説明

リパーゼ阻害剤並びにそれを含有する化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物

【課題】アクネ菌などの皮膚常在菌により引き起こされるニキビの予防改善効果及び治療効果に優れ、日常生活のなかで高脂肪食により誘発される肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れ、安定で安価なかつ安全性に優れるリパーゼ阻害剤を提供すること。
【解決手段】1−イソマンゴスチンを有効成分として含有するリパーゼ阻害剤である。また、上記リパーゼ阻害剤を含有する化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリパーゼ阻害剤に関し、詳しくは、アクネ菌などの皮膚常在菌によるニキビの改善予防効果及び治療効果に優れ、高脂肪食により誘発される肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れ、安定で安価なかつ安全性に優れるリパーゼ阻害剤に関する。また、このリパーゼ阻害剤を含有する化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食事の欧米化に伴い、肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の発症が著しく増加しており、その対応が急務である。食事による肥満、高脂血症又は糖尿病の予防改善に向けて、リパーゼ阻害剤の開発及び応用が盛んに行われている。また、リパーゼ阻害剤は、アクネ菌などの皮膚常在菌によるニキビの予防改善にも有用であることが明らかになっている。
【0003】
これに対し、植物の果実やその皮、種子、葉や根茎などから抽出した様々なリパーゼ阻害剤が製造され、化粧品、医薬品や食品などへの配合が試みられているが、植物を原料とする場合、その原料の安全性や調達が問題であるという難点があった。
【0004】
植物原料を由来とするリパーゼ阻害剤としては、ユッカ、高麗人参、ジャスミン茶、山査子、黄杞茶、ルイボス茶、大豆胚芽、生姜、及び杜仲茶などの抽出エキスを有効成分とするリパーゼ阻害剤(特許文献1参照)や、キラヤ(Quillaja saponaria MOLINA)樹皮の抽出物を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤(特許文献2参照)や、栗皮抽出物を含有するリパーゼ阻害剤(特許文献3参照)などがある。
【0005】
一方、植物由来の原料としてオトギリソウ科フクギ属のマンゴスチン(Garcinia mangostana L.)も知られている。マンゴスチンを由来とする成分が有効に作用する剤も様々なものがあり、例えば、マンゴスティーンの果皮の濃縮抽出物を備える組成物がキサントン及びタンニンを含み、日焼け、光線過敏、皮膚−局在性アレルギー、免疫抑制、早老、乾癬、癌性損傷、前癌性損傷、細菌感染、ウイルス感染、菌類感染及び発疹などの皮膚の疾病の予防又は処置にとって十分な治療上の薬剤であること(例えば、特許文献4参照。)が知られている。その他にも、特定のキサントン誘導体には、抗ヘリコバクター・ピロリ作用があるもの(例えば、特許文献5又は特許文献6参照。)、グラム陽性菌に対する殺菌作用があるもの(例えば、特許文献7参照。)、トポイソメラーゼIおよびII阻害活性作用があるもの(例えば、特許文献8参照。)、血小板活性化因子抑制作用があるもの(例えば、特許文献9参照。)、抗酸化作用のあるもの(例えば、特許文献10又は特許文献11参照。)、美白作用のあるもの(例えば、特許文献12参照。)、コラーゲン増加作用があるもの(例えば、特許文献13参照。)などがある。また、α−マンゴスチンを含むキサントン誘導体混合物を含有する口腔洗浄液(例えば、特許文献14参照。)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−275077号公報
【特許文献2】特開2006−182722号公報
【特許文献3】特開2007−145802号公報
【特許文献4】特表2008−520585号公報
【特許文献5】特開平8−217672号公報
【特許文献6】特開平8−231396号公報
【特許文献7】特開平9−110688号公報
【特許文献8】特開平10−203977号公報
【特許文献9】特開2004−137210号公報
【特許文献10】特開2006−89661号公報
【特許文献11】特開2009−13104号公報
【特許文献12】特開2007−153773号公報
【特許文献13】特開2009−13105号公報
【特許文献14】特開2010−18551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景技術のように、マンゴスチンを由来とする成分に様々な作用があることは知られていたが、1−イソマンゴスチンにリパーゼ活性を阻害する作用があることは知られていなかった。
【0008】
本発明の目的は、アクネ菌などの皮膚常在菌により引き起こされるニキビの予防改善効果及び治療効果に優れ、日常生活のなかで高脂肪食により誘発される肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れ、安定で安価なかつ安全性に優れるリパーゼ阻害剤を提供することにある。また、このリパーゼ阻害剤を含有する化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物を提供することも副次的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意研究を行った結果、1−イソマンゴスチンが膵臓由来のリパーゼ及びアクネ菌由来のリパーゼを阻害する作用を有することを見出し、さらに1−イソマンゴスチンを化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物に配合したところ、日常生活の中で引き起こされた各種皮膚トラブルや生活習慣病などの予防改善、治療に関して、顕著な作用を及ぼすことを見出した。
【0010】
すなわち、本発明のリパーゼ阻害剤は1−イソマンゴスチンを有効成分として含有することを特徴とするものである。さらに、本発明は上記リパーゼ阻害剤を含有する化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクネ菌などの皮膚常在菌により引き起こされるニキビの予防改善効果及び治療効果に優れ、日常生活のなかで高脂肪食により誘発される肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れ、安定で安価なかつ安全性に優れるリパーゼ阻害剤を提供することができる。そして、このリパーゼ阻害剤は化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物に配合して好適であり、これらもアクネ菌などの皮膚常在菌により引き起こされるニキビの予防改善効果及び治療効果に優れ、日常生活のなかで高脂肪食により誘発される肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の改善予防効果及び治療効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のリパーゼ阻害剤に使用する1−イソマンゴスチンとは、下記一般式で示されるキサントン類化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
1−イソマンゴスチンは、マンゴスチン果実の外皮などにも含まれており、例えば、マンゴスチン外皮から溶媒抽出することにより得ることもできる。また、1−イソマンゴスチンは、市販品を用いてもよく、例えば、Sichuan Weikeqi Biological Technology Co., Ltd社の「1−イソマンゴスチン」、Chem Blink Inc.社の「1−イソマンゴスチン」などがある。マンゴスチン外皮から溶媒抽出する場合、その方法は特に限定されないが、溶媒で抽出するに際しては、マンゴスチン外皮を乾燥させてから用いても、乾燥させることなく用いてもよい。さらに乾燥に関係なくマンゴスチン外皮をそのまま用いても、切断または粉砕などにより細かくしてから用いてもよい。抽出効率の面から、マンゴスチン外皮を乾燥後、粉末化したものを用いて溶媒抽出するのが好適である。1−イソマンゴスチンを溶媒抽出する場合に使用する溶媒は、水、水溶性有機溶媒またはこれらの混合溶媒で溶解するのが望ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、1,3−ブチレングリコール等の低級アルコール、ベンゼン、エチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンなどが挙げられる。これらのなかではエタノールが好ましく、特に水との混合溶媒である含水エタノールが、リパーゼ阻害作用が強く特に好ましい。
【0016】
溶媒抽出時に用いる装置は特に限定されず、通常のタンクやミキサーを用いてもよく、またソックスレー抽出器などの抽出器を用いてもよい。抽出時の温度や抽出時間も特に限定されない。溶媒抽出後に、濾過、吸着樹脂による処理、活性炭処理等によって不純物を除去してもよい。さらに液体高速クロマトグラフィーにて、カラムYMC−Pack C8(SH−243−5、株式会社ワイエムシイ製)、流動相(75%アセトニトリル)を用いて温度25℃で1−イソマンゴスチンを分取することができる。
【0017】
本発明のリパーゼ阻害剤の剤型としては、溶媒抽出によって得られた液状抽出物の他に、液状抽出物を減圧乾燥や凍結乾燥等の通常の乾燥方法や濃縮方法等により乾固または濃縮したものであってもよい。また、必要に応じてその効力に影響がない範囲で脱臭、脱色等の精製処理をしてから用いても良く、また適宜賦形剤を用いて顆粒状にする等、使用し易い状態に製剤化されたものを用いればよい。
【0018】
本発明のリパーゼ阻害剤には、1−イソマンゴスチン以外に、目的に応じて化粧料、飲食品組成物または医薬品組成物に通常使用されている成分または使用が許容されている成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合することができる。
【0019】
本発明のリパーゼ阻害剤を含有する化粧料、飲食品組成物または医薬品組成物における1−イソマンゴスチンの配合量は、化粧料、飲食品組成物または医薬品組成物の総量を基準として、乾燥固形分換算で0.005wt%(質量%の略称)以上、10wt%以下が効果の発現性や原価の点から考えて好ましい。特に0.005wt%以上、5wt%以下が製品に配合して応用する際に好ましい。
【0020】
本発明の化粧料は特に限定されず、皮膚化粧料、浴用化粧料、洗浄用化粧料、痩身用化粧料、ニキビ用化粧料等を挙げることができ、その形態としては、乳液、ジェル、スティッ
ク、シート、パップ、ジェル、粉末、液体、顆粒、クリーム状、ペースト状、固形等を挙げることができる。これらの化粧料は常法により製造することができ、必要に応じて、一般に化粧料で用いられている賦形剤、香料などをはじめ、油脂類、界面活性剤、保湿剤、美白剤、pH調整剤、粘結剤類、多価アルコール類、精油及び香料類、増粘剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、顔料、植物粉砕物及び生薬類、無機塩類及び無機酸類、洗浄剤、乳化剤などの各種化粧料成分を適宜配合することができる。
【0021】
本発明の飲食品組成物の種類としても特に限定されず、例えば、菓子類(チューインガム、キャンディ、グミ、タブレット、チョコレート、ゼリー等)、氷菓(アイスキャンディー、アイスクリーム、シャーベット等)、冷菓(ゼリー、プリン、水ようかん等)、麺類をはじめとする澱粉系食品、粉末飲食品、飲料(スープ、コーヒー、茶類、ジュース、炭酸飲料、ココア、アルコール飲料、ゼリー状ドリンク等)、ベーカリー食品(クッキー、ビスケット、パン、パイ、ケーキ等)、油脂食品(マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド等)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、乳清飲料、乳酸菌飲料、バター、クリーム、チーズ等)等を挙げることができる。
【0022】
本発明の前記飲食品組成物はそれぞれ常法により製造することができ、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で下記の成分を適宜選択して1−マンゴスチンを含有するリパーゼ阻害剤とともに配合できる。例えば、糖質甘味料(果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖類、乳糖、オリゴ糖、麦芽糖、トレハロース等の少糖類、粉末水あめ、デキストリン、糖アルコール等)、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムK、ステビア等)、でん粉等の多糖類、油脂類、乳製品、安定剤、乳化剤、香料(バニリン、リナロール、天然香料等)、色素、着色料、酸味料、風味原料(卵、コーヒー、茶類、ココア、果汁果肉、ヨーグルト、酒類等)、香味料(ラズベリーフレーバー、アップルフレーバー、コーヒーフレーバー等)、湿化防止剤、電解質、抗酸化剤、保存料、湿潤剤、蛋白質、アミノ酸、ペプチド、食物繊維、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸等)、ビタミン類(L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン、イノシトール等)、ミネラル(亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム、クロム、セレン、カリウム、ナトリウム等)、グルコサミン、酵母、卵殻膜、リコピン、アスタキサンチン、その他カロテノイド、シルク、コンドロイチン、セラミド、プラセンタエキス、フカヒレエキス、深海鮫エキス、スクワレン、γ−アミノ酪酸、カゼインドデカペプチド、生栗皮抽出物、栗の葉抽出物、栗のいが抽出物、栗果肉抽出物、栗樹皮抽出物、キャベツ発酵エキス、バラの花びら抽出物、ブドウ葉抽出物、ブドウ種子抽出物、りんごポリフェノール、カミツレエキス、ライチ種子エキス、ゴツコラエキス、月桃葉エキス、ハス胚芽エキス、スターフルーツ葉エキス、桑葉抽出物、グァバ茶抽出物、赤ワイン、緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、ココア、チョコレート、黒ゴマ、豆類、豆乳、ナッツ類、きのこ類、緑黄食野菜類、ヨード卵等の卵由来原料、カテキン類、その他ポリフェノール類、ラズベリーケトン、低分子アルギン酸、サイリウム種皮、イチョウ葉抽出物、松樹皮抽出物、ナットウキナーゼ、植物ステロール、ジアシルグリセロール、キトサン、ヒアルロン酸、メチルスルフォニルメタン、コウジ酸、エラグ酸、アルブチン、ルシノール、マグノリグナン、リン酸L−アスコルビン酸マグネシウム、CoQ10、α−リポ酸等が挙げられる。
【0023】
本発明の医薬品組成物の剤型としては特に限定されず、経口投与製剤でも非経口投与製剤のいずれであっても構わない。具体的には、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル)、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、経皮吸収型製剤、懸濁剤、乳剤、坐剤(含膣剤)、散剤、酒精剤、錠剤(素錠、コーティング錠、特殊錠)、シロップ剤、浸剤・煎剤、注射剤(水溶性注射剤、非水溶性注射剤)、貼付剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、
リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤などが挙げられる。これらの製剤は、製剤技術分野における慣用方法にて製造でき、例えば日本薬局方記載の方法で製造することができる。これらの製剤は、ヒトを含む哺乳動物に対して安全に投与することができるものである。
【0024】
本発明の1−イソマンゴスチンを含有するリパーゼ阻害剤は、生物に対する毒性が低い化合物であることから、そのまま、または薬理学的に許容される無毒性かつ不活性の担体等を併用して、ヒトを含む哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サルなど)、魚類等に対して、医薬品組成物(動物薬含む)として適用することができる。
【0025】
前記薬理学的に許容される担体としては特に限定されず、製剤素材として公知である各種担体物質を使用することができる。前記担体物質としては特に限定されず、例えば、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を挙げることができる。前記担体物質に加えて、更に、防腐剤、着色剤、天然色素、甘味剤等の製剤添加物も必要に応じて用いることができる。これらの物質として、乳糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が具体的に例示できるが、これらに限られるものではない。
【0026】
液状製剤における前記担体物質としては特に限定されず、例えば、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合されるもの等を挙げることができる。更に、防腐剤、着色剤、水不溶性レーキ色素、甘味剤等の製剤添加物も必要に応じて用いることができる。これらの物質として、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース等の等張化剤、亜硫酸ナトリウム等の安定化剤、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル等の保存剤等の他、溶解補助剤、無痛化剤やpH調整剤等が具体的に例示できるが、これらに限られるものではない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を例示することにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
・1−イソマンゴスチンの調製
新鮮なマンゴスチン果実を切り開いて中身を丸ごと取り出し、中身を取り除いた後のマンゴスチン外皮を細かく切断して25℃にて乾燥した。乾燥した外皮20gをビーカーに投入した後、50%エタノール水溶液100mlを加えて48時間攪拌して溶媒抽出液を得た。抽出液は、必要に応じて減圧下でエタノールを留去した後、凍結乾燥して乾燥物とした。乾燥物1gを75%アセトニトリルで溶解した。溶解液を液体高速クロマトグラフィーにて、カラムYMC−Pack C8(SH−243−5、株式会社ワイエムシイ製)、流動相(75%アセトニトリル)を用いて温度25℃で分離精製し、1−イソマンゴスチンを得た。
【0029】
・実施例1〜3、比較例1
表1及び表2に示す各実施例の濃度となるように、上記調製した1−イソマンゴスチンを0.1mol/Lのトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で調製し、試料溶液を得た。比較例1の試料溶液は緩衝液のみとした。
【0030】
試験例1 豚膵臓由来のリパーゼ阻害作用の測定
リパーゼ活性はトリオレインからのオレイン酸遊離量を測定することによって算出した。トリオレイン(SIGMA Chemical Co.(米国製))80mg、レシチン10mg(和光純薬工業株式会社製)、胆汁酸(SIGMA Chemical Co.(米国製))5mgを9mlの0.1mol(M)TES緩衝液(pH7.0)中で10分間超音波処理を行うことで均一な懸濁液とし、これを基質液として用いた。基質液0.1mlに豚膵臓由来リパーゼ液(SIGMA Chemical Co.(米国製))0.05ml(最終濃度1μg/ml)及び被検物質0.1mlを加え、37℃、30分間反応させ、遊離した脂肪酸を銅試薬法で定量測定した。豚膵臓由来のリパーゼ活性値は検体無添加(コントロール)の値を100%として各検体のリパーゼ活性値及び標準偏差を算出した。活性値が低いほどリパーゼ阻害作用が強いことを示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示すように、1−イソマンゴスチンが濃度依存的に膵臓由来のリパーゼ活性を阻害した。
【0033】
試験例2 アクネ菌由来のリパーゼ阻害作用の測定
アクネ菌由来のリパーゼの調製は、Pabloらの方法(Gary Pabloら著、「CHARACTERISTICS OF THE EXTRACELLULAR LIPASES FROM CORYNEBACTERIUM ACNES AND STAPHYLOCOCCUS
EPIDERMIS FREE」Journal of Investigative Dermatology誌、The Williams &Wilkins Co.社、1974年8月、Vol.63 No.2 p.231-238)に準じてリパーゼを精製した。操作としては、ブレイン・ハート・インフュージョンブイヨン培地中にヒト顔面から分離したプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)の1白金耳を接種し、37℃で7日間嫌気的に培養し、培養終了後、培養液を4℃、3000rpm、20分間遠心分離した。その上清500ml中に−20℃、95%エタノールを500ml添加し、−10℃1時間スターラーで攪拌した後、4℃、1000rpm、20分間遠心分離し、沈殿を凍結乾燥して粗リパーゼとして試験に供した。リパーゼ活性阻害の測定には、4−メチルウンベリフェロンのオレイン酸エステル(4−MUO)を基質として用いた。0.1mlの4−MUO溶液に0.1mlの1−イソマンゴスチンを加え混合した後に、0.05mlのアクネ菌由来のリパーゼ溶液を添加し、30分間反応させた後に、0.25mlの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)を加え、反応を停止させた。反応によって生じた4−メチルウンベリフェロンの蛍光(励起波長355nm、蛍光波長460nm)を蛍光マイクロプレートリーダーにて測定した。活性値は検体無添加の値を100%として各検体の活性値を算出した。
【0034】
【表2】

【0035】
表2に示すように、1−イソマンゴスチンが濃度依存的にアクネ菌由来のリパーゼ活性を
阻害した。
【0036】
以上の結果から、1−イソマンゴスチンは優れたリパーゼ阻害効果を有し、脂質の腸管吸収を遅らせることや、アクネ菌などの皮膚常在菌の活性を阻害することが期待できる。これによって1−イソマンゴスチンを含有する組成物が、ニキビの発生や、脂肪の蓄積を抑制し、各種疾患の予防、改善、治療効果を有するものであることが考えられる。
【0037】
以下に、本発明のリパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物、化粧料及び医薬品組成物の実施例を示す。組成は質量%で示す。
【0038】
実施例4 チューインガム
下記組成のチューインガムを常法により調製した。
1−イソマンゴスチン 2.0
ガムベース 20.0
還元水あめ 4.0
アップル香料 0.5
マルチトール TO 100
【0039】
体重の増加に悩むモニターが、1粒1500mgとした上記チューインガムを1回1粒、1日3回、3ヶ月摂取したところ、それまでに比べ体重の増加が抑制された。
【0040】
実施例5 錠菓
下記組成での錠菓を常法により調製した。
1−イソマンゴスチン 5.0
ショ糖脂肪酸エステル 4.0
ラズベリー香料 0.1
ソルビトール TO 100
【0041】
体重の増加に悩むモニターが、1錠2000mgとした上記錠菓を1回1錠、1日3回、3ヶ月間摂取したところ、それまでに比べ体重の増加が抑制された。
【0042】
実施例6 乳液状皮膚化粧料
1−イソマンゴスチン 0.1
流動パラフィン 8.0
ステアリルアルコール 3.0
カラギーナン 0.2
パラベン 0.1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.1
香料(ヒノキ油) 適 量
精製水 TO 100
【0043】
実施例7 角栓除去シート、
1−イソマンゴスチン 1.0
ポリアクリル酸 27.6
アクリル酸メタクリル酸共重合体 35.0
ポリビニルアルコール 5.4
ポリビニルピロリドン 18.8
グリセリン 4.2
酸化チタン 3.0
シリカ 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
エタノール 2.4
香料 0.5
精製水 TO 100
【0044】
実施例8 パップ
1−イソマンゴスチン 1.0
グリセリン 25.0
ポリアクリル酸ナトリウム 3.0
ポリビニルアルコール 2.0
ゼラチン 1.5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
エタノール 1.0
エデト酸ニナトリウム 0.1
メチルパラベン 0.05
プロピルパラベン 0.05
精製水 TO 100
【0045】
実施例9 ジェル状ニキビ用化粧料
1−イソマンゴスチン 2.0
ポリエチレングリコール4000 30.0
ポリビニルアルコール 15.0
グリセリン 15.0
3−BG 10.0
カルボキシビニルポリマー 2.0
カチオン化セルロース 0.2
アルコール 10.0
パラベン 0.1
香料 微 量
精製水 TO 100
【0046】
実施例10 クリーム状栄養クリーム
1−イソマンゴスチン 4.0
ステアリン酸 2.5
ステアリルアルコール 8.0
スクワラン 5.0
オクチルドデカノール 7.0
グリセリルモノステアレート 4.0
防腐剤 適 量
香料 適 量
グリセリン 6.0
ソルビトール 13.0
乳酸カリウム 0.5
精製水 TO 100
【0047】
実施例11 スティックリップトリートメント
1−イソマンゴスチン 1.0
キャンデリラロウ 12.0
固形パラフィン 8.0
ミツロウ 5.0
カルナバロウ 2.0
ラノリン 14.0
マンニット 15.0
イソプロピルミリステート 10.0
香料 適 量
酸化防止剤 適 量
ヒマシ油 TO 100
【0048】
実施例12 乳液状皮膚化粧料
1−イソマンゴスチン 5.0
ステアリン酸 2.0
セタノール 2.0
ワセリン 2.0
ラノリンアルコール 1.5
流動パラフィン 9.0
スクワラン 3.5
ソルビトール 10.0
トリエタノールアミン 1.0
プロピレングリコール 5.0
防腐剤 適 量
香料 適 量
精製水 TO 100
【0049】
実施例13 ペースト状栄養クリーム
1−イソマンゴスチン 2.0
ステアリン酸 2.0
ステアリルアルコール 8.0
還元ラノリン 2.0
スクワラン 8.0
オクチルドデカノール 6.0
防腐剤 適 量
香料 適 量
プロピレングリコール 5.0
グリセリン 3.0
乳酸 0.3
クエン酸ナトリウム 0.5
精製水 TO 100
【0050】
実施例14 液体スリミングマッサージソープ
1−イソマンゴスチン 5.0
ラウリン酸 10.0
水酸化カリウム 2.8
ヤシ油脂肪酸カリウム液 30.0
エデト酸2ナトリウム 0.15
メチルセルロース 0.5
ラウリン酸アミノプロピルベタイン液 2.0
グリセリン 8.0
香料 適 量
精製水 TO 100
【0051】
実施例15 マッサージ用ジェル
1−イソマンゴスチン 10.0
カフェイン 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.5
ポリビニルアルコール 3.0
グリセリン 35.0
ポリエチレングリコール400 45.0
エタノール 適 量
防腐剤 適 量
精製水 TO 100
【0052】
実施例16 入浴用固形錠剤
炭酸水素ナトリウム 40.0
コハク酸 10.0
無水クエン酸 10.0
精製白糖 10.0
乳糖 10.0
デキストリン 5.0
ポリエチレン6000 5.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 4.0
テトラデセン酸ナトリウム 4.0
L−システイン塩酸塩 0.2
エデト酸2ナトリウム 0.2
香料 0.2
酸化チタン 0.2
カオリン 0.2
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1
シュウ酸ナトリウム 0.1
天然ビタミンE 0.1
1−イソマンゴスチン 0.5
着色料 微 量
無水硫酸ナトリウム TO 100
【0053】
実施例17 入浴用粉末
炭酸水素ナトリウム 40.0
無水珪酸 0.5
塩化ナトリウム 10.0
1−イソマンゴスチン 0.5
香料 1.0
着色料 微 量
無水硫酸ナトリウム TO 100
【0054】
実施例18 顆粒粉末洗浄剤
粒状糖類* 10.0
1−イソマンゴスチン 1.0
炭酸水素ナトリウム 30.0
乾燥硫酸ナトリウム 30.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
PEG6000P 5.0
PVP 0.1
香料 適 量
デキストリン TO 100
*白糖、乳糖及びデキストリンを含み、高圧ガスが封入された明治製菓製の粒状糖類を使用した。
【0055】
実施例19 粉末パック
1−イソマンゴスチン 3.5
タルク 25.0
プロピレングリコール 6.0
KCl 1.0
香料 0.5
カオリン TO 100
【0056】
実施例20 ニキビ用ジェル(皮膚外用医薬品組成物)
1−イソマンゴスチン 10.0
カフェイン 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.5
ポリビニルアルコール 3.0
グリセリン 35.0
ポリエチレングリコール400 45.0
エタノール 適 量
防腐剤 適 量
精製水 TO 100
【0057】
実施例6〜20の各化粧料は常法により調製した。いずれも皮膚に対し刺激性がなく、リパーゼ防止効果、ニキビ改善効果に優れ、使用感も優れていた。
【0058】
実施例20 錠剤(医薬品組成物)
1−イソマンゴスチン 10.0
ビタミンC 20.0
ビタミンB1 0.5
ビタミンB2 0.5
乳糖 40.0
デキストリン 23.0
合成ケイ酸アルミニウム 5.0
ステアリン酸マグネシウム 1.0
【0059】
(操作)
上記の各成分を混合し、その混合物を打錠機で1錠500mgに打錠して1錠中に1−イソマンゴスチン50mgを含む錠剤を得た。
【0060】
高脂血症の患者が、上記錠剤を1回1錠、1日3回3ヶ月日間服用したところ、血中脂肪量が減少した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のリパーゼ阻害剤は、アクネ菌などの皮膚常在菌に対して作用することによりニキビの発生を抑制し、また脂肪分解抑制剤として作用することによって、体内での脂肪の消化吸収を抑制し、体内での脂肪の蓄積を予防・治療・改善することができるものである。これによって、本発明のリパーゼ阻害剤を配合した化粧料、飲食品組成物及び医薬品組成物は、ニキビ、肥満、高脂血症、脂肪肝の予防・治療・改善に使用することができるもの
である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−イソマンゴスチンを有効成分として含有することを特徴するリパーゼ阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載のリパーゼ阻害剤を含有する化粧料。
【請求項3】
請求項1に記載のリパーゼ阻害剤を含有する飲食品組成物
【請求項4】
請求項1に記載のリパーゼ阻害剤を含有する医薬品組成物

【公開番号】特開2012−136447(P2012−136447A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288208(P2010−288208)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】