材料としてホウケイ酸ガラス等のガラス材を用いてもよい。
【0031】
堤部11は底部10の外周から上方に伸長する状態に形成され、このような構成により、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部Cが形成され、当該電子部品素子収納部Cの内側には内側壁が形成されている。また前記段部1cの上面は平坦面であり、当該上面に電極パッド12,13(13は図示せず)が所定の間隔をもって設けられている。
【0032】
またベースに周状に形成された堤部11の上面には金属層111が周状に形成され、当該金属層111は後述のリッドと気密接合される領域となる。金属層111は例えばベースのセラミックに接してタングステン層、ニッケル層、金層、銅層の順で積層形成される。なお、タングステン層はセラミックと一体焼成され、ニッケル、金、銅の各層はめっきまたは真空蒸着等の手法により形成される。なお、当該金属層構成は一例であり、最上層の銅層は形成しない構成も可能であり、また他の金属材料からなる層構成であってもよい。
【0033】
水晶振動板2はATカット水晶振動板であり、平面視矩形状で長辺と短辺を有している。水晶振動板2の主面中央部には表裏に励振電極21,22が形成されている。当該励振電極21,22も平面視矩形状で水晶振動板と相似しており、長辺と短辺を有している。表裏の各励振電極21,22は一方の励振電極の短辺から一方の水晶振動板の短辺に引出電極(図示せず)が引き出されている。なお、ATカット水晶振動板以外に音叉型水晶振動板やその他の圧電振動板を用いてもよい。
【0034】
励振電極および引出電極は金属膜からなり、例えば水晶振動板に接して、下地層としてクロム膜が形成され、当該クロム膜の上部に上層として金膜が形成された2層構成となっている。当該金属膜構成は他の金属材料であってもよく、例えば下地層にチタン膜やニッケル膜を用いてもよい。また上層に銀膜や銅膜等の材料あるいは金合金、銀合金、銅合金の各合金膜を用いてもよい。
【0035】
上記電極形成された水晶振動板は、前記電極パッド12,13に導電接合材Sを用いて短辺が片持ち保持され、前記引出電極と導電接合される。導電接合材Sは鉛フリーハンダや導電フィラーを含む樹脂接着剤が用いられる。
【0036】
前記金属ろう部31が前記堤部の上面に対応し、開口部を塞ぐようにリッド3をベース1に搭載する。そして、ベース1とリッド3とを前記金属ろう部で接合することにより、内部に収納された水晶振動板2が気密収納される。内部の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスや真空雰囲気が用いられるが、本実施の形態では真空雰囲気を用いている。
【0037】
気密接合後においては、金属ろう部は平面で見て低融点領域および高融点領域が形成された構成としている。ただし前記各領域は錫銅合金の共晶温度より高い融点を有している。これにより金属ろう部の耐熱性が全体として向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。なお、高融点領域は銅比率が増加した錫と銅による金属化合物が形成されやすくなる。この場合、強度に脆さの生じる可能性があるが、銅比率の比較的低い低融点領域により補強を行っている。
【0038】
次に本実施の形態に使用したリッドの製造方法および当該リッドを用いた圧電振動デバイスの製造方法について説明する。
【0039】
図1に示すようにコバールからなるコア部30のベースとの接合面に多数個の凹部を有する金属ろう部31を形成する。具体的には例えばコア部30にフォトリソグラフィ技術を用いてリッドの中央部分をレジストでマスキングを行い、この状態で銅メッキを行い、その後錫銅メッキを行う。これにより銅からなる下ろう部31aと錫銅からなる上ろう部31bを有する金属ろう部31がリッドの外周近傍に周状に形成される。なお、錫銅からなる枠状のプリフォーム材を上ろう部として下ろう部上に融着形成してもよい。
【0040】
その後小孔からなる凹部を形成する。具体的には例えばレーザービーム等の局所彫り込み手段を用いて金属ろう部の全体に渡って多数個の小孔からなる凹部を形成する。当該凹部の形成により、上ろう部を貫通し下ろう部の途中まで彫り込まれた状態となっている。なお、上ろう部の途中までの彫り込みであってもよいし、下ろう部も貫通する構成としてもよい。このような彫り込み深さは錫合金の比率や接合後の金属ろう部の所望の融点によって設定すればよい。
【0041】
ベース1の電極パッド12,13に水晶振動板2を搭載し、導電性接合材Sにより導電接合を行う。導電接合材Sを硬化させ、励振電極21,22に対する周波数調整(膜厚調整)を行った後、アニール等の熱安定化処理を行う。その後前記金属ろう部を金属層111に対向させた状態で、ベース1にリッド3を搭載し開口部を塞いだ状態で加熱を行う。加熱は加熱炉によりベース1とリッド3からなる電子部品用パッケージ全体を金属ろう部の溶融する温度で加熱する。例えば錫と銅からなる金属ろう部の場合、温度が250℃〜380℃、時間が1分〜30分の範囲で、所定の温度プロファイルに従って加熱を行う。
【0042】
図4は図3のMで示す領域の拡大図である。図4に示すように、このような加熱により前記凹部の外側にある凸部から軟化溶融した錫または錫銅合金の一部が凹部に流れ込み、全体として凹部領域が錫高濃度領域、前記凸部領域が錫低濃度領域となる。溶融し硬化した後の金属ろう部は全体として錫銅合金を形成するが、平面で見て前記錫高濃度領域は錫リッチな低融点領域313となり、前記錫低濃度領域は銅リッチな高融点領域312となる。このような高融点領域312および低融点領域313が平面で見て複数形成されることにより、接合後の金属ろう部は全体として耐熱性が向上した状態となる。以上の加熱封止により気密封止された圧電振動デバイスを得ることができる。なお、ベースとリッド間に10〜100g程度の荷重かけた状態で加熱を行うことにより、高融点領域312および低融点領域313がより効率的に形成できる。
【0043】
本発明による第2の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイス用のベースを例にとり図5とともに説明する。ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。本実施の形態においては、ベースはセラミックスを基体として、内外部に金属膜からなる導通電極が形成された構成である。なおベースの材料としてホウケイ酸ガラス等のガラス材を用いてもよい。
【0044】
堤部11は底部10の外周から上方に伸長する状態に形成され、このような構成により、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部Cが形成され、当該電子部品素子収納部Cの内側には内側壁が形成されている。また前記段部1cの上面は平坦面であり、当該上面に電極パッド12,13(13は図示せず)が所定の間隔をもって設けられている。
【0045】
またベースに周状に形成された堤部11の上面には金属層111が周状に形成され、当該金属層111は後述のリッドと気密接合される領域となる。金属層111は例えばベースのセラミックに接してタングステン層またはモリブデン層、ニッケル層、金層、銅層の順で積層形成される。なお、タングステン層はセラミックと一体焼成され、ニッケル、金、銅の各層はめっきまたは真空蒸着等の手法により形成される。なお、当該金属層構成は一例であり、最上層の銅層は形成しない構成も可能であり、また他の金属材料からなる各層構成であってもよい。
【0046】
当該金属層111の上面には金属ろう部41が形成されている。金属ろう部41は第1下ろう部41a、第2下ろう層41bと上ろう部41cとからなる。第1下ろう部41aは金属層111に接して形成され、また第2下ろう部41bは第1下ろう部41aの上に形成され、さらに上ろう部41cは第2下ろう部41bの上部に形成されている。第1下ろう部41aおよび第2下ろう部41bは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部41bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。
【0047】
上ろう部と下ろう部の構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば下ろう部に銅層、上ろう部に錫層を形成してもよい。また下ろう部に金層、上ろう部に錫層または金錫層を形成した構成であってもよく、上ろう部に錫または錫と他の金属からなる錫合金、下ろう部に前記他の金属を形成した構成であってもよい。
【0048】
また金属ろう部41は多数個の凹部411が形成されている。凹部411は上ろう部41cおよび第2下ろう部41bともに貫通した構成であり、全体として有底の小孔が多数個形成された凹部構成となっている。図5に示すように、凹部は堤部の幅方向に2つ設けた構成であり、これら凹部が各辺に複数形成された構成である。
【0049】
なお、これら凹部の構造および配置は一例であり、この例に限定されるものではない。例えば、凹部が平面視円形または楕円形であってもよい。この場合、軟化または溶融した錫または錫合金の凹部への流れ込みがスムースになり、高融点領域の形成を促進することができる。
【0050】
ベースに電子部品素子(水晶振動板)を搭載した後、前記ベースの金属ろう部にリッドを搭載し、ベースの開口部を塞ぐ。そして、ベース1とリッド3とを前記金属ろう部で加熱接合することにより、内部に収納された水晶振動板2が気密収納される。内部の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスや真空雰囲気が用いられるが、本実施の形態では真空雰囲気を用いている。なお、リッドにはベースとの接合領域に錫や錫銅合金を形成してもよい。この場合、ベースに形成された上ろう部は割愛してもよい。
【0051】
気密接合後においては、金属ろう部は平面で見て低融点領域および高融点領域が形成された構成としている。ただし前記各領域は錫銅合金の共晶温度より高い融点を有している。これにより金属ろう部の耐熱性が全体として向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。
【0052】
本発明による第3の実施の形態を図6乃至図8とともに説明する。図6に示すようにリッド5は平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部の表面に金属ろう部51が形成された構成である。コア部はコバール材(鉄ニッケルコバルト合金)からなり、当該コア部のベース1との接合面にはリッドの外周近傍に沿って周状の金属ろう部51が形成されている。なおコア部の金属ろう部51を形成した反対面にニッケル層を形成してもよい。
【0053】
図7に示すように金属ろう部51は下ろう部51aと上ろう部51bとからなる。下ろう部51aはコア部50に接して形成され、また上ろう部51bは下ろう部51aの上部に形成されている。下ろう部51aは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部51bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。
【0054】
下ろう部51aは薄肉部51aaと厚肉部51abを有する構成であり、薄肉部51aaはリッドの最外周部分に形成され、厚肉部51abは薄肉部51aaの内側に続いて形成されている。上ろう部51bは下ろう部51a上に均一な膜厚で形成されている。これによりリッドの最外周部分において金属ろう部51が薄肉化された段差部51baが形成されている。
【0055】
また図8に示すように、リッド6の外周に薄肉部6aを形成した構成であってもよい。薄肉部6aとその一部内側の表面には金属ろう部61が形成されている。金属ろう部61は下ろう部61aと上ろう部61bが形成されているが、いずれも均一な厚さを有しており、薄肉部6aの薄さ分の段差部61baが形成されている。
【0056】
上記実施の形態では、凹部の構成が複数の小孔や最外周が薄肉化された構成を示したが、これら構成に限定されるものではなく、例えば図9乃至図12に示す構成であってもよい。図9に示す構成は、金属ろう部7に対して凹部71が帯状に延びて形成された構成であり、外周部分から対向辺近傍まで一辺側から他辺側、他辺側から一辺側に相互に延びる構成である。図10に示す構成は、金属ろう部7に対して凹部72が帯状に延びて形成された構成であり、外周部分から対向辺まで複数延びた構成である。
【0057】
図11に示す構成は、金属ろう部7に対して平面視円形の凹部73が多数個分散配置された構成である。図12に示す構成は、金属ろう部7に対して平面視楕円形の凹部74が多数個分散配置され、かつこれら凹部が帯状の連結部74aで連結された構成である。連結部によりろう材の流れ込みがスムースになり、低融点領域と高融点領域を形成しやすくなる。
【0058】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
電子部品用パッケージの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 ベース
10 底部
11 堤部
2 水晶振動板(圧電振動板)
3、5 リッド
31,51,7 金属ろう部
311,71,72,73,74 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースの前記開口部を気密封止するリッドであって、
少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部に凹部が形成されていることを特徴とするリッド。
【請求項2】
前記金属ろう部に形成された凹部は、上ろう部においては厚さ方向に貫通し、下ろう部においては有底の構成であることを特徴とする請求項1記載のリッド。
【請求項3】
前記金属ろう部に形成された凹部は複数の小孔からなり、金属ろう部の一部または全部に分散配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリッド。
【請求項4】
前記金属ろう部に形成された凹部がリッドの最外周領域において周状に形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリッド。
【請求項5】
リッドにより気密接合される周状の堤部と当該堤部により形成される電子部品素子収納部を有するベースであって、
前記リッドと接合される堤部の上面に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、堤部上面に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部に凹部が形成されていることを特徴とするベース。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のリッドと、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースと、からなる電子部品用パッケージであって、前記ベースの開口部をリッドで気密封止したことを特徴とする電子部品用パッケージ。
【請求項1】
開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースの前記開口部を気密封止するリッドであって、
少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部に凹部が形成されていることを特徴とするリッド。
【請求項2】
前記金属ろう部に形成された凹部は、上ろう部においては厚さ方向に貫通し、下ろう部においては有底の構成であることを特徴とする請求項1記載のリッド。
【請求項3】
前記金属ろう部に形成された凹部は複数の小孔からなり、金属ろう部の一部または全部に分散配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリッド。
【請求項4】
前記金属ろう部に形成された凹部がリッドの最外周領域において周状に形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリッド。
【請求項5】
リッドにより気密接合される周状の堤部と当該堤部により形成される電子部品素子収納部を有するベースであって、
前記リッドと接合される堤部の上面に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、堤部上面に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部に凹部が形成されていることを特徴とするベース。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のリッドと、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースと、からなる電子部品用パッケージであって、前記ベースの開口部をリッドで気密封止したことを特徴とする電子部品用パッケージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−228352(P2011−228352A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94269(P2010−94269)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
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