説明

リニア搬送装置

【解決手段】 リニア搬送装置3は、複数の永久磁石13aからなる可動子13と、複数のコイル14aからなる複数の固定子14と、上記可動子13の永久磁石13aの磁界を検出するホール素子17とを備えている。
さらに、上記可動子13における先頭の永久磁石13aよりも搬送方向後方に検出片18を設けるとともに、当該検出片18を検出するセンサ19を上記可動子13の搬送経路上に設ける。
上記ホール素子17が検出した可動子13の先頭の永久磁石13aの磁界から可動子13の位置を認識すると、当該認識した可動子13の位置を仮位置とし、さらに上記センサ19が上記検出片18を検出すると、当該センサ19が検出片18を検出した位置を可動子13の実位置として上記仮位置から置き換え、当該可動子13の実位置を基準に可動子13の位置を認識する。
【効果】 可動子の位置を高精度に認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニア搬送装置に関し、詳しくはホール素子が検出した可動子の永久磁石の磁界により当該可動子の位置を認識するリニア搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交互に磁極を異ならせて配置した複数の永久磁石からなる可動子と、上記可動子に対向した位置に設けられるとともに複数のコイルからなる複数の固定子と、隣接した固定子の間に設けられて上記可動子の永久磁石の磁界を検出するホール素子とを備えたリニア搬送装置が知られている(特許文献1)。
このようなリニア搬送装置では、上記ホール素子が検出した磁界に基づいて可動子の位置を認識するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−130740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の可動子における、それぞれ搬送方向先頭に設けられた永久磁石の磁界は、複数の永久磁石を整列させた部分の磁界に比べて、永久磁石の個体差や取り付け位置などによってばらつきがある。
このため、上記先頭に設けた永久磁石の磁界に基づいて可動子の位置を認識しても、その認識した位置に誤差が発生し、例えばすべての可動子を所定の停止位置に高精度に停止させることができないという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は可動子の位置を高精度に認識することが可能なリニア搬送手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明は、交互に磁極を異ならせて配置した複数の永久磁石からなる可動子と、上記可動子に対向した位置に設けられるとともに複数のコイルからなる複数の固定子と、隣接した固定子の間に設けられて上記可動子の永久磁石の磁界を検出するホール素子と、上記ホール素子が検出した磁界に基づいて可動子の位置を認識する制御手段とを備えたリニア搬送装置において、
上記可動子における先頭の永久磁石よりも搬送方向後方に検出片を設けるとともに、当該検出片を検出するセンサを上記可動子の搬送経路上に設け、
上記制御手段は、上記ホール素子が検出した可動子の先頭の永久磁石の磁界に基づいて可動子の位置を認識すると、当該認識した可動子の位置を仮位置とし、さらに上記センサが上記検出片を検出すると、当該センサが検出片を検出した位置を可動子の実位置として上記仮位置から置き換え、当該可動子の実位置を基準に可動子の位置を認識することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、可動子に検出片を設けるとともに、この検出片を上記センサによって検出することで、磁界に基づいて認識した可動子の仮位置を、センサが検出片を検出した位置である可動子の実位置として置き換えるため、実際のセンサの位置に基づいて可動子の位置を高精度に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施例にかかる充填装置およびリニア搬送装置を示す断面図。
【図2】リニア搬送装置を説明する図であって、(a)は平面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【図3】可動子を停止させる際の制御を説明するグラフであり、(a)は速度と時間、(b)は距離と時間との関係をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1はボトル1に液体を充填する充填装置2と、この充填装置2にボトル1を搬送するリニア搬送装置3とを示す断面図となっており、これら充填装置2およびリニア搬送装置3は図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
上記充填装置2は、上記ボトル1の口部に挿入される充填ノズル2aを備え、該充填ノズル2aは図示しない昇降手段によって昇降可能に設けられている。また充填ノズル2aの外径は上記ボトル1の口部の内径より若干小径に製造されている。
上記リニア搬送装置3は、上記ボトル1を上記充填装置2における充填ノズル2aの下方に搬送するようになっているが、上記充填ノズル2aがボトル1の口部に接触しないよう、ボトル1を各充填ノズル2aの下方に高精度に停止させる必要がある。
なお、上記充填装置2自体は従来公知であるため、詳細な説明については省略するものとする。
【0009】
上記リニア搬送装置3は、その上面でボトル1を支持する複数のキャリア11と、該キャリア11を搬送方向に移動させる搬送レール12と、上記キャリア11の下面に固定された可動子13と、上記搬送レール12に設けられて上記可動子13を駆動する複数の固定子14とを備えている。
上記キャリア11は上記充填装置2における充填ノズル2aの数に合わせて搬送方向に複数のボトル1を支持し、また図1に示すようにキャリア11の両側には案内ローラ11aが設けられている。
上記搬送レール12は、キャリア11の搬送経路に沿って設けられたベース15と、該ベース15の両側に設けられた側壁16とから構成され、上記側壁16の内側の側面には上記キャリア11に設けられた案内ローラ11aをガイドする案内溝16aが形成されている。
このように、上記キャリア11に設けた案内ローラ11aを上記側壁16の内側に形成した案内溝16aによって案内することで、上記可動子13と固定子14との間に若干の隙間が形成されている。
【0010】
図2は上記リニア搬送装置3における固定子14および可動子13について詳細に説明する図を示し、図2(a)は平面図を、図2(b)は側面図をそれぞれ示している。この図2においてキャリア11は図示右方から左方に移動するようになっている。
上記可動子13は、上記キャリア11の下面に交互に磁極を異ならせて配置した複数の永久磁石13aから構成されており、これら永久磁石13aは少なくとも隣接する2つの固定子14と固定子14との距離と同じ長さで整列している。
上記固定子14は、それぞれ上記ベース15の上面に上記キャリア11の搬送方向に沿って複数設けられるとともに、上記可動子13と対向した位置に設けられており、隣接する固定子14と固定子14とは所定距離ずつ離隔している。
また各固定子14はそれぞれ複数のコイル14aによって構成され、上記制御手段が各コイル14aを制御することにより、隣接するコイル14aの磁極が交互に変更されるようになっている。
【0011】
そして、隣接した固定子14の間には、上記可動子13の永久磁石13aの磁界を検出するホール素子17が設けられており、本実施例では各ホール素子17を各固定子14に対してキャリア11の搬送方向下流側に隣接した位置に設けている。
上記ホール素子17は、上記可動子13における永久磁石13aの磁界を検出すると上記制御手段に送信するようになっており、制御手段は上記ホール素子17が検出した磁界により可動子13の位置を認識するようになっている。
【0012】
上記制御手段は、上記固定子14における各コイル14aの磁極を交互に変更し、これによりフレミングの左手の法則に基づき、可動子13が搬送方向に移動するようになっている。
上記可動子13が移動してホール素子17を通過する際、ホール素子17は可動子13の永久磁石13aの磁界を検出し、上記制御手段はこのホール素子17が検出した磁界に基づいて各可動子13の位置を認識するようになっている。
具体的には、上記可動子13の位置は、当該可動子13における搬送方向先頭に位置する永久磁石13aの磁界を上記ホール素子17が検出すると、制御手段は当該ホール素子17の設けられた位置を基準に、可動子13の位置を認識するようになっている。
【0013】
このような上記可動子13および固定子14を備え、かつ上記ホール素子17が磁界を検出することで可動子13の位置を認識するリニア搬送装置3は従来公知であり、上記構成であっても可動子13の位置の制御を行うことは可能であった。
しかしながら、本実施例のように充填装置2にボトル1を搬送する場合、キャリア11の停止位置がずれてボトル1と充填ノズル2aとの位置がずれてしまうと、充填ノズル2aをボトル1に挿入できない恐れや充填ノズル2aがボトル1に接触してしまうという問題が発生するおそれがある。
このため、より高精度に可動子13の位置を認識し、また高精度に停止位置に停止させる必要があるが、上述したように上記ホール素子17によって可動子13の永久磁石13aの磁界を検出するだけでは、各可動子13の実際の位置を高精度に認識できなかった。
それは、複数のキャリア11におけるそれぞれの可動子13において、永久磁石13aが隣接している部分の磁界は一定であるものの、永久磁石13aの個体差や取り付け精度のばらつき等のため、先頭に位置する端部の永久磁石13aが発生させる磁界にばらつきが発生するからである。
その結果、例えばキャリア11自体は同じ位置に位置しているものの、各可動子13における先頭の永久磁石13aの磁界が上記ホール素子17によって検出されるタイミングがずれるため、各可動子13とホール素子17との距離を比較した場合に、これらの間に僅かながら誤差が発生することとなる。
この各可動子13とホール素子17との距離の誤差が、上記制御手段が認識する可動子13の位置の誤差となり、その後制御手段がホール素子17の設けられた位置に基づいて可動子13を停止させようとしても、上記誤差がそのまま停止位置の誤差となってしまう。
【0014】
このような問題に対し、本実施例のリニア搬送装置3は、上記可動子13の位置を高精度に認識するため、上記キャリア11に検出片18を設けるとともに、可動子13の搬送経路上の上記搬送レール12には当該検出片18を検出するセンサ19を設けている。
上記検出片18は、図1に示すように上記キャリア11から側方に突出しており、この検出片18は図2(a)に示すように可動子13における先頭の永久磁石13aよりも搬送方向後方に設けられ、ここではキャリア11における搬送方向略中央に設けられている。
上記センサ19は上記検出片18を検出するための近接センサであって、図1に示すように上記側壁16の側方に設けたステー20に固定されるとともに、停止位置近傍に設けられたホール素子17に対して搬送方向上流側に設けられている。
さらに上記検出片18およびセンサ19の位置関係は、移動する可動子13が上記停止位置に停止する際に、可動子13における先頭の永久磁石13aの磁界が上記ホール素子17に検出された後、上記センサ19が検出片18を検出するように設定されている。
【0015】
次に、上記検出片18およびセンサ19を備えたリニア搬送装置3の動作について、図3のグラフを用いて説明する。ここで図3(a)は横軸に経過時間を、縦軸に可動子13の速度を示し、図3(b)は横軸に経過時間を、縦軸に可動子13の移動距離を示している。
まず、一定速度で移動する可動子13が停止位置に接近すると、該可動子13における先頭の永久磁石13aが停止位置近傍に設けられたホール素子17に接近し、当該先頭の永久磁石13aの磁界がホール素子17に検出される(t0)。
このようにホール素子17が先頭の永久磁石13aの磁界を検出すると、制御手段はホール素子17の設けられた位置に基づいて当該可動子13の位置を認識し、制御手段はこの磁界に基づいて認識した可動子13の位置を、当該可動子13の仮位置として認識する。
続いて、この先頭の永久磁石13aの磁界がホール素子17に検出された時間t0から所定時間経過し、キャリア11が所定距離進むと、制御手段は固定子14のコイル14aを制御して所定の減速度により上記可動子13を減速させてゆく(t1)。
【0016】
ここで、上述したように可動子13における先頭の永久磁石13aの磁界にはばらつきがあるため、可動子13の実際の実位置に対して、制御手段が認識した可動子13の仮位置には誤差が生じている。
図3(b)では、制御手段が認識している上記可動子13の仮位置を実線からなる曲線で示し、可動子13の実位置を2点鎖線からなる曲線で示しており、上記実位置を示す曲線は仮位置を示す曲線に対して平行に移動したものとなる。
ここで、制御手段がt1から可動子13を減速させる間も、上記ホール素子17は可動子13の永久磁石13aの磁界を検出し、制御手段はこの検出された磁界から当該可動子13の仮位置を継続して認識している。
【0017】
その後、可動子13が減速しながら移動すると、上記キャリア11に設けた検出片18が上記センサ19によって検出され、制御手段は当該センサ19が検出片18を検出した位置を可動子13の実位置として上記可動子13の仮位置から置き換える(t2)。
つまり、上記センサ19の上記停止位置に対する距離は予め測定されていることから、上記センサ19が検出片18を検出することで、可動子13の停止位置までの正確な距離が判明するため、これにより可動子13の実位置を高精度に認識することができる。
換言すると図3(b)において、制御手段はt2まで実線で示す仮位置に基づいて可動子13の位置を認識しているが、上記検出片18がセンサ19を通過することにより、制御手段は可動子13の位置を上記2点鎖線で示す実位置のt2における位置として認識しなおすようになっている。
そして制御手段は、この可動子13の実位置に基づいて、図3(a)に示すように所定の加速度で可動子13を減速させ、可動子13を所定の停止位置に停止させる(t3)。
なお、上記制御手段が可動子13の実位置を認識してから、可動子13を停止位置に停止させるまでの間、上記可動子13を構成する永久磁石13aの磁界は、複数の永久磁石13aが整列していることから安定しており、上記ホール素子17によって可動子13の位置を正確に認識することができるため、高精度に停止位置に停止させることが可能となっている。
【0018】
その後制御手段は、上記制御をリニア搬送装置3におけるすべてのキャリア11に設けた可動子13について行い、これによりすべてのキャリア11が同じ停止位置に停止し、該キャリア11によって搬送されたボトル1を充填装置2の充填ノズル2aに対して常時同じ位置に停止させることが可能となる。
このように本実施例によれば、上記可動子13に検出片18を設けるとともに、当該検出片18を検出するセンサ19を設けることで、上記可動子13の位置を高精度に認識することが可能となっている。
このため、上記キャリア11を高精度に停止位置に停止させることが可能となり、これにより上述したボトル1に充填ノズル2aを挿入するような高精度な位置決めが要求される装置においても、物品の搬送を行うことが可能となっている。
なお上記実施例では、制御手段が可動子13を減速させた後に、上記センサ19が検出片18を検出するような構成となっているが、上記センサ19が検出片18を検出してから、可動子13を減速させる構成としても良い。
【符号の説明】
【0019】
3 リニア搬送装置 13 可動子
13a 永久磁石 14 固定子
14a コイル 17 ホール素子
18 検出片 19 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に磁極を異ならせて配置した複数の永久磁石からなる可動子と、上記可動子に対向した位置に設けられるとともに複数のコイルからなる複数の固定子と、隣接した固定子の間に設けられて上記可動子の永久磁石の磁界を検出するホール素子と、上記ホール素子が検出した磁界に基づいて可動子の位置を認識する制御手段とを備えたリニア搬送装置において、
上記可動子における先頭の永久磁石よりも搬送方向後方に検出片を設けるとともに、当該検出片を検出するセンサを上記可動子の搬送経路上に設け、
上記制御手段は、上記ホール素子が検出した可動子の先頭の永久磁石の磁界に基づいて可動子の位置を認識すると、当該認識した可動子の位置を仮位置とし、さらに上記センサが上記検出片を検出すると、当該センサが検出片を検出した位置を可動子の実位置として上記仮位置から置き換え、当該可動子の実位置を基準に可動子の位置を認識することを特徴とするリニア搬送装置。
【請求項2】
制御手段は、ホール素子が可動子の先頭の永久磁石を検出すると、上記固定子のコイルを制御して可動子を減速させ、さらに上記センサが検出片を検出してから可動子を所定の停止位置に停止させることを特徴とする請求項1に記載のリニア搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−90417(P2013−90417A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228224(P2011−228224)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】