説明

リニアコンベア

【課題】位置補正用データの管理負担を伴うことなく搬送台車を高い精度で位置決めする。
【解決手段】リニアコンベアは、複数の電磁石ユニット26を含み、電磁石ユニット26毎に個別に通電制御が可能なリニアモータ固定子7と、永久磁石44からなるリニアモータ可動子8及び位置補正用データが記憶されたRFタグ55をそれぞれ備える複数のスライダ4と、各電磁石ユニット26の通電制御を個別に行う複数のモータコントローラCと、RFタグ55の情報を読み取るリーダライタ60と、を備える。各モータコントローラCはそれぞれ、リーダライタ60が読み取った各スライダ4の位置補正用データを記憶しておき、スライダ4を目標位置で停止させる際には、対象となるスライダ4の位置補正用データを用いて目標停止位置を補正し、この補正後の目標停止位置に基づいて電磁石ユニット26への通電制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータを駆動源とするリニアコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアモータを駆動源として、基台上に敷設されたレールに沿って搬送台車(スライダ)を移動させるリニアコンベアが公知である(例えば、特許文献1)。この種のリニアコンベアは、その用途により搬送経路長が長い場合や、必要に応じて搬送台車の脱着が求められる場合があるため、前記リニアモータとしていわゆる可動磁石型リニアモータが適用される場合が多い。この可動磁石型リニアモータは、具体的には、電磁石(界磁磁石)がリニアモータ固定子として基台上に複数一列に配置されて固定される一方で、永久磁石がリニアモータ可動子として搬送台車に固定され、電磁石を構成するコイルへの電流供給が制御されることで搬送台車に推進力が与えられる。そして、搬送台車に固定されるスケールと基台側に配置される複数のセンサとからなるリニアスケールが組み込まれ、このリニアスケールによる位置検出に基づき前記電磁石への電流供給が制御されることで、特定位置への搬送台車の移動が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−98786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のリニアコンベアでは、ユーザによって求められる搬送経路の形態(直線状又は環状)や搬送経路長が異なる場合があり、また、後発的に搬送経路の形態や搬送経路長の変更を求められる場合がある。このようなニーズに容易に対応するためには、リニアコンベアをユニット化することが考えられる。すなわち、前記基台、レール、電磁石及びリニアスケールのセンサを含むユニット部材を構成し、当該ユニット部材を連結してリニアコンベアを構成するとともに、各ユニット部材の電磁石の電流供給を個別にモータ制御装置で制御するのが合理的である。
【0005】
しかし、この場合には次のような課題が考えられる。すなわち、各搬送台車はそれぞれ、加工誤差や組立誤差による固有の移動誤差を有するため、搬送台車を高い精度で位置決めするには、予めこの固有の移動誤差を調べ、搬送台車毎にその移動誤差を補正する必要がある。従って、上記のようにリニアコンベアをユニット化する場合には、各ユニット部材のモータ制御装置に、搬送台車の移動誤差を補正するためのデータ(位置補正用データ)をそれぞれ記憶させておき、その位置補正用データを用いて電磁石の電流供給を制御する必要がある。そのため、多数の搬送台車を含むリニアコンベアでは、作業者が各モータ制御装置にそれぞれ各搬送台車の位置補正用データを格納する(記憶させる)作業が必要となり煩雑となる場合がある。また、後発的に搬送経路長や形態が変更され、あるいは搬送台車が追加される場合などには、作業者が意識して各コントローラの位置補正用データの有無を管理する必要が生じ、このような管理作業を怠ると、搬送台車の位置決め精度を確保することが難しくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、リニアモータ固定子を複数の区間に分割して個別に制御するようにしながらも、各モータ制御装置における位置補正用データの管理負担を伴うことなく搬送台車を高い精度で位置決めできるリニアコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、本発明のリニアコンベアは、所定の搬送経路に沿って配列される複数の電磁石を含み、かつ所定の区間毎に個別に通電制御を受けることが可能なリニアモータ固定子と、前記リニアモータ固定子と協働してリニアモータを構成する、永久磁石からなるリニアモータ可動子及び所定の固有情報が記憶された固有情報記憶手段をそれぞれ備え、かつ前記搬送経路に沿って移動自在に設けられる複数の搬送台車と、前記リニアモータ固定子の前記各区間にそれぞれ対応して設けられ、前記区間毎に個別に前記電磁石の通電制御を行う複数のモータ制御装置と、前記固有情報記憶手段に記憶される前記固有情報を読み取る読取手段と、を備え、前記固有情報記憶手段は、前記固有情報として、前記搬送台車の固有の移動誤差を補正するための位置補正用データを記憶しており、前記複数のモータ制御装置はそれぞれ、目標停止位置で搬送台車を停止させるべく、前記読取手段が読み取った前記位置補正用データ又は当該位置補正用データを用いて処理された処理データの何れかを制御用データとして、当該制御用データを用いて前記電磁石の通電制御を行うものである。
【0008】
このリニアコンベアでは、搬送台車が有する固有の移動誤差を補正するための位置補正用データが各搬送台車に記憶されており、読み取り手段がこの位置補正用データを読み取ることにより、各モータ制御装置がそれぞれ、その位置補正用データ(又は処理データ)を用いて担当する区間の電磁石の通電制御を行う。そのため、各搬送台車の位置補正用データを作業者がいちいち各モータ制御装置に記憶させる等の煩雑な作業を伴うことなく搬送台車を高い精度で位置決めすることが可能となる。
【0009】
なお、このリニアコンベアにおいては、複数のモータ制御装置それぞれに対応して前記読取手段を設けてもよいが、この場合には、搬送台車の数に応じた多数の読取手段が必要となり、コスト高になる。従って、上記のリニアコンベアにおいては、情報の伝送が可能となるように前記各モータ制御装置を繋ぐネットワーク手段と、このネットワーク手段による情報の伝送を制御する伝送制御手段と、をさらに備え、前記読取手段は、前記モータ制御装置の数よりも少ない地点であって前記搬送経路の予め定められた特定の地点にのみ配置され、前記伝送制御手段は、前記各モータ制御装置に対して前記制御用データを伝送するものでるのが好適である。この場合、例えば特定の地点が一箇所であれば、より一層コストを抑えることが可能となる。
【0010】
この構成によれば、特定の地点に配置された読取手段により各搬送台車の位置補正用データが読み取られて各モータ制御装置に伝送される。そのため、各モータ制御装置にそれぞれ対応して読取手段を設けることによるコスト高を抑えることが可能となる。
【0011】
なお、上記リニアコンベアのより具体的な構成として、前記固有情報記憶手段は、前記固有情報として前記搬送台車を識別することが可能な識別データをさらに記憶し、前記読取手段は、前記位置補正用データに加えて前記識別データを読み取り、前記伝送制御手段は、前記読取手段が読み取った前記位置補正用データ及び前記識別データを各モータ制御装置に伝送するものであって、前記各モータ制御装置はそれぞれ、前記各搬送台車の識別データと前記位置補正用データとを対応付けて記憶するデータ記憶手段を備え、かつ、搬送台車を前記目標停止位置で停止させる際には、前記データ記憶手段に記憶された前記位置補正用データのうち対象となる搬送台車の位置補正用データに基づき前記目標停止位置を補正し、当該補正後の目標停止位置に基づき前記電磁石の通電制御を行う。
【0012】
この構成では、各モータ制御装置のデータ記憶手段に全ての搬送台車の位置補正用データが記憶され、各モータ制御装置はそれぞれ、データ記憶手段に記憶された位置補正用データを用いて搬送台車の目標停止位置を補正し、この補正後の目標停止位置に基づき電磁石の通電制御を行う。
【0013】
この場合、前記読取手段が読み取った前記識別データの順番に基づき前記搬送経路上に並ぶ搬送台車の配列順番を記憶する配列順番記憶手段を備え、前記各モータ制御装置は、前記ネットワーク手段を介して搬送経路上の搬送台車の配置状況を参照し、その参照結果と、前記読取手段に読み取られる前記識別データと、前記データ記憶手段に記憶されている配列順番とに基づき前記対象となる搬送台車を特定するものであるのが好適である。
【0014】
この構成によれば、搬送経路上を移動する複数の搬送台車のうちから、各モータ制御装置が、目標停止位置で停止させるべき搬送台車を容易に特定することが可能となる。この場合、前記読取手段が読み取った前記識別データの順番に基づき前記搬送経路上に並ぶ搬送台車の配列順番を各モータ制御装置のデータ記憶手段、又は特定の一のモータ制御装置のデータ記憶部が記憶することにより、当該データ記憶手段が前記伝送制御手段として機能するようにしてもよい。
【0015】
また、リニアコンベアの別の具体的な構成として、前記伝送制御手段は、前記各搬送台車の識別データと前記位置補正用データとを対応付けて記憶するデータ記憶手段を含み、かつ、搬送台車を前記目標停止位置で停止させる際には、前記データ記憶手段に記憶された前記位置補正用データのうち対象となる搬送台車の位置補正用データに基づき前記目標停止位置を補正し、前記制御用データとして当該補正後の目標停止位置を示すデータを前記各モータ制御装置に伝送するものであり、前記各モータ制御装置はそれぞれ、前記補正後の目標停止位置に基づいて前記電磁石の通電制御を行うものであってもよい。
【0016】
この構成では、伝送制御手段のデータ記憶手段に全ての搬送台車の位置補正用データが記憶される。そして、この伝送制御手段で搬送台車の目標停止位置が補正され、各モータ制御装置が、補正後の目標停止位置のデータを受けて電磁石の通電制御を行う。
【0017】
この場合、前記データ記憶手段は、前記読取手段が読み取った前記識別データの順番に基づき前記搬送経路上に並ぶ搬送台車の配列順番をさらに記憶し、前記伝送制御手段は、前記ネットワーク手段を介して搬送経路上の搬送台車の配置状況を参照し、その参照結果と、前記読取手段に読み取られる前記識別データと、前記データ記憶手段に記憶されている配列順番とに基づき前記対象となる搬送台車を特定するものであるのが好適である。
【0018】
この構成によれば、搬送経路上を移動する複数の搬送台車のうちから、伝送制御手段が、目標停止位置で停止させるべき搬送台車を容易に特定することが可能となる。
【0019】
なお、上記リニアコンベアにおいて、前記伝送制御手段は、各モータ制御装置と別個独立に設けられるものであってもよいが、前記リニアモータ固定子の複数の区間のうち特定の区間の通電制御を行うモータ制御装置が前記伝送制御手段としての機能を備えるものであるのが好適である。
【0020】
この構成によれば、前記伝送制御手段の機能をモータ制御装置がもつことで装置構成が合理化され、又コストも抑えられる。
【0021】
また、読取手段が配置される前記特定の地点は、各搬送台車の固有情報を読み取り可能な位置であればよく、搬送経路上の複数の地点であってもよい。その場合、搬送台車の所定の搬送起点又はこれに近接する位置を含むのが好適である。また、前記搬送起点又はこれに近接する位置で前記搬送経路内に前記搬送台車を挿入することが可能な挿入機構をさらに備える場合には、前記読取手段は、この挿入機構の位置に配置されているのが好適である。この場合、搬送起点は、全ての搬送台車について共通の地点(位置)であってもよいし、グループ分けされた複数の搬送台車毎に個別に設定された複数の地点であってもよい。従って、搬送起点が複数の地点である場合には、複数の挿入機構を備えるものであってもよい。
【0022】
これらの構成によれば、所定の搬送起点から搬送台車が移動を開始する際に、若しくは搬送経路内に搬送台車が挿入される際に、当該搬送台車の位置補正用データが読み取られる。特に、挿入機構によって搬送経路内に搬送台車が挿入される際に位置補正用データを読み取る構成によれば、搬送台車が停止又は低速移動の状態にあるため、補正用データの読み取り精度が向上する。
【0023】
また、上記リニアコンベアは、前記搬送経路を形成するためのレール部材と当該レール部材に沿ってそれぞれ配置される前記電磁石とをそれぞれ含む複数のユニット部材を有し、これらユニット部材が前記レール部材の長手方向に直列に連結されていることにより、前記レール部材により前記搬送経路が形成されるとともに前記電磁石により前記リニアモータ固定子が形成されており、前記各モータ制御装置はそれぞれ、前記リニアモータ固定子の一区間として前記ユニット部材に含まれる前記電磁石の通電制御を行うものであるのが好適である。
【0024】
この構成によれば、リニアコンベアにおける搬送経路長の自由度が向上するとともに、後発的な搬送経路長の変更にも柔軟に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明のリニアコンベアによれば、各搬送台車に、位置補正用データが記憶された固有情報記憶手段が設けられており、読み取り手段が前記位置補正用データを読み取ることで、各モータ制御装置がそれぞれ、その位置補正用データを用いて担当する区間の電磁石の通電制御を行う。従って、リニアモータ固定子を複数の区間に分割して個別にモータ制御装置で通電制御を行いながらも、各モータ制御装置に位置補正用データを記憶させるといった管理負担を伴うことなく搬送台車を高い精度で位置決めすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るリニアコンベアの全体像を示す斜視図である。
【図2】リニアコンベアの搬送経路(直線搬送部)を示す斜視図である。
【図3】リニアコンベアを構成するユニット部材を示す斜視図である。
【図4】ユニット部材を示す正面図である。
【図5】ユニット部材及びスライダを示す側面図である。
【図6】位置補正用データの一例を示す図(グラフ)である。
【図7】リニアコンベアの制御系を示す配線図である。
【図8】モータコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図9】固有情報の読み取り及び配布の処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】リニアコンベアにおけるスライダの制御例を示すフローチャートである。
【図11】スライダの制御例を説明するためのリニアコンベアの正面略図である。
【図12】リニアコンベアにおけるスライダの制御例を示すフローチャートである。
【図13】リニアコンベアにおけるスライダの制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0028】
図1は、本発明に係るリニアコンベアの全体を斜視図で示している。同図中には、水平面上で互いに直交する二方向(X方向、Y方向)を方向指標として図示している。
【0029】
同図に示すように、リニアコンベアは、基台1と、この基台1上に設けられ、特定方向(X方向)に互いに平行に延びる一対の直線搬送部(第1直線搬送部2A、第2直線搬送部2B)及びこれら直線搬送部2A、2Bの長手方向両側にそれぞれ位置する方向反転部(第1方向反転部3A、第2方向反転部3B)と、前記各直線搬送部2A、2Bに沿って移動する複数のスライダ4(本発明の搬送台車に相当する)とを備えている。
【0030】
各直線搬送部2A、2Bは、前記スライダ4をX方向に移動させるものであり、それぞれX方向に延びるレール6を備え、当該レール6に沿ってスライダ4を移動させる。各方向反転部3A、3Bは、両直線搬送部2A、2Bの末端位置でそれらの一方から他方にスライダ4を平行移動させることでスライダ4の移動方向を反転させるものである。すなわち、このリニアコンベアでは、各スライダ4は、同図中の白抜き矢印で示すように、第1直線搬送部2Aの一端側(X方向(+)側)から他端側(X方向(−)側)に向かって移動し、第1方向反転部3Aにより第1直線搬送部2Aから第2直線搬送部2Bに移される。そして、第2直線搬送部2Bの一端側(X方向(−)側)から他端側(X方向(+)側)に向かって移動した後、第2方向反転部3Bによって第2直線搬送部2Bから第1直線搬送部2Aに移される。これにより、各スライダ4が周回移動する構成となっている。
【0031】
各方向反転部3A、3Bは、以下のような構成を備える。ここでは、第1方向反転部3Aについて説明する。
【0032】
第1方向反転部3Aは、上流側の直線搬送部(第1直線搬送部2A)のレール6に連続するレール12を有しかつ第1直線搬送部2Aからスライダ4を受け入れる受入部P2と、下流側の直線搬送部(第2直線搬送部2B)のレール6に連続するレール11を有しかつ第2直線搬送部2Bに対してスライダ4を送り出す送出部P1と、スライダ4の支持部14を有し、この支持部14に支持されたスライダ4を当該支持部14と共に前記受入部P2に対応する位置(図示の位置)と前記送出部P1に対応する位置とに亘ってY方向にスライドさせるスライド機構15と、受入部P2にあるスライダ4をスライド機構15の前記支持部14に引き込む引込機構16と、前記支持部14に支持されているスライダ4を当該支持部14から送出部P1に引き出し、さらにこの送出部P1から第2直線搬送部2Bに押し出す送出機構18とを含む。なお、前記支持部14は不図示のレールを備えており、前記受入部P2に支持部14が対応する位置では当該レールがY方向において前記受入部P2のレール12に一致し、受入部P2のレール12から支持部14のレール上へ、前記引込機構16によりスライダ4が移動させられることにより当該スライダ4が支持部14に引き込まれる。他方、前記受入部P1に支持部14が対応する位置では前記不図示のレールがY方向において前記受入部P1のレール11に一致し、支持部14のレールから受入部P1のレール11上へ、前記送出機構18によりスライダ4が移動させられることにより当該スライダ4が支持部14から送出部P1に引き出される。
【0033】
つまり、第1直線搬送部2Aの末端位置に到達したスライダ4は、当該末端位置から第1方向反転部3Aの受入部P2に受け入れられ、引込機構16によって受入部P2からスライド機構15の支持部14に引き込まれる。その後、スライダ4は、スライド機構15の作動により支持部14と共に送出部P1に対応する位置に平行移動し、送出機構18の作動により、当該支持部14から送出部P1に引き出された後、第2直線搬送部2Bに押し出される。このように、第1方向反転部3Aは、各スライダ4を第1直線搬送部2Aから第2直線搬送部2Bに移すことで、スライダ4の移動方向を反転させる。
【0034】
以上は第1方向反転部3Aの構成であるが、第2方向反転部3Bも、第2直線搬送部2Bからスライダ4を受入部P2に受け入れる点、及び送出部P1から第1直線搬送部2Aにスライダ4を送り出す点が異なるだけで、第1方向反転部3Aと同等の構成を有する。
【0035】
なお、前記各スライダ4は、各直線搬送部2A、2Bにおいて、リニアモータを駆動源として駆動される。このリニアモータは、各直線搬送部2A、2Bに備えられるリニアモータ固定子7と、各スライダ4に備えられる後記リニアモータ可動子8とからなる。以下、この点を含め、各直線搬送部2A、2B及びスライダ4の具体的な構成について図2〜図5を用いて説明する。なお、各直線搬送部2A、2Bの基本構成は略同一であるため、ここでは、第1直線搬送部2Aについて説明する。
【0036】
第1直線搬送部2Aは、図2に示すように、複数個のユニット部材20がX方向に連結されることにより構成されている。当例では、4つのユニット部材20が連結されることにより第1直線搬送部2Aが構成されている。
【0037】
各ユニット部材20は、図3〜図5に示すように、X方向に延びる細長のフレーム22と、このフレーム22に固定される単位レール24、電磁石ユニット26及びセンサ基板28とを含む。
【0038】
フレーム22は、X方向に延びる長方形状の底板部23aと、この底板部23aの上方に位置し、X方向に延びる長方形状の上板部23cと、これら板部23a、23cの間で上下方向に延び当該板部23a、23c同士をそれらの長手方向に亘って連結する連結部23bとを備え、これら各部23a〜23cがアルミニウム合金により一体に形成されている。そして、このフレーム22の上板部23cの上面に、当該上板部23cの長手方向と同方向に延びるように前記単位レール24が固定され、さらに、この上板部23cの上面であって前記単位レール24の後側(Y方向(−)側)の位置に、複数の電磁石ユニット26が当該単位レール24に沿って一列(直列)に配列された状態で固定されている。当例では、同一構造をもつ4つの電磁石ユニット26が固定されている。これら電磁石ユニット26は、前記リニアモータ固定子7を構成するものであり、それぞれX方向に一列に並ぶ複数の電磁石を含む。
【0039】
前記フレーム22の前記連結部23bには、複数の前記センサ基板28が固定されている。当例では、前記電磁石ユニット26と同様に4つのセンサ基板28が固定されている。具体的には、前記単位レール24に沿って一列(直列)に配列された状態で、連結部23bの側壁に沿って起立姿勢で連結部23bに固定されている。
【0040】
これらセンサ基板28は、各スライダ4に固定される後記磁気スケール50a〜50cと協働してリニアスケールを構成するものであり、各電磁石ユニット26が配置された区間においてそれぞれ磁気スケール50a〜50cを検出するように、各電磁石ユニット26のそれぞれ前側(Y方向(+)側)に配置されている。すなわち、このユニット部材20は、長手方向(X方向)に四等分された1区間がリニアモータの1制御区間とされ、各区間にそれぞれ、その区間と同等の長さ寸法を有する電磁石ユニット26が固定されている。そして、後述するように、区間毎に後記モータコントローラCが設けられ、センサ基板28による磁気スケール50a〜50cの検出に基づき、区間毎の電磁石ユニット26に対する電流供給がモータコントローラCにより個別に制御されるようになっている。なお、当例では、ユニット部材20の全長(X方向の全長)は640mmとされ、従って、前記1制御区間(電磁石ユニット26)の全長は160mmである。
【0041】
前記センサ基板28は、図4に示すように、上下方向に並ぶ3つのセンサ領域30a〜30c(上側から順に第1センサ領域30a、第2センサ領域30b、第3センサ領域30cと称す)を有する。各センサ領域30a〜30cにはそれぞれ、磁気スケール50a〜50cを検出可能なホール素子、又MR素子からなる一乃至複数個のセンサ32が設けられ、これらセンサ32がX方向に所定の配列で固定されている。
【0042】
各センサ領域30a〜30cにおけるセンサ32の配置や数は各センサ基板28の間で共通であり、各センサ32は、後述する磁気スケール50a〜50cを検出することにより、その磁束密度に応じた出力電圧(振幅)の波形信号を出力する。
【0043】
なお、前記ユニット部材20において、センサ基板28の前側(Y方向(+)側)の位置には、前記電磁石ユニット26及びセンサ基板28の配線接続部34が設けられている。
【0044】
この配線接続部34は、前記フレーム22の底板部23a上に立設される固定プレート35と、相手側コネクタとの接続が可能となるように、当該固定プレート35にそれぞれ前向きに保持される、前記電磁石ユニット26の配線用コネクタ27及び前記センサ基板28の配線用コネクタ29とを含む。当例では、右端(図4で右端)から数えて1番目と3番目の各センサ基板28の前側の位置にそれぞれ配線接続部34が設けられており、互いに隣接する2つの電磁石ユニット26の配線用コネクタ27が共通の配線接続部34の固定プレート35に保持されている。なお、当例では、互いに隣接する2つのセンサ基板28の配線用コネクタとして共通の配線用コネクタ29が設けられ、当該配線用コネクタ29が各配線接続部34の固定プレート35に保持されている。
【0045】
前記第1直線搬送部2Aは、以上のような4つのユニット部材20が長手方向に直列に突き合わされた状態で配列され(連結され)、各フレーム22の底板部23aがそれぞれ前記基台1にボルト等の固定手段によって固定されることにより構成されている。そして、このように4つのユニット部材20が連結されることで、各ユニット部材20の前記単位レール24がX方向に連続して上記レール6が構成されるとともに、同様に前記電磁石ユニット26がX方向に連続して上記リニアモータ固定子7が構成されている。
【0046】
以上、第1直線搬送部2Aの構成について説明したが、第2直線搬送部2Bも、第1直線搬送部2Aと同等の構成を有している。
【0047】
前記スライダ4は、図5に示すように、フレーム40と、このフレーム40にそれぞれ固定される、ガイドブロック42、リニアモータ可動子8(永久磁石44)、磁気スケール50a〜50c及びRF(Radio Frequency)タグ55とを含む。
【0048】
前記フレーム40は、スライダ4の母体となるものでありX方向に細長い形状を有する。詳しくは、このフレーム40は、前記直線搬送部2A、2Bのレール6の上方に位置する矩形板状の水平部41aと、この水平部41aの幅方向前側(Y方向の(+)側)から垂下し、前記センサ基板28に対向するように位置する矩形板状の垂直部41bとを有した断面逆L字型の形状を有し、これら水平部41aと垂直部41bとがアルミニウム合金により一体に形成されている。
【0049】
前記水平部41aの上面には、テーブルや工具等を固定することが可能な複数のねじ孔が所定の配列で設けられている。この水平部41aの下面には、ガイドブロック42が固定され、このガイドブロック42が前記レール6に装着されることにより、スライダ4が当該レール6に移動自在に支持されている。このガイドブロック42及び前記レール6(単位レール24)は、例えばリニアガイドにより構成されている。
【0050】
前記水平部41aの下面のうち前記ガイドブロック42の後側(Y方向(−)側)の位置、詳しくは、直線搬送部2A、2Bのリニアモータ固定子7(ユニット部材20の電磁石ユニット26)に対向する位置には、前記リニアモータ可動子8が固定されている。このリニアモータ可動子8は、前記水平部41aの下面に固定される板状のヨーク45と、X方向(スライダ4の移動方向)に一列に配列された状態で前記ヨーク45の下面に固定される板状の複数の永久磁石44とを含む。これら永久磁石44は、下面にN極とS極とが交互に現れるように配列されている。つまり、後記モータコントローラCによって互いに位相が異なるu相、v相、w相のうちの何れかの相の電流が前記リニアモータ固定子7(電磁石ユニット26)の各電磁石のコイルに供給されることで、当該電磁石に生じる磁束と永久磁石44の磁束との相互作用によりフレーム40に推進力が生成され、この推進力によりスライダ4が前記レール6に沿って移動する。
【0051】
前記磁気スケール50a〜50cは、前記センサ基板28に対向するように、フレーム40の前記垂直部41bの内側面(図4の右側面)に固定されている。
【0052】
各磁気スケール50a〜50cは上下に並んでおり(上側から第1磁気スケール50a、第2磁気スケール50b、第3磁気スケール50cと称す)、第1磁気スケール50aは前記第1センサ領域30aに、第2磁気スケール50bは前記第2センサ領域30bに、第3磁気スケール50cは第3センサ領域30cにそれぞれ対向している。
【0053】
詳細図を省略するが、各磁気スケール50a〜50cはそれぞれ、特定のスケール長内に永久磁石52がX方向に一列に、かつセンサ基板28側にN極とS極とが交互に現れるように構成されている。
【0054】
そして、スライダ4の移動中、各センサ領域30a〜30cのセンサ32が対応する磁気スケール50a〜50cを検出することで、前記センサ基板28から後記モータコントローラCに所定の信号が出力されるように、各磁気スケール50a〜50cの永久磁石52及び各センサ領域30a〜30cのセンサ32の数及び配列が設定されるとともに前記センサ基板28の基板上回路が構成されている。具体的には、第1センサ領域30aのセンサ32による第1磁気スケール50aの検出に基づき、A相の正弦波信号と、これと振幅及び周期が同じで位相が90°だけずれたB相の正弦波信号とをセンサ基板28が出力し、また、第2センサ領域30bのセンサ32による第2磁気スケール50bの検出に基づき、Z相の信号をセンサ基板28が出力し、さらに、第3センサ領域30cのセンサ32による第3磁気スケール50cの検出に基づき、上記A相、B相よりも周期が長く、互いに位相がずれた同一振幅をもつ複数の波形信号をセンサ基板28が出力するように、各磁気スケール50a〜50cの永久磁石52及び各センサ領域30a〜30cのセンサ32の数及び配列が設定されるとともにセンサ基板28の基板上回路が構成されている。
【0055】
なお、図5中、符号56は、フレーム40の垂直部41bに固定されるスケールカバーであり、このスケールカバー56は、前記磁気スケール50a〜50cを覆うことで当該磁気スケール50a〜50cを保護する。また、符号58は、前記ユニット部材20のフレーム22に固定されるセンサカバー58であり、当該センサカバー58は、前記センサ基板28を覆うことで当該センサ基板28を保護する。これらカバー56、58は、何れもアルミニウム合金で形成されている。なお、図3、図4では、上記各カバー56、58を省略した状態でリニアコンベアを示している。
【0056】
前記RFタグ55は、フレーム40の前記垂直部41bの外側面(図5の左側面)であって、当該垂直部41bの長手方向(X方向)及び上下方向の各中間の位置に固定されている。このRFタグ55には、そのスライダ4の固有情報が記憶されている。具体的には、スライダ4のID情報(識別データ)と、当該スライダ4が有する固有の移動誤差を補正するための位置補正用データとが記憶されている。当例では、この位置補正用データとして、図6に示すような移動誤差データが記憶されている。このデータは、前記ユニット部材20と同等の構成を有するマスタユニット部材及び基準ケールを備える治具を用い、マスタユニット部材上でその起点からスライダ4を移動させた時の前記センサ基板28の出力から求まるスライダ4の位置と基準スケール上でのスライダ4の位置、つまり絶対位置との誤差を1制御区間(160mm)について求めたものである。
【0057】
なお、このリニアコンベアには、各スライダ4のRFタグ55に記録された固有情報を非接触で読み出し又は書き変え可能なリーダライタ60(図7に示す)が配置されている。このリーダライタ60は、リニアコンベアの搬送起点の近傍に配置されている。当例では、第1直線搬送部2Aの上流側の端部が搬送基点であり、リーダライタ60は、この搬送基点にスライダ4を送り出す送出部P1(第2方向反転部3Bの送出部P1)の側部に配置されている。すなわち、当例では、RFタグ55が本発明の固有情報記憶手段に相当し、前記リーダライタ60が本発明の読取手段に相当する。また、このリニアコンベアでは、図1に示すように、第2方向反転部3Bの送出部P1に設けられる前記レール11に新たなスライダ4を装着することで、前記搬送起点の位置で搬送経路内に当該スライダ4を挿入することが可能となっている。従って、当例では、この送出部P1(レール11)及び送出機構18が本発明の挿入機構に相当する。
【0058】
このように第2直線搬送部2Bの送出部P1の側部にリーダライタ60を配置する構成によれば、スライダ4を停止させた状態でRFタグ55に記憶された各データを読みとれるため、当該データの読み取り精度が向上するという利点がある。
【0059】
なお、このリニアコンベアでは、第1方向反転部3Aの送出部P1に設けられる前記レール11に新たなスライダ4を装着することによっても搬送経路内にスライダ4を挿入することが可能である。従って、この第1方向反転部3Aの送出部P1(レール11)及び送出機構18も本発明の挿入機構に相当する。よって、第1方向反転部3Aの送出部P1の側部にリーダライタ60を配置するようにすれば、スライダ4を停止させた状態でRFタグ55に記憶された各データを読みとれるため、この場合も当該データの読み取り精度が向上するという利点がある。
【0060】
次に、上記リニアコンベアの制御系について説明する。
【0061】
図7は、上記リニアコンベアの制御系を示す配線図である。同図に示すように、リニアコンベアは、前記直線搬送部2A、2Bのリニアモータを制御するための複数のモータコントローラC(C1、C2…;本発明のモータ制御装置に相当する)を備える。このリニアコンベアでは、上記の通り、ユニット部材20の前記1制御区間毎に独立した電磁石ユニット26が配備されており、この1制御区間毎に電磁石ユニット26に対する電流供給がモータコントローラCによって制御される。従って、各直線搬送部2A、2Bがそれぞれ4つのユニット部材20を含む当該リニアコンベアは、合計32個のモータコントローラCを備える。各モータコントローラCは、それぞれLAN(Local Area Network)62(本発明のネットワーク手段に相当する)に接続されており、これによりデータ送信が可能となるように互いに連結されている。また、このリニアコンベアの搬送起点(第1直線搬送部2Aの上流側の端部)を基準として最上流側に位置する制御区間の電磁石ユニット26、すなわち、第1直線搬送部2Aを構成する最上流側(図7の右端)のユニット部材20の最も上流側に位置する電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御するモータコントローラCには上記リーダライタ60が接続されている。
【0062】
なお、以下の説明において、モータコントローラCを制御区間毎に区別する必要がある場合には、この最上流側に位置するモータコントローラから順に、第1コントローラC1、第2コントローラC2、第3コントローラC3……第32コントローラC32と称する。
【0063】
リニアコンベアは、さらにその動作を起動するためのPLC(Programmable Logic Controller)65を備えている。このPLC65は、第1コントローラC1に接続されており、第1コントローラC1に対してその内部プログラムを起動させるための信号を出力する。この信号入力に基づき、第1コントローラC1は、後述するように、内部プログラムを起動し、当該プログラムに組み込まれるスライダ4の停止位置(目標停止位置)や移動速度等を各コントローラC1〜C32にそれぞれ転送する。各コントローラC1〜C32はそれぞれ並行してスライダ4の停止および移動制御を行う。なお、前記各方向反転部3A、3Bについては、モータコントローラCとは別個独立したコントローラが設けられており、前記スライド機構15、引込機構16及び送出機構18の駆動が当該コントローラにより独立して制御される。
【0064】
図8は、前記モータコントローラC(第1コントローラC1)の機能構成をブロック図で示している。この第1コントローラC1は、CPUや各種メモリが搭載された回路基板等からなり、その機能構成として、電流制御部71、主演算部72、位置検出部73、データ記憶部74、入出力部75、通信制御部76等を含む。
【0065】
前記主演算部72は、電流制御部71を介して前記電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御するもので、前記PLC65からの信号入力に基づき、当該主演算部72に付設される図外のプログラム記憶部に記憶されるプログラムを実行し、このプログラムに組み込まれるスライダ4の停止位置(目標停止位置)や移動速度等の情報に基づき電磁石ユニット26への電流供給を制御するとともに、当該制御に必要な演算処理を行う。
【0066】
前記位置検出部73は、入出力部75を介して入力される前記センサ基板28からの信号に基づいてスライダ4の位置を検出するものである。
【0067】
前記データ記憶部74は、リーダライタ60が読み取った各スライダ4の固有情報を記憶するとともに、各スライダ4の搬送経路上での配列順序を記憶するものである。なお、前記主演算部72は、この第1コントローラC1が制御負担する区間内にスライダ4の目標停止位置がある場合には、データ記憶部74内の当該スライダ4の位置補正用データを参照し、この位置補正用データに基づき目標停止位置データを補正し、補正後の目標停止位置データに従って電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御する。
【0068】
前記通信制御部76は、当該第1コントローラC1と他のコントローラC2〜C32との間のデータ送信を制御するものである。なお、当例では、第1コントローラC1の前記主演算部72及び通信制御部76が本発明の伝送制御手段に相当する。
【0069】
以上、ここでは、モータコントローラCのうち第1コントローラC1の機能構成について説明したが、内部プログラムにスライダ4の停止位置(目標停止位置)や移動速度等の情報が組み込まれている点、及びPLC65からの信号やリーダライタ60が読み取ったスライダ4の固有情報が直接入力される点以外は、他のコントローラC2、C3…も略共通の構成を有している。すなわち、他のコントローラC2〜C32では、入出力部75に接続されるのはセンサ基板28のみであり、PLC65、リーダライタ60は接続されておらず、第1コントローラC1から転送される各情報は、通信制御部76からデータ記憶部74に取り込まれる。なお、当例では、各コントローラC1〜C32のデータ記憶部74がそれぞれ、各スライダ4の搬送経路上での配列順序を記憶するものであり、従って、各データ記憶部74が本発明の配列順番記憶手段としての機能を有する。
【0070】
次に、このリニアコンベアの上記リニアモータの制御について説明する。
【0071】
まず、各スライダ4の固有情報の読み取り及び配布の処理について説明する。このリニアコンベアでは、上記のようにリニアモータは直線搬送部2A、2Bの1制御区間毎にモータコントローラCにより制御される。従って、スライダ4を精度良く位置決めするには、各モータコントローラCが各スライダ4の位置補正用データを参照できる環境が必要であり、このリニアコンベアでは、図9に示すフローチャートに従って、各モータコントローラCがその位置補正用データを取得する。
【0072】
まず、スライダ4が搬送起点(第2方向反転部3Bの送出部P1)に配置されると、第1コントローラC1(主演算部72)が、前記リーダライタ60を介して当該スライダ4のRFタグ55に記憶されているID情報を読み込む(ステップS1)。第1コントローラC1は、このID情報が新しいか否か、すなわち当該スライダ4の位置補正用データが既に取得済みであるか否かを判断する(ステップS3)。ここでYESと判断した場合には、第1コントローラC1は、リーダライタ60を介して当該スライダ4の位置補正用データをさらに読み込み、この位置補正用データをID情報と対応付けてデータ記憶部74に格納し(ステップS5)、さらに当該位置補正用データをそのID情報と共にLAN62経由で他のコントローラC2〜C32に伝送する(ステップS7)。その後、各コントローラC1〜C32は、当該スライダ4の配列順番(挿入順番)をデータ記憶部74に記憶する(ステップS9)。なお、ステップS3の処理で、ID情報が新しいものでないと判断した場合には、第1コントローラC1は、前記リーダライタ60を介して読み取ったスライダ4のID情報のみを他のコントローラC2〜C32に伝送する。これにより第1コントローラC1及び他のコントローラC2〜C32は、スライダ4の配列順番(挿入順番)データを更新する。
【0073】
このリニアコンベアでは、初期設置の際に、第2方向反転部3Bの送出部P1からスライダ4が順番に搬送経路内に挿入される(図1、図7参照)。従って、上記ステップS1〜S9の処理により、各モータコントローラCはそれぞれ、リニアコンベア内を周回移動するスライダ4の配列順番及び各スライダ4の位置補正用データを保有することになる。なお、上記ステップS1〜S9の処理はリニアコンベアの稼働後も継続的に実行される。従って、新たなスライダ4が搬送経路内に追加的に挿入された場合でも、各モータコントローラCはそれぞれ、追加されたスライダ4の位置補正用データを保有し、また、最新の配列順番のデータを保有することになる。
【0074】
次に、各モータコントローラCによるリニアモータの制御動作について、図10のフローチャートに従って説明する。
【0075】
まず、PLC65からの信号入力により第1コントローラC1のプログラムが起動され、これにより第1コントローラC1によってスライダ4の目標停止位置が決定される(ステップS11)。第1コントローラC1は、この目標停止位置データをLAN62経由で他のコントローラC2〜C32に転送する(ステップS13)。
【0076】
各モータコントローラC(主演算部72)は、この目標停止位置データと既知の設計データ、すなわちユニット部材20の全長(640mm)及び1制御区間長(160mm)に基づき、目標停止位置が自己の制御区間に属するか否かを認識する(ステップS15)。
【0077】
自己の制御区間に目標停止位置が属すると認識したモータコントローラCは、データ記憶部74の記憶データに基づき、目標停止位置に停止させるスライダ4を特定するとともに、そのスライダ4の位置補正用データ(図6参照)を参照し、目標停止位置を補正する(ステップS17)。この際、各モータコントローラC(主演算部72)は、前記LAN62を経由して搬送経路上のスライダ4の配置状況を参照し、その結果と、リーダライタ60に読み取られる識別データ(図9のステップS1で読み取られる識別データ)と、前記データ記憶部74に記憶されている配列順番データとに基づいて、対象となるスライダ4を特定する。
【0078】
このように目標停止位置が補正されると、自己の制御区間にスライダ4の目標停止位置が属すると認識したモータコントローラCは、この補正後の目標停止位置に基づき電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御する(ステップS19)。
【0079】
以上のステップS11〜S19の制御動作を具体的に説明すると次の通りである。例えば、図11に示すように、搬送起点からX=240mmの地点に停止しているスライダ4について目標停止位置(X=880.55mm)が決定された場合を仮定する。この場合には、搬送起点から2つめのユニット部材20のうち上流側から2番目の制御区間に目標停止位置が属する。従って、当該制御区間に対応する第6コントローラC6は、目標停止位置が自己の制御区間に属すると認識する(ステップS11〜S15の処理)。
【0080】
第6コントローラC6は、目標停止位置が自己の制御区間のどの位置になるかを求める。具体的には、第6コントローラC6は、搬送起点から目標停止位置(X=880.55mm)までの距離を1制御区間(160mm)の距離で除することにより、自己の制御区間内での目標停止位置(80.55mm)を求める。そして、対象となるスライダ4の位置補正用データの当該目標停止位置の誤差(例えば−0.02mm)を加算することにより、目標停止位置を補正する(80.53mm=80.55+(−0.02))(ステップS17の処理)。
【0081】
これにより、第6コントローラC6は、補正後の目標停止位置(80.53mm)に基づき電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御する(ステップS19の処理)。
【0082】
以上のようなリニアコンベアによれば、複数のユニット部材20が連結されることにより直線搬送部2A、2Bが構成され、また、細分化された1制御区間毎にリニアモータが個別のモータコントローラCにより駆動制御される構成であるため、搬送経路長の自由度が高い。従って、用途に応じて搬送経路長を自由に設定できるとともに、後発的な搬送経路長の変更についても容易に対応することが可能となる。
【0083】
しかも、このリニアコンベアでは、各スライダ4にそれぞれ、固有の移動誤差を補正するための位置補正用データを記憶したRFタグ55が搭載され、リーダライタ60により上記位置補正用データが読み取られて各モータコントローラCに伝送、記憶される。そして、スライダ4の駆動時には、各モータコントローラCがそれぞれスライダ4に対応する位置補正用データを用いて目標停止位置を補正した上で各スライダ4の駆動を制御する。すなわち、電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御する。従って、上記のように複数のモータコントローラCを用いてサーボモータを制御する構成でありながらも、各スライダ4をそれらの固有の移動誤差を加味しつつ高い精度で位置決めすることが可能となる。特に、このリニアコンベアでは、上記の通り、各スライダ4に前記RFタグ55が搭載され、搬送経路内へのスライダ4の挿入時に位置補正用データがリーダライタ60によって読み取られて各モータコントローラCに伝送される。そのため、作業者がいちいち各モータコントローラCに位置補正用データを記憶させるといった煩雑な作業を行う必要がない。また、後発的にスライダ4が追加される場合でも、作業者は第2方向反転部3Bの送出部P1からスライダ4を搬送経路内に挿入すれば、当該スライダ4の位置補正用データが読み取られて各モータコントローラCに伝送、記憶されるため、特別データ入力作業を行うことなく、直ちに新たなスライダ4を使用することが可能となる。
【0084】
なお、当例では、各モータコントローラC(主演算部72)は、各自のデータ記憶部74に記憶されている配列順番データに基づいて、対象となるスライダ4を特定するが、例えば、配列順番データを第1コントローラC1のデータ記憶部74にのみ記憶させておき、ステップS13の処理では、目標停止位置データと共に、対象となるスライダ4の配列順番及びID情報をLAN62経由で他のコントローラC2〜C32に転送するようにしてもよい。この場合には、第1コントローラC1のデータ記憶部74が本発明の配列順番記憶手段として機能する。
【0085】
(リニアモータの制御の変形例)
上述したリニアコンベアでは、各スライダ4の位置補正用データ及び配列順番データを各モータコントローラCに記憶させておくが、各スライダ4の位置補正用データ及び配列順番データを第1コントローラC1にのみ記憶させておく構成であってもよい。以下、この場合の各モータコントローラCによるリニアモータの制御動作について、図12のフローチャートに従って説明する。なお、前提として、当該制御の場合には、図9のフローチャートのステップS7の処理は省略される。
【0086】
まず、PLC65からの信号入力により第1コントローラC1のプログラムが起動され、目標停止位置が決定されると(ステップS21)、第1コントローラC1は、データ記憶部74に記憶されたデータに基づき、そのスライダ4の位置補正用データを参照し、目標停止位置の補正値を算出する(ステップS23)。その後、目標停止位置及び補正値の各データをLAN62経由で他のコントローラC2〜C32に伝送する(ステップS25)。
【0087】
各モータコントローラC(主演算部72)は、目標停止位置データに基づき自己の制御区間に目標停止位置が属するか否かを認識し(ステップS27)、自己の制御区間に目標停止位置が属すると認識したモータコントローラCは、前記補正値データに基づき、目標停止位置を補正する(ステップS29)。
【0088】
これにより、自己の制御区間に目標停止位置が属すると認識したモータコントローラCは、この補正後の目標停止位置に基づき電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御する(ステップS31)。
【0089】
以上のステップS21〜S31の制御動作を、図11に示した例に基づき具体的に説明すると次の通りである。
【0090】
まず、第1コントローラC1は、目標停止位置が制御区間のどの位置になるかを求める。具体的には、搬送起点から目標停止位置(X=880.55mm)までの距離を1制御区間(160mm)の距離で除することにより、制御区間内での目標停止位置(80.55mm)を求める。そして、対象となるスライダ4の位置補正用データを参照し、当該目標停止位置の誤差、すなわち補正値(例えば−0.02mm)を求め、目標停止位置(X=880.55mm)及び補正値(−0.02mm)の各データを各コントローラC2〜C32に伝送する(ステップS21〜S25の処理)。この際、第1コントローラC1(主演算部72)は、前記LAN62を経由して搬送経路上のスライダ4の配置状況を参照し、その結果と、リーダライタ60に読み取られる識別データ(図9のステップS1で読み取られる識別データ)と、前記データ記憶部74に記憶されている配列順番データとに基づいて、対象となるスライダ4を特定する。
【0091】
次に、各モータコントローラCは、目標停止位置が自己の制御区間に属するかを判断する(ステップS27の処理)。ここでは、目標停止位置(X=880.55mm)は、搬送起点から2つめのユニット部材20のうち上流側から2番目の制御区間に目標停止位置が属するため、当該制御区間に対応する第6コントローラC6は、目標停止位置が自己の制御区間に属すると認識する。また、第6コントローラC6は、目標停止位置データ(X=880.55mm)から自己の制御区間内での目標停止位置(80.55mm)を求め、この目標停止位置を補正値データ(−0.02mm)で補正する(80.53mm=80.55+(−0.02))(ステップS29の処理)。
【0092】
これにより、第6コントローラC6は、補正後の目標停止位置(80.53mm)に基づき電磁石ユニット26の各電磁石に対する電流供給を制御する(ステップS31の処理)。
【0093】
この図12に示す制御によれば、全てのスライダ4の位置補正用データを各モータコントローラCに記憶させる場合に比べると、第1コントローラC1以外のコントローラC2〜C32におけるデータ記憶部74の記憶容量を抑制することがきるとともに、LAN62経由で伝送するデータ量を抑制することが可能となる。
【0094】
なお、この図12に示す制御のさらに変形例として、図13に示すフローチャートに従ってサーボモータを制御するようにしてもよい。このフローチャートは、図12のステップS25に変えてステップS24、S26を追加し、さらに図12のステップS29を省略したものである。すなわち、このフローチャートでは、ステップS23において、第1コントローラC1が補正値を求めた後、さらに当該第1コントローラC1がこの補正値に基づき目標停止位置を補正し(ステップS24)、この補正後の目標停止位置データをLAN62経由で他のコントローラC2〜C32に伝送する(ステップS26)。そして、各モータコントローラCは、この補正後の目標停止位置データに基づき自己の制御区間に目標停止位置が属するか否かを認識し(ステップS27)、自己の制御区間に目標停止位置が属すると認識したモータコントローラCは、この目標停止位置に基づき電磁石ユニット26の各電磁石に対する電流供給を制御する(ステップS31)。
【0095】
図11に示した例に基づき具体的に説明すると、第1コントローラC1は、目標停止位置の誤差、すなわち補正値(例えば−0.02mm)を求めた後、目標停止位置(X=880.55mm)をこの補正値(−0.02mm)により補正する(880.53mm=880.55+(−0.02))(ステップS21、S23の処理)。
【0096】
そして、この補正後の目標停止位置データ(X′=880.53mm)を他のコントローラC2〜C32に伝送する(ステップS26の処理)。
【0097】
各モータコントローラCは、この補正後の目標停止位置が自己の制御区間に属するかを判断する(ステップS27の処理)。ここでは、目標停止位置(X′=880.53mm)は、搬送起点から2つめのユニット部材20のうち上流側から2番目の制御区間に目標停止位置が属するため、当該制御区間に対応する第6コントローラC6は、目標停止位置が自己の制御区間に属すると認識する。
【0098】
これにより、第6コントローラC6は、目標停止位置データ(X′=880.53mm)からその制御区間内での目標停止位置(80.53mm)を求め、この目標停止位置に基づき電磁石ユニット26の各電磁石への電流供給を制御する(ステップS31の処理)。
【0099】
このような図13のフローチャートに示すサーボモータの制御の場合も、図12のフローチャートの制御の場合と同様の作用効果を享受することができる。
【0100】
ところで、以上説明したリニアコンベアは、本発明に係るリニアコンベアの好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0101】
例えば、上記実施形態(図9のフローチャート)では、リニアコンベアの搬送起点に配置したリーダライタ60で各スライダ4の位置補正用データを読み取り、当該データを各モータコントローラCに記憶させることで、各モータコントローラCが各スライダ4の位置補正用データを用いて目標停止位置を補正するが、直線搬送部2A、2Bの各制御区間それぞれにリーダライタ60を配置し、各モータコントローラCが直接リーダライタ60を介して制御すべきスライダ4の位置補正用データを読み取れるようにしてもよい。このような構成によれば、目標停止位置とスライダ4のID情報さえ与えられれば、各モータコントローラCは、直接スライダ4を特定してそのRFタグ55から位置補正用データを読み出して目標停止位置を補正することができる、従って、上記実施形態のリニアコンベアと同等の作用効果を享受することができる。但し、この場合には、多数のリーダライタ60が必要となるため、コスト面やメンテナンス面を考慮すると上記実施形態のように共通のリーダライタ60により各スライダ4の位置補正用データ等を読み取る方が有利となる。
【0102】
なお、上記のように各制御区間それぞれにリーダライタ60を配置する場合、必ずしも各スライダ4のRFタグ55にID情報を記憶させる必要はない。例えば、スライダ4の移動速度が非常に低い場合などには、目標停止位置が属する制御区間のモータコントローラCが、直接、当該制御区間に接近してくるスライダ4のRFタグ55から位置補正用データを読み取り、その位置補正用データに基づき目標停止位置を補正するようにすれば、各モータコントローラCがスライダ4を識別する必要が無い。従って、この場合には、ID情報を省略することが可能となる。また、上記実施形態(図10の例)のように、共通の(単一の)リーダライタ60でRF55の情報を読み取る場合でも、後にスライダ4の数が変更されない場合には、RFタグ55のID情報を省略することが可能である。例えば、各スライダ4の配列順番で位置補正用データを記憶しておけば、モータコントローラCは、LAN62を経由して搬送経路上のスライダ4の配置状況を参照することで、目標停止位置に停止させるスライダ4の配列順番を特定することができる。そのため、当該配列順番に対応する位置補正用データに基づき目標停止位置を補正するようにすれば、ID情報を用いることなくスライダ4を制御することが可能となる。
【0103】
また、上記実施形態のリニアコンベアでは、コントローラC1〜C32のうち、搬送起点に最も近い第1コントローラC1の内部プログラムにスライダ4の停止位置(目標停止位置)や移動速度等の情報が組み込まれており、PLC65からの信号入力により第1コントローラC1の内部プログラムが起動すると、スライダ4の停止位置(目標停止位置)やスライダの移動速度等の情報が第1コントローラC1から各コントローラC1〜C32にそれぞれ転送されて内部プログラムに組み込まれるように構成され、また、リーダライダ60がこの第1コントローラC1に接続されることで、当該リーダライダ60によって読み取られる各スライダ4の固有情報(ID情報、位置補正用データ)が、第1コントローラC1から各コントローラC1〜C32にそれぞれ転送されて内部プログラムに組み込まれることで、各コントローラC1〜C32が、内部プログラムに基づき対応する各電磁石ユニット26の電磁石への電流を制御するように構成されているが、例えば、第1コントローラC1や、他のコントローラC2〜C32のうち何れからのコントローラが各モータコントローラCを統括的に制御するようにしてもよい。
【0104】
また、リーダライダ60は、必ずしも実施形態のように搬送起点の近傍(第2直線搬送部2Bの送出部P1)に配置されている必要なく、各スライダ4のRFタグ55に記録される固有情報を読み取り可能な位置であれば搬送起点以外の位置に配置されていてもよい。
【0105】
また、上記実施形態のリニアコンベアは、水平面に沿ってスライダ4が周回移動するように搬送経路が形成されているが、垂直面に沿ってスライダ4が周回移動するように搬送経路が形成されるものであってもよい。つまり、第1直線搬送部2Aと第2直線搬送部2Bとが上下方向に離間して配置され、これら直線搬送部2A、2Bの間で上下方向にスライダ4を平行移動させるように各方向反転部3A、3Bが構成されるものでもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、リニアコンベアは、互いに平行な2つの直線搬送部2A、2Bの両側にそれぞれ方向反転部3A、3Bが配置された構成であるが、例えば単一の直線搬送部と、この直線搬送部の終端位置に到達したスライダ4を始端位置に戻すベルトコンベア等の運搬手段とを備えた構成であってもよい。運搬手段は、直動型ロボット等であってもよい。
【0107】
また、上記実施形態のリニアコンベアでは、本発明の固有情報記憶手段としてRFタグ55を用い、これに記憶された固有情報をリーダライタ60で読み取っているが、本発明の固有情報記憶手段及び読取手段は、固有情報記憶手段に記憶された固有情報を非接触で読み取ることができれば、上記実施形態以外の構成も適用可能である。
【0108】
また、上記実施形態のリニアコンベアは、環状の搬送経路に沿ってスライダ4が周回移動する構成であるが、勿論、搬送経路は直線状のものであってもよい。すなわち、直線状の搬送経路上に配置された複数のスライダ4がそれぞれ割り当てられた一定の領域内で一体的に同方向に進退移動する、又は個別に進退移動するような構成であってもよい。
【0109】
また、上記のリニアコンベアでは、各直線搬送部2A、2Bを構成するユニット部材20は、4つの制御区間(電磁石ユニット26)を含むが、この制御区間の数は4つ未満、又は5つ以上であってもよい。
【0110】
また、上記のリニアコンベアでは、複数のユニット部材20が連結されることにより各直線搬送部2A、2Bが構成されているが、例えば、直線搬送部2A(又は2B)の長手方向全域に亘って連続する単一のフレームを備え、このフレームに複数の電磁石ユニット26及び複数のセンサ基板28がそれぞれ一列に配列された状態で固定される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 基台
2A 第1直線搬送部
2B 第2直線搬送部
3A 第1方向反転部
3B 第2方向反転部
4 スライダ(搬送台車)
6 レール
7 リニアモータ固定子
8 リニアモータ可動子
20 ユニット部材
26 電磁石ユニット
28 センサ基板
55 RFタグ(固有情報記憶手段)
60 リーダライタ(読取手段)
62 LAN(ネットワーク手段)
65 PLC
C(C1〜C32) モータコントローラ(モータ制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って配列される複数の電磁石を含み、かつ所定の区間毎に個別に通電制御を受けることが可能なリニアモータ固定子と、
前記リニアモータ固定子と協働してリニアモータを構成する、永久磁石からなるリニアモータ可動子及び所定の固有情報が記憶された固有情報記憶手段をそれぞれ備え、かつ前記搬送経路に沿って移動自在に設けられる複数の搬送台車と、
前記リニアモータ固定子の前記各区間にそれぞれ対応して設けられ、前記区間毎に個別に前記電磁石の通電制御を行う複数のモータ制御装置と、
前記固有情報記憶手段に記憶される前記固有情報を読み取る読取手段と、を備え、
前記固有情報記憶手段は、前記固有情報として、前記搬送台車の固有の移動誤差を補正するための位置補正用データを記憶しており、
前記複数のモータ制御装置はそれぞれ、目標停止位置で搬送台車を停止させるべく、前記読取手段が読み取った前記位置補正用データ又は当該位置補正用データを用いて処理された処理データの何れかを制御用データとして、当該制御用データを用いて前記電磁石の通電制御を行う、ことを特徴とするリニアコンベア。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアコンベアにおいて、
情報の伝送が可能となるように前記各モータ制御装置を繋ぐネットワーク手段と、
このネットワーク手段による情報の伝送を制御する伝送制御手段と、をさらに備え、
前記読取手段は、前記モータ制御装置の数よりも少ない地点であって前記搬送経路の予め定められた特定の地点にのみ配置され、
前記伝送制御手段は、前記各モータ制御装置に対して前記制御用データを伝送する、ことを特徴とするリニアコンベア。
【請求項3】
請求項2に記載のリニアコンベアにおいて、
前記固有情報記憶手段は、前記固有情報として前記搬送台車を識別することが可能な識別データをさらに記憶し、
前記読取手段は、前記位置補正用データに加えて前記識別データを読み取り、
前記伝送制御手段は、前記読取手段が読み取った前記位置補正用データ及び前記識別データを各モータ制御装置に伝送するものであって、
前記各モータ制御装置はそれぞれ、前記各搬送台車の識別データと前記位置補正用データとを対応付けて記憶するデータ記憶手段を備え、かつ、搬送台車を前記目標停止位置で停止させる際には、前記データ記憶手段に記憶された前記位置補正用データのうち対象となる搬送台車の位置補正用データに基づき前記目標停止位置を補正し、当該補正後の目標停止位置に基づき前記電磁石の通電制御を行う、ことを特徴とするリニアコンベア。
【請求項4】
請求項3に記載のリニアコンベアにおいて、
前記読取手段が読み取った前記識別データの順番に基づき前記搬送経路上に並ぶ搬送台車の配列順番を記憶する配列順番記憶手段を備え、
前記各モータ制御装置は、前記ネットワーク手段を介して搬送経路上の搬送台車の配置状況を参照し、その参照結果と、前記読取手段に読み取られる前記識別データと、前記配列順番記憶手段に記憶されている配列順番とに基づき前記対象となる搬送台車を特定することを特徴とするリニアコンベア。
【請求項5】
請求項2に記載のリニアコンベアにおいて、
前記伝送制御手段は、前記各搬送台車の識別データと前記位置補正用データとを対応付けて記憶するデータ記憶手段を含み、かつ、搬送台車を前記目標停止位置で停止させる際には、前記データ記憶手段に記憶された前記位置補正用データのうち対象となる搬送台車の位置補正用データに基づき前記目標停止位置を補正し、前記制御用データとして当該補正後の目標停止位置を示すデータを前記各モータ制御装置に伝送するものであり、
前記各モータ制御装置はそれぞれ、前記補正後の目標停止位置に基づいて前記電磁石の通電制御を行う、ことを特徴とするリニアコンベア。
【請求項6】
請求項5に記載のリニアコンベアにおいて、
前記データ記憶手段は、前記読取手段が読み取った前記識別データの順番に基づき前記搬送経路上に並ぶ搬送台車の配列順番をさらに記憶し、
前記伝送制御手段は、前記ネットワーク手段を介して搬送経路上の搬送台車の配置状況を参照し、その参照結果と、前記読取手段に読み取られる前記識別データと、前記データ記憶手段に記憶されている配列順番とに基づき前記対象となる搬送台車を特定することを特徴とするリニアコンベア。
【請求項7】
請求項2乃至6の何れか一項に記載のリニアコンベアにおいて、
前記リニアモータ固定子の複数の区間のうち特定の区間の通電制御を行うモータ制御装置が前記伝送制御手段としての機能を備える、ことを特徴とするリニアコンベア。
【請求項8】
請求項2乃至7の何れか一項に記載のリニアコンベアにおいて、
前記特定の地点は、搬送台車の所定の搬送起点又はこれに近接する位置を含むことを特徴とするリニアコンベア。
【請求項9】
請求項8に記載のリニアコンベアにおいて、
前記搬送起点又はこれに近接する位置で前記搬送経路内に搬送台車を挿入することが可能な挿入機構をさらに備えており、
前記読取手段は、この挿入機構の位置に配置されている、ことを特徴とするリニアコンベア。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のリニアコンベアにおいて、
前記搬送経路を形成するためのレール部材と当該レール部材に沿ってそれぞれ配置される前記電磁石とをそれぞれ含む複数のユニット部材を有し、これらユニット部材が前記レール部材の長手方向に直列に連結されていることにより、前記レール部材により前記搬送経路が形成されるとともに前記電磁石により前記リニアモータ固定子が形成されており、
前記各モータ制御装置はそれぞれ、前記リニアモータ固定子の一区間として前記ユニット部材に含まれる前記電磁石の通電制御を行う、ことを特徴とするリニアコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−102562(P2013−102562A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243561(P2011−243561)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】