説明

リハビリ支援装置

【課題】使用者がリハビリをスムーズに実施でき、リハビリ期間における回復状態を的確に把握できるリハビリ支援装置を提供する。
【解決手段】判断部105は、使用者荷重K1、K2、K3、K4に基づいて使用者の身体(姿勢)が傾いているか否かを判断する。また、判断部105は、計測部109により計測された傾斜姿勢時間が予め定められた時間を経過したときに、使用者の身体が傾いていると判断する。この場合、判断部105は、使用者の身体が傾いている旨を当該使用者に知らせるための音を発音装置110に発音させるよう指令する。表示部103は、使用者のリハビリ期間における回復度合いを示すポイントの軌跡を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者のリハビリを支援するリハビリ支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば脳卒中等によって身体が片麻痺になった患者がリハビリをする際に使用するリハビリ支援装置が研究開発されている。例えば、特許文献1には、臀部挙上練習器が開示されている。この臀部挙上練習器は、支柱に加えられた力を検知する支柱力検知装置と、各支持棒間で臀部に加えられた力を検知する臀部反力検知装置と、臀部挙上練習者の姿勢または挙動を撮影するテレビカメラと、を含む。
【0003】
また、特許文献2には、歩行リハビリ支援装置が開示されている。この歩行リハビリ支援装置は、患者の足底圧を検出する感覚検出ユニットと、患者に対して所定の刺激を付与する感覚呈示ユニットと、感覚検出ユニットにより検出された足底圧に対応した刺激が付与されるように感覚呈示ユニットの動作を制御する制御ユニットとを備える。この歩行リハビリ支援装置は、患者自身が自らの身体の感覚および運動状態に留意しながら行う自立リハビリテーションを支援することができる。
【0004】
さらに、特許文献3には、立位練習器が開示されている。この立位練習器は、立位練習者が立位で掴まる支持棒、当該支持棒を支持する支柱、当該支柱に加えられた力を検知する支柱力検知装置と、床に加えられた力を検知する床反力検知装置と、を含む。この立位練習器では、立位練習者の支持棒に対して及ぼす上肢の力および床反力検知装置に及ぼす下肢の力を演算するとともに、棒グラフ表示および波形表示を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−181119号公報
【特許文献2】特開2008−125888号公報
【特許文献3】特開2006−296713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の各練習器および歩行リハビリ支援装置では、リハビリを行う者は当該リハビリを行っている最中において自身の感覚または運動状態等を把握することができるが、リハビリによる自身の回復状態の信頼性を得ることは難しい。
【0007】
本発明の目的は、使用者がリハビリをスムーズに実施でき、リハビリ期間における回復状態を的確に把握できるリハビリ支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)一の局面に従うリハビリ支援装置は、使用者のリハビリを支援するリハビリ支援装置であって、使用者の身体の左荷重および右荷重をそれぞれ検出する複数の荷重検出部と、左荷重および右荷重を時間とともに記憶する使用者荷重記憶部と、使用者荷重記憶部からの左荷重および右荷重の経時的変化に基づいて使用者の身体が傾いていることを判断する判断部と、判断部の判断に基づいて使用者の身体が傾いている旨を報知する報知部と、を含むものである。
【0009】
一の局面に従うリハビリ支援装置においては、使用者の身体の左荷重および右荷重がそれぞれ複数の荷重検出部により検出される。当該左荷重および右荷重は時間とともに使用者荷重記憶部に記憶される。左荷重および右荷重の経時的変化に基づいて使用者の身体が傾いていることが判断部により判断される。そして、報知部により使用者の身体が傾いている旨が報知される。
【0010】
この場合、使用者の左荷重および右荷重の経時的変化が時間とともに使用者荷重記憶部に記憶され、当該経時的変化に基づいて使用者の身体が傾いていることが判断されて報知されるので、使用者は身体が傾いていることを確実に認識でき、リハビリをスムーズに実施できる。
【0011】
また、報知部は例えば発音装置であってもよい。この場合、経過時間に対応する左荷重および右荷重の経時的変化に基づいて、例えば「回復具合いは大変良好です」等の言葉が発音装置により発音される。加えて、この場合、リハビリ支援装置を小型化できる。さらに、報知部は例えば表示部であってもよい。この場合、使用者の左荷重および右荷重の経時的変化が時間とともに表示されるので、使用者はリハビリによる回復具合いを認識できる。これらにより、使用者はリハビリに対する意欲を持つことができる。したがって、リハビリ回数が増え、回復の早さが増すことが期待できる。
【0012】
(2)リハビリ支援装置は、使用者のリハビリの模範となる基本荷重を予め記憶する基本荷重記憶部と、当該基本荷重および左荷重と右荷重とを表示する表示部と、をさらに含んでもよい。
【0013】
この場合、使用者のリハビリの模範となる基本荷重(例えば、リハビリによる回復が最も遅かった者又は最も早かった者のデータ)および使用者の左荷重と右荷重とが表示部に表示される。したがって、使用者は表示部を視認することで、基本荷重と使用者自身の左荷重および右荷重とを比較することができる。それにより、使用者は、リハビリに対してより一層の意欲を持つことができる。
【0014】
(3)複数の荷重検出部は、左荷重を検出する左荷重検出部および右荷重を検出する右荷重検出部を含み、左荷重検出部および前記右荷重検出部は、それぞれ複数の荷重検出部を備えてもよい。
【0015】
この場合、左荷重検出部の複数の荷重検出部により使用者の左前側荷重および左後側荷重が検出され、右荷重検出部の複数の荷重検出部により使用者の右前側荷重および右後側荷重が検出される。それにより、使用者が左側または右側に傾いている場合だけでなく、前側または後側に傾いている場合でも、上記複数の荷重検出部の検出結果に基づいて報知することができる。これにより、使用者は、左右のバランス感覚を養うためのリハビリだけでなく、前後のバランス感覚を養うためのリハビリをも実施できる。
【0016】
(4)使用者荷重記憶部は、左前側荷重、左後側荷重、右前側荷重および右後側荷重を時間とともに記憶し、判断部は、左前側荷重、左後側荷重、右前側荷重および右後側荷重の少なくとも一の経時的変化に基づいて使用者の身体が傾いていることを判断してもよい。
【0017】
この場合、使用者は、当該判断部の判断に基づいた報知により、左右方向または前後方向に傾いていることを認識できる。これにより、使用者は、左右または前後のバランス感覚を養うためのリハビリを実施できる。
【0018】
(5)基本荷重は、身体が倒れる直前の左荷重および右荷重を閾値として含み、判断部は、使用者の左荷重または右荷重が閾値を超えた場合に、当該使用者の身体が傾いていると判断してもよい。
【0019】
この場合、身体が倒れる直前の左荷重および右荷重を閾値とし、使用者の各荷重が当該閾値を超えたときに当該使用者の身体が傾いていると判断されるので、使用者はリハビリ中に倒れることなく当該リハビリを良好に行うことができる。
【0020】
(6)リハビリ支援装置は、左荷重および右荷重を外部機器に対して送信し、または当該外部機器から情報を受信する無線通信部をさらに含んでもよい。
【0021】
この場合、無線通信部により左荷重および右荷重の情報を外部機器に送信することによって、担当医師または理学療法士等に対して使用者の回復状態を確認してもらうことができる。また、担当医師または理学療法士等から例えば適切なアドバイス等の情報を受信することもできる。
【0022】
さらに、使用者は、履歴情報として左荷重および右荷重の情報を無線通信部により例えば携帯端末等の外部機器に送信し、当該外部機器を介して担当医師等のアドバイスを受けることが容易に可能となり、当該リハビリ支援装置を使用して家庭内で気軽かつ容易にリハビリに努めることができる。それにより、使用者のリハビリ回数も増えることが期待でき、リハビリによる回復の早さも増す。
【0023】
また、リハビリ支援装置は、例えば椅子等の上に敷く座布団のような大きさであるので、従来のリハビリ支援装置のように、例えばリハビリ支援センターのような施設にしか設けられない大きな装置でかつ高額ではない。したがって、携帯性向上および低コストかつ簡易な構成が実現される。
【0024】
(7)荷重検出部は、圧電素子からなり、リハビリ支援装置は、圧電素子により使用者の荷重変化による圧力が変換されて生じた電力を蓄積する蓄電装置をさらに含んでもよい。
【0025】
この場合、蓄電装置により蓄積された電力をリハビリ支援装置の動作電力に用いることができるので、省電力または電池レスを実現することができる。したがって、当該リハビリ支援装置は環境にやさしいものである。
【0026】
(8)リハビリ支援装置は、使用者の身体が傾いている時間を、左荷重および右荷重に基づいて計測する計測部をさらに含み、判断部は、計測部により計測された時間が予め定められた時間を経過したときに使用者の身体が傾いていると判断してもよい。
【0027】
この場合、短時間の間において、使用者が姿勢を崩しながら即座に当該姿勢を治すような場合に報知部による報知が行われることが回避されるので、余計な報知が行われることを防止できる。したがって、余分な報知により使用者が気分を害されることはない。それにより、使用者はリハビリを心地よく行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るリハビリ支援装置によれば、使用者はリハビリをスムーズに実施でき、リハビリによる回復度合いを時間とともに認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係るリハビリ支援装置の上に使用者が座っている状態を示す模式的斜視図である。
【図2】本実施形態に係るリハビリ支援装置の外観を示す模式図である。
【図3】リハビリ支援装置の構成を示すブロック図である。
【図4】記憶部に記憶されるデータの一例を示す表である。
【図5】表示部に表示されるグラフの例を示す模式図である。
【図6】表示部に表示されるグラフの他例を示す模式図である。
【図7】靴の中敷き用のリハビリ支援装置の外観を示す模式図である。
【図8】靴の中敷き用のリハビリ支援装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係るリハビリ支援装置について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係るリハビリ支援装置100は、主に脳卒中等により身体が片麻痺になった患者が自身の身体のバランスを良好にとるために行うリハビリを支援するものである。
【0031】
図1は本実施形態に係るリハビリ支援装置100の上に使用者Hが座っている状態を示す模式的斜視図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係るリハビリ支援装置100は、椅子C上に載置される。使用者Hは、椅子C上に載置されたリハビリ支援装置100上に座位をとることでリハビリを行う。使用者Hは、リハビリ支援装置100により自身の身体が傾いている状態にあること等を認識できる。詳細については、以下説明する。
【0033】
図2は本実施形態に係るリハビリ支援装置100の外観を示す模式図であり、図3はリハビリ支援装置100の構成を示すブロック図である。
【0034】
図2に示すように、リハビリ支援装置100は、薄板状の本体部101を含む。当該本体部101には、使用者Hが持ち運びするための複数の取手部102、各種情報を表示する表示部103および使用者Hが操作する操作部103a等が設けられる。
【0035】
また、本体部101の内部には、使用者H(図1)が座位をとった場合の、主に左前荷重を検出する第1左荷重検出部104a、主に左後ろ荷重を検出する第2左荷重検出部104b、主に右前荷重を検出する第1右荷重検出部104c、および主に右後ろ荷重を検出する第2右荷重検出部104dが設けられる。なお、第1左荷重検出部104a、第2左荷重検出部104b、第1右荷重検出部104cおよび第2右荷重検出部104dは、例えば圧電素子からなる。
【0036】
図3に示すように、リハビリ支援装置100は、第1左荷重検出部104a、第2左荷重検出部104b、第1右荷重検出部104c、第2右荷重検出部104d、荷重処理部150、発音装置110、無線通信部111および蓄電部112を含む。
【0037】
荷重処理部150は、判断部105、記憶部106(使用者荷重記憶部107および基本荷重記憶部108を含む)、計測部109および算出部113を含む。荷重処理部150は、図示しないCPU(中央演算処理装置:判断部105、計測部109および算出部113に相当)、RAM(ランダムアクセスメモリ:記憶部106に相当)およびROM(リードオンリーメモリ:記憶部106に相当)等によって構成される。当該CPUがRAMまたはROMに格納されているプログラムを実行することによって、判断部105、計測部109および算出部113が機能的に実現されている。このようなプログラムは、当該プログラムが記録されたCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体および半導体メモリ等の記録媒体を含む可搬型の記録媒体からインストールすることが可能である。
【0038】
図3において、第1左荷重検出部104a、第2左荷重検出部104b、第1右荷重検出部104cおよび第2右荷重検出部104dにより検出された各荷重は、判断部105および記憶部106に与えられる。
【0039】
記憶部106の基本荷重記憶部108は、基本荷重(後述の閾値Shを含む)を予め記憶する。ここで、基本荷重とは、使用者H(図1)がリハビリを行う際の模範となる荷重である。基本荷重として、例えば健常者が座位をとった場合の荷重を採用することができる。なお、基本荷重の詳細については後述する。
【0040】
また、記憶部106の使用者荷重記憶部107は、第1左荷重検出部104a、第2左荷重検出部104b、第1右荷重検出部104cおよび第2右荷重検出部104dによる各検出値を、それぞれ使用者荷重(左前荷重)K1、使用者荷重(左後ろ荷重)K2、使用者荷重(右前荷重)K3および使用者荷重(右後ろ荷重)K4として記憶する。
【0041】
判断部105は、上記の使用者荷重K1、K2、K3、K4に基づいて使用者Hの身体(姿勢)が傾いているか否かを判断する。当該判断方法については後述する。
【0042】
計測部109は、上記の使用者荷重K1、K2、K3、K4に基づいて、使用者Hの身体が傾いている時間(以下、傾斜姿勢時間と呼ぶ)を計測する。
【0043】
ここで、本実施形態では、判断部105は、計測部109により計測された傾斜姿勢時間が予め定められた時間を経過したときに、使用者Hの身体が傾いていると判断する。この場合、判断部105は、使用者Hの身体が傾いている旨を当該使用者Hに知らせるための音を発音装置110に発音させるよう指令する。なお、発音装置110に発される音は、例えばビープ音である。
【0044】
このように、発音装置110が上記の傾斜姿勢時間が経過してから発音するように制御されることによって、短時間の間において、使用者Hが姿勢を崩しながら即座に当該姿勢を治すような場合に発音装置110による報知が行われることが回避される。それにより、余計な報知が行われることを防止できる。したがって、余分な報知により使用者Hが気分を害されることはない。それにより、使用者Hはリハビリを心地よく行うことができる。
【0045】
算出部113は、基本荷重および使用者荷重K1、K2、K3、K4に基づいて各値を算出する。詳細については後述する。
【0046】
表示部103は、判断部105の指令に基づいて、上記使用者荷重K1、K2、K3、K4に基づいたグラフおよび各種設定項目等を表示する。なお、使用者荷重K1、K2、K3、K4に基づいて作成されるグラフについては図面を用いて後述する。
【0047】
無線通信部111は、例えばbluetooth(登録商標)を通信規格として用いる。この場合、無線通信部111から使用者Hの使用者荷重K1、K2、K3、K4に関する履歴情報を、bluetooth(登録商標)機能を有する例えば携帯電話等の携帯端末200に送信することができる。そして、使用者Hは、携帯端末200を使用して上記情報を、担当医師(主治医)または理学療法士等に送信することができる。それにより、使用者Hは、携帯端末200のような身近にある機器を使って情報を担当医師等に容易かつ迅速に送信することができる。また、使用者Hは、担当医師等から適切なアドバイスを容易かつ迅速に受信することもできる。
【0048】
蓄電部112は、使用者Hの重心移動によって第1左荷重検出部104a、第2左荷重検出部104b、第1右荷重検出部104cおよび第2右荷重検出部104dにおいて生じた電荷を蓄積する。蓄電部112の電力はリハビリ支援装置100の動作電力(データ送信用電力を含む)として用いられる。
【0049】
次に、使用者Hの身体が傾いていることを判断するための方法の一例として、基本荷重および使用者荷重K1、K2、K3、K4を用いた方法を説明する。
【0050】
図4は記憶部106に記憶されるデータD1の一例を示す表である。図4のデータD1の各値は、図3の算出部113によって算出される。図4において、基本荷重の左前荷重、左後ろ荷重、右前荷重および右後ろ荷重を、それぞれS1、S2、S3およびS4とする。
【0051】
データD1には、左前側、左後ろ側、右前側および右後ろ側という各区分けで、基本荷重の比、使用者荷重の比、基本荷重と使用者荷重との比率、最適値および絶対値差が含まれる。
【0052】
左前側に関する基本荷重の比α1は、基本荷重の左前荷重S1、左後ろ荷重S2、右前荷重S3および右後ろ荷重S4の合計に対する左前荷重S1の比であり、S1/(S1+S2+S3+S4)により表される。同様に、左後ろ側に関する基本荷重の比α2は、S2/(S1+S2+S3+S4)により表され、右前側に関する基本荷重の比α3は、S3/(S1+S2+S3+S4)により表され、右後ろ側に関する基本荷重の比α4は、S4/(S1+S2+S3+S4)により表される。
【0053】
左前側に関する使用者荷重の比β1は、使用者荷重K1、K2、K3、K4の合計に対する使用者荷重K1の比であり、K1/(K1+K2+K3+K4)により表される。同様に、左後ろ側に関する使用者荷重の比β2は、K2/(K1+K2+K3+K4)により表され、右前側に関する使用者荷重の比β3は、K3/(K1+K2+K3+K4)により表され、右後ろ側に関する使用者荷重の比β4は、K4/(K1+K2+K3+K4)により表される。すなわち、基本荷重の比α1、α2、α3、α4および使用者荷重の比β1、β2、β3、β4は、それぞれ合計荷重に対する各位置(左前側、左後ろ側、右前側および右後ろ側)の荷重の割合を示す。
【0054】
ここで、上述したように、基本荷重はリハビリの模範となるものであるので、α1/β1、α2/β2、α3/β3およびα4/β4は、それぞれ1であることが望ましい。したがって、図4の最適値をそれぞれ1とする。
【0055】
図4に示すように、算出部113(図3)により算出されたα1/β1、α2/β2、α3/β3およびα4/β4が、例えば、それぞれ1、1、0.5および1.5である場合には、これらの値と、対応する上記各最適値との差の絶対値(以下、絶対値差と呼ぶ)は、それぞれ0、0、0.5、0.5となる。つまり、各絶対値差が小さければ小さいほど、使用者Hのリハビリの状態が模範状態に近くなっていることが言える。
【0056】
なお、図4のデータD1において、使用者荷重K1、K2、K3、K4および基本荷重S1、S2、S3、S4としては、所定期間におけるこれら各荷重の平均値を用いることができる。
【0057】
図5は表示部103に表示されるグラフの例を示す模式図である。なお、使用者Hは、操作部103a(図2)を操作することによって、図5(a)の表示と図5(b)の表示とを切り替えて表示させることができる。
【0058】
図5(a)に示すように、左側のグラフには、ある期間における使用者荷重の比β1、β2の軌跡が表示され、右側のグラフには、同期間における使用者荷重の比β3、β4の軌跡が表示される。
【0059】
また、図5(a)において、身体が倒れる直前の基本荷重の比が閾値Shとして表示される。当該閾値Shは、例えば40%に設定される。例えば、使用者荷重の比β3が時間t1において閾値Shを超えた場合、判断部105(図3)は、使用者が将来的に倒れることを知らせるための音を発音装置110(図3)が発するように指令する。これにより、使用者Hは、将来的に倒れることを、倒れる前に知ることができる。なお、本実施形態では、使用者荷重の比β1、β2、β3、β4のうち一つでも閾値Shを超えれば、発音装置110により発音される。
【0060】
図5(b)に示すように、左側のグラフには、ある期間における基本荷重の比α1、α2の軌跡が表示され、右側のグラフには、同期間における基本荷重の比α3、α4の軌跡が表示される。なお、図5では示していないが、図5(a)のグラフに、図5(b)の基本荷重の比α1、α2、α3、α4を重ねて表示してもよい。
【0061】
図6は表示部103に表示されるグラフの他例を示す模式図である。図6のグラフは、使用者Hのリハビリによる回復度合い(成果)を示すものである。
【0062】
すなわち、図6において、横軸L1を時間軸とし、縦軸L2を、図4の各絶対値差の合計をポイントKtとして用いるポイント軸とした場合、当該ポイントKtの軌跡は、右肩下がりであることが望ましい。つまり、リハビリを開始した当初(例えば、6ヶ月前)の使用者Hに関しては、リハビリに慣れていないことまたはリハビリの成果が未だ表れない等の理由で、ポイントKtが高くなることが多い。これに対して、リハビリを継続してきた時点(現在)での使用者Hに関しては、リハビリに慣れてきたことおよびリハビリの成果が表れる等の理由で、ポイントKtが低くなる。ポイントKtが0になるということは、模範と同等になったことを意味し、回復状態となったことを示す。
【0063】
なお、ポイントKtが所定範囲内に入れば、例えば「回復具合いは大変良好です」等の言葉が発音装置110により発せられる。
【0064】
(本実施形態における効果)
このように、本実施形態に係るリハビリ支援装置100では、使用者荷重K1、K2、K3、K4(使用者荷重の比β1、β2、β3、β4)の経時的変化および閾値Shに基づいて、使用者Hの身体が傾いていることが発音装置110により発音されるので、当該使用者Hは、将来的に倒れることを、倒れる前に認識できる。それにより、使用者Hは、倒れることなく自身の姿勢を即座に修正することができ、リハビリをスムーズに行うことができる。
【0065】
また、表示部103においてリハビリ期間における回復度合いが時間とともに表示されるので、使用者Hは、リハビリによる回復状態を的確に認識できる。
【0066】
また、ポイントKtに応じて、「回復具合いは大変良好です」等の言葉が発音装置110により発せられるので、使用者Hはリハビリに対する意欲を持つことができる。したがって、リハビリ回数が増え、回復の早さが増すことが期待できる。
【0067】
また、本実施形態では、使用者荷重K1、K2、K3、K4(使用者荷重の比β1、β2、β3、β4)の経時的変化に基づいて発音装置110により報知されることによって、使用者Hは、左右のバランス感覚を養うためのリハビリだけでなく、前後のバランス感覚を養うためのリハビリをも実施できる。
【0068】
また、本実施形態では、無線通信部111により履歴情報を携帯端末200に送信することによって、当該携帯端末200を用いて担当医師または理学療法士等に対して使用者Hの回復状態を確認してもらうことができる。そして、担当医師または理学療法士等から例えば適切なアドバイス等の情報を受信することもできる。したがって、使用者Hは、携帯端末200を介して担当医師等のアドバイスを受けることが容易となり、リハビリ支援装置100を使用して家庭内で気軽かつ容易にリハビリに努めることができる。それにより、使用者Hのリハビリ回数も増えることが期待でき、リハビリによる回復の早さも増す。
【0069】
また、リハビリ支援装置100は、椅子C等の上に敷く座布団のような大きさであるので、従来のリハビリ支援装置のように、例えばリハビリ支援センターのような施設にしか設けられない大きな装置でかつ高額ではない。したがって、携帯性向上および低コストかつ簡易な構成が実現される。
【0070】
また、本実施形態では、蓄電部112により蓄積された電力をリハビリ支援装置100の動作電力に用いることができるので、省電力または電池レスを実現することができる。したがって、リハビリ支援装置100は環境にやさしいものである。
【0071】
さらに、本実施形態では、発音装置110は傾斜姿勢時間が経過してから発音するように制御されることによって、短時間の間において、使用者Hが姿勢を崩しながら即座に当該姿勢を治すような場合に発音装置110による報知が行われることが回避される。それにより、余計な報知が行われることを防止できる。したがって、余分な報知により使用者Hが気分を害されることはない。それにより、使用者Hはリハビリを心地よく行うことができる。
【0072】
(請求項の各構成要素と本実施形態の各構成部との対応関係)
上記実施形態においては、リハビリ支援装置100がリハビリ支援装置に相当し、使用者荷重K1が使用者の左前側荷重に相当し、使用者荷重K2が使用者の左後側荷重に相当し、使用者荷重K3が使用者の右前側荷重に相当し、使用者荷重K4が使用者の右後側荷重に相当し、第1左荷重検出部104aおよび第2左荷重検出部104bが左荷重検出部に相当し、第1右荷重検出部104cおよび第2右荷重検出部104dが右荷重検出部に相当し、使用者荷重記憶部107が使用者荷重記憶部に相当し、判断部105が判断部に相当し、発音装置110が報知部に相当し、基本荷重記憶部108が基本荷重記憶部に相当し、表示部103が表示部に相当し、閾値Shが閾値に相当し、携帯端末200が外部機器に相当し、無線通信部111が無線通信部に相当し、蓄電部112が蓄電装置に相当し、計測部109が計測部に相当する。
【0073】
(変形例)
なお、上記実施形態では、使用者荷重の比β1、β2、β3、β4のうち一つでも閾値Shを超えれば、発音装置110により発音されることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば使用者荷重の比β1と使用者荷重の比β2とが共に閾値Shを超えた場合に、発音装置110による発音が行われることとしてもよい。この場合、使用者荷重の比β1の閾値Shと使用者荷重の比β2の閾値Shとが異なるように設定することが好ましい。
【0074】
また、発音装置110は、使用者荷重の比β1、β2、β3、β4が閾値Shに近付くにつれて音を徐々に大きく発してもよい。この場合、使用者Hは自身の身体の傾きの程度を認識することができる。それにより、使用者は自身の姿勢の修正を的確に行うことができる。
【0075】
また、上記実施形態では、使用者Hが傾いている旨の報知を発音装置110により行うこととしたが、これに限定されるものではなく、振動装置により報知を行ってもよい。この場合、難聴の使用者Hでも上記報知を認識することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、図5および図6のグラフを表示部103に表示することとしたが、これに限定されるものではなく、無線通信部111を使ってこれらを携帯端末200に表示してもよい。この場合、リハビリ支援装置100に表示部103を設けなくてもよいので、当該リハビリ支援装置100の小型化を図ることができる。
【0077】
また、上記実施形態では、使用者Hが座位をとる場合のリハビリに用いられるリハビリ支援装置100について説明したが、図7に示すように、例えば靴の中敷き用のリハビリ支援装置等にも本発明を同様に適用でき、使用者Hが立位の状態でリハビリを行う際にも、当該リハビリをスムーズに実施でき、リハビリによる回復度合いを時間とともに認識できる。
【0078】
図7において、左足裏用リハビリ支援装置100Lおよび右足裏用リハビリ支援装置100Rは、リハビリ支援装置100と同様に、第1左荷重検出部104a、第2左荷重検出部104b、第1右荷重検出部104cおよび第2右荷重検出部104dをそれぞれ含む。なお、左足裏用リハビリ支援装置100Lおよび右足裏用リハビリ支援装置100Rは、その外観が略足裏の形状となるように形成される。
【0079】
図8に示すように、左足裏用リハビリ支援装置100L(右足裏用リハビリ支援装置100Rについても同じ)は、リハビリ支援装置100から表示部103を除いた構成(図3が比較対象)を有する。図8の各構成部の機能はリハビリ支援装置100と同じである。なお、左足裏用リハビリ支援装置100Lおよび右足裏用リハビリ支援装置100Rは連動する。
【0080】
また、使用者Hがリハビリを行っている際に、リハビリ支援装置100において音楽等を流してもよい。この場合、使用者Hはリハビリを楽しく行うことができる。
【0081】
さらに、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0082】
100 リハビリ支援装置
100L 左足裏用リハビリ支援装置
100R 右足裏用リハビリ支援装置
101 本体部
103 表示部
104a 第1左荷重検出部
104b 第2左荷重検出部
104c 第1右荷重検出部
104d 第2右荷重検出部
105 判断部
107 使用者荷重記憶部
108 基本荷重記憶部
109 計測部
110 発音装置
111 無線通信部
112 蓄電部
200 携帯端末
K1、K2、K3、K4 使用者荷重
Sh 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者のリハビリを支援するリハビリ支援装置であって、
前記使用者の身体の左荷重および右荷重をそれぞれ検出する複数の荷重検出部と、
前記左荷重および前記右荷重を時間とともに記憶する使用者荷重記憶部と、
前記使用者荷重記憶部からの前記左荷重および前記右荷重の経時的変化に基づいて前記使用者の身体が傾いていることを判断する判断部と、
前記判断部の判断に基づいて前記使用者の身体が傾いている旨を報知する報知部と、を含むことを特徴とするリハビリ支援装置。
【請求項2】
前記使用者のリハビリの模範となる基本荷重を予め記憶する基本荷重記憶部と、
前記基本荷重および前記左荷重と前記右荷重とを表示する表示部と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のリハビリ支援装置。
【請求項3】
前記複数の荷重検出部は、前記左荷重を検出する左荷重検出部および前記右荷重を検出する右荷重検出部を含み、
前記左荷重検出部および前記右荷重検出部は、それぞれ複数の荷重検出部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリハビリ支援装置。
【請求項4】
前記使用者荷重記憶部は、前記左前側荷重、前記左後側荷重、前記右前側荷重および前記右後側荷重を時間とともに記憶し、
前記判断部は、前記使用者荷重記憶部からの前記左前側荷重、前記右前側荷重、前記左後側荷重および前記右後側荷重の少なくとも一の経時的変化に基づいて前記使用者の身体が傾いていることを判断することを特徴とする請求項3に記載のリハビリ支援装置。
【請求項5】
前記基本荷重は、身体が倒れる直前の左荷重および右荷重を閾値として含み、
前記判断部は、前記使用者の前記左荷重または前記右荷重が前記閾値を超えた場合に、当該使用者の身体が傾いていると判断することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のリハビリ支援装置。
【請求項6】
前記左荷重および前記右荷重を外部機器に対して送信し、または当該外部機器から情報を受信する無線通信部をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリハビリ支援装置。
【請求項7】
前記荷重検出部は、圧電素子からなり、
前記圧電素子により前記使用者の荷重変化による圧力が変換されて生じた電力を蓄積する蓄電装置をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリハビリ支援装置。
【請求項8】
前記使用者の身体が傾いている時間を、前記左荷重および前記右荷重に基づいて計測する計測部をさらに含み、
前記判断部は、前記計測部により計測された時間が予め定められた時間を経過したときに前記使用者の身体が傾いていると判断することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリハビリ支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−177265(P2011−177265A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42916(P2010−42916)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】