説明

リパーゼ阻害剤

【課題】飲食品、化粧品または皮膚疾患治療剤に有用なリパーゼ阻害剤を提供する。
【解決手段】キダチキンバイ抽出物、タコノキ属植物抽出物、マウンテンブルーベリーの果実、エバーグリーンブルーベリーの果実、ビルベリーの果実、及びニガリから選択される1種もしくは2種以上を含有するリパーゼ阻害剤を使用する。
【効果】リパーゼ阻害作用を通して飲食品や化粧品などに含有される油脂類の分解を防止し、悪臭を抑制することができる他、皮膚炎などの予防、治療、また、肥満症、過脂肪血症、動脈硬化症などの予防、治療が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品、化粧品または皮膚疾患治療剤に有用なリパーゼ阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物が産生するリパーゼは、飲食品、化粧品等に混入した場合、含有されている脂質をグリセリンと脂肪酸に分解し、変敗臭などの劣化の原因となり商品としての価値を減少させてしまう。また、ヒトの皮膚に常在する微生物が産生するリパーゼでは、皮膚上の脂質をグリセリンと遊離脂肪酸に分解し、この遊離脂肪酸の中には皮膚に対して悪影響を及ぼす物質もあり、ニキビなどの皮膚疾患の原因となることや遊離脂肪酸がさらに分解されて体臭の原因となることが知られている。一方、ヒトの生体内において、リパーゼは膵臓より分泌される消化酵素であり、経口摂取された脂質はリパーゼの作用により、グリセリンと脂肪酸に加水分解されて体内における消化吸収を促進している。脂質はエネルギーが特に高く、近年の日本人における脂肪摂取量は増加する傾向にあり、肥満、高脂血症などの生活習慣病を引き起こす一因となっている。このようなリパーゼに起因する問題を解決するため、リパーゼを阻害するリパーゼ阻害剤の検討が行われてきている。これまでに、アルファルファ抽出物等を配合したリパーゼ阻害剤(特許文献1参照)、ジヒドロカルコン化合物を含有したリパーゼ阻害剤(特許文献2参照)、クルクミンを配合したリパーゼ阻害剤(特許文献3参照)、特定の植物抽出物を含有するリパーゼ阻害剤(特許文献4参照)等が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−26585号公報
【特許文献2】特開2003−321351号公報
【特許文献3】特開2004−137190号公報
【特許文献4】特開2005−8572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来知られている上記の方法は、いずれにおいても有効性および安全性の点で満足できるものでなく、より優れた有効成分の開発が求められていた。従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、飲食品、化粧品または皮膚疾患治療剤に有用なリパーゼ阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、キダチキンバイ抽出物、タコノキ属植物抽出物、マウンテンブルーベリーの果実、エバーグリーンブルーベリーの果実、ビルベリーの果実、及びニガリにリパーゼ阻害作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、キダチキンバイ抽出物、タコノキ属植物抽出物、マウンテンブルーベリーの果実、エバーグリーンブルーベリーの果実、ビルベリーの果実、及びニガリから選択される1種もしくは2種以上を含有することを特徴とするリパーゼ阻害剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飲食品、化粧品または皮膚疾患治療剤に有用なリパーゼ阻害剤を提供することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の原料として用いられるキダチキンバイ(Ludwigia octovalvis var. sessiliflora)は、アカバナ科チョウジタデ属の植物で暖地の湿地に育成し、低木状になる多年草で、高さは1メートルになる。このキダチキンバイを使用する際は、抽出物を用いるのがよい。抽出には、植物の幹、枝、果実、葉、花、種子、樹皮、樹液、根、芽などのいずれの部位を用いても構わないが、簡便に利用するには、葉や花などを用いるとよい。抽出の際は、生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕などの処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬するか、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出方法でも行うことができる。抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが適切である。抽出溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類などの溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種又は2種以上の超臨海流体や亜臨界流体を用いてもよい。キダチキンバイの上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、濃縮、乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはこれらの生理作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。キダチキンバイの前記抽出物やその処理物及び分画物は、各処理及び分画後に凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0009】
次いで、本発明に用いられるタコノキ属(Pandanus L.f.)植物は、タコノキ科の植物で、熱帯、亜熱帯地域に広く分布しており、日本では、南西諸島等でみられる。海岸近くに生育し、木質の茎から分岐しない気根を放射状に出し、扇形で長い葉を持つ。多くの種の葉が編物材料として利用されており、また果実や種子が食用にされる種もある。タコノキ属(Pandanus L.f.)植物としては、アダン(Pandanus tectorius Soland. ex Parkins.)、タコノキ(Pandanus boninensis Weber)、ビヨウタコノキ(Pandanus utilis Bory)等が日本では知られている。これら以外にも、アンダマンやニコマン島に分布するパンダヌス アンダマネンシウム(Pandanus andamanensium Kurz)、ニューギニアに分布するパンダヌス コノイデア(Pandanus conoidea Lamck.)、マダガスカルに分布するパンダヌス エジュリス(Pandanus edulis Thouars)、マレーシアに分布するパンダヌス オドルス(Pandanus odorus Ridl.)等が知られている。これらタコノキ属植物の抽出物は、常法により得ることができる。抽出には、タコノキ属植物の幹、枝、果実、葉、花、種子、樹皮、樹液、根、芽などのいずれの部位を用いても構わないが、簡便に利用するには、葉、果実、種子、幼木の全草を用いるとよい。抽出の際は、生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕などの処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬するか、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出方法でも行うことができる。抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが適切である。抽出溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類などの溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種又は2種以上の超臨海流体や亜臨界流体を用いてもよい。タコノキ属の上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、濃縮、乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはこれらの生理作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。タコノキ属植物の前記抽出物やその処理物及び分画物は、各処理及び分画後に凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0010】
次いで、本発明に用いられるマウンテンブルーベリー(Vaccinium membranaceum)、エバーグリーンブルーベリー(Vaccinium ovatum)、ビルベリー(Vaccinium myrtillus)は、ツツジ科スノキ属に属する双子葉植物で、その果実はブルーベリー、ハックルベリー、ビルベリーの名称で食用として栽培されている。マウンテンブルーベリー及びエバーグリーンブルーベリーの果実(以下まとめてハックルベリーと略す)、ビルベリーの果実は、通常市販されている果実をそのまま用いてもよく、大きさ、虫食い等により規格外になった果実を用いてもよい。また果実を搾った果汁やその絞り滓、果実、果汁、搾り滓の乾燥物を用いることもできる。さらには、それらから溶媒で抽出して得られる抽出物を用いることもできる。抽出物として用いる場合について詳細に説明する。抽出の際は、生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕などの処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬するか、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出方法でも行うことができる。抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが適切である。抽出物を得る抽出溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類などの溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種又は2種以上の超臨海流体や亜臨界流体を用いてもよい。上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、濃縮、乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはこれらの生理作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。抽出物やその処理物及び分画物は、各処理及び分画後に凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0011】
本発明に用いられるニガリは、海水から食塩を製造するにあたり食塩を晶出させた後の液若しくはその乾燥物、若しくは人為的にミネラルを混合したもの用いる。ニガリの組成は、産地、製造法(イオン交換膜法、天日法、塩田法若しくは蒸発法)の相違、食塩晶出時の温度、食塩晶出時の食塩濃度及び圧力その他の条件によって変わってくるが、トカラ列島周辺海域、若しくは南大東島周辺海域で採取した海水を原料として調製したニガリは、海水中に含まれる有機リン酸化合物等の汚染物質の混入が無く特に好ましい。
【0012】
本発明に用いるキダチキンバイ抽出物、タコノキ属植物抽出物、マウンテンブルーベリーの果実、エバーグリーンブルーベリーの果実、ビルベリーの果実、及びニガリは安全性が非常に高いリパーゼ阻害剤であり、飲食品や皮膚外用剤に添加することができ、所望のリパーゼ阻害作用を発揮することができる。
【0013】
このため、当該物質を飲食品として日常的に摂取することにより、脂質摂取後の脂質の体内吸収を抑制して、肥満や高脂血症の予防をすることが期待される。
【0014】
また、脂質を含む飲食品や化粧品中に微生物が混入した場合、微生物が産生するリパーゼによる脂質の分解を抑制し、変敗臭等の脂質の劣化を抑制することが期待される。
【0015】
さらに、皮膚上において、皮膚常在菌が産生するリパーゼによる皮脂の分解を抑制し、遊離されてきた脂肪酸に起因する体臭や皮膚疾患を抑制することが期待される。
【0016】
本発明のリパーゼ阻害剤は、例えば、油脂類、マーガリン、バター、ラード、調味料、クリーム類、乳製品、肉類、魚介類、卵類、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、コーヒー、ココア、紅茶、ミルクティー、フレーバーティー、清涼飲料水、炭酸飲料水、乳酸菌飲料、緑茶、栄養ドリンク、ジャム、ヨーグルト、まんじゅう、ゼリー、キャンディー、タブレット、健康食品、加工食品等の様々な飲食品に添加することができる。このような食品形態に仕上げるため、それぞれの目的に応じて、食品に一般的に用いられる各種成分、例えば、砂糖、小麦粉、ショートニング、食塩、ブドウ糖、鶏卵、水飴、カルシウム等他の食品原料素材、栄養素成分、乳化剤、保存料等の食品添加物を併せて用いることも可能であるが、リパーゼ阻害効果を相乗的に増加させることからアミノ酸を併用するのが特に好ましい。このときのリパーゼ阻害剤の添加量については、当該物質によって期待される効果が有効に発揮される量であればよく、特に制限はないが、全体量の0.00001〜50重量%、好ましくは0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜1重量%である。また、本発明のリパーゼ阻害剤を錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤等の形態にし、摂取することもできる。
【0017】
また本発明のリパーゼ阻害剤は、例えば、保湿化粧品、肌荒れ防止化粧品、メークアップ化粧品、フケ防止化粧品、育毛用化粧品、かゆみ防止化粧品、洗浄用化粧品、日焼け防止化粧品、体臭防止化粧品、フレグランス化粧品等の化粧品に添加することができる。このときの添加量については、当該物質によって期待される効果が有効に発揮される量であればよく、特に制限はないが、全体量の0.00001〜50重量%、好ましくは0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜1重量%である。なお、化粧品に本発明のリパーゼ阻害剤を添加する場合、他の有効成分やアミノ酸、薬学的に許容される賦形剤、色素や香料等を適宜組み合わせて用いることもできる。また、製品の形態についても任意であり、例えば液状、粉末状、クリーム状等のいずれも可能である。
【0018】
また本発明のリパーゼ阻害剤は、ニキビ治療剤、皮膚炎治療剤等の皮膚疾患治療剤に添加することができる。このときの添加量については、当該物質によって期待される効果が有効に発揮される量であればよく、特に制限はないが、全体量の0.00001〜50重量%、好ましくは0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜1重量%である。なお、皮膚疾患治療剤に本発明のリパーゼ阻害剤を添加する場合、他の有効成分やアミノ酸、薬学的に許容される賦形剤、色素や香料等を適宜組み合わせて用いることもできる。また、製品の形態についても任意であり、例えば液状、粉末状、クリーム状等のいずれも可能である。
【実施例】
【0019】
さらに実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。まず、本発明のキダチキンバイ抽出物の調製方法について示す。
【0020】
[調製方法1]
キダチキンバイの葉の乾燥粉砕物1kgに50重量%エタノール水溶液を10リットル加え、室温で7日間浸漬した。抽出物をろ過して回収し、溶媒を除去した後、キダチキンバイ抽出物を得た。
【0021】
[調製方法2]
キダチキンバイの葉の乾燥粉砕物1kgに水を9リットル加え、90℃にて6時間還流して抽出した。抽出液をろ過して回収し、溶媒を除去した後、キダチキンバイ抽出物を得た。
【0022】
[調製方法3]
キダチキンバイの葉の乾燥粉砕物1kgにメタノールを9リットル加え、室温で7日間浸漬した。抽出物をろ過して回収し、溶媒を除去した後、キダチキンバイ抽出物を得た。
【0023】
[調製方法4]
超臨界抽出装置にキダチキンバイの葉を投入し、40℃において15MPaの気圧下で二酸化炭素の超臨界流体を用いて抽出した。抽出物を回収し、キダチキンバイ抽出物を得た。
【0024】
次に、タコノキ属植物抽出物の調製方法について示す。
【0025】
[調製方法5]
タコノキ属植物の乾燥粉砕物1kgに50重量%エタノール水溶液を10リットル加え、室温で7日間浸漬した。抽出物をろ過して回収し、溶媒を除去した後、タコノキ属植物抽出物を得た。
【0026】
[調製方法6]
タコノキ属植物の乾燥粉砕物1kgに水を9リットル加え、90℃にて6時間還流して抽出した。抽出液をろ過して回収し、溶媒を除去した後、タコノキ属植物抽出物を得た。
【0027】
[調製方法7]
タコノキ属植物の乾燥粉砕物1kgにメタノールを9リットル加え、室温で7日間浸漬した。抽出物をろ過して回収し、溶媒を除去した後、タコノキ属植物抽出物を得た。
【0028】
[調製方法8]
超臨界抽出装置にタコノキ属植物を投入し、40℃において15MPaの気圧下で二酸化炭素の超臨界流体を用いて抽出した。抽出物を回収し、タコノキ属植物抽出物を得た。
【0029】
次にマウンテンブルーベリーの果実、エバーグリーンブルーベリーの果実、ビルベリーの果実の調製方法について示す。
【0030】
[調製方法9]
マウンテンブルーベリーの果実を凍結乾燥粉砕し、マウンテンブルーベリーの果実粉砕物を得た。
【0031】
[調製方法10]
エバーグリーンブルーベリーの果実の乾燥粉砕物1kgに水を9リットル加え、90℃にて6時間還流して抽出した。抽出液をろ過して回収し、溶媒を除去した後、エバーグリーンブルーベリーの果実抽出物を得た。
【0032】
[調製方法11]
ビルベリーの果実の乾燥粉砕物1kgに50重量%エタノール水溶液を10リットル加え、室温で7日間浸漬した。抽出物をろ過して回収し、溶媒を除去した後、ビルベリーの果実の抽出物を得た。
【0033】
次に、ニガリの調製方法について示す。
【0034】
[調製方法12] トカラニガリ
トカラ列島周辺海域で採取した海水を、ポリアミド系複合逆浸透膜を用いてかん水を調製した。得られたかん水を、110℃で加熱しニガリと塩に分離することにより、トカラニガリを得た。
【0035】
[調製方法13] 南大東島ニガリ
南大東島周辺海域で採取した海水を、ポリアミド系複合逆浸透膜を用いてかん水を調製した。得られたかん水を、113℃で加熱しニガリと塩に分離することにより、南大東島ニガリを得た。
【0036】
[調製方法14] ドーパー海峡ニガリ
ドーパー海峡周辺海域で採取した海水を、ポリアミド系複合逆浸透膜を用いてかん水を調製した。得られたかん水を、112℃で加熱しニガリと塩に分離することにより、ドーパー海峡ニガリを得た。
【0037】
[調製方法15] 合成ニガリ
塩化ナトリウム(試薬特級)5.0g、塩化カリウム(試薬特級)3.0g、塩化マグネシウム6水和塩(試薬特級)15.0g、塩化カルシウム(試薬特級)、5.0gを混合して、合成ニガリを得た。
【0038】
次に本願発明のリパーゼ活性阻害効果の評価方法について示す。
【0039】
【表1】

【0040】
<リパーゼ活性阻害効果の評価方法>
表1に示した実施例1〜6について、リパーゼ活性阻害効果を評価した。比較例として、すでにリパーゼ活性阻害効果を有すると報告されているテトラサイクリン塩酸塩についても同様の試験を行った。評価は、脱エステル化することにより蛍光を発する4−メチルウンベリフェリルオレエートにリパーゼ(Phycomyces nitens由来、Propionibacterium acnes由来)を作用させ、生成した蛍光性を有する4−メチルウンベリフェロンを蛍光強度計にて定量することにより行った。詳細には、96穴マイクロプレートにリパーゼ溶液を最終濃度で1mg/mLになるように調製し、各実施例、比較例を0.1mg/mLになるように添加し、さらに4−メチルウンベリフェリルオレエートを100μMになるように添加した。暗所37℃で20分間反応させ、分解して得られた4−メチルウンベリフェロンを蛍光強度計で励起波長:355nm、蛍光波長:460nmの条件で測定した。リパーゼ活性阻害効果は、4−メチルウンベリフェリルオレエートとリパーゼ(Phycomyces nitens由来、Propionibacterium acnes由来)のみで反応させた場合(コントロール)に生成した4−メチルウンベリフェロン量を100とした、実施例を添加した場合に生成した4−メチルウンベリフェロン量にて表した。結果を表2、表3に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
表2、表3より明らかなように、本発明の実施例1〜6は、いずれも高いリパーゼ活性阻害効果を示しており、当該物質を飲食品として日常的に摂取することにより、脂質摂取後の脂質の体内吸収を抑制して、肥満や高脂血症の予防をすることが期待できる。また脂質を含む飲食品や化粧品中に微生物が混入した場合、微生物が産生するリパーゼによる脂質の分解を抑制し、変敗臭等の脂質の劣化を抑制することが期待される。さらに、皮膚上において、皮膚常在菌が産生するリパーゼによる皮脂の分解を抑制し、遊離されてきた脂肪酸に起因する体臭や皮膚疾患を抑制することが期待できる。
【0044】
次に本発明の他の実施例を示す。
【0045】
[実施例7]リパーゼ阻害用化粧水
(1)エタノール 15.0(重量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)表1の実施例1に示す本発明のリパーゼ阻害剤 0.01
(5)精製水 100とする残部
(6)クエン酸 0.02
(7)クエン酸ナトリウム 0.1
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
製法:(1)に(2)〜(4)を溶解する。溶解後、(5)〜(7)を順次添加した後、十分に撹拌し、(8)を加え、均一に混合する。
【0046】
[実施例8]リパーゼ阻害用乳液
(1)スクワラン 10.0(重量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシメチルポリマー 0.15
(10)精製水 100とする残部
(11)アルギニン(1重量%水溶液) 20.0
(12)表1の実施例2に示す本発明のリパーゼ阻害剤 0.5
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、冷却を開始し、(11)と(12)を順次加え、均一に混合する。
【0047】
[実施例9]リパーゼ阻害用クリーム
(1)スクワラン 10.0(重量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20重量%水溶液) 15.0
(10)精製水 100とする残部
(11)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 15.0
(12)表1の実施例3に示す本発明のリパーゼ阻害剤 1.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(11)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、冷却を開始し、40℃にて(12)を加え、均一に混合する。
【0048】
[実施例10]リパーゼ阻害用飲料
(1)表1の実施例2に示す本発明のリパーゼ阻害剤 1.0(重量%)
(2)L−アルギニン 0.1
(3)エリスリトール 1.0
(4)クエン酸 0.1
(5)精製水 100とする残部
製法:(1)〜(5)を均一に溶解する。
【0049】
[実施例11]リパーゼ阻害用キャンディー
(1)白糖 60.5(重量%)
(2)水飴 100とする残部
(3)表1の実施例5に示す本発明のリパーゼ阻害剤 0.5
(4)L−イソロイシン 1.0
(5)香料 0.1
製法:(1)〜(2)を加熱混合均一化し、60℃で(3)〜(5)の成分を添加し、混合均一化した後成型する。
【0050】
[実施例12]リパーゼ阻害用コーンフレーク
(1)表1の実施例6に示す本発明のリパーゼ阻害剤 5.0(重量部)
(2)L−バリン 10.0
(3)コーングリッツ 100.0
(4)砂糖 7.4
(5)食塩 1.0
(6)麦芽エキス 0.074
(7)水 30.0
製法:(1)〜(7)を撹拌混合し、次いで、エクストルーダーによって圧縮加熱し、得られた生地を圧扁した後、焙煎してフレークとする。
【0051】
[実施例13]リパーゼ阻害用クッキー
(1)油脂 170.0(重量部)
(2)小麦粉 300.0
(3)表1の実施例4に示す本発明のリパーゼ阻害剤 2.0
(4)L−トリプトファン 10.0
(5)砂糖 50.0
(6)鶏卵 30.0
(7)食塩 2.0
製法:(1)〜(7)を均一混合し、クッキーのバッターを調製し、これを165℃、25分焼成し、クッキーを作った。
【0052】
本発明により新規なリパーゼ阻害剤が提供される。本発明のリパーゼ阻害剤によれば、リパーゼ阻害作用を通して、飲食品や化粧品などに含有される油脂類の分解を防止し、飲食品や化粧品の悪臭を抑制することができる他、リパーゼ阻害作用を通したニキビ、皮膚炎などの予防・治療、リパーゼ阻害作用を通した肥満症、過脂肪血症、動脈硬化症などの予防・治療が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キダチキンバイ抽出物、タコノキ属植物抽出物、マウンテンブルーベリーの果実、エバーグリーンブルーベリーの果実、ビルベリーの果実、及びニガリから選択される1種もしくは2種以上を含有することを特徴とするリパーゼ阻害剤。

【公開番号】特開2007−145753(P2007−145753A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341459(P2005−341459)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】