説明

リテーナ及び基板収納容器

【課題】厚さの異なる複数枚の基板を保持することができ、作業の煩雑化や複雑化、部品点数の増大を防ぐことのできるリテーナ及び基板収納容器を提供する。
【解決手段】厚さの異なる第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を上下に並べて水平に収納可能な容器本体1と、容器本体1の開口した正面2を開閉する蓋体20とを備え、蓋体20の第一、第二の半導体ウェーハW1・W2に対向する裏面に、厚さの異なる第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を保持可能なフロントリテーナ40を装着する。フロントリテーナ40を、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2に対向するリテーナ本体41と、リテーナ本体41に設けられて第一の半導体ウェーハW1の前部周縁を保持溝で保持する第一の弾性保持片46と、リテーナ本体41に設けられて第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を保持溝で保持する第二の弾性保持片50とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやガラスウェーハ等からなる基板を収納、保管、搬送、輸送等する際に使用されるリテーナ及び基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを上下に並べて整列収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、蓋体の半導体ウェーハに対向する裏面に、複数枚の半導体ウェーハを保持するフロントリテーナが装着されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
容器本体は、正面の開口したフロントオープンボックスに成形され、SEMI標準規格で定められた厚さの半導体ウェーハを水平に収納するよう機能する。また、フロントリテーナは、蓋体の裏面に装着されて半導体ウェーハに対向するリテーナ本体を備え、このリテーナ本体に、複数枚の半導体ウェーハの前部周縁を保持溝で保持する複数の弾性保持片が配列形成されている。各弾性保持片は、弾性を有する線条に形成されてその先端部に保持溝が切り欠かれている。この保持溝は、半導体ウェーハの回転を防止する観点から、半導体ウェーハの標準的な厚さに対応する寸法に調整されている。
【0004】
このような構成の基板収納容器は、半導体部品の生産工程において、局所的なクリーン環境に設置された加工装置のロードポート装置に位置決めして搭載され、容器本体から蓋体が取り外された後、容器本体に収納された半導体ウェーハが出し入れされて各種の処理や加工が順次施される。
【0005】
ところで、半導体の生産工場においては、標準的な厚さの半導体ウェーハを受け入れた後、生産工程内で半導体ウェーハの表面に電子回路を形成するため、各種の加工が施される。一般的には、半導体ウェーハの表面に電子回路が形成されるまで、略同一寸法の半導体ウェーハが使用され、半導体ウェーハの裏面がバックグラインドされて半導体部品の厚さに対応するよう薄くされ、この薄い半導体ウェーハが個片に切断されることにより、半導体部品が生産される。この場合、同一仕様のフロントリテーナを備えた基板収納容器を使用して半導体部品を生産することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005‐320028号公報
【特許文献2】特開2006‐332261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特殊な半導体部品を生産する場合には、加工途中の半導体ウェーハに別の半導体ウェーハを貼着して積層構造の半導体ウェーハを形成し、この積層構造の半導体ウェーハを次工程に供給する生産方式が採用されることがある。
【0008】
この場合、積層構造の半導体ウェーハが別の半導体ウェーハを貼着した分厚くなるので、従来のフロントリテーナに積層構造の半導体ウェーハを保持させようとすると、半導体ウェーハの厚さ方向の中心がずれることになる。この結果、積層構造の半導体ウェーハを適切に保持することができず、半導体ウェーハが回転したり、位置ずれするという問題が生じる。
【0009】
このような問題を解消する手段としては、積層構造の半導体ウェーハを保持可能な専用のフロントリテーナを使用する方法が考えられるが、そうすると、標準的な通常のフロントリテーナと専用のフロントリテーナとを生産方式に応じて交換しなければならず、作業の煩雑化や複雑化を招くおそれがある。また、専用のフロントリテーナを予め用意しなければならなくなるので、部品点数が増大することとなる。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、厚さの異なる複数枚の基板を保持することができ、作業の煩雑化や複雑化、部品点数の増大を防ぐことのできるリテーナ及び基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、厚さの異なる第一、第二の基板を保持可能なものであって、
第一、第二の基板に対向するリテーナ本体と、このリテーナ本体に設けられて第一の基板の周縁部を保持溝で保持する第一の弾性保持片と、リテーナ本体に設けられて第二の基板の周縁部を保持溝で保持する第二の弾性保持片とを含んでなることを特徴としている。
【0012】
なお、第一の基板を半導体ウェーハとし、第二の基板を複数枚が貼り合わされた積層半導体ウェーハとすることができる。
また、第二の弾性保持片の長さを、第一の弾性保持片の長さよりも短縮することができる。
また、第一の弾性保持片の保持溝を断面略V字形に形成するとともに、第二の弾性保持片の保持溝を断面略台形に形成し、第二の弾性保持片の保持溝が第二の基板の周縁部を保持する際、第一の弾性保持片の保持溝に第二の基板の周縁部を案内させることができる。
【0013】
また、リテーナ本体を、間隔をおいて対向する一対の縦桟の間に一対の横桟を架設するとともに、この一対の横桟を間隔をおいて対向させてその間に連結桟を架設することにより形成し、縦桟に第一の弾性保持片を設け、連結桟には第二の弾性保持片を設けることが可能である。
【0014】
また、リテーナ本体を、間隔をおいて対向する一対の縦桟の間に一対の横桟を架設するとともに、この一対の横桟を間隔をおいて対向させることにより形成し、一対の縦桟に複数の第一、第二の弾性保持片を交互に並べ設け、この複数の第一、第二の弾性保持片に高さ方向の可撓性をそれぞれ付与することが可能である。
【0015】
また、本発明においては上記課題を解決するため、厚さの異なる第一、第二の基板を上下に並べて略水平に収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを備えたものであって、
蓋体の第一、第二の基板に対向する対向面に、請求項1ないし6いずれかに記載のリテーナを取り付けたことを特徴としている。
【0016】
ここで、特許請求の範囲における厚さの異なる第一、第二の基板には、少なくともφ200、300、450mmの半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等が含まれる。また、リテーナのリテーナ本体は、板体でも良いし、枠体でも良い。第一、第二の弾性保持片は、単数複数を特に問うものではない。第一の弾性保持片は、縦桟から第一、第二の基板方向に伸びる第一の弾性片を備え、この第一の弾性片に、第一、第二の半導体ウェーハの周縁部に対向する保持ブロックが形成され、この保持ブロックに保持溝が切り欠かれることが好ましい。
【0017】
第二の弾性保持片は、連結桟あるいは縦桟から第一、第二の基板方向に伸びる第二の弾性片を備え、この第二の弾性片に、第一、第二の半導体ウェーハの周縁部に対向する保持ブロックが形成され、この保持ブロックに保持溝が切り欠かれることが好ましい。これら第一、第二の弾性保持片の保持溝は、中心位置が高さ方向に相異することが好ましい。さらに、容器本体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。
【0018】
本発明によれば、第一、第二の基板の周縁部とリテーナとが接近すると、第一の弾性保持片は、保持溝を第一、第二の基板の周縁部に接触させ、保持溝の谷部に第一、第二の基板の周縁部を案内する。また、第二の弾性保持片は、保持溝を第一、第二の基板の周縁部に接近させ、この保持溝を第一、第二の基板の周縁部に隙間をおいて対向させる。
【0019】
第一、第二の基板の周縁部とリテーナとがさらに接近すると、第一の弾性保持片は、保持溝に第一の基板の周縁部を位置決めして保持させ、保持溝の谷部近傍に第二の基板の周縁部を案内して接触させる。また、第二の弾性保持片は、保持溝の谷部に第一、第二の基板の周縁部を案内し、第二の基板の周縁部を位置決めして保持する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、厚さの異なる複数枚の基板を適切に保持することができ、しかも、作業の煩雑化や複雑化、部品点数の増大を有効に防ぐことができるという効果がある。
【0021】
また、第一の基板を半導体ウェーハとし、第二の基板を複数枚が貼り合わされた積層半導体ウェーハとすれば、第二の弾性保持片の保持溝に積層構造の第二の半導体ウェーハの周縁部を適切に保持させることができる。したがって、第二の半導体ウェーハの厚さ方向の中心がずれることが少なく、第二の半導体ウェーハが回転したり、位置ずれするのを有効に防ぐことができる。また、第二の半導体ウェーハを保持可能な専用のリテーナを使用する必要がないので、専用のリテーナを生産方式に応じて交換する手間を省くことができる。
【0022】
また、第二の弾性保持片の長さを、第一の弾性保持片の長さよりも短縮すれば、第二の弾性保持片の保持力を増大させることができるので、例え第二の基板が第一の基板よりも厚くても、第二の基板を適切に保持することが可能になる。
【0023】
また、リテーナ本体を、間隔をおいて対向する一対の縦桟の間に一対の横桟を架設するとともに、この一対の横桟を間隔をおいて対向させてその間に連結桟を架設すれば、リテーナ本体の強度や剛性を向上させることができる。また、縦桟に第一の弾性保持片を設け、連結桟に第二の弾性保持片を設ければ、第一、第二の弾性保持片を異なる箇所に配置することが可能になる。
【0024】
また、リテーナ本体を、間隔をおいて対向する一対の縦桟の間に一対の横桟を架設するとともに、この一対の横桟を間隔をおいて対向させることにより形成し、一対の縦桟に複数の第一、第二の弾性保持片を交互に並べ設ければ、連結桟を省略してリテーナ本体の構成の簡素化を図ることが可能になる。さらに、第一、第二の弾性保持片の保持溝が例え高さ方向にずれても、第一、第二の弾性保持片を高さ方向に撓ませてずれた位置に追従させることができるので、異なる厚さの第一、第二の基板の安定した保持が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係るリテーナの実施形態におけるフロントリテーナを模式的に示す正面説明図である。
【図3】本発明に係るリテーナの実施形態におけるフロントリテーナ下部を模式的に示す拡大正面説明図である。
【図4】図3のIV‐IV線断面図である。
【図5】本発明に係るリテーナの実施形態における第一、第二の弾性保持片の保持溝の位置関係を模式的に示す断面説明図である。
【図6】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の実施形態における容器本体の正面に蓋体が近接して対向した状態を模式的に示す断面説明図である。
【図7】図6における第一、第二の弾性保持片の保持ブロックに第一の半導体ウェーハが保持された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図8】図6における第一、第二の弾性保持片の保持ブロックに第二の半導体ウェーハが保持された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図9】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の実施形態における容器本体の正面に蓋体が圧入された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図10】図9における第一、第二の弾性保持片の保持ブロックに第一の半導体ウェーハが保持された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図11】図9における第一、第二の弾性保持片の保持ブロックに第二の半導体ウェーハが保持された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図12】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の実施形態における容器本体の正面に圧入された蓋体が施錠機構により施錠された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図13】図12における第一、第二の弾性保持片の保持ブロックに第一の半導体ウェーハが保持された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図14】図12における第一、第二の弾性保持片の保持ブロックに第二の半導体ウェーハが保持された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図15】本発明に係るリテーナの第2の実施形態におけるフロントリテーナの上部を模式的に示す拡大正面説明図である。
【図16】本発明に係るリテーナの第2の実施形態における第一、第二の弾性保持片の断面を模式的に示す断面説明図である。
【図17】本発明に係るリテーナの第2の実施形態における第一、第二の弾性保持片の他の断面を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図14に示すように、厚さの異なる複数枚の第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を上下に並べて整列収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面2を開閉する着脱自在の蓋体20とを備え、蓋体20の第一、第二の半導体ウェーハW1・W2に対向する裏面23に、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を弾発的に保持可能なフロントリテーナ40を装着するようにしている。
【0027】
第一、第二の半導体ウェーハW1・W2は、図1や図6に示すように、例えばシリコンウェーハからなり、第一の半導体ウェーハW1が標準的な厚さでφ300mmの半導体ウェーハとされる。この第一の半導体ウェーハW1は、φ300mmタイプの場合、775μmの厚さに形成される。これに対し、第二の半導体ウェーハW2は、加工途中の薄い第一の半導体ウェーハW1に別の第一の半導体ウェーハW1が貼着して積層されたφ300mmの積層半導体ウェーハであり、第一の半導体ウェーハW1の約2倍の厚さを有する。
【0028】
容器本体1と蓋体20とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、あるいは環状オレフィン樹脂等があげられる。この所定の樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が必要に応じて選択的に添加される。
【0029】
容器本体1は、図1に示すように、正面2の開口したフロントオープンボックスタイプに形成され、開口した横長の正面2を水平横方向に向けた状態で加工装置のロードポート装置上に位置決めして搭載されたり、洗浄槽の洗浄液により洗浄される。この容器本体1の内部両側、すなわち、両側壁3の内面には、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を水平に支持する左右一対の支持片4が対設され、この一対の支持片4が容器本体1の上下方向に所定のピッチで配列される。
【0030】
各支持片4は、例えば平面略半円弧形に湾曲形成され、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の側部周縁を位置決めして水平に支持するよう機能する。また、容器本体1の底板5の前部両側と後部中央とには、基板収納容器、具体的には容器本体1を高精度に位置決めする複数の位置決め具が配設される。
【0031】
容器本体1の底板5には、複数の位置決め具をそれぞれ露出させるボトムプレート6が水平に螺着される。このボトムプレート6には、複数の識別孔が穿孔され、この複数の識別孔に着脱自在の情報識別パッドが選択的に挿入されることにより、基板収納容器の種類や第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の枚数等が加工装置等に識別される。
【0032】
容器本体1の天板7には、工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ8が水平に装着され、容器本体1の両側壁3の外面には、指等を干渉させることのできるグリップ部9がそれぞれ装着される。また、容器本体1の正面2の内周縁には、蓋体20用の複数の係止穴10が間隔をおいて凹み形成され、容器本体1の背面壁内面には、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の後部周縁を保持するリアリテーナやリアサポートが必要に応じ選択的に形成される。
【0033】
蓋体20は、図1に示すように、容器本体1の開口した正面2内に嵌合する横長の筐体21と、この筐体21の開口した正面を被覆する表面プレート25と、これら筐体21と表面プレート25との間に介在される施錠機構27とを備え、ロードポート装置の蓋体開閉装置により取り付け取り外しされる。この蓋体20の筐体21は、基本的には枠形の周壁を備えた浅底の断面略皿形に形成され、周壁の上下両側部には、施錠機構27用の貫通孔22がそれぞれ穿孔されており、各貫通孔22が容器本体1の係止穴10に対向する。
【0034】
筐体21の裏面23周縁部には枠形の嵌合溝が形成され、この嵌合溝には、容器本体1の正面2内に圧接するガスケット24が密嵌される。このガスケット24は、例えば耐熱性や耐候性等に優れるフッ素ゴム、シリコーンゴム、各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等)等を成形材料として弾性変形可能な枠形に成形される。
【0035】
表面プレート25は、筐体21の開口した正面に対応する横長の平板に形成され、左右両側部に、施錠機構27用の操作口26がそれぞれ穿孔されており、ロードポート装置の蓋体開閉装置に搭載された後に操作キーが挿入される。また、施錠機構27は、表面プレート25の操作口26を貫通した蓋体開閉装置の操作キーにより回転操作される左右一対の回転プレート28と、各回転プレート28の回転に伴い上下方向にスライドする複数のスライドプレート29と、各スライドプレート29のスライドに伴い筐体21の貫通孔22から突出して容器本体1の係止穴10に係止する複数の係止爪30とを備えて構成される。
【0036】
フロントリテーナ40は、所定の成形材料、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等により成形される。
【0037】
フロントリテーナ40は、図1ないし図3等に示すように、蓋体20の筐体裏面23に着脱自在に装着されて複数枚の第一、第二の半導体ウェーハW1・W2に対向する縦長のリテーナ本体41と、このリテーナ本体41に設けられて第一の半導体ウェーハW1の前部周縁を保持溝49で水平に保持する複数の第一の弾性保持片46と、リテーナ本体41に設けられ、第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を保持溝53で水平に保持する複数の第二の弾性保持片50とを備えて構成される。
【0038】
リテーナ本体41は、図1ないし図3、図4、図6に示すように、間隔をおいて相対向する左右一対の縦桟42の上下両端部間に横桟43がそれぞれ水平に架設され、この上下一対の相対向する横桟43の中央部間に上下方向に伸びる剛性確保用の連結桟44が架設されており、各縦桟42に、蓋体20の厚さ方向に撓む複数の第一の弾性保持片46が所定の間隔で上下に並べて一体形成されるとともに、連結桟44の両側部に、蓋体20の厚さ方向に撓む複数の第二の弾性保持片50がそれぞれ所定の間隔で上下に並べて一体形成される。
【0039】
複数の縦桟42と横桟43とは、それぞれ断面略矩形に形成され、少なくとも各縦桟42には、蓋体20の筐体裏面23に対する複数の取付片45が間隔をおいて一体形成される。また、第一、第二の弾性保持片46・50は、第二の弾性保持片50が保持力増大の観点から第一の弾性保持片46よりも短く形成され、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の高さ位置に追従して変形する。
【0040】
各第一の弾性保持片46は、図2ないし図4、図6に示すように、縦桟42から第一、第二の半導体ウェーハW1・W2や連結桟44方向に傾斜しながら板片状に伸びる第一の弾性片47を備え、この第一の弾性片47の先端部に、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁に対向する保持ブロック48が一体形成されており、この保持ブロック48に断面略V字形の保持溝49が切り欠かれる。
【0041】
断面略V字形の保持溝49は、相対する一対の斜面で第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁を挟持するとともに、狭い鋭利な谷部49aに薄い第一の半導体ウェーハW1の前部周縁を上下前後に位置決め保持するよう機能する。
【0042】
各第二の弾性保持片50は、図2ないし図4、図6に示すように、連結桟44の側面から第一、第二の半導体ウェーハW1・W2や縦桟42方向に傾斜しながら板片状に伸びる第二の弾性片51を備え、この第二の弾性片51の先端部に、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁に対向する保持ブロック52が一体形成されており、この保持ブロック52に断面略台形の保持溝53が切り欠かれる。
【0043】
断面略台形の保持溝53は、相対する一対の斜面で第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁を挟持するとともに、第一の弾性保持片46の保持溝49よりも広く平坦な谷部53aに第一の半導体ウェーハW1の前部周縁を遊嵌し、厚い第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を位置決め保持するよう機能する。
【0044】
第一、第二の弾性保持片46・50の保持溝49・53は、図5に示すように、第一の弾性保持片46の保持溝49の中心位置よりも第二の弾性保持片50の保持溝53の中心位置がやや高くなるよう設定される。
【0045】
上記構成において、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を整列収納した容器本体1の開口した正面2に蓋体20を嵌合してシール状態に閉鎖する場合には図6に示すように、先ず、容器本体1の開口した正面2に蓋体20がロードポート装置の蓋体開閉装置により近接して対向し、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁にフロントリテーナ40が接近する。
【0046】
この際、第一の弾性保持片46は、保持溝49の斜面を第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁に接近させて摺接し、保持溝49の最も深い谷部49aに第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁を案内する(図7参照)。これに対し、第二の弾性保持片50は、保持溝53を第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁に接近させるものの摺接せず、保持溝53を第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁に僅かな隙間をおいて対向させる(図8参照)。
【0047】
容器本体1の開口した正面2に蓋体20が近接して対向したら、容器本体1の開口した正面2に蓋体20がロードポート装置の蓋体開閉装置により圧入され、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁にフロントリテーナ40がさらに接近し、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の圧接に伴い、第一、第二の弾性保持片46・50が容器本体1の前後方向にそれぞれ変形する(図9参照)。
【0048】
この際、第一の弾性保持片46は、保持溝49の鋭利な谷部49aに第一の半導体ウェーハW1の前部周縁を接触させ、上下方向に位置決めするとともに、保持溝49の谷部49a近傍に第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を案内して接触させる(図10参照)。また、第二の弾性保持片50は、保持溝53の斜面を第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁に接近させて摺接し、保持溝53の最も深い平坦な谷部53aに第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁を案内し、第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を上下方向に位置決めする(図11参照)。
【0049】
蓋体20が蓋体開閉装置により圧入されたら、蓋体20の施錠機構27が蓋体開閉装置に施錠操作されることにより、容器本体1の正面2に蓋体20を嵌合してシール状態に閉鎖することができる(図12参照)。
【0050】
この際、第一の弾性保持片46は、保持溝49の谷部49aに第一の半導体ウェーハW1の前部周縁を密嵌して上下方向に高精度に位置決めするとともに、保持溝49の谷部近傍に第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を接触させる(図13参照)。また、第二の弾性保持片50は、保持溝53の平坦な谷部53aに第一の半導体ウェーハW1の前部周縁を接触させるとともに、第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を密嵌して上下方向に高精度に位置決めする(図14参照)。
【0051】
上記構成によれば、第一、第二の弾性保持片46・50の保持溝49・53の形状や幅が異なり、第二の弾性保持片50の保持溝53の谷部53aが広く平坦なので、この保持溝53の谷部53aに積層構造の第二の半導体ウェーハW2の前部周縁を適切、かつ安定して保持させることができる。したがって、第二の半導体ウェーハW2の厚さ方向の中心がずれることがなく、第二の半導体ウェーハW2が回転したり、位置ずれしてパーティクルが発生し、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2が汚染するのを有効に防止することができる。
【0052】
また、第二の半導体ウェーハW2を保持可能な専用のフロントリテーナ40や異なる仕様の基板収納容器を使用する必要が全くないので、標準的な通常のフロントリテーナ40と専用のフロントリテーナ40とを生産方式に応じて交換する手間を確実に省くことができる。したがって、作業の煩雑化や複雑化を招くおそれがなく、部品点数の削減も大いに期待できる。
【0053】
次に、図15ないし図17は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、リテーナ本体41を、間隔をおいて相対向する左右一対の縦桟42の上下両端部間に、上下一対の横桟43をそれぞれ水平に架設することにより形成し、各縦桟42の上下方向に複数の第一、第二の弾性保持片46・50を千鳥状に、具体的には一段おきに交互に配列して連結桟44を省略するようにしている。
【0054】
第一、第二の弾性保持片46・50は、同じ長さに形成され、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の高さ位置に追従して変形する。各第一の弾性保持片46は、縦桟42から隣接する他の縦桟42方向に板片状に伸びる第一の弾性片47を備え、この第一の弾性片47の先端部に、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁の中央に対向する保持ブロック48が一体形成され、第一の弾性片47の先端部から伸びる最先端部が蓋体20の筐体裏面23に固定された受け部54に支持されており、この受け部54が第一の弾性片47の保持力を一定に維持するよう機能する。
【0055】
第一の弾性保持片46の第一の弾性片47は、細長く形成され、図16や図17に示すように厚さ方向(高さ方向)に厚くなるよう断面略矩形あるいは楕円形に形成されて高さ方向に撓むよう機能する。また、受け部54には、第一の弾性保持片46の高さ方向の位置をセルフアライメントしたい場合に傾斜面が適宜形成される。
【0056】
各第二の弾性保持片50は、連結桟44の側面から縦桟42方向に板片状に伸びる第二の弾性片51を備え、この第二の弾性片51の先端部に、第一、第二の半導体ウェーハW1・W2の前部周縁の中央に対向する保持ブロック52が一体形成され、第二の弾性片51の先端部から伸びる最先端部が蓋体20の筐体裏面23に固定された受け部54に支持されており、この受け部54が第二の弾性片51の保持力を一定に維持するよう機能する。
【0057】
第二の弾性保持片50の第二の弾性片51は、細長く形成され、図16や図17に示すように厚さ方向(高さ方向)に厚くなるよう断面略矩形あるいは楕円形に形成されて高さ方向に撓むよう機能する。また、受け部54には、第二の弾性保持片50の高さ方向の位置をセルフアライメントしたい場合に傾斜面が適宜形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0058】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、異なる厚さの第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を保持することにより、第一、第二の弾性保持片46・50の保持溝49・53が例え高さ方向にずれても、第一、第二の弾性保持片46・50を高さ方向に撓ませてずれた位置に追従させることができ、異なる厚さの第一、第二の半導体ウェーハW1・W2を安定して保持することができるのは明らかである。
【0059】
なお、上記実施形態では容器本体1の底板5の前部両側と後部中央とに位置決め具をそれぞれ配設したが、ボトムプレート6の前部両側と後部中央とに位置決め具をそれぞれ配設しても良い。また、上記実施形態では、保持力増大の観点から、第二の弾性保持片50を第一の弾性保持片46よりも短くしたが、第二の弾性保持片50の厚さや幅等を変更してその保持力を増大させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 容器本体
2 正面(開口部)
20 蓋体
21 筐体
23 裏面
25 表面プレート
27 施錠機構
23 裏面
40 フロントリテーナ(リテーナ)
41 リテーナ本体
42 縦桟
43 横桟
44 連結桟
46 第一の弾性保持片
47 第一の弾性片
48 保持ブロック
49 保持溝
49a 谷部
50 第二の弾性保持片
51 第二の弾性片
52 保持ブロック
53 保持溝
53a 谷部
W1 第一の半導体ウェーハ(第一の基板)
W2 第二の半導体ウェーハ(第二の基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さの異なる第一、第二の基板を保持可能なリテーナであって、第一、第二の基板に対向するリテーナ本体と、このリテーナ本体に設けられて第一の基板の周縁部を保持溝で保持する第一の弾性保持片と、リテーナ本体に設けられて第二の基板の周縁部を保持溝で保持する第二の弾性保持片とを含んでなることを特徴とするリテーナ。
【請求項2】
第一の基板を半導体ウェーハとし、第二の基板を複数枚が貼り合わされた積層半導体ウェーハとした請求項1記載のリテーナ。
【請求項3】
第二の弾性保持片の長さを、第一の弾性保持片の長さよりも短縮した請求項1又は2記載のリテーナ。
【請求項4】
第一の弾性保持片の保持溝を断面略V字形に形成するとともに、第二の弾性保持片の保持溝を断面略台形に形成し、第二の弾性保持片の保持溝が第二の基板の周縁部を保持する際、第一の弾性保持片の保持溝に第二の基板の周縁部を案内させるようにした請求項1、2、又は3記載のリテーナ。
【請求項5】
リテーナ本体を、間隔をおいて対向する一対の縦桟の間に一対の横桟を架設するとともに、この一対の横桟を間隔をおいて対向させてその間に連結桟を架設することにより形成し、縦桟に第一の弾性保持片を設け、連結桟には第二の弾性保持片を設けた請求項1ないし4いずれかに記載のリテーナ。
【請求項6】
リテーナ本体を、間隔をおいて対向する一対の縦桟の間に一対の横桟を架設するとともに、この一対の横桟を間隔をおいて対向させることにより形成し、一対の縦桟に複数の第一、第二の弾性保持片を交互に並べ設け、この複数の第一、第二の弾性保持片に高さ方向の可撓性をそれぞれ付与するようにした請求項1ないし4いずれかに記載のリテーナ。
【請求項7】
厚さの異なる第一、第二の基板を上下に並べて略水平に収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを備えた基板収納容器であって、
蓋体の第一、第二の基板に対向する対向面に、請求項1ないし6いずれかに記載のリテーナを取り付けたことを特徴とする基板収納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−222587(P2011−222587A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87128(P2010−87128)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】