リニア型振動アクチュエータ
【課題】超音波振動を利用して外部の駆動対象物を相対移動させることができるリニア型振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】駆動制御部10から下部ステータ2の一端のすだれ状電極6と上部ステータ3の一端のすだれ状電極8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極7および9を受波電極として整合をとることにより、圧電基板から形成されている下部ステータ2の上面および上部ステータ3の下面に+X方向に進行する表面弾性波が発生する。この表面弾性波により、板バネ5で下部ステータ2と上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されているスライダ4が−X方向に移動し、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が相対移動する。
【解決手段】駆動制御部10から下部ステータ2の一端のすだれ状電極6と上部ステータ3の一端のすだれ状電極8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極7および9を受波電極として整合をとることにより、圧電基板から形成されている下部ステータ2の上面および上部ステータ3の下面に+X方向に進行する表面弾性波が発生する。この表面弾性波により、板バネ5で下部ステータ2と上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されているスライダ4が−X方向に移動し、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が相対移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニア型振動アクチュエータに係り、特に超音波振動を利用して駆動対象物を相対的に移動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータを用いて物体を搬送する装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された搬送装置は、一対の棒状の弾性体の間に被搬送物である磁気カードを圧接挟持させ、双方の弾性体にそれぞれ接着されている圧電セラミックスに高周波電力を供給して、これら弾性体に超音波の進行波を発生させることにより磁気カードを搬送している。超音波振動の利用により、薄型でありながら大きな推力を有する搬送装置が得られる。
特許文献1の搬送装置を磁気カードリーダライタ等に搭載することで、磁気カードを高速で搬送し、その搬送中に磁気ヘッドにより磁気カードからのデータの読み出し、および磁気カードへのデータの書き込みを行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開平5−266260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ロボットハンド等において、手や指の移動に特許文献1のような搬送装置を利用しようとすると、駆動対象物である手や指を一対の棒状または板状の弾性体で圧接挟持し、この状態で双方の弾性体に超音波の進行波を発生させなければならない。このため、ロボットハンドとしては、手や指の両側に配置される弾性体が邪魔な存在となり、また手や指の移動方向も、弾性体における進行波の進行方向に沿った方向に限定されることとなり、極めて使い勝手の悪いものとなってしまう。これは、駆動対象物が搬送装置の内部に位置することに由来している。また、特に複数の対象物を駆動させる場合、アクチュエータが大きくなるため、小型化が課題であった。
そこで、この発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、超音波振動を利用して外部の駆動対象物を相対移動させることができるリニア型振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るリニア型振動アクチュエータは、板状または棒状のステータの表面に沿ってスライダが所定の方向へ移動自在に配置されたスライド機構部と、前記スライダをスライド機構部の外部の駆動対象物に連結する連結部材と、前記ステータの表面に対して前記スライダを加圧接触させる予圧手段と、前記ステータおよび前記スライダの対向面のうちの一方に前記所定の方向に沿った進行波を発生させる進行波発生手段とを備えており、進行波発生手段で進行波を発生させてスライド機構部におけるスライダをステータの表面に沿って移動させることにより連結部材を介して駆動対象物を相対移動させるものである。
なお、「駆動対象物を相対移動させる」とは、次の3つの態様を含むものである。
(1)位置が固定しているステータに対して駆動対象物が移動する、
(2)位置が固定している駆動対象物に対してステータが移動する、
(3)ステータと駆動対象物が共に移動しながらステータと駆動対象物との相対位置が変化する。
【0006】
スライド機構部は、互いに平行に配置された一対のステータとこれら一対のステータの間に配置されたスライダとを含むように構成することができる。
好ましくは、スライド機構部は、ステータの表面に沿ったスライダの移動を案内するリニアガイドを有している。
【0007】
また、複数のスライド機構部を互いに積層し、共通の予圧手段で互いに積層された複数のスライド機構部を加圧することによりそれぞれのスライド機構部においてステータの表面に対しスライダを加圧接触させ、複数のスライド機構部のスライダを複数の連結部材を介してそれぞれ複数の駆動対象物に連結し、複数のスライド機構部のスライダを複数の進行波発生手段でそれぞれ移動させるようにしてもよい。
この場合、複数のスライド機構部が、それぞれ互いに平行に配置された上部ステータおよび下部ステータとこれら上部ステータおよび下部ステータの間に配置されたスライダとを含み、上段のスライド機構部の下部ステータが下段のスライド機構部の上部ステータを兼ねるように構成することもできる。
また、複数のスライド機構部が、それぞれステータの表面に沿ったスライダの移動を案内する複数のリニアガイドを有し、予圧手段が、複数のリニアガイドを介して複数のスライド機構部を加圧するようにしてもよい。
【0008】
なお、進行波発生手段は、進行波として表面弾性波を発生させることができる。
この場合、ステータを圧電基板から形成し、進行波発生手段として、ステータの表面に形成されたすだれ状電極と、このすだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いればよい。あるいは、スライダを圧電基板から形成し、進行波発生手段として、スライダの表面に形成されたすだれ状電極と、このすだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いてもよい。
【0009】
また、進行波発生手段は、進行波としてたわみ進行波を発生させることもできる。
この場合、ステータを弾性体から形成し、進行波発生手段として、ステータの表面に配置された圧電素子と、この圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いればよい。あるいは、スライダを弾性体から形成し、進行波発生手段として、スライダの表面に配置された圧電素子と、この圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、超音波振動を利用して外部の駆動対象物を相対的に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。一端が開放されたケーシング1内にそれぞれ圧電基板から形成された一対の平板形状の下部ステータ2および上部ステータ3が互いに平行に配置され、これらのステータ2および3の間に金属等から形成されたスライダ4が配置されている。下部ステータ2はケーシング1内の底部に固定され、下部ステータ2との間にスライダ4を挟むように上部ステータ3が配置されており、これら下部ステータ2、上部ステータ3およびスライダ4によりスライド機構部Sが形成されている。さらに、上部ステータ3の上面とケーシング1の天井面との間に予圧手段として板バネ5が挿入されており、この板バネ5の付勢力によって上部ステータ3が下部ステータ2の方向に押圧され、スライダ4が下部ステータ2および上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。
【0012】
スライダ4を臨む下部ステータ2の上面の両端部付近にはそれぞれすだれ状電極6および7が形成され、同様に、スライダ4を臨む上部ステータ3の下面の両端部付近にはそれぞれすだれ状電極8および9が形成されている。そして、これらすだれ状電極6〜9に高周波電源を有する駆動制御部10が電気的に接続されている。なお、すだれ状電極6〜9と駆動制御部10により進行波発生手段が形成されている。
ここで、下部ステータ2と上部ステータ3の一端のすだれ状電極6および8から他端のすだれ状電極7および9へ向かう方向を+X方向、他端のすだれ状電極7および9から一端のすだれ状電極6および8へ向かう方向を−X方向とする。
【0013】
また、スライダ4に連結部材としてのワイヤ11の一端が接続され、ワイヤ11の他端がケーシング1の開放端部を通ってケーシング1の外部へ延出され、駆動対象物12に接続されている。駆動対象物12は、+X方向および−X方向に移動自在に配置されると共に図示しないバネ等の付勢手段によりケーシング1から遠ざかる方向すなわち+X方向へ付勢されているものとする。
【0014】
次に、この実施の形態1の動作について説明する。図2に示されるように、駆動制御部10内の高周波電源13から下部ステータ2の一端のすだれ状電極6に高周波電圧を印加すると、圧電基板から形成されている下部ステータ2の上面に表面弾性波が励振され、他端のすだれ状電極7に向けて伝搬する。このとき、他端のすだれ状電極7に駆動制御部10内の整合回路14を接続して、このすだれ状電極7を受波電極として整合をとることにより、表面弾性波はこのすだれ状電極7で吸収され、反射波の発生が抑制されて、表面弾性波は一端のすだれ状電極6から他端のすだれ状電極7に向かう+X方向の進行波となる。
【0015】
なお、すだれ状電極7で吸収された表面弾性波のエネルギーは、エネルギー消費用の抵抗等で消費させることもできるが、このエネルギーを一端のすだれ状電極6側へ還流させて進行波の励振に利用することによりエネルギー効率を大幅に向上させることができる。
同様に、駆動制御部10から上部ステータ3の一端のすだれ状電極8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極9を受波電極として整合をとることにより、上部ステータ3の下面に一端のすだれ状電極8から他端のすだれ状電極9に向けて+X方向に進行する表面弾性波が発生する。
【0016】
これら下部ステータ2の上面と上部ステータ3の下面に発生した+X方向の進行波により、下部ステータ2と上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されているスライダ4が、下部ステータ2と上部ステータ3の表面に沿って進行波とは逆方向、すなわち他端のすだれ状電極7および9から一端のすだれ状電極6および8に向けて−X方向に移動する。このスライダ4の移動に伴い、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力に抗して−X方向に相対移動することとなる。
【0017】
逆に、下部ステータ2と上部ステータ3の他端のすだれ状電極7および9にそれぞれ高周波電圧を印加すると共に一端のすだれ状電極6および8をそれぞれ受波電極として用いることにより、下部ステータ2の上面と上部ステータ3の下面にそれぞれ他端のすだれ状電極7および9から一端のすだれ状電極6および8に向けて−X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ4を+X方向へ移動させることができる。これにより、スライダ4と駆動対象物12とを連結するワイヤ11の張力が下がり、駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力を受けて+X方向に相対移動する。
【0018】
なお、図3に示されるように、下部ステータ2および上部ステータ3と平行に延びるリニアガイド15をケーシング1内に設置し、このリニアガイド15によりスライダ4の移動を案内すれば、下部ステータ2と上部ステータ3の表面に沿ってスライダ4を円滑に移動させることができる。
【0019】
実施の形態2
図4に、実施の形態2に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態2は、実施の形態1で用いられたスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成したものである。一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、下段のスライド機構部Sの上部ステータ3の上面上に上段のスライド機構部Sの下部ステータ2が位置している。さらに、最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入されている。この板バネ5は、4つのスライド機構部Sに共通してそれぞれ予圧手段として作用し、各スライド機構部Sのスライダ4を下部ステータ2および上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触させる。
4つのスライド機構部Sのスライダ4はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物12に連結されている。さらに、4つのスライド機構部Sのすだれ状電極6〜9にそれぞれ対応する駆動制御部10が電気的に接続されている。
【0020】
このような構成により、4つのスライド機構部Sのスライダ4を、それぞれ対応する駆動制御部10によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物12を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ4の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
さらに、進行波として表面弾性波を用いているので、各ステータ2および3のスライダ4とは反対側の面は振動することがなく、このため各ステータ2および3のこれらの面のどの部分でも予圧をかけることができ、予圧手段の構成を簡素化することが可能となる。
【0021】
実施の形態3
図5および図6に、実施の形態3に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態3は、図4に示した実施の形態2のアクチュエータにおいて、上段のスライド機構部Sの下部ステータ2が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼ねたものである。
進行波として表面弾性波を用いているので、一枚のステータの両面にそれぞれ異なる表面弾性波を発生させることができる。そこで、この実施の形態3では、上段のスライド機構部Sの下部ステータ2の上面の両端部付近にそれぞれすだれ状電極6および7を形成してこれらすだれ状電極6および7を上段のスライド機構部Sの下側の電極として用いると共に、この下部ステータ2の下面の両端部付近にそれぞれすだれ状電極8および9を形成してこれらすだれ状電極8および9を下段のスライド機構部Sの上側の電極として用いている。
【0022】
このような構成とすることにより、互いに積層された上段のスライド機構部Sと下段のスライド機構部Sの間に位置するステータを一枚とすることができ、さらに薄型で構造が簡単な多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
【0023】
実施の形態4
図7に、実施の形態4に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態4は、実施の形態1において、圧電基板から形成された下部ステータ2および上部ステータ3の間に金属等から形成されたスライダ4を挟持する代わりに金属等から形成された下部ステータ22および上部ステータ23の間に圧電基板から形成されたスライダ24を挟持し、スライダ24の下面の両端部付近にすだれ状電極6および7を形成すると共にスライダ24の上面の両端部付近にすだれ状電極8および9を形成したものである。下部ステータ22、上部ステータ23およびスライダ24によりスライド機構部Sが形成されている。また、すだれ状電極6〜9に駆動制御部10が電気的に接続されている。
なお、板バネ5の付勢力により、スライダ24が下部ステータ22および上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。また、スライダ24にワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が連結されている。
【0024】
駆動制御部10からスライダ24の一端のすだれ状電極6および8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極7および9を受波電極として整合をとることにより、スライダ24の両面においてすだれ状電極6および8からすだれ状電極7および9に向かって+X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ24が+X方向に移動する。一方、駆動制御部10からスライダ24の他端のすだれ状電極7および9に高周波電圧を印加すると共に一端のすだれ状電極6および8を受波電極として整合をとることにより、スライダ24の両面においてすだれ状電極7および9からすだれ状電極6および8に向かって−X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ24が−X方向に移動する。
したがって、実施の形態1と同様に、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12を移動させることが可能となる。
【0025】
実施の形態5
図8に、実施の形態5に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態5は、実施の形態4で用いられたスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成すると共に上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼ねたものである。一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、互いに重なるスライド機構部Sの間には、上段のスライド機構部Sの下部ステータ22のみが位置し、この上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼用している。最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入され、この板バネ5により4つのスライド機構部Sのスライダ24がそれぞれ下部ステータ22と上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。
【0026】
図示省略されているが、4つのスライド機構部Sのスライダ24はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物に連結されている。さらに、4つのスライド機構部Sのスライダ24の両面に形成されたすだれ状電極6〜9にそれぞれ対応する駆動制御部が電気的に接続されている。
【0027】
このような構成により、上述した実施の形態2および3と同様に、4つのスライド機構部Sのスライダ24を、それぞれ対応する駆動制御部によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ24の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
【0028】
実施の形態6
図9に、実施の形態6に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態6は、実施の形態1において、下部ステータ2および上部ステータ3の代わりに弾性体からなる下部ステータ32および上部ステータ33を用いると共にすだれ状電極6および7の代わりに下部ステータ32の上面の両端部付近にそれぞれ圧電素子36および37を貼付し、すだれ状電極8および9の代わりに上部ステータ33の下面の両端部付近にそれぞれ圧電素子38および39を貼付したものである。下部ステータ32、上部ステータ33およびスライダ4によりスライド機構部Sが形成されている。また、圧電素子36〜39に駆動制御部10が電気的に接続されている。
なお、板バネ5の付勢力により、スライダ4が下部ステータ32および上部ステータ33の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。また、スライダ4にワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が連結されている。
【0029】
図10に示されるように、駆動制御部10内の高周波電源13から下部ステータ2の一端の圧電素子36に高周波電圧を印加すると、弾性体からなる下部ステータ32にたわみ振動が発生し、他端の圧電素子37に向けて伝搬する。このとき、他端の圧電素子37に駆動制御部10内の整合回路14を接続して、この圧電素子37を吸振側素子として整合をとることにより、たわみ振動はこの圧電素子37で吸収され、反射波の発生が抑制されて、一端の圧電素子36から他端の圧電素子37に向かう+X方向のたわみ進行波となる。
【0030】
なお、他端の圧電素子37で吸収されたたわみ振動のエネルギーを一端の圧電素子36側へ還流させてたわみ振動の励振に利用することによりエネルギー効率を大幅に向上させることができる。
同様に、駆動制御部10から上部ステータ33の一端の圧電素子38に高周波電圧を印加すると共に他端の圧電素子39を吸振側素子として整合をとることにより、上部ステータ33の下面に一端の圧電素子38から他端の圧電素子39に向けて+X方向に進行するたわみ進行波が発生する。
【0031】
これら下部ステータ32の上面と上部ステータ33の下面に発生した+X方向の進行波により、下部ステータ32と上部ステータ33の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されているスライダ4が、下部ステータ32と上部ステータ33の表面に沿って進行波とは逆方向、すなわち−X方向に移動する。このスライダ4の移動に伴い、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力に抗して−X方向に移動することとなる。
【0032】
逆に、下部ステータ32と上部ステータ33の他端の圧電素子37および39にそれぞれ高周波電圧を印加すると共に一端の圧電素子36および38をそれぞれ吸振側素子として用いることにより、下部ステータ32の上面と上部ステータ33の下面にそれぞれ他端の圧電素子37および39から一端の圧電素子36および38に向けて−X方向に進行するたわみ進行波が発生し、スライダ4を+X方向へ移動させることができる。これにより、スライダ4と駆動対象物12とを連結するワイヤ11の張力が下がり、駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力を受けて+X方向に移動する。
【0033】
実施の形態7
図11および図12に、実施の形態7に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態7は、たわみ進行波を利用するスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成したものである。各スライド機構部Sは、弾性体からなる上部ステータ33と、この上部ステータ33と平行に延びるリニアガイド40と、リニアガイド40によって移動自在に保持されたスライダ4とから形成されている。上部ステータ33の下面がスライダ4の上面に当接し、リニアガイド40の脚部41がスライダ4の下面より下方に位置している。
【0034】
一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、下段のスライド機構部Sの上部ステータ33の上面上に上段のスライド機構部Sのリニアガイド40の脚部41が載っている。最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入されている。この板バネ5の付勢力により最上段のスライド機構部Sの上部ステータ33がスライダ4に対して加圧され、さらにリニアガイド40を介して下段のスライド機構部Sの上部ステータ33に板バネ5の付勢力が作用する。このようにして、板バネ5は、4つのスライド機構部Sに共通してそれぞれ予圧手段として作用し、各スライド機構部Sのスライダ4を上部ステータ33の下面に対して所定の加圧力で加圧接触させる。
【0035】
各スライド機構部Sの上部ステータ33の下面の両端部付近にそれぞれ圧電素子38および39が貼付されている。図示省略されているが、4つのスライド機構部Sの上部ステータ33の圧電素子38および39にそれぞれ対応する駆動制御部が電気的に接続されている。また、4つのスライド機構部Sのスライダ4はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物に連結されている。
【0036】
このような構成により、上述した実施の形態2、3および5と同様に、4つのスライド機構部Sのスライダ4を、それぞれ対応する駆動制御部によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ4の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
【0037】
実施の形態8
図13に、実施の形態8に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態8は、実施の形態6において、弾性体からなる下部ステータ32および上部ステータ33の表面に圧電素子36〜39を貼付する代わりに弾性体から形成されたスライダ44の上面の両端部付近にそれぞれ圧電素子36および37を貼付し、このスライダ44を金属等から形成された下部ステータ22および上部ステータ23の間に挟持したものである。下部ステータ22、上部ステータ23およびスライダ44によりスライド機構部Sが形成されている。また、スライダ44の圧電素子36および37に駆動制御部10が電気的に接続されている。
なお、板バネ5の付勢力により、スライダ44が下部ステータ22および上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。また、スライダ44にワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が連結されている。
【0038】
駆動制御部10からスライダ44の一端の圧電素子36に高周波電圧を印加すると共に他端の圧電素子37を吸振側素子として整合をとることにより、弾性体からなるスライダ44に一端の圧電素子36から他端の圧電素子37に向かう+X方向のたわみ進行波が発生し、スライダ44が+X方向に移動する。一方、駆動制御部10からスライダ44の他端の圧電素子37に高周波電圧を印加すると共に一端の圧電素子36を吸振側素子として整合をとることにより、弾性体からなるスライダ44に他端の圧電素子37から一端の圧電素子36に向かう−X方向のたわみ進行波が発生し、スライダ44が−X方向に移動する。
したがって、実施の形態6と同様に、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12を移動させることが可能となる。
なお、スライダ44の上面に圧電素子36および37を貼付する代わりに、スライダ44の下面の両端部付近にそれぞれ圧電素子36および37を貼付してもよい。
【0039】
実施の形態9
図14に、実施の形態9に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態9は、実施の形態8で用いられたスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成すると共に上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼ねたものである。一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、互いに重なるスライド機構部Sの間には、上段のスライド機構部Sの下部ステータ22のみが位置し、この上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼用している。最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入され、この板バネ5により4つのスライド機構部Sのスライダ44がそれぞれ下部ステータ22と上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。
【0040】
図示省略されているが、4つのスライド機構部Sのスライダ44はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物に連結されている。さらに、4つのスライド機構部Sのスライダ44の上面に形成された圧電素子36および37にそれぞれ対応する駆動制御部が電気的に接続されている。
【0041】
このような構成により、上述した実施の形態2、3、5および7と同様に、4つのスライド機構部Sのスライダ44を、それぞれ対応する駆動制御部によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ44の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
【0042】
なお、実施の形態1〜9では、スライダ4、24および44に外部の駆動対象物12を連結する連結部材としてワイヤ11を用いたが、これに限るものではなく、剛性を有するロッドや板状の部材を用いることもできる。
また、実施の形態1〜9では、平板形状の下部ステータ2、22および32と上部ステータ3、23および33を用いたが、棒形状のステータを用いることもできる。さらに、スライダを移動自在にすることができれば、曲面形状のステータの使用も可能である。
予圧手段として板バネ5を用いたが、この他、皿バネ、コイルバネ等、各種の付勢手段を使用することもできる。
また、上記の実施の形態2〜6、8および9においても、図3に示したようなリニアガイド15によりスライダ4、24および44の移動を案内することが好ましい。
【0043】
上記の実施の形態2、3、5、7および9においては、4つのスライド機構部Sのスライダ4、24および44をそれぞれ異なる駆動対象物12に連結して独立駆動させたが、これら4つのスライド機構部Sのスライダ4、24および44を共通の駆動対象物12に連結することもできる。このようにすれば、単一のスライド機構部Sにより駆動対象物12を移動させる場合に比べて4倍の推力を得ることができる。この場合には、4つのスライド機構部Sのすだれ状電極6〜9または圧電素子36〜39に共通の駆動制御部10を電気的に接続して4つのスライド機構部Sのスライダ4、24および44を同期させて移動させればよい。
【0044】
また、実施の形態2、3、5、7および9では、4つのスライド機構部Sを互いに積層したが、スライド機構部Sの積層個数については4つに限定されるものではなく、2つ、3つ、あるいは5つ以上のスライド機構部Sを積層させることもできる。
【0045】
上記の各実施の形態では、駆動対象物12を+X方向および−X方向に移動自在に配置し、下部ステータ2、22、32および上部ステータ3、23、33に対するスライダ4、24、44の移動によりケーシング1に対して駆動対象物12を移動させたが、逆に、ケーシング1を+X方向および−X方向に移動自在に配置すると共に駆動対象物12として固定物を採用することにより、駆動対象物12に対してケーシング1を移動させるように構成することもできる。
【0046】
例えば、図1に示す実施の形態1において、駆動制御部10から下部ステータ2および上部ステータ3の一端のすだれ状電極6および8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極7および9を受波電極として整合をとることにより、下部ステータ2の上面と上部ステータ3の下面において+X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ4が、下部ステータ2と上部ステータ3に対して相対的に−X方向に移動する。このとき、スライダ4はワイヤ11を介して固定物である駆動対象物12に連結されているため、ワイヤ11の張力により実際には−X方向に移動することができず、下部ステータ2および上部ステータ3がスライダ4に対して相対的に+X方向に移動することとなる。このようにして、ケーシング1を+X方向に移動させることが可能となる。
【0047】
なお、ケーシング1を−X方向に移動させる場合には、スライダ4を下部ステータ2と上部ステータ3に対して相対的に+X方向に移動させる必要があるため、ワイヤ11の代わりに剛性を有するロッドや板状の連結部材を用いてスライダ4と駆動対象物12を連結することが好ましい。
同様にして、実施の形態2〜9においても、ケーシング1、21を+X方向および−X方向に移動自在に配置すると共に駆動対象物12として固定物を採用することにより、駆動対象物12に対してケーシング1、21を移動させることができる。
【0048】
実施の形態2、3、5、7および9のように複数のスライド機構部Sを互いに積層させて使用する際に、各スライド機構部Sのスライダ4、24および44に連結する駆動対象物12をそれぞれ固定物とした場合には、複数のスライド機構部Sのスライダ4、24および44を同期させて移動させればよい。また、複数のスライド機構部Sのうち少なくとも一つのスライド機構部Sのスライダに固定物としての駆動対象物12を連結してこのスライド機構部Sによりケーシング21を移動させ、他のスライド機構部Sのスライダに移動自在な駆動対象物12を連結してこのスライド機構部Sにより移動自在な駆動対象物12を移動させるように構成することも可能である。
【0049】
上述した実施の形態2、3、5、7および9に係る積層型のアクチュエータを用いることにより、例えば図15に示すようなロボットハンドを構成することが可能となる。このロボットハンドは、積層型のアクチュエータAの複数のワイヤ11に第1指、第2指および第3指等の多関節の指Fの各部分を連結したものを5つ並べて配列したものである。積層型のアクチュエータAを用いることにより、小型のロボットハンドが実現される。
なお、指Fの一つの部分のみを駆動する場合には、実施の形態1、4、6および8に示したような単一のスライダ4、24、44を有する振動アクチュエータを使用して指Fを駆動することもできる。
さらに、ロボットハンドを図示しない腕の先端に取り付け、腕を移動させることによりロボットハンド全体を移動させることもできる。この場合、振動アクチュエータのケーシング1、21と駆動対象物12としての指Fが共に腕の移動によって移動しつつ、ケーシング1、21と駆動対象物12との相対位置が変化することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態1に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図2】実施の形態1で用いられたステータを示す斜視図である。
【図3】実施の形態1の変形例に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図4】実施の形態2に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図5】実施の形態3に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図6】実施の形態3に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図7】実施の形態4に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図8】実施の形態5に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図9】実施の形態6に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図10】実施の形態6で用いられたステータを示す斜視図である。
【図11】実施の形態7に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図12】実施の形態7に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す正面断面図である。
【図13】実施の形態8に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図14】実施の形態9に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図15】この発明を適用したロボットハンドを示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0051】
1,21 ケーシング、2,22,32 下部ステータ、3,23,33 上部ステータ、4,24,44 スライダ、5 板バネ、6〜9 すだれ状電極、10 駆動制御部、11 ワイヤ、12 駆動対象物、13 高周波電源、14 整合回路、15,40 リニアガイド、36〜39 圧電素子、41 脚部、S スライド機構部、A 積層型のアクチュエータ、F 指。
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニア型振動アクチュエータに係り、特に超音波振動を利用して駆動対象物を相対的に移動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータを用いて物体を搬送する装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された搬送装置は、一対の棒状の弾性体の間に被搬送物である磁気カードを圧接挟持させ、双方の弾性体にそれぞれ接着されている圧電セラミックスに高周波電力を供給して、これら弾性体に超音波の進行波を発生させることにより磁気カードを搬送している。超音波振動の利用により、薄型でありながら大きな推力を有する搬送装置が得られる。
特許文献1の搬送装置を磁気カードリーダライタ等に搭載することで、磁気カードを高速で搬送し、その搬送中に磁気ヘッドにより磁気カードからのデータの読み出し、および磁気カードへのデータの書き込みを行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開平5−266260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ロボットハンド等において、手や指の移動に特許文献1のような搬送装置を利用しようとすると、駆動対象物である手や指を一対の棒状または板状の弾性体で圧接挟持し、この状態で双方の弾性体に超音波の進行波を発生させなければならない。このため、ロボットハンドとしては、手や指の両側に配置される弾性体が邪魔な存在となり、また手や指の移動方向も、弾性体における進行波の進行方向に沿った方向に限定されることとなり、極めて使い勝手の悪いものとなってしまう。これは、駆動対象物が搬送装置の内部に位置することに由来している。また、特に複数の対象物を駆動させる場合、アクチュエータが大きくなるため、小型化が課題であった。
そこで、この発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、超音波振動を利用して外部の駆動対象物を相対移動させることができるリニア型振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るリニア型振動アクチュエータは、板状または棒状のステータの表面に沿ってスライダが所定の方向へ移動自在に配置されたスライド機構部と、前記スライダをスライド機構部の外部の駆動対象物に連結する連結部材と、前記ステータの表面に対して前記スライダを加圧接触させる予圧手段と、前記ステータおよび前記スライダの対向面のうちの一方に前記所定の方向に沿った進行波を発生させる進行波発生手段とを備えており、進行波発生手段で進行波を発生させてスライド機構部におけるスライダをステータの表面に沿って移動させることにより連結部材を介して駆動対象物を相対移動させるものである。
なお、「駆動対象物を相対移動させる」とは、次の3つの態様を含むものである。
(1)位置が固定しているステータに対して駆動対象物が移動する、
(2)位置が固定している駆動対象物に対してステータが移動する、
(3)ステータと駆動対象物が共に移動しながらステータと駆動対象物との相対位置が変化する。
【0006】
スライド機構部は、互いに平行に配置された一対のステータとこれら一対のステータの間に配置されたスライダとを含むように構成することができる。
好ましくは、スライド機構部は、ステータの表面に沿ったスライダの移動を案内するリニアガイドを有している。
【0007】
また、複数のスライド機構部を互いに積層し、共通の予圧手段で互いに積層された複数のスライド機構部を加圧することによりそれぞれのスライド機構部においてステータの表面に対しスライダを加圧接触させ、複数のスライド機構部のスライダを複数の連結部材を介してそれぞれ複数の駆動対象物に連結し、複数のスライド機構部のスライダを複数の進行波発生手段でそれぞれ移動させるようにしてもよい。
この場合、複数のスライド機構部が、それぞれ互いに平行に配置された上部ステータおよび下部ステータとこれら上部ステータおよび下部ステータの間に配置されたスライダとを含み、上段のスライド機構部の下部ステータが下段のスライド機構部の上部ステータを兼ねるように構成することもできる。
また、複数のスライド機構部が、それぞれステータの表面に沿ったスライダの移動を案内する複数のリニアガイドを有し、予圧手段が、複数のリニアガイドを介して複数のスライド機構部を加圧するようにしてもよい。
【0008】
なお、進行波発生手段は、進行波として表面弾性波を発生させることができる。
この場合、ステータを圧電基板から形成し、進行波発生手段として、ステータの表面に形成されたすだれ状電極と、このすだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いればよい。あるいは、スライダを圧電基板から形成し、進行波発生手段として、スライダの表面に形成されたすだれ状電極と、このすだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いてもよい。
【0009】
また、進行波発生手段は、進行波としてたわみ進行波を発生させることもできる。
この場合、ステータを弾性体から形成し、進行波発生手段として、ステータの表面に配置された圧電素子と、この圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いればよい。あるいは、スライダを弾性体から形成し、進行波発生手段として、スライダの表面に配置された圧電素子と、この圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを用いてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、超音波振動を利用して外部の駆動対象物を相対的に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。一端が開放されたケーシング1内にそれぞれ圧電基板から形成された一対の平板形状の下部ステータ2および上部ステータ3が互いに平行に配置され、これらのステータ2および3の間に金属等から形成されたスライダ4が配置されている。下部ステータ2はケーシング1内の底部に固定され、下部ステータ2との間にスライダ4を挟むように上部ステータ3が配置されており、これら下部ステータ2、上部ステータ3およびスライダ4によりスライド機構部Sが形成されている。さらに、上部ステータ3の上面とケーシング1の天井面との間に予圧手段として板バネ5が挿入されており、この板バネ5の付勢力によって上部ステータ3が下部ステータ2の方向に押圧され、スライダ4が下部ステータ2および上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。
【0012】
スライダ4を臨む下部ステータ2の上面の両端部付近にはそれぞれすだれ状電極6および7が形成され、同様に、スライダ4を臨む上部ステータ3の下面の両端部付近にはそれぞれすだれ状電極8および9が形成されている。そして、これらすだれ状電極6〜9に高周波電源を有する駆動制御部10が電気的に接続されている。なお、すだれ状電極6〜9と駆動制御部10により進行波発生手段が形成されている。
ここで、下部ステータ2と上部ステータ3の一端のすだれ状電極6および8から他端のすだれ状電極7および9へ向かう方向を+X方向、他端のすだれ状電極7および9から一端のすだれ状電極6および8へ向かう方向を−X方向とする。
【0013】
また、スライダ4に連結部材としてのワイヤ11の一端が接続され、ワイヤ11の他端がケーシング1の開放端部を通ってケーシング1の外部へ延出され、駆動対象物12に接続されている。駆動対象物12は、+X方向および−X方向に移動自在に配置されると共に図示しないバネ等の付勢手段によりケーシング1から遠ざかる方向すなわち+X方向へ付勢されているものとする。
【0014】
次に、この実施の形態1の動作について説明する。図2に示されるように、駆動制御部10内の高周波電源13から下部ステータ2の一端のすだれ状電極6に高周波電圧を印加すると、圧電基板から形成されている下部ステータ2の上面に表面弾性波が励振され、他端のすだれ状電極7に向けて伝搬する。このとき、他端のすだれ状電極7に駆動制御部10内の整合回路14を接続して、このすだれ状電極7を受波電極として整合をとることにより、表面弾性波はこのすだれ状電極7で吸収され、反射波の発生が抑制されて、表面弾性波は一端のすだれ状電極6から他端のすだれ状電極7に向かう+X方向の進行波となる。
【0015】
なお、すだれ状電極7で吸収された表面弾性波のエネルギーは、エネルギー消費用の抵抗等で消費させることもできるが、このエネルギーを一端のすだれ状電極6側へ還流させて進行波の励振に利用することによりエネルギー効率を大幅に向上させることができる。
同様に、駆動制御部10から上部ステータ3の一端のすだれ状電極8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極9を受波電極として整合をとることにより、上部ステータ3の下面に一端のすだれ状電極8から他端のすだれ状電極9に向けて+X方向に進行する表面弾性波が発生する。
【0016】
これら下部ステータ2の上面と上部ステータ3の下面に発生した+X方向の進行波により、下部ステータ2と上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されているスライダ4が、下部ステータ2と上部ステータ3の表面に沿って進行波とは逆方向、すなわち他端のすだれ状電極7および9から一端のすだれ状電極6および8に向けて−X方向に移動する。このスライダ4の移動に伴い、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力に抗して−X方向に相対移動することとなる。
【0017】
逆に、下部ステータ2と上部ステータ3の他端のすだれ状電極7および9にそれぞれ高周波電圧を印加すると共に一端のすだれ状電極6および8をそれぞれ受波電極として用いることにより、下部ステータ2の上面と上部ステータ3の下面にそれぞれ他端のすだれ状電極7および9から一端のすだれ状電極6および8に向けて−X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ4を+X方向へ移動させることができる。これにより、スライダ4と駆動対象物12とを連結するワイヤ11の張力が下がり、駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力を受けて+X方向に相対移動する。
【0018】
なお、図3に示されるように、下部ステータ2および上部ステータ3と平行に延びるリニアガイド15をケーシング1内に設置し、このリニアガイド15によりスライダ4の移動を案内すれば、下部ステータ2と上部ステータ3の表面に沿ってスライダ4を円滑に移動させることができる。
【0019】
実施の形態2
図4に、実施の形態2に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態2は、実施の形態1で用いられたスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成したものである。一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、下段のスライド機構部Sの上部ステータ3の上面上に上段のスライド機構部Sの下部ステータ2が位置している。さらに、最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入されている。この板バネ5は、4つのスライド機構部Sに共通してそれぞれ予圧手段として作用し、各スライド機構部Sのスライダ4を下部ステータ2および上部ステータ3の表面に対して所定の加圧力で加圧接触させる。
4つのスライド機構部Sのスライダ4はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物12に連結されている。さらに、4つのスライド機構部Sのすだれ状電極6〜9にそれぞれ対応する駆動制御部10が電気的に接続されている。
【0020】
このような構成により、4つのスライド機構部Sのスライダ4を、それぞれ対応する駆動制御部10によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物12を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ4の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
さらに、進行波として表面弾性波を用いているので、各ステータ2および3のスライダ4とは反対側の面は振動することがなく、このため各ステータ2および3のこれらの面のどの部分でも予圧をかけることができ、予圧手段の構成を簡素化することが可能となる。
【0021】
実施の形態3
図5および図6に、実施の形態3に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態3は、図4に示した実施の形態2のアクチュエータにおいて、上段のスライド機構部Sの下部ステータ2が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼ねたものである。
進行波として表面弾性波を用いているので、一枚のステータの両面にそれぞれ異なる表面弾性波を発生させることができる。そこで、この実施の形態3では、上段のスライド機構部Sの下部ステータ2の上面の両端部付近にそれぞれすだれ状電極6および7を形成してこれらすだれ状電極6および7を上段のスライド機構部Sの下側の電極として用いると共に、この下部ステータ2の下面の両端部付近にそれぞれすだれ状電極8および9を形成してこれらすだれ状電極8および9を下段のスライド機構部Sの上側の電極として用いている。
【0022】
このような構成とすることにより、互いに積層された上段のスライド機構部Sと下段のスライド機構部Sの間に位置するステータを一枚とすることができ、さらに薄型で構造が簡単な多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
【0023】
実施の形態4
図7に、実施の形態4に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態4は、実施の形態1において、圧電基板から形成された下部ステータ2および上部ステータ3の間に金属等から形成されたスライダ4を挟持する代わりに金属等から形成された下部ステータ22および上部ステータ23の間に圧電基板から形成されたスライダ24を挟持し、スライダ24の下面の両端部付近にすだれ状電極6および7を形成すると共にスライダ24の上面の両端部付近にすだれ状電極8および9を形成したものである。下部ステータ22、上部ステータ23およびスライダ24によりスライド機構部Sが形成されている。また、すだれ状電極6〜9に駆動制御部10が電気的に接続されている。
なお、板バネ5の付勢力により、スライダ24が下部ステータ22および上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。また、スライダ24にワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が連結されている。
【0024】
駆動制御部10からスライダ24の一端のすだれ状電極6および8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極7および9を受波電極として整合をとることにより、スライダ24の両面においてすだれ状電極6および8からすだれ状電極7および9に向かって+X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ24が+X方向に移動する。一方、駆動制御部10からスライダ24の他端のすだれ状電極7および9に高周波電圧を印加すると共に一端のすだれ状電極6および8を受波電極として整合をとることにより、スライダ24の両面においてすだれ状電極7および9からすだれ状電極6および8に向かって−X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ24が−X方向に移動する。
したがって、実施の形態1と同様に、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12を移動させることが可能となる。
【0025】
実施の形態5
図8に、実施の形態5に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態5は、実施の形態4で用いられたスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成すると共に上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼ねたものである。一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、互いに重なるスライド機構部Sの間には、上段のスライド機構部Sの下部ステータ22のみが位置し、この上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼用している。最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入され、この板バネ5により4つのスライド機構部Sのスライダ24がそれぞれ下部ステータ22と上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。
【0026】
図示省略されているが、4つのスライド機構部Sのスライダ24はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物に連結されている。さらに、4つのスライド機構部Sのスライダ24の両面に形成されたすだれ状電極6〜9にそれぞれ対応する駆動制御部が電気的に接続されている。
【0027】
このような構成により、上述した実施の形態2および3と同様に、4つのスライド機構部Sのスライダ24を、それぞれ対応する駆動制御部によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ24の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
【0028】
実施の形態6
図9に、実施の形態6に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態6は、実施の形態1において、下部ステータ2および上部ステータ3の代わりに弾性体からなる下部ステータ32および上部ステータ33を用いると共にすだれ状電極6および7の代わりに下部ステータ32の上面の両端部付近にそれぞれ圧電素子36および37を貼付し、すだれ状電極8および9の代わりに上部ステータ33の下面の両端部付近にそれぞれ圧電素子38および39を貼付したものである。下部ステータ32、上部ステータ33およびスライダ4によりスライド機構部Sが形成されている。また、圧電素子36〜39に駆動制御部10が電気的に接続されている。
なお、板バネ5の付勢力により、スライダ4が下部ステータ32および上部ステータ33の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。また、スライダ4にワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が連結されている。
【0029】
図10に示されるように、駆動制御部10内の高周波電源13から下部ステータ2の一端の圧電素子36に高周波電圧を印加すると、弾性体からなる下部ステータ32にたわみ振動が発生し、他端の圧電素子37に向けて伝搬する。このとき、他端の圧電素子37に駆動制御部10内の整合回路14を接続して、この圧電素子37を吸振側素子として整合をとることにより、たわみ振動はこの圧電素子37で吸収され、反射波の発生が抑制されて、一端の圧電素子36から他端の圧電素子37に向かう+X方向のたわみ進行波となる。
【0030】
なお、他端の圧電素子37で吸収されたたわみ振動のエネルギーを一端の圧電素子36側へ還流させてたわみ振動の励振に利用することによりエネルギー効率を大幅に向上させることができる。
同様に、駆動制御部10から上部ステータ33の一端の圧電素子38に高周波電圧を印加すると共に他端の圧電素子39を吸振側素子として整合をとることにより、上部ステータ33の下面に一端の圧電素子38から他端の圧電素子39に向けて+X方向に進行するたわみ進行波が発生する。
【0031】
これら下部ステータ32の上面と上部ステータ33の下面に発生した+X方向の進行波により、下部ステータ32と上部ステータ33の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されているスライダ4が、下部ステータ32と上部ステータ33の表面に沿って進行波とは逆方向、すなわち−X方向に移動する。このスライダ4の移動に伴い、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力に抗して−X方向に移動することとなる。
【0032】
逆に、下部ステータ32と上部ステータ33の他端の圧電素子37および39にそれぞれ高周波電圧を印加すると共に一端の圧電素子36および38をそれぞれ吸振側素子として用いることにより、下部ステータ32の上面と上部ステータ33の下面にそれぞれ他端の圧電素子37および39から一端の圧電素子36および38に向けて−X方向に進行するたわみ進行波が発生し、スライダ4を+X方向へ移動させることができる。これにより、スライダ4と駆動対象物12とを連結するワイヤ11の張力が下がり、駆動対象物12が図示しないバネ等の付勢力を受けて+X方向に移動する。
【0033】
実施の形態7
図11および図12に、実施の形態7に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態7は、たわみ進行波を利用するスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成したものである。各スライド機構部Sは、弾性体からなる上部ステータ33と、この上部ステータ33と平行に延びるリニアガイド40と、リニアガイド40によって移動自在に保持されたスライダ4とから形成されている。上部ステータ33の下面がスライダ4の上面に当接し、リニアガイド40の脚部41がスライダ4の下面より下方に位置している。
【0034】
一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、下段のスライド機構部Sの上部ステータ33の上面上に上段のスライド機構部Sのリニアガイド40の脚部41が載っている。最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入されている。この板バネ5の付勢力により最上段のスライド機構部Sの上部ステータ33がスライダ4に対して加圧され、さらにリニアガイド40を介して下段のスライド機構部Sの上部ステータ33に板バネ5の付勢力が作用する。このようにして、板バネ5は、4つのスライド機構部Sに共通してそれぞれ予圧手段として作用し、各スライド機構部Sのスライダ4を上部ステータ33の下面に対して所定の加圧力で加圧接触させる。
【0035】
各スライド機構部Sの上部ステータ33の下面の両端部付近にそれぞれ圧電素子38および39が貼付されている。図示省略されているが、4つのスライド機構部Sの上部ステータ33の圧電素子38および39にそれぞれ対応する駆動制御部が電気的に接続されている。また、4つのスライド機構部Sのスライダ4はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物に連結されている。
【0036】
このような構成により、上述した実施の形態2、3および5と同様に、4つのスライド機構部Sのスライダ4を、それぞれ対応する駆動制御部によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ4の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
【0037】
実施の形態8
図13に、実施の形態8に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態8は、実施の形態6において、弾性体からなる下部ステータ32および上部ステータ33の表面に圧電素子36〜39を貼付する代わりに弾性体から形成されたスライダ44の上面の両端部付近にそれぞれ圧電素子36および37を貼付し、このスライダ44を金属等から形成された下部ステータ22および上部ステータ23の間に挟持したものである。下部ステータ22、上部ステータ23およびスライダ44によりスライド機構部Sが形成されている。また、スライダ44の圧電素子36および37に駆動制御部10が電気的に接続されている。
なお、板バネ5の付勢力により、スライダ44が下部ステータ22および上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。また、スライダ44にワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12が連結されている。
【0038】
駆動制御部10からスライダ44の一端の圧電素子36に高周波電圧を印加すると共に他端の圧電素子37を吸振側素子として整合をとることにより、弾性体からなるスライダ44に一端の圧電素子36から他端の圧電素子37に向かう+X方向のたわみ進行波が発生し、スライダ44が+X方向に移動する。一方、駆動制御部10からスライダ44の他端の圧電素子37に高周波電圧を印加すると共に一端の圧電素子36を吸振側素子として整合をとることにより、弾性体からなるスライダ44に他端の圧電素子37から一端の圧電素子36に向かう−X方向のたわみ進行波が発生し、スライダ44が−X方向に移動する。
したがって、実施の形態6と同様に、ワイヤ11を介してケーシング1外部の駆動対象物12を移動させることが可能となる。
なお、スライダ44の上面に圧電素子36および37を貼付する代わりに、スライダ44の下面の両端部付近にそれぞれ圧電素子36および37を貼付してもよい。
【0039】
実施の形態9
図14に、実施の形態9に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す。この実施の形態9は、実施の形態8で用いられたスライド機構部Sを4つ互いに積層してケーシング21内に収納することにより積層型のアクチュエータを構成すると共に上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼ねたものである。一端が開放されたケーシング21内に4つのスライド機構部Sが互いに積層され、互いに重なるスライド機構部Sの間には、上段のスライド機構部Sの下部ステータ22のみが位置し、この上段のスライド機構部Sの下部ステータ22が下段のスライド機構部Sの上部ステータを兼用している。最上段のスライド機構部Sの上面とケーシング21の天井面との間に板バネ5が挿入され、この板バネ5により4つのスライド機構部Sのスライダ44がそれぞれ下部ステータ22と上部ステータ23の表面に対して所定の加圧力で加圧接触されている。
【0040】
図示省略されているが、4つのスライド機構部Sのスライダ44はそれぞれ対応するワイヤ11を介して互いに異なる駆動対象物に連結されている。さらに、4つのスライド機構部Sのスライダ44の上面に形成された圧電素子36および37にそれぞれ対応する駆動制御部が電気的に接続されている。
【0041】
このような構成により、上述した実施の形態2、3、5および7と同様に、4つのスライド機構部Sのスライダ44を、それぞれ対応する駆動制御部によって独立して移動させることができ、4つの駆動対象物を多自由度で駆動することが可能となる。
4つのスライド機構部Sを積層すると共に共通の板バネ5で4つのスライド機構部Sにそれぞれ予圧をかけるため、部品点数が少ない薄型の多自由度リニア型振動アクチュエータが実現される。
また、共通の板バネ5を用いることにより、4つのスライド機構部Sに加えられる予圧が均一となり、4つのスライド機構部Sにおけるスライダ44の移動特性を揃えることができ、高品質の多自由度アクチュエータが構成される。
【0042】
なお、実施の形態1〜9では、スライダ4、24および44に外部の駆動対象物12を連結する連結部材としてワイヤ11を用いたが、これに限るものではなく、剛性を有するロッドや板状の部材を用いることもできる。
また、実施の形態1〜9では、平板形状の下部ステータ2、22および32と上部ステータ3、23および33を用いたが、棒形状のステータを用いることもできる。さらに、スライダを移動自在にすることができれば、曲面形状のステータの使用も可能である。
予圧手段として板バネ5を用いたが、この他、皿バネ、コイルバネ等、各種の付勢手段を使用することもできる。
また、上記の実施の形態2〜6、8および9においても、図3に示したようなリニアガイド15によりスライダ4、24および44の移動を案内することが好ましい。
【0043】
上記の実施の形態2、3、5、7および9においては、4つのスライド機構部Sのスライダ4、24および44をそれぞれ異なる駆動対象物12に連結して独立駆動させたが、これら4つのスライド機構部Sのスライダ4、24および44を共通の駆動対象物12に連結することもできる。このようにすれば、単一のスライド機構部Sにより駆動対象物12を移動させる場合に比べて4倍の推力を得ることができる。この場合には、4つのスライド機構部Sのすだれ状電極6〜9または圧電素子36〜39に共通の駆動制御部10を電気的に接続して4つのスライド機構部Sのスライダ4、24および44を同期させて移動させればよい。
【0044】
また、実施の形態2、3、5、7および9では、4つのスライド機構部Sを互いに積層したが、スライド機構部Sの積層個数については4つに限定されるものではなく、2つ、3つ、あるいは5つ以上のスライド機構部Sを積層させることもできる。
【0045】
上記の各実施の形態では、駆動対象物12を+X方向および−X方向に移動自在に配置し、下部ステータ2、22、32および上部ステータ3、23、33に対するスライダ4、24、44の移動によりケーシング1に対して駆動対象物12を移動させたが、逆に、ケーシング1を+X方向および−X方向に移動自在に配置すると共に駆動対象物12として固定物を採用することにより、駆動対象物12に対してケーシング1を移動させるように構成することもできる。
【0046】
例えば、図1に示す実施の形態1において、駆動制御部10から下部ステータ2および上部ステータ3の一端のすだれ状電極6および8に高周波電圧を印加すると共に他端のすだれ状電極7および9を受波電極として整合をとることにより、下部ステータ2の上面と上部ステータ3の下面において+X方向に進行する表面弾性波が発生し、スライダ4が、下部ステータ2と上部ステータ3に対して相対的に−X方向に移動する。このとき、スライダ4はワイヤ11を介して固定物である駆動対象物12に連結されているため、ワイヤ11の張力により実際には−X方向に移動することができず、下部ステータ2および上部ステータ3がスライダ4に対して相対的に+X方向に移動することとなる。このようにして、ケーシング1を+X方向に移動させることが可能となる。
【0047】
なお、ケーシング1を−X方向に移動させる場合には、スライダ4を下部ステータ2と上部ステータ3に対して相対的に+X方向に移動させる必要があるため、ワイヤ11の代わりに剛性を有するロッドや板状の連結部材を用いてスライダ4と駆動対象物12を連結することが好ましい。
同様にして、実施の形態2〜9においても、ケーシング1、21を+X方向および−X方向に移動自在に配置すると共に駆動対象物12として固定物を採用することにより、駆動対象物12に対してケーシング1、21を移動させることができる。
【0048】
実施の形態2、3、5、7および9のように複数のスライド機構部Sを互いに積層させて使用する際に、各スライド機構部Sのスライダ4、24および44に連結する駆動対象物12をそれぞれ固定物とした場合には、複数のスライド機構部Sのスライダ4、24および44を同期させて移動させればよい。また、複数のスライド機構部Sのうち少なくとも一つのスライド機構部Sのスライダに固定物としての駆動対象物12を連結してこのスライド機構部Sによりケーシング21を移動させ、他のスライド機構部Sのスライダに移動自在な駆動対象物12を連結してこのスライド機構部Sにより移動自在な駆動対象物12を移動させるように構成することも可能である。
【0049】
上述した実施の形態2、3、5、7および9に係る積層型のアクチュエータを用いることにより、例えば図15に示すようなロボットハンドを構成することが可能となる。このロボットハンドは、積層型のアクチュエータAの複数のワイヤ11に第1指、第2指および第3指等の多関節の指Fの各部分を連結したものを5つ並べて配列したものである。積層型のアクチュエータAを用いることにより、小型のロボットハンドが実現される。
なお、指Fの一つの部分のみを駆動する場合には、実施の形態1、4、6および8に示したような単一のスライダ4、24、44を有する振動アクチュエータを使用して指Fを駆動することもできる。
さらに、ロボットハンドを図示しない腕の先端に取り付け、腕を移動させることによりロボットハンド全体を移動させることもできる。この場合、振動アクチュエータのケーシング1、21と駆動対象物12としての指Fが共に腕の移動によって移動しつつ、ケーシング1、21と駆動対象物12との相対位置が変化することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態1に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図2】実施の形態1で用いられたステータを示す斜視図である。
【図3】実施の形態1の変形例に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図4】実施の形態2に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図5】実施の形態3に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図6】実施の形態3に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図7】実施の形態4に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図8】実施の形態5に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図9】実施の形態6に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図10】実施の形態6で用いられたステータを示す斜視図である。
【図11】実施の形態7に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図12】実施の形態7に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す正面断面図である。
【図13】実施の形態8に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図14】実施の形態9に係るリニア型振動アクチュエータの構成を示す側面断面図である。
【図15】この発明を適用したロボットハンドを示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0051】
1,21 ケーシング、2,22,32 下部ステータ、3,23,33 上部ステータ、4,24,44 スライダ、5 板バネ、6〜9 すだれ状電極、10 駆動制御部、11 ワイヤ、12 駆動対象物、13 高周波電源、14 整合回路、15,40 リニアガイド、36〜39 圧電素子、41 脚部、S スライド機構部、A 積層型のアクチュエータ、F 指。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状または棒状のステータの表面に沿ってスライダが所定の方向へ移動自在に配置されたスライド機構部と、
前記スライダを前記スライド機構部の外部の駆動対象物に連結する連結部材と、
前記ステータの表面に対して前記スライダを加圧接触させる予圧手段と、
前記ステータおよび前記スライダの対向面のうちの一方に前記所定の方向に沿った進行波を発生させる進行波発生手段と
を備え、前記進行波発生手段で進行波を発生させて前記スライダを前記ステータの表面に沿って移動させることにより前記連結部材を介して前記駆動対象物を相対移動させることを特徴とするリニア型振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記スライド機構部は、互いに平行に配置された一対の前記ステータとこれら一対の前記ステータの間に配置された前記スライダとを含む請求項1に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記スライド機構部は、前記ステータの表面に沿った前記スライダの移動を案内するリニアガイドを有する請求項1または2に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項4】
互いに積層された複数の前記スライド機構部と、
複数の前記スライド機構部を積層状態で加圧することによりそれぞれの前記スライド機構部において前記ステータの表面に対し前記スライダを加圧接触させる共通の前記予圧手段と、
複数の前記スライド機構部の前記スライダをそれぞれ複数の前記駆動対象物に連結する複数の前記連結部材と、
複数の前記スライド機構部の前記スライダをそれぞれ移動させる複数の前記進行波発生手段と
を備えた請求項1に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項5】
複数の前記スライド機構部は、それぞれ互いに平行に配置された上部ステータおよび下部ステータとこれら上部ステータおよび下部ステータの間に配置された前記スライダとを含み、上段の前記スライド機構部の下部ステータが下段の前記スライド機構部の上部ステータを兼ねている請求項4に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項6】
複数の前記スライド機構部は、それぞれ前記ステータの表面に沿った前記スライダの移動を案内する複数のリニアガイドを有し、
前記予圧手段は、前記複数のリニアガイドを介して複数の前記スライド機構部を加圧する請求項4または5に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記進行波発生手段は、進行波として表面弾性波を発生させる請求項1〜6のいずれか一項に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記ステータは、圧電基板から形成され、
前記進行波発生手段は、前記ステータの表面に形成されたすだれ状電極と、前記すだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項7に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記スライダは、圧電基板から形成され、
前記進行波発生手段は、前記スライダの表面に形成されたすだれ状電極と、前記すだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項7に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項10】
前記進行波発生手段は、進行波としてたわみ進行波を発生させる請求項1〜6のいずれか一項に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項11】
前記ステータは、弾性体から形成され、
前記進行波発生手段は、前記ステータの表面に配置された圧電素子と、前記圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項10に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項12】
前記スライダは、弾性体から形成され、
前記進行波発生手段は、前記スライダの表面に配置された圧電素子と、前記圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項10に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項1】
板状または棒状のステータの表面に沿ってスライダが所定の方向へ移動自在に配置されたスライド機構部と、
前記スライダを前記スライド機構部の外部の駆動対象物に連結する連結部材と、
前記ステータの表面に対して前記スライダを加圧接触させる予圧手段と、
前記ステータおよび前記スライダの対向面のうちの一方に前記所定の方向に沿った進行波を発生させる進行波発生手段と
を備え、前記進行波発生手段で進行波を発生させて前記スライダを前記ステータの表面に沿って移動させることにより前記連結部材を介して前記駆動対象物を相対移動させることを特徴とするリニア型振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記スライド機構部は、互いに平行に配置された一対の前記ステータとこれら一対の前記ステータの間に配置された前記スライダとを含む請求項1に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記スライド機構部は、前記ステータの表面に沿った前記スライダの移動を案内するリニアガイドを有する請求項1または2に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項4】
互いに積層された複数の前記スライド機構部と、
複数の前記スライド機構部を積層状態で加圧することによりそれぞれの前記スライド機構部において前記ステータの表面に対し前記スライダを加圧接触させる共通の前記予圧手段と、
複数の前記スライド機構部の前記スライダをそれぞれ複数の前記駆動対象物に連結する複数の前記連結部材と、
複数の前記スライド機構部の前記スライダをそれぞれ移動させる複数の前記進行波発生手段と
を備えた請求項1に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項5】
複数の前記スライド機構部は、それぞれ互いに平行に配置された上部ステータおよび下部ステータとこれら上部ステータおよび下部ステータの間に配置された前記スライダとを含み、上段の前記スライド機構部の下部ステータが下段の前記スライド機構部の上部ステータを兼ねている請求項4に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項6】
複数の前記スライド機構部は、それぞれ前記ステータの表面に沿った前記スライダの移動を案内する複数のリニアガイドを有し、
前記予圧手段は、前記複数のリニアガイドを介して複数の前記スライド機構部を加圧する請求項4または5に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記進行波発生手段は、進行波として表面弾性波を発生させる請求項1〜6のいずれか一項に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記ステータは、圧電基板から形成され、
前記進行波発生手段は、前記ステータの表面に形成されたすだれ状電極と、前記すだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項7に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記スライダは、圧電基板から形成され、
前記進行波発生手段は、前記スライダの表面に形成されたすだれ状電極と、前記すだれ状電極に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項7に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項10】
前記進行波発生手段は、進行波としてたわみ進行波を発生させる請求項1〜6のいずれか一項に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項11】
前記ステータは、弾性体から形成され、
前記進行波発生手段は、前記ステータの表面に配置された圧電素子と、前記圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項10に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【請求項12】
前記スライダは、弾性体から形成され、
前記進行波発生手段は、前記スライダの表面に配置された圧電素子と、前記圧電素子に高周波電圧を印加する駆動制御部とを有する請求項10に記載のリニア型振動アクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−5568(P2008−5568A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169850(P2006−169850)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
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