説明

リファマイシン誘導体を傷害組織にデリバリーする製剤

【課題】 本願は、リファマイシン誘導体を、傷害部位特異的にデリバリーできる製剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 上記課題は、リファマイシン誘導体含有組成物をマイクロ粒子またはナノ粒子に封入することにより解決される。これにより、リファマイシン誘導体含有組成物が、正常組織と比較して、傷害組織に選択的にデリバリーされることとなる。その結果、傷害組織でのリファマイシン誘導体の効果の増強、及び正常組織における副作用の軽減あるいは抑制が期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リファマイシン誘導体を含有する製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リファマイシン誘導体は、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)等に対して極めて強い抗菌活性を有する抗生物質であるが、本発明者らは、最近、リファマイシン誘導体が血管性疾患等にも有効に作用することを見出している。
【0003】
血管疾患、悪性腫瘍、感染症などの局所疾患を治療するためには、薬物の投与は、一般的には、全身投与により行われる場合が多い。しかし、全身投与により部位特異的に薬物をデリバリーすることは困難であり、例えば、経口投与、あるいは静脈内投与された薬物は、患者の体全体に分布し、代謝される。多くの場合、所望の部位に到達する薬物の量は投与量に対して大きく減少する。それ故に、全身投与の場合、大量の薬物を投与する必要があり、その結果、不快で望ましくない全身性の副作用が生じる。また、経済的にも非効率となる。したがって、副作用や効率性の点から、局所での使用が可能な薬物デリバリーシステムが必要とされる。
【0004】
しかし、これまでに報告された部位特異的に薬物をデリバリーする方法の多くはは、組織移行性のあまりよくない薬剤に対して、組織移行性を改善するために行われたものであった(特許文献1〜3)。
【特許文献1】米国特許第4,652,441号
【特許文献2】特開平10−511957号
【特許文献3】特開平8−217691号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3においては、薬物の組織移行性を改善するために薬物を粒子に封入している。しかし、リファマイシン誘導体のように組織移行性が比較的良好な薬物に対して同様の手法を採用した場合、薬物が正常組織にも移行し、望ましくない副作用を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、組織移行性の高いリファマイシン誘導体であっても、リファマイシン誘導体をマイクロ粒子またはナノ粒子に封入することにより、正常組織に比べ傷害組織に選択的に移行して、血管疾患等を治療することが可能なことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、リファマイシン誘導体含有組成物がマイクロ粒子またはナノ粒子に封入された、正常組織に比べ傷害組織に当該組成物を選択的にデリバリーすることを特徴とする製剤に関する。
【0008】
前記リファマイシン誘導体は、下記式(I):
【0009】
【化10】

で表される化合物またはその生理学的に許容される塩であるのが好ましい。このうち、リファマイシン誘導体は、リファラジル{Rifalazil、3'-Hydroxy−5’−(4−isobutyl−1−piperazinyl)benzoxazinorifamycin、KRM1648}またはそれらの生理学的に許容される塩であるのが好ましい。なお、リファラジルの化学式は、後述の実施形態の項目で説明する。
【0010】
また、前記リファマイシン誘導体含有組成物を封入する粒子の平均粒径は50から10000nmの範囲にあるのが好ましく、粒子が平均粒径50〜400nmに分級されたナノ粒子であるのがさらに好ましい。
【0011】
また、前記粒子が生分解性ポリマーからなり、表面改質剤を当該粒子表面に持つことを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0012】
また、前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との共重合体、レシチン、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、澱粉、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−ヒドロキシアルカノエートからなる群から少なくとも1つ以上選択されることが好ましく、このうち、乳酸‐グリコール酸共重合体であるのが好ましい。
【0013】
また、前記表面改質剤が、カルボキシメチルセルロース、セルロース、酢酸セルロース、フタル酸セルロース、レシチン、キトサン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩又はカルシウム塩、非晶質セルロース、ポラキソマー、ポロキサミン、デキストラン、DEAE−デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ドデシル硫酸ナトリウム、及びケイ酸からなる群から少なくとも1つ以上選択されるのが好ましい。
【0014】
また、前記傷害組織が疾患により細胞間の構築性が悪化している組織であることを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0015】
また、前記疾患が炎症性疾患、感染症、悪性腫瘍から選択される少なくとも1つであることを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0016】
また、前記炎症性疾患が血管性疾患、炎症性腸疾患、炎症性神経系疾患、炎症性肺疾患、炎症性眼疾患、慢性炎症性歯肉疾患、慢性炎症性関節疾患、関節リウマチ、皮膚疾患、骨疾患、心疾患、腎不全、慢性脱髄疾患、内皮細胞疾患、アレルギー症候群、敗血症/敗血症ショック、肝炎、髄膜炎、多発性硬化症、皮膚炎症、移植拒絶、自己免疫疾患、肥満症、風邪、鎌状赤血球貧血、糖尿病、脳卒中、及び悪性新生物化学療法または放射線療法後の炎症から選択されることを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0017】
また、前記血管性疾患が動脈硬化症、動脈瘤、仮性瘤、動脈解離症、炎症性動脈疾患、非炎症性動脈疾患、透析シャント、および経皮的血管形成術後の血管再狭窄または再閉塞である製剤であるのが好ましい。
【0018】
また、前記感染症が肺炎、上気道および下気道感染症、皮膚および軟部組織感染症、骨および関節感染症、院内肺感染症、急性細菌性中耳炎、細菌性肺炎、複雑性感染症、非複雑性感染症、腎盂腎炎、腹腔内感染症、深部膿瘍、細菌性敗血症、中枢神経系の感染症、菌血症、創傷感染、腹膜炎、髄膜炎、火傷の後の感染症、尿生殖路感染症、消化管感染症、骨盤炎症性疾病、心内膜炎または血管内感染症から選択されることを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0019】
また、前記悪性腫瘍が、脊髄腫瘍、褐色細胞腫、進行悪性疾患、アミロイド症、神経芽細胞腫、髄膜腫、血管外皮細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽細胞腫、膠芽細胞腫、脳幹神経膠腫、予後不良の悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、未分化星細胞腫、未分化乏突起神経膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスC&D結腸直腸癌、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、カロタイプ急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、局在性もしくは転移性黒色腫、腹膜癌、漿液性乳頭癌、婦人科肉腫、軟組織肉腫、セルロデルマ、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維形成異常症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除したハイリスク軟組織肉腫、切除不能な肝細胞癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無痛無症候性骨髄腫、輸卵管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性IV期非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、乳頭甲状腺癌、濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、又は平滑筋腫から選択されることを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0020】
また、血中への徐放が、経口投与、あるいは、筋肉内投与、動脈内投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、経皮投与、粘膜投与、吸入投与、およびインプラントを利用した投与からなる群より選択されることを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0021】
また、前記インプラントが、ステント、ステントグラフト、人工血管、カテーテル、バルーンカテーテル、人工心弁、ペースメーカーのリード線、骨ネジ、人工骨、人工気管、または縫合糸であることを特徴とする製剤であるのが好ましい。
【0022】
本発明の別の態様として、前記リファマイシン誘導体含有組成物を球形晶析法によりマイクロ粒子またはナノ粒子に封入することを特徴とする、正常組織に比べ傷害組織に選択的にデリバリーする製剤の製造方法がある。
【0023】
また、本発明の別の態様として、リファマイシン誘導体含有組成物を前記表面改質剤と混合粉砕することによりマイクロ粒子またはナノ粒子に封入することを特徴とする、正常組織に比べ傷害組織に選択的にデリバリーする製剤の製造方法がある。
【0024】
上記方法においては、リファマイシン誘導体含有組成物を生分解性ポリマーから構成される粒子に封入するのが好ましい。
【0025】
本発明のその他の態様およびこれらの効果は、以下に説明する実施形態および図面によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかるリファマイシン誘導体をマイクロ粒子またはナノ粒子に封入した製剤は、正常組織に比べ傷害組織に蓄積しやすいことから、傷害組織でのリファマイシン誘導体の効果の増強、及び正常組織における副作用の軽減あるいは抑制が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明のリファマイシン誘導体含有組成物をマイクロ粒子またはナノ粒子に封入し、正常組織に比べ傷害組織に選択的にデリバリーする製剤について詳細に記載する。
【0028】
1.リファマイシン誘導体
(1)本願発明で用いられるリファマイシン誘導体は、以下の式(I):
【0029】
【化11】

(式(I)中、X1は酸素原子または硫黄原子を示し、R1はアセチル基または水素原子を示し、R2はメチル基またはヒドロキシメチル基を示し、R3、R4は同一または相異なり、水酸基、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、下記(II)式で表される基、または、下記式(IV)で表される基を示す)で表される化合物またはその生理学的に許容される塩であるのが好ましい。
【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

上記式(II)中、R5、R6は同一または相異なり、炭素数1から3のアルキル基、または式(III)で表される基を示す。
【0032】
【化14】

(式(III)中、jは1から3の整数を示す)
上記式(IV)中、R7、R8は同一または相異なり、水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示し、X2は酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、下記式(V)で表される基、または、下記式(VI)で表される基を示す。
【0033】
【化15】

【0034】
【化16】

上記式(V)中、R9、R10は同一または相異なり、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、またはR9とR10が結合して下記式で表される基を示す。
−(CH2k
(式中、kは1から4の整数を示す)
上記式(VI)中、mは0または1を示し、R11は水素原子、炭素数1から7のアルキル基、または下記式で表される基を示す。
−(CH2n3
(式中、nは1から4の整数を示し、X3は炭素数1から3のアルコキシ基、ビニル基、エチニル基、または下記式(VII)で表される基を示す。)
【0035】
【化17】

上記式(I)〜(VI)において、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10の炭素数1から3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基およびシクロプロピル基が挙げることができ、R11の炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、4−メチルペンチル基、シクロヘキシル基、3−メチルシクロペンチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基などの鎖状または環状アルキル基を挙げることができる。
【0036】
3の炭素数1から3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびシクロプロポキシ基を挙げることができる。
(2)好ましくは、リファマイシン誘導体は、前記式(I)のX1が酸素原子であり、R1がアセチル基または水素原子を示し、R2はメチル基またはヒドロキシメチル基を示し、R3、R4は同一または相異なり、水酸基、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、または式(VIII):
【0037】
【化18】

(式中、R12は水素原子、または炭素数1から7のアルキル基を示す)で表されるリファマイシン誘導体またはその生理学的に許容される塩である。
【0038】
12の炭素数1から7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、4−メチルペンチル基、シクロヘキシキル基、3−メチルシクロペンチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基などの鎖状または環状のアルキル基を挙げることができる。
(3)好ましくは、リファマイシン誘導体は、前記式(I)のX1が酸素原子であり、R1がアセチル基であり、R2がメチル基であり、R3が水酸基であり、R4が式(IX):
【0039】
【化19】

で表されるリファラジル{Rifalazil、3'-Hydroxy−5’−(4−isobutyl−1−piperazinyl)benzoxazinorifamycin、KRM1648}またはその生理学的に許容される塩である。ただし、本発明で用いられるリファマイシン誘導体は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0040】
また、リファマイシン誘導体含有組成物とは、リファマイシン誘導体を含有する組成物であればよく、例えば、抗凝固薬、抗血小板物質、抗痙薬、抗菌薬、抗腫瘍薬、抗微生物剤、抗炎症剤、抗物質代謝剤、免疫抑制剤等や、その他薬剤を含んでいてもよい。
【0041】
2.リファマイシン誘導体含有組成物を、傷害組織に選択的にデリバリーする製剤の調製
薬剤を傷害組織に選択的にデリバリーするために、本発明で用いられるリファマイシン誘導体を含有する組成物は、マイクロ粒子またはナノ粒子に封入される。
【0042】
粒子の大きさは、動的光散乱式法により測定した場合、平均粒子径として、その上限が、10,000nm以下であり、好ましくは2,000nm以下であり、より好ましくは1,000nm以下であり、さらに好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは400nm以下、特に好ましくは250nm以下である。また、その下限は、1nm以上であり、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは50nm以上であるのが好ましい。このような粒子径とすることにより、薬剤が傷害組織に選択的にデリバリーされることとなる。
【0043】
また、製剤中のリファマイシン誘導体の量は、通常は約10〜20%(w/w)が好ましい。
【0044】
リファマイシン誘導体含有組成物を封入するマイクロ粒子またはナノ粒子は、生理活性を持たないポリマー等で構成され、表面改質剤を当該粒子表面に持つ構造をとる。
【0045】
マイクロ粒子またはナノ粒子を構成するポリマーとしては、例えば、生分解性ポリマーが挙げられる。生分解性ポリマーとは、生体内で分解・消失する性質を有する高分子であり、生理活性を持たないポリマーであればどのようなものであってもよい。このようなポリマーとしては、例えば乳酸、グリコール酸、酪酸、ヒドロキシ酪酸またはシュウ酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、グリコール酸などのホモポリマー(重合体)、並びにこれらのコポリマー(共重合体)があげられ、好ましくは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体であり、さらに好ましくは、乳酸・グリコール酸共重合体である。なお、光学活性体は、d体、l体またはそれらの混合物のいずれであってもよい。
【0046】
乳酸−グリコール酸共重合体としては、乳酸とグリコール酸を約0.01:1〜1:0.01、好ましくは1:5〜10:1、さらに好ましくは1:1〜6:1の比率で含む、分子量約2,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは5,000〜85,000のものがあげられる。
【0047】
本発明に用いられる表面改質剤とは、粒子の表面を変化させる性質を有する生物活性剤となりうる化学的または生物学的化合物のことを示し、組織または細胞への粒子を結合させること、投与部位における保持を含む粒子の持続放出性を強化すること、粒子に封入したリファマイシン誘導体組成物を保護すること、抗血栓溶解効果を付与すること、懸濁性を改善すること、及び粒子の凝集を防ぐことのうち少なくとも1つ以上の目的を実施するために使用される。
【0048】
表面改質剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、セルロース、酢酸セルロース、フタル酸セルロース、レシチン、キトサン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩又はカルシウム塩、非晶質セルロース、ポラキソマー、ポロキサミン、デキストラン、DEAE−デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ドデシル硫酸ナトリウム、及びケイ酸が挙げられ、好ましくは、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコールである。
【0049】
ポリビニルアルコール(PVA)としては重合度100〜5,000のものが挙げられ、好ましくは100〜3,000、さらに好ましくは200〜2,000のものが挙げられる。また、そのけん化度は、約70〜100のものが挙げられ、好ましくは75〜95、さらに好ましくは75〜90のものが挙げられる。このようなポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの部分もしくは完全加水分解により製造することもできるが、適当な市販品も存在する。
【0050】
リファマイシン誘導体含有組成物をマイクロ粒子またはナノ粒子に封入する方法としては、粉砕法(湿式粉砕法、及び乾式粉砕法)、球形晶析法が好ましく、より具体的には、前記表面改質剤との混合粉砕、水中エマルジョン分散法、エバポレーション溶媒留去法などが挙げられる。粒子径は、例えば、粉砕法においては遊星ボールミルの粉砕ボールの径を変えることにより、球形晶析法においては溶媒の攪拌速度を調節することによりコントロールすることが出来る。
【0051】
上記のようにして得られた、リファマイシン誘導体含有組成物は、分級して用いるのが好ましい。分級する方法としては、例えば、遠心操作が挙げられる。遠心操作によれば、遠心速度を調節することにより、目的に応じて、所望の粒子径のナノ粒子を得ることができる。より具体的には、生成したナノ粒子を洗浄する際の遠心速度を数種類に分けることが挙げられ、好ましくは0〜3,000G、3,000〜20,000G、20,000〜60,000G、さらに好ましくは1,000〜2,000G、4,000〜8,000G、30,000〜50,000Gに分ける方法が挙げられる。
【0052】
薬物を封入したナノ粒子は、治療部位への投与、封入した薬物の投与形態などに応じて種々の目的に使用され、10〜1000nmの範囲、好ましくは50〜600nmの範囲で自在に平均粒子径を調節することができる。なお、1,000nm以上だと大きすぎて病変部位に入らないおそれがある。また、10nm以下だと、小さすぎて病変部位以外に入るおそれがある。このうち、粒子の直径が50〜400nmであることが、病変部位への取り込まれやすさの点から好適である。より好ましくは、250nm以下である。
【0053】
3.傷害組織の例
本発明において使用される製剤は、炎症性疾患、感染症、悪性腫瘍といった病因により細胞間の構築性が悪化している傷害組織に対して使用されうる。
【0054】
前記炎症性疾患としては血管性疾患、炎症性腸疾患、炎症性神経系疾患、炎症性肺疾患、炎症性眼疾患、慢性炎症性歯肉疾患、慢性炎症性関節疾患、関節リウマチ、皮膚疾患、骨疾患、心疾患、腎不全、慢性脱髄疾患、内皮細胞疾患、アレルギー症候群、敗血症/敗血症ショック、肝炎、髄膜炎、多発性硬化症、皮膚炎症、移植拒絶、自己免疫疾患、肥満症、風邪、鎌状赤血球貧血、糖尿病、脳卒中、及び悪性新生物化学療法または放射線療法後の炎症などがある。このうち、血管性疾患としては、動脈硬化症、動脈瘤、仮性瘤、動脈解離症、炎症性動脈疾患、非炎症性動脈疾患、透析シャント、および経皮的血管形成術後の血管再狭窄または再閉塞などがある。
【0055】
また前記感染症としては、肺炎、上気道および下気道感染症、皮膚および軟部組織感染症、骨および関節感染症、院内肺感染症、急性細菌性中耳炎、細菌性肺炎、複雑性感染症、非複雑性感染症、腎盂腎炎、腹腔内感染症、深部膿瘍、細菌性敗血症、中枢神経系の感染症、菌血症、創傷感染、腹膜炎、髄膜炎、火傷の後の感染症、尿生殖路感染症、消化管感染症、骨盤炎症性疾病、心内膜炎または血管内感染症などがある。
【0056】
また前記悪性腫瘍としては、脊髄腫瘍、褐色細胞腫、進行悪性疾患、アミロイド症、神経芽細胞腫、髄膜腫、血管外皮細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽細胞腫、膠芽細胞腫、脳幹神経膠腫、予後不良の悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、未分化星細胞腫、未分化乏突起神経膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスC&D結腸直腸癌、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、カロタイプ急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、局在性もしくは転移性黒色腫、腹膜癌、漿液性乳頭癌、婦人科肉腫、軟組織肉腫、セルロデルマ、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維形成異常症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除したハイリスク軟組織肉腫、切除不能な肝細胞癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無痛無症候性骨髄腫、輸卵管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性IV期非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、乳頭甲状腺癌、濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、または平滑筋腫などがある。
【0057】
4.傷害組織への徐放
リファマイシン誘導体を含有する傷害組織に選択的にデリバリーされる製剤を血中に徐放する場合の経路は特に限定されず、経口投与、あるいは、筋肉内投与、動脈内投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、経皮投与、粘膜投与、吸入投与、およびインプラントを利用した投与のいずれでもよい。
【0058】
上記インプラントは、ステント、ステントグラフト、人工血管、カテーテル、人工心弁、ペースメーカーのリード線、骨ネジ、人工骨、人工気管、または縫合糸のいずれでもよい。
【実施例】
【0059】
以下の実施例では、PLGAを用いたリファマイシン誘導体を含むナノ粒子が傷害組織に蓄積しやすいことを説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)リファラジル含有PLGAナノ粒子の作製
リファマイシン誘導体の一種であるリファラジル(112.5mg)、PLGA(和光純薬工業(株)製、750mg)をアセトン:エタノール(2:1)混合液(22.5ml)に溶解し、撹拌中(400rpm)の40度の0.2%PVA水溶液(375ml)に1ml/minの速度で滴下した。そのまま撹拌を2時間続けた後、有機溶媒を留去した。留去後、得られた液を遠心分離し(40,000G、20分)、上澄み液を廃棄して残渣(ナノ粒子)を得た。さらに、残渣を蒸留水に分散させ、再び遠心分離した。得られた残渣に少量の水を加えて再分散させ、24時間真空乾燥してナノ粒子を得た。なお、PLGAはPLGA7520、PLGA7505、PLGA5005(いずれも和光純薬工業(株)製)を用いた。
【0061】
得られたナノ粒子を精製水に再懸濁させ、リファラジルの含有率と平均粒径を測定した。含有率は、粒子懸濁液にアセトニトリル、メタノールを加え、リファラジルの濃度を測定することにより導き出した。また、平均粒径は動的光散乱式粒径分布測定装置(LB−550、(株)堀場製作所製)により測定した。その結果、3種類とも含有率は10〜20%、平均粒径は200〜400nmの間にあった。
【0062】
(実施例2)PLGAナノ粒子からのリファラジルの溶出性
前記実施例1にて作製した3種類の粒子に5%ウシ胎児血清含有の培地を加え、粒子濃度が500μg/mlとなるように再分散させ、一定時間(1、3、7、14、21、28日)37℃にて放置した。一定時間放置後、遠心分離し、上清中のリファラジル濃度を測定することにより粒子からの溶出率を求めた。
【0063】
図1は、経過時間とリファラジル溶出率の関係を示すグラフである。
図1に示されるように、時間の経過と共にリファラジル含有粒子からリファラジルが溶出した。その溶出速度は分解の速いPLGAほど速かった。
【0064】
(実施例3)動脈へのリファラジルの集積
血管はウサギ腹部大動脈を用いた。傷害動脈は、市販の動脈閉塞除去用バルーンカテーテルを用いてウサギの腹部大動脈を擦過し、1〜2週間後に腹部大動脈を摘出することにより得た。
【0065】
摘出した腹部大動脈を約1〜1.5cmの幅でカットし、長軸方向に沿って切開した。次に、下室をDMEM(10%牛胎児血清、2mMグルタミン、100U/mLペニシリン、0.1mg/mLストレプトマイシンを含む)で満たしたブラインドウェル(BW200S、家田貿易株式会社)に内腔側が上方になるよう血管を取り付けた。次に、上室に200μLのリファラジル含有PLGAナノ粒子懸濁液(PLGA7520を用いて前記実施例1に記載した方法で粒子を作製し、培地を用いてリファラジル濃度が1μMとなるように再分散させ調整した)を加え、CO2インキュベーターにて所定時間(10、120分)インキュベートした。培養終了後、上室の培地を除去し、PBS(−)にて上室を洗浄した。ブラインドウェルから血管を取り出し、余分な水分を除去した後、透過面のみを切り取り、組織中のリファラジル含量を測定した。この結果を図2および図3に示す。図2及び3は、インキュベート時間と動脈中のリファラジル含有量との関係を示すグラフである。図2は正常動脈(バルーンカテーテルで擦過していない動脈)を、図3は傷害動脈を用いた場合である。
【0066】
リファラジルの抽出法はFolchの方法を参考にした。すなわち、6mLのC−M液(クロロホルム:メタノール=2:1)を加え、1昼夜放置した。遠心分離(3,000rpm(1,200G)、10分、4℃)し、別の50mL遠沈管に溶媒を回収した。残渣に2mlのC−M液を加えて攪拌し、溶液を回収した。回収した溶媒に2mLの0.04%塩化マグネシウム溶液を加え、攪拌した。遠心分離(3,000rpm(1,200G)、10分、4℃)し、上清を除去した。除去した上清と等量のC−M−W液(クロロホルム:メタノール:蒸留水=3:48:47)を加え、攪拌した。遠心分離(3,000rpm(1,200G)、10分、4℃)し、上清を除去した。窒素にて溶媒を留去し、抽出物を乾固した。350μLのメタノールを加えて抽出物を溶解し、リファラジルの濃度を測定した。
【0067】
(比較例1)
比較例1では、リファラジル含有PLGAナノ粒子懸濁液に替えてリファラジル溶液(1μM、培地を用いて調製)を用いたほかは前記実施例1と同様の方法で実験した。実験結果を図2および図3に示す。
【0068】
図2に示されるように、120分間インキュベート後の動脈中のリファラジル含量は、溶液では大きく増加するのに対し、粒子懸濁液では殆ど増加しなかった。このことから、粒子懸濁液の状態ではリファラジルは正常動脈に蓄積しにくいことが示された。
また、図3に示されるように、120分間インキュベート後の動脈中のリファラジル含量は、溶液と同様に粒子懸濁液でも大きく増加した。
【0069】
(実施例4)遠心操作により分級したリファラジル含有PLGAナノ粒子の作製
リファマイシン誘導体の一種であるリファラジル(112.5mg)、PLGA7520(和光、227.3mg)をアセトン:エタノール(2:1)混合液(22.5ml)に溶解し、撹拌中(400rpm)の40度の0.2%PVA水溶液(375ml)に1ml/minの速度で滴下した。そのまま撹拌を2時間続け、有機溶媒を留去した。留去後、得られた液を遠心分離し(1,500G、20分)、上澄み液を回収し、残渣(ナノ粒子)を得た。回収した上澄み液を遠心分離(5,000G、20min)し、上澄み液を回収し、残渣を得た。さらに、回収した上澄み液を遠心分離し(40,000G、20min)残渣を得た。得られた残渣を再度遠心分離した。得られた残渣に少量の水を加えて再分散させ、24時間真空乾燥してナノ粒子を得た。
【0070】
得られたナノ粒子を10%ウシ胎児血清含有の培地に再懸濁させ、粒度分布計(HORIBA LB−550)を用いて算術平均粒径を測定した。その結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
(実施例5)動脈へのリファラジルの集積
傷害血管は、ウサギの動脈をバルーンで擦過することにより得た。すなわち、市販の動脈閉塞除去用バルーンカテーテルを用いてウサギの腹部大動脈を傷害し、5日後に腹部大動脈を摘出した。
【0073】
摘出した腹部大動脈を約1〜1.5cmの幅でカットし、長軸方向に沿って切開した。次に、下室を培地で満たしたブラインドウェル(BW200S、家田貿易株式会社)に内腔側が上方になるよう血管を取り付けた。次に、上室に200μLの上記実施例4で作製したリファラジル含有PLGAナノ粒子懸濁液(1μM、培地を用いて懸濁)を加え、CO2インキュベーターにて所定時間(120分)インキュベートした。培養終了後、上室の培地を除去し、PBS(−)にて上室を洗浄した。ブラインドウェルから血管を取り出し、余分な水分を除去した後、透過面のみを切り取り、組織中のリファラジル含量を測定した。なお、培地はDMEM(10%牛胎児血清、2mMグルタミン、100U/mLペニシリン、0.1mg/mLストレプトマイシンを含む)を用いた。この結果を図4に示す。図4は、使用した粒子の粒径と動脈中のリファラジル含有量との関係を示すグラフである。
なお、リファラジルの抽出は実施例3と同様の方法で行った。
【0074】
(比較例2)
比較例2では、リファラジル含有PLGAナノ粒子懸濁液に替えてリファラジル溶液(1μM、培地を用いて調製)を用いたほかは前記実施例5と同様の方法で実験した。実験結果を図4に示す。
【0075】
図4に示されるように、120分間インキュベート後の動脈中のリファラジル含量は、40,000Gで分級した粒子を使用した場合では他の遠心速度で分級した場合、及びリファラジル溶液を使用した場合よりも多いことが示された。このことから、リファラジル含有粒子懸濁液は、傷害動脈に蓄積し易く、さらに粒径によっても異なることが示された。
【0076】
以上より、リファラジル含有粒子懸濁液は、正常動脈には蓄積し難く、傷害動脈に蓄積し易いことが示された。したがって、リファラジル含有粒子は、正常組織に比べ病変組織に選択的にデリバリーする製剤として有用であり、さらにその平均粒径を調整することにより(特に粒径が190nm程度の場合に)、さらに効果が上がることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は経過時間とPLGAナノ粒子からのリファラジルの溶出率の関係を示したグラフである。
【図2】図2はインキュベート時間と正常動脈中のリファラジル含有量の関係を示したグラフである。
【図3】図3はインキュベート時間と傷害動脈中のリファラジル含有量の関係を示したグラフである。
【図4】図4はナノ粒子の粒子径と傷害動脈中のリファラジル含有量の関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファマイシン誘導体含有組成物がマイクロ粒子またはナノ粒子に封入された、正常組織に比べ傷害組織に当該組成物を選択的にデリバリーすることを特徴とする製剤。
【請求項2】
前記リファマイシン誘導体が、下記式(I)
【化1】

(式(I)中、X1は酸素原子または硫黄原子を示し、R1はアセチル基または水素原子を示し、R2はメチル基またはヒドロキシメチル基を示し、R3、R4は同一または相異なり、水酸基、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、下記(II)式で表される基、または、下記式(IV)で表される基を示す)で表されることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【化2】

【化3】

上記式(II)中、R5、R6は同一または相異なり、炭素数1から3のアルキル基、または式(III)で表される基を示す。
【化4】

(式(III)中、jは1から3の整数を示す)
上記式(IV)中、R7、R8は同一または相異なり、水素原子または炭素数1から3のアルキル基を示し、X2は酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、下記式(V)で表される基、または、下記式(VI)で表される基を示す。
【化5】

【化6】

上記式(V)中、R9、R10は同一または相異なり、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、またはR9とR10が結合して下記式で表される基を示す。
−(CH2k
(式中、kは1から4の整数を示す)
上記式(VI)中、mは0または1を示し、R11は水素原子、炭素数1から7のアルキル基、または下記式で表される基を示す。
−(CH2n3
(式中、nは1から4の整数を示し、X3は炭素数1から3のアルコキシ基、ビニル基、エチニル基、または下記式(VII)で表される基を示す。)
【化7】

【請求項3】
前記リファマイシン誘導体は、前記式(I)のX1が酸素原子であり、R1がアセチル基または水素原子を示し、R2はメチル基またはヒドロキシメチル基を示し、R3、R4は同一または相異なり、水酸基、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、または式(VIII):
【化8】

(式中、R12は水素原子、または炭素数1から7のアルキル基を示す)で表されるリファマイシン誘導体またはその生理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記リファマイシン誘導体は、前記式(I)のX1が酸素原子であり、R1がアセチル基であり、R2がメチル基であり、R3が水酸基であり、R4が式(IX):
【化9】

で表されるリファラジル{Rifalazil、3'-Hydroxy−5’−(4−isobutyl−1−piperazinyl)benzoxazinorifamycin、KRM1648}またはその生理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記リファマイシン誘導体含有組成物を封入する粒子の平均粒径が50から10000nmの範囲にあることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
前記リファマイシン誘導体含有組成物を封入する粒子が、平均粒径50〜400nmに分級されたナノ粒子であることを特徴とする請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記リファマイシン誘導体含有組成物を封入するナノ粒子が、平均粒径250nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記マイクロ粒子またはナノ粒子が生分解性ポリマーで構成され、表面改質剤を当該粒子表面に有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸との共重合体、レシチン、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、澱粉、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−ヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記生分解性粒子が乳酸とグリコール酸との共重合体からなることを特徴とする請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記表面改質剤が、カルボキシメチルセルロース、セルロース、酢酸セルロース、フタル酸セルロース、レシチン、キトサン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩又はカルシウム塩、非晶質セルロース、ポラキソマー、ポロキサミン、デキストラン、DEAE−デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ドデシル硫酸ナトリウム、及びケイ酸からなる群から少なくとも1つ以上選択されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
前記傷害組織が、疾患により細胞間の構築性が悪化している組織であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の製剤。
【請求項13】
前記疾患が炎症性疾患、感染症、悪性腫瘍から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記炎症性疾患が血管性疾患、炎症性腸疾患、炎症性神経系疾患、炎症性肺疾患、炎症性眼疾患、慢性炎症性歯肉疾患、慢性炎症性関節疾患、関節リウマチ、皮膚疾患、骨疾患、心疾患、腎不全、慢性脱髄疾患、内皮細胞疾患、アレルギー症候群、敗血症/敗血症ショック、肝炎、髄膜炎、多発性硬化症、皮膚炎症、移植拒絶、自己免疫疾患、肥満症、風邪、鎌状赤血球貧血、糖尿病、脳卒中、及び悪性新生物化学療法または放射線療法後の炎症から選択されるものであることを特徴とする請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記血管性疾患が動脈硬化症、動脈瘤、仮性瘤、動脈解離症、炎症性動脈疾患、非炎症性動脈疾患、透析シャント、および経皮的血管形成術後の血管再狭窄または再閉塞から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記感染症が肺炎、上気道および下気道感染症、皮膚および軟部組織感染症、骨および関節感染症、院内肺感染症、急性細菌性中耳炎、細菌性肺炎、複雑性感染症、非複雑性感染症、腎盂腎炎、腹腔内感染症、深部膿瘍、細菌性敗血症、中枢神経系の感染症、菌血症、創傷感染、腹膜炎、髄膜炎、火傷の後の感染症、尿生殖路感染症、消化管感染症、骨盤炎症性疾病、心内膜炎または血管内感染症から選択されることを特徴とする請求項13に記載の製剤。
【請求項17】
前記悪性腫瘍が、脊髄腫瘍、褐色細胞腫、進行悪性疾患、アミロイド症、神経芽細胞腫、髄膜腫、血管外皮細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽細胞腫、膠芽細胞腫、脳幹神経膠腫、予後不良の悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、未分化星細胞腫、未分化乏突起神経膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスC&D結腸直腸癌、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、カロタイプ急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、局在性もしくは転移性黒色腫、腹膜癌、漿液性乳頭癌、婦人科肉腫、軟組織肉腫、セルロデルマ、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維形成異常症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除したハイリスク軟組織肉腫、切除不能な肝細胞癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無痛無症候性骨髄腫、輸卵管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性IV期非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、乳頭甲状腺癌、濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、または平滑筋腫から選択されることを特徴とする請求項13に記載の製剤。
【請求項18】
血中への徐放が、経口投与、あるいは、筋肉内投与、動脈内投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、経皮投与、粘膜投与、吸入投与、およびインプラントを利用した投与からなる群より選択されるいずれかの方法により行われることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の製剤。
【請求項19】
前記インプラントが、ステント、ステントグラフト、人工血管、カテーテル、バルーンカテーテル、人工心弁、ペースメーカーのリード線、骨ネジ、人工骨、人工気管、または縫合糸であることを特徴とする請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
リファマイシン誘導体含有組成物を球形晶析法によりマイクロ粒子またはナノ粒子に封入することを特徴とする、正常組織に比べ傷害組織に選択的にデリバリーする製剤の製造方法。
【請求項21】
リファマイシン誘導体含有組成物を前記表面改質剤と混合粉砕することによりマイクロ粒子またはナノ粒子に封入することを特徴とする、正常組織に比べ傷害組織に選択的にデリバリーする製剤の製造方法。
【請求項22】
リファマイシン誘導体含有組成物を生分解性ポリマーから構成される粒子に封入することを特徴とする請求項20または21に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−137922(P2009−137922A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339113(P2007−339113)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】