説明

リナクロチドのα結晶形

本発明はリナクロチドの結晶形、ならびにその結晶形の調製および使用のためのさまざまな方法およびプロセスに関する。本発明は、アモルファスリナクロチドに比べて、たとえば安定性の増強または増加など、驚くほど、かつ予想外に増強された特性を有する、リナクロチドの新しい結晶形または多形に関する。加えて、こうしたリナクロチドの結晶形は、アモルファスリナクロチドに比べて増強された保存安定性および化学的分解に対する増強された安定性を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年11月19日出願の米国仮特許出願第61/116,156号の利益を主張し、この全体の内容が本明細書中で参照として援用される。
【0002】
本発明は、リナクロチドの新規のα結晶形、ならびにα結晶形の調製のためのプロセス、α結晶形を含む組成物、およびα結晶形の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、胃腸障害の処置に対するグアニル酸シクラーゼC(guanylate cyclase C:GC−C)受容体のアゴニストとして作用するペプチドを開示している。そこに開示される特定のペプチドの1つはリナクロチドであり、これは次のアミノ酸配列からなる:Cys Cys Glu Tyr Cys Cys Asn Pro Ala Cys Thr Gly Cys Tyr。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、リナクロチドおよび関連ペプチドの調製のための方法を開示している。特許文献1および特許文献2の内容は、本明細書においてその全体にわたって引用により援用される。
【0005】
当該技術分野においては、改善された特性を有する改善された形のリナクロチドに対する要求が今なおある。
【0006】
本発明は、アモルファスリナクロチドに比べて、たとえば安定性の増強または増加など、驚くほど、かつ予想外に増強された特性を有する、リナクロチドの新しい結晶形または多形に関する。加えて、こうしたリナクロチドの結晶形は、アモルファスリナクロチドに比べて増強された保存安定性および化学的分解に対する増強された安定性を有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,304,036号明細書
【特許文献2】米国特許第7,371,727号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リナクロチドの新規のα結晶形に関する。この結晶形の調製および使用のためのさまざまな方法およびプロセスも本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、アモルファスリナクロチドのX線粉体回折パターンを示す。
【図2】図2は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図3】図3は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図4】図4は、リナクロチドのα結晶形のフーリエ変換赤外スペクトルを示す。
【図5】図5は、リナクロチドのα結晶形の示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry:DSC)サーモグラムを示す。
【図6】図6は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図7】図7は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図8】図8は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図9】図9は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図10】図10は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図11】図11は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図12】図12は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【図13】図13は、リナクロチドのα結晶形のX線粉体回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、リナクロチドの結晶形を提供する。米国特許第7,304,036号および第7,371,727号に開示されるとおりの調製方法は、アモルファス状態のリナクロチドをもたらす。アモルファスリナクロチドのX線粉体回折パターンを図1に示す。
【0011】
1つの局面において、本発明はリナクロチドの結晶形、特定的にはリナクロチドのα結晶形(α形リナクロチド)に関する。
【0012】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0013】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約7.8+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0014】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約8.6+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0015】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約9.7+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0016】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約10.3+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0017】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約11.4+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0018】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約14.3+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0019】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約16.0+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0020】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約17.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0021】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約19.5+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0022】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約20.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0023】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約21.6+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0024】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約22.6+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0025】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0026】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約24.4+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0027】
特定の実施形態において、α形リナクロチドは、約25.2+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0028】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2、約7.8、約11.4、約16.0、約19.5、および約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0029】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2、約7.8、約8.6、約9.7、約10.3、約11.4、約14.3、約16.0、約17.9、約19.5、約20.9、約21.6、約22.6、約23.9、約24.4、および約25.2+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0030】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2および約7.8+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約7.8および約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2、約7.8および約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0031】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2、約7.8、約19.5および約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2、約7.8、約22.6および約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0032】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2、約7.8、約23.9+/−0.5度2θのピークと、任意には約19.5+/−0.5度2θおよび/または約22.6+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0033】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約6.2、約7.8、約19.5、約22.6および約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0034】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図2または図3に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0035】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、表1に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約5.7、約7.7、約23.8+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークと、任意には約7.0、約8.5、約9.6、約10.2、約11.3、約12.6、約13.7、約14.3、約15.5、約16.4、約17.1、約17.9、約18.5、約19.4、約20.8、約21.5、約22.5、約23.1、約24.5、約25.5、約26.1、約27.5、約28.2、約28.8および/または約29.6+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。別様に示されない限り、本明細書において用いられる「1つまたはそれ以上のピーク」という語句は、(i)この語句の前に列挙されるすべてのピーク値におけるXRDピークを有する結晶形、(ii)この語句の前に列挙されるピーク値のうち1つのみにおけるXRDピークを有する結晶形、および(iii)この語句の前に列挙されるピーク値の2つ以上(例、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、または7つ以上)におけるXRDピークを有する結晶形を包含すると理解されるべきである。
【0036】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約5.7および約7.7+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約5.7、約7.7および約23.8+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0037】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約5.7、約7.7、約23.8+/−0.5度2θのピークと、任意には約19.4+/−0.5度2θおよび/または約22.5+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0038】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約5.7、約7.7、約19.4および約23.8+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0039】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約5.7、約7.7、約22.5および約23.8+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約5.7、約7.7、約19.4、約22.5および約23.8+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0040】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図6に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、表2に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約5.7、約7.7および約23.8+/−0.5度2θのピークと、任意には約6.3、約8.4、約9.5、約10.5、約11.7、約12.4、約13.6、約14.7、約15.4、約17.0、約17.8、約19.6、約20.6、約21.3、約22.5、約24.4、約25.1、約26.5、約27.1、約27.7、および/または約28.7+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図7に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は表3に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約5.8、約7.7および約23.9+/−0.5度2θのピークと、任意には約6.4、約8.4、約9.4、約10.5、約11.5、約12.9、約13.6、約14.9、約15.9、約17.4、約18.2、約18.8、約19.4、約20.4、約22.5、約23.3および/または約25.7+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図8に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は表4に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約5.6、約7.7、約23.8の1つまたはそれ以上のピークと、任意には約8.4、約9.5、約10.1、約11.0、約11.8、約12.2、約14.1、約14.9、約15.4、約16.3、約17.0、約17.8、約18.7、約19.4、約20.7、約21.5、約22.5、約24.4および/または約25.4+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図9に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は表5に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約7.7、約23.8+/−0.5度2θのピークと、任意には約5.6、約9.5、約10.1、約11.0、約11.8、約12.5、約14.1、約14.9、約15.9、約17.0、約17.8、約19.4、約20.2、約20.7、約21.1、約21.5、約22.5、約23.1、約24.4、約25.4、および/または約27.1+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図10に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は表6に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約5.6および約7.7+/−0.5度2θのピークと、任意には約8.5、約10.2、約11.2、約12.3、約13.7、約16.0、約17.9、約19.5、約20.4、約22.5、約23.8、約25.5、約27.3、および/または約27.6+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークとを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図11に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は表7に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約5.6、約6.0、約6.3、約7.7、約8.1、約8.4、約9.5、約10.1、約11.0、約11.2、約11.8、約12.2、約12.5、約13.6、約14.2、約14.9、約15.4、約15.9、約16.3、約17.0、約17.8、約18.9、約19.4、約20.2、約20.7、約21.4、約22.4、約23.8、約24.4および/または約25.4+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図12に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は表8に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約5.6、約6.3、約7.7、約8.5、約9.5、約10.6、約11.2、約12.1、約13.6、約14.6、約15.4、約16.3、約17.0、約17.8、約19.3、約20.7、約21.5、約22.5、約23.1、約23.7および/または約25.3+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図13に示されるとおりのX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は表9に提供されるとおりの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、リナクロチドの結晶形が提供され、この結晶形は、約5.6、約7.0、約7.7、約8.4、約9.5、約10.1、約11.2、約12.4、約13.6、約14.6、約15.8、約16.6、約18.0、約18.9、約19.7、約20.7、約21.4、約22.4、約23.0、約24.1および/または約25.0+/−0.5度2θの1つまたはそれ以上のピークを含むX線粉体回折パターンを有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約3.7、約11.5、および約15.5+/−0.5オングストローム(Å)のd間隔値を有するピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約3.7、約4.5、約11.5、および約15.5+/−0.5オングストローム(Å)のd間隔値を有するピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書で特定の実施形態に対して列挙されるX線粉体回折ピークは、±0.4度2θ、±0.3度2θ、±0.2度2θ、または±0.1度2θだけ変動してもよい。たとえばいくつかの実施形態においては、約5.7、約7.7および約23.8+/−0.3度2θのピークを含むX線粉体(power)回折パターンを有するリナクロチドの結晶形が提供される。
【0050】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約1.4、約1.1、約1.0、約0.9、約0.8、約0.6、約0.5および約0.4+/−3%nmのd間隔値を有するピークを含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0051】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、約1.4、約1.1、約0.8、約0.6、約0.5および約0.4+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0052】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約1.4+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0053】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約1.1+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0054】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約1.0+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0055】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約0.9+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0056】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約0.8+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0057】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約0.6+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0058】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約0.5+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0059】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、約0.4+/−3%nmのd間隔値を含むX線粉体回折パターンを特徴とする。
【0060】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図4に示されるとおりのフーリエ変換赤外スペクトルを特徴とする。
【0061】
いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは、実質的に図5に示されるとおりのDSCサーモグラムを特徴とする。
【0062】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載されるリナクロチドのα結晶形を調製するためのプロセスを提供する。いくつかの実施形態において、胃腸障害の処置に有用なα形リナクロチドを含む薬物を製造するための方法が提供される。たとえば、いくつかの実施形態においては、リナクロチドを結晶化してα形リナクロチドを形成し、任意にはそのα形リナクロチドを単離することによってα形リナクロチドを生成する。いくつかの実施形態においては、水性酸溶液中でリナクロチドを結晶化し、任意にはリナクロチドのα結晶形を単離することによってα形リナクロチドを調製する。これに関して、たとえばさまざまな強度または濃度のあらゆる酸の水溶液など、あらゆる好適な水性酸溶液が用いられてもよい。こうした酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸、酢酸、乳酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、グルタミン酸、フマル酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、安息香酸、マレイン酸およびコハク酸を含んでもよいがそれらに限定されない。いくつかの実施形態において、水性酸溶液は塩酸、臭化水素酸、硝酸、メタンスルホン酸、酢酸、乳酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、安息香酸およびコハク酸から選択される。
【0063】
リナクロチドのα結晶形は、あらゆる好適な態様でアモルファスリナクロチドから同定、識別、および分離されてもよく、その態様はたとえばこれらの異なる形のリナクロチドの回折特性、熱特性および/または分光学的特性の違いに基づくものなどであってもよい。好適なこうした方法はたとえば、X線粉体回折法、毛細管融点決定、熱重量分析(thermogravimetric analysis:TGA)、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry:DSC)、および/または分光学的方法論(たとえばラマン分光法および/または赤外(infrared:IR)分光法など)などを含む。
【0064】
X線粉体回折によって得られたピークの相対強度および位置は、とりわけサンプル調製技術、サンプル取付手順、および使用される特定の機器によって変動し得ることを当業者は理解するであろう。たとえば、付加的な実施形態において、リナクロチドの結晶形に対して列挙されたX線粉体回折パターンピークは約+/−0.2度2θである。
【0065】
α形リナクロチドは、調製物中の他の物質または成分に対してあらゆる所望の純度を有してもよい。実施形態の1つにおいて、本発明は実質的に純粋な、たとえば調製物中の他の物質または成分に対する純度が40%より上、50%より上、60%より上、70%より上、80%より上、85%より上、90%より上、95%より上、96%より上、97%より上、98%より上、99%より上、99.2%より上、99.4%より上、99.6%より上、99.6%より上、または99.9%より上などであるリナクロチドのα結晶形を提供する。
【0066】
例示的な実施形態において、α形リナクロチドは、調製物中の他の物質または成分に対して約45%から95%の純度、たとえば約50%から95%の純度、約55%から90%の純度、約60%から95%の純度、または約70%から99%の純度などである。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約95%から99%の純度である。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約90%から95%の純度である。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約85%から90%の純度である。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約80%から85%の純度である。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約75%から80%の純度である。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約70%から75%の純度である。特定の実施形態において、α形リナクロチドは約65%から70%の純度である。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約60%から65%の純度である。他の実施形態において、α形リナクロチドは約55%から60%の純度である。さらに他の実施形態において、α形リナクロチドは約50%から55%の純度である。いくつかの実施形態において、α形リナクロチドは約45%から50%の純度である。
【0067】
組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、α形リナクロチドと、たとえばリナクロチドと相互作用する1つまたはそれ以上のイオン種などの任意の付加的な成分、添加剤および/または種とを含む組成物、調合物または剤形を提供する。
【0068】
こうした付加的な成分、添加剤および/または種は、単独で投与されてもよいし、組成物、調合物または剤形の活性成分として投与されてもよい。さらに、付加的な成分、添加剤および/または種は、α形リナクロチドより前、後、および/またはそれと同時に投与されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、付加的な成分、添加剤および/または種は、α形リナクロチドとは別に(例、別の調合物または剤形において)患者または対象に投与される。
【0070】
いくつかの実施形態において、任意の付加的な成分、添加剤および/または種は、調合物の活性成分を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、任意の成分は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容できる担体および/または賦形剤を含む。
【0072】
1つの局面において、本発明は、α形リナクロチドと、たとえば加水分解産物、アセチル化産物、ホルミル化産物、酸化産物、水の介在する分解産物(water−mediated degradation product)、および/または脱アミド産物などの分解産物とを含む組成物を提供する。
【0073】
組成物は、加水分解産物(単数または複数)に対するあらゆる所望の純度を含んでもよい。例示的な実施形態において、組成物は組成物の総重量に対して約10重量%未満の加水分解産物(単数または複数)を含み、たとえば約7.5wt.%未満、約5wt.%未満、または約2wt.%未満の加水分解産物(単数または複数)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は約0.05重量%から約5重量%の加水分解産物(単数または複数)を含む。特定の実施形態において、組成物は約0.05重量%から約2重量%の加水分解産物(単数または複数)を含む。特定の実施形態において、組成物は約0.1重量%から約2重量%の加水分解産物(単数または複数)を含んでもよい。
【0074】
代替的または付加的に、組成物はアセチル化産物(単数または複数)に対するあらゆる所望の純度を含んでもよい。例示的な実施形態において、アセチル化産物は組成物の10重量%未満を構成してもよい。例示的な実施形態において、アセチル化産物は組成物の7.5重量%未満を構成してもよい。例示的な実施形態において、アセチル化産物は組成物の5重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、アセチル化産物は組成物の2重量%未満を構成してもよい。他の実施形態において、アセチル化産物は組成物の1重量%未満を構成してもよい。さらに他の実施形態において、アセチル化産物は組成物の0.5重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、アセチル化産物は組成物の約0.05重量%から約5重量%を構成してもよい。いくつかの実施形態において、アセチル化産物は組成物の約0.05重量%から約2重量%を構成してもよい。他の実施形態において、アセチル化産物は組成物の約0.1重量%から約2重量%を構成してもよい。さらに他の実施形態において、アセチル化産物は組成物の約0.1重量%から約2重量%を構成してもよい。
【0075】
代替的または付加的に、組成物はホルミル化産物(単数または複数)に対するあらゆる所望の純度を含んでもよい。例示的な実施形態において、ホルミル化産物は組成物の10重量%未満を構成してもよい。例示的な実施形態において、ホルミル化産物は組成物の7.5重量%未満を構成してもよい。例示的な実施形態において、ホルミル化産物は組成物の5重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、ホルミル化産物は組成物の2重量%未満を構成してもよい。他の実施形態において、ホルミル化産物は組成物の約0.05重量%から約5重量%を構成してもよい。いくつかの実施形態において、ホルミル化産物は組成物の約0.05重量%から約2重量%を構成してもよい。他の実施形態において、ホルミル化産物は組成物の約0.1重量%から約2重量%を構成してもよい。
【0076】
代替的または付加的に、組成物は酸化産物(単数または複数)に対するあらゆる所望の純度を含んでもよい。いくつかの実施形態において、酸化産物は組成物の10重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、酸化産物は組成物の7.5重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、酸化産物は組成物の5重量%未満を構成してもよい。他の実施形態において、酸化産物は組成物の2重量%未満を構成してもよい。さらに他の実施形態において、酸化産物は組成物の約0.05重量%から約5重量%を構成してもよい。例示的な実施形態において、酸化産物は組成物の約0.05重量%から約2重量%を構成してもよい。さらに他の実施形態において、酸化産物は組成物の約0.1重量%から約2重量%を構成してもよい。
【0077】
代替的または付加的に、組成物は水の介在する分解産物(単数または複数)に対するあらゆる所望の純度を含んでもよい。いくつかの実施形態において、水の介在する分解産物(単数または複数)は組成物の10重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、水の介在する分解産物(単数または複数)は組成物の7.5重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、水の介在する分解産物(単数または複数)は組成物の5重量%未満を構成してもよい。他の実施形態において、水の介在する分解産物(単数または複数)は組成物の2重量%未満を構成してもよい。さらに他の実施形態において、水の介在する分解産物(単数または複数)は組成物の約0.05重量%から約5重量%を構成してもよい。例示的な実施形態において、水の介在する分解産物(単数または複数)は組成物の約0.05重量%から約2重量%を構成してもよい。さらに他の実施形態において、水の介在する分解産物(単数または複数)は組成物の約0.1重量%から約2重量%を構成してもよい。
【0078】
代替的または付加的に、組成物は脱アミド産物(単数または複数)に対するあらゆる所望の純度を含んでもよい。いくつかの実施形態において、脱アミド産物は組成物の10重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、脱アミド産物は組成物の7.5重量%未満を構成してもよい。いくつかの実施形態において、脱アミド産物は組成物の5重量%未満を構成してもよい。他の実施形態において、脱アミド産物は組成物の2重量%未満を構成してもよい。さらに他の実施形態において、脱アミド産物は組成物の約0.05重量%から約5重量%を構成してもよい。例示的な実施形態において、脱アミド産物は組成物の約0.05重量%から約2重量%を構成してもよい。さらに他の実施形態において、脱アミド産物は組成物の約0.1重量%から約2重量%を構成してもよい。
【0079】
別の局面において、本発明は、α形リナクロチドと、組み合わされた総量の10wt.%未満(たとえば8wt.%未満、6wt.%未満、5wt.%未満、4wt.%未満、3wt.%未満、2wt.%未満、1wt.%未満、0.5wt.%未満、または0.25wt.%未満など)の分解産物、たとえば加水分解産物、ホルミル化産物、酸化産物、水の介在する分解産物、および/または脱アミド産物などとを含む組成物を提供する。
【0080】
別の局面において、本発明は、α形リナクロチドと、20wt.%未満(たとえば18wt.%未満、16wt.%未満、14wt.%未満、12wt.%未満、10wt.%未満、8wt.%未満、6wt.%未満、5wt.%未満、4wt.%未満、3wt.%未満、2wt.%未満、1wt.%未満、0.5wt.%未満、または0.25wt.%未満など)の組み合わされた総量の分解産物、たとえば加水分解産物、アセチル化産物、ホルミル化産物、酸化産物、水の介在する分解産物、および/または脱アミド産物などとを含む組成物を提供する。
【0081】
1つの局面において、本発明は、α形リナクロチドと多量体とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態においては、ジスルフィド結合によって多量体が形成されてもよい。いくつかの実施形態においては、非ジスルフィド結合によって多量体が形成されてもよい。いくつかの実施形態において、組成物は多量体に対するあらゆる所望の純度を含んでもよい。いくつかの実施形態において、組成物は約20wt.%未満の多量体、たとえば約18wt.%未満、約16wt.%未満、約14wt.%未満、約12wt.%未満、約10wt.%未満、約8wt.%未満、約6wt.%未満、約5wt.%未満、約4wt.%未満、約3wt.%未満、約2wt.%未満、約1wt.%未満、約0.5wt.%未満、または約0.1wt.%未満などの多量体を含む。
【0082】
いくつかの実施形態においては、組成物はα形リナクロチドと二量体とを含んでもよい。いくつかの実施形態において、組成物は約20wt.%未満の二量体、たとえば約18wt.%未満、約16wt.%未満、約14wt.%未満、約12wt.%未満、約10wt.%未満、約8wt.%未満、約6wt.%未満、約5wt.%未満、約4wt.%未満、約3wt.%未満、約2wt.%未満、約1wt.%未満、約0.5wt.%未満、または約0.1wt.%未満などの二量体を含む。
【0083】
別の局面において、本発明は、α形リナクロチドと異性体とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は約20wt.%未満の異性体、たとえば約18wt.%未満、約16wt.%未満、約14wt.%未満、約12wt.%未満、約10wt.%未満、約8wt.%未満、約6wt.%未満、約5wt.%未満、約4wt.%未満、約3wt.%未満、約2wt.%未満、約1wt.%未満、約0.5wt.%未満、または約0.1wt.%未満などの異性体を含む。
【0084】
1つの局面において、本発明は、α形リナクロチドと、約40wt%未満、たとえば約30wt.%未満、約20wt.%未満、約15wt.%未満、約10wt.%未満、約8wt.%未満、約6wt.%未満、約5wt.%未満、約4wt.%未満、約3wt.%未満、約2wt.%未満、約1wt.%未満、約0.5wt.%未満、約0.1wt.%未満、または約0.01wt.%未満などのアモルファスリナクロチドとを含む組成物を提供する。
【0085】
例示的な実施形態において、本発明は、約50:50から99:1のα形リナクロチド対アモルファスリナクロチド、たとえば約55:45から95:5のα形リナクロチド対アモルファスリナクロチド、約60:40から90:10のα形リナクロチド対アモルファスリナクロチド、約70:30から85:15のα形リナクロチド対アモルファスリナクロチド、または約75:25から99:1のα形リナクロチド対アモルファスリナクロチドなどを含む組成物を提供する。
【0086】
本明細書に記載されるα形リナクロチドを含む調合物および調製物は、たとえばthe Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association(現行版);Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Lieberman,LachmanおよびSchwartz、編集者)現行版、Marcel Dekker,Inc.発行、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences(Arthur Osol、編集者),1553−1593(現行版)に記載されるものなど、あらゆる好適な態様で調製されてもよい。
【0087】
本発明の投与は、患者の必要性に従って、たとえば経口、経鼻、非経口(例、皮下、静脈内、筋内、胸骨内、および/または注入)、吸入、直腸内、経膣、局所、および/または眼内投与など、あらゆる好適な態様で行なわれてもよい。
【0088】
本発明を投与するために、たとえばあらゆる好適な経口剤形(例、固体経口剤形)など、さまざまな剤形が用いられてもよい。特に、たとえば本発明は錠剤、ジェルキャップ、カプセル、カプレット、顆粒、トローチ剤、および原薬粉末の形で投与されてもよい。α形リナクロチドは単独で投与されてもよいし、当該技術分野において公知のさまざまな医薬的に許容できる担体、希釈剤(スクロース、マンニトール、ラクトース、デンプンなど)および賦形剤と組み合わされてもよく、その担体、希釈剤および賦形剤は、懸濁剤、可溶化剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、保存剤、着色剤、香料、潤滑剤などを含むがそれに限定されない。徐放性カプセル、錠剤およびゲルも、本発明の化合物を投与するのに有利である。
【0089】
水性および非水性溶液、エマルション、懸濁液、シロップ、ならびにエリキシル剤を含むさまざまな液体経口剤形も、α形リナクロチドを投与するために用いられ得る。こうした剤形は、当該技術分野において公知の好適な不活性希釈剤、たとえば水および当該技術分野において公知の好適な賦形剤、たとえば保存剤、湿潤剤、甘味料、香料など、ならびに本発明の化合物を乳化および/または懸濁するための薬剤なども含み得る。α形リナクロチドは、たとえば等張性の無菌溶液の形で静脈内に注射されてもよい。
【0090】
たとえばカカオバター、サリチル酸塩およびポリエチレングリコールなどの好適な賦形剤と化合物とを混合することによって、α形リナクロチドの直腸内投与のための座薬を調製してもよい。
【0091】
局所投与に対して、医薬組成物は、皮膚、眼、耳または鼻への投与に好適なクリーム、軟膏、リニメント、ローション、エマルション、懸濁液、ゲル、溶液、ペースト、粉末、スプレー、および液滴の形であってもよい。局所投与は、経皮パッチなどの手段による経皮投与も含み得る。
【0092】
吸入による投与に好適なエアロゾル調合物が作られてもよい。たとえば、気道の障害の処置に対しては、粉末(例、微粒子化)の形または微粒化溶液もしくは懸濁液の形の吸入によって、本発明に従う化合物が投与されてもよい。エアロゾル調合物は、加圧された許容可能な噴霧剤の中に入れられてもよい。
【0093】
処置の方法
本発明は、1つまたはそれ以上の胃腸障害(たとえば過敏性大腸症候群、便秘優位型過敏性大腸症候群、慢性便秘、オピオイド誘発性便秘および/または消化不良など)と診断された患者(例、哺乳動物またはヒト)における胃腸障害を処置する方法を提供し、この方法は、前記患者に有効量のα形リナクロチド(または前記α形リナクロチドと、本明細書に記載される任意の付加的な成分、添加剤および/もしくは種とを含む組成物)を投与するステップを含む。
【0094】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと、医薬的に許容できる担体および/または賦形剤とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0095】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと分解産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0096】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと加水分解産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0097】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドとアセチル化産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0098】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと酸化産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0099】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドとホルミル化産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0100】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと脱アミド産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0101】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと多量体産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0102】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと二量体産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0103】
例示的な実施形態において、この方法は、α形リナクロチドと異性体産物とを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0104】
対象の所望の結果(所望の処置および/または症状緩和など)を達成するために必要なα形リナクロチドの有効量は、たとえば処置される障害の同一性および深刻度、ならびに処置される患者の年齢、体重などのいくつかの分かっている要素に依存する。
【0105】
治療的化合物の投与が疾患または障害の有効な治療法となるような対象または患者は、好ましくはヒトであるが、臨床試験またはスクリーニングまたは活性実験の状況における実験動物を含むあらゆる動物であってもよい。よって、通常の当業者に容易に認識され得るとおり、本発明の方法、化合物および組成物は、あらゆる動物、特に哺乳動物であって、ヒト、飼育動物、たとえばネコまたはイヌの対象など、家畜、たとえばウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、およびブタの対象などであるがそれに限定されない動物、野生動物(野生のものまたは動物園にいるもの)、研究用動物、たとえばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなど、鳥種、たとえばニワトリ、シチメンチョウ、鳴禽などを含むが決してそれに限定されない動物への投与、すなわち獣医学的使用に特に好適である。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は単独療法として投与される。他の実施形態において、本発明の化合物は併用療法の部分として投与される。たとえば、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患または状態の処置/予防/抑制および/または改善に用いられる他の薬物または療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0107】
こうした他の薬物(単数または複数)は、通常用いられる経路および量で、本発明の化合物と同時または逐次的に投与されてもよい。本発明の化合物が1つまたはそれ以上の他の薬物と同時に用いられるとき、本発明の化合物に加えてこうした他の薬物を含有する医薬単位剤形が用いられてもよい。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1つまたはそれ以上の他の活性成分をも含有する医薬組成物を含む。
【0108】
以下の実施例は本発明を単に例示するものであって、いかなる態様でも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。なぜなら、本開示を読むことによって当業者には本発明に包含される多くの変形物および同等物が明らかになるためである。
【実施例】
【0109】
(実施例1)
リナクロチドのα結晶形の調製
実施例1A:
100mgのリナクロチドを、10mlの水性酸溶液(たとえば0.1Nの塩酸など)に加えた。マグネチックスターラを用いて、混合物を室温にて30〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を室温条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図2はリナクロチドのα結晶形のX線回折パターンを示す。
【0110】
実施例1B:
100mgのリナクロチドを、10mlの水性酸溶液(たとえば0.1Nの塩酸など)に加えた。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を室温条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドの結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。
【0111】
実施例1C:
100mgのリナクロチドを、10mlの水性酸溶液(たとえば0.1Nの塩酸など)に加えた。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を4℃にて保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドの結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。
【0112】
実施例1D:
100mgのリナクロチドを、10mlの水性酸溶液(たとえば0.1Nの塩酸など)に加えた。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れた。秤量された量の塩(たとえば塩化ナトリウムなど)を濾液に加え、室温条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドの結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。
【0113】
実施例1E:
100mgのリナクロチドを、10mlの水性酸溶液(たとえば0.1Nの塩酸など)に加えた。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れた。秤量された量の塩(たとえば塩化ナトリウムなど)を濾液に加え、4℃にて保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドの結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。
【0114】
実施例1F:
100mgのリナクロチドを、既知の量のポリマー(たとえばポリビニルピロリドンなど)を含有する10mlの水性酸溶液(たとえば0.1Nの塩酸など)に加えた。回転振とう機を用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて6〜48時間振とうした。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れた。秤量された量の塩(たとえば塩化ナトリウムなど)を濾液に加え、4℃にて保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドの結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。
【0115】
実施例1においては、広角ベンチトップX線回折計(MiniFlex,Rigaku/MSC Inc.,Woodlands,TX)を用いて、サンプルのX線粉体(power)回折パターンを定めた。サンプルをゼロバックグラウンドホルダにロードして、CuKα放射線(30kV×15mA)に露出させた。機器をステップ−スキャンモードで、0.05°2θの増分にて動作した。角度範囲は5から40°2θであり、スキャン速度は0.1°2θ/minであった。商業的に入手可能なソフトウェア(JADE,バージョン7.1,Materials Data,Inc.,Livermore,CA)によってデータ回収および分析を行なった。
【0116】
(実施例2)
リナクロチドのα結晶形のXRPD分析
この実施例においては、実施例1A〜1Fで調製されたリナクロチドのα結晶形を調製して、第2の広角ベンチトップX線回折計(Model D8,Bruker AXS Inc.,Madison WI)を用いて分析した。広角ベンチトップX線回折計(Model D8,Bruker AXS Inc.,Madison WI)において、少量のサンプルをゼロバックグラウンドホルダにロードして、CuKα放射線(40kV×40mA)に露出させた。機器をステップ−スキャンモードで、0.05°2θの増分にて動作した。角度範囲は5から30°2θであり、スキャン速度は0.05〜0.1°2θ/minの範囲であった。商業的に入手可能なソフトウェア(JADE,バージョン7.1,Materials Data,Inc.,Livermore,CA)によってデータ回収および分析を行なった。
【0117】
実施例2A:
100mgのリナクロチドを、0.1Nの塩酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を室温にて30〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を室条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図3はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表1に提供されている。
【0118】
【表1】

α形リナクロチドの小さいサンプル(約1mg)をDurascope(商標)ダイアモンドステージにロードし、減衰全拡散反射率(attenuated total diffuse reflectance:ATR)モードを用いるFT−IR分光計においてそれをIRビームに露出させることによって、α形リナクロチドのフーリエ変換赤外分光法による分析も行なった。すべてのスペクトルは、4000〜525cm−1の波数、300スキャンおよび2cm−1の分解能にて実行された。α形リナクロチドに対するフーリエ変換赤外スペクトルを図4に示す。
【0119】
冷蔵冷却付属物を有する示差走査熱量計(MDSC Q1000,TA Instruments,New Castle,DE)を用いたα形リナクロチドの分析も行なった。この機器をインジウムの純粋なサンプルによって較正した。開いた非気密性の蓋付きアルミニウムパンにおいて約2〜5mgのサンプルを秤量し、乾燥窒素パージ(流速50ml/min)の下で10℃/minにて加熱した。Universal Analysis 2000(TA instruments,New Castle,DE)を用いてデータを分析した。α形リナクロチドのDSCサーモグラムを図5に示す。
【0120】
実施例2B:
100mgのリナクロチドを、0.1Nの塩酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を室温条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図6はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表2に提供されている。
【0121】
【表2】

実施例2C:
100mgのリナクロチドを、0.1Nの塩酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を4℃にて保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図7はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表3に提供されている。
【0122】
【表3】

実施例2D:
100mgのリナクロチドを、0.1Nの塩酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れた。秤量された量の塩化ナトリウムを濾液に加え、室条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図8はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表4に提供されている。
【0123】
【表4】

実施例2E:
100mgのリナクロチドを、0.1Nの塩酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて10〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れた。秤量された量の塩化ナトリウムを濾液に加え、4℃にて保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図9はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表5に提供されている。
【0124】
【表5】

実施例2F:
100mgのリナクロチドを、既知の量のポリマー(たとえばポリビニルピロリドンなど)を含有する0.1Nの塩酸と混合した。回転振とう機を用いて、混合物を20℃から65℃の範囲の温度にて6〜48時間振とうした。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れた。秤量された量の塩化ナトリウムを濾液に加え、4℃にて保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図10はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表6に提供されている。
【0125】
【表6】

実施例2G:
100mgのリナクロチドを、0.1Nの硝酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を室温にて30〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を室温条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図11はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表7に提供されている。
【0126】
【表7】

実施例2H:
100mgのリナクロチドを、0.1Nのメタンスルホン酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を室温にて30〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を室温条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図12はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表8に提供されている。
【0127】
【表8】

実施例2I:
100mgのリナクロチドを、0.1Nの臭化水素酸と混合した。マグネチックスターラを用いて、混合物を室温にて30〜60分間撹拌した。懸濁液を注意深く濾過してガラス容器に入れ、濾液を室条件下で保存した。好適な形成期間の後、リナクロチドのα結晶形を注意深く単離し、洗浄し、乾燥して、粉体X線回折法を用いて分析した。図13はリナクロチドの結晶形に対するX線粉体回折パターンを示す。XRDに対するピーク位置が表9に提供されている。
【0128】
【表9】

(実施例3)
リナクロチドの含有量および純度の測定
逆相高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography:HPLC)を用いて、アモルファスおよび結晶リナクロチドの相対化学純度および安定性を調べた。逆相高速液体クロマトグラフィと質量分析法(mass spectroscopy)とを組み合わせたもの(HPLC−MS)を用いて、化学的同定を行なった。質量分光分析は、増強(Enhance)MSスキャン(EMS)モードで、正のイオン化および600〜1600のスキャン範囲(m/z)にて行なわれた。
【0129】
方法
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)
Perkin Elmerシリーズ200 LC機器(Perkin Elmer,Waltham,MA)を、YMC Pro C18カラム(150mm×3.0mm,3μm)(Waters Corporation,Milford,MA)とともに用いた。カラム温度を40℃に設定し、ペルチェトレイを用いて自動サンプラの温度を4℃に維持した。注入体積は50μlであった。以下の2つの溶剤で構成される勾配法(0.6ml/分)を用いた;A(97.9%の水、2%のアセトニトリル、0.1%のトリフルオロ酢酸)およびB(94.9%のアセトニトリル、5%の水、0.1%のトリフルオロ酢酸)。勾配は表10に記載されるスキームに従って設定された。UV検出器を用いて、220nmにて溶出物を検出した。
【0130】
【表10】

高速液体クロマトグラフィ−質量分析法(HPLC−MS)
Perkin Elmerシリーズ200 LC−MS機器(Perkin Elmer,Waltham,MA)を、Pursuit XR C18カラム(150×2mm、3μm)とともに用いた。カラム温度を40℃に設定し、ペルチェトレイを用いて自動サンプラの温度を4℃に維持した。注入体積は5μlであった。以下の2つの溶剤で構成される勾配法(0.25ml/分)を用いた;A(水中の0.1%トリフルオロ酢酸)およびB(アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸)。勾配は表11に記載されるスキームに従って設定された。UV検出器を用いて、220nmにて溶出物を検出した。質量分光分析は、増強MSスキャン(EMS)モードで、正のイオン化および600〜1600のスキャン範囲(m/z)にて行なわれた。
【0131】
【表11】

結果
実施例1Aおよび2Aにおいて調製された沈殿物は、HPLC−MS分析に基づきリナクロチドとして化学的に同定された。沈殿物の純度は95%から100%の範囲であることが見出された。
【0132】
次いで、リナクロチドのα結晶形の固体化学的安定性をアモルファス形リナクロチドのものと比較した。既知量のテスト材料を45ccの高密度ポリエチレン瓶に入れた。瓶を誘導密封し、40℃/75%RH安定性チャンバに入れた。次いで、2週間、1ヵ月、2ヵ月、および3ヵ月の時点で2本の瓶を取出し、アッセイのために適切に希釈した後分析した。基準化したアッセイの結果を表12に示す。
【0133】
【表12】

アモルファスおよびα形のリナクロチドの残りそれぞれ19.2%および4.1%は、多量体を含んでいる可能性がある。
【0134】
表12に示されるとおり、この研究条件下で、リナクロチドのα結晶形はアモルファスリナクロチドよりも実質的に良好な安定性プロファイルを有することが見出された。加えて、示されるとおり、リナクロチドのα結晶形は分解産物の濃度が有意に低く、さらに多量体形成が有意に少なかった。
【0135】
表13に示されるとおり、誘導密封された45ccの高密度ポリエチレン瓶中で40℃/75%RHにて3ヵ月間保存された後、リナクロチドのα結晶形は、アモルファスリナクロチドに比べて低濃度の分解産物(水の介在する脱アミドおよび加水分解)および非ジスルフィド結合多量体を有することも見出された。他方で、酸誘導加水分解は結晶形において顕著であった。
【0136】
【表13】

(実施例4)
リナクロチド加水分解産物の単離および調製
位置7のAsnをAspに転換することによって、リナクロチド加水分解産物を調製した(リナクロチドの番号付けはN末端Cysの1から始まる)。固相ペプチド合成技術を用いて、リナクロチド加水分解産物を合成した。リナクロチド加水分解産物の構造を下に示す。
【0137】
【化1】

リナクロチド加水分解産物は、当該技術分野において公知のその他の方法、たとえばクロマトグラフィ技術を用いたリナクロチド調製物からの単離、またはリナクロチド加水分解産物(CCEYCCDPACTGCY)をコードする核酸の組換え発現、および任意にはその後のシステイン残基の酸化によるジスルフィド結合の形成などによって調製されてもよい。
【0138】
本発明の例示的な実施形態を参照して本発明を示し、説明したが、こうした参照は本発明に対する制限を意味するものではなく、こうした制限が推測されるべきではない。この開示の利益を有する関連技術分野の通常の当業者が考えつくとおり、本発明は、形および機能のかなりの修正、変更および同等物が可能である。
【0139】
実施例において示され、かつ本出願において考察されるとおり、リナクロチドのこの結晶形は、アモルファスリナクロチドおよび/またはリナクロチドの他の結晶形に比べて、驚くほどの予想外の物理的特性(例、安定性特性)を有する。さらにリナクロチドのこの結晶形は、他の活性または不活性成分との相乗作用を有することによって、本発明の1つまたはそれ以上の結晶形を含む医薬組成物の性能特徴または特性を増強してもよい。
【0140】
示され説明された本発明の実施形態は単に例示的なものであって、本発明の範囲を網羅するものではない。したがって本発明は、添付の請求項の趣旨および範囲によってのみ制限されることが意図され、すべての点における同等性に対する完全な認識を与える。
【0141】
本明細書において引用されるすべての参考文献は、その全体にわたって引用により援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リナクロチドのα結晶形。
【請求項2】
約7.8および約23.9+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
約6.2、約7.8および約23.9+/−0.5度2θのピークを有するX線粉体回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶形。
【請求項4】
約6.2、約7.8、約19.5、約22.6、および約23.9+/−0.5度2θのピークを有するX線粉体回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶形。
【請求項5】
実質的に図2に示されるとおりのX線粉体回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶形。
【請求項6】
約5.7、約7.7および約23.8+/−0.5度2θのピークを含むX線粉体回折パターンを有する、リナクロチドの結晶形。
【請求項7】
前記X線粉体回折パターンは、約19.4+/−0.5度2θのピークおよび/または約22.5+/−0.5度2θのピークをさらに含む、請求項6に記載の結晶形。
【請求項8】
前記X線粉体回折パターンは、約19.4および約22.5+/−0.5度2θのピークをさらに含む、請求項6に記載の結晶形。
【請求項9】
約3.7、約11.5、および約15.5+/−0.5オングストロームのd間隔ピークをさらに含むX線粉体回折パターンを有する、請求項6に記載の結晶形。
【請求項10】
請求項1に記載の結晶形を含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項6に記載の結晶形を含む、医薬組成物。
【請求項12】
リナクロチドのα結晶形を調製するためのプロセスであって、リナクロチドを結晶化してリナクロチドのα結晶形を形成するステップと、任意にリナクロチドの前記α結晶形を単離するステップとを含む、プロセス。
【請求項13】
胃腸障害を処置する方法であって、処置を必要とする患者に請求項1に記載の結晶形を投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
前記胃腸障害は便秘優位型過敏性大腸症候群である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記胃腸障害は慢性便秘である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
胃腸障害を処置する方法であって、処置を必要とする患者に請求項6に記載の結晶形を投与するステップを含む、方法。
【請求項17】
前記胃腸障害は便秘優位型過敏性大腸症候群である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記胃腸障害は慢性便秘である、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−509281(P2012−509281A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536620(P2011−536620)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/065001
【国際公開番号】WO2010/059733
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511039371)アイロンウッド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】