説明

リッドおよび電子部品用パッケージ

【課題】 電子部品用パッケージの気密封止部における耐熱性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを提供する。
【解決手段】
リッド3は平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部30の表面に金属ろう部31が形成された構成である。金属ろう部31は下ろう部31aと上ろう部31bとからなる。金属ろう部の表面にはニッケル膜が形成されている。ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。前記金属ろう部31が前記堤部の上面に対応し、開口部を塞ぐようにリッド3をベース1に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイス等に使用される電子部品用パッケージおよび当該電子部品用パッケージに用いられるリッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品用パッケージのキャビティ(内部空間)は、当該キャビティ内に収納した電子部品素子の特性劣化を防止し、安定した特性を得るために気密封止されている。このような構成の例として電子部品素子として水晶振動素子を用いた水晶振動子や水晶発振器をあげることができる。
【0003】
近年、このような気密封止には鉛フリーハンダが用いられる。特開2002−359312号には、少なくとも接合面に鉛フリーはんだを塗布したフタ部により密閉容器構造を成す電子部品容器において、該フタ部に塗布する鉛フリーはんだ部と当接する容器部には、金スズ合金めっき膜を形成することを特徴とする電子部品容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2002−359312号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献には鉛フリーハンダの例として、Sn―Ag―Cu系やSn―Cu系等の合金が例示されているが、このような合金は融点が比較的低いため耐熱性に劣る問題があった。例えば、鉛フリーハンダにより気密封止された電子部品容器は、電子機器等の実装基板にリフローソルダリング技術を用いて接合されることが多いが、当該リフローソルダリング時の温度条件によっては前記鉛フリーハンダが溶融あるいは軟化し、電子部品の特性が悪化することがあった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、電子部品用パッケージの気密封止部における耐熱性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載したように、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースの前記開口部を全体加熱により気密封止するリッドであって、少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部または全部に前記金属ろう部より融点の高い金属薄膜が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、全体加熱により気密封止するリッドであって、少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部または全部に前記金属ろう部より融点の高い金属薄膜が形成されているので、ベースにリッドを搭載した状態で加熱を行うことにより、ベースとリッドの接合部分における金属ろう部が溶融し、それ以外の部分は前記金属ろう部より融点の高い金属薄膜により、溶融した金属ろう部は流動せずその形成位置に保持される。これにより金属ろう部全体としての耐熱性が向上する。
【0009】
前記金属ろう部は錫と銅を含む金属材料からなり、前記金属薄膜はニッケルまたは銅からなる構成であってもよい。
【0010】
上記構成であれば、上記作用に加えて、全体加熱において金属ろう部の錫と銅および金属薄膜の銅の一部が両者の金属化合物の領域生成に寄与し、金属ろう部の耐熱性が向上する。また金属ろう部の錫と金属薄膜のニッケルも両者の金属化合物の領域生成に寄与し、金属ろう部の耐熱性が向上する。
【0011】
また前記金属ろう部の各層または金属ろう部の錫または錫合金は、リッドの外周領域において周状に形成され、前記金属薄膜はベースとの接合面側全体に形成されたことを特徴とする構成であってもよい。
【0012】
上記構成であれば、上記各作用に加えてリッドとベースの接合部分にのみ金属ろう部の各層または金属ろう部の錫または錫合金層を配置することができる。これにより接合部分以外のリッド領域においては金属ろう部より融点の高い金属薄膜により被覆されているので、全体加熱時に金属ろう部の溶融やスプラッシュまたは放出ガスの影響を抑制することができる。
【0013】
さらに上述のリッドと、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースと、からなる電子部品用パッケージであって、前記ベースの開口部を前記リッドで全体加熱により気密封止したことを特徴とする構成であってもよい。
【0014】
上記構成であれば、ベースにリッドを搭載した状態で加熱を行うことにより、ベースとリッドの接合部分における金属ろう部が溶融し、それ以外の部分は前記金属ろう部より融点の高い金属薄膜により、溶融した金属ろう部は流動せずその形成位置に保持される。これにより金属ろう部全体としての耐熱性が向上する電子部品用パッケージを得ることができる。
【0015】
また前記金属ろう部は錫と銅を含む金属材料からなり、前記金属薄膜はニッケルまたは銅からなる構成のリッドを用いた場合は、上記作用に加えて、全体加熱において金属ろう部の錫と銅および金属薄膜の銅の一部が両者の金属化合物の領域生成に寄与し、また金属ろう部の錫と金属薄膜のニッケルも両者の金属化合物の領域生成に寄与し、これにより金属ろう部の耐熱性が向上する電子部品用パッケージを得ることができる。
【0016】
さらに前記金属ろう部の各層または金属ろう部の錫または錫合金は、リッドの外周領域において周状に形成された構成のリッドを用いた場合、上記各作用に加えてリッドとベースの接合部分にのみ金属ろう部の各層または金属ろう部の錫または錫合金層を配置することはできる。これにより接合部分以外のリッド領域においては金属ろう部より融点の高い金属薄膜により被覆されているので、全体加熱時に金属ろう部の溶融やスプラッシュまたは放出ガスの影響を抑制することができる電子部品用パッケージを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接合後の金属ろう部の耐熱性が向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す圧電振動デバイスの気密封止前の内部構造図
【図2】本発明による第1の実施形態を示す圧電振動デバイスの気密封止後の内部構造図
【図3】本発明による第2の実施形態を示す圧電振動デバイスの気密封止前の内部構造図
【図4】本発明による第2の実施形態を示す圧電振動デバイスの気密封止後の内部構造図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイスを例にとり図1および図2とともに説明する。
【0020】
図2に示すように表面実装型水晶振動デバイスは、上部が開口した凹部を有するベース1と、当該ベースの中に収納される圧電振動板である水晶振動板2と、パッケージの開口部に接合されるリッド3とからなる。
【0021】
リッド3は図示していないが平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部30の表面に金属ろう部31が形成された構成である。コア部30はコバール材(鉄ニッケルコバルト合金)からなり、当該コア部30のベース1との接合面にはリッドの外周近傍に沿って周状の金属ろう部31が形成されている。なおコア部30の金属ろう部31を形成した反対面にニッケル層を形成してもよい。またコア部はコバール材にニッケルメッキされた構成や、コバール材とニッケルを圧延にてクラッド化した構成や、コバール材をニッケルで挟み込んだ状態で圧延にてクラッド化した構成であってもよい。またリッドのコア部を金属ではなくセラミックス板やガラス板で構成してもよい。この場合、セラミックス板またはガラス板のベースとの接合面側に金属ろう部が形成される。
【0022】
金属ろう部31は下ろう部31aと上ろう部31bとからなる。下ろう部31aはコア部30に接して形成され、また上ろう部31bは下ろう部31aの上部に形成されている。本実施の形態においては、下ろう部31aは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部31bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。なお、錫と銅の比率は共晶合金でなくてもよく、錫100%〜錫85%程度の比率であってもよい。
【0023】
上ろう部と下ろう部の構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば下ろう部に銅層、上ろう部に錫層を形成してもよい。また下ろう部に金層、上ろう部に錫層または金錫層を形成した構成であってもよく、上ろう部に錫または錫と他の金属からなる錫合金、下ろう部に前記他の金属を形成した構成であればよい。なお、鉛フリー金属材料を用いることにより、環境問題に対応した構成とすることができる。
【0024】
また金属ろう部の上ろう部31bの上面には当該上ろう部31bよりも融点の高いニッケルからなる金属薄膜が形成されている。当該金属薄膜はニッケルに限定されるものではなく、例えば銅や金であってもよい。これら金属薄膜は真空蒸着法やスパッタリング法またはメッキ法により形成される。なお、本実施の形態においてはベースとの接合面側に金属薄膜を形成したが、反対側の主面および側面を含む全面に形成した構成であってもよい。
【0025】
ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部Cを有した構成である。本実施の形態においては、ベースはセラミックスを基体として、内外部に金属膜からなる導通電極が形成された構成である。なおベースの材料としてホウケイ酸ガラス等のガラス材を用いてもよい。
【0026】
堤部11は底部10の外周から上方に伸長する状態に形成され、このような構成により、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部Cが形成され、当該電子部品素子収納部Cの内側には内側壁が形成されている。また前記段部1cの上面は平坦面であり、当該上面に電極パッド12,13が所定の間隔をもって設けられている。
【0027】
またベースに周状に形成された堤部11の上面には金属層111が周状に形成され、当該金属層111は後述のリッドと気密接合される領域となる。金属層111は例えばベースのセラミックに接してタングステン層またはモリブデン層、ニッケル層、金層、銅層の順で積層形成される。なお、タングステン層はセラミックと一体焼成され、ニッケル、金、銅の各層はめっきまたは真空蒸着等の手法により形成される。なお、当該金属層構成は一例であり、最上層の銅層は形成しない構成も可能であり、また他の金属材料からなる層構成であってもよい。
【0028】
水晶振動板2はATカット水晶振動板であり、図示していないが平面視矩形状で長辺と短辺を有している。水晶振動板2の主面中央部には表裏に励振電極21,22が形成されている。当該励振電極21,22も平面視矩形状で水晶振動板と相似しており、長辺と短辺を有している。表裏の各励振電極21,22は一方の励振電極の短辺から一方の水晶振動板の短辺に引出電極(図示せず)が引き出されている。なお、ATカット水晶振動板以外に音叉型水晶振動板やその他の圧電振動板を用いてもよい。
【0029】
励振電極および引出電極は金属膜からなり、例えば水晶振動板に接して、下地層としてクロム膜が形成され、当該クロム膜の上部に上層として金膜が形成された2層構成となっている。当該金属膜構成は他の金属材料であってもよく、例えば下地層にチタン膜やニッケル膜を用いてもよい。また上層に銀膜や銅膜等の材料あるいは金合金、銀合金、銅合金の各合金膜を用いてもよい。
【0030】
上記電極形成された水晶振動板は、前記電極パッド12,13に導電接合材Sを用いて短辺が片持ち保持され、前記引出電極と導電接合される。導電接合材Sは鉛フリーハンダや導電フィラーを含む樹脂接着剤が用いられる。
【0031】
前記金属ろう部31が前記堤部の上面に対応し、開口部を塞ぐようにリッド3をベース1に搭載する。そして、ベース1とリッド3とを前記金属ろう部で接合することにより、内部に収納された水晶振動板2が気密収納される。内部の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスや真空雰囲気が用いられるが、本実施の形態では真空雰囲気を用いている。
【0032】
気密接合後においては、下ろう部と上ろう部とが溶融した錫銅合金状態で硬化しており、またベースとリッドの接合部分においては金属薄膜であるニッケルも金属ろう部に取り込まれた状態となっている。また前記接合部分以外の領域においては金属ろう部の上面に金属薄膜が存在しているので、金属ろう部が溶融したとしても他への流出を抑制している。これにより金属ろう部の耐熱性が全体として向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。
【0033】
次に本実施の形態に使用したリッドの製造方法および当該リッドを用いた圧電振動デバイスの製造方法について説明する。
【0034】
図1に示すようにコバールからなるコア部30のベースとの接合面にメッキ技術や圧延技術あるいは溶融コート技術を用いて金属ろう部31を形成する。例えばメッキ技術により金属ろう部を形成する場合、コア部30の一主面に銅メッキにより下ろう部となる銅層を形成する。その後当該下ろう部上に錫銅メッキにより上ろう部として錫銅層を形成する。なお、上ろう部を錫銅メッキに代えて、錫メッキと銅メッキを相互に積層した錫と銅の積層構成であってもよい。
【0035】
その後錫銅層の上部にメッキ法または真空蒸着法を用いてニッケルからなる金属ろう部よりも融点の高い金属薄膜を形成する。当該金属薄膜の膜厚は0.8μmで形成しているが、金属ろう部の構成によって0.3〜1.2μmの厚さに調整することができる。
【0036】
ベース1の電極パッド12,13に水晶振動板2を搭載し、導電性接合材Sにより導電接合を行う。導電接合材Sを硬化させ、励振電極21,22に対する周波数調整(膜厚調整)を行った後、アニール等の熱安定化処理を行う。その後前記金属ろう部を金属層111に対向させた状態で、ベース1にリッド3を搭載し開口部を塞いだ状態で加熱を行う。加熱は加熱炉によりベース1とリッド3からなる電子部品用パッケージ全体を金属ろう部の溶融する温度で加熱する。例えば錫と銅からなる金属ろう部の場合、温度が250℃〜380℃、時間が1分〜30分の範囲で、所定の温度プロファイルに従って加熱を行う。なお、ベースとリッド間に10〜100g程度の荷重かけた状態で加熱を行うことにより、高融点領域312および低融点領域313がより効率的に形成できる。
【0037】
このように荷重をかけて加熱を行うことにより、図2に示すように、ベースの金属層111と接触しているリッドの金属薄膜は金属ろう部に取り込まれ、また金属ろう部は下ろう部と上ろう部が混合した状態で溶融する。これにより錫銅合金が形成されるとともに、下ろう部の銅層からの銅の追加的な供給により、錫と銅の金属化合物が生成され、また錫とニッケル(金属薄膜)の金属化合物が形成され、硬化後の金属ろう部の融点は上昇する。またベースと接触していないリッドの金属薄膜は膜状態が維持され、金属ろう部は軟化溶融してもその流動を抑制することができる。従って、耐熱性が向上し、また金属ろう部からのスプラッシュやガス等の悪影響がベース内部(パッケージ内部)に及ぶことがなく、特性の安定した電子部品を得ることができる。
【0038】
本発明による第2の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイス用のベースを例にとり図3,図4とともに説明する。ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。本実施の形態においては、ベースはセラミックスを基体として、内外部に金属膜からなる導通電極が形成された構成である。なおベースの材料としてホウケイ酸ガラス等のガラス材を用いてもよい。
【0039】
リッド4は図示していないが平面視矩形状であり、多層の金属材料からなる構成で、コア部40の表面に金属ろう部41が形成された構成である。コア部40はコバール材(鉄ニッケルコバルト合金)からなり、当該コア部40のベース1との接合面にはリッドの外周近傍に沿って周状の金属ろう部41が形成されている。なおコア部40の金属ろう部41を形成した反対面にニッケル層を形成してもよい。またリッドのコア部を金属ではなくセラミックス板やガラス板で構成してもよい。この場合、セラミックス板またはガラス板のベースとの接合面側に金属ろう部が形成される。
【0040】
金属ろう部41は下ろう部41aと上ろう部41bとからなる。下ろう部41aはコア部40に接して形成され、また上ろう部41bは下ろう部41aの上部に形成されている。本実施の形態においては、上ろう部41bはリッドの主面の外周近傍に周状に形成されている。当該周状部分は前記ベースの堤部に形成された金属層に対応して設けられている。下ろう部41aは錫との合金を形成する金属である銅からなり、上ろう部41bは錫合金である錫銅共晶合金からなる。なお、このような周状構成はレジスト膜によるマスキング手段を用いてメッキを行う等の手段や、錫銅等の枠状のプリフォーム材を金属ろう部として堤部に融着形成してもよい。
【0041】
上ろう部と下ろう部の構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば下ろう部に銅層、上ろう部に錫層を形成してもよい。また下ろう部に金層、上ろう部に錫層または金錫層を形成した構成であってもよく、上ろう部に錫または錫と他の金属からなる錫合金、下ろう部に前記他の金属を形成した構成であればよい。
【0042】
また金属ろう部の上ろう部41bおよび下ろう部41aの上面には当該金属ろう部41よりも融点の高いニッケルからなる金属薄膜が形成されている。これによりリッドの外周近傍においては下ろう部、上ろう部そして金属薄膜の順で形成された構成であり、リッドの内側部分においては下ろう部、金属薄膜の順で形成された構成となっている。当該金属薄膜はニッケルに限定されるものではなく、例えば銅や金であってもよい。これら金属薄膜は真空蒸着法やスパッタリング法またはメッキ法により形成される。なお、本実施の形態においてはベースとの接合面側に金属薄膜を形成したが、反対側の主面および側面を含む全面に形成した構成であってもよい。
【0043】
ベース1は全体として外形が直方体形状で、上部に開口部を有する箱形であり、底部10と堤部11と段部1cを有し、断面で見て概ね凹形の電子部品素子収納部を有した構成である。本実施の形態においては、ベースはセラミックスを基体として、内外部に金属膜からなる導通電極が形成された構成である。なおベースの材料としてホウケイ酸ガラス等のガラス材を用いてもよい。
【0044】
堤部11は底部10の外周から上方に伸長する状態に形成され、このような構成により、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部Cが形成され、当該電子部品素子収納部Cの内側には内側壁が形成されている。また前記段部1cの上面は平坦面であり、当該上面に電極パッド12,13が所定の間隔をもって設けられている。
【0045】
またベースに周状に形成された堤部11の上面には金属層111が周状に形成され、当該金属層111は後述のリッドと気密接合される領域となる。金属層111は例えばベースのセラミックに接してタングステン層またはモリブデン層、ニッケル層、金層、銅層の順で積層形成される。なお、タングステン層はセラミックと一体焼成され、ニッケル、金、銅の各層はめっきまたは真空蒸着等の手法により形成される。なお、当該金属層構成は一例であり、最上層の銅層は形成しない構成も可能であり、また他の金属材料からなる層構成であってもよい。
【0046】
水晶振動板2はATカット水晶振動板であり、平面視矩形状で長辺と短辺を有している。水晶振動板2の主面中央部には表裏に励振電極21,22が形成されている。当該励振電極21,22も平面視矩形状で水晶振動板と相似しており、長辺と短辺を有している。表裏の各励振電極21,22は一方の励振電極の短辺から一方の水晶振動板の短辺に引出電極(図示せず)が引き出されている。なお、ATカット水晶振動板以外に音叉型水晶振動板やその他の圧電振動板を用いてもよい。
【0047】
励振電極および引出電極は金属膜からなり、例えば水晶振動板に接して、下地層としてクロム膜が形成され、当該クロム膜の上部に上層として金膜が形成された2層構成となっている。当該金属膜構成は他の金属材料であってもよく、例えば下地層にチタン膜やニッケル膜を用いてもよい。また上層に銀膜や銅膜等の材料あるいは金合金、銀合金、銅合金の各合金膜を用いてもよい。
【0048】
上記電極形成された水晶振動板は、前記電極パッド12,13に導電接合材Sを用いて短辺が片持ち保持され、前記引出電極と導電接合される。導電接合材Sは鉛フリーハンダや導電フィラーを含む樹脂接着剤が用いられる。
【0049】
前記金属ろう部41が前記堤部の上面に対応し、開口部を塞ぐようにリッド4をベース1に搭載する。そして、ベース1とリッド4とを前記金属ろう部で接合することにより、内部に収納された水晶振動板2が気密収納される。内部の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスや真空雰囲気が用いられるが、本実施の形態では真空雰囲気を用いている。
【0050】
気密接合後は、リッドとベースの接合部分においては下ろう部と上ろう部とが溶融した状態で硬化しており、また金属薄膜も金属ろう部に取り込まれた状態となっている。また前記接合部分以外の領域においては下ろう部の上面に金属薄膜が存在しているので、金属ろう部が溶融したとしても他への流出を抑制している。これにより金属ろう部の耐熱性が全体として向上することにより、電子部品用パッケージの気密封止性を向上させ、特性の安定な電子部品を得るためのリッドおよび電子部品用パッケージを得ることができる。
【0051】
上記構成であれば、上記各作用に加えてリッドとベースの接合部分にのみ金属ろう部の各層または金属ろう部の錫または錫合金層を配置することはできる。これにより接合部分以外のリッド領域においては金属ろう部より融点の高い金属薄膜により被覆されているので、全体加熱時に金属ろう部の溶融やスプラッシュまたは放出ガスの影響を抑制することができる。
【0052】
上ろう部と下ろう部の構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば下ろう部に銅層、上ろう部に錫層を形成してもよい。また下ろう部に金層、上ろう部に錫層または金錫層を形成した構成であってもよく、上ろう部に錫または錫と他の金属からなる錫合金、下ろう部に前記他の金属を形成した構成であってもよい。
【0053】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
電子部品用パッケージの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 ベース
10 底部
11 堤部
2 水晶振動板(圧電振動板)
3、4 リッド
31,41 金属ろう部
32,42 金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースの前記開口部を全体加熱により気密封止するリッドであって、
少なくとも前記開口部と接合される接合領域に金属ろう部が形成され、当該金属ろう部は錫と他の金属を有する構成で、リッドのコア部に前記他の金属からなる下ろう部を形成し、その上面に錫または錫と他の金属からなる錫合金を有する上ろう部を形成するとともに、前記金属ろう部の一部または全部に前記上部ろう部より融点の高い金属薄膜が形成されていることを特徴とするリッド。
【請求項2】
前記金属ろう部は錫と銅を含む金属材料からなり、前記金属薄膜はニッケルまたは銅からなることを特徴とする請求項1記載のリッド。
【請求項3】
前記金属ろう部の各層または金属ろう部の錫または錫合金は、リッドの外周領域において周状に形成され、前記金属薄膜はベースとの接合面側全体に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のリッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のリッドと、開口部と当該開口部につながる電子部品素子収納部を有するベースと、からなる電子部品用パッケージであって、前記ベースの開口部を前記リッドで全体加熱により気密封止したことを特徴とする電子部品用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−228353(P2011−228353A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94270(P2010−94270)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】