説明

リニアソレノイドバルブ及びそれを用いた油圧装置

【課題】リニアソレノイドバルブに逆止弁機能を付加して、リニアソレノイドバルブのコンパクト化を図ると共に、それを用いた油圧装置の単純化及びコンパクト化を図る。
【解決手段】スリーブ26に凹溝39及び凹部40を形成し、該凹部40に可動部材41を移動自在に収容し、かつ凹溝39に可動部材41をドレンポート31に向けて付勢するねじバネ42を収容する。ドレンポート31からのドレン油圧により、可動部材41がバネ42に抗して移動し、ドレン油圧を解放する。リニアソレノイドバルブ21のバルブボディ45に位置決め、固定する凹溝47をドレンポート31と同一平面を含むように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧装置、特に自動車に搭載される自動変速機用の油圧装置に用いて好適なリニアソレノイドバルブに係り、詳しくはドレン時にドレン油(圧)を確保する逆止弁機能を有するリニアソレノイド並びにそれを用いた油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアソレノイドバルブから調圧された出力圧は、自動変速機の各摩擦係合要素(クラッチ又はブレーキ)を作動する油圧サーボに直接、又は該油圧サーボに出力する調圧(モジュレータ)バルブの制御室に導かれるが、油圧サーボ又は制御室及びその導通油路にオイル(ドレン油圧)を確保するため、上記リニアソレノイドバルブのドレンポートに連通してチェックバルブ(逆止弁)が設けられている。特に、リニアソレノイドバルブの出力圧が直接油圧サーボに連通する場合、油圧サーボにオイルが満たされていないと、作動遅れを生じるため、スムーズな変速に支障を来たす虞れがある。
【0003】
また、バルブボディに複数のリニアソレノイドを並設し、各ドレンポートを共通のドレン油路に連通する場合、ドレン油路のドレンオイルがドレンポート、特にドレン油路の下流側に位置するドレンポートに逆流することがあり、そのために上流側ドレン油路から下流側ドレンポートにオイルが流れ込まないように仕切り壁を形成した油圧制御が案出されている(特許文献1)。
【0004】
図5は、リニアソレノイドバルブ1をバルブボディ2に装着した従来の油圧装置を示す図であり、リニアソレノイドバルブ1は、電磁部3とバルブ部5とを有し、電磁部3をバルブボディ2の外部に露出した状態で、バルブ部5をバルブボディ2内に挿入して装着される。バルブ部5は、図4(A)に示すように、スリーブ6とスプール7とを有し、スリーブ6は、電磁部3のコア9と一体に固定されて固定部を構成し、スプール7は、スリーブ6内を摺動自在に嵌挿すると共に電磁部3のプランジャ10と連結されて可動部を構成する。スリーブ6の電磁部3に近い側における外周に凹溝11が形成されており、バルブボディ2に形成された孔を貫通して上記凹溝11に固定ピン12(図5参照)が係合して、リニアソレノイドバルブ1は、バルブボディ2に位置決めされる。
【0005】
バルブボディ2には、上記位置決めされた状態で、スリーブ6のドレンポート13に連通するようにドレン油路15が形成されており、該ドレン油路15はチェックバルブ16を介してオイル溜りに解放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−53999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記リニアソレノイドバルブ1は、同一のものが複数個用いられるのに対し、上記ドレン油路15は、他の油路や締結ボルト等が密集したバルブボディ2内に形成されているため、図5の(A),(B),(C),(D)に示すように、同一位置に形成することは困難である。このため、リニアソレノイドバルブ1のドレンポートは、様々なドレン油路形状に対応する必要があり、該ドレンポートの形状は、必要排出面積よりも大きくなる。また、前記固定ピン12用の凹溝11は、リニアソレノイドバルブ1の重心位置近傍が好ましいため、電磁部3寄りとなるが、前記各種ドレン油路に対応する排出面積の大きなドレンポートと干渉しない位置に配置され、かつ前記凹溝11と共に固定ピン12の係合部となるバルブボディ2の孔は、前記各種のドレン油路と干渉しない位置において強度上の関係で上記ドレン油路15から所定距離隔てて形成する必要があり、スリーブ6の長さが長くなり、これらが相俟って、リニアソレノイドバルブの小型化を妨げている。
【0008】
また、ドレン油路に連通して配置されるチェックバルブ16は、各リニアソレノイドバルブ用のドレン油路毎にそれぞれを配置する必要があり、ドレン油路及びチェックバルブの数の分、油圧装置を大型化してしまい、かつ油圧装置の構成を面倒にしてコストアップの原因となる。また、複数のドレンポートに共通するドレン油路に、逆流防止用の仕切り壁を設けることは、込み入った構造からなるバルブボディの構成を更に複雑化すると共に、その逆流防止効果も充分ではない。
【0009】
そこで、本発明は、リニアソレノイドバルブに前記逆止弁(チェックバルブ)の機能を一体に備え、もって上述した課題を解決したリニアソレノイドバルブ並びにそれを用いた油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電磁部(23)と、該電磁部により移動されるスプール(27)及び該スプールを嵌挿するスリーブ(26)を有するバルブ部(25)と、からなり、
前記スリーブ(26)は、入力ポート(33)、出力ポート(32)及びドレンポート(31)を有する、リニアソレノイドバルブ(21)において、
前記スリーブ(26)に、前記ドレンポート(31)からのドレン油を大気に解放する位置と該解放を遮断する位置とに移動自在に可動部材(41)を配置すると共に、該可動部材を遮断位置に向けて付勢する付勢部材(42)を設け、
前記可動部材(41)に、前記付勢部材(42)の付勢力に抗して前記ドレンポート(31)からのドレン油圧(p)が作用することにより、該可動部材を前記遮断位置(例えば図2参照)から解放位置(例えば図3参照)に切換えてなる、
ことを特徴とするリニアソレノイドバルブにある。
【0011】
例えば図1を参照して、前記付勢部材(42)は、一端(42a)が前記スリーブに係止され、他端(42b)が前記可動部材(41)に連係されて、前記スリーブ(26)の周囲に沿わせて配置されたねじりバネであり、
前記可動部材(41)が、前記スリーブの周囲に沿って移動自在である。
【0012】
例えば図1〜図3を参照して、前記スリーブ(26)の外周に、環状の凹溝(39)と、該凹溝及び前記ドレンポート(31)に連通する凹部(40)とを形成し、
前記凹溝(39)に前記ねじりバネ(42)を収容し、かつ前記凹部(40)に前記可動部材(41)を移動自在に収容して、前記ねじりバネ(42)及び可動部材(41)が、前記スリーブ(26)の外径寸法内に納まるように配置してなる。
【0013】
例えば図2,図3を参照して、前記リニアソレノイドバルブ(21)と、該リニアソレノイドバルブを装着したバルブボディ(45)と、を備えてなる油圧装置(U)において、
前記バルブボディ(45)における前記リニアソレノイドバルブ(21)を装着した孔部(46)の内径面に、前記ドレンポート(31)に連通すると共に前記バルブボディの端面(45a)に開口する切欠き(49)を設け、
前記ドレンポートと該切欠き(49)との連通が前記可動部材(41)で閉塞されている状態が前記遮断位置であり、かつ前記ドレンポート(31)からのドレン油圧が前記切欠き(49)の開口から解放された状態が前記解放位置である。
【0014】
また、前記スリーブ(26)の外周の一部に設けた凹溝(47)と前記バルブボディ(45)に設けた孔に固定ピン(12;図5参照)を挿入して、前記リニアソレノイドバルブ(21)を前記バルブボディ(45)に位置決めし、
該位置決め用の前記凹溝(47)と前記ドレンポート(31)とが、前記スリーブの軸方向に直交する同一平面を含むように配置されてなる。
【0015】
例えば図2(B),図3(B)を参照して、前記出力ポート(32)が、自動変速機の摩擦係合要素を作動する油圧サーボ(S)に直接連通してなる。
【0016】
前記リニアソレノイドバルブ(21)が複数個前記バルブボディ(45)に装着されてなる。
【0017】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明によると、スリーブに、可動部材と付勢部材とを配置して、リニアソレノイドバルブ自体に逆止弁機能に付加したので、専用のドレン油路及びチェックバルブを必要とせず、該リニアソレノイドバルブを装着した油圧装置の構造を簡単にして、コンパクト化及びコストダウンを図ることができ、またリニアソレノイドバルブの出力ポートに連通する油路並びに油室の油(オイル)を確実に確保することができると共に、ドレン油路等からのドレンポートへのオイルの逆流を確実に防止することができる。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、前記付勢部材がねじりバネであり、かつ可動部材がスリーブの周囲に沿って移動自在であるので、ソレノイドバルブは、簡単な構成で、可動部材の可動範囲も含めてコンパクトな構成となる。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、前記ねじりバネ及び可動部材は、スリーブの外周に形成された凹溝及び凹部に収容されて、スリーブの外径寸法内に納められるので、リニアソレノイドバルブの径方向寸法を、例えば従来のリニアソレノイドバルブと同様な寸法からなるコンパクトな構成とすることができる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、前記リニアソレノイドバルブをバルブボディの孔部に装着して、該孔部内径面に、該バルブボディの端面に開口する切欠きを形成して、該切欠きによりドレンポートからのドレン油圧が前記可動部材に作用して、解放位置と遮断位置に切換えるので、信頼性の高い逆止弁機能を備えたものでありながら、油圧装置の構成を単純化してコンパクトに構成することができる。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、リニアソレノイドバルブをバルブボディに対して位置決めして固定する固定ピン用の凹溝が、ドレンポートと同一平面を含むように配置したので、スリーブ、従って該スリーブを用いるリニアソレノイドバルブの軸方向寸法の短縮化を図ることができ、各種油路及び締結用ボルトが込み入って配置されるバルブボディを含む油圧装置の単純化及びコンパクト化を図ることができる。
【0023】
請求項6に係る本発明によると、リニアソレノイドバルブの出力ポートを自動変速機の摩擦係合要素用の油圧サーボに直接連通したので、油圧サーボ及びそれに連通する油路の油(オイル)を確保して、自動変速機の応答性を向上することができる。
【0024】
請求項7に係る本発明によると、リニアソレノイドバルブを複数個バルブボディに装着したものでありながら、各リニアソレノイドバルブは、それぞれ出力ポートに連通する油圧サーボ等の油室のオイルを確保できると共にドレンポートへのオイルの逆流が確実に防止され、油圧装置のコンパクト化及び信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るリニアソレノイドバルブを示す斜視図であり、(A)は全体組立図、(B)は分解図、(C)は異なる角度からみた図。
【図2】リニアソレノイドバルブの遮断状態を示す図で、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)はA−A断面図、(D)はB−B断面図。
【図3】リニアソレノイドバルブの解放状態を示す図で、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)はC部分拡大図、(D)はA−A断面図、(E)はB−B断面図。
【図4】(A)は従来のリニアソレノイドバルブを示す正面断面図、(B)は本発明によるリニアソレノイドバルブを示す正面断面図。
【図5】従来のリニアソレノイドバルブ及びバルブボディを示す正面図及びC−C断面図で、(A)〜(D)はそれぞれ異なるドレン油路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態を説明する。リニアソレノイドバルブ21は、図1に示すように、電磁部23とバルブ部25とを有し、電磁部23とバルブ部25とは軸方向に整列して、端部同士を連結して一体に構成されている。電磁部23は、図4(B)に示すように、コイルが巻かれているコア9と該コイルの励磁により軸方向に移動するプランジャ10とを有し、図4(A)に示す従来のリニアソレノイドバルブ1の電磁部3と同じものを用いることが可能である。
【0027】
バルブ部25は、スリーブ26と該スリーブに嵌挿して軸方向に移動自在なスプール27とを有しており、スリーブ26は、その一端部で電磁部23のコア9と一体に固定され、かつスプール27はプランジャ10と一体に移動するように接触している。スリーブ26の他端部とスプール27の先端との間にはスプリング30が縮設されて、該スプール27の基端が前記プランジャ10に接触するように付勢している。スプール27には、その電磁部23側から所定間隔を隔ててドレンポート31,出力ポート32,入力ポート33及びフィードバックポート35が順に形成されている。また、スプール27は、2個のランド部27a,27bと、両ランド部の間のテーパ形状27cにより、入力ポート33の所定圧を出力ポート32に調圧して出力し、また一方のランド部27bと先端側のランド部27dとの間に面積差に前記フィードバックポート35から上記出力調圧が作用する。
【0028】
前記スプール27の基端(電磁部)側端と前記ドレンポート31との間には、図1〜図3に示すように、該スプールの外周に環状の凹溝39が形成されており、また前記ドレンポート31に連通すると共に前記凹溝39の一部に連通する凹部40が形成されている。該凹部40内には、該凹部の底面に沿うように湾曲した板状の可動部材41が周方向に移動自在に収容されており、前記凹溝39には付勢部材であるねじり(コイル)バネ42が収容されている。該ねじりバネ42は、図1(B)に詳示するように、その一端42aが内径側に屈曲し、その他端42bが軸方向に屈曲しており、上記一端42aが前記凹溝39の底面に形成された穴39a(図2(C)及び図3(D)参照)に係止され、上記他端42bが前記可動部材41に当接している。
【0029】
可動部材41は、図1(B)及び図3(C)に詳示するように、周方向の一端がスリーブ軸方向に対して傾斜したテーパ面41aとなっており、他端に前記ねじりバネの他端42bが当接する切欠き部41bとなっている。また、該可動部材41の一側面41cは、前記凹部40の奥側面40aに摺接するように直交平面に平行に形成されており、かつ前記ねじりバネ42が該可動部材41を前記ドレンポート31方向(遮断方向)に向けて付勢している。前記凹部40のドレンポート31側は、基端(電磁部)側がスプール外径と同径の突出部40bにより凹溝39との連通部が狭くなるようになっており、該突出部40bに前記可動部材41のテーパ面41aの一部が当接した状態(遮断位置)で前記ドレンポート31が区画された空所になっている。
【0030】
前記ねじりバネ42が前記凹溝39に収容され、かつ前記可動部材41が前記凹部40に収容されて、スリーブ26に取付けられた状態にあっては、図2(C)(D)及び図3(D)(E)に示すように、スプール27の外径寸法に納まるように配置され、かつねじりバネ42は、可動部材41の移動に伴う径方向変化を吸収する余裕が上記外径寸法内にある。
【0031】
逆止弁機能となる上記可動部材41及びねじりバネ42が取付けられた本リニアソレノイドバルブ21は、図2(B)及び図3(B)に示すように、電磁部23を外部に露出した状態でバルブボディ45に装着される。バルブボディ45には、複数のリニアソレノイドバルブ21をそれぞれ嵌挿し得る複数の孔部46が形成されている。なお、上記複数のリニアソレノイドバルブ21は同じものが用いられることが好ましく、従って出力ポート32の連通油路の経路は異なるが、上記孔部46も略々同形状からなる。リニアソレノイドバルブ21のスリーブ26には、図2(A)(D)及び図3(A)(E)に示すように、周囲部の一部を弦状の切欠いた凹溝47が形成されており、前記バルブボディの孔部46の周囲部にも、固定用孔(図示せず)が穿設されている。そして、該固定孔に上記凹溝47を整列した状態で、固定ピン12(図5参照)が孔及び凹溝に亘って貫通して、リニアソレノイドバルブ21がバルブボディ45に抜止め、固定される。これにより、リニアソレノイドバルブ21は、バルブボディ45に対して、軸方向及び回転方向が位置決めされて、バルブの各ポートがバルブボディの各油路に整合、保持される。
【0032】
前記固定用凹溝47とドレンポート31とは、軸方向に直交する同一平面を含む位置、即ち凹溝とドレンポートは、径方向からみて軸方向に少なくともその一部がオーバラップするように配置されている。これは、前記可動部材による逆止弁機構がそれぞれ各リニアソレノイドバルブに設けられており、各種ドレン油路との連通を考慮することなくドレンポートの位置を設定でき、ランド部27aの短縮化が可能になる。これにより、図4の(A)(従来のリニアソレノイドバルブ1)と図4の(B)(本発明のリニアソレノイドバルブ21)とを比較して、本願発明のリニアソレノイドバルブ21は、従来のものに比して軸方向長さが短くなっている(全長短縮)。
【0033】
前記バルブボディ45の孔部46の内径面の端面部分には、前記ドレンポート31に連通しかつバルブボディ45の露出した電磁部23側の端面45aに開口する切欠き49が形成されている。該切欠き49は、前記スリーブ26の可動部材41が収容されている凹部40に対向するように位置決めされており(図3(C)参照)、可動部材41がドレンポート31からのドレン油圧pによりねじりバネ42の付勢力に抗して移動した状態で、ドレンポート31が前記凹部40及び切欠き49を介して端面45aの開口に連通して上記ドレン油圧が大気に解放される(解放位置)。
【0034】
従って、リニアソレノイドバルブ21は、ドレンポート31からドレンされていない場合、ねじりバネ42の付勢力により可動部材41が凹部40のドレンポート側面(突出部40b)に当接し、この状態が、ドレンポート31と切欠き49との連通を可動部材41で閉塞した遮断位置となる。この状態では、ドレンポート31は、その外径側は上記切欠き49がないので、スプール内面により閉じられており、かつ上記凹部40への連通は、上記可動部材41により閉塞されている。出力ポート32がドレンポート31に連通するドレン位置にあっては、ドレンポート31からのドレン油圧が、図3(C)に示すように、可動部材41の一側面に作用し、該可動部材41をねじりバネ42に抗して移動する。この状態が、上記解放位置となり、ドレンポート31からのドレン油圧は、凹部40及び切欠き49を介して開口から大気に解放される。
【0035】
この際、可動部材41の上記ドレン油圧が作用する上記一側面はテーパ面41aとなっており、上記ドレン油圧pは、可動部材41を解放位置方向に作用すると共に、その奥側面41cを凹部40の奥側面40aに押し付ける分力も作用し、可動部材41が凹部40から外れることを防止している。上記可動部材41は、その上面及び奥側面41c及びテーパ面41aの一部をスリーブ26に対するシール面として、かつ凹部40及び切欠き49を解放通路として、逆止弁機能を有することになる。
【0036】
上記複数のリニアソレノイドバルブ21をバルブボディ45に装着した油圧装置Uは、図2(B)、図3(B)に示すように、自動車に搭載される自動変速機の油圧装置に適用して好適である。リニアソレノイドバルブ21の入力ポート33は、プライマリレギュレータバルブのライン圧ポートに連通して、ライン圧(所定圧)PLが供給される。出力ポート32は、自動変速機の伝動経路を切換える摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ)を係合又は非係合(解放)に作動する各油圧サーボSに直接連通している。フィードバックポート35は出力ポート32からの出力圧がオリフィス等を介して連通されている。
【0037】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、電子制御部(ECU)からの電気信号により、リニアソレノイドバルブ21の電磁部の電磁力を制御して、スプール27を移動する。該スプール27は、スプリング30及びフィードバックポート35からのフィードバック圧による一方向付勢力に対抗して、上記電磁力によるプランジャ10からの軸力が作用して、出力ポート32を入力ポート33とドレンポート31との連通割合を変化することにより、出力ポート32からの出力圧がリニアに調圧される。出力ポート32の調圧を昇圧することにより、油圧サーボSの油圧を滑らかに上昇又は下降して、摩擦係合要素を適正なタイミングで係合する。
【0038】
出力ポート32と入力ポート33とが全通して油圧サーボSに所定圧(ライン圧)を供給し、摩擦係合要素が係合した状態にあっては、ドレンポート31にドレン油圧は作用せず、可動部材41は、ねじりバネ42の付勢力により、その一側面41aが突出部40bに当接した遮断位置にあり、ドレンポート31は閉塞されている。
【0039】
摩擦係合要素を上記係合状態から解放状態に切換える際、リニアソレノイドバルブ21のバルブ部25は、入力ポート33を遮断すると共に、出力ポート32とドレンポート31との連通割合を増大して、出力ポート32からの調圧を降圧する。この状態では、油圧サーボSに満たされた油圧が、出力ポート32を通してドレンポート31に導かれ、該ドレン油圧pが可動部材41の一側面(テーパ面)41aに作用して、該可動部材41をねじりバネ42に抗して移動する。これにより、上記ドレンポート31のオイルは、凹部40から切欠き49を介してバルブボディの端面45aの開口に排出され、ドレン油圧は大気に解放される。
【0040】
そして、油圧サーボSのオイルが上記ドレンポート31を通して、開口から完全に排出されて摩擦係合要素の完全解放状態になると、ドレンポート31からのオイルの排出はなくなる。ドレン油圧が作用しない該完全解放状態にあっては、可動部材41は、ねじりバネ42により遮断位置となり、ドレンポート31は閉塞される。この状態では、該ドレンポート31に出力ポート32及び油路を介して連通している油圧サーボSは、その解放(収縮)位置にあってオイルが満たされた状態に保持される。従って、再度出力ポート32から出力して、油圧サーボSに油圧を供給する際、直ちに油圧サーボSは所定圧に昇圧して、応答遅れを生じることなく、所定摩擦係合要素を係合することができる。
【0041】
上記リニアソレノイドバルブ21は、コンパクト化、特に軸方向に短縮され、かつバルブボディ45に専用のドレン油路及びチェックバルブを必要としないので、油圧装置Uの簡単化及びコンパクト化を図ることができ、特に多数のリニアソレノイドバルブ21を並設する必要がある自動変速機の油圧制御装置に適用して、その効果は顕著である。また、可動部材41が遮断位置にある場合、各ドレンポート31はそれぞれ閉塞されているので、他のドレンオイル又はオイル溜りのオイルがドレンポートに逆流することは、確実に阻止される。
【0042】
なお、上述した実施の形態は、可動部材41を別部材からなるねじりバネ42により付勢したが、これは、可動部材に板バネ等で付勢部材を一体に構成してもよく、また可動部材の移動方向は、周方向に限らず、径方向でもよい。また、本リニアソレノイドバルブ21は、その出力圧を油圧サーボに直接供給する自動変速機の油圧装置に用いて好適であるが、これに限らず、上記出力圧をモジュレータバルブの制御油室に供給し、該モジュレータバルブの出力調圧を油圧サーボに供給する油圧装置に適用してもよく、更に自動変速機の油圧制御装置以外の油圧装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
12 固定ピン
21 リニアソレノイドバルブ
23 電磁部
25 バルブ部
26 スリーブ
27 スプール
31 ドレンポート
32 出力ポート
33 入力ポート
39 凹溝
40 凹部
41 可動部材
45 バルブボディ
45a 端面
46 孔部
47 位置決め用凹溝
49 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁部と、該電磁部により移動されるスプール及び該スプールを嵌挿するスリーブを有するバルブ部と、からなり、
前記スリーブは、入力ポート、出力ポート及びドレンポートを有する、リニアソレノイドバルブにおいて、
前記スリーブに、前記ドレンポートからのドレン油を大気に解放する位置と該解放を遮断する位置とに移動自在に可動部材を配置すると共に、該可動部材を遮断位置に向けて付勢する付勢部材を設け、
前記可動部材に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ドレンポートからのドレン油圧が作用することにより、該可動部材を前記遮断位置から解放位置に切換えてなる、
ことを特徴とするリニアソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記付勢部材は、一端が前記スリーブに係止され、他端が前記可動部材に連係されて、前記スリーブの周囲に沿わせて配置されたねじりバネであり、
前記可動部材が、前記スリーブの周囲に沿って移動自在である、
請求項1記載のリニアソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記スリーブの外周に、環状の凹溝と、該凹溝及び前記ドレンポートに連通する凹部とを形成し、
前記凹溝に前記ねじりバネを収容し、かつ前記凹部に前記可動部材を移動自在に収容して、前記ねじりバネ及び可動部材が、前記スリーブの外径寸法内に納まるように配置してなる、
請求項2記載のリニアソレノイドバルブ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載のリニアソレノイドバルブと、該リニアソレノイドバルブを装着したバルブボディと、を備えてなる油圧装置において、
前記バルブボディにおける前記リニアソレノイドバルブを装着した孔部の内径面に、前記ドレンポートに連通すると共に前記バルブボディの端面に開口する切欠きを設け、
前記ドレンポートと該切欠きとの連通が前記可動部材で閉塞されている状態が前記遮断位置であり、かつ前記ドレンポートからのドレン油圧が前記切欠きの開口から解放された状態が前記解放位置である、
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項5】
前記スリーブの外周の一部に設けた凹溝と前記バルブボディに設けた孔に固定ピンを挿入して、前記リニアソレノイドバルブを前記バルブボディに位置決めし、
該位置決め用の前記凹溝と前記ドレンポートとが、前記スリーブの軸方向に直交する同一平面を含むように配置されてなる、
請求項4記載の油圧装置。
【請求項6】
前記出力ポートが、自動変速機の摩擦係合要素を作動する油圧サーボに直接連通してなる、
請求項4又は5記載の油圧装置。
【請求項7】
前記リニアソレノイドバルブが複数個前記バルブボディに装着されてなる、
請求項4ないし6のいずれか記載の油圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96446(P2013−96446A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237390(P2011−237390)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】