説明

リニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータを用いた仕分装置

【課題】機構を簡略にし、部品点数を少なくしコスト削減・メンテナンス負担の低減・作業負担の軽減を図るとともに、摩耗粉の飛散を抑制してクリーン環境での使用にも適した仕分装置を提供する。
【解決手段】物品搬送路の搬送方向及び幅方向に複数配列された円筒状ローラ160を搬送方向及び幅方向からなる二次元方向に回転及び揺動させて搬送物を所定の方向に搬送する仕分装置において、円筒状ローラ160が、鉄製円筒体160aとその外側に形成された非磁性金属からなる円筒層160bを具備しているとともに、物品搬送路の下側に円筒状ローラ160を二次元方向に回転及び揺動させる進行磁界を発生するリニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線100を具備していることによって、前記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束された新聞束や、梱包された物品等を搬送中に所定の搬送方向に仕分けするために用いられる仕分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送コンベヤ上の物品を搬送コンベヤから分岐する別のコンベヤやシュート等に仕分けする仕分装置としては、物品搬送路の搬送方向及び幅方向に複数配列された球状ローラと、各球状ローラを水平軸線回りに回転自在に個別に支持するとともに、球状ローラの中心を通過する垂直軸線まわりに定位置で回動自在に設けられた複数のローラ支持枠と、これらの複数のローラ支持枠を球状ローラの向きを揃えて垂直軸線まわりに一斉に回動させる回動機構と、物品搬送路の幅方向に並んだ球状ローラの各列の側方に並行して配置され、各球状ローラのそれぞれの球面状外周面と当接してこれらの球状ローラを一斉に摩擦駆動する複数のラインシャフトと、これらのラインシャフトを一斉に同期回転させる駆動源とを備えた仕分装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、物品搬送路の分岐部の下側に装着されたリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線と、搬送物を載せて搬送路に沿って走行するリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの二次側可動子を兼ねる非磁性金属であるアルミニウム板が底面に装着された搬送容器とからなる仕分装置も知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2911809号公報
【特許文献2】特開昭61−174031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された仕分装置は、機構が複雑で、部品点数が多く、結果としてコストが高くなり、メンテナンス負担が大きくなるという問題があった。
【0005】
また、各球状ローラのそれぞれの球面状外周面と当接してこれらの球状ローラを一斉にラインシャフトにより摩擦駆動していたため、球状ローラ及びラインシャフトが摩耗し、摩耗粉が飛散するため、クリーン環境が要求される場所での使用に適していないという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2に開示された仕分装置は、搬送物をリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの二次側可動子を兼ねる非磁性金属であるアルミニウム板が底面に装着された搬送容器に載せて搬送するため、多くの搬送容器を用意する必要があり、その分、部品点数が多くなり、結果としてコストが高くなることに加えて、搬送容器の保管・管理や仕分け後の搬送容器を再び物品搬送路の起点に移動させるために多大な作業負担を強いられるという搬送作業上の問題があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、前述したような従来技術における諸問題を解決し、仕分装置の機構を簡略にし、部品点数を少なくしコスト削減・メンテナンス負担の低減・作業負担の軽減を図るとともに、摩耗粉の飛散を抑制してクリーン環境での使用にも適した仕分装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本請求項1に係る発明は、物品搬送路の搬送方向及び幅方向に複数配列された円筒状ローラを前記搬送方向及び幅方向からなる二次元方向に回転及び揺動させて搬送物を所定の方向に搬送する仕分装置において、前記円筒状ローラが、鉄製円筒体と該鉄製円筒体の外側に形成された非磁性金属からなる円筒層を具備しているとともに、前記物品搬送路が、その下側に前記円筒状ローラを二次元方向に回転及び揺動させる進行磁界を発生するリニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線を具備していることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
ここで、鉄製円筒体とこの鉄製円筒体の外側に形成された非磁性金属からなる円筒層を具備している円筒状ローラは、リニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの二次側可動子の機能を果たしている。また、本発明において進行磁界とは時間とともに移動する磁束のことを意味しており、リニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線によって発生するY軸方向の進行磁界により、円筒状ローラが回転軸を中心に回転し、X軸方向の進行磁界により、円筒状ローラが揺動軸を中心に揺動する。
【0010】
また、本発明の円筒状ローラの円筒層を構成する非磁性金属としては、例えば、銅やアルミニウムなどの導体を用いることができる。
【0011】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る仕分装置において、前記円筒状ローラの揺動軸が、前記円筒状ローラの回転軸の軸方向の中央を通る中央垂直軸又は該中央垂直軸に所定の距離離間して平行な偏芯垂直軸であることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0012】
なお、本発明において、揺動軸とは、必ずしも有形の軸が存在していることを意味しているわけでなく、揺動の中心になる位置を揺動軸と称している。
【0013】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る仕分装置において、前記非磁性金属がアルミニウムであることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
本請求項1に係る仕分装置によれば、物品搬送路の搬送方向及び幅方向に複数配列された円筒状ローラを前記搬送方向及び幅方向からなる二次元方向に回転及び揺動させて搬送物を所定の方向に搬送する仕分装置において、円筒状ローラが、鉄製円筒体とこの鉄製円筒体の外側に形成された非磁性金属からなる円筒層を具備しているとともに、物品搬送路が、その下側に円筒状ローラを二次元方向に回転及び揺動させる進行磁界を発生するリニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線を具備していることによって、円筒状ローラを非接触で回転及び揺動できるので、摩耗粉の飛散を抑制することができるとともに、特性の経年変化が少なく、保守性に優れ、粘着や摩擦による力の伝達に依存しない円滑で広範囲の加減速を実現できる。
【0015】
さらに、円筒状ローラがリニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの二次側可動子の機能を果たすため、別途、底面に非磁性導体を装着した搬送容器を必要とせず、直接、搬送物を物品搬送路上に載せて搬送・仕分けすることができる。しかも、この円筒状ローラは、強磁性金属である鉄製円筒体と非磁性金属である円筒層との複合導体によって構成されているので、一次巻線によって発生した進行磁界が円筒状ローラに強力に引きつけられることになり、非磁性金属である円筒層が切る磁力線の数が増加し、非磁性金属製円筒層中に生じる渦電流が大きくなり円筒状ローラを回転させる電磁力、すなわちトルクも大きくなる。その結果、円筒状ローラを効率よく回転及び揺動させることができる。
【0016】
しかも、リニア誘導モータ形X−Yアクチュエータを使用したことによって、機構が簡略化され部品点数を少なくできるので、コスト削減が図られるとともに、メンテナンス負担の低減が図られる。また、リニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線のX方向巻線及びY方向巻線に印加する電流の周波数をそれぞれ制御することによって、円筒状ローラの回転速度、揺動角度を自由にコントロールすることができる。
【0017】
そして、本請求項2に係る仕分装置によれば、請求項1に係る仕分装置が奏する効果に加えて、円筒状ローラの揺動軸が、円筒状ローラの回転軸の中心を通る中央垂直軸又はこの中央垂直軸に所定の距離離間して平行な偏芯垂直軸であることにより、搬送路に対して仕分け用の円筒状ローラの配置及び数を変えることができるので、仕分レイアウトの自由度を大きくすることができる。
【0018】
また、本請求項3に係る仕分装置によれば、請求項1又は請求項2に係る仕分装置が奏する効果に加えて、円筒状ローラの鉄製円筒体の外側に形成された非磁性金属がアルミニウムであることによって、アルミニウムは軽量であるので、仕分装置の軽量化を実現できるとともに、銅のように緑青(銅の表面に生じる緑色の錆び)を発生することがなく、空気中では表面に酸化膜(アルマイト)ができ、内部は侵されにくくなる(不動態)ので仕分装置の長寿命化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の仕分装置は、物品搬送路の搬送方向及び幅方向に複数配列された円筒状ローラを搬送方向及び幅方向からなる二次元方向に揺動させて搬送物を所定の方向に搬送し、円筒状ローラが、鉄製円筒体とこの鉄製円筒体の外側に形成された非磁性金属からなる円筒層を具備しているとともに、物品搬送路が、その下側に円筒状ローラを二次元方向に回動させる進行磁界を発生するリニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線を具備しているものであって、仕分装置の機構が簡略化され、部品点数を少なくしコスト削減・メンテナンス負担の低減が図られ、摩耗粉の飛散を抑制してクリーン環境での使用にも適したものであり、別途、特別な搬送容器を必要とせず、直接、搬送物を物品搬送路上に載せて搬送・仕分けすることができるものでれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0020】
まず、本発明の仕分装置の全体概要について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の仕分装置の一実施態様を一部分を切り欠いて示した斜視図である。
【0021】
図1に示した仕分装置は、物品搬送路の主搬送方向Mが、分岐部Aを経て、主搬送方向Mと副搬送方向Sに分岐するものである。分岐部Aの物品搬送路の下側には、後述するリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線100が配備されている。そして、その上側に物品搬送路の搬送方向及び幅方向に複数配列された円形のローラ穴172を有する天板170が配備され、それらのローラ穴172から円筒状ローラ160の円周面の上部が突出している。円筒状ローラ160は、図1の拡大図に示すように、鉄製円筒体160aとその外側に形成されたアルミニウム等の非磁性金属からなる円筒層160bとを有しており、リニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの二次側可動子を構成している。さらに、この円筒層160bの摩耗を防ぐとともに、静粛性を向上させるために円筒層160bの外側にゴム等の弾性体からなるライニング層160cを設けている。
【0022】
ここで、リニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの動作原理について概説する。一次巻線100と円筒状ローラ160を一定の距離を置いて配置する。そして、一次巻線100のY軸方向巻線に交流電流を流すと右ねじの法則にしたがって時間とともにY軸方向(主搬送方向M)に移動する磁束、すなわち進行磁界が発生する。その結果、円筒状ローラ160表面の円周方向に、この磁束の変化を妨げる向きに渦電流が誘起される。そして、磁束変化と渦電流によってフレミングの法則による推力が発生し、円筒状ローラが回転軸160dを中心に回転する。同様に、一次巻線100のX軸方向巻線に交流電流を流すと時間とともにX軸方向(副搬送方向S)に移動する磁束、すなわち進行磁界が発生する。その結果、円筒状ローラ160表面の回転軸方向に渦電流が誘起され、円筒状ローラが揺動軸を中心に揺動する。
【0023】
物品搬送路の主搬送方向M及び副搬送方向Sの搬送路を構成するコンベヤは、1条又は数条のチェーンにスラットを連続的に取り付けたスラットコンベヤや、チェーン上面に搬送物を受けるトッププレートを付けたトップチェーンコンベヤや、搬送方向に直交する向きに軸支したローラをチェーン等で駆動する駆動ローラコンベヤや、フレームの両端に設けたプーリにベルトを無端状に掛架し、その上に搬送物を載置して搬送するベルトコンベヤ等、搬送物の大きさや形状、仕分装置が使用される環境等に応じて適宜選択することができる。
【0024】
例えば、クリーンな環境が要求され、搬送物が傷付きやすいものを搬送する場合には、エンジニアリングプラスチック製のトッププレートを付けたトップチェーンコンベヤ用いることが好ましい。
【0025】
次に、本発明の仕分装置の主要構成要素の一つであるリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線の構造について、図2に基づいて説明する。このリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線100は、図2に示すように、X軸方向に進行磁界を発生するX方向巻線110(UXコイル、VXコイル、WXコイル)と、Y軸方向に進行磁界を発生するY方向巻線120(UYコイル、VYコイル、WYコイル)の2種類の巻線を有している。また、一次鉄心は、電磁鋼板(けい素鋼板)を積層した磁極鉄心140及び磁束迂回鉄心150から構成される。磁束鉄心140の積層方向は、Y軸に平行であり、磁束迂回鉄心150の積層方向は、X軸に平行である。磁束迂回鉄心150は、X軸に平行して配列した巻線、すなわちY方向巻線120によって生じた磁束の磁路を形成する。X方向巻線110及びY方向巻線120の両一次巻線は、X方向及びY方向に進行磁界を発生させるために、チェスボード形の磁極鉄心140の磁極144の相互間に形成されたスロット142内で直交するように巻回されている。スロット142内部では、X方向巻線110は上層に、Y方向巻線120は下層に巻回されている。
【0026】
このようにリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線100は、X軸方向のリニヤ誘導モータ一次巻線とY軸方向のリニヤ誘導モータ一次巻線を合体したような構造をしており、両方向の電流をそれぞれ変化させることによって、二次元平面内の任意の方向を向いた進行磁界を発生させることができる。
【0027】
また、本実施例においては、一次巻線100に電流を供給するための電源としては三相方式を採用しているが、巻線の配列を二相方式に変えることによって二相電源を使用することができる。
【0028】
なお、一次鉄心を構成する電磁鋼板は、表面を絶縁処理したものをプレス加工して形成することによって高速駆動や高推力を必要とする場合の磁気損失を低減することができる。
【0029】
次に、本発明の仕分装置の別の主要構成要素であるリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの二次側可動子の幾つかの実施態様について図3乃至図8に基づいて説明する。なお、いずれの実施態様においてもリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線については、前述したものと同様のものを使用している。
【実施例1】
【0030】
図3は、本発明の仕分装置の一実施例の上面図であり、図4は、図3のIV−IV線方向からみた断面図である。
【0031】
実施例1の仕分装置は、天板270の搬送方向、すなわち、主搬送方向M及びそれと直交する向きである幅方向に複数のローラ穴272を設け、そのローラ穴272から、円筒状ローラ260の円周面の上部が突出している。この円筒状ローラ260は、図4に示すように鉄製円筒体260aとその外側に形成されたアルミニウムからなる円筒層260bとを有している。さらに、この円筒層260bの摩耗を防ぐとともに、静粛性を向上させるために円筒層260bの外側にゴムからなるライニング層260cを設けている。
【0032】
さらに、円筒状ローラ260の回転軸260dが、ローラカバー262に固設されたローラガイド266に軸支されている。さらに、ローラカバー262は、フレーム290上にスラスト軸受280を介して固設されているとともに、回転軸260dと直交する主搬送方向M側に舌片262aを有し、その舌片262aの下側にアルミニウムからなるリニヤ誘導モータの二次側導体264が固設されている。その結果、リニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線100によって主搬送方向Mと直交する向きに進行磁界を発生させることにより、図3のB部に示すように、円筒状ローラ260の回転軸260dの軸方向の中心を通る揺動軸(中央垂直軸)260eを中心にローラの主搬送方向Mに対して左右に略45°揺動可能になっている。なお、この揺動軸260eは、説明を簡単にするために便宜上図示したものであって、実際に軸が存在するわけではない。
【0033】
スラスト軸受280の形式は、円筒状ローラ260に加わる垂直方向の荷重に十分耐えられるものであれば、特に限定されるわけではないが、本実施例では、フレーム290に取り付けられた内輪280aとローラカバー262に取り付けられた外輪280cを有し、この内輪280aと外輪280cに玉280bが転がる断面円弧状の溝を設け、その溝と玉とで垂直方向の荷重を受けるようにした単式スラスト玉軸受を用いている。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の仕分装置の別の実施例について、図5及び図6に基づき説明する。図5は、本実施例の上面図であり、図6は、図5のVI−VI線方向からみた断面図である。なお、実施例2の仕分装置は、前述した実施例1の仕分装置と円筒状ローラの揺動のさせ方を除き、基本的な装置構成は同一であるので、理解を助けるために、対応する部材に付した符号の200番台を300番台に書き換えている。
【0035】
実施例2の仕分装置は、天板370の幅方向、すなわち、主搬送方向Mと直交する向きに長手方向の両側が扇状に形成された長尺状のローラ穴372を搬送方向、すなわち主搬送方向M向きに複数並べて配設し、そのローラ穴372から、円筒状ローラ360の円周面の上部が突出している。この円筒状ローラ360は、図6に示すように鉄製円筒体360aとその外側に形成されたアルミニウムからなる円筒層360bとを有している。さらに、この円筒層360bの摩耗を防ぐとともに、静粛性を向上させるために円筒層360bの外側にゴムからなるライニング層360cを設けている。
【0036】
さらに、円筒状ローラ360の回転軸360dが、ローラガイド366に軸支されている。このローラガイド366は、図5に示すように、断面U字状に形成されフレーム390上にスラスト軸受380を介して円筒状ローラ360の回転軸360dの軸方向の中心を通る中央垂直軸360fに所定の距離L1(図6参照)離間して平行な揺動軸(偏芯垂直軸)360eによって軸支されている。その結果、リニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線100によって主搬送方向Mと直交する向きに進行磁界を発生させることにより、図5のC部に示すように、揺動軸360eを中心にローラの主搬送方向Mに対して左右に略45°揺動可能になっている。なお、中央垂直軸360fは、説明を簡単にするために便宜上図示したものであって、実際に軸が存在するわけではない。また、実施例2の仕分装置は、図5及び図6に示すように、揺動軸360eが、円筒状ローラ360に対して主搬送方向Mの後方に配置されているが、円筒状ローラ360に対して主搬送方向Mの前方に配置しても同様に機能する。
【0037】
実施例2の仕分装置によれば、各円筒状ローラ360ごとに揺動軸360eを設けてフレーム390上に直接軸支しているため、ローラ穴372を各円筒状ローラ360ごとに設ける必要がなく、実施例1及び後述する実施例3の仕分装置に比べて単位面積当たりの円筒状ローラの配置数を多くすることができる。
【実施例3】
【0038】
次に、本発明の仕分装置のさらに別の実施例について、図7及び図8に基づき説明する。図7は、本実施例の上面図であり、図8は、図7のVIII−VIII線方向からみた断面図である。なお、実施例3の仕分装置は、前述した実施例1の仕分装置と円筒状ローラの揺動のさせ方を除き、基本的な装置構成は同一であるので、理解を助けるために、対応する部材に付した符号の200番台を400番台に書き換えている。
【0039】
実施例3の仕分装置は、天板470の搬送方向、すなわち、主搬送方向M及びそれと直交する向きである幅方向に複数のローラ穴472を設け、そのローラ穴472から、円筒状ローラ460の円周面の上部が突出している。この円筒状ローラ460は、図8に示すように、鉄製円筒体460aとその外側に形成されたアルミニウムからなる円筒層460bとを有している。さらに、この円筒層460bの摩耗を防ぐとともに、静粛性を向上させるために円筒層460bの外側にゴムからなるライニング層460cを設けている。
【0040】
さらに、円筒状ローラ460の回転軸460dが、ローラカバー462に固設されたローラガイド466に軸支されている。回転軸460dは、図8に示すように、このローラカバー462の中心を通る線よりも若干、主搬送方向M側に離間して軸支されている。その結果、リニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線100によって主搬送方向Mと直交する向きに進行磁界を発生させることにより、図7のD部に示すように、円筒状ローラ460の回転軸460dの軸方向の中心を通る中央垂直軸460fに所定の距離L2(図8参照)離間して平行な揺動軸(偏芯垂直軸)460eを中心にローラの主搬送方向Mに対して左右に略45°揺動可能になっている。なお、この揺動軸460e及び中央垂直軸460fは、説明を簡単にするために便宜上図示したものであって、実際に軸が存在するわけではない。
【0041】
実施例3の仕分装置によれば、円筒状ローラ460の回転軸460dをローラカバー462に対して偏芯して軸支するだけで揺動可能になるため、実施例1のように舌片262a及び二次側導体264を設ける必要がなく、また、実施例2のように別途、揺動軸360eを設ける必要がないため、装置構成を簡素化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の仕分装置は、物品搬送路の分岐点に複数配列された円筒状ローラをリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの原理を用いて非接触で回転・揺動駆動するという新規な知見に基づき完成したものであって、従来の機械式の仕分装置に比べて機構が簡略化できるので、部品点数が削減され、コストが削減でき、メンテナンス負担が軽減されるとともに、摩耗粉の飛散抑制が達成できるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の仕分装置の全体概要を示した斜視図。
【図2】本発明に用いるリニヤ誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線の斜視図。
【図3】実施例1の仕分装置の上面図。
【図4】図3のIV−IV線方向からみた断面図。
【図5】実施例2の仕分装置の上面図。
【図6】図5のVI−VI線方向からみた断面図。
【図7】実施例3の仕分装置の上面図。
【図8】図3のIV−IV線方向からみた断面図。
【符号の説明】
【0044】
100 ・・・ 一次巻線
110 ・・・ X方向巻線
120 ・・・ Y方向巻線
140 ・・・ 磁極鉄心
142 ・・・ スロット
144 ・・・ 磁極
150 ・・・ 磁極迂回鉄心
160、260、360、460 ・・・ 円筒状ローラ
160a、260a、360a、460a ・・・ 鉄製円筒体
160b、260b、360b、460b ・・・ 円筒層
160c、260c、360c、460c ・・・ ライニング層
160d、260d、360d、460d ・・・ 回転軸
260e、360e、460e ・・・ 揺動軸
360f、460f ・・・ 中央垂直軸
170、270、370、470 ・・・ 天板
172、272、372、472 ・・・ ローラ穴
262、462 ・・・ ローラカバー
266、366、466 ・・・ ローラガイド
280、380、480 ・・・ スラスト軸受
290、390、490 ・・・ フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品搬送路の搬送方向及び幅方向に複数配列された円筒状ローラを前記搬送方向及び幅方向からなる二次元方向に回転及び揺動させて搬送物を所定の方向に搬送する仕分装置において、
前記円筒状ローラが、鉄製円筒体と該鉄製円筒体の外側に形成された非磁性金属からなる円筒層を具備しているとともに、
前記物品搬送路が、その下側に前記円筒状ローラを二次元方向に回転及び揺動させる進行磁界を発生するリニア誘導モータ形X−Yアクチュエータの一次巻線を具備していることを特徴とする仕分装置。
【請求項2】
前記円筒状ローラの揺動軸が、前記円筒状ローラの回転軸の軸方向の中心を通る中央垂直軸又は該中央垂直軸に所定の距離離間して平行な偏芯垂直軸であることを特徴とする請求項1記載の仕分装置。
【請求項3】
前記非磁性金属がアルミニウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の仕分装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−62188(P2009−62188A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233994(P2007−233994)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】