説明

リファキシミン粉体、その調製方法、及び長期持続効果を得るために有用な前記リファキシミン含有徐放性組成物

本発明は、リファキシミン粉体及びその調製方法を記載する。本発明はまた、前記リファキシミン、薬学的に許容可能な賦形剤及び必要に応じて他の成分を含む固体形態の医薬組成物に関する。本発明による組成物は、経口投与に適しており、リファキシミンを徐放させ、それにより患者が長期持続効果を得られることによって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リファキシミン粉体、その調製方法、前記リファキシミンを含む固体組成物(固形組成物)、及び薬剤としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(最新技術)
リファキシミン(INN;メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8304、CAS no. 80621-81-4(非特許文献1)参照)、IUPAC命名法(2S,16Z,18E,20S,21S,22R、23R,24R,25S,26S,27S,28E)−5,6,21,23,25 ペンタヒドロキシ−27−メトキシ−2,4,11,16,20,22,24,26−オクタメチル−2,7−(エポキシペンタデカ−(1,11,13)トリエンイミノ)ベンゾフロ(4,5−e)ピリド(1,2,−a)ベンズイミダゾール−1,15(2H)−ジオン,25−アセテート)は、リファマイシン系の抗生物質に属する半合成抗生物質である。より正確には、リファキシミンは、イタリア国特許IT 1154655(特許文献1)に記載のピリド−イミダゾリファマイシンであり、一方、欧州特許EP 0161534(特許文献2)には、リファマイシンO(メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8301(非特許文献2))を出発物質としてリファキシミンを製造する方法が開示されている。
【0003】
米国特許第7,045,620号(特許文献3)、米国公開特許第2008/0262220号(特許文献4)、米国特許第7,612,199号(特許文献5)、米国公開特許第2009/0130201号(特許文献6)及びCryst. Eng. Comm., 2008, 10 1074-1081(2008)(非特許文献3)には、リファキシミンの新規な形態が開示されている。
【0004】
リファキシミンは、固体形態に(特に、結晶形態又は無定形態に)依存する全身性吸着(吸収)によって特徴付けられ、例えば、胃腸管に局在化して感染性腸疾患、下痢、過敏性腸症候群(IBS)、小腸細菌過剰増殖(SIBO)、クローン病(CD)、膵不全、腸炎、線維筋肉痛などを引き起こす細菌に対して抗菌性を発揮することで知られている。
【0005】
例えば、ネオマイシン、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、ペニシリン、アンピシリン、カナマイシン、リファマイシン、バンコマイシン及びリファキシミンなどの抗生物質又は抗生物質の組み合わせは、細菌性腸感染に対す治療において使用される。これらのうち、全身性吸着(吸収)の低い抗生物質、例えば、リファキシミンのいくつかの結晶形などが好ましい。全身性吸着(吸収)の低い抗生物質は、典型的には、公称濃度(nominal concentration)の10%未満、特に0.05%〜1%の吸収性を有する。
【0006】
腸器官は、一般的に腸疾患と称され、文献において「炎症性腸疾患(intestinal bowel disease)」(IBD)として知られる様々な炎症性病状を受け、これらのうち、特別に関連性があるものには、IBS及びCDがある。
【0007】
IBSは、西洋諸国の成人人口の10〜20%が罹っている腸疾患である。IBSは、腹痛、腫脹、鼓腸、尿意促迫感又は残便感などの症状の慢性的な再発によって特徴付けられる疾患であり、腸活動の変化に関連している。
【0008】
CDは、口から肛門までの消化管の様々な部位(levels)を冒す慢性炎症性疾患である。CDは、主に、回腸と呼ばれる小腸の後半部、結腸又はそれら両方の領域に局在化するので、限局性腸炎、結腸炎(大腸炎)又は回結腸炎とも名付けられるが、結腸粘膜及び肛門領域にのみ局在化する場合もある。冒された腸管は、腸壁全体において炎症、腫脹及び潰瘍形成を示し、しばしば狭窄及び出血性潰瘍を引き起こすが、疾患領域間に介在する組織は正常に見える。種々の重症度の炎症的発現期間と緩解期間とが交互に起こり、ここでの主な症状は、下痢、腹痛及び体重減少に代表され、しばしば亀裂又は直腸周囲フィステルが伴い、外科手術を要する場合が多い。
【0009】
一般的に言えば、炎症性疾患の原因の追究には未ださらなる研究が必要であるが、いくつかの遺伝性、炎症性、感染性、栄養性、免疫粘膜性及び神経免疫粘膜性因子が見出されている。しかし、3つの理論:慢性的な感染性刺激の存在、粘膜バリアの欠陥、及び自己認識抗原に対する膜免疫系の応答の変化、が最も説明がつく。
【0010】
腸炎性病状の原因病理、特にクローン病における腸細菌フローラの役割は、一連の明白な兆候により認められ:ジャノウィッツ H.D.(Janowitz H. D.)ら、Inflamm. Bowel Dis. 1998, 4, 29-39(非特許文献4)に記載のように、この疾患は、細菌濃度の高い領域においてより頻繁に局在化し;ラトガーツ P.(Rutgeerts P.)ら、Lancet, 1991, 338, 771-774(非特許文献5)に記載のように、糞便流の偏りが、穿溝の回復時に再び現れる内視鏡的損傷の軽減をもたらし;ブラムバーグ R.S.(Blumberg R. S.)ら、Curr. Opin. Immunol, 1999, 11(6), 648-56(非特許文献6)に記載のように、IL−10遺伝子又は他の遺伝子についてのノックアウトマウスの実験モデルにおいて、「細菌を含まない」条件が維持される場合に自発大腸炎が発症せず;ハーパー P.H.(Harper P. H.)ら、Gut, 1985, 26(3), 279-84(非特許文献7)に記載のように、糞便物質との接触の結果として腸粘膜の炎症が発症し;キャメロン J.L.(Cameron J. L.)ら、Ann. Surg., 1992, 215, 546-52(非特許文献8)に記載のように、回結腸吻合からなる「治癒的」外科治療を受けた患者の場合、抗生物質治療が内視鏡的及び臨床的再発の両方を遅延させ;瘻孔又は膿瘍嚢の存在が、さらに、疾患発症への細菌の寄与を指摘する。
【0011】
薬物療法において、炎症を低減又は制御できる薬剤(コルチゾン類、サラゾピリン、メサラジン、免疫抑制剤、特定の化学療法薬、抗生物質、及び腫瘍壊死因子(TNF)の作用又は白血球接着の作用のタンパク質阻害剤など)が、広く使用される。
【0012】
炎症性腸疾患の急性期の治療中、非経口栄養法などのより強力な治療がしばしば必要であり、それによりタンパク質、液及び塩の損失を取り戻し、とりわけ腸を休息させて潰瘍の瘢痕形成を容易にしている。
【0013】
この治療の目的は、症状の再発頻度を低下させること、及び急性症状が現れたときにその症状の重さを低減させることにある。
【0014】
しかし、最近の治療では、約50〜70%のケースにおいて急性エピソードが応答する(又はみられる)が、患者の80%において再発する。
【0015】
抗生物質は、主に、腸内細菌の増殖を減少させ、それにより細菌増殖の結果として持続される炎症性状態を低減させるため;疾患(例えば、下痢、腸疼痛及び鼓腸など)の急性期の症状を低下させるため;並びに敗血症の合併症(膿瘍、瘻孔及び中毒状態など)を防止及び治癒させるために使用される。
【0016】
最も頻繁に使用される抗生物質は、全身的に吸収されるもの、例えば、メトロニダゾール(一部の寄生生物及び多くの嫌気性細菌に対して活性である)及びシプロフロキサシン(大腸菌及び好気性腸内細菌のような細菌に対して活性である)である。
【0017】
メトロニダゾールは、サンターランド,L.(Sunterland, L.)、Gut,1991 32, 1071-5(非特許文献9)に記載のように、10〜20mg/kg/日の用量で4か月間使用されており、シプロフロキサシンは、コロンベル J.F.(Colombel J. F.)、Am. J. Gastoenterol, 1999, 94, 674-8(非特許文献10)に記載のように、1000mg/日の用量で6週間使用されており、一方、プランテラ C.(Prantera C.)らは、Am. J. Gastoenterol, 1996, 91, 328-32(非特許文献11)において、メトロニダゾールを1000mg/日の用量及びシプロフロキサシンを1000mg/日の用量で12週間用いる2つの抗生物質の組み合わせを採用した。
【0018】
残念なことに、これらの抗生物質の高い全身性バイオアベイラビリティは、長期治療において現れる高い副作用発生率の原因となり、その使用に悪影響を及ぼす。
【0019】
炎症性腸疾患を有効に治療するために用いられる抗生物質に基づく医薬品は、以下の特徴の1又は複数を有することが好ましい:腸の位置での活性、腸管腔における細菌レベルの制御、微生物に対する広いスペクトルの作用(例えば、腸グラム陽性、グラム陰性、好気性及び嫌気性成分)、重篤な副作用のない長期治療の可能性、及び高投与量を必要とする可能性があってもコンプライアンスを円滑にする投与の容易性。
【0020】
これらの特徴のいくつかを有する抗生物質はリファキシミンであり、リファキシミンは、好気性及び嫌気性細菌を含む多くのグラム陽性及びグラム陰性細菌に対する広いスペクトルの作用によって特徴付けられる。健康なボランティアでのバイオアベイラビリティ研究は、経口投与した場合に、リファキシミンの1%未満が吸収され、腸管腔及び糞便中で濃縮することを示している。このことは、リッツェロ F.(Rizzello F.)ら、Eur. J. Clin. Pharmacol. (1998) 54, 91-93(非特許文献12)によって、慢性腸疾患の患者で確認されている。
【0021】
リファキシミンの低い全身性吸収は、副作用及び有害事象の発生率、並びに薬理学的相互作用の望ましくない危険を低下させる。従って、リファキシミンは、炎症性慢性腸疾患の治療において有用であると考えられる。
【0022】
現在、リファキシミンは認可されており、認可されているものは、病因が、グラム陽性及びグラム陰性細菌により被る腸急性及び慢性感染に部分的又は全体的に起因し、下痢症候群、夏季下痢エピソードのような変化した腸微生物フローラ下痢、旅行者下痢症、腸炎を伴う病状の治療のため、胃腸手術における感染性合併症の手術前及び手術後予防のため、及び高アンモニア血症治療における補助剤としてである。
【0023】
リファキシミンは、現在、懸濁剤のための調製済み製剤(使用が便利な製剤)において錠剤及びカプセル剤として、又は局所感染の治療のための軟膏剤として、又は眼感染に対する洗眼剤として販売されている。
【0024】
臨床的治療での抗生物質の使用は、抗生物質の投与量と投与頻度の両方のように、投薬の厳しい制御によって管理される。一般的に言えば、抗生物質治療の目標は、3〜7日にわたって治療的に重要な閾値よりも決して低くならない抗生物質の血漿中濃度を与えることである。
【0025】
通常、これらの閾値は、微生物阻害濃度(MIC)の測定に基づいて確立されており、MICは、培養温度約35℃で約18〜24時間にわたって微生物剤の可視的増殖を完全に阻害するための抗生物質の最少濃度を表す。MIC50値及びMIC90値としている文献もあり、これらの値は、それぞれ、微生物分離菌の50%及び90%の増殖を阻害できる最少濃度として規定される。
【0026】
抗生物質の使用に関連して起こり得る有害事象に関して、使用に際して抗生物質に対する細菌抵抗性の問題がよく知られている。病院環境においても、抗生物質の使用がしばしば抗生物質抵抗性の頻度を増加させることと関連しており、ギレモット D.(Guillemot D.)ら、Current Opinion in Microbiology, 1999, 2:494-498(非特許文献13)に記載のように、抗生物質の消費の減少に伴い、特定の薬物に対する抵抗性が減少する。
【0027】
抗生物質の投薬を選択する目的は、病原微生物の根絶を保証するために、これらの血漿中濃度をいくつかの閾値よりも決して低くならないように維持することである。実際に、抗生物質の血漿中濃度が細菌増殖を阻害できる濃度よりも低くなったり、又は抗生物質が存在しない治療期間があると、病原体の根絶は保証されず、さらに劇的な影響を伴って、抗生物質に対して抵抗性の細菌の生成を助長する。MICよりも低い濃度の存在下、又は抗生物質が存在しない場合、細菌は実際に再生及び順応でき、それにより抗生物質作用が無効になる。
【0028】
リファキシミンの場合、胃腸管内、粘膜表面又は腸粘膜上に存在する病原体に対して作用する局所作用剤であることに注意されなければならない。
【0029】
リファキシミンの作用機序の一つは、腸の細菌病原体の毒性因子を変化させることである。この機序はリファキシミンの阻害濃度より上で起こるが、最も重要なのは、MIC値よりも32倍低いような阻害濃度未満でも起こることである。デビア(Debbia)ら、J. Chemother. 20 (2), 186-94, 2008(非特許文献14)によると、この致死効果は、主に、抗生物質が細菌と接触する時間に依存し、抗生物質濃度に影響されないようであると結論付けられている。
【0030】
作用機序におけるリファキシミンと細菌との接触の関連性は、チアン Z.D.(Jiang Z. D.)ら、Int. J. Antimicrob. Agents 35(3), 278-81, 2010(非特許文献15)によっても支持されており、著者らは、リファキシミンがMIC値よりも8倍低い濃度でさえ、少なくとも24時間このような濃度でリファキシミンと病原体とを連続的に接触させる条件において、腸管毒素原性大腸菌分離菌の毒性の変化において有効であることを示している。逆に、この接触が8時間だけ維持される場合、病原体の毒性はなくならない。
【0031】
チアン Z.D.によって報告された証拠は、腸管中の細菌剤が疾患の原因である病状を治療する療法の間、小腸及び大腸の両方においてリファキシミンを連続的に存在させることの重要性を強調する。
【0032】
リファキシミンと病原体との効果的な接触時間の重要性と、これらの病原体が腸内に局在化するという事実とを組み合わせると、腸内にリファキシミンをより長い時間滞留させることのできる薬物がより効果的であると推論できる。
【0033】
従って、この点において、腸管内でのリファキシミンと病原細菌との接触時間を測定することが重要である。
【0034】
しかし、この情報はほとんど得ることができない。実際に、リファキシミンは無視できるほどしか水に可溶でないので、いかなるin-vitroモデルも複雑な腸環境を正確に再現しない。逆に、ヒトに対するin-vivo研究は、放射性物質の使用に伴う処方上の問題と関連して、放射性同位体でマークされれた物を使用することが予想されるべきである。
【0035】
しかし、リファキシミンが腸に滞留する時間に関する有用な情報は、ヒトでのリファキシミンの薬物動態学的(PK)プロファイルに基づいて推測することによって間接的に得ることができ、このプロファイルにおいて、生体液(血液、血漿、血清及び/又は尿)中の活性成分又は活性部位の濃度は、時間の関数として測定される。一般的に言えば、経口投与された化合物のPKプロファイルは、主な吸収部位である小腸での化合物の一時的な量に依存していると考えられなければならないと述べることができる。小腸での化合物量の増大又は長期滞留時間は、ともに全身性吸収を有利にする因子である。
【0036】
化合物は、血中及び小腸内に必ずしも同時に存在するものではない。なぜなら、化合物は、腸から血液に通過するのに所定の時間、すなわち、化合物の特徴及び被験体の生理学的又は病理学的特徴の両方に依存する時間を必要とするからである。健康な被験体において、この時間は、通常約1時間である。
【0037】
化合物の全身濃度と小腸でのその利用性との相関は周知であり、薬学的技術によって大いに利用されている。実際に、吸収を有利にするために、小腸内の化合物の存在を増大させるための対策がとられている。逆に、全身濃度に対抗するために、例えば、結腸放出技術を用いて、小腸内の化合物の放出を妨げる対策がとられている。
【0038】
結論として、経口投与された化合物の全身性バイオアベイラビリティもまた、腸内の活性成分の放出及び持続時間に影響を及ぼし得る薬物のすべての特徴[活性成分の特徴、活性成分を含む薬物組成物、及び投与される薬物の形態(例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、胃抵抗性製剤又は徐放(放出制御)性製剤)など]に依存する。
【0039】
また、薬物調製方法は、特別な関連性を有する。実際に、調製方法によって、薬物の溶解プロファイル及び分解(崩壊)プロファイルの両方を調節でき、それによって活性成分の利用可能性をより大きくしたり、より小さくしたりできる。
【0040】
これらの発想は、リファキシミンに対して完全に(十分に)適用できる。従って、所定の時間での血漿中に検出可能なリファキシミン濃度は、より早い時間において小腸内に存在するリファキシミン量に対応するに相違ない。腸内のリファキシミン量とそれに続く血漿中濃度との相関は、リファキシミンの吸収と小腸内への通過時間とに依存する。
【0041】
従って、所定の時間での測定されるリファキシミンの最大血漿中濃度は、小腸内に存在するリファキシミンの最大量に対応すると述べることができる。明らかに、所定の時間にリファキシミンが血漿中に存在しないことは、リファキシミンが小腸内に存在しなかった時間があったことを示す。
【0042】
ヒトでの400mg錠剤の経口投与後のリファキシミンのPKデータは、デコンブ J.J.(Descombe J. J.)ら、Int. J. Clin. Pharmacol. Res., 14 (2), 51-56, (1994)(非特許文献16)に報告されている。特に、この文献は、表IIに、ほとんどの場合(18名の被験体中16名)において、投与の4時間後に血液中に検出可能な量のリファキシミンがなく、すべての場合において、投与の8時間後に検出可能な量がないことを報告している。
【0043】
商標XIFAXAN(登録商標)として米国で商業化されているリファキシミン含有製品は、「旅行者下痢症」の治療のために8時間ごとに200mg錠剤を投与することを見越している(又は投与することにより治療する)ので、前述のことから、認可された投与スケジュールは、小腸内のリファキシミンの一定の存在を保証せず、それゆえ最適な抗菌性を保証しないと推論される。
【0044】
要するに、小腸内での滞留時間を延長しつつリファキシミンを放出できるリファキシミン含有医薬組成物は、リファキシミンの治療効率を改善すると考えられることになる。
【0045】
従って、リファキシミンを一定量で放出し、それにより血漿中に長期間一定のレベルでこの抗生物質を維持できる改善された組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】イタリア国特許IT 1154655
【特許文献2】欧州特許EP 0161534
【特許文献3】米国特許第7,045,620号
【特許文献4】米国公開特許第2008/0262220号
【特許文献5】米国特許第7,612,199号
【特許文献6】米国公開特許第2009/0130201号
【非特許文献】
【0047】
【非特許文献1】メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8304、CAS no. 80621-81-4
【非特許文献2】メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8301
【非特許文献3】Cryst. Eng.Comm., 2008, 10 1074-1081(2008)
【非特許文献4】Inflamm. Bowel Dis. 1998, 4, 29-39
【非特許文献5】Lancet, 1991, 338, 771-774
【非特許文献6】Curr. Opin. Immunol, 1999, 11(6), 648-56
【非特許文献7】Gut, 1985, 26(3), 279-84
【非特許文献8】Ann. Surg., 1992, 215, 546-52
【非特許文献9】Gut,1991 32, 1071-5
【非特許文献10】Am. J. Gastoenterol, 1999, 94, 674-8
【非特許文献11】Am. J. Gastoenterol, 1996, 91, 328-32
【非特許文献12】Eur. J. Clin. Pharmacol. (1998) 54, 91-93
【非特許文献13】Current Opinion in Microbiology, 1999, 2:494-498
【非特許文献14】J. Chemother. 20 (2), 186-94, 2008
【非特許文献15】Int. J. Antimicrob. Agents 35(3), 278-81, 2010
【非特許文献16】Int. J. Clin. Pharmacol. Res., 14 (2), 51-56, (1994)
【発明の概要】
【0048】
(発明の簡単な説明)
驚くべきことに、噴霧乾燥法によって得られた固体粉末形態のリファキシミン並びに薬学的に許容可能な賦形剤及び必要に応じて他の成分を含む組成物が、患者にリファキシミンの徐放(又は放出制御、a controlled release)及び長期持続的抗菌作用を提供することを見出した。
【0049】
本発明の他の態様は、噴霧乾燥法により得られたリファキシミン粉体である。このリファキシミン粉体は、添付の特許請求の範囲に規定されるように、特定の粒度分布、間隙率(多孔性)、及び表面積の値によって特徴付けられる。
【0050】
本発明の他の態様は、上記で規定されたリファキシミンを調製するために使用される噴霧乾燥法であり、このリファキシミンは、結晶性もしくは無定形(アモルファス又は非晶性)リファキシミン又はそれらの混合物の溶液を使用して得られる。
【0051】
本発明の他の態様は、薬剤として使用するために噴霧乾燥によって得られたリファキシミンである。
【0052】
本発明の他の態様は、噴霧乾燥によるリファキシミンを含む組成物である。
【0053】
本発明の他の態様は、炎症性疾患及び細菌感染のような症状を治療するための、噴霧乾燥によるリファキシミンを含む組成物である。
【0054】
本発明の他の態様は、細菌感染のような症状を予防するための、噴霧乾燥によるリファキシミンを含む組成物、及びヒト及び動物における治療方法である。
【0055】
本発明の他の態様は、他の活性成分及び/又は他の形態のリファキシミンを含む組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1:V7被験体における実施例3のリファキシミンの200mg錠剤及びNormix(登録商標)の反復(multiple)投与後の血漿中濃度のプロファイル。
【図2】図2:V11被験体における実施例3のリファキシミンの200mg錠剤及びNormix(登録商標)の反復(multiple)投与後の血漿中濃度のプロファイル。
【図3】図3:噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンの粉末X線回折図。
【図4】図4:噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンの13C−NMRスペクトル。
【図5】図5:噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンのFT−IRスペクトル。
【図6】図6:ミリング(粉砕)法によって得られたリファキシミンのX線回折スペクトル。
【図7】図7:噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンのPSD曲線。
【図8】図8:ミリング法によって得られたリファキシミンのPSD曲線。
【図9】図9:噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンのSEM顕微鏡画像。
【図10】図10:ミリング法によって得られたリファキシミンのSEM顕微鏡画像。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(発明の詳細な説明)
本発明は、リファキシミン粉体、その調製方法、このリファキシミンを含む医薬組成物又は製剤(医薬品)、及び腸疾患(例えば、炎症性腸疾患、旅行者下痢症、IBS、SIBO、CD、高アンモニア血症療法、肝性脳症、潰瘍性大腸炎、腸炎、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、憩室疾患、線維筋肉痛、全身性エリテマトーデス及び/又は回腸嚢炎など)を治療するためのこれらの組成物及び/又は製剤の使用に関する。
【0058】
リファキシミンは、下記式によって表される化合物である。
【0059】
【化1】

【0060】
本発明はまた、4−デオキシ−4’−メチル−ピリド[1’,2’−1,2]イミダゾ[5,4−c]リファマイシンSV及び4−デオキシ−ピリド[1’,2’:1,2]イミダゾ[5,4−c]リファマイシンSVを含む組成物に関する。
【0061】
リファキシミンは、腸感染の治療のため、感染による下痢の治療のため、術後感染の予防のため、高アンモニア血症及び肝性脳症の治療のために、数か国で認可され商業化されている。特に、米国、英国、デンマーク及びドイツにおいて、リファキシミンは、200mg錠剤を1日3回、連続して3日間投与することを見越した治療スケジュールによって、旅行者下痢症と呼ばれる腸疾患を治療するために認可されている。
【0062】
腸疾患(BD)に罹った被験体、活性又は急性疾患又は症候群を患う被験体、及び1又は複数の腸疾患後の緩解にある被験体は、リファキシミン治療によって恩恵を受けることができる。用語「腸疾患」には、例えば、過敏性腸症候群(IBS)、制御できない(uncontrolled)下痢関連過敏性腸症候群(dIBS)、クローン病、旅行者下痢症、潰瘍性大腸炎、腸炎、小腸細菌過剰増殖、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、憩室疾患、線維筋肉痛、全身性エリテマトーデス又は肝性脳症が含まれる。
【0063】
特に、この治療によって恩恵を受けることができる被験体は、腸疾患の種類に罹っているか又は罹りやすい被験体である。
【0064】
用語「リファキシミン」は、リファキシミンの溶媒和物並びに結晶形及び無定形(アモルファス又は非晶形)を示す。これらのリファキシミンの多形形態は、米国特許第7,045,620号、米国公開特許第2008/0262220号、米国特許第7,612,199号、米国公開特許第2009/0130201号、Cryst. Eng.Comm., 2008,10 1074-1081に記載されている。
【0065】
本明細書において、用語「多形性/多形」は、ある種の化合物の特性として水和状態における化合物の様々な結晶形、並びに複合体(complexes)、塩、溶媒和物及びアモルファスを示す。
【0066】
単一の化合物は、様々な多形で存在でき、これらの多形は、同じ分子式を有しているにも関わらず、異なる物性(溶解度、溶融温度、吸湿性、粒径、密度、X線回折スペクトルなど)を有する。また、各多形の溶解度は多様であり得るので、そのバイオアベイラビリティもまた変化する。このことは、薬学的多形を同定する理由は、予測可能な溶解度プロファイルを有する薬学的形態を得ることに関連している。化合物の多形は、X線回折分光法によって、及びIR分光法のような他の方法を用いて決定できる。
【0067】
本発明の目的は、溶解度を改善させるために特別に調製されたリファキシミン固形製剤を含む医薬組成物、前記リファキシミン製剤を得るための方法、リファキシミンの長期放出を保証するのに適した前記リファキシミン製剤を含む医薬組成物、これらの製剤のための方法(製剤の製法)、及び細菌感染のような病状における使用、及び治療方法に代表される。
【0068】
本発明によるリファキシミン粉体の特性と前記リファキシミンを含む医薬組成物の特性との組み合わせは、この組成物が、特に錠剤の形態において、リファキシミンを予測可能でかつ制御して放出(徐放)することを確実にする。有利には、本発明による固体組成物は、治療の間、血漿中で有効なリファキシミン濃度を維持する。
【0069】
前記組成物は、リファキシミンを、単独で、又はin vivo吸収を調節するためリファキシミンの他の多形との混合物で含む。
【0070】
本発明の他の態様は、医薬組成物に含まれるリファキシミン固形製剤に代表される。
【0071】
好ましい態様において、経口使用のための組成物は、リファキシミン量20〜800mgを含む錠剤又はカプセル剤の形態である。このように医薬組成物におけるリファキシミンの量は、被験体に中毒作用を生じさせることなく、患者に所望の治療的応答を達成するのに適切な量が得られるように、変更できる。
【0072】
リファキシミンについて、典型的な用量範囲は、毒性又は他の副作用を生じさせることなく、1日あたり25〜3000mgである。医薬組成物中のリファキシミンは、患者の体重1kgあたり約1mg〜約200mgの濃度で投与される。
【0073】
本発明の組成物は、感染部位において抗菌性がより長い時間持続するので、高い治療の有効性を与える。
【0074】
本発明の組成物(composition object)は、リファキシミンのようなリファマイシン類(class)に属する抗生物質で治療可能な腸疾患又は他の疾患に罹ったヒト又は動物被験体の治療、又は前記抗生物質の投与によって恩恵を受けることができる被験体、もしくは腸疾患を発症する危険のある被験体、もしくは腸疾患からの緩解にある被験体、もしくは腸疾患を再発する被験体、例えば、免疫抑制に罹った被験体、細菌感染に曝露した被験体、腸症候群に慣れた被験体、肝障害を患う被験体、HEの過去のエピソードを有する被験体の治療において、有用である。
【0075】
本発明の他の態様は、腸関連障害を治療、予防又は緩和する方法に代表され、この方法は、治療を必要とする被験体にリファキシミンの固体分散組成物の有効量を投与する工程を含む。腸関連障害としては、過敏性腸症候群、下痢、細菌関連下痢、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢、旅行者下痢症、小腸細菌過剰増殖、クローン病、憩室疾患、慢性膵炎、膵不全、腸炎、大腸炎、肝性脳症の1又は複数が挙げられる。
【0076】
特定の腸障害のための治療の長さは、その障害(又は疾患)にある程度依存する。例えば、旅行者下痢症は12〜約72時間の治療期間を必要とするに過ぎないであろうが、クローン病は約2日〜3か月の治療期間を必要とするであろう。
【0077】
医薬組成物中のリファキシミンは、腸感染の予防的治療のために有用である。
【0078】
本発明の方法によって得られたリファキシミンは、限定されることなく、膣感染又は局所感染などの医薬組成物の調製のために使用できる。
【0079】
本発明の医薬組成物は、胃性消化不良を治療するために用いることができ、胃性消化不良としては、胃炎、胃十二指腸炎、前庭部胃炎、前庭部びらん、びらん性十二指腸炎及び消化性潰瘍が挙げられる。
【0080】
本発明の特定の態様は、薬学的に許容可能な賦形剤を含み、噴霧乾燥によって得られたリファキシミン含有錠剤の形態の医薬組成物に代表される。
【0081】
薬学的賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、滑沢剤(潤滑剤)、崩壊剤、流動促進剤(glidant)、着色料(着色剤)、矯味剤又は甘味剤の1又は複数を含むことができる。組成物は、選択されたコーティング錠剤(被覆錠剤)及び素錠剤(非被覆錠剤)、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ(lozenge)、ウエハシート、ペレット並びに密封小包中の散剤のために処方されてもよい。固体組成物は限定されず、噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンは、例えば、局所使用、例えば、噴霧乾燥によるリファキシミン製剤を所定量含む軟膏剤、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤及びローション剤、水性又は非水性乳剤中の懸濁剤、エリキシル剤又はシロップのために処方されてもよい。
【0082】
本発明によると、リファキシミンを、薬学的に許容可能な組成物を用いて被験体に投与して、リファキシミンを被験体に長期間放出させる。
【0083】
本発明によるリファキシミン粉体は実施例1に記載され、本発明のリファキシミンは、結晶形もしくは無定形(アモルファス形)リファキシミン又はその混合物を出発材料として、噴霧乾燥技術を用いて調製される。前記方法により、下記の特徴、特に無定形の特徴を有する固体粉末を得ることができる。
【0084】
出発材料となる結晶形もしくは無定形のリファキシミン又はこれらの混合物を、リファキシミン1kgあたり1〜40リットルの量の有機溶媒とともに、あらかじめ加熱された流動床装置(例えば、18インチのワースター(Wurster)システム及び噴霧ノズルなどを備えたGlatt GPCG 60)などの噴霧乾燥装置に仕込む。次いで、得られた懸濁液を、リファキシミンが完全に溶解するまで攪拌し続ける。
【0085】
任意の適切な有機溶媒が使用できる。例えば、C〜Cアルコールが使用でき、エタノール又はメタノールが好ましい。
【0086】
次いで、リファキシミンを含む溶液を、温風気流の流通下、0.5〜2.5barの圧力で流動床装置内に噴霧する。次いで、固体リファキシミンを、重量が一定に達するまで20℃〜120℃、好ましくは35℃〜110℃の温度で乾燥し、形成した粒子を、重量が一定に達するまで20℃〜120℃、好ましくは35℃〜110℃の温度範囲で乾燥する。
【0087】
乾燥後に得られた固体粉末を、X線回折分光法によって分析する。得られたX線回折図は、以下の分析的キャラクタリゼーションに報告されるように、結晶性を特徴付けるピークを示さない。
【0088】
図3は噴霧乾燥によって得られたリファキシミンのX線回折図を示し、図4は13C−NMRスペクトルを示し、図5は、FT−IRスペクトルを示す。得られた粉体形態のリファキシミンは、50%より高い湿度で、30℃〜40℃の温度範囲において3か月後に安定である。このことは、この活性成分が、その使用まで調製及び保存できることを示す。
【0089】
実質的に無定形のリファキシミンの固体粉末はミリング(粉砕)法によっても調製でき、ミリングは手動で又は自動で実施できる。
【0090】
噴霧乾燥によって得られた無定形の特徴を有するリファキシミン固体粉末を、ミリングによって得られたリファキシミン固体粉末と比較した。X線回折図、粒度分布(PSD)、走査型電子顕微鏡(SEM)、比表面積(BET)、密度及び溶解度の比較分析を、実施例2において報告する。
【0091】
図3及び図6は、それぞれ、噴霧乾燥及びミリングによって得られたリファキシミンのX線回折図を示す。固体形態は、いずれも非結晶プロファイルによって特徴付けられ、このプロファイルでシャープなピークがないことは、リファキシミンの無定形(アモルファス形)が存在することを示す。図3及び6における粉末X線回折ピークは異なっており、特に、噴霧乾燥によるリファキシミンは、2θが約7.75°±0.2、14.54°±0.2及び18.33°±0.2で最大値を有するハローピークによって特徴付けられ、ミリングによるリファキシミンは、2θが7.44°±0.2、14.40±0.2;17.19±0.2で最大値を有するハローピークによって特徴付けられる。
【0092】
粒度分布(PSD)分析は、図7及び図8に示されるように、噴霧乾燥によって得られた固体形態のリファキシミンが、ミリング法によって得られたリファキシミン粉体に対してより均質な粒度分布を有することを示している。
【0093】
特に、噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンは、粒径20μm付近の実質的に対称な粒度分布プロファイルによって特徴付けられ、d90の大きさ(90%粒径のパーセンテージ)は、40〜120μmで構成され、d50(50%粒径のパーセンテージ)は、15〜30μmで構成され、d10(10%粒径のパーセンテージ)は、2〜10μmで構成される。ミリング法によって得られたリファキシミンは、非対称なプロファイルによって特徴付けられ、d90は10〜20μmで構成され、d50は6〜12μmで構成され、d10は0.5〜4μmで構成される。
【0094】
走査型電子顕微鏡法(SEM)分析は、噴霧乾燥によって得られたリファキシミン粉体が約10μm〜40μmの寸法を有する凝集体を示し、一方、ミリング法によって得られたリファキシミンのSEMは約3〜15μmの寸法を有する凝集体を示すことを明らかにする。図7及び図8において得られかつ報告された画像の目視検査により、これらの粉体形態における相違が示される。
【0095】
噴霧乾燥によって調製されたリファキシミン固体形態の嵩密度は、単位体積あたりの質量に相当し、ミリングによる固体リファキシミンに対して評価された。粒子の嵩密度の尺度は、医薬粉体の重要な物理的特徴であり、固体の密度は、その集合体(assembly)に依存し、したがって、結晶構造及び結晶度によって変化する。特に、固体が無定形(アモルファス)又は部分的に無定形(アモルファス)である場合、その密度はさらに、その調製(調合)、処理及び保存に依存する。
【0096】
噴霧乾燥によるリファキシミン及びミリングによるリファキシミンについて3つの異なるサンプルを用いて3つの測定を行い、10ml容量フラスコを用いて1mlあたりのグラムで密度を計算した。
【0097】
噴霧乾燥によるリファキシミンの嵩密度は0.1〜0.5g/mlであり、ミリングによるリファキシミンの密度は0.3〜0.6g/mlである。
【0098】
リファキシミン表面での不活性ガス(窒素など)の物理吸収に基づく比表面積(BET)の測定により、噴霧乾燥によって得られたリファキシミンと、ミリングによって得られたリファキシミンとの粒径の差異を示すことができる。この技術から、ミリングによるリファキシミンが、噴霧乾燥によるリファキシミンよりも大きな比表面を有する結果となる。特に、ミリングによるリファキシミンの粉体粒径のBETは、5〜20m/g、とりわけ9〜12m/gの範囲であってもよく、一方、噴霧乾燥によるリファキシミンのBETは、0.01〜10m/g、とりわけ5〜8m/gである。
【0099】
噴霧乾燥及びミリングによって調製されたリファキシミン粉体についての比較溶解試験を、実施例2において報告する。この試験は、pH6.8及び温度30±0.5℃でリン酸緩衝液中で行った。表5に報告された結果は、噴霧乾燥によって得られたリファキシミンが、例えば、ミリングによって調製されたリファキシミン形態と比較した場合に、より高い溶解能を有し、可溶化されたリファキシミンの濃度は、ミリングによって得られたリファキシミンに対して1.1〜3倍の範囲にあり得ることを示す。
【0100】
比較分析は、噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンの粉末X線回折スペクトル、PSD、BET、嵩密度及び溶解度が、粉末のモルフォロジー(morphology)に由来する特徴であること、言い換えると、調製方法によって決定される特徴であることを表している。
【0101】
噴霧乾燥法によるリファキシミンの調製方法は、リファキシミン製剤に、他の無定形(例えば、ミリング法によって得られたリファキシミンなど)とは異なる特有の化学−物理的特性を与える。
【0102】
本発明による錠剤の調製は、以下の工程を含む方法によって実施される:
(a)噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンを、必要に応じて、結晶形のリファキシミンと混合して、又は他の水和物、溶媒和物もしくは無定形のリファキシミンと混合して、及び/又は薬学的に許容可能な賦形剤の存在下で、乾式造粒する工程;
(b)得られた造粒物を潤滑(lubrication)する工程;
(c)工程(b)の造粒物を薬学的に許容可能な賦形剤とともに打錠する工程;
(d)必要に応じて、コーティングワニスを調製し、核をコーティングする工程。
【0103】
実施例3は、噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンを含む錠剤の限定されない調製を記載している。
【0104】
噴霧乾燥によって得られたリファキシミン粉体は、顆粒(顆粒剤)の形態である。顆粒は、顆粒外(extra granule)の許容可能な賦形剤とともに、所望の形状の錠剤に応じて異なる直径を有する凹状パンチ(concave punches)を備えたキリアン機(Kilian machine)又はその同等物で圧縮される。
【0105】
用語「薬学的に許容可能な賦形剤」には、例えば、崩壊剤(disgregant)、滑沢剤(潤滑剤)、流動促進剤、希釈剤、緩衝剤、不透明化剤又は乳白剤(opacizer)、可塑剤、着色料、矯味剤が含まれる。
【0106】
固体組成物は、生体接着性を与える生体接着性化合物を含むことができる。
【0107】
崩壊剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースとも称される)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースとも称される)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートなどのセルロース誘導体、ポリビニルアセテートフタレート、ポビドン(ポリビニルピロリドンの重合体)、コポビドン(ポリビニルピロリドンの共重合体)、アクリル系重合体及び共重合体、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート又はデンプングリコール酸ナトリウムなどの中から選択される。滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、植物硬化油、鉱物油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリド、安息香酸ナトリウム又はこれらの混合物などの中から選択される。
【0108】
希釈剤は、セルロース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、デンプン、カオリン、水和硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、グルコース、グルカン、キシログルカン、デンプン(トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなど)、粉末トラガカント、モルト、ゼラチンの中から選択される。
【0109】
錠剤は、タルク、微結晶セルロース又は炭酸マグネシウムなどの流動促進剤、及びステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、ジステアリン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル(glycerol dibenate)などの滑沢剤を含むことができる。
【0110】
錠剤はまた、例えば、天然油、グリコール類(プロピレングリコールなど)、ポリオール類(グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなど)、エステル類(オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなど)、緩衝剤(水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど)、アルギン酸、パイロジェン(発熱物質)フリーの水;等張生理食塩水、エチルアルコール、リン酸緩衝液、及び医薬処方物において使用される他の非毒性の適合(compatible)物質などの賦形剤を含むこともできる。
【0111】
錠剤はまた、スクロース、ソルビトール、マンニトール、サッカリン、アセスルファム及びネオヘスペリジン(neosperidin)などの甘味剤を含むこともできる。
【0112】
着色料、離型剤、コーティング剤、甘味剤、矯味剤及び香料、防腐剤及び酸化防止剤もまた、組成物中に存在させることができる。
【0113】
防腐剤及び酸化防止剤としては、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及び金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)なども挙げられる。
【0114】
他の賦形剤は、デンプン、キトサン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、グアーガム、キシログルカン、キサンタン又はイヌリン及びペクチンなどの多糖類;アジペート(アジピン酸エステル又は塩)、アゼレート(アゼライン酸エステル又は塩)、ベンゾエート(安息香酸エステル又は塩)、シトレート(クエン酸エステル又は塩)、フタレート(フタル酸エステル又は塩)、ステアレート(ステアリン酸エステル又は塩)及びグリコール類などの可塑剤、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、脂肪酸及びそれらのエステル、ワックス類、ゼイン類である。
【0115】
必要に応じて、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性重合体を含むことができる。
【0116】
錠剤は、微結晶性セルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースなどの成膜剤(filmogen agent)、二酸化チタンなどの不透明化剤又は乳白剤(opacizer)、プロピレングリコール又はエチレングリコールなどの可塑剤、及び必要に応じて着色料又は矯味剤物質によって形成された皮膜(film coating)でコーティングできる。
【0117】
小腸でのリファキシミン滞留時間を延長するため、(可溶化試験において)5%〜90%の溶解プロファイルが適切であると考えられる。この目的を達成するために、特別な造粒技術を用いた。薬学的技術において、当業者によって最も頻繁に用いられる方法は湿式造粒法であり、この方法は、溶解性に乏しい化合物の溶解を助ける目的の場合に適用される。
【0118】
この公知の技術を使用すると、無定形から他の形態への変換を生じさせ、完全に溶解又は5%未満の濃度で溶解させるリスクを伴う(Cryst. Eng.Comm., 2008, 10, 1074-1081)。
【0119】
これに対して、European Pharmacopoeia Ed. 6.0 pp. 266-275に記載された要件によると、乾式造粒技術を適用することにより、このような変換を予防し、かつ組成物中に含まれるリファキシミンの5%〜90%の値に対応する溶解により特徴付けられた錠剤を得ることが可能であった。
【0120】
特定の態様において、噴霧乾燥法によって得られた固体形態のリファキシミンを含む錠剤中の医薬組成物は、1又は複数の崩壊剤、1又は複数の流動促進剤、1又は複数の希釈剤を含み、リファキシミンは、固体組成物の10〜90重量%の範囲であってもよい。
【0121】
好ましい組成物は、最終組成物に対して、30〜70重量%の量のリファキシミン、2〜5重量%の滑沢剤、3〜8重量%の崩壊剤、5〜65重量%の希釈剤、0.1〜2重量%の流動促進剤、及び必要に応じて矯味剤及び着色料を含む。
【0122】
本発明の好ましい組成物において、崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、コポビドン、デンプングリコール酸ナトリウムの中から選択される。
【0123】
希釈剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、セルロース及びマンニトールの中から選択される。
【0124】
滑沢剤(潤滑剤)は、ジステアリン酸グリセリル及びジベヘン酸グリセリルから選択される。
【0125】
流動促進剤は、タルク、シリカ及びコロイダル無水シリカの中から選択される。
【0126】
錠剤は、不透明化剤(又は乳白剤)、着色料、可塑剤及び矯味剤を含む皮膜でコーティングできる。
【0127】
表7は、噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンを含む本発明の錠剤の溶解プロファイルを、Normix(登録商標)錠という名の市販リファキシミン錠剤との比較において示す。無定形のリファキシミン、噴霧乾燥調製法によって得られた粉体のモルフォロジー及び錠剤形態の固体医薬組成物の組み合わせによりもたらされる新たな固体組成物は、リファキシミン活性成分を長時間放出できる医薬組成物を得るという予期せぬ結果を示す。実施例3のように、200mgのリファキシミンを含む錠剤形態の医薬組成物は、ヒト器官にリファキシミンをより長い時間滞留させることができ、市販のリファキシミン製剤と比較した場合に、血漿吸収レベルを著しく増大することなく、薬理作用をより長く持続させる。このことは、副作用及び/又は有害事象を制限するための適切な観点(又は関連する事項)である。
【0128】
PKプロファイルは、この新たな処方物が、in-vivoで有効濃度のリファキシミンを与えることによって、200mg錠剤を1日3回経口投与する場合、よりよい治療作用を保証できることを示している。
【0129】
この証拠は実施例4において示され、この実施例は、実施例1に記載の噴霧乾燥によって得られたリファキシミンを含み、実施例3に従って調製された錠剤を用いて行われた薬物動態学的研究を報告する。この研究は、リファキシミン−αの多形のような結晶性リファキシミンを含む市販の処方物Normix(登録商標)と比較して行われている。一群24名の健康なボランティア(人口統計データ(demographic data)を表8及び9に示す)に、実施例3に記載のようにして調製されたリファキシミン200mg錠剤の1又は2錠を、同数のNormix(登録商標)200mg錠剤との比較において投与した。
【0130】
表10に、実施例4のように調製されたリファキシミン200mg錠剤の経口投与後のヒトにおいて、時間に対して測定されたリファキシミンの血漿中濃度を、血液1mlあたりのナノグラムで示す。一方、表11には、市販のリファキシミン200mg錠剤(すなわち、Normix(登録商標))を投与した場合に得られた値を示す。
【0131】
これらのデータの比較は、実施例3により調製されたリファキシミン200mg錠剤では、市販の錠剤と比較した場合に、リファキシミンが血漿中に検出可能な期間(time interval)を長くしたことが明らかである。実施例4は、市販錠剤の単回経口200mg用量又は2回200mg用量に対して、実施例3の噴霧乾燥から得られたリファキシミンを含む組成物の単回経口200mg用量又は2回200mg用量を投与された被験体におけるPK比較データを報告する。この結果は、市販のリファキシミン製剤は、たいていの被験体において投与の4時間後にはもはや血漿中に検出できず、全ての被験体において投与の6時間後にはもはや血漿中に検出できない(表11)が、一方、噴霧乾燥から得られた本発明によるリファキシミンを含む組成物は、投与の4時間後にほとんど全ての被験体(10/12)において、投与の8時間後であってもたいていの被験体(7/12)において、そして投与の16時間後までであっても一部の被験体において、血漿中に検出されることを示す。
【0132】
実施例3の製剤を用いて、200mgリファキシミン錠剤2錠を投与する場合、たいていの被験体(10/12)は投与の12時間後、一部の被験体は投与の24時間後までであっても、顕著な量のリファキシミンを示す。
【0133】
これらの結果は、絶対血漿中濃度が、200mg錠剤1錠の投与で約15ng/mlを、そして200mg錠剤2錠の投与で100ng/mlを超えないという事実に関連している。
【0134】
同量のNormix(登録商標)を投与することによって、検出可能なリファキシミン血漿中濃度を示す被験体は、投与のわずか6時間後であっても少数であり、投与の12時間後に検出可能なリファキシミン血漿中濃度を示す被験体はいない。
【0135】
これらの条件下において、噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンを含む錠剤に最も適した投薬量は、例えば、旅行者下痢症の治療において規定されるように、1日3回に分けて、リファキシミン200mg錠剤3錠である。実際、この薬量は、被験体にリファキシミンのよりよい抗菌作用を保証する。この点に対して、例示的な目的のみのために、図1及び図2には、表10及び表11において得られた値に基づいて、被験体V7及びV11について、1日3回に分けて200mg錠剤3錠を繰り返し投薬したと仮定して計算されたPKプロファイルを示す。
【0136】
噴霧乾燥によって得られたリファキシミンを含む実施例3の錠剤形態の固形製剤は、血漿中の制限された最大濃度を維持し、かつ治療中の制限された薬物蓄積をもたらすが、リファキシミンがより不変的に存在することを保証する。
【0137】
血漿中のリファキシミンの最大濃度の制限の影響(効果)は、錠剤組成物、適合した薬学的形態、及び薬学的形態の調製方法の結果である。実際、実施例5の表16には、賦形剤を添加せずに、実施例1により調製されたリファキシミンのみをイヌに投与した場合に得られたPKパラメータを報告する。これらのデータと、実施例3の表14に報告されたヒトに対する投与後に得られた値とを比較するために、種(ヒト及びイヌ)の相違及び投薬量の相違を考慮しなければならない。
【0138】
種に関して、ドレスマン J.B.(Dressmann J. B.)、Pharm. Res. 4, 123-31, 1986に記載されるように、ヒト及びイヌ種における胃の生理機能は極めて類似しているので、これら2つの種においてバイオアベイラビリティデータが比較可能であることは公知である。しかし、ヒトとイヌとは小腸において異なるpHを示し、ヒトはpH約5であるのに対して、イヌはpH約7である。この相違は、バイオアベイラビリティが化合物の溶解度に関連するならば、そのバイオアベイラビリティに影響を及ぼす。
【0139】
しかし、リファキシミンの場合、実施例6に示されるように、pH5〜7の間の変動はリファキシミンの溶解度に影響を及ぼさないので、この相違は関係ない。
【0140】
ヒト及びイヌ種間に観察される他の相違は、イヌでは腸内輸送時間がより短いことであり、この相違によって、薬物についての吸着率がより低くなるかもしれない。
【0141】
ヒト及びイヌ種における様々なバイオアベイラビリティ因子は、FDA Guidance-for-Industryに報告されるように、イヌの用量からヒトの等価用量(HED)への変換係数0.54を採用することによって考慮されている。イヌに100mg/kgの用量を投与する実施例5において、この用量は、54mg/kgHEDに相当する。
【0142】
リファキシミン200mg錠剤を投与された研究患者のヒト被験体は、表8に示されるように、平均体重67.67kgであったことから、これらの被験体には、平均2.9mg/kgのリファキシミン、すなわち、イヌに投与されたHEDよりも18.6倍低いリファキシミン量が投与された。従って、PKパラメータは、表1に示されるように、およそ同じ要因により比例的に低減することが期待される。
【0143】
【表1】

【0144】
イヌでの実験に基づいて得られた2.9mg/kgHEDで計算したPKパラメータの値と、ヒトで観察された値とを比較することによって、実施例1のリファキシミンが実施例3の製剤に含まれている場合、実施例3に記載のように、リファキシミンの形態の効果と医薬組成物との組み合わせるによる新たな組成物は、実施例1に記載のように噴霧乾燥法によって調製されたリファキシミンの直接投与と比較して、血液中のリファキシミンのバイオアベイラビリティレベルを低減させる結果をもたらす。
【0145】
実施例3により得られた錠剤中の医薬組成物は、実際に、反対方向に働くパラメータの組み合わせに由来する予期せぬ効果を示し、噴霧乾燥法によって生成されたリファキシミンは、リファキシミンをより可溶性にしてバイオアベイラビリティを増大させる可能性をもたらす一方、錠剤中の組成物及び医薬形態並びに製造方法により吸収レベルが制限され、結果として徐放(放出制御)性を与える。
【0146】
処方物の特性の証拠を、図1及び2に示す。これらの図には、2名の異なるボランティアにおける血漿中濃度の値が報告されており、この血漿中濃度の値は、市販品Normix(登録商標)と比較したときの、実施例3で調製したリファキシミンを含む錠剤における処方物を繰り返し投与して計算されたものである。
【0147】
本発明の処方物で治療されたこの2名の健康なボランティアでの2つのプロファイルの比較からは、治療全体に亘り、時間的間隔又はインターバル(time interval)がないことは、血漿中に検出可能なリファキシミンが存在することを示し、一方で、リファキシミンを含む市販錠剤(Normix(登録商標))で治療された患者は、分析的に検出できない血漿中リファキシミン濃度を示すことが説明される。
【0148】
従って、本発明の一態様は、予測可能でかつ制御された放出(徐放)でリファキシミンを放出できる組成物である。このような組成物は、噴霧乾燥法によって得られる、上記形態学的特徴を有するリファキシミン粉体を含む。
【0149】
本発明の他の態様は、許容可能な賦形剤を有する固形製剤において10〜800mgの量で固体形態のリファキシミンを含む医薬処方物に代表される。
【0150】
本発明の他の態様は、軟膏剤、クリーム洗浄剤(cream lavage)、泡剤(foam)などの局所投与としての使用のためのリファキシミン粉体であり、噴霧乾燥によって調製され、かつ当業者に公知の許容可能な賦形剤と関連付けられた上記形態学的特徴を有するリファキシミン粉体である。
【0151】
本発明の他の態様は、懸濁剤、シロップ又は洗口剤のような経口投与としての使用のためのリファキシミン粉体であり、噴霧乾燥によって調製され、かつ当業者に公知の許容可能な賦形剤と関連付けられた上記形態学的特徴を有するリファキシミン粉体である。
【0152】
本発明のさらなる態様は、錠剤の形態で200mg以上のリファキシミン量を投与の4〜12時間後に、ヒトの血液中に0.5ng/mlより高いリファキシミン血漿中濃度をもたらすことが可能な医薬組成物である。
【0153】
本発明のさらなる態様は、錠剤の形態で400mg以上のリファキシミン量の投与の6〜24時間後に、ヒトの血液中に0.5ng/mlより高いリファキシミン血漿中濃度をもたらすことが可能な、噴霧乾燥によって得られたリファキシミンを含む医薬組成物である。
【0154】
本発明のさらなる態様は、200mgのリファキシミンの投与により、血液中のリファキシミンの最大濃度が約15ng/ml未満となる、リファキシミン処方物である。
【0155】
本発明のさらなる態様は、200mgのリファキシミンの投与により、血液中のリファキシミンの最大濃度が約100ng/ml未満となる、リファキシミン含有医薬組成物である。
【0156】
本発明のさらなる態様は、細菌性腸感染の治療における前記処方物の使用である。
【0157】
本発明のさらなる態様は、噴霧乾燥によって調製された上記形態学的特徴を有する治療的有効量のリファキシミン及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む包装された組成物であって、この組成物は、腸障害に罹患しているか又は罹患やすい被験体を治療するために処方され、腸障害に罹患しているか又は罹患しやすい被験体を治療するための説明書とともに包装される。
【0158】
キット(例えば、被験体の腸障害を治療するためのキット)もまた提供される。キットは、例えば、噴霧乾燥によって調製された上記形態学的特徴を有する1又は複数の固体分散形態のリファキシミン、及び使用説明書を含んでもよい。使用説明書は、処方情報(prescribing information)、投薬量情報、保存情報などを含んでもよい。
【0159】
リファキシミンは、いかなる副作用もなく2500mg/日より高い投薬量で投与でき、リファキシミン組成物は、体重1kgあたり約1mg〜約200mgの濃度で投与できる。
【0160】
医薬組成物は、他の治療処置と組み合わせて投与できる。
【実施例】
【0161】
以下に、本発明の限定されない実施例を提供する。
【0162】
実施例1
噴霧乾燥によるリファキシミン粉体の調製方法
18インチのワースターシステム及び1.8mmの噴霧ノズルを備えた流動床装置Glatt GPCG 60に、40kgのリファキシミン−αを仕込み、次いで457.2リットルの90%エタノール(v/v)を添加する。このようにして得られた懸濁液を、リファキシミンが完全に溶解するまで攪拌し続ける。
【0163】
このエタノール溶液を、1.8mmノズルを介して、予め加熱しておいた温風気流下、1.0〜1.5barの圧力で流動床装置内で噴霧する。噴霧段階の最後に、固体リファキシミン粉体をさらに乾燥して、過剰な溶媒を除去する。
【0164】
噴霧法に採用された条件を、表2に詳細に記載する。
【0165】
【表2】

【0166】
得られたリファキシミン粉体を、X線分光法、13C−NMR分光分析及びIR分光法によって分析すると、温度40℃+2、相対湿度75%で3か月まで安定である。
【0167】
X線回折スペクトルは図3に報告され、2θが7.75°±0.2、14.54°±0.2及び18.33°±0.2に最大値を有するハローピークを示す。
【0168】
X線回折スペクトルを、以下の条件下でブラッグ−ブレンターノ(Bragg-Brentano)幾何学によって得る:X線パイプ:銅;放射:K(α1)、K(α2);発生装置 電流 電圧:KV 40、mA 40;モノクロメータ:グラファイト;ステップサイズ:0.02;ステップ時間:1.25秒;2θの初期及び最終角度値:3.0°〜30°±0.2d。
【0169】
図4は、99.8%より高い純度を有し、かつ内部標準としてテトラメチルシランを含むサンプルをクロロホルムに溶融し、100.56MHzでバリアン(Varian)400装置によって得られた13C−NMRスペクトルを示す。
【0170】
図5は、臭化カリウムに0.5%リファキシミンを分散した分散体を用いて、Spectrum One装置(パーキンエルマー(Perkin Elmer))で得られたIRスペクトルを示しており、このスペクトルは、4000〜450cm−1の周波数で記録される。
【0171】
このようにして得られたリファキシミンは、表3に示されるように安定である。
【0172】
【表3】

【0173】
実施例2
噴霧乾燥によって得られたリファキシミンとミリング法によって得られたリファキシミンとの比較分析
(a)X線分析
X線回折スペクトルを、以下の条件下でブラッグ−ブレンターノ幾何学によって得る:X線パイプ:銅;放射:K(α1)、K(α2);発生装置 電流 電圧:KV 40、mA 40;モノクロメータ:グラファイト;ステップサイズ:0.02;ステップ時間:1.25秒;2θの初期及び最終角度値:3.0°〜30°±0.2。
【0174】
図3及び図6は、それぞれ、噴霧乾燥によって得られたリファキシミン及びミリングによって得られたリファキシミンのX線スペクトルを報告する。
【0175】
噴霧乾燥法によって得られたリファキシミンのX線スペクトル回折スペクトルは、2θが7.75°±0.2、14.54°±0.2及び18.33°±0.2に最大値を有するハローピークによって特徴付けられる。
【0176】
ミリング法によって得られたリファキシミンのX線スペクトル回折スペクトルは、7.44±2θ、14.40±2θ;17.19±2θに最大値を有するハローピークによって特徴付けられる。
【0177】
(b)粒径寸法(PSD)
粒径分析を、微量セルを備えたベックマン・コールター(Beckman-Coulter)LS100Q粒径分析装置を用いて実施した。使用した溶媒は、ホワイトスピリッツ(白色精、White Spirit、WS)である。
【0178】
表4に、噴霧乾燥法及びミリング法で得られた粒子の平均径を報告する。
【0179】
総粒子の10%に対応する百分率(d10)は、噴霧乾燥では平均径4.56μm、ミリングでは1.84であり、総粒子の50%に対応する百分率(d50)は、噴霧乾燥では平均径19.60μm、ミリングでは8.17であり、総粒子の90%に対応する百分率(d90)は、噴霧乾燥では平均径62.21μm、ミリングでは12.92である。
【0180】
【表4】

【0181】
図7及び図8は、それぞれ、噴霧乾燥法及びミリング法によって得られたリファキシミンの粒径プロファイルを示す。
【0182】
(c)SEM顕微鏡法
噴霧乾燥及びミリングによって得られた無定形リファキシミンについて、サンプルをSEMによって分析し、その結果を、それぞれ、図9及び図10に報告する。
【0183】
噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンは、10〜40μmの寸法を有する凝集体を示し、この粉体は、多孔性の特徴及び明確なプロファイル(defined profile)を表す。ミリングによる固体リファキシミンは、3〜15μmの寸法を有する凝集体を示し、この粉体は、多孔性の特徴及び球状のプロファイルを表す。
【0184】
(d)嵩密度
3つの異なるサンプルについて3つの測定を、噴霧乾燥によるリファキシミン及びミリングによるリファキシミンについて行い、密度を、10ml容量フラスコを用いて1mlあたりのグラムで計算した。
【0185】
噴霧乾燥によるリファキシミンの密度は0.257g/mlであり、ミリングによるリファキシミンの密度は0.327g/mlである。
【0186】
(e)比表面積(BET)
小さな表面積を測定するために、通気(flowing gas)法を用いた。この分析では、加熱速度10℃/分で25℃〜100℃まで温度を上昇させながら、真空下で乾燥させた(died)サンプル300mgに対してに窒素ガスを用いて実施した。噴霧乾燥によるリファキシミンの比表面積は、0.01〜5m/gであり、ミリングによるリファキシミンの比表面積は、6〜12m/gである。
【0187】
(f)溶解度
実施例1で報告されたリファキシミン及びミリングによるリファキシミンの各製剤500mgを、それぞれ別々に、水性リン酸緩衝液750ml(pH6.8、温度30±0.5℃)中に懸濁させた。
【0188】
懸濁したリファキシミンを含む溶液を、掃引攪拌機(sweep stirrer)を用いて攪拌速度250rpmで150分間攪拌する。最初の1時間は5分間隔、残りの時間は15分間隔で採集したサンプルを、濾過後にHPLCにおいて分析する。結果を表5に報告する。
【0189】
【表5】

【0190】
実施例3
リファキシミン錠剤の調製
リファキシミン200mgを含む錠剤の調製は、以下の工程を含む:
a.実施例1に記載の噴霧乾燥によるリファキシミン粉体の調製;
b.圧縮による乾式造粒;
c.造粒物の潤滑(lubrication);
d.打錠;
e.コーティングワニスの調製;
f.核のコーティング。
【0191】
錠剤は、表6に報告される量を含む。
【0192】
【表6】

【0193】
デンプングリコール酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリル、タルク及び微結晶性セルロースを、表6に報告された各量秤量し、0.8mm篩にかける。次いで、これらの成分をV型粉末ミキサーに入れ、混合物を少なくとも30分間攪拌する。
【0194】
この粉体混合物を、各量のリファキシミンとともに連続式圧縮造粒機のホッパーに入れ、所望のサイズ径の造粒物を製造する。
【0195】
次いで、造粒物を、予め全て0.5mm篩にかけておいたジステアリン酸グリセリル、タルク、微結晶性セルロース及びコロイダル無水シリカに添加する。コロイダル無水シリカ及び微結晶性セルロースは、篩にかける前にあらかじめ混合しておく。次いで、混合物を、前記ミキサーに戻し、7分間混合する。造粒物を、直径10mmの凹状パンチを備えた回転式打錠機キリアン又はその同等物を用いて圧縮し、錠剤を得る。コーティング手順は、ミクロクライマティック(微気候、microclimatic)制御下で適切な室内で実施される。
【0196】
錠剤を、温風によって41〜43℃の範囲で温め、フィルムコーティング剤(皮膜剤)を錠剤上に噴霧する。コーティング段階の最後に、錠剤を、温風によって41℃〜43℃の範囲で30分間乾燥する。
【0197】
上記の製造方法によってもたらされる錠剤の崩壊時間は、Ph. Eur. conditions, Ed. 6.3, no. 20901 pp. 3943-3945に従って試験を実施することにより、5分であった。
【0198】
錠剤を、pH7.4の0.1M1000mlリン酸緩衝液に温度37±0.5℃、回転速度100rpmで導入して、Ph. Eur. conditions, Ed. 6.0, no. 20903, pp. 266-275に従って溶解試験を実施することにより評価した錠剤の溶解速度を、表7に示す。
【0199】
このように調製された錠剤によって放出されたリファキシミンを分析し、リファキシミン−αを含む市販Normix(登録商標)錠剤と比較した。リン酸緩衝液中に放出されたリファキシミンの量を、リファキシミンの参照溶液と比較して、293±2nmに対応する波長分光測光によって測定した。180分までに放出されたリファキシミンの量を表7に報告する。
【0200】
【表7】

【0201】
実施例4
健康なヒトボランティアにおけるNormix(登録商標)の単回経口200mg用量又は2回200mg用量と比較して、実施例3で得られるリファキシミン錠剤の単回経口200mg用量又は2回200mg用量の安全性及びPKプロファイルを評価するための無作為クロスオーバー試験
絶食状態において、表7に示す人口統計データ(demographic data)の12名の健康なボランティアに、実施例3に記載されるリファキシミン200mgを含む錠剤又はNormix(登録商標)の200mg錠剤をクロスオーバーで投与し、表9に示す人口統計データ(demographic data)の12名の健康なボランティアに、実施例3に記載されるリファキシミン200mg2錠又はNormix(登録商標)の200mg錠剤2錠を投与した。
【0202】
各被験体に、2つのリファキシミン製剤の各々を1週間の間隔をあけて投与した。
【0203】
【表8】

【0204】
【表9】

【0205】
この試験は、経口投与後、時間に対するリファキシミンの血漿中濃度を測定することによって、2つのリファキシミン製剤のバイオアベイラビリティを測定した。
【0206】
投与して0;0.5;1;1.5;2;3;4;6;8;10;12;16;24時間後にそれぞれ採集した血液サンプルを、0.5ng/mlの定量限界(a limit of quantization)を有するLC−MS/MS法によって分析し、この結果を、実施例3のリファキシミンの200mg錠剤及びNormix(登録商標)の200mg錠剤の投与について、それぞれ表10及び表11に示す。表12及び表13は、実施例3のリファキシミンの200mg錠剤2錠及びNormix(登録商標)の200mg錠剤2錠の投与に対応する値を示す。
【0207】
【表10】

【0208】
【表11】

【0209】
【表12】

【0210】
【表13】

【0211】
以下のバイオアベイラビリティパラメータを、2つのリファキシミン製剤を比較するために計算する:観察された最大血漿中濃度(Cmax);投与からCmaxを得るまでの時間(Tmax);0時間(最初の実験時点)から最後のサンプリング(投与の24時間後)までの濃度−時間曲線下面積AUC(0−24h)。実施例3に記載のリファキシミンの200mg錠剤2錠の投与とNormix(登録商標)の200mg錠剤2錠の投与とについて、これらの結果を表14及び表15に示す。
【0212】
【表14】

【0213】
【表15】

【0214】
実施例5
噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンのイヌに対するPK試験
4匹の雌性ビーグル犬に、動物の体重1kgあたり100mgの投薬量で、実施例1により調製されたリファキシミンを単回経口投与した。
【0215】
リファキシミンのみを含む硬ゼラチンカプセル剤を投与し、投薬前及び投薬後の観察、体重及び理学的検査を評価した。
【0216】
血液サンプルを、各投薬日に、各投薬から0(投薬前)、1、2、4、6、8及び24時間後すべての動物から採集した。
【0217】
濃度−時間曲線から、表16に報告されたAUC0−24h、Cmax及びTmaxのPKパラメータを求める。
【0218】
【表16】

【0219】
実施例6
異なるpHでのリファキシミン溶解度
この試験を、Annex to European Commission Directive 92/69/EEC及びOECD Guidelines for Testing of Chemicals(EEC Method A6、OECD Method 105)の要件に合致するため、容認された原理に従って実施した。
【0220】
水溶解度を、振盪フラスコ法によって、20℃で、純水中及びpH4及び7の緩衝液中において測定した。
【0221】
リファキシミン−αの飽和溶液のアリコートを適切に希釈し、次いで高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)法によって分析した。リファキシミンの溶解度は、リファキシミンの校正溶液に対して測定した。
【0222】
得られた結果を表17に報告する。
【0223】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無定形を示すX線回折スペクトルを有するリファキシミン粉体であって、粒径(d90)が40〜120μmによって特徴付けられるリファキシミン粉体。
【請求項2】
0.1〜0.50g/mlの嵩密度によって特徴付けられる請求項1記載のリファキシミン粉体。
【請求項3】
0.01〜5m/gの表面積によって特徴付けられる請求項1及び2に記載のリファキシミン粉体。
【請求項4】
リファキシミンが、pH6.8及び温度30℃での可溶化試験において、総リファキシミンに対して5〜90%の量で可溶であることを特徴とする請求項1記載のリファキシミン粉体。
【請求項5】
リファキシミンの溶液の噴霧乾燥によって得られるという事実によって特徴付けられる請求項1記載のリファキシミン粉体。
【請求項6】
10〜800mgの量でリファキシミン粉体を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
200〜400mgの量でリファキシミン粉体を含む請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1記載のリファキシミンと、1又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤とを含むことによって特徴付けられる医薬組成物であって、前記組成物が錠剤の形態であり、かつ前記賦形剤が、以下:
崩壊剤、希釈剤、甘味料、可塑剤、凝集防止剤、付着防止剤、流動促進剤、リガント(ligant)、並びに必要に応じて着色料、緩衝剤、矯味剤及び甘味剤
の1又は複数を含む医薬組成物。
【請求項9】
以下の組成:
・リファキシミン10〜800.0mg
・デンプングリコール酸ナトリウム5.0〜30.0mg
・ジステアリン酸グリセリル4.0〜400.0mg
・コロイダル無水シリカ0.2〜10.0mg
・タルク0.2〜10.0mg
・微結晶性セルロース10.0〜500.0mg
を有し、必要に応じて不透明化剤(opacizer)、可塑剤、着色料を含む皮膜でコーティングされた錠剤の形態である請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
以下の工程:
・結晶性又は無定形リファキシミン又はこれらの混合物を、有機溶媒もしくはその混合物、又は有機溶媒と水との混合物中に可溶化し、前記溶液を噴霧し、蒸発及び乾燥させることによってリファキシミンの粉体形態を調製する工程;
・前記噴霧乾燥法から固体形態のリファキシミンを回収する工程;
・リファキシミンの顆粒を圧縮し、許容可能な賦形剤を用いて又は賦形剤を用いることなく錠剤形成する工程;
・必要に応じて、前記錠剤を皮膜でコーティングする工程
によって特徴付けられる請求項6又は7記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項11】
薬剤として使用するための請求項6又は7記載の医薬組成物。
【請求項12】
細菌性腸感染の治療のための請求項11記載の医薬組成物であって、前記治療が、投与後、リファキシミンを検出可能な血漿中濃度が4〜24時間にわたって維持されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
治療が、毎日2又は3回の投与を見越す請求項11記載の組成物。
【請求項14】
リファキシミンの血漿中濃度が、治療期間全体にわたって検出可能である請求項11記載の組成物。
【請求項15】
リファキシミンの血漿中濃度が100μg/ml以下である請求項14記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−521273(P2013−521273A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555537(P2012−555537)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050933
【国際公開番号】WO2011/107970
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(304044793)アルファ ワッセルマン ソシエタ ペル アチオニ (8)
【氏名又は名称原語表記】ALFA WASSERMANN S.P.A.
【Fターム(参考)】