説明

リバロキサバンの調製方法

本発明は、式(V)を有する化合物の調製のための式(II)を有する化合物の使用に関する。式(II)を有する化合物を用いて式(V)を有する化合物を調製する方法もまた記載される。加えて、個々の反応ステップおよび中間体が特許請求される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(V)を有する化合物の調製のための式(II)を有する化合物の使用に関する。式(II)を有する化合物を用いて、式(V)を有する化合物を調製する方法も記載する。加えて、個々の反応ステップおよび中間体が特許請求される。
【背景技術】
【0002】
式(V)を有する化合物はWO01/47919に開示されている。
【0003】
【化1】

【0004】
該化合物は、リバロキサバンとしても知られており、商品名Xareltoとして多数の国々で市販されている。
【0005】
式(V)を有する化合物は第Xa凝固因子の阻害剤として作用し、血栓塞栓性障害、特に心筋梗塞、(不安定狭心症を含む)狭心症、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス後の再閉塞および再狭窄、脳卒中、一過性虚血発作、末梢動脈閉塞性病、肺塞栓症または深静脈血栓症の予防および/または治療用の薬剤として用いることができる。
【0006】
式(V)を有する化合物を調製する1つの方法が、WO2004/060887に開示されている。ここで開示されている方法は、高温で臭化水素酸を用いて調製される中間体として、臭素化化合物
【0007】
【化2】

を用いる。臭化水素酸は腐食性であり、従って、望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2001/047919号
【特許文献2】国際公開第2004/060887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、臭化水素酸の使用を必要としない、式(V)を有する化合物を調製する方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらなる目的は、より単純でより速い、式(V)を有する化合物を調製する方法を提供することにある。
【0011】
本発明のなおもう1つの目的は、より高い収率を有し、この結果、より高い純度を有する式(V)を有する化合物がもたらされる、式(V)を有する化合物を調製する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の化合物は本発明において言及される:
【0013】
【化3】

【0014】
本明細書を通じて、そうでないように定義されているのでなければ、以下の定義が適用される。
【0015】
はC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択される。好ましくは、Rはメチル、フェニルおよびトリルよりなる群から選択され、より好ましくは、Rはトリルである。
【0016】
HalはF、Cl、BrもしくはIまたはCNのような擬ハロゲン等のハロゲン原子である。好ましくは、HalはClである。
【0017】
はC1−6アルキル基またはベンジル基である。好ましくは、RはC1−4アルキル基であり、より好ましくは、Rはメチルである。
【0018】
Xは(F、Cl、BrまたはIのような)ハロゲン原子または(CNのような)擬ハロゲン等の適切な脱離基である。RSOXの場合には、Xは無水物のようなカルボキシレートとすることもできる。好ましくは、XはClのようなハロゲンである。
【0019】
ホスゲンはCOClである。ホスゲン同等物を、ホスゲンそれ自体の代わりに、本発明の方法において使用することができる。ホスゲン同等物は、クロロギ酸トリクロロメチル(「ジホスゲン」)および炭酸ビス(トリクロロメチル)(「トリホスゲン」)ならびに1,1−カルボニルジイミダゾールのようなCO同等物を含む。
【0020】
1つの実施形態において、本発明は、式(V)を有する化合物の調製のための式(II)を有する化合物の使用に言及する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、式(V)を有する化合物の調製方法に関し、該方法は(i)式(II)を有する化合物;(ii)式(III)を有する化合物および(iii)ホスゲンまたはこの同等物を反応させることを含む。
【0022】
なおもう1つの実施形態において、本発明は、式(II)を有する化合物を調製する方法に関し、該方法において、式(I)を有する化合物は式(II)を有する化合物に変換される。
【0023】
また、本発明の主題は、式(VI)を有する化合物を調製する方法であり、該方法において、式(II)を有する化合物を、式(III)を有する化合物と反応させる。
【0024】
さらなる実施形態において、本発明は、式(IV)を有する化合物を調製する方法に関し、該方法において、式(II)を有する化合物を、まず、ホスゲンまたはこの同等物と反応させ、続いて、反応生成物を、式(III)を有する化合物と反応させる。
【0025】
式(IV)を有する化合物を、式(V)を有する化合物に変換させる、式(V)を有する化合物を調製する方法もまた、本発明の主題である。
【0026】
もう1つの実施形態において、本発明は、式(V)を有する化合物を調製する方法に関し、該方法において、式(II)を有する化合物を式(VIII)を有する化合物と反応させる。
【0027】
式(II)を有する化合物を式(VII)を有する化合物と反応させて、式(V)を有する化合物を供するステップを含む方法。
【0028】
本発明は、さらに、式(II)を有する化合物を式(IX)を有する化合物に変換するステップを含む方法に関する。
【0029】
本発明のもう1つの実施形態において、式(IX)を有する化合物を式(VII)を有する化合物と反応させて、式(V)を有する化合物を得るステップを含む方法が開示される。
【0030】
さらなる実施形態において、本発明は、式(V)を有する化合物を調製する方法に関し、該方法において、式(II)を有する化合物は式(IX)を有する化合物に変換され、および式(IX)を有する化合物を式(VII)を有する化合物と反応させる。
【0031】
式(II)、(IV)、(VII)および(IX)を有する化合物も本発明の実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による反応スキームをまとめた図である。
【図2】本発明による反応スキームをまとめた図である。
【図3】本発明による反応スキームをまとめた図である。
【図4】本発明による反応スキームをまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
式(I)を有する化合物の調製:
式(I)を有する化合物の例は周知である。これらの化合物は、WO2004/060887に開示されている方法に類似する慣用的な方法によって調製することができる。例えば、(2S)−3−アミノプロパン−1,2−ジオールを、塩基性条件下で、5−ハロゲノチオフェン−2−カルボニルハライドと反応させることができる。
【0034】
式(I):
【0035】
【化4】

を有する化合物からの式(II)を有する化合物の調製
【0036】
式(II)を有する化合物は、式(I)を有する化合物から調製することができる。該反応は、任意の適切な反応条件を用いて行うことができる。典型的には、式(I)を有する化合物を式RSO−Xを有する化合物と反応させる。
【0037】
式(II)を有する化合物に対する式RSO−Xを有する化合物のモル比は、好ましくは、約1.0から約1.5、より好ましくは約1.0から約1.1の範囲である。
【0038】
この反応ステップで用いる溶媒は、典型的には、極性非プロトン性溶媒であり、これは、例えば、(アセトニトリルのような)ニトリル型溶媒、(DMFのような)アミド、(スルホランのような)スルホン、(ピリジンのような)環状アミン、およびこれらの混合物から選択することができる。(ジクロロメタンのような)ハロゲン化炭化水素または(トルエンのような)芳香族溶媒のような非極性溶媒、またはこれらの混合物を用いることもできる。該溶媒は、好ましくは、アセトニトリルのようなニトリル型溶媒である。なぜならば、式(II)を有する化合物をこの溶媒から結晶化するのが容易だからである。
【0039】
反応は、任意の適切な温度で行うことができる、典型的な反応温度は、約−20℃から約100℃、好ましくは約0℃から約50℃の範囲である。より好ましくは、反応は室温(例えば、20から25℃)で行われる。
【0040】
反応は、式RSO−Xを有する化合物の第一級アルコールとの位置選択的反応を容易とする補助剤の存在下で行うことができる。このような補助剤は、アルキルスズ酸化物(ここにおいて、アルキルは、例えば、C1−6アルキルである。)のような有機スズ化合物を含む。好ましい補助剤は、ジブチルスズ酸化物である。式RSO−Xを有する化合物に対する補助剤のモル比は、好ましくは約0.01から約0.10、より好ましくは、約0.01から約0.05の範囲である。
【0041】
該補助剤の存在が好ましい。なぜならば、該補助剤は、式(I)を有する化合物のヒドロキシ基の両方を式RSO−Xを有する化合物と反応させた副産物の量を有意に減少させることができるからである。これは、式(II)を有する所望の化合物の収率および純度を改善する。さらに、驚くべきことに、補助剤が用いられる場合には、反応時間を有意に減少させることができることが判明した。副産物の量の減少により、式(II)を有する化合物の精製もまた単純化される。
【0042】
反応は、塩基の存在下で行うことができる。塩基の典型的な例は、アミン化合物のような有機および無機塩基を含む。好ましくは、トリ(C1−4アルキル)アミンのようなアミン化合物を用いる。これらは、式RSO−Xを有する化合物と比較して約1.0から約1.5、好ましくは約1.0から約1.2の範囲のモル比で使用することができる。
【0043】
反応の持続時間は、選択される他の反応条件に依存し、約0.5時間から約5時間、より典型的には約1時間から約2時間の範囲とすることができる。
【0044】
反応が完了した後、式(II)を有する化合物は、通常、反応混合物から単離される。式(II)を有する化合物を単離する1つの方法は、水を加え、pHを酸性に調整することによって結晶化を誘導することである。次いで、結晶は、濾過、遠心等のような慣用的な方法によって溶媒から分離することができ、場合により、洗浄し、および/または乾燥することができる。
【0045】
N−((S)−2,3−ジヒドロプロピル)−5−クロロチオフェン−2−カルボキサミドを臭化水素酸と反応させることによって、臭素化された化合物が調製される、WO2004/060887に記載された反応と比較して、本発明の方法は有利である。なぜならば、室温で反応を行うことが可能だからである。さらに、収率は驚くべきことにより高い。加えて、式(II)を有する所望の化合物の単離はかなり単純化される。なぜならば、WO2004/060887に記載されるように、まず蒸留によって反応溶媒を除去し、次いで異なる溶媒混合物を用いて結晶化を誘導する必要がないからである。それどころか、結晶化は反応溶媒中で直接誘導することができる。2つの異なる溶媒混合物の代わりに単一の溶媒を用いることが可能であるため、溶媒のリサイクルおよび処分もまた促進される。反応の持続時間は、本発明による方法を用いて短縮することもできる。
【0046】
式(V)を有する化合物は、式(II)を有する化合物、式(III)を有する化合物およびホスゲンまたはこの同等物を反応させることによって得ることができる。反応ステップの順序は特に限定されない。1つの実施形態において、式(II)を有する化合物を、まず、式(III)を有する化合物と反応させて、式(VI)を有する化合物を得、次いで、式(VI)を有する化合物をホスゲンまたはこの同等物と反応させて、式(V)を有する化合物を得る。別の実施形態において、式(II)を有する化合物を、まず、ホスゲンまたはこの同等物と反応させ;続いて、この反応生成物を、式(III)を有する化合物と反応させて、式(IV)を有する化合物を得、式(IV)を有する化合物を、式(V)を有する化合物に変換する。これらの反応はワンポット反応として行うことができる。代わりに、中間体を単離し、これらを場合により精製し、その後、第二のステップを行うことも可能である。
【0047】
式(II)を有する化合物からの式(IV)を有する化合物の調製:
【0048】
【化5】

【0049】
式(II)を有する化合物を、まず、ホスゲンまたはこの同等物と反応させ、続いて、この反応生成物を、式(III)を有する化合物と反応させ、式(IV)を有する化合物を得る。
【0050】
式(II)を有する化合物とホスゲンとの反応は、任意の適切な条件を用いて行うことができる。該条件は、ホスゲンまたはホスゲン同等物を使用するかにより異なる。典型的には、式(II)を有する化合物を適切な溶媒中に供する。溶媒は、通常、極性溶媒である。適切な溶媒の例は(ジクロロメタンのような)ハロゲン化炭化水素、(THFのような)エーテル、(NMPのような)アミド、(トルエンおよびC1−4アルコールの混合物のような)炭化水素およびアルコールの混合物、および(アセトニトリルのような)ニトリルを含む。前述のの溶媒の混合物も可能である。好ましい溶媒はハロゲン化炭化水素およびエーテルである。
【0051】
ホスゲンまたはこの同等物は、典型的には、約1.0から約1.5、より好ましくは約1.0から約1.1の範囲の、ホスゲンに対する式(II)を有する化合物のモル比で用いる。ホスゲン同等物を用いる場合には、該モル比は、これらの化合物によって供されるホスゲン同等物の量に基づいて計算される。
【0052】
反応を促進するためには、該反応は塩基の存在下で行うことができる。適切な塩基の例は有機アミン、好ましくはピリジンのような有機環状アミンを含む。これらは、式(II)を有する化合物と比較して、約2.0から約5.0、好ましくは約2.5から約3.5の範囲のモル比で使用することができる。
【0053】
反応温度は特に限定されない。反応温度は、典型的には、約−60℃から約60℃、好ましくは約−40℃から約20℃の範囲である。
【0054】
反応は、通常、約1分から約1時間、より典型的には約5分から約30分で完了する。
【0055】
ホスゲンまたはこの同等物との反応が完了した後に、中間体を単離することができる。代わりに、および好ましくは、式(IV)を有する化合物に対する続いての反応は、中間体の単離無くして行うことができる。
【0056】
中間体と、式(III)を有する化合物との反応は、ホスゲン反応に対して先に述べた溶媒と同一の溶媒中で行うことができる。
【0057】
式(III)を有する化合物は、好ましくは、式(II)を有する化合物に対する式(III)を有する化合物のモル比が、約1.0から約1.5、より好ましくは約1.0から約1.1の範囲となる量で加える。
【0058】
所望によりまたは必要であれば、反応は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0059】
中間体と、式(III)を有する化合物との反応は、例えば、約−40℃から約50℃、より好ましくは約0℃から約30℃の範囲の温度で行うことができる。
【0060】
反応は、典型的には約1時間から約24時間、より典型的には約1時間から約2時間を要する。
【0061】
反応が完了した後、式(IV)を有する化合物を、所望により、単離し、および/または精製することができる。溶媒の蒸発のような慣用的な精製方法を使用することができる。このステップは、続く合成ステップにおいて収率および純度を改良する結晶化によるさらなる精製の利点を有する。
【0062】
式(IV)を有する化合物からの式(V)を有する化合物の調製:
【0063】
【化6】

【0064】
式(IV)を有する化合物を式(V)を有する化合物に変換する方法は、特に限定されない環化反応である。1つの実施形態において、化合物は溶媒中にて供することができる。可能な溶媒の例はプロトン性および非プロトン性有機溶媒を含む。好ましい溶媒は(THFのような)エーテル溶媒、(アセトニトリルのような)ニトリル溶媒、および(C1−4アルコール、例えば、イソプロパノールのような)アルコールを含む。
【0065】
反応は、典型的には、塩基の存在下で行って、環化を促進する。適切な塩基の例は有機金属塩基および有機塩基を含む。好ましい塩基は、例えば、(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)およびリチウムジイソプロピルアミド(LDA)のような)有機リチウム化合物、水素化物および(アルカリおよびアルカリ土類C1−6アルコキシドのような)アルコレートである。塩基は、通常、約1.0から約1.5、好ましくは約1.0から約1.1の範囲の、式(IV)を有する化合物に対する塩基のモル比で存在させる。
【0066】
所望によりまたは必要であれば、反応は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0067】
反応は、任意の適切な温度で行うことができる。温度は、典型的には、約−40℃から約40℃、好ましくは約−10℃から約30℃の範囲である。
【0068】
反応は、通常、約0.5時間から約2時間、より典型的には約0.5時間から約1時間で完了させる。
【0069】
式(V)を有する化合物は、溶媒の蒸発のような慣用的な方法によって反応混合物から容易に単離することができる。洗浄、乾燥および/または再結晶のようなさらなる精製ステップは、当業者によって、その具体的な要望に応じて行われる。
【0070】
式(II)を有する化合物からの式(VI)を有する化合物の調製:
【0071】
【化7】

【0072】
任意の適切な方法を用い、式(II)を有する化合物を、式(III)を有する化合物と反応させて、式(VI)を有する化合物を得ることができる。
【0073】
式(III)を有する化合物に対する式(II)を有する化合物のモル比は適切に選択することができ、通常、約1.0から約1.5、好ましくは約1.0から約1.2の範囲である。
【0074】
1つの実施形態によると、反応は溶媒中で行うことができる。このステップのための典型的な溶媒の例は、(トルエンのような)炭化水素および(アセトニトリルのような)ニトリルを含む。
【0075】
塩基の存在は反応を補助し得る。適切な塩基の実例は(トリ(C1−6アルキル)アミドおよびコリジンのような)有機塩基および(アルカリ水酸化物のような)無機塩基を含む。塩基は、例えば、式(II)を有する化合物の量に対して約0.8から約1.5の範囲(モル:モル)である量で加えることができる。
【0076】
反応温度は広い範囲で変化させることができる。典型的な温度は、約30℃から約200℃、より典型的には約70℃から約120℃の範囲である。
【0077】
反応は、通常、約1時間から約8時間、例えば、約2時間から約6時間進行させる。
【0078】
式(VI)を有する化合物を単離し、および/または精製する方法は限定されず、慣用的な方法から選択することができる。
【0079】
式(VI)を有する化合物からの式(V)を有する化合物の調製:
【0080】
【化8】

【0081】
式(VI)を有する化合物をホスゲンまたはこの同等物と反応させて、式(V)を有する化合物を調製することができる。
【0082】
式(VI)を有する化合物に対するホスゲンのモル比は適切に選択される。該モル比は、典型的には、約1から約5、好ましくは約1から約2、より好ましくは約1.0から約1.3の範囲である。ホスゲン同等物を用いる場合には、モル比は、これらの化合物によって供されるホスゲン同等物の量に基づいて計算される。
【0083】
この反応ステップのための溶媒は広い範囲の溶媒から選択することができる。可能な実例は、非プロトン性有機溶媒、好ましくは(トルエンのような)炭化水素、(アセトニトリルのような)ニトリル、(THFのような)エーテルを含む。
【0084】
反応は、任意の適切な温度で進行させることができる。具体的な例は、約20℃から約150℃、好ましくは、約30℃から約130℃、より好ましくは約75℃から約120℃の範囲の温度を含む。
【0085】
この反応ステップの持続時間は、多くの場合、約0.5時間から約15時間、例えば、約2時間から約3時間の範囲である。
【0086】
式(V)を有する化合物を単離する方法(所望の場合)は、特に限定されない。例として、結晶化を誘導することができ、および得られた結晶を濾過によって分離することができる。所望により結晶を洗浄し、乾燥し、および/もしくは再結晶し、または任意の他の適切な精製方法によって処理することができる。
【0087】
式IIを有する化合物からの式(IX)を有する化合物の調製:
【0088】
【化9】

【0089】
別の実施形態において、式(IV)を有する化合物は、式(VII)を有する化合物との反応によって式(II)を有する化合物から調製することができる。この反応の第一の部分において、式(II)を有する化合物を式(IX)を有する化合物に変換する。
【0090】
該反応は、任意の適切な条件下で進行させて、環化反応を行うことができる。1つの選択肢は、塩基の存在下で環化を行うことである。任意の適切な塩基を用いることができる。この例は(アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムカチオンとのカルボネート、ヒドロカルボネート、ヒドロキサイドのような)無機塩基、または(アルカリ金属およびアルカリ土類金属のC1−8アルコキシドのような)有機塩基である。反応混合物のpHは、8を超えるように調整すべきである。
【0091】
式(II)を有する化合物に対する塩基のモル比は、一般に、約10から約1、好ましくは約6から約1.5の範囲である。
【0092】
反応は、典型的には、(塩化メチレンのような)ハロゲン化炭化水素、(アセトニトリルのような)ニトリル、(THFのような)エーテル、および(t−ブタノールのような)アルコール等の極性溶媒中で行われる。
【0093】
反応温度は特に限定されるものではなく、例えば、約−30℃から約30℃、好ましくは約−25℃から約25℃まで変化させることができる。
【0094】
反応の持続時間は選択された他の条件に依存する。典型的な値は、約1時間から約120時間、より典型的には約5時間から約85時間の範囲である。
【0095】
式(IX)を有する化合物は、それ自体で、さらなる反応で用いることができるか、または慣用的な技術を用いて単離し、および/または精製することができる。
【0096】
式(IX)を有する化合物からの式(V)を有する化合物の調製:
【0097】
【化10】

【0098】
式(IX)を有する化合物を式(VII)を有する化合物と反応させて、式(V)を有する化合物とすることができる。
【0099】
式(VII)を有する化合物は、4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オンをホスゲンまたはこの同等物と反応させることによって調製することができる。4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オンは商業的に入手可能であるか、WO2004/060887に記載されているように調製することができる。
【0100】
反応は、典型的には、非プロトン性溶媒中で行われる。この例は(塩化メチレンのような)ハロゲン化炭化水素、(トルエンのような)炭化水素またはこれらの混合物である。
【0101】
反応温度は特に限定されるものではなく、典型的には約−40℃から約200℃、より典型的には約0℃から約120℃の範囲である。
【0102】
反応は(モノ−、ジ−またはトリ(C1−4アルキル)アミンのような)アミンの存在下で行うことができる。4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オンに対するアミンのモル比は、通常、約1から約3、例えば約1.8から約2.2である。
【0103】
4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オンおよびホスゲンまたはこの同等物の間の反応は適切に選択することができる。典型的には、反応時間は約0.5時間から約10時間、例えば約1時間から約5時間である。
【0104】
式(VII)を有する化合物は(例えば、結晶化によって)精製することができるか、または式(IX)を有する化合物との反応においてそれ自体で用いることができる。
【0105】
式(IX)を有する化合物および式(VII)を有する化合物の間の反応は、任意の適切な条件下で行うことができる。典型的には、該反応は非プロトン性溶媒中で行われる。適切な溶媒の例は(トルエンのような)炭化水素、(塩化メチレンのような)ハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物を含む。
【0106】
反応は、リチウムハロゲナイドまたはトリブチルホスフィンオキサイドの存在下で行うことができる。式(IX)を有する化合物に対するリチウムハロゲナイドのモル比は、典型的には、約0.02から約0.1、より典型的には約0.04から約0.06である。式(IX)を有する化合物に対するトリブチルホスフィンオキサイドのモル比は、典型的には、約0.02から約0.1、より典型的には約0.04から約0.06である。
【0107】
反応温度は特に限定されるものではない。反応温度は、適切には、約0℃から約200℃、より適切には、約20℃から約120℃の範囲とすることができる。
【0108】
反応は、典型的には、約1時間から約24時間、より典型的には約2時間から約6時間で完了する。
【0109】
式(V)を有する化合物を単離する方法は、特に限定するものではない。この化合物は、例えば、濾過によって単離することができる。所望により、結晶を洗浄し、乾燥し、および/もしくは再結晶し、または任意の他の精製方法によって処理することができる。
【0110】
式(II)を有する化合物からの式(IV)を有する化合物の調製:
【0111】
【化11】

【0112】
式(II)を有する化合物を式(VII)を有する化合物と反応させて、式(IV)を有する化合物を得ることができる。
【0113】
反応は、典型的には、非プロトン性溶媒中で行われる。適切な溶媒の例は、(塩化メチレンのような)ハロゲン化炭化水素、(トルエンのような)炭化水素およびこれら混合物を含む。
【0114】
式(VII)を有する化合物に対する式(II)を有する化合物のモル比は、典型的には約1から約1.5、より好ましくは約1から約1.1である。
【0115】
反応温度は特に限定されるものではなく、約0℃から約150℃、好ましくは約20℃から約120℃の範囲とすることができる。
【0116】
反応の持続時間は、例えば、約0.5時間から約24時間、例えば、約1時間から約12時間とすることができる。
【0117】
式(IV)を有する化合物は単離し、および/もしくは精製することができるか、またはさらなる反応においてそれ自体で用いることができる。
【0118】
式(IV)を有する化合物は、先に説明したように、式(V)を有する化合物に変換することができる。
【0119】
式(II)を有する化合物からの式(V)を有する化合物の調製:
【0120】
【化12】

【0121】
さらなる別の実施形態において、式(II)を有する化合物を式(VIII)を有する化合物と反応させて、式(V)を有する化合物を調製することができる。
【0122】
式(VIII)を有する化合物は、任意の適切な方法に従って調製することができる。1つの可能性は、4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オンをX−C(O)−O−Rと反応させることによって調製することである。
【0123】
反応は、典型的には、溶媒中で行われる。適切な溶媒の例は(トルエンのような)炭水化物、(塩化メチレンのような)ハロゲン化炭化水素、(トルエンのような)ケトン、(アセトニトリルのような)ニトリル、アセトン/水の混合物、アセトニトリル/水の混合物、およびこれらの混合物を含む。
【0124】
反応温度は特に限定されるものではなく、例えば、約−20℃から約60℃、より具体的には約−10℃から約40℃とすることができる。
【0125】
反応時間は変化させることができ、例えば、約1.5時間から約2.5時間のように、約1時間から約4時間とすることができる。
【0126】
X−C(O)−O−Rに対する4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オンのモル比は、典型的には、約1から約1.5、より典型的には、約1.0から約1.1である。
【0127】
所望により、反応は無機または有機塩基の存在下で行うことができる。好ましい塩基は、例えば、炭酸水素ナトリウムおよびトリエチルアミンである。式(II)を有する化合物に対する塩基のモル比は、約1.5から約3、好ましくは約1.0から約2.5の範囲である。
【0128】
反応が完了した後、式(VIII)を有する化合物を、通常、反応混合物から単離する。式(VIII)を有する化合物を単離する1つの方法は、水を加えることによって結晶化を誘導することである。次いで、濾過、遠心等のような慣用的な方法によって結晶を溶媒から分離することができ、場合により、洗浄しおよび/または乾燥することができる。
【0129】
式(II)を有する化合物と、式(VIII)を有する化合物との反応は、任意の適切な条件を用いて行うことができる。アシル化、環化および脱アシル化を含む可能な反応経路を以下に記載する。
【0130】
アシル化:
式(II)を有する化合物を、まず、無水酢酸と反応させて、式(II)を有する化合物の対応するアセチル誘導体を得ることができる。アシル化反応は、典型的には、プロトン性または非プロトン性溶媒中で行われる。適切な溶媒の例は、(塩化メチレンのような)ハロゲン化炭化水素、(トルエンのような)炭化水素、(DMFのような)アミド、(スルホランのような)スルホン、(ピリジンのような)芳香族塩基、(イソプロパノールのような)アルコールおよびこれらの混合物を含む。
【0131】
無水酢酸に対する式(II)を有する化合物のモル比は、典型的には、約1から約1.5、より典型的には約1から約1.1である。
【0132】
反応温度は特に限定されるものではなく、約−20℃から約80℃、好ましくは約−10℃から約50℃の範囲とすることができる。
【0133】
反応の持続時間は、例えば、約0.5時間から約24時間、例えば、約0.5時間から約5時間とすることができる。
【0134】
式(II)を有する化合物のアセチル誘導体は(例えば、結晶化によって)精製することができるか、または式(VIII)を有する化合物との反応においてそれ自体で用いることができる。
【0135】
環化および脱アシル化:
式(II)を有する化合物のアセチル誘導体を式(VIII)を有する化合物と反応させて、式(V)を有する化合物を得ることができる。
【0136】
適切な溶媒の例は(DMFおよびDMACのような)アミド、(THF、メチル−t−ブチルエーテルのような)エーテル、(スルホランのような)スルホン、(アセトニトリルのような)ニトリル、(塩化メチレンのような)ハロゲン化炭化水素、(トルエンのような)炭化水素、(t−ブタノールおよびt−アミルアルコールのような)アルコールおよびこれらの混合物を含む。
【0137】
式(VIII)を有する化合物に対する式(II)を有する化合物のアセチル誘導体のモル比は、典型的には、約0.7から約1.4、より典型的には約0.7から約1.1である。
【0138】
反応は、好ましくは、塩基およびアルコールの存在下で行う。
【0139】
適切な塩基の例は、(アルカリ金属またはアルカリ土類金属のtert−ブトキシドまたはtert−アミレートのような)1から7個の炭素原子を有するアルコキシ化合物、カルボネート、トリアルキルアミン、DBU、DBNおよびホスファセン塩基を含む。式(II)を有する化合物に対する塩基のモル比は、典型的には、約1から約3、より典型的には、約1.4から約2.5である。
【0140】
適切なアルコールの例はメタノール、エタノールおよびイソプロパノールのようなC1−4アルコールである。式(II)を有する化合物に対するアルコールのモル比は、典型的には、約0.7から約4、より典型的には約0.7から約2である。
【0141】
反応温度は、約−40℃から約50℃、より典型的には約−20℃から約30℃の範囲で変化させることができる。
【0142】
反応は、通常、約2時間から約24時間、例えば、約6時間から約18時間進行させる。
【0143】
式(V)を有する化合物を単離する方法は特に限定されるものではない。該化合物は、例えば、濾過によって単離することができる、所望により結晶を洗浄し、乾燥し、および/もしくは再結晶し、または任意の他の適切な精製方法によって処理することができる。
【0144】
先に述べた反応の全ては、雰囲気圧力、または約50kPaから約500kPaの範囲の圧力のような他の圧力で行うことができる。典型的には、これらの反応は雰囲気圧力で行われる。
【0145】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【実施例】
【0146】
[実施例1]
4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸((S)−2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−アミド
【0147】
【化13】

【0148】
出発物質4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸(S)−2,3−ジヒドロキシ−プロピルアミドを、WO2004/06088に記載されているように調製した。
【0149】
[実施例2]
4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸((S)−2−ヒドロキシ−3−トシルオキシ)−プロピル)−アミド
【0150】
【化14】

【0151】
50.0gの4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸(S)−2,3−ジヒドロキシ−プロピルアミド(MW=235.69;1当量)および1.05gのジブチルスズ酸化物(MW=248.92;0.02当量)を900mLのアセトニトリルに懸濁させ、1時間還流した。次いで、懸濁液を22℃まで冷却し、27.7gのトリエチルアミン(MW=101.19;1.1当量)を加えた。次いで、41.6gの塩化トシル(MW=190.65;1.03当量)を2分以内に加え、反応混合物を22℃で攪拌した。この温度で90分間攪拌した後、反応混合物を15分以内に、6M塩酸の添加によりpHを調整しているpH2.0の4000mLの水に加えた。得られた結晶懸濁液を22℃にて30分間攪拌し、次いで、0℃まで冷却した。この温度で1時間攪拌した後、懸濁液を濾過し、フィルターケーキを200mLの冷水および1Lのトルエンで洗浄した。湿った生成物を真空中で30℃で乾燥して、68.5gの表記化合物を結晶粉末の形態(理論のほぼ85.5%)で得た。
【0152】
融点:99℃
H−NMR(DMSO−d6,300Mz)δ(ppm)=2.29(s,CH,3H)、3.10−3.25(m,CHN,2H)、3.74−3.87(m,CH,CH,2H)、3.98(dd,CH,1H,J10.2Hz,J3.2Hz)、7.17(d,CH,1H,J4.0Hz)、7.42(d,CH,1H,J9.1Hz)、7.58(d,CH,1H,J4.0Hz)、7.75(d,CH,1H,J9.1Hz)、8.58(t.NH,1H,J5.8Hz)。
【0153】
13C−NMR(DMSO−d6,300Mz)δ(ppm)=22.12、43.02、69.24、70.97、127.62、128.39、130.52、132.50、136.52、136.87、139.31、145.90、163.11。
【0154】
[実施例3]
4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸((S)−2−ヒドロキシ−3−トシルオキシ)−プロピル)−アミド
【0155】
【化15】

【0156】
5.00gの4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸(S)−2,3−ジヒドロキシ−プロピルアミド(MW=235.69;1当量)を100mLのピリジンに溶解させ、−10℃まで冷却した。次いで、4.04gの塩化トシル(MW=190.65;1当量)を加えた。この温度で20時間攪拌した後、400mLの塩化メチレンおよび400mLの水を反応混合物に加え、6Mの塩酸の添加によってpHを2.0に調整した。層の分離の後、水性相を100mLの塩化メチレンでもう1回抽出した。合わせた有機層を100mLの水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。次いで、溶液を真空中で室温にて濃縮して、6.90gの表記化合物を油の形態で得た。
【0157】
純度(HPLC):84.3%
【0158】
[実施例4]
5−クロロチオフェン−2−カルボン酸−{(R)−2−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニルアミノ]プロピル}アミド
【0159】
【化16】

【0160】
15mLのトルエン中の2.55gの4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸((S)−2−ヒドロキシ−3−トシルオキシ)−プロピル)アミド(MW=389.88;1当量)の懸濁液に1.22gの4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オン(MW=190.22;1当量)、0.73gのコリジン(MW=121.18;0.9当量)および0.29mLのエタノールを加えた。反応混合物を105℃まで加熱し、この温度で3時間攪拌した。次いで、2.5mLのn−ブタノールを加え、混合物を22℃まで冷却した。雰囲気温度にて少なくとも1時間攪拌した後、生成物を濾過によって単離し、トルエンおよび水で洗浄した。湿った生成物を真空中にて30℃で乾燥して、2.00gの表記化合物(理論によると76%)を得た。
【0161】
[実施例5]
5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド
【0162】
【化17】

【0163】
窒素雰囲気下で、145mLのトルエンおよび22mLのN−メチルピロリドン中の14.85gの5−クロロチオフェン−2−カルボン酸−{(R)−2−ヒドロキシ−3−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニルアミノ]プロピル}アミド(MW=409.89;1当量)の懸濁液に7.13g(MW=162.15;1.2当量)の1,1’−カルボニルジイミダゾールを加えた。反応混合物を80℃まで加熱した。30分間攪拌した後、混合物を110℃まで加熱し、この温度で2時間攪拌した。次いで、混合物を22℃まで冷却した。雰囲気温度にて1時間攪拌した後、生成物を濾過によって単離し、60mLのトルエンおよび60mLの水で洗浄した。湿った生成物を真空中にて30℃で乾燥して、15.99g(MW=435.89;1.013当量)の表記化合物(理論の90%)を得た。
【0164】
[実施例6]
トルエン−4−スルホン酸(S)−3−[(5−クロロ−チオフェン−2−カルボニル)−アミノ]−2−[4−(3−オキソ−モルホリン−4−イル)−フェニルカルバモイルオキシ]−プロピルエステル
【0165】
【化18】

【0166】
窒素雰囲気下で、400mLの塩化メチレン中の20.0gの4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸((S)−2−ヒドロキシ−3−トシルオキシ)−プロピル)−アミド(MW=389.88;1当量)の懸濁液に、10℃にて、12.2gのピリジン(MW=79.10;3当量)および5.1gのビス(トリクロロメチル)カルボネート(MW=296.75;0.34当量)を加えた。15分間攪拌した後、10.0gの4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オン(MW=192.22;1当量)、4.1gのピリジン(MW=79.10;1当量)および0.19gのジメチルアミノピリジンを加えた。反応混合物を22℃まで温めた。この温度で75分間攪拌した後、2Lの塩化アンモニウムの飽和水溶液および1Lの塩化メチレンの混合物への添加によって反応をクエンチした。次いで、有機層を分離し、水性層を400mLの塩化メチレンでもう1回抽出した。合わせた塩化メチレン層を400mLの水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、真空中で86gの重量まで濃縮した。濃縮物を、40℃にて、200mLのアセトニトリルに溶解させ、次いで、雰囲気温度まで冷却した。得られたスラリーを雰囲気温度で1時間攪拌し、0℃まで冷却した。この温度で2時間攪拌した後、懸濁液を濾過し、フィルターケーキを50mLのアセトニトリルで洗浄した。湿った生成物を真空中にて30℃で乾燥して、21.1gの表記化合物を結晶性粉末の形態(理論によると78%)で得た。
【0167】
融点:142℃
H−NMR(DMSO−d6,300Mz)δ(ppm)=2.29(s,CH,3H)、3.49(m,CHN,2H)、3.68(m,CH,2H)、3.95(m,CH,2H)、4.18(s,CHCO,2H)、4.18−4.32(m,CH,2H)、5.07(m,CH,1H)、7.18(d,J=1.9Hz,CH,1H)、7.22−7.48(m,CH,6H)、7.59(d,J=3.9Hz,CH,1H)、7.77(d,J=1.9Hz,CH,1H)、8.75(t.J5.1Hz,NH,1H)、9.81(s,NH,1H)。
【0168】
13C−NMR(DMSO−d6,300Mz)δ(ppm)=49.98、64.34、68.59、70.16、70.80、119.34、126.81、128.49、128.92、129.15、131.02、132.52.134.03、137.08、137.94、139.31、145.99、153.23、161.42、166.76。
【0169】
[実施例7]
5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド
【0170】
【化19】

【0171】
窒素雰囲気下で25mLのテトラヒドロフラン中の1.00gのトルエン−4−スルホン酸(S)−3−[(5−クロロ−チオフェン−2−カルボニル)−アミノ]−2−[4−(3−オキソ−モルホリン−4−イル)−フェニルカルバモイルオキシ]−プロピルエステル(MW=608.09;1当量)の懸濁液を0℃まで冷却した。この温度にて、テトラヒドロフラン中のリチウムt−ブトキシドの1M溶液の1.6mLを滴下した。この温度で1時間攪拌した後、得られたスラリーを濾過した。ケーキを14mLのテトラヒドロフランおよび14mLの水ですすいだ。湿った生成物を真空中で30℃にて乾燥して、0.63g(MW=435.89;1.013当量)の表記化合物(理論の88.5%)を得た。
【0172】
[実施例8]
4−(イソシアナート−フェニル)−モルホリン−3−オン
【0173】
【化20】

【0174】
窒素雰囲気下で、390mLの塩化メチレン中の25.9gの4−(4−アミノ−フェニル)−モルホリン−3−オン(APMO)(MW=192.22;1当量)および27.2gのトリエチルアミン(MW=101.19;2当量)の懸濁液に、室温にて、10分以内に、390mLの塩化メチレン中の14.6gのクロロギ酸トリクロロメチルエステル(MW=197.83;0.55当量)の溶液を加えた。反応はわずかに発熱し、温度は35℃まで上昇した。室温で2時間攪拌した後、得られた懸濁液を濾過し、濾液を真空中にて45℃にて濃縮して、49.5gの表記化合物を得た。得られた物質をさらに精製することなく次のステップで用いた。
【0175】
融点:119℃
H−NMR(CDCN,300Mz)δ(ppm)=3.71(m,CHO,2H)、3.00(m,CHN,2H)、3.92(m,CH,2H)、4.21(s,CHCO,2H)、7.21 and 7.37(m,CH,4H)。
【0176】
13C−NMR(CDCN,300Mz)δ(ppm)=45.97、49.70、64.15、68.36、115.12、125.65、127.27、132.00、140.01、166.86。
【0177】
[実施例9]
5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド
【0178】
【化21】

【0179】
窒素雰囲気下で、25mgのLiBrおよび63mgのトリブチルホスフィンオキサイドを5mLのトルエンに加え、混合物を加熱還流した。この温度にて、1.09gの4−(イソシアナート−フェニル)−モルホリン−3−オン(MW=218.21;1当量)および1.09gの5−クロロ−チオフェン−2−カルボン酸((S)−1−オキシラニルメチル)−アミド(MW=217.68;1当量)を加え、混合物を3時間還流した。3時間攪拌した後、生成物を濾過によって単離し、トルエンおよび水で洗浄した。湿った生成物を真空中で30℃にて乾燥して、1.20g(MW=435.89;1.013当量)の表記化合物(理論の55%)を得た。
【0180】
[実施例10]
5−クロロ−チオフェン−2−カルボン酸((S)−1−オキシラニルメチル)−アミド
【0181】
【化22】

【0182】
窒素雰囲気下で、12.6gの粉末炭酸カリウム(MW=138.21;4.3当量)を、250mLの塩化メチレン中の5.00gの4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸((S)−2−ヒドロキシ−3−トシルオキシ)−プロピル)−アミド(MW=389.88;1当量)の溶液に加えた。反応混合物を室温で3日間攪拌した。次いで、懸濁液を濾過し、フィルターケーキを塩化メチレンで洗浄した。濾液および洗液を合わせ、真空中にて室温で濃縮して、2.74gの表記化合物を得た。得られた物質をさらに精製することなく以下のステップで用いた。
【0183】
[実施例11]
5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド
【0184】
【化23】

【0185】
4.2mLの無水酢酸および3.0mLのピリジンの混合物を0℃まで冷却した。この温度において、4.00gの4−[4−[(5R)−5−(クロロチオフェノ−2−カルボン酸((S)−2−ヒドロキシ−3−トシルオキシ)−プロピル)−アミド(MW=389.88;1当量)を加えた。この温度で1時間攪拌した後、反応混合物を150mLのメチル−t−ブチルエーテルおよび50mLの水に注ぎ、6M塩酸の添加によってpHを2.0に調整した。層の分離の後、水性層を50mLのメチル−t−ブチルエーテルでもう1回抽出した。合わせた有機層を50mLの飽和炭酸水素塩およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。溶液を真空中にて室温で濃縮乾固した。残渣を20mLのアセトニトリルに溶解させ、次いで、2.48gの4−(3−オキソ−モルホリン−4−イル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル(MW=326.36;0.76当量)および302μLのメタノール(MW=32.04;0.76当量)を加えた。混合物を0℃まで冷却し、1.22gのリチウムtert−ブトキシドを加えた。0℃での17時間の攪拌の後、得られた懸濁液を濾過した。フィルターケーキをアセトニトリルおよび水で洗浄した。湿った生成物を真空中にて30℃で乾燥して、0.94g(MW=435.89)の表記化合物(理論の21.1%)を得た。
【0186】
[実施例12]
[4−(3−オキソ−モルホリン−4−イル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル
【0187】
【化24】

【0188】
3.17gの炭酸水素ナトリウム(MW=84.01;2.1当量)および、次いで、3.28gのクロロギ酸ベンジル(MW=170.60;1.03当量)を、0℃にて、5分間にわたり、シリンジを介して、68mLのアセトンおよび34mLの水中の3.53gのAPMO(MW=192.22;1当量)の溶液に加えた。反応混合物を2時間攪拌し、次いで、110mLの水に注いだ。0℃で1.5時間攪拌した後、得られた懸濁液を濾過し、フィルターケーキを100mLの水で洗浄した。湿った生成物を真空中にて30℃で乾燥して、5.76g(MW=326.36)の表記化合物(理論の96.2%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物の使用であって、
式(V)
【化2】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物の調製のための、使用。
【請求項2】
がメチル、フェニルおよびトリルから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(V)
【化3】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物の調製方法であって、
(i)式(II)
【化4】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物;
(ii)式(III)
【化5】

を有する化合物、
および(iii)ホスゲンまたはこの同等物
を反応させることを含む、方法。
【請求項4】
式(II)を有する化合物を、まず、式(III)を有する化合物と反応させて、式(VI)
【化6】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を得;
ならびに続いて、式(VI)を有する化合物を、ホスゲンまたはこの同等物と反応させて、式(V)を有する化合物を得る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(II)を有する化合物を、まず、ホスゲンまたはこの同等物と反応させ;続いて、この反応生成物を、式(III)を有する化合物と反応させて、式(IV)
【化7】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を得;
ならびに式(IV)を有する化合物を式(V)を有する化合物に変換する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
式(II)を有する化合物が、式(I)
【化8】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物から調製される、請求項1または2の使用、または請求項3から5のいずれかの方法。
【請求項7】
式(II)
【化9】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され、ならびにHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を調製する方法であって、
式(I)
【化10】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を式(II)を有する化合物に変換する、方法。
【請求項8】
式(VI)
【化11】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を調製する方法であって、
式(II)
【化12】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を、
式(III)
【化13】

を有する化合物と反応させる、方法。
【請求項9】
式(IV)
【化14】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物の調製方法であって、
式(II)
【化15】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を、まず、ホスゲンまたはこの同等物と反応させ、ならびに続いて、この反応生成物を、式(III)
【化16】

を有する化合物と反応させる、方法。
【請求項10】
式(V)
【化17】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物の調製方法であって、
式(IV)
【化18】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を式(V)を有する化合物に変換する、方法。
【請求項11】
式(V)
【化19】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を調製する方法であって、
式(II)
【化20】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を、
式(VIII)
【化21】

[式中、RはC1−6アルキル基またはベンジル基である。]
を有する化合物と反応させる、方法。
【請求項12】
式(II)
【化22】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を、
式(VII)
【化23】

を有する化合物と反応させて、
式(V)
【化24】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を供するステップを含む、方法。
【請求項13】
式(II)
【化25】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を、
式(IX)
【化26】

を有する化合物に変換するステップを含む、方法。
【請求項14】
式(IX)
【化27】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物を、
式(VII)
【化28】

を有する化合物と反応させて、
式(IV)を有する化合物
【化29】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を得るステップを含む、方法。
【請求項15】
(i)式(II)
【化30】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物;
(ii)式(IV)
【化31】

[式中、RはC1−4アルキル基、および場合によりC1−4アルキル基で置換されるフェニル基よりなる群から選択され;およびHalはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物;
(iii)式(VII)
【化32】

を有する化合物、および
(iv)式(IX)
【化33】

[式中、Halはハロゲン原子または擬ハロゲンである。]
を有する化合物
よりなる群から選択される、化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−519650(P2013−519650A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552389(P2012−552389)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051920
【国際公開番号】WO2011/098501
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】