説明

リフター装置付自走式スライム処理機

【課題】 場所打ちコンクリート杭を施工するための杭孔に残留しているスライムを地上側に汲み上げることが可能で、かつ重量物の移動を可能とするリフター装置付自走式スライム処理機を提供する。
【解決手段】 少なくとも水平方向に回動可能なブーム14を有し、進行方向の左右に設けられた無限軌道11によって地表GLを自走可能な自走装置本体10と、ブーム14に吊り具30を介して吊下げられ地表GLから地中に延びる杭孔90の底部に残留しているスライムSを地上側に汲み上げ可能な水中ポンプ40と、自走装置本体10における左右の無限軌道11の間に位置するロアフレーム13に取付けられ、地表GL側に位置する発電機100を持ち上げることが可能なリフター装置60と、を備え、リフター装置60の発電機100を積載する荷台80は、自走装置本体10の前進方向に移動した状態のブーム14に吊下げられた水中ポンプ40と無限軌道11の進行方向前端部11aとの間に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリート杭を施工するための杭孔に残留しているスライムを地上側に汲み上げることが可能で、かつ重量物の移動が可能なリフター装置付自走式スライム処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎である場所打ちコンクリート杭を施工するために、地表から垂直に地中を掘削し杭孔を形成することが行われている。
【0003】
この作業には、主に杭孔を掘削するアースドリル機などの掘削機と相判としてのクローラクレーンとが必要である。クローラクレーンの使用台数は、作業現場の広さや工事費などによって決定するが、必要最小限の台数に抑えられており、通常は掘削機1台につき1台である。場所打ちコンクリート杭の施工は、1本の造成が終了してから次の杭を施工するのではなく、時間の間隔をずらして並行に作業が行われる。クローラクレーンは、アースドリル機など重機械の解体部品、掘削用バケットやケーシングやトレミー管などの施工用品、鉄筋カゴや構真柱などの杭構成部品、あるいは発電機や資材や各種の小物を吊って移動させる作業にも使用されることから、作業現場での使用頻度が著しく高い。
【0004】
ところで、杭孔の形成に際しては、掘削土砂の搬出促進、地下水の噴出防止、杭孔壁の崩壊防止などのために、杭孔に安定液が投入される。安定液を用いた掘削作業においては、スライム(砂などを主体とする堀り屑)が発生し、スライムは杭孔の底部に堆積する。スライムは、コンクリートと混じって打設されると、基礎杭の支持力に悪影響を及ぼすため、コンクリートの打設前に十分に除去する必要がある。
【0005】
このスライムを処理する手段として、水中ポンプをクローラクレーンで吊下げた状態で水中ポンプを杭孔の底部に降ろしスライムを除去する方法や、杭孔内に挿入したトレミー管の上部にポンプを設置し、そのポンプおよびトレミー管をクローラクレーンで吊った状態でスライムを除去する方法がある。これらの方法では、ポンプをクローラクレーンでスライム処理場所に移動し、ポンプを吊下げたままの状態で作業を行っている。
【0006】
また、アースドリル機のケリーバの下端部に水中ポンプを取付ける方法では、作業中にクローラクレーンの補助を必要としないが、水中ポンプを移動させる場合にはクローラクレーンを必要とする。
【0007】
従来から、水中ポンプを懸架する設備を一体化したスライム除去装置は知られている(例えば、特許文献1参照。)が、この場合もスライム除去装置そのものをクレーンで移動させる必要がある。そこで、水中ポンプを移動させる際に、クレーンを要しない自走式のスライム処理装置が本出願人によって開発されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−316929号公報
【特許文献2】特許第4412679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、水中ポンプやトレミー管の吊下げ手段がクローラクレーンや掘削機である場合は、クローラクレーンや掘削機がスライム処理によって長時間拘束されるため、他の重量物の移動や掘削作業ができなくなる。水中ポンプを懸架する設備を一体化したスライム除去装置では、スライム処理中にクレーンが拘束されることはないが、この装置をスライム処理場所に移動させるにはクレーンが必要となるため、クレーンを他の作業で使用しているときは、そのクレーン作業の終了を待たなくては、次の作業が進められない状況である。
【0010】
特許文献2の自走式スライム処理装置は、クレーンを使用せずに自力で移動することが可能となっており、水中ポンプを移動させる際にはクレーンによる制約を受けることはない。しかし、電動式の水中ポンプを稼動させるには、水中ポンプに電力を供給する発電機が必要であり、発電機の移動にはクレーンなどの移動手段が必要となる。とくに、生コンクリートの打設中は、複数本が連結されたトレミー管を順次減らしていく必要があるため、クレーンを独占使用する時間が長い。また、生コンクリートの打設後は、生コンクリートが固化しないうちに構真柱の打設準備と構真柱の打設をする必要があり、クレーンを長時間使用することになる。このように、長く連続的にクレーンを独占使用すると、他の作業に影響を及ぼすことになる。
【0011】
そこでこの発明は、場所打ちコンクリート杭を施工するための杭孔に残留しているスライムを地上側に汲み上げることが可能で、かつ重量物の移動を可能とするリフター装置付自走式スライム処理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、少なくとも水平方向に回動可能なブームを有し、進行方向の左右に設けられた走行部によって地表を自走可能な自走装置本体と、前記ブームに吊り具を介して吊下げられ前記地表から地中に延びる杭孔の底部に残留しているスライムを地上側に汲み上げ可能な水中ポンプと、前記自走装置本体における前記左右の走行部の間に位置するロアフレームに取付けられ、前記地表側に位置する重量物を持ち上げることが可能なリフター装置と、を備え、前記リフター装置の前記重量物を積載する荷台は、前記自走装置本体の前進方向に移動した状態の前記ブームに吊下げられた前記水中ポンプと前記走行部の進行方向前端部との間に位置することを特徴とするリフター装置付自走式スライム処理機である。
【0013】
この発明によれば、重量物をリフター装置によって地表から持ち上げた状態で、自走装置本体が走行部によって地表を自走することにより、重量物を所望の位置に移動させることが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリフター装置付自走式スライム処理機において、前記リフター装置は、前記ロアフレームに設けられる第1のブラケットと、前記第1のブラケットと対向して設けられ、前記自走装置本体の前進方向前方に配置される第2のブラケットと、前記第1のブラケットに一方が揺動可能に連結されるとともに、前記第2のブラケットに他方が揺動可能に連結され、前記第1のブラケットと前記第2のブラケットによって平行リンクを構成する平行リンク部材と、前記ロアフレーム側に一方が連結され、前記第2のブラケットに他方が連結される伸縮可能なアクチュエータと、前記第2のブラケットに連結され、前記アクチュエータの伸縮によって前記地表に対して平行に昇降可能な荷台と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のリフター装置付自走式スライム処理機において、前記リフター装置の前記荷台には、前記ブームに前記吊り具を介して吊下げられた前記水中ポンプが前記重量物と接触するのを防止する防護柵が着脱可能に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、自走装置本体は、スライムを汲み上げる水中ポンプを移動させるだけでなく、地表の重量物を所望の位置に移動させることが可能となるので、自走装置本体の利用価値をさらに高めることができる。これにより、場所打ちコンクリート杭の施工時における重量物の移動作業を、クローラクレーンの制約を受けることなく効率よく行うことができ、作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0017】
また、リフター装置の荷台は、自走装置本体の前進方向に移動した状態のブームに吊下げられた水中ポンプと走行部の進行方向前端部との間に位置するので、従来利用されていなかった水中ポンプと走行部との間のデッドスペースを荷台の配置スペースとして有効利用することができる。したがって、リフター装置の荷台の追加にも関わらず、スライム処理機が大型化するのを回避することが可能となり、狭い場所におけるコンクリート杭の施工の際にも、スライム処理に支障をきたすことがない。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、重量物を載せる荷台は、地表に対して平行に昇降可能であるので、重量物を安定した状態で昇降させることができ、作業の安全性を確保することができる。また、荷台は、平行リンク部材を介して自走装置本体のロアフレームに設けられる第1のブラケットに連結されるので、荷台を自走装置本体の底部側で支持することができ、自走装置本体の安定化を図ることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、リフター装置の荷台には、ブームに吊り具を介して吊下げられた水中ポンプが重量物と接触するのを防止する防護柵が着脱可能に設けられるので、水中ポンプと重量物との機械的干渉を確実に回避することができ、干渉による重量物の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係わるリフター装置付自走式スライム処理機の側面図である。
【図2】図1のリフター装置付自走式スライム処理機の平面図である。
【図3】図1の自走式スライム処理機に取付けられたリフター装置の側面図である。
【図4】図3のリフター装置の平面図である。
【図5】図3のリフター装置の正面図である。
【図6】図3のリフター装置の部分拡大平面図である。
【図7】図6のE−E線に沿う断面図である。
【図8】図1のリフター装置付自走式スライム処理機によるスライム処理作業を示す断面図である。
【図9】図8の杭孔の底部近傍を示す拡大断面図である。
【図10】図1のリフター装置付自走式スライム処理機による重量物の配置状態を示す平面図であって、(a)〜(e)は重量物の配置位置または自走装置本体の停止位置をそれぞれ変えた場合を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係わるリフター装置付自走式スライム処理機における防護柵の側面図である。
【図12】図11の防護柵の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1〜図10は、この発明の実施の形態1を示しており、とくに図1および図2はスライムSを除去するためのリフター装置付自走式スライム処理機1を示している。図1および図2において、リフター装置付自走式スライム処理機1は、自走装置本体10と、吊り具30と、水中ポンプ40と、傾倒手段50と、リフター装置60とを有している。
【0023】
自走装置本体10は、走行部としての無限軌道11と、旋回フレーム12と、ロアフレーム13と、ブーム14と、ケーブル用滑車15と、ケーブル用ドラム16と、ホース用ドラム17と、ホースガイド部22と、巻上げ機23を有している。無限軌道11は、ロアフレーム13の左右にそれぞれ設けられている。自走装置本体10は、左右の無限軌道11によって、地表GLを前後方向および左右方向に自走可能となっている。ロアフレーム13は、左右の無限軌道11を支持するとともに、旋回フレーム12を回動可能に支持する機能を有している。
【0024】
旋回フレーム12は、ロアフレーム13の上面側に設けられている。旋回フレーム12の運転室内には、自走装置本体10を操作するための操作レバーや計器などが配置されている。旋回フレーム12には、ブーム14が連結されている。ブーム14は、軸方向に伸縮可能であり、かつ旋回フレーム12側を中心として上下方向に揺動可能となっている。図2に示すように、ブーム14は、旋回フレーム12の旋回運動に伴い左右方向(矢印Z方向)にも回動可能となっている。
【0025】
図2に示すように、ブーム14の先端部には、ケーブル用滑車15が回転自在に取付けられている。旋回フレーム12の後部側には、ケーブル用ドラム16が設けられている。ケーブル用ドラム16は、水中ポンプ40に電力を供給するための電力ケーブル21の巻き取りおよび巻き出しを行う機能を有している。旋回フレーム12には、ケーブル用滑車15とケーブル用ドラム16との間に位置する電力ケーブル21を受け止めるガイドローラ19が設けられている。旋回フレーム12のケーブル用ドラム16と隣接する位置には、ホース用ドラム17が設けられている。ホース用ドラム17は、旋回フレーム12の後部側に設けられた軸受部18を中心として軸心回りに回転可能となっている。ホース用ドラム17は、水中ポンプ40からのスライムSを杭孔90の外へ排出するホース20の巻き取りおよび巻き出しを行う機能を有している。ブーム14の先端部には、ホース20の巻き取りおよび巻き出し時の位置ずれを防止する円弧状のホースガイド部22が設けられている。
【0026】
自走装置本体10には、水中ポンプ40を杭孔90内で昇降させる吊り具30が吊り下げられている。吊り具30は、ワイヤーロープ31や滑車32、34などを有している。第一の滑車32は、ブーム14の先端部に取付けられており、第二の滑車34は水中ポンプ34側に設けられている。ワイヤーロープ31は、自走装置本体10における巻上げ機23の巻き上げドラム24に連結されており、巻き上げドラム24の回動によってワイヤーロープ31の巻き取りおよび巻き出しが行われるようになっている。
【0027】
自走装置本体10のブーム14には、吊り具30を介して水中ポンプ40が吊下げられている。図9に示すように、吊り具30の滑車34は、水平方向に回動可能な回動フレーム38側に固定されており、回動フレーム38には保持フレーム39を介して水中ポンプ40が保持されている。水中ポンプ40は、ポンプ本体部41と、ポンプ部42と、吸込み部43とを有している。水中ポンプ40は、ポンプ本体部41内に収納された電動機(図示略)によりポンプ部42のインペラ(図示略)を回転駆動させ、拡底部90bに沈積したスライムSを吸込み部43から吸込む機能を有している。ポンプ部42には、吸込んだスライムSを吐出するための排出口42aが形成されている。排出口42aには、スライムSを杭孔90の外側に排出するためのホース20が接続されている。吸込み部43の底部43bは、拡底部90bの底面90cに着地可能となっている。水中ポンプ40は、安定液91や地下水のような液体のみでなく、土砂などが混在している泥水も吸込む機能を有している。
【0028】
回動フレーム38には、傾倒手段50が連結されている。傾倒手段50は、一対の支持脚51と、ストッパー56を有している。一対の支持脚51は、水中ポンプ40を中心として左右にそれぞれ配置されている。各支持脚51の上端部には、吊り具30の回動フレーム38と連結するための連結軸51aが取付けられている。連結軸51aは、回動フレーム38に形成された軸受け部(図示略)に挿入されている。一対の支持脚51は、連結軸51aを中心として下方が水平方向に揺動可能となっている。支持脚51の下端部には、杭孔90の拡底部90bの底面90cに着地可能な突起部53が形成されている。突起部53は、先端にいくにしたがって先細りとなる円錐状に形成されており、拡底部90bの底面90cに食い込み可能となっている。
【0029】
一対の支持脚51の上部には、図9に示すように、支持脚51を所定の角度θ1だけ拡底部90bの内壁面側に傾けるためのストッパー56が設けられている。傾倒手段50は、吊り具30の下降により底面90cに食い込んだ支持脚51の突起部53を中心として、角度θ1に傾けられている支持脚51を拡底部90bの垂直面90b1側にさらに角度θ2だけ傾倒させるようになっている。水中ポンプ40は、支持脚51の角度θ2の傾倒に伴って斜め下方に移動し、拡底部90bにて軸部90aの内壁面よりも半径方向外方に位置するようになっている。支持脚51の傾倒によって斜め下方に移動した水中ポンプ40は、拡底部90bの底面90cに着地した状態で、沈積したスライムSを吸込み口43から吸込むことが可能となっている。
【0030】
図3ないし図7は、リフター装置60を示している。リフター装置60は、主として、第1のブラケット61と、第2のブラケット63と、平行リンク部材65と、アクチュエータとしての油圧シリンダ71と、荷台80とを有している。
【0031】
第1のブラケット61は、下部ブラケット61aおよび上部ブラケット61bから構成されている。下部ブラケット61aは、所定の間隔をもって配置される2枚の金属板から構成されている。下部ブラケット61aは、自走装置本体10における左右の無限軌道11の間に位置する金属製のロアフレーム13の進行方向前面部に溶接によって取付けられている。上部ブラケット61bは、所定の間隔をもって配置される2枚の金属板から構成されており、下部ブラケット61aの直上に位置している。上部ブラケット61bは、下部ブラケット61aと同様にロアフレーム13の進行方向前面部に溶接によって取付けられている。
【0032】
第2のブラケット63は、自走装置本体10の前進方向前方に配置されており、第1のブラケット61と対向している。第2のブラケット63は、図6および図7に示すように、所定の間隔をもって配置される2枚の金属板から構成され、金属部材からなる荷台80のベース81に溶接によって取付けられている。
【0033】
第1のブラケット61と第2のブラケット63との間には、平行リンク部材65が設けられている。平行リンク部材65は、下部リンク部材66と上部リンク部材67とから構成されている。下部リンク部材66は、帯板状部材66aと補強部材66bとから構成されている。帯板状部材66aは、内側面側に取付けられた帯状の補強部材66bによって補強されている。帯板状部材66aの長手方向の両端部には、連結具66cが形成されている。上部リンク部材67は、パイプ状部材から構成されている。上部リンク部材67の長手方向の両端部には、連結具67aが形成されている。
【0034】
下部リンク部材66の一方の連結具66cは、下部ブラケット61aと揺動可能に連結されている。図6に示すように、下部リンク部材66の他方の連結具66cは、連結ピン66dを介して第2のブラケット63の下部と揺動可能に連結されている。上部リンク部材67の一方の連結具67aは、上部ブラケット61bと揺動可能に連結されている。図6に示すように、上部リンク部材67の他方の連結具67aは、連結ピン67bを介して第2のブラケット63の上部と揺動可能に連結されている。図3に示すように、平行リンク部材65における各連結部A、B、C、Dを結ぶ線は、平行移動のための平行四辺形を構成している。この実施の形態においては、第1のブラケット61と、第2のブラケット63と、平行リンク部材65は、アクチュエータとしての油圧シリンダ71の左右にそれぞれ配置されている。平行リンク部材65における左右の下部リンク部材66は、水平方向に延びるパイプ状の補強部材66d、66eを介して連結されている。これにより、平行リンク部材65の左右方向の剛性が高められている。
【0035】
油圧シリンダ71は、自走装置本体10から油圧ホース(図示略)を介して供給される作動油によって軸方向に伸縮可能となっている。油圧シリンダ71のシリンダ本体側は、ロアフレーム13に固定された2枚の支持板70に支持ピン71cを介して揺動可能に連結されている。2枚の支持板70は、補強部材64を介して連結されている。油圧シリンダ71の可動ロッド71aの先端部は、後述するように連結ピン71bを介して荷台80のベース81側に連結されている。
【0036】
図1および図3に示すように、平行リンク部材65には荷台80が連結されている。荷台80は、油圧シリンダ71の伸縮によって地表GLに対して平行に昇降可能となっている。また、荷台80は、軸方向に収縮した状態のブーム14に吊下げられる水中ポンプ40と無限軌道11の進行方向前端部11aとの間に位置することが可能となっている。この実施の形態においては、油圧シリンダ71の伸縮によって地表GLに対する荷台80の高さを調整することが可能となっており、油圧シリンダ71の可動ロッド71aが最大限に伸長した際には、荷台80の下面の位置は無限軌道11の下面よりも下方に位置することが可能となっている。
【0037】
図3および図4に示すように、荷台80は、ベース81、第1の連結部材82、規制部材83、爪84、第2の連結部材85と、を有している。ベース81は、図7に示すように、下板81aと、外縦板81b、内縦板81c、上板81d、補強板81e、連結板81fとから構成されている。下板81aと上板81dは、平行に配置された外縦板81bおよび内縦板81cを介して連結されている。連結板81fは、下板81aの内面側と、外縦板81bの内面側と、内縦板81cの端部と、上板81dの内面側にそれぞれ溶接によって接合されている。油圧シリンダ71の可動ロッド71aの先端部は、連結ピン71bを介して連結板81fと揺動可能に連結されている。
【0038】
ベース81には、自走装置本体10の前進方向に延びる一対の爪84が接合されている。図4に示すように、一対の爪84は、付け根側が第1の連結部材82を介して連結されている。一対の爪84は、先端部側が第2の連結部材85を介して連結されている。これにより、一対の爪84は左右方向の剛性が高められている。一対の爪84の先端部は、重量物としての発電機100の下面側への挿入を容易にするために、下面側が上方に向かって斜めに延びる傾斜面に形成されている。
【0039】
図1に示すように、旋回フレーム12は軸心Pを中心として旋回可能となっている。軸心Pに対して自走装置本体10の前進方向には、リフター装置付自走式スライム処理機1の重心を通る軸線Jが位置している。この軸線Jは、水中ポンプ40や発電機100を積載している場合の全体重心の位置を示し、図3に示すように、第1のブラケット61の下部ブラケット61aおよび上部ブラケット61bが取付けられたロアフレーム13の近傍に位置している。これにより、リフター装置付自走式スライム処理機1は、荷台80に積載された発電機100を安定した状態で移動することが可能となっている。
【0040】
つぎに、杭孔90のスライムSの除去作業手順について、図8、9を用いて説明する。
【0041】
図8は、杭孔90の底部に拡底部90bを形成した状態を示しており、杭孔90の上部には、杭孔90の内面側を補強するケーシング92が配置されている。この状態では、杭孔90には安定液91が投入されており、拡底部90bの底面90cには掘削屑であるスライムSが堆積している。スライムSの除去に際しては、図1に示す自走装置本体10を地表GL側におけるケーシング92の近傍に停止させ、吊り具30を介して吊下げられた水中ポンプ40と傾倒手段50を杭孔90内に降下させる。ここで、自走装置本体10は、図1に示すように、ブーム14の操作により水中ポンプ40と傾倒手段50を水平方向(矢印X方向)および垂直方向(矢印Y方向)に移動させることができるとともに、旋回フレーム12の旋回によりブーム14を矢印Z方向にも移動させることができるので、水中ポンプ40と傾倒手段50を杭孔90内のあらゆる位置に容易に移動させることができる。
【0042】
自走装置本体10の移動によって、ケーシング92の開口部での水中ポンプ40と傾倒手段50の位置決めが完了すると、巻上げ機23の巻き上げドラム24の駆動により吊り具30の下降が開始され、水中ポンプ40と傾倒手段50は拡底部90bに向けて降下する。図8および図9は、吊り具30に吊下げられた水中ポンプ40と傾倒手段50が拡底部90bに到達した状態を示している。この状態では、吊り具30の降下に伴い支持脚51の下端部に設けられた突起部53が拡底部90bの底面90cに着地し、突起部53は吊り具30および水中ポンプ40の重みを受けて底面90cに食い込む。ここで、支持脚51は、ストッパー56により所定の角度θ1だけ拡底部90bの内壁面としての垂直面90b1側に傾けられているので、突起部53を中心として拡底部90bの内壁面側に角度θ2だけ傾倒する。水中ポンプ40は、吊り具30に吊下げられているので、支持脚51の傾倒により軸部90aの内壁面よりも半径方向外方に移動し、拡底部90bの底面90cに着地する。すなわち、水中ポンプ40は、傾倒手段50を用いることにより、ワイヤーロープ31のみの吊下げでは移動できない領域まで水平方向に移動することが可能となる。
【0043】
水中ポンプ40が図1の状態で拡底部90bに着地すると、水中ポンプ40へ電力ケーブル21を介して電力が供給され、拡底部90bに沈積したスライムSが水中ポンプ40の吸込み口43から吸込まれる。水中ポンプ40の吸込み口43から吸込まれたスライムSは、ホース20を介して杭孔90の外部に排出される。拡底部90bの安定液91もスライムSと一緒に泥水としてホース20を介して杭孔90の外部に排出され、排出された泥水に代えて新たな安定液91が杭孔90に投入される。
【0044】
スライム処理においては、水中ポンプ40を駆動させるための電源が必要であり、この電源を得るために発電機(エンジン発電機)100が用いられる。発電機100は、荷台80に積載可能となっており、自走装置本体10によって作業領域における所望の場所に移動させることが可能となっている。
【0045】
図10は、リフター装置付自走式スライム処理機1によるスライム処理時における発電機100の配置状態を示している。図10(a)および(b)は、発電機100を荷台80に積載した状態でのスライム処理を示している。図10(a)は、水中ポンプ40を吊るブーム14と無限軌道11の進行方向とを一致させた状態を示しており、無限軌道11の進行方向前端部11aの前方に発電機100が位置している。この作業方法では、自走装置本体10は、発電機100を荷台80に載せた状態でケーシング92に向かって前進できるので、スライム除去作業の開始準備時間を短縮することができる。
【0046】
図10(b)は、水中ポンプ40を吊るブーム14と無限軌道11の進行方向とをほぼ直交させた状態を示しており、無限軌道11の進行方向前端部11aの前方に発電機100が位置している。この方法によれば、無限軌道11の側面部をケーシング92に接近させることができる。これにより、自走装置本体10を操作する際の視界が良好になるとともに、ブーム14の長さを短くできるため、安定した作業が可能となる。
【0047】
図10(c)〜(e)は、発電機100を地表GL側に置いた状態でのスライム処理を示している。図10(c)では、ケーシング92の近傍に発電機100を配置し、杭孔90の中心を通る軸線と無限軌道11の進行方向とを一致させている。この方法によれば、リフター装置付自走式スライム処理機1のオペレータとケーシング92との間に発電機100が位置しないため、操作する際の視界が良好となる。
【0048】
図10(d)では、ケーシング92の近傍に発電機100を配置し、杭孔90の中心を通る軸線と無限軌道11の進行方向とをほぼ直交させるようにしている。これにより、操作する際の視界が良好になるとともに、ブーム14の長さを短くでき安定した作業が可能となる。
【0049】
図10(e)では、ケーシング92の近傍に発電機100を配置し、杭孔90の中心を通る軸線と無限軌道11の進行方向とを一致させ、かつ旋回フレーム12に対する無限軌道11の進行方向を180度だけ変化させ、スライム処理を行うようにしている。すなわち、自走装置本体10の進行方向のバック側をケーシング92に接近させて作業を行うようにしている。これによれば、自走装置本体10とケーシングとの間に荷台80が存在せず、操作する際の視界が良好であるとともに、ブーム14の長さを短くできるため、安定した作業が可能となる。
【0050】
このように、自走装置本体10は、水中ポンプ40だけでなく、発電機100を所望の位置に移動させることが可能となるので、自走装置本体10の利用価値をさらに高めることができる。すなわち、場所打ちコンクリート杭を施工する際に、クローラクレーンによる制約を受けずに自力で発電機100やその他の重量物の移動作業を効率よく行うことができ、全施工工程における作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0051】
また、リフター装置60の荷台80は、自走装置本体10の前進方向に移動した状態のブーム10に吊下げられた水中ポンプ40と無限軌道11の進行方向前端部11aとの間に位置するので、従来利用されていなかった水中ポンプ40と無限軌道11との間のデッドスペースを荷台80の配置スペースとして有効利用することができる。したがって、リフター装置60の荷台80の追加にも関わらず、スライム処理機が大型化するのを回避することが可能となり、狭い場所におけるコンクリート杭の施工の際にも、スライム処理に支障をきたすことがない。
【0052】
さらに、荷台80は、平行リンク部材65を介して自走装置本体10のロアフレーム13に設けられる下部ブラケット61および上部ブラケット62に連結されるので、荷台80を自走装置本体10の底部側で支持することができ、自走装置本体10の安定化を図ることができる。また、平行リンク部材65は油圧シリンダ71の左右にそれぞれ配置されており、平行リンク部材65における左右の下部リンク部材66は、補強部材66d、66eを介して連結されているので、平行リンク部材65の左右方向の剛性を高めることができ、荷台80の左右方向の揺れを抑制することができる。これにより、重量物である発電機100を安定した状態で移動させることができ、重量物の移動作業時における安全性を高めることができる。
【0053】
(実施の形態2)
図11および図12は、この発明の実施の形態2を示している。実施の形態2が実施の形態1と異なるところは、防護柵85の有無のみであり、その他の部分は実施の形態1に準ずるので、準ずる部分に実施の形態1と同一の符号を付すことにより、準ずる部分の説明を省略する。
【0054】
図11および図12に示すように、リフター装置60には、防護柵85が着脱可能に設けられている。防護柵85は、ブーム14に吊り具30を介して吊下げられた水中ポンプ40が重量物である発電機100と接触するのを防止する機能を有している。防護柵85は、固定板86、支持部87、柵本体88、止め具89から構成されている。固定板86は、荷台80の各爪84の先端部に溶接によって取付けられている。支持部87は、柵本体88を支持する機能を有しており、ベース87aと差込部87bとから構成されている。差込部87bは、例えば断面形状が環状の鋼管から構成されている。差込部87bは、ベース87aから上方に向かって延びており、下端部が溶接によってベース87aと接合されている。ベース87aは、固定板86の上面側にボルトを介して取付けられている。
【0055】
柵本体88は、差込部87bよりも小径の鋼管から構成されている。図12に示すように、柵本体88は、一対の外縦柵88aと、下横柵88bと、上横柵88cと、一対の内縦柵88dを有している。各外縦柵88aの下端部は、左右の差込部87bに差し込まれている。各外縦柵88aは、上端側が発電機100の上面に近い位置まで延びている。一方の外縦柵88aの上端部と他方の外縦柵88aの上端部は、上横柵88cを介して連結されている。一方の外縦柵88aの下側と他方の外縦柵88aの下側は、下横柵88bを介して連結されている。下横柵88bと上横柵88cは、上下方向に延びる一対の内縦柵88dを介して連結されている。柵本体88は、各外縦柵88aの下端部を左右の差込部87bに差し込むことにより、または各外縦柵88aの下端部を左右の差込部87bから引抜くことにより、荷台80に対して着脱可能となっている。左右の差込部87bの上部側面には、ロープやチェーン(図示せず)を連結する止め具89が設けられている。この実施の形態においては、発電機100を積載した状態で自走装置本体10が走行すると、吊下げられた水中ポンプ40が大きく揺れる場合があるので、走行時の水中ポンプ40の揺れを抑制するロープやチェーンを結びつけるために止め具89が用いられる。
【0056】
このように構成された実施の形態2においては、リフター装置60には、防護柵85が設けられているので、自走装置本体10の走行中に、ブーム14に吊り具30を介して吊下げられた水中ポンプ40が前後方向に揺れた場合でも、水中ポンプ40は防護柵85と接触するだけであり、水中ポンプ40と発電機100との機械的な干渉を回避することができ、発電機100の干渉による損傷を未然に防止することができる。また、止め具89にロープやチェーンを結びつけて、水中ポンプ40を防護柵85に固定できるため、走行時における水中ポンプ40の揺れを抑制することができる。
【0057】
防護柵85は着脱可能に設けられているので、発電機100を積載しない場合は、柵本体88を左右の差込部87bから引抜くことができる。また、左右の差込部87bを固定板86から取外すことにより、爪84の上面側には上方に突出するものはなくなり、荷台80を実施の形態1と同様の状態で使用することができる。
【0058】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態においては、アクチュエータとして油圧シリンダ71を採用したが、アクチュエータを電動機によって伸縮する電動式シリンダから構成してもよい。また、実施の形態では、重量物としての発電機100の移動について説明したが、重量物は発電機100に限定されることはなく、生コンクリートを打設する際に用いるトレミー管や、杭孔90の検査に用いる超音波装置、吊り具など人力で移動できない他の機器や用具なども重量物に含まれる。さらに、取付けの関係上、第1のブラケット61を下部ブラケット61aと上部ブラケット61bの二つの部材から構成するようにしているが、一つの部材から構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 リフター装置付自走式スライム処理装置
10 自走装置本体
11 無限軌道(走行部)
13 ロアフレーム
14 ブーム
30 吊り具
40 水中ポンプ
60 リフター装置
61 第1のブラケット
63 第2のブラケット
65 平行リンク部材
71 油圧シリンダ(アクチュエータ)
80 荷台
85 防護柵
90 杭孔
100 発電機(重量物)
S スライム
GL 地表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水平方向に回動可能なブームを有し、進行方向の左右に設けられた走行部によって地表を自走可能な自走装置本体と、
前記ブームに吊り具を介して吊下げられ前記地表から地中に延びる杭孔の底部に残留しているスライムを地上側に汲み上げ可能な水中ポンプと、
前記自走装置本体における前記左右の走行部の間に位置するロアフレームに取付けられ、前記地表側に位置する重量物を持ち上げることが可能なリフター装置と、
を備え、
前記リフター装置の前記重量物を積載する荷台は、前記自走装置本体の前進方向に移動した状態の前記ブームに吊下げられた前記水中ポンプと前記走行部の進行方向前端部との間に位置することを特徴とするリフター装置付自走式スライム処理機。
【請求項2】
前記リフター装置は、
前記ロアフレームに設けられる第1のブラケットと、
前記第1のブラケットと対向して設けられ、前記自走装置本体の前進方向前方に配置される第2のブラケットと、
前記第1のブラケットに一方が揺動可能に連結されるとともに、前記第2のブラケットに他方が揺動可能に連結され、前記第1のブラケットと前記第2のブラケットによって平行リンクを構成する平行リンク部材と、
前記ロアフレーム側に一方が連結され、前記第2のブラケットに他方が連結される伸縮可能なアクチュエータと、
前記第2のブラケットに連結され、前記アクチュエータの伸縮によって前記地表に対して平行に昇降可能な荷台と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のリフター装置付自走式スライム処理機。
【請求項3】
前記リフター装置の前記荷台には、前記ブームに前記吊り具を介して吊下げられた前記水中ポンプが前記重量物と接触するのを防止する防護柵が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のリフター装置付自走式スライム処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−236591(P2011−236591A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107315(P2010−107315)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(508346480)株式会社高山基礎工業 (4)
【Fターム(参考)】