説明

リビン由来のHLA−A24結合性癌抗原ペプチド

配列番号:1に記載のリビンのアミノ酸配列における連続する8〜11アミノ酸からなる部分ペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合して細胞傷害性T細胞(CTL)により認識されるペプチド、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチド、および当該ペプチドやポリヌクレオチドを含む癌ワクチン等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、リビン由来のHLA−A24結合性癌抗原ペプチドに関する。
【背景技術】
生体による癌(腫瘍)の排除には、免疫系、特にT細胞が重要な役割を果たしていることが知られている。実際、ヒトの癌局所には癌細胞に対して傷害活性を示すリンパ球の浸潤が認められ(Arch.Surg.,126:p200(1990))、メラノーマからは自己の癌細胞を認識する細胞傷害性T細胞(以下CTL)が比較的容易に分離されている(Immunol.Today,8:p385(1987)、J.Immunol.,138:p989(1987)、Int.J.Cancer,52:p52(1992))。また、該CTLの移入によるメラノーマ治療の臨床結果からも、癌排除におけるT細胞の重要性が示唆されている(J.Natl.Cancer.Inst.,86:p1159(1994))。
自己の癌細胞を攻撃するCTLが標的とする分子については長い間不明であったが、最近の免疫学および分子生物学の進歩により次第に明らかになってきた。すなわちCTLは、T細胞受容体(TCR)を用いて、癌抗原ペプチドと呼ばれるペプチドと主要組織適合遺伝子複合体クラスI抗原(MHCクラスI抗原、HLA抗原とも呼ばれる)との複合体を認識することにより、自己の癌細胞を攻撃していることが明らかとなった。
癌抗原ペプチドは、癌に特有のタンパク質、すなわち癌抗原タンパク質が細胞内で合成された後、プロテアソームにより細胞内で分解されることによって生成される。生成された癌抗原ペプチドは、小胞体内でMHCクラスI抗原(HLA抗原)と結合して複合体を形成し、細胞表面に運ばれて抗原提示される。この抗原提示された複合体を抗原特異的なCTLが認識し、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を示す。このような一連の作用の解明に伴い、癌抗原タンパク質または癌抗原ペプチドをいわゆる癌ワクチンとして利用することにより、癌患者の体内の癌特異的CTLを増強させる治療法が可能となった。
癌抗原タンパク質としては、1991年にT.Boonらが初めてMAGEと名付けたタンパク質をヒトメラノーマ細胞から同定した(Science,254:p1643(1991))。その後、いくつかの癌抗原タンパク質が、主にメラノーマ細胞から同定されている。メラノーマ抗原としては、メラノサイト組織特異的タンパク質であるgp100、MART−1、チロシナーゼなどのメラノソームタンパク質、メラノーマだけでなく各種癌細胞と正常精巣細胞に発現するMAGE関連タンパク質群、癌特異的なアミノ酸変異を持つβ−カテニン、CDK4などが同定されている。また、メラノーマ以外の癌抗原タンパク質としては、HER2/neu、p53(変異型)などの癌遺伝子産物、CEA、PSAなどの癌マーカー、HPV、EBVなどのウイルスタンパク質などが同定されている。これらについては、総説(Immunol.Today,18:p267(1997)、J.Exp.Med.,183:p725(1996)、Curr.Opin.Immunol.,8:p628(1996))の記述に詳しい。
リビンはアポトーシス阻害タンパク(Inhibitor of apoptosis protein:IAP)のファミリーに属する分子として同定された(J.Biol.Chem.276:p3238(2001))。リビンは280アミノ酸よりなり、バキュロウイルスIAPリピート(BIR)と呼ばれるIAPに特徴的な約70アミノ酸からなるユニークな繰り返し配列を1個持っている。同時期にメラノーマに高発現するIAPとして同定されたML−IAP(melanoma inhibitor of apotosis protein)もリビンと同一のアミノ酸配列の分子である(Curr.Biol.10:p1359(2000))。
HLA−A0201陽性のメラノーマ患者の転移巣から回収したT細胞はML−IAP由来のペプチドを認識して細胞傷害活性を示した報告があり、リビンが癌抗原タンパク質として細胞傷害性T細胞(CTL)の標的になっていると考えられる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:p3398(2003))。しかしながら当該リビンが、多数存在するHLA抗原のうちHLA−A24抗原に結合性の癌抗原ペプチド部分を有しているか否かは明らかにされていない。
【発明の開示】
本発明の目的は、リビン由来のHLA−A24結合性癌抗原ペプチド、および当該ペプチドの癌ワクチンとしての使用などを提供することにある。
本発明者らは、癌免疫療法において癌ワクチンとして使用できるリビン由来の抗原ペプチドにつき鋭意検討を行った。その結果、リビンには、多数存在するHLA抗原サブクラスのうち、HLA−A24抗原に結合してCTLにより認識される癌抗原ペプチド部分が存在していることを初めて見出した。そしてこの知見により、HLA−A24陽性の癌患者に対してリビン特異的CTLを誘導することのできる新たな癌ワクチン療法が可能となった。
とりわけ配列番号:8に記載の癌抗原ペプチドは、陽性コントロールに比して格段に高いHLA−A24抗原結合性を示し、また良好なCTL誘導活性を有し、臨床適応可能な癌抗原ペプチドとして本発明者により見出されたものである。
本発明はこのような知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、
(1) 配列番号:1に記載のリビンのアミノ酸配列における連続する8〜11アミノ酸からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチド、
(2) 配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、前記(1)記載のペプチド、
(3) 配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、前記(2)記載のペプチド、
(4) 配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、前記(2)記載のペプチド、
(5) 配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、前記(4)記載のペプチド、
(6) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含有する、前記(4)記載のペプチド、
(7) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる、前記(6)記載のペプチド、
(8) 配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する9〜11アミノ酸からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチド、
(9) 配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなる、前記(8)記載のペプチド、
(10) 配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する、前記(8)記載のペプチド、
(11) 配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなる、前記(10)記載のペプチド、
(12) 配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する、前記(10)記載のペプチド、
(13) 配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなる、前記(12)記載のペプチド、
(14) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列(配列番号:63、ただし配列番号:8に記載のアミノ酸配列に該当する配列は除く)を含有する、前記(12)記載のペプチド、
(15) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列(配列番号:63、ただし配列番号:8に記載のアミノ酸配列に該当する配列は除く)からなる、前記(14)記載のペプチド、
(16) 前記(1)〜(15)いずれか記載のペプチドを含有するエピトープペプチド、
(17) 前記(1)〜(16)いずれか記載のペプチドのうちシステイン残基を含有するペプチドの単量体がジスルフィド結合により結合してなる、二量化ペプチド、
(18) 配列番号:7〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチド単量体がジスルフィド結合により結合してなる、前記(17)記載の二量化ペプチド、
(19) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含有するペプチド単量体がジスルフィド結合により結合してなる、前記(18)記載の二量化ペプチド、
(20) 前記(1)〜(16)いずれか記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(21) 前記(20)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(22) 前記(21)記載の発現ベクターを含有する細胞、
(23) 前記(22)記載の細胞を、ペプチドの発現可能な条件下で培養することを特徴とする、前記(1)〜(19)いずれか記載のペプチドの製造方法、
(24) 前記(1)〜(19)いずれか記載のペプチドに特異的に結合する抗体、
(25) 前記(1)〜(19)いずれか記載のペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞、
(26) 配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている、前記(25)記載の抗原提示細胞、
(27) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている、前記(26)記載の抗原提示細胞、
(28) 前記(1)〜(19)いずれか記載のペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識するCTL、
(29) 配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識する、前記(28)記載のCTL、
(30) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識する、前記(29)記載のCTL、
(31) 前記(1)〜(19)いずれか記載のペプチド、前記(21)記載の発現ベクター、前記(22)記載の細胞、前記(25)〜(27)いずれか記載の抗原提示細胞、あるいは前記(28)〜(30)いずれか記載のCTLと、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物、
(32) CTLの誘導剤として使用される、前記(31)記載の医薬組成物、
(33) 癌ワクチンとして使用される、前記(31)記載の医薬組成物、
(34) 前記(24)記載の抗体を含有する癌の診断薬、
(35) 前記(1)〜(19)いずれか記載のペプチドとHLA−A24抗原とを含有するHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマー、
(36) 配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原とを含有する、前記(35)記載のHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマー、
(37) 配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原とを含有する、前記(36)記載のHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマー、
(38) 前記(35)〜(37)いずれか記載のHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマーを成分として含有する、リビン由来のHLA−A24抗原結合性癌抗原ペプチド特異的なCTLの検出用試薬、ならびに
(39) 癌ワクチンの効果の診断のために用いられる、前記(38)記載の試薬、に関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、リビン由来の8種類のペプチドおよび陽性コントロールであるEBウイルス由来ペプチド(EBV)のHLA−A2402への結合親和性を示したグラフである。図中、縦軸は平均蛍光強度(結合親和性)を示す(実施例1)。
図2は、リビン由来ペプチド(ペプチド7)によるヒト末梢血単核球(PBMC)からのCTL誘導活性を、51Crリリースアッセイにより測定した結果を示したグラフである。HLA−A24陽性の肺癌患者より得たPBMCを用いた。図中、縦軸はCTLによる細胞傷害活性を示す。また、図中の標的細胞で、LNY−1は、リビン陽性およびHLA−A2402陰性、LNY−1A24はリビン陽性およびHLA−A2402陽性、K562はリビン陰性およびHLA−A2402陰性である(実施例2)。
図3は、図2と同じ実験をHLA−A24陽性の別の肺癌患者のPBMCを用いて行った結果を示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、配列番号:1に記載のリビンのアミノ酸配列における連続する8〜11アミノ酸からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドを提供する。
本発明のペプチドは、前記のように配列番号:1に記載のアミノ酸配列の一部よりなるペプチドであるが、そのN末端アミノ酸残基及び/又はC末端のアミノ酸残基が修飾されていても良い。またシステイン残基を含有するペプチドに関しては、その単量体がジスルフィド結合により結合してなる二量化ペプチドの形態であっても良い。
ここで配列番号:1に記載のヒト・リビンのアミノ酸配列は、J.Biol.Chem.276:3238,2001、NCBIデータベースAccession No.AAG33622に記載された公知の配列である。
本発明のペプチドは、配列番号:1に記載のヒト・リビンのアミノ酸配列における連続する8〜11アミノ酸からなるペプチドである。ここで「8〜11アミノ酸」との定義は、HLA−A24抗原に結合性を有するペプチドが、一般的に8〜11アミノ酸からなることに基づくものである(Immunogenetics,41:178−228(1995)、J.Immunol.,155:4307−4312(1995)、J.Immunol.,152:3913−3924(1994)、J.Immunol.,152:3904−3912(1994)、)。好ましくは、配列番号:1に記載のヒト・リビンのアミノ酸配列における連続する9〜11アミノ酸からなるペプチドが挙げられ、さらに好ましくは9〜10アミノ酸からなるペプチドが挙げられる。
前記本発明のペプチドは、配列番号:1に記載のアミノ酸配列における連続する8〜11アミノ酸からなる部分ペプチド(候補ペプチド)を合成し、該ペプチドがHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるか否かをアッセイすることにより、同定することができる。
ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該合成方法としては、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
前記において「HLA−A24抗原に結合してCTLにより認識される」とは癌抗原ペプチドとしての活性を有することを意味するものであり、「HLA−A24抗原に結合してCTLを誘導する(CTL誘導活性を有する)」こと、「HLA−A24抗原に結合してCTLを活性化する(CTL活性化活性を有する)」ことと同義語である。よって本発明においては「HLA−A24抗原に結合してCTLにより認識される」ことを、「癌抗原ペプチドとしての活性を有する」若しくは「CTL誘導活性を有する」と称することもある。
候補ペプチドがHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されることは、例えばJ.Immunol.,169,1611,2002に記載の方法により調べることができる。
すなわちまず、HLA−A24抗原陽性のヒトから末梢血単核球(PBMC)を分離・培養する。培養後、非接着性の細胞を回収して培養し、CTLを含むT細胞集団(CD8陽性T細胞)を抗CD8抗体結合マグネチックビーズなどで分離する。また別途、抗原提示用細胞調製のために接着性の細胞を培養し、候補ペプチドを添加(パルス)してさらに培養する。
次に、前記ペプチドパルスした抗原提示細胞とCTLを含むT細胞集団とを混合培養する。このペプチドパルスした抗原提示細胞による刺激を数回繰り返してペプチド特異的なCTLを増やした後、当該CTLによる細胞傷害活性を、例えば51Crリリースアッセイ(Int.J.Cancer,58:p317,1994)などにより測定する。アッセイにおいて使用する標的細胞としては、51Crでラベルしたリビン陽性かつHLA−A24陽性の細胞が、挙げられる。具体的には、例えばリビン陽性およびHLA−A24陰性であるメラノーマ由来細胞株や肺癌由来細胞株にHLA−A24の一種であるHLA−A2402遺伝子(Cancer Res.,55:4248−4252(1995)、Genbank Accession No.M64740)を導入した51Crラベル化細胞などが挙げられる。
以上のようなアッセイにより、CTLが標的細胞を傷害した場合は、候補ペプチドが「HLA−A24抗原と結合してCTLにより認識される」という本発明の活性を有すると判断する。
さらに、WO02/47474号公報およびInt J.Cancer:100,565−570(2002)に記述されたHLA−A24モデルマウスを用いることにより、候補ペプチドがin vivoで「HLA−A24抗原と結合してCTLにより認識される」という本発明の活性を有することを確認することができる。
HLA分子には多くのサブタイプが存在し、結合できる抗原ペプチドのアミノ酸配列にはそれぞれのタイプについて規則性(結合モチーフ)が存在することが知られている。HLA−A24の結合モチーフとしては、8〜11アミノ酸からなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)またはトリプトファン(Trp)であり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン(Phe)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、トリプトファン(Trp)またはメチオニン(Met)となることが知られている(Immunogenetics,41:178−228(1995)、J.Immunol.,155:4307−4312(1995)、J.Immunol.,152:3913−3924(1994)、J.Immunol.,152:3904−3912(1994)、)。また、これら規則性に係わるアミノ酸残基に類似するアミノ酸残基も許容され得る。
さらに近年、これらの規則性に基づき、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列を、インターネット上、NIHのBIMASのソフトを使用することにより検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)。
本発明は、リビン(配列番号:1)が、HLA−A24抗原に結合してCTLにより認識される抗原ペプチド部分を有していることを初めて見出したものであるが、当該リビンのアミノ酸配列のうち、前記BIMASソフトを用いた検索により同定される9アミノ酸若しくは10アミノ酸からなる推定上のHLA−A24結合配列としては、配列番号:2〜配列番号:59に記載のリビンの部分アミノ酸配列が挙げられる。
すなわち本発明のペプチドの具体的な態様として、本発明は、配列番号:2〜59のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有し、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドを提供する。
当該ペプチドは、配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するリビンの部分ペプチドであり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識される活性を有する限り、その長さは特に限定されない。しかしながらHLA−A24抗原に結合性を有するペプチドは、一般的に8〜11アミノ酸からなることが知られている(Immunogenetics,41:178−228(1995)、J.Immunol.,155:4307−4312(1995)、J.Immunol.,152:3913−3924(1994)、J.Immunol.,152:3904−3912(1994)。従って前記配列番号に係る本発明のペプチドは、9〜11アミノ酸からなるペプチドであることが好ましく、9〜10アミノ酸からなるペプチドであることがより好ましい。
すなわち本発明のペプチドのより好ましい形態として、本発明は、配列番号:2〜59のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する9〜11アミノ酸(好ましくは9〜10アミノ酸)からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドを提供する。
また、さらに好ましい形態として、本発明は、配列番号:2〜59のいずれかに記載のアミノ酸からなり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるペプチドを提供する。
前記配列番号で示される本発明のペプチドのうち好ましいのは配列番号:6〜9に記載のアミノ酸配列を含有するペプチドであり、特に好ましいのは配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含有するペプチドである。当該配列番号:8に記載の癌抗原ペプチドは、陽性コントロールに比して格段に高いHLA−A24抗原結合性を示し、また良好なCTL誘導活性を有するペプチドとして本発明者により見出されたものである。
ペプチドの長さとしては9〜11アミノ酸が好ましく、9〜10アミノ酸がさらに好ましい。また配列番号:6〜9に記載のアミノ酸配列からなるペプチドがより好ましく、配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなるペプチドが特に好ましい。
前記本発明のペプチドは、活性を保持する範囲内で、適宜改変されていても良い。ここでアミノ酸残基の「改変」とは、アミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加(ペプチドのN末端、C末端へのアミノ酸の付加も含む)を意味し、好ましくはアミノ酸残基の置換が挙げられる。アミノ酸残基の置換に係る改変の場合、置換されるアミノ酸残基の数および位置は、癌抗原ペプチドとしての活性を有する限り任意であるが、前記したように通常、HLA−A24抗原に結合するペプチドの長さが8〜11アミノ酸程度であることから、1個から数個の範囲が好ましい。
当該置換に係るアミノ酸残基の改変においては、HLA−A24抗原に対する結合モチーフ構造を有するペプチドにおける第2位及び/又はC末端のアミノ酸残基の置換が好ましい。
このような本発明の置換に係るペプチドの具体的な態様としては、配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する9〜11アミノ酸(好ましくは9〜10アミノ酸)からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。
このうち配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが好ましい。
前記置換においては、HLA−A24抗原の結合モチーフ構造を保持するアミノ酸残基への置換が好ましい。すなわち本発明の置換に係るペプチドの好ましい態様としては、配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する9〜11アミノ酸(好ましくは9〜10アミノ酸)からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。
このうち、配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドがより好ましい。
前記置換に係る本発明のペプチドのうち、より好ましいのは、配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する9〜11アミノ酸(好ましくは9〜10アミノ酸)からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドである。
このうち、配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドがより好ましい。
前記置換に係る本発明のペプチドのうち、特に好ましいのは、配列番号:8に記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列(配列番号:63、ただし配列番号:8に記載のアミノ酸配列に該当する配列は除く)を含有する9〜11アミノ酸(好ましくは9〜10アミノ酸)からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドである。
このうち、配列番号:8に記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列(配列番号:63、ただし配列番号:8に記載のアミノ酸配列に該当する配列は除く)からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドがより好ましい。
前記第2位及び/又はC末端のアミノ酸残基の改変(好ましくは置換)は、例えば前記に示したリビンの部分配列からなる本発明の天然型の癌抗原ペプチドにおいて、そのHLA−A24抗原への結合性を高める、若しくは活性を増強する目的で行うことができる。置換を施した第2位および/またはC末端アミノ酸以外の部分は、天然型の配列のまま(すなわちリビンのアミノ酸配列のまま)であっても良く、また活性を保持する限りさらなる改変を施しても良い。当該改変とは、具体的には、システイン残基の他のアミノ酸残基(例えばセリン、アラニン、α−アミノ酪酸)への置換が挙げられる。より具体的には、例えば配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、またはこのペプチドの第2位及び/又はC末端アミノ酸の置換型ペプチドにおいて、その第6位のシステインが他のアミノ酸残基(例えばセリン、アラニン、α−アミノ酪酸)に置換されたペプチドが例示される。また、例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、またはこのペプチドの第2位及び/又はC末端アミノ酸の置換型ペプチド(例えば配列番号:63に記載のアミノ酸配列よりなるペプチド)において、その第6位のシステインが他のアミノ酸残基(例えばセリン、アラニン、α−アミノ酪酸)に置換されたペプチドが例示される。また、例えば配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、またはこのペプチドの第2位及び/又はC末端アミノ酸の置換型ペプチドにおいて、その第7位のシステインが他のアミノ酸残基(例えばセリン、アラニン、α−アミノ酪酸)に置換されたペプチドが例示される。
本発明はまた、前記本発明のペプチド(天然型ペプチド、改変ペプチド)とヘルパーペプチド若しくは他の癌抗原ペプチドとを含有するペプチド(いわゆる「エピトープペプチド」)を提供する。
近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したペプチド(エピトープペプチド)が、効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998,161:3186−3194には、癌抗原タンパク質PSA由来のHLA−A2,−A3,−A11,B53拘束性CTLエピトープを連結した約30merのペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。
またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたペプチド(エピトープペプチド)により、効率的にCTLが誘導されることも示されている。ここでヘルパーエピトープとはCD4陽性T細胞を活性化させる作用を有するペプチドを指すものであり(Immunity.,1:751,1994)、例えばB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが知られている。当該ヘルパーエピトープにより活性化されたCD4陽性T細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化などの作用を発揮するため、抗腫瘍免疫応答に重要であると考えられている。このようなヘルパーエピトープとCTLエピトープとを連列したペプチドの具体例として、例えばJournal of Immunology 1999,162:3915−3925には、HBV由来HLA−A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA−A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープより構成されるペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。また実際に、CTLエピトープ(メラノーマ抗原gp100の第280位〜288位からなる癌抗原ペプチド)とヘルパーエピトープ(破傷風毒素由来Tヘルパーエピトープ)とを連結したペプチドが臨床試験に供されている(Clinical Cancer Res.,2001,7:3012−3024)。
従って、前記本発明のペプチド(天然型ペプチド、改変ペプチド)を含む複数のエピトープを連結させたCTL誘導活性を有するエピトープペプチドも、本発明のペプチドの具体例として例示することができる。
ここで、本発明の癌抗原ペプチドに連結させるエピトープがCTLエピトープ(癌抗原ペプチド)の場合、用いるCTLエピトープとしては、リビン由来のHLA−A0201,−A0204,−A0205,−A0206,−A0207に拘束性のCTLエピトープが挙げられる。これらCTLエピトープは複数個連結することが可能であり、1つのCTLエピトープの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、8〜14アミノ酸程度を挙げることができる。
また本発明の癌抗原ペプチドに連結させるエピトープがヘルパーエピトープの場合、用いるヘルパーエピトープとしては、前述のようなB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが挙げられる。また当該ヘルパーエピトープの長さとしては、13〜30アミノ酸程度、好ましくは13〜17アミノ酸程度を挙げることができる。
本発明のエピトープペプチドとして、具体的には、例えば配列番号:2〜59のいずれかに記載のアミノ酸配列からなり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるペプチドの1種または2種以上とヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドを挙げることができる。
より具体的には、例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列よりなるペプチドと破傷風毒素由来のヘルパーペプチド(例えばPhe Asn Asn Phe Thr Val Ser Phe Trp Leu Arg Val Pro Lys Val Ser Ala Ser His Leu Glu;配列番号:61)とを連結させたエピトープペプチドや、配列番号:8に記載のアミノ酸配列よりなるペプチドとAla Gln Tyr Ile Lys Ala Asn Ser Lys Phe Ile Gly Ile Thr Glu Leu(配列番号:62、Clinical Cancer Res.,2001,7:3012−3024)とを連結させたエピトープペプチドなどが挙げられる。
このような複数のエピトープを連結させたペプチド(エピトープペプチド)は、前述のように一般的なペプチド合成法によって製造することができる。またこれら複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列情報に基づいて、通常のDNA合成および遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。すなわち、当該ポリヌクレオチドを周知の発現ベクターに挿入し、得られた組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換して作製された形質転換体を培養し、培養物より目的の複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを回収することにより製造することができる。これらの手法は、前述のように文献記載の方法(Molecular Cloning,T.Maniatis et al.,CSH Laboratory(1983)、DNA Cloning,DM.Glover,IRL PRESS(1985))や後述の方法などに準じて行うことができる。
以上のようにして製造された複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを前述の51CrリリースアッセイやWO 02/47474号公報およびInt J.Cancer:100,565−570(2002)に記述のヒトモデル動物に供すること等により、CTL誘導活性を測定することができる。
以上に示した本発明のペプチド(天然型ペプチド、改変ペプチドおよびエピトープペプチド)のN末端アミノ酸のアミノ基、またはC末端アミノ酸のカルボキシル基は、修飾されていても良い。すなわち、当該N末端のアミノ酸残基及び/又はC末端のアミノ酸残基が修飾されたペプチドも、本発明のペプチドの範疇に含まれる。
ここでN末端アミノ酸のアミノ基の修飾基としては、例えば1〜3個の炭素数1から6のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アシル基が挙げられ、アシル基の具体例としては炭素数1から6のアルカノイル基、フェニル基で置換された炭素数1から6のアルカノイル基、炭素数5から7のシクロアルキル基で置換されたカルボニル基、炭素数1から6のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、フェニル基で置換されたアルコキシカルボニル基、炭素数5から7のシクロアルコキシで置換されたカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
C末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾したペプチドとしては、例えばエステル体およびアミド体が挙げられ、エステル体の具体例としては、炭素数1から6のアルキルエステル、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキルエステル、炭素数5から7のシクロアルキルエステル等が挙げられ、アミド体の具体例としては、アミド、炭素数1から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
また、以上に示した本発明のペプチド(天然型ペプチド、改変ペプチドおよびエピトープペプチド)のうちシステイン残基を含有するペプチドに関しては、そのペプチド単量体がジスルフィド結合により結合してなる二量化ペプチドの形態であっても良い。当該二量化は、ペプチド単量体を合成後、酸化状態に置くことにより作製することができる。
具体的には、例えば配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、またはこのペプチドの第2位及び/又はC末端アミノ酸の置換型ペプチドの二量化ペプチドが例示される。また、例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、またはこのペプチドの第2位及び/又はC末端アミノ酸の置換型ペプチド(例えば配列番号:63に記載のアミノ酸配列よりなるペプチド)の二量化ペプチドが例示される。また、例えば配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、またはこのペプチドの第2位及び/又はC末端アミノ酸の置換型ペプチドの二量化ペプチドが例示される。
本発明はまた、前記本発明のペプチド(天然型ペプチド、改変ペプチドまたはエピトープペプチド)をコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもRNAの形態であっても良い。これら本発明のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドのアミノ酸配列情報およびそれによりコードされるDNAの配列情報に基づき容易に製造することができる。具体的には、通常のDNA合成やPCRによる増幅などによって、製造することができる。
具体的には、例えば配列番号:2〜59のいずれかに記載のアミノ酸配列からなり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるペプチドの1種または2種以上とヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
好ましくは、例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列よりなるペプチドと破傷風毒素由来のヘルパーペプチド(例えばPhe Asn Asn Phe Thr Val Ser Phe Trp Leu Arg Val Pro Lys Val Ser Ala Ser His Leu Glu;配列番号:61)とを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。また配列番号:8に記載のアミノ酸配列よりなるペプチドとAla Gln Tyr Ile Lys Ala Asn Ser Lys Phe Ile Gly Ile Thr Glu Leu(配列番号:62、Clinical Cancer Res.,2001,7:3012−3024)とを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。
前記で作製された本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込むことにより、本発明のペプチドを発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
ここで用いる発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT−Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRc/RSV、pRc/CMVなどのプラスミドベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、シグナル配列をコードする遺伝子、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの因子を適宜有していても良い。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc−Hisなど)、さらにはチオレドキシンおよびHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換することにより、当該発現ベクターを含有する形質転換細胞を作製することができる。
ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K−12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;Gibco−BRL社)を用いる方法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された形質転換細胞を選択することができる。
以上のようにして得られた形質転換細胞を好適な(ペプチドの発現可能な)条件下で培養し続けることにより、本発明のペプチドを製造することができる。得られたペプチドは、一般的な生化学的精製手段により、さらに単離・精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のポリペプチドを、前述のチオレドキシンやHisタグ、GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離・精製することができる。
本発明は、本発明のペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明のペプチドを免疫原とするポリクローナル抗体であっても、またモノクローナル抗体であっても良い。
本発明の抗体は前記のように本発明のペプチドに特異的に結合するものであれば特に制限されないが、具体的には、配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列からなり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるペプチドに特異的に結合する抗体を挙げることができる。好ましくは、配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列よりなるペプチドに特異的に結合する抗体が挙げられ、より好ましくは、配列番号:8に記載のアミノ酸配列よりなるペプチドに特異的に結合する抗体が挙げられる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.12〜11.13、Antibodies;A Laboratory Manual,Lane,H,D.ら編,Cold Spring Harber Laboratory Press出版New York 1989)。
具体的には、本発明のペプチドを免疫原として用い、家兎等の非ヒト動物を免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、本発明のペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4〜11.11)。
本発明のペプチドに対する抗体の作製は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
以上のように本発明のペプチドを用いて常法により適宜動物を免疫することにより、ペプチドを認識する抗体、さらにはその活性を中和する抗体が容易に作製できる。抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、免疫学的診断等が挙げられる。免疫学的診断は、イムノブロット法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光あるいは発光測定法等より適宜選択できる。このような免疫学的診断は、リビン遺伝子が発現している癌、すなわち肺癌、大腸癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、黒色腫(特に悪性黒色腫)、明細胞肉腫等の診断において有効である。
本発明は、本発明のペプチドとHLA−A24抗原との複合体の提示された抗原提示細胞を提供する。
後述の実施例において、本発明のペプチド刺激によりCTL誘導活性が認められたが、これは、本発明のペプチドとHLA−A24抗原との複合体の提示された抗原提示細胞が存在し、この抗原提示細胞を特異的に認識するCTLが誘導されたことを示すものである。このような、HLA−A24抗原と本発明のペプチドとの複合体の提示された抗原提示細胞は、後述する細胞療法(DC療法)において有効に用いられる。
本発明の抗原提示細胞は、本発明のペプチドとHLA−A24抗原との複合体の提示された抗原提示細胞であれば良く、具体的には、例えば配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列からなり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるペプチドとHLA−A24抗原との複合体が樹状細胞の細胞表面に提示された抗原提示細胞を挙げることができる。好ましくは、配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原との複合体が樹状細胞の細胞表面に提示された抗原提示細胞が挙げられ、より好ましくは、配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原との複合体が樹状細胞の細胞表面に提示された抗原提示細胞を挙げることができる。
細胞療法(DC療法)において用いられる抗原提示細胞は、癌患者から抗原提示能を有する細胞を単離し、この細胞に本発明のペプチドを体外でパルスするか、または本発明のポリヌクレオチドやそれを含有する発現ベクターを細胞内に導入して、HLA−A24抗原と本発明のペプチド由来の癌抗原ペプチドとの複合体を細胞表面に提示させることにより作製される。ここで「抗原提示能を有する細胞」とは、本発明のペプチドを提示可能なHLA−A24抗原を細胞表面に発現している細胞であれば特に限定されないが、抗原提示能が高いとされている樹状細胞が好ましい。
また、前記抗原提示能を有する細胞にパルスされるものとしては、本発明のペプチドであっても良いし、また本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドやそれを含有する発現ベクターであっても良い。
本発明の抗原提示細胞は、例えば癌患者から抗原提示能を有する細胞を単離し、該細胞に本発明のペプチド(例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる癌抗原ペプチド)を体外でパルスし、HLA−A24抗原と本発明のペプチドとの複合体を作製することにより得られる(Cancer Immunol.Immunother.,46:82,1998、J.Immunol.,158:p1796,1997、Cancer Res.,59:p1184,1999)。樹状細胞を用いる場合は、例えば、癌患者の末梢血からフィコール法によりリンパ球を分離し、その後非付着細胞を除き、付着細胞をGM−CSFおよびIL−4存在下で培養して樹状細胞を誘導し、当該樹状細胞を本発明のペプチドと共に培養してパルスすることなどにより、本発明の抗原提示細胞を調製することができる。
また、前記抗原提示能を有する細胞に本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有するエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド)あるいはそれを含有する発現ベクターを導入することにより本発明の抗原提示細胞を調製する場合は、当該ポリヌクレオチドがDNAの場合はCancer Res.,56:p5672,1996やJ.Immunol.,161:p5607,1998などを参考にして行うことができる。また、DNAのみならずRNAの形態でも同様に抗原提示細胞を調製することができ、この場合は、J.Exp.Med.,184:p465,1996などを参考できる。
本発明はまた、本発明のペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識するCTLを提供する。
後述の実施例において、本発明のペプチド刺激によりCTL誘導活性が認められた。これは、本発明のペプチドとHLA−A24抗原との複合体の提示された抗原提示細胞が存在し、この抗原提示細胞を特異的に認識するCTLが誘導されたことを示すものである。このような、HLA−A24抗原と本発明のペプチドとの複合体を特異的に認識するCTLは、後述する養子免疫療法において有効に用いられる。
本発明のCTLは、本発明のペプチドとHLA−A24抗原との複合体を特異的に認識するものであれば良いが、具体的には、例えば配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列からなり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるペプチドとHLA−A24抗原との複合体を特異的に認識するCTLを挙げることができる。好ましくは、配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原との複合体を特異的に認識するCTLが挙げられ、より好ましくは、配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原との複合体を特異的に認識するCTLを挙げることができる。
養子免疫療法において用いられるCTLは、患者の末梢血リンパ球を単離し、これを本発明のペプチド(例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる癌抗原ペプチド)、あるいは本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有するエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド)やそれを含有する発現ベクターでイン・ビトロで刺激する等により作製される(Journal of Experimental Medicine 1999,190:1669)。
以上に記載した本発明のペプチド、本発明の発現ベクター、本発明の細胞、本発明の抗原提示細胞、および本発明のCTLは、それぞれの物質に応じた適切な形態とすることにより、CTLの誘導剤、すなわち癌ワクチンの有効成分とすることができる。以下、具体的に説明する。
(1)本発明のペプチドを有効成分とする癌ワクチン
本発明のペプチドは、CTLの誘導能を有するものであり、誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明のペプチドは、癌の治療または予防のための癌ワクチンの有効成分とすることができる。すなわち本発明は、本発明のペプチドを有効成分として含有する癌ワクチン(癌ワクチンとしての医薬組成物)を提供する。本発明の癌ワクチンをHLA−A24陽性かつリビン陽性の患者に投与すると、抗原提示細胞のHLA−A24抗原にペプチド(例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる癌抗原ペプチド)が提示され、提示されたHLA−A24抗原複合体を特異的に認識するCTLが増殖して癌細胞を破壊することができ、従って、癌の治療または予防が可能となる。本発明の癌ワクチンは、リビン遺伝子の発現レベルの上昇を伴う癌、例えば肺癌、大腸癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、黒色腫(特に悪性黒色腫)、明細胞肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
よって、本発明は別の態様として、本発明の癌ワクチンの有効量をHLA−A24陽性かつリビン陽性の患者に投与することにより、癌を治療または予防するための方法を提供する。
本発明のペプチドを有効成分とする癌ワクチンは、単一のCTLエピトープ(例えば配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる癌抗原ペプチド)を有効成分とするものであっても、また他のペプチド(CTLエピトープやヘルパーエピトープ)と連結したエピトープペプチドを有効成分とするものであっても良い。すなわち近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドが、イン・ビボで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998,161:3186−3194には、癌抗原タンパク質PSA由来のHLA−A2,−A3,−A11,B53拘束性CTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結した約30merのエピトープペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドにより、効率的にCTLが誘導されることも示されている。このようなエピトープペプチドの形態で投与した場合、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた個々の抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。このようにして癌の治療または予防が達成される。
また本発明のペプチドを有効成分とする癌ワクチンは、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントとともに投与したり、粒子状の剤型にして投与することができる。アジュバントとしては、文献(Clin.Microbiol.Rev.,7:277−289,1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分、サイトカイン、植物由来成分、海洋生物由来成分、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルジョン製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤なども考えられる。
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明のペプチドの投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
(2)本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを有効成分とするDNAワクチン
前記本発明のペプチドのみならず、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターもまた、癌の治療または予防のためのDNAワクチンの有効成分とすることができる。すなわち本発明は、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを有効成分として含有する癌ワクチン(癌ワクチンとしての医薬組成物)を提供する。また、本発明は別の態様として、本発明のDNAワクチンの有効量をHLA−A24陽性かつリビン陽性の患者に投与することにより、癌を治療または予防するための方法を提供する。
近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが、in vivoで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1999,162:3915−3925には、HBV由来HLA−A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA−A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープを連結したエピトープペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。
従って、本発明のエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに組み込むことにより、癌ワクチンの有効成分とすることができる。
本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターを癌ワクチン(DNAワクチン)の有効成分として適用する際には、以下の方法が使用され得る。
すなわち、本発明のポリヌクレオチドを細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターによる方法およびその他の方法(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊,12(15),(1994)、およびこれらの引用文献等)のいずれの方法も適用することができる。
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルスまたはRNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
本発明のポリヌクレオチドを実際に医薬として作用させるには、当該ポリヌクレオチドを直接体内に導入するin vivo法、およびヒトからある種の細胞を採集し体外でDNAを該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo法がある(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊,12(15),(1994)、およびこれらの引用文献等)。in vivo法がより好ましい。
in vivo法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中の本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターの含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常、0.0001mg〜100mg、好ましくは0.001mg〜10mgの本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターを、数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
以上のような本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターの癌患者への投与により、抗原提示細胞内で当該ポリヌクレオチドに対応するポリペプチドが高発現する。その後、細胞内分解を受けて生じた個々の癌抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示され、この複合体を特異的に認識するCTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。以上のようにして、癌の治療または予防が達成される。本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを有効成分とする癌ワクチンは、リビン遺伝子の発現レベルの上昇を伴う癌、例えば肺癌、大腸癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、黒色腫(特に悪性黒色腫)、明細胞肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
(3)本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチン
本発明は、本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチンを提供する。
近年、癌患者の末梢血からリンパ球を分離し、その中から樹状細胞を誘導し、イン・ビトロでペプチド等をパルスして調製した抗原提示細胞を皮下投与などにより患者に戻す細胞療法(DC療法)が報告されている(Cancer Immunol.Immunother.,46:82,1998、J.Immunol.,158:p1796,1997、Cancer Res.,59:p1184,1999、Cancer Res.,56:p5672,1996、J.Immunol.,161:p5607,1998、J.Exp.Med.,184:p465,1996)。従って前記本発明の抗原提示細胞を、細胞療法における癌ワクチンの有効成分として使用することができる。
本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチンは、抗原提示細胞を安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含むことが好ましい。投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与が挙げられる。また投与量は、前記文献記載の投与量が例示される。
前記癌ワクチンを患者の体内に戻すことにより、HLA−A24陽性かつリビン陽性の患者の体内で効率良く特異的なCTLが誘導され、癌を治療または予防することができる。本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチンは、リビン遺伝子の発現レベルの上昇を伴う癌、例えば肺癌、大腸癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、黒色腫(特に悪性黒色腫)、明細胞肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
(4)本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチン
本発明は、本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチン(癌ワクチンとしての医薬組成物)を提供する。本発明のCTLは、以下の養子免疫療法において有効に用いられる。
メラノーマにおいて、患者本人の腫瘍内浸潤T細胞を体外で大量に培養し、これを患者に戻す養子免疫療法に治療効果が認められている(J.Natl.Cancer.Inst.,86:1159,1994)。またマウスのメラノーマでは、脾細胞をイン・ビトロで癌抗原ペプチドTRP−2で刺激し、癌抗原ペプチドに特異的なCTLを増殖させ、該CTLをメラノーマ移植マウスに投与することにより、転移抑制が認められている(J.Exp.Med.,185:453,1997)。これは、抗原提示細胞のHLA抗原と癌抗原ペプチドとの複合体を特異的に認識するCTLをイン・ビトロで増殖させた結果に基づくものである。従って、本発明のペプチドあるいは本発明のポリヌクレオチドや発現ベクターを用いて、イン・ビトロで患者末梢血リンパ球を刺激して癌特異的CTLを増やした後、このCTLを患者に戻す治療法は有用であると考えられる。従って前記本発明のCTLを、養子免疫療法における癌ワクチンの有効成分として使用することができる。
本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチンは、CTLを安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含むことが好ましい。投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与が挙げられる。また投与量としては、前記文献記載の投与量が例示される。
前記癌ワクチンを患者の体内に戻すことにより、HLA−A24陽性かつリビン陽性の患者の体内でCTLによる癌細胞の傷害作用が促進され、癌細胞を破壊することにより、癌を治療することができる。本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチンは、リビン遺伝子の発現レベルの上昇を伴う癌、例えば肺癌、大腸癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、黒色腫(特に悪性黒色腫)、明細胞肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
本発明は、本発明の抗体を含有する癌の診断薬を提供する。
本発明の抗体を含有する癌の診断薬を用いることにより、癌の免疫学的診断を行うことができる。当該免疫学的診断を行うには、まず本発明の抗体を必要に応じて適宜標識し、これを用いて癌が疑われる患者から得た試料(例えば血液、癌組織など)中の抗原(リビン)若しくは抗原ペプチド(リビン由来抗原ペプチド)の存在を検出することにより、癌の有無を診断することができる。具体的にはイムノブロット法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光あるいは発光測定法等により行うことができる。
本発明はまた、本発明のペプチドとHLA−A24抗原とを含有するHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマーを提供する。
癌免疫療法において、治療前に癌抗原(癌抗原ペプチド)に対するCTL前駆細胞の頻度や量を予め調べることや、癌抗原(癌抗原ペプチド)による治療実施中の患者におけるCTLの頻度や量を調べることは、当該癌抗原(癌抗原ペプチド)に対する応答性が高い患者の選択や、治療効果のモニタリング、治療の適合性の判定などにおいて重要な指標となる。癌抗原ペプチドとHLA抗原とを含有するHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーおよびHLAペンタマーは、抗原(抗原ペプチド)特異的CTLの検出、すなわち当該CTLの頻度や量を測定するための試薬として有用である。
ここでHLAテトラマーとは、HLA抗原のα鎖とβ2ミクログロブリンをペプチド(抗原ペプチド)と会合させた複合体(HLAモノマー)をビオチン化し、アビジンに結合させることにより4量体化したものを指す(Science 279:2103−2106(1998)、Science 274:94−96(1996))。
HLAモノマーとは前記HLAテトラマーの製造において用いられる、HLA抗原α鎖、β2ミクログロブリン、抗原ペプチドの会合体をビオチン化したもの(単量体)を指す。
HLAダイマーとはHLA抗原α鎖とIg(イムノグロブリン、例えばIgG1)とを融合させ、これにβ2ミクログロブリン、抗原ペプチドを結合させたものを指す(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6671−6675(1993))。HLAダイマーに結合した抗原ペプチド特異的CTLは、例えば標識抗IgG1抗体をIgG1に結合させることなどにより、検出することができる。
HLAペンタマーとは近年開発された技術であり、HLA抗原と抗原ペプチドとの複合体5分子がCoiled−Coilドメインを介して重合した5量体を指す。HLA抗原−抗原ペプチドの複合体を蛍光色素等で標識することができるため、HLAテトラマー法と同様にフローサイトメーター等で解析することができる(http://www.proimmune.co.uk/参照)。
以上に述べたHLAモノマー、ダイマー、テトラマーおよびペンタマーはいずれも受託合成可能であり、例えばProImmune社やBD Biosciences社などに委託することにより合成することができる。また現在では種々の抗原ペプチドを含有するHLAテトラマーなども市販されている((株)医学生物学研究所等)。
本発明のHLAモノマー、ダイマー、テトラマーおよびペンタマーとして具体的には、例えば配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列からなり、かつHLA−A24抗原に結合してCTLにより認識されるペプチドとHLA−A24抗原とを含有するHLAモノマー、ダイマー、テトラマーおよびペンタマーが挙げられる。このうちHLAテトラマーまたはHLAペンタマーを用いることが好ましく、HLAテトラマーを用いることがより好ましい。中でも配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原とを含有するHLAテトラマーまたはHLAペンタマーが好ましく、特に配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原とを含有するHLAテトラマーまたはHLAペンタマーが好ましい。このうちHLAテトラマーがより好ましい。
当該HLAモノマー、HLAテトラマーおよびHLAペンタマーは、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡等の公知の検出手段により結合したCTLを容易に選別または検出することが出来るように蛍光標識されていることが好ましい。具体的には、例えばフィコエリスリン(PE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ペリジニンクロロフィルプロテイン(PerCP)、アロフィコシアニン(APC)などにより標識されたHLAモノマー、HLAテトラマーおよびHLAペンタマーが挙げられる。
本発明のHLAモノマー、ダイマー、テトラマーおよびペンタマーの成分であるHLA−A24抗原(HLA−A24抗原のα鎖)は、Cancer Res.,55:4248−4252(1995)およびGenbank Accession No.M64740に開示されているHLA−A2402の公知の塩基配列の情報に基づき、PCR法等の常法により容易にクローニングすることができる。
本発明のHLAモノマー、ダイマー、テトラマーおよびペンタマーの成分であるβ2ミクログロブリンは、ヒト由来のβ2ミクログロブリンが好ましい。当該ヒトβ2ミクログロブリンはGenBank Acc.No.AB021288に開示されているヒトβ2ミクログロブリンの公知の塩基配列情報に基づき、PCR法等の常法により容易にクローニングすることができる。
HLAモノマー、ダイマー、テトラマーおよびペンタマー作製法については、前記各文献により周知であるが、具体的にHLAテトラマーの作製法につき簡単に述べると以下のようになる。
まずタンパク質を発現可能な大腸菌や哺乳動物細胞に、HLA−A24α鎖発現ベクターおよびβ2ミクログロブリン発現ベクターを導入し発現させる。ここでは大腸菌(例えばBL21)を用いることが好ましい。得られた単量体HLA−A24複合体と本発明ペプチドとを混合し、可溶性のHLA−ペプチド複合体を形成させる。次にHLA−ペプチド複合体におけるHLA−A24α鎖のC末端部位の配列をBirA酵素によりビオチン化する。このビオチン化されたHLA−ペプチド複合体と蛍光標識されたアビジンとを4:1のモル比で混合することにより、HLAテトラマーを調製することができる。なお、前記各ステップにおいて、ゲルろ過等によるタンパク精製を行うことが好ましい。
前記本発明のHLAモノマー、ダイマー、テトラマーおよびペンタマーは、リビン由来のHLA−A24結合性癌抗原ペプチド特異的なCTLの検出用試薬として有効に用いられる。
本発明のCTL検出用試薬は、例えば以下の目的に使用することができる:
1)本発明の癌抗原ペプチドによる治療開始前に、本発明の癌抗原ペプチドに対するCTL前駆細胞の頻度や量を調べる。これにより、当該癌抗原ペプチドに対する患者の応答性を判断することができる。
2)本発明の癌抗原ペプチド(癌ワクチン)による治療実施中の患者におけるCTLの頻度や量を調べる。これにより治療効果のモニタリング、治療の適合性の判定、治療が順調に進んでいることの確認などを行うことができる。
CTLの検出法としては、具体的には、被験患者よりCTLを含む生体試料(例えばPBMC)を単離し、本発明のHLAテトラマー等と前記生体試料とを接触させ、HLAテトラマー等に結合した本発明ペプチド特異的なCTLの存在頻度または量を、フローサイトメーター等で測定する。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
[実施例1]
ペプチドのHLA−A2402への結合親和性の検討
リビンのアミノ酸配列(NCBIのデータベースEntrezのAAG33622)よりHLA−A2402(HLA−A24の1種)に結合する可能性のあるペプチドを8種類合成した。それぞれペプチドの配列は、リビンの第47位から55位に相当するペプチド1(Ala Trp Asp His Val Asp Gly Gln Ile;配列番号:2)、第47位から56位に相当するペプチド2(Ala Trp Asp His Val Asp Gly Gln Ile Leu;配列番号:3)、第80位から89位に相当するペプチド3(Ala Phe Pro Gly Met Gly Ser Glu Glu Leu;配列番号:4)、第83位から第91位に相当するペプチド4(Gly Met Gly Ser Glu Glu Leu Arg Leu;配列番号:5)、第140位から第148位に相当するペプチド5(Pro Trp Thr Glu His Ala Lys Trp Phe;配列番号:6)、第146位から154位に相当するペプチド6(Lys Trp Phe Pro Ser Cys Gln Phe Leu;配列番号:7)、第146位から155位に相当するペプチド7(Lys Trp Phe Pro Ser Cys Gln Phe Leu Leu;配列番号:8)および第145位から154位に相当するペプチド8(Ala Lys Trp Phe Pro Ser Cys Gln Phe Leu:配列番号:9)である。リビン由来の前述のペプチドおよびEBウイルス由来のペプチド(Thr Tyr Gly Pro Val Phe Met Ser Leu;配列番号:60)はアミノ酸合成機を用いてF−moc法で合成した。
これらのペプチドのHLA−A2402への結合親和性の測定は、文献(J.Immunol.164:2565,2000)に記載の方法と同様に実施した。MHCクラスI分子を発現していないマウスリンパ腫由来の細胞株RMA−SにHLA−A2402とH−2KのキメラMHCの遺伝子を安定的に導入した細胞株RMA−S−A2402細胞(J.Immunol.,164,2565−2574(2000))を26℃で18時間培養した。RMA−S−A2402細胞をPBS溶液で洗浄後、3μL/mLのヒトβ−ミクログロブリンと100μL/mLの各種ペプチドを含有する培養液OPTI−MEM(Invitrogen社)に懸濁して26℃で3時間、37℃で3時間培養した。この細胞をPBS溶液で洗浄後、抗HLA−A24抗体により4℃で30分間処理した。さらに細胞をPBS溶液で洗浄後、PE標識した抗マウスIgG抗体により4℃で30分間処理した。細胞を洗浄後、1%ホルマリンを含むPBS溶液1mLに懸濁して固定した。細胞はフローサイトメーター装置FACScan(BDバイオサイエンス社)で測定し、平均蛍光強度によりペプチドの結合親和性を求めた。上記の8種類のペプチドの結合親和性を測定した結果を図1に示す。
文献(J.Immunol.158:3325,1997)でHLA−A2402に結合することが報告されているEBウイルス由来のペプチドは強い結合能を示した。試験した8種類のペプチドの中で、ペプチド5、6、7および8はHLA−A2402に良好に結合することが示された。特にペプチド7は陽性コントロール(EBV)より高い結合性を示した。
[実施例2]
リビン由来ペプチドによるヒト末梢血単核球からのCTL誘導
実施例1でHLA−A2402への強い結合能が認められたペプチド7(配列番号:8)について、文献(J.Immunol.169:1611,2002)と同様の方法により、末梢血単核球からのCTL誘導を行った。HLA−A24陽性の肺癌患者からインフォームドコンセントを得て末梢血を採血し、比重遠心法により単核球を分離し、AIM−V培養液(Invitrogen社)を用いて培養した。24時間後、非接着性の細胞を回収して、100U/mLのIL−2を含んだAIM−Vを用いて培養した。抗原提示用細胞調製のため、接着性の細胞は、1000U/mLのIL−4と1000U/mLのGM−CSFを含むAIM−V培養液で5日間培養した後、10μMのペプチド7を添加して1日間培養し、さらに10ng/mLのTNFと1000U/mLのIFN−αを加えて培養した。非接着性の細胞からCD8陽性T細胞を抗CD8抗体結合マグネチックビーズで分離し、上記のペプチドをパルスした抗原提示用細胞ととも培養した。
CD8陽性T細胞を分離した残りの非接着性細胞は、1μg/mLのPHAと100U/mLのIL−2を含むAIM−V培地で3日間培養した後、PHAを除いた培地で4日間培養し、2回目、3回目のペプチド刺激用の抗原提示細胞としてストックした。ペプチド刺激をしたCD8陽性T細胞に対しては、1回目のペプチド刺激から7日後と14日後に、ストックの抗原提示細胞にペプチド7を2時間パルスし、5000radでX線照射した細胞を添加して2回目、3回目のペプチド刺激を行った。3回目の刺激から1週間後のT細胞の細胞傷害活性を51Crリリースアッセイにより測定した。標的細胞としてリビン陽性およびHLA−A2402陰性であるLNY−1細胞(肺癌由来細胞株)、LNY−1細胞にHLA−A2402遺伝子を安定的に導入したLNY−1A24細胞、NK細胞に対して感受性を示すリビン陰性およびHLA−A2402陰性の慢性骨髄性白血病由来細胞株K562(ATCC株番号CCL−243)を用いた。標的細胞は、100μCiの51Crで1時間ラベルした。5×10個の標的細胞に対して、10倍のエフェクター細胞(ペプチド刺激したT細胞)を添加し、4時間培養して細胞傷害活性を測定した。癌患者検体2例の結果を図2および図3に示す。
ペプチド7で刺激したT細胞は、リビン陽性およびHLA−A2402陽性のLNY−1A24細胞を傷害したが、リビン陽性ではあるがHLA−A2402陰性のLNY−1細胞やリビン陰性およびHLA−A2402陰性のK562は傷害しなかった。リビン由来のペプチド7により誘導されたCTLは、HLA−A2402拘束性にリビン発現細胞を特異的に傷害したことから、ペプチド7はHLA−A24結合性の癌抗原ペプチドであることが示された。
【産業上の利用可能性】
本発明により、リビン由来のHLA−A24結合性癌抗原ペプチド、当該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、これらペプチドやポリヌクレオチドを含むCTLの誘導剤などが提供される。本発明のCTLの誘導剤は癌ワクチンとして有用である。本発明の癌ワクチンは、HLA−A24陽性の多くの癌患者に適用可能である。
【配列表フリーテキスト】
配列番号:2に記載のアミノ酸配列は合成ペプチドである。
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配列番号:61に記載のアミノ酸配列は合成ペプチドである。
配列番号:62に記載のアミノ酸配列は合成ペプチドである。
配列番号:63に記載のアミノ酸配列の第2番目のXaaアミノ酸残基はフェニルアラニン残基(Phe)、チロシン残基(Tyr)、メチオニン残基(Met)またはトリプトファン残基(Trp)であり、第10番目のXaaアミノ酸残基はフェニルアラニン残基(Phe)、ロイシン残基(Leu)、イソロイシン残基(Ile)、トリプトファン残基(Trp)またはメチオニン残基(Met)である。
【配列表】























【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1に記載のリビンのアミノ酸配列における連続する8〜11アミノ酸からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合して細胞傷害性T細胞(CTL)により認識されるペプチド。
【請求項2】
配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する9〜11アミノ酸からなるペプチドであって、かつHLA−A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチド。
【請求項5】
配列番号:2〜配列番号:59のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する、請求項4記載のペプチド。
【請求項6】
配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位および/またはC末端のアミノ酸残基が、
第2位:チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、
C末端:フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、
の中から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含有する、請求項5記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載のペプチドを含有するエピトープペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載のペプチドのうちシステイン残基を含有するペプチドの単量体がジスルフィド結合により結合してなる、二量化ペプチド。
【請求項9】
配列番号:7〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチド単量体がジスルフィド結合により結合してなる、請求項8記載の二量化ペプチド。
【請求項10】
請求項1〜7いずれか記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター。
【請求項12】
請求項11記載の発現ベクターを含有する細胞。
【請求項13】
請求項12記載の細胞を、ペプチドの発現可能な条件下で培養することを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載のペプチドの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜9いずれか記載のペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項15】
請求項1〜9いずれか記載のペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞。
【請求項16】
配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている、請求項15記載の抗原提示細胞。
【請求項17】
請求項1〜9いずれか記載のペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識するCTL。
【請求項18】
配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識する、請求項17記載のCTL。
【請求項19】
請求項1〜9いずれか記載のペプチド、請求項11記載の発現ベクター、請求項12記載の細胞、請求項15または16記載の抗原提示細胞、あるいは請求項17または18記載のCTLと、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物。
【請求項20】
CTLの誘導剤として使用される、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
癌ワクチンとして使用される、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項14記載の抗体を含有する癌の診断薬。
【請求項23】
請求項1〜9いずれか記載のペプチドとHLA−A24抗原とを含有するHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマー。
【請求項24】
配列番号:6〜配列番号:9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するペプチドとHLA−A24抗原とを含有する、請求項23記載のHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマー。
【請求項25】
請求項23または24記載のHLAモノマー、HLAダイマー、HLAテトラマーまたはHLAペンタマーを成分として含有する、リビン由来のHLA−A24抗原結合性癌抗原ペプチド特異的なCTLの検出用試薬。
【請求項26】
癌ワクチンの効果の診断のために用いられる、請求項25記載の試薬。

【国際公開番号】WO2005/005631
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511574(P2005−511574)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010008
【国際出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(502351224)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】