説明

リフレクタおよび照明装置

【課題】 ランプ装置の着脱が容易で、かつ配光不良を抑制可能なリフレクタおよび照明装置を提供する。
【解決手段】
本発明の照明装置は、ランプ配置部3の後方側に、接触面32と、掛止部35と、内部に回路部61を収容可能な空間43を備えるとともに、ランプ配置部3に対して回動可能な機構を備えた回路保持部4と、を設け、掛止部35に穴部621を合致させて、フランジ部62の前方側の部分としてポッチ622を接触面32に接触させるとともに、回路保持部4の空間43に回路部61が収容されるようにランプ装置6を配置したのち、リフレクタ2における光軸を中心とするように回路保持部4を回動させて、フランジ部62を接触面32と掛止部35とで掛止させ、回路部61を回路保持部4で保持させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用前照灯などの照明装置および照明装置に用いられるリフレクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車の前照灯に用いられる光源には、高輝度放電ランプ、いわゆるHIDランプが普及している。このランプは、自動車前照灯に着脱可能な構造となっており、例えば、特許文献1のように、自動車前照灯の後方から放電ランプを配置したのち、金属バネなどで固定するような構造が採用されている。
【0003】
しかし、特許文献1のような構造は、着脱の作業に手間がかかるという問題がある。そこで、特許文献2のように、ランプの着脱を容易にしたリフレクタやランプの発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−83703号公報
【特許文献2】国際公開第2009/130640号
【特許文献3】特開2005−71997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のような構造は、コスト面、作業面において優れたものである。しかし、欧米などで採用されている、特許文献3のような、回路と一体的に構成されたランプ(以下、ランプ装置)を装着した場合、使用中に光軸がずれ、配光が不安定となるなどの問題が生じることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、ランプ装置の着脱が容易で、かつ配光不良を抑制可能なリフレクタおよび照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の照明装置は、前方側に光を反射させる反射部、前記反射部の後方側に設けられたランプ配置部を含むリフレクタと、回路部、前記回路部の前方側に設けられ、その少なくとも一部に穴部が形成されているフランジ部、前記フランジ部の前方側に設けられたバーナー部を含み、前記バーナー部の少なくとも一部が前記反射部の内部に位置するように、前記リフレクタに配置されたランプ装置と、を備える照明装置であって、前記ランプ配置部の後方側には、接触面と、掛止部と、内部に前記回路部を収容可能な空間を備えるとともに、前記ランプ配置部に対して回動可能な機構を備えた回路保持部と、が設けられており、前記掛止部に前記穴部を合致させて、前記フランジ部の前方側の部分を前記接触面に接触させるとともに、前記回路保持部の前記空間に前記回路部が収容されるように前記ランプ装置を配置させたのち、前記リフレクタにおける光軸を中心とするように前記回路保持部を回動させて、前記フランジ部を前記接触面と前記掛止部とで掛止させ、前記回路部を前記回路保持部で保持させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ランプ装置の着脱が容易で、かつ配光不良を抑制可能なリフレクタおよび照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態の照明装置ついて説明するための図。
【図2】図1の照明装置を裏側から見た状態について説明するための図。
【図3】リフレクタについて説明するための図。
【図4】リフレクタの断面について説明するための図。
【図5】ランプ装置について説明するための図。
【図6】照明装置の断面について説明するための図。
【図7】リフレクタの回路保持部の回動について説明するための図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の照明装置ついて説明するための図。
【図9】掛止部および穴部の変形例について説明するための図。
【図10】回路保持部の変形例について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態の放電ランプ装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の照明装置について説明するための図、図2は図1の照明装置を裏側から見た状態について説明するための図である。なお、以下では便宜上、照明装置において光が放射される方向、すなわち図におけるXの方向を前方、その逆方向を後方と称して説明する。
【0011】
本実施の形態の照明装置は、自動車前照灯に使用されるものであり、主要部としてリフレクタ1を備えている。リフレクタ1は、図3および図4に示すように、反射部2とランプ配置部3と回路保持部4とで構成されている。
【0012】
反射部2は、内部に凸状の空間を備える反射鏡であり、広く開口している前方側に光を反射・出光させる構造である。その開口付近には、取り付け部21が形成されている。
【0013】
ランプ配置部3は、反射部2の後方側に設けられた筒状の部分であり、本実施の形態では反射部2と一体に構成されている。ランプ配置部3の内部には、部材を貫通するように楕円柱状の穴31が形成されている。ランプ配置部3の後方には、接触面32が形成されている。また、ランプ配置部3の後方には、接触面32を囲うように側壁33が形成されており、その側壁33と接触面32によって、穴31よりも直径は大きいが、長さは短い円柱状の穴34が形成されている。さらに側壁33には、穴34の中心方向に突出するように、板状の掛止部35が形成されている。
【0014】
回路保持部4は、ランプ配置部3の後方側に設けられた箱状の部分である。回路保持部4は壁部41と蓋部42を備えており、それらの内部にはそれぞれ直方体状の空間43と円柱状の空間44が形成されている。ここで、回路保持部4は、ランプ配置部3に対して回動可能な機構を備えている。具体的には、蓋部42の内部には弧状の空洞が設けられていて、その空洞にランプ配置部3の側壁33の後方側に形成されている鉤状部36を内蔵することで、光軸O−O’を中心とするように回路保持部4を回動可能なようにしている。
【0015】
リフレクタ1の前方側には、出射光を所定の配光にして前方側に照射させるレンズを含むレンズ構成体5が配置され、反射部2の取り付け部21に固定されている。
【0016】
リフレクタ1の後方側には、ランプ装置6が配置されている。ランプ装置6は始動器一体型の、いわゆるD3タイプ等と呼ばれるランプ装置であり、図5に示すように、回路部61とフランジ部62とバーナー部63を備えている。回路部61は、イグナイタと呼ばれるランプを始動するための回路装置であり、直方体状の樹脂ケースの内部にトランス、コンデンサなどの回路素子を内蔵し、アルミニウムなどの金属ケースで覆われてなるものである。その一辺には、点灯回路と接続するためのコネクタ611が突出形成されている。フランジ部62は、内部にバーナー部63を収容するための円柱状の空間を備えた円盤である。その前方側には等間隔で形成された3つのポッチ621、端部には切り欠き状の穴部622が形成されている。フランジ部62は、回路部61の前方側に設けられるが、本実施の形態では、回路部61と一体、具体的には上記樹脂ケースの一部として突出形成されている。
【0017】
バーナー部63は、内管と外管とからなる二重管である。内管の管軸方向の略中央には楕円状の発光部が形成されており、その内部の放電空間には希ガスや金属ハロゲン化物が封入されている。また、発光部の両端には板状の封止部が形成されており、その内部には電極マウントが封着され、電極が放電空間内で対向配置された構造となっている。バーナー部63は、外管に金属バンドを取り付け、その金属バンドの外周面をフランジ部62に形成された4つの金属舌片で狭持することにより、フランジ部62の前方側に設けられる。なお、ランプ装置6のさらに詳細な構造は、特開2010−67400号公報や国際公開第2008/78421号パンフレットを参照されたい。
【0018】
ここで、リフレクタ1にランプ装置6を装着させた状態について、図6を参照して説明する。
【0019】
図からわかるように、装着状態では、ランプ装置6は、バーナー部63の少なくとも一部、特に発光部が反射部2の内部に位置するように、リフレクタ1に配置されている。すなわち、ランプ装置6は連通している空間33、34、43、44に収容され、ランプ配置部3の後方にて保持されてなる。そのリフレクタ1に対するランプ装置6の保持は、フランジ部62を接触面32と掛止部35とで狭持させるとともに、回路部61の側面を回路保持部4の側部41の内壁面と接触させることで行われている。このような構造により、回路装置61の前後方向への動きが掛止されるとともに、ランプ装置6において重量が大きい回路部61が回路保持部4で保持されるため、自動車の走行により照明装置全体が振動等したとしても、ランプ装置6がリフレクタ2から外れることはなく、また回路部61の重みによりフランジ部62を支点にバーナー部63の位置が大きく変動し、光軸がずれて配光が悪化してしまうこともない。さらに、リフレクタ2とランプ装置6の接続部分であるフランジ部62に大きな力が加わることによって、フランジ部62が破壊されるなどの問題も生じない。
【0020】
リフレクタ1へのランプ装置6の装着について説明すると、ランプ装置6を装着前のリフレクタ1は、図7(a)のように、掛止部35と回路保持部4は水平軸H−H’に対して、ともにαだけ傾いた状態である。この掛止部35にランプ装置6の穴部622を合致、すなわち穴部622に掛止部35を挿通させることで、フランジ部62の前方側の部分、例えば3つのポッチ621と接触面32を接触させるとともに、回路保持部4の空間43に回路部61が収容されるように、ランプ装置6を配置する。つぎに、(b)のように、光軸O−O’を中心とするように回路保持部4をランプ配置部3に対して時計回りに回動させる。そうすると、掛止部35は水平軸H−H’に対してα(例えば、110度)、回路保持部4はβ(例えば、90度)傾いた状態となり、図6のように、回路部61を回路保持部4に保持した状態で、接触面32と掛止部35の間にフランジ部62を位置させることが可能となる。
【0021】
この本実施の形態の照明装置(実施例)と、回路保持部を有さない従来の照明装置に(従来例)ついて、振動を加えながら照射光を観察する試験を行った。その結果、実施例では振動を加えていても照射されている範囲における光の明暗の変化が少なく、配光が良好であることが確認されたが、従来例では振動によるランプ装置の光軸のズレにより、照射されている範囲において光の明るさが目視で確認できるほど変化し、配光が良好でないことが確認された。つまり、本発明によれば、回路部分の重量が重いランプ装置であっても、リフレクタに着脱が容易で、かつ配光不良を抑制可能であることが証明された。
【0022】
したがって、本実施の形態では、ランプ配置部3の後方側に、接触面32と、掛止部35と、内部に回路部61を収容可能な空間43を備えるとともに、ランプ配置部3に対して回動可能な機構を備えた回路保持部4と、を設け、掛止部35に穴部621を合致させ、フランジ部62の前方側の部分としてポッチ622を接触面32に接触させるとともに、回路保持部4の空間43に回路部61が収容されるようにランプ装置6を配置したのち、光軸を中心とするように回路保持部4を回動させて、フランジ部62を接触面32と掛止部35とで掛止させ、回路部61を回路保持部4で保持させたことにより、リフレクタ2に対するランプ装置6の着脱を容易に行うことができるとともに、重量の重い回路部61によって振動の影響が大になることによる光軸のズレ、さらには配光不良の発生を抑制することができる。
【0023】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態の照明装置について説明するための図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0024】
第2の実施の形態では、図8(a)のように、回路保持部4の壁部41に空間43の方向に突出するように、弾性保持部として突片部45を設け、(b)のように、回路保持部4に回路部61を挿入した場合に回路部61の一辺を突片部45によって接触させるようにしている。その際、突片部45から対向する壁までの距離をL1(mm)、回路部61の幅をL2(mm)としたとき、L1<L2としている。したがって、回路保持部4に回路部61を挿入後は、空間43の中心方向に作用する突片部45のバネ弾性によって、回路部61を回路保持部4内で弾性的に保持することができるようになるため、回路部61の保持が強固となり、振動によるバーナー部63の光軸のズレの抑制できるとともに、フランジ部62にかかる負担を軽減することができる。なお、弾性保持部はこれに限らず、突片部45の代わりにスプリングを配置したり、回路保持部4全体が弾性変形するような構造であってもよい。
【0025】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0026】
ランプ配置部3は、反射部2と別体であってもいいし、反射部2の一部として構成されているようなものでもよい。
【0027】
掛止部は、複数設けるのが望ましい。例えば、図9(a)のように、掛止部35の他に、掛止部37、38を設け、かつ(b)のように、ランプ装置6のフランジ62にも、掛止部37、38に対応する部分に穴部622、623を形成することで、ランプ配置部3へのランプ装置6の配置をさらに安定なものとすることができる。また、掛止部や穴部は特許文献2に記載のようなものであってもよい。
【0028】
回路保持部4は、回路部41のほぼ全体を覆うような構造に限らず、図10のように回路部41の上下を挟むだけの構造などであってもよく、要は、回路部41の重量を保持できるような構造であればよい。なお、図10のような場合には、下側のランプ保持部4に切り欠き部46を形成し、当該部分にコネクタ611を嵌め込んでランプ装置4の水平方向の動きを抑制するのが望ましい。
【0029】
回路部61は、始動器のみならず、バラストと呼ばれる点灯回路も含んでいるものであってもよく、すなわち、ランプ装置6は始動器と点灯回路とが一体となった、バラスト・イグナイタ一体型のランプ装置などであってもよい。
【0030】
フランジ部62は、回路部61と別体であってもよいし、金属で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 リフレクタ
2 反射部
3 ランプ配置部
32 接触面
35 掛止部
4 回路保持部
6 ランプ装置
61 回路部
62 フランジ部
621 穴部
63 バーナー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側に光を反射させる反射部、前記反射部の後方側に設けられたランプ配置部を含むリフレクタと、
回路部、前記回路部の前方側に設けられ、その少なくとも一部に穴部が形成されているフランジ部、前記フランジ部の前方側に設けられたバーナー部を含み、前記バーナー部の少なくとも一部が前記反射部の内部に位置するように、前記リフレクタに配置されたランプ装置と、を備える照明装置であって、
前記ランプ配置部の後方側には、接触面と、掛止部と、内部に前記回路部を収容可能な空間を備えるとともに、前記ランプ配置部に対して回動可能な機構を備えた回路保持部と、が設けられており、
前記掛止部に前記穴部を合致させて、前記フランジ部の前方側の部分を前記接触面に接触させるとともに、前記回路保持部の前記空間に前記回路部が収容されるように前記ランプ装置を配置させたのち、前記リフレクタにおける光軸を中心とするように前記回路保持部を回動させて、
前記フランジ部を前記接触面と前記掛止部とで掛止させ、前記回路部を前記回路保持部で保持させたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記回路保持部には、前記空間方向に突出するように弾性保持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前方側に光を反射させる反射部、前記反射部の後方側に設けられたランプ配置部、を備え、
回路部、前記回路部の前方側に設けられ、その少なくとも一部に穴部が形成されているフランジ部、前記フランジ部の前方側に設けられたバーナー部を含むランプ装置を、前記バーナー部の少なくとも一部が前記反射部の内部に位置するように配置させるリフレクタであって、
前記ランプ配置部の後方側には、前記フランジ部の前方側の部分と接触可能な接触面と、前記穴部に挿通可能であるとともに、前記フランジ部を前記接触面とにより掛止可能な掛止部と、内部に前記回路部を収容可能な空間を備えるとともに、前記リフレクタにおける光軸を中心とするように、前記ランプ配置部に対して回動可能な機構を備えた回路保持部と、が設けられていることを特徴とするリフレクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−238391(P2011−238391A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107034(P2010−107034)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】