説明

リフレクターの製造方法及びLED装置

【課題】 トランスファー成形時の離型性が十分に高く連続成形性に優れ、光半導体素子搭載用基板に必要とされる光学特性に優れる硬化物を形成可能である光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いたリフレクターの製造方法を提供すること。
【解決手段】 光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形により成形して、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターを形成する工程を備え、熱硬化性樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒及び(D)白色顔料を含有し、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含む、リフレクターの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射用熱硬化性樹脂組成物、光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置は、エネルギー効率が高く、寿命が長いことから、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、車載用途等に適用され、その需要が拡大しつつある。これに伴いLEDデバイスの高輝度化が進んでおり、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇や、直接的な光エネルギーの増大による光半導体装置の劣化を防ぐことが求められている。
【0003】
特許文献1には、可視光から近紫外光領域において高い反射率を有する熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDパッケージの製造では、光半導体素子搭載領域となる凹部を設けた形状を有する成形金型を使用するため、金型内に充填された樹脂組成物の流動性は金型内の充填位置によって変動する。このような流動性の変動は、作製されるパッケージの外観不良又はパッケージの破壊の一因となり易い。そこで、従来、基板材料として用いられる熱硬化性樹脂組成物には、成形金型からの円滑な離型を目的として、離型剤が添加されている。
【0006】
しかしながら、離型剤として使用される化合物は、熱硬化性樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂及び硬化剤等からなる熱硬化性樹脂と相溶し難いものが多い。そのため、離型剤を含む樹脂組成物を用いて基板を成形した場合、離型剤の分散不具合等に起因して外観不良が生じ易く、連続成形を行うことが難しい傾向にある。そこで、離型性に優れ、連続成形可能な光反射用熱硬化性樹脂組成物の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、トランスファー成形時の離型性が十分に高く連続成形性に優れ、光半導体素子搭載用基板に必要とされる光学特性に優れる硬化物を形成可能である光反射用熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いた信頼性の高い光半導体導体素子搭載用基板及びその製造方法並びに光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒及び(D)白色顔料を含有する光反射用熱硬化性樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方がオルガノシロキサン骨格を有する化合物を含む光反射用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明者らは、光反射用熱硬化性樹脂組成物のトランスファー成形時の離型性の向上について鋭意検討を重ねた結果、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が離型作用の高い骨格を有すると、(A)〜(C)成分同士の相溶性が向上するだけでなく、(D)成分である白色顔料の分散性にも優れることを見出した。これにより、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、トランスファー成形時における離型性が向上し連続成形を可能とし、かつ、光半導体素子搭載用基板に必要とされる光学特性に優れる硬化物を形成可能としたものと、本発明者らは推測している。
【0010】
(B)硬化剤が、オルガノシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。これにより、離型性に優れるという本発明の効果をより一層有効かつ確実に発現することができる。
【0011】
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物では、耐熱性の観点から(A)エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基と反応可能な(B)硬化剤中に含まれる活性基が0.5〜1.2当量であることが好ましい。
【0012】
光学特性をより一層向上する観点から、(D)白色顔料は、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機物を含むことが好ましい。
【0013】
(D)白色顔料の中心粒径が、0.1〜50μmであると、熱硬化性樹脂組成物中における分散性を向上することができる。
【0014】
(D)白色顔料の配合量が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10〜85体積%であると、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、より成形性に優れるものとなる。
【0015】
本発明はまた、底面及び壁面から構成される凹部を有し、凹部の底面が光半導体素子搭載部であり、凹部の壁面の少なくとも一部が本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光半導体素子搭載用基板を提供する。
【0016】
本発明はさらに、底面及び壁面から構成される凹部を有する光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、凹部の壁面の少なくとも一部を、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成する工程を備える光半導体素子搭載用基板の製造方法を提供する。
【0017】
本発明は、底面及び壁面から構成される凹部を有する光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、凹部を充填して光半導体素子を封止する封止樹脂部とを備え、凹部の壁面の少なくとも一部が、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光半導体装置を提供する。
【0018】
本発明は、光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形により成形して、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターを形成する工程を備え、該熱硬化性樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒及び(D)白色顔料を含有し、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含む、リフレクターの製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、底面及び壁面から構成される凹部を有するLED素子搭載用基板と、LED素子搭載用基板の凹部内に設けられたLED素子と、凹部を充填してLED素子を封止する封止樹脂部と、を備え、凹部の壁面が、上記方法により作製されたリフレクターから構成される、LED装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トランスファー成形時の離型性が十分に高く連続成形性に優れ、光半導体素子搭載用基板に必要とされる光学特性に優れる硬化物を形成可能である光反射用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような樹脂組成物を用いることによって、信頼性の高い光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の光半導体搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の光半導体搭載用基板の一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0023】
[光反射用熱硬化性樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係る光反射用熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒及び(D)白色顔料を含有し、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含むものである。
【0024】
以下、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0025】
<(A)エポキシ樹脂>
本実施形態に係る(A)エポキシ樹脂は、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含むことが好ましい。このようなエポキシ樹脂として、シラン化合物を有機溶媒、有機塩基及び水の存在下に加熱して、加水分解・縮合させることにより製造される、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。このようなオルガノシロキサン骨格を有するエポキシ樹脂を用いることで、光反射用熱硬化性樹脂組成物のトランスファー成形時における金型への張りつきが抑えられ、離型性が向上する。
【0026】
本実施形態において、(B)硬化剤が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含む場合、(A)エポキシ樹脂は特に限定されず、エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができる。エポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びアルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン及びイソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、並びに脂環族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらのエポキシ樹脂は、上記オルガノシロキサン骨格を有するエポキシ樹脂と併用してもよい。
【0027】
これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及び、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸ジグリシジルエステルは、比較的着色が少ないことから好ましい。同様の理由から、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸及びメチルナジック酸等のジカルボン酸のジグリシジルエステルも好適である。芳香環が水素化された脂環式構造を有する核水素化トリメリット酸、核水素化ピロメリット酸等のグリシジルエステルも挙げられる。
【0028】
硬化物の着色を抑制するために、エポキシ樹脂は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される脂肪族炭化水素基を有する脂環式エポキシ樹脂であることも好ましい。上記環式脂肪族炭化水素は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい。また、硬化物の着色をより一層低減する観点から、エポキシ樹脂は芳香環を含まないことが好ましい。
【0029】
<(B)硬化剤>
本実施形態に係る(B)硬化剤は、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含むことが好ましい。このようなオルガノシロキサン骨格を有する化合物として、例えば、オルガノシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物及びフェノール化合物を挙げられる。
【0030】
オルガノシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物として、具体的には、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【化1】

【0031】
式(1)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、RとR、又は、RとRは、それぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。R、R、R及びR10は、それぞれ独立に炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。mは1〜100の整数を示し、1〜20の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、1〜5の整数であることが更に好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、オルガノシロキサン骨格及び脂環式骨格を有している。このようなテトラカルボン酸二無水物を硬化剤として含む場合、トランスファー成形時における金型への張りつきが抑えられ、離型性がより一層向上する。
【0033】
一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、一般に、以下の方法で合成することができる。具体的には、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、オルガノハイドロジェンシロキサン化合物と不飽和炭素−炭素結合を有する脂環式カルボン酸二無水物とをヒドロシリル化反応させることで得ることができる。ヒドロシリル化反応の触媒として、白金−ビニルシロキサン錯体等の白金族金属を含む化合物(以下、「白金系触媒」という)を用いることができる。
【0034】
上記白金系触媒は、不飽和炭素−炭素結合を有する脂環式カルボン酸二無水物のアルケニル基と、オルガノハイドロジェンシロキサン化合物のヒドロシリル基との間の付加反応を促進させるための触媒である。白金族金属としては、白金、ロジウム、パラジウムが挙げられる。白金系触媒として、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールの反応生成物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ケトン錯体、白金−ホスフィン錯体のような白金化合物;ロジウム−ホスフィン錯体、ロジウム−スルフィド錯体のようなロジウム化合物;パラジウム−ホスフィン錯体のようなパラジウム化合物が例示される。これらのうち、環状脂肪族酸二無水物成分への溶解性がよく、触媒活性が良好な点から、白金−ビニルシロキサン錯体であるトリス(ジメチルビニルジシロキサン)二白金及び塩化白金酸であるヘキサクロロ白金酸が好ましい。
【0035】
不飽和炭素−炭素結合を有する脂環式カルボン酸二無水物として、例えば、ノルボルネンジカルボン酸二無水物及びシクロへキセンジカルボン酸二無水物を用いること好ましい。
【0036】
上述にようにして合成できる一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物には、ヒドロシリル化反応時に生成するメソ体及びラセミ体である光学異性体並びに環状脂肪族カルボン酸二無水物に由来するエキソ体及びエンド体である構造異性体が存在する。本実施形態においては、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を各異性体の混合物として使用してもよく、異性体を単離して使用してもよい。異性体の混合物であると幅広い温度域の融点を有するか、明確な融点を持たない場合がある。本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物においては、樹脂組成物調製時の混合分散性、トランスファー成形時の流動性の観点から、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物が明確な融点を持たない場合の方が好適である。
【0037】
耐熱性をより一層向上する観点から、一般式(1)において、RとR及びRとRがそれぞれ互いに連結して環を形成したノルボルナン骨格を有する含ケイ素テトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。このような化合物として、具体的には、下記一般式(1a)で表されるテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。式(1a)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。mは1〜100の整数を示し、1〜10の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、1〜5の整数であることが更に好ましい。
【化2】

【0038】
上記一般式(1a)で表されるテトラカルボン酸二無水物には、ケイ素原子のノルボルナン環に対する結合位置及び酸無水物基のノルボルナン環に対する結合位置により、エキソ型又はエンド型の構造異性体が存在する。例えば、化学式(1a)において、2つのケイ素原子がノルボルナン環に対してエキソ配置し、かつ、2つの酸無水物基がノルボルナン環に対してエキソ配置している場合、下記一般式(1b)で表されるエキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物となる。
【化3】

【0039】
式(1b)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。また、mは1〜100の整数を示し、1〜20の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、1〜5の整数であることが更に好ましい。
【0040】
上記エキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物は、室温(25℃)付近で液状であることから、エポキシ樹脂等の他の成分と容易に混合することができる。また、上記エキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物の粘度は、40℃で0.1〜50000Pa・sであることが好ましく、1〜1000Pa・sであることがより好ましい。上記粘度範囲であれば、100℃以上の高温で加熱しなくとも容易にエポキシ樹脂と混合でき、保存安定性に優れるエポキシ樹脂組成物を作製することができる。
【0041】
上記エキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式(2)で表される5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物と、下記一般式(3)で表されるシロキサン化合物とをヒドロシリル化反応させる工程を備える方法によって得ることができる。式(3)中、R、R、R、R10及びmは、一般式(1b)におけるR、R、R、R10及びmと同義である。
【化4】

【0042】
一般式(3)において、R、R、R及びR10がメチル基であり、mが1の場合、下記化学式(6)で表されるエキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物、すなわち、5,5’−エキソ−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物を得ることができる。
【化5】

【0043】
上記化学式(6)で表されるエキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式(6a)、(6b)及び(6c)でそれぞれ表されるテトラカルボン酸二無水物の異性体混合物である。
【0044】
化学式(6a)で表されるテトラカルボン酸二無水物において、2つのケイ素原子がノルボルナン環に対してエキソ配置し、かつ立体表記でR配置及びS配置している。
【化6】

【0045】
化学式(6b)で表されるテトラカルボン酸二無水物において、2つのケイ素原子がノルボルナン環に対して2つともエキソ配置し、かつ2つとも立体表記でR配置している。
【化7】

【0046】
化学式(6c)で表されるテトラカルボン酸二無水物において、2つのケイ素原子がノルボルナン環に対して2つともエキソ配置し、かつ2つとも立体表記でS配置している。
【化8】

【0047】
一般式(3)において、R、R、R及びR10がメチル基であり、mが2の場合、下記化学式(7)で表されるエキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物、すなわち、5,5’−エキソ−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物を得ることができる。
【化9】

【0048】
下記化学式(7)で表されるエキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式(7a)、(7b)及び(7c)でそれぞれ表されるテトラカルボン酸二無水物の異性体混合物である。
【0049】
化学式(7a)で表されるテトラカルボン酸二無水物において、末端の2つのケイ素原子がノルボルナン環に対してエキソ配置し、かつ立体表記でR配置及びS配置している。
【化10】

【0050】
化学式(7b)で表されるテトラカルボン酸二無水物において、末端の2つのケイ素原子がノルボルナン環に対して2つともエキソ配置し、かつ2つとも立体表記でR配置している。
【化11】

【0051】
化学式(7c)で表されるテトラカルボン酸二無水物において、末端の2つのケイ素原子がノルボルナン環に対して2つともエキソ配置し、かつ2つとも立体表記でS配置している。
【化12】

【0052】
一般式(3)において、R、R、R10及びR11がメチル基であり、mが4の場合、下記化学式(8)で表されるエキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物、すなわち、5,5’−エキソ−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン−1,9−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物を得ることができる。
【化13】


この場合も、化学式(6)及び(7)と同様に、R−S配置体、R−R配置体及びS−S配置体の異性体混合物である。
【0053】
上記化学式(2)で表される5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物は、市販品として入手可能であり、例えば、アルドリッチ社から試薬として販売されている。また、シクロペンタジエンと無水マレイン酸のDiels−Alder反応によって得られる5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物を熱異性化することによって合成することができる。熱異性化反応では、5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物と5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物とが1:1の混合物となるが、5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物の方がトルエン又はアセトンへの溶解度が小さいことを利用して再結晶法によって5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物を単離することができる。
【0054】
上記一般式(3)で表されるシロキサン化合物として、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサンを市販品として入手することができる。また、これらシロキサン化合物の混合物も市販されており、同様に用いることができる。
【0055】
上記一般式(1b)で表されるエキソ−エキソ型テトラカルボン酸二無水物を合成する際に用いられる一般式(3)で表されるシロキサン化合物の配合量は、理論的には、化学式(2)で示される5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物2モルに対して1モルであることが好ましいが、秤量誤差等を考慮すると、0.99〜1.01モルであることがより好ましい。一般式(3)で表されるシロキサン化合物の配合量が1.01モルを越えると、一般式(3)で表されるシロキサン化合物に5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物が1つだけ付加したモノ体が残存してしまい、これを除去するために精製工程に負荷が掛かってしまう。一方、一般式(3)で表されるシロキサン化合物の配合量が0.99モル未満になると、未反応の5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物が残存してしまい、これを除去するために精製工程に負荷が掛かってしまう。
【0056】
ヒドロシリル化反応の触媒としては、ヒドロシリル化活性があるものであれば特に限定されない。触媒活性に優れる観点から、トリス(ジメチルビニルジシロキサン)二白金(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)及びヘキサクロロ白金酸(IV)が好ましく、トリス(ジメチルビニルジシロキサン)二白金(0)がより好ましい。ヘキサクロロ白金酸(IV)は高活性ではあるが、通常は六水和物であることから、反応系に微量の水分が存在することになり、目的の酸二無水物が水によって微量であるが開環してしまうことがある。
【0057】
トリス(ジメチルビニルジシロキサン)二白金(0)は、第5版実験化学講座第21巻、346頁に記載されている方法に従い、合成することができる。また、アルドリッチ社から「Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane complex」の商品名で白金濃度2%のキシレン溶液として市販されているので、これを用いることも可能である。
【0058】
触媒の添加量は、5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物1モルに対して白金金属量として2×10−5〜2×10−3グラム原子であることが好ましく、5×10−5〜5×10−4グラム原子ことがより好ましい。触媒量が2×10−5グラム原子未満であると、反応が遅くなるだけでなく、原料中の不純物によって失活してしまうことがあり、2×10−3グラム原子を超えると、発熱反応のため反応が暴走してしまう危険性があるとともに、反応液が濃黒褐色になり脱色のために用いる活性炭の量が増える傾向がある。
【0059】
ヒドロシリル化反応時の溶媒としては、原料及び触媒を溶解させ、ヒドロシリル化反応に不活性なものであればよく、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。
【0060】
反応温度は、通常40〜100℃であり、好ましくは50〜90℃である。反応が完結するに要する時間は、触媒量と反応温度によって変化するので、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)でサンプリング分析して適宜調整することが好ましく、通常、0.5〜10時間程度である。
【0061】
ここで、ヒドロシリル化反応において、一般式(3)で表されるシロキサン化合物として、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを用いた場合、下記反応式(9)で表される副反応が起こることがある。下記化学式(9a)で表される化合物は、融点178〜179.5℃の白色結晶である。また、下記化学式(9b)で表される化合物は化学式(2)で表される5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物が水素化された化合物である。これらの化合物が混入したままエポキシ樹脂の硬化剤として使用するには、エポキシ樹脂と混合するのに180℃近くまで加熱しなければならないことになる。したがって、この化合物をテトラカルボン酸二無水物から分離除去することが好ましい。
【化14】

【0062】
上記化学式(9a)で表される化合物は、抽出により除去することができる。具体的には、化学式(9a)で表される化合物が混入している本実施形態に係るテトラカルボン酸二無水物に対して、ヘキサン及びトルエンの混合溶媒を加えて加熱攪拌し、加熱状態で静置すると2相に分離し、上層に式(9a)で表される化合物を抽出することで除去することができる。この際のヘキサンとトルエンの混合比率は、質量比で100:2〜100:20であることが好ましい。また、抽出時に加熱する際の温度は、40〜70℃であることが好ましい。また、化学式(9b)で表される化合物は、減圧下の蒸留で除去する。
【0063】
上記一般式(1)で表されるカルボン酸二無水物の数平均分子量Mnは、熱硬化性樹脂組成物のトランスファー成形性の観点からは400以上であることが好ましく、流動性の低下を抑制する観点からは10000以下であることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物の弾性率を適切に調整する観点から、Mnは、2000〜10000であることが好ましく、3000〜10000であることがより好ましく、5000〜10000であることが更に好ましい。
【0064】
本発明で用いられる数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて下記条件で測定することで得られる。
(GPC条件)
ポンプ:L−6000型(株式会社日立製作所製、商品名)
検出器:L−3300RI型(株式会社日立製作所製、商品名)
カラム:Gelpack GL−A110 500mm2本直列(日立化成工業社製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:1.0mL/分
【0065】
上記一般式(1)で表されるカルボン酸二無水物の融点は、エキソ体の場合や、異性体混合物を含む場合には0℃以上で明確な融点を有さない傾向があり融点の好ましい範囲は限定されない。0℃以上で明確な融点を有する場合は0〜200℃であることが好ましく、0〜100℃であることがより好ましく、40〜100℃であることが更に好ましい。これにより、一般式(1)で表されるカルボン酸二無水物を含む樹脂組成物中に2本ロールミルやニーダーを用いて白色顔料を分散させる際に、良好な分散性及び作業性が得られる。
【0066】
オルガノシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物の含有量は、(B)硬化剤全体を基準として、10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましい。
【0067】
オルガノシロキサン骨格を有するフェノール化合物としては、両末端又は側鎖がヒドロキシアルキル変性されたオルガノシロキサンの末端水酸基をヒドロキシ安息香酸でエステル結合させた下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【化15】


一般式(10)において、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R11及びR16は、それぞれ独立に炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、炭素数1〜5のアルキレン基であることが好ましい。lは1〜100の整数を示し、1〜20の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、1〜5の整数であることが更に好ましい。
【0068】
オルガノシロキサン骨格を有するフェノール化合物の含有量は、(B)硬化剤全体を基準として、10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましい。
【0069】
なお、本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含む場合、(B)硬化剤は特に限定されず、エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができる。また、(B)硬化剤として、オルガノシロキサン骨格を有する化合物と共に、エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されている硬化剤を併用してもよい。このような硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するものであれば、特に限定されないが、無色又は淡黄色であることが好ましい。このような硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。
【0070】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0071】
イソシアヌル酸誘導体としては、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0072】
フェノール系硬化剤としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂;ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂などのアラルキル型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとの共重合によって合成されるジシクロベンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;並びにこれらを2種以上を共重合して得られるフェノール樹脂が挙げられる。
【0073】
これらの硬化剤の中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸又は1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを用いることが好ましい。また、上記硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。これらの併用可能な硬化剤を含む場合、上記一般式(1)で表されるカルボン酸二無水物との配合比率を変えることによって、(B)硬化剤の全体としての粘度を調整することができ、好ましい。
【0074】
上述の併用可能な硬化剤は、分子量が100〜400であることが好ましい。また、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香環を有する酸無水物よりも、芳香環の不飽和結合のすべてを水素化した無水物が好ましい。酸無水物系硬化剤として、ポリイミド樹脂の原料として一般的に使用される酸無水物を用いてもよい。
【0075】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(B)硬化剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜500質量部であることが好ましく、2〜300質量部であることがより好ましく、5〜200質量部であることが更に好ましい。(B)硬化剤の配合量が1質量部未満では、(B)硬化剤の酸化劣化抑制の効果を発現し難くなり、500質量部を超えると、熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下する傾向がある。
【0076】
また、(B)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基との反応可能な(B)硬化剤中の活性基が0.5〜1.2当量となるように配合することが好ましく、0.6〜1.0当量となることがより好ましい。ここで、硬化剤中の活性基とは、エポキシ基との反応可能な基であり、具体的には、酸無水物基又は水酸基である。上記活性基が0.5当量未満では、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなると共に、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなり、充分な弾性率が得られ難くなる傾向がある。一方、上記活性基が1.2当量を超えると、硬化後の強度が低下する傾向がある。
【0077】
<(C)硬化触媒>
本実施形態に係る(C)硬化触媒(硬化促進剤)は、(A)及び(B)成分間の硬化反応を促進させるような触媒機能を有するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。硬化触媒としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン類;2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレート等のリン化合物;4級アンモニウム塩;有機金属塩類及びこれらの誘導体が挙げられる。これら硬化触媒の中でも、3級アミン類、イミダゾール類又はリン化合物を用いることが好ましい。これらの硬化触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
(C)硬化触媒の配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の配合量が、0.01質量部未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合があり、8質量部を超えると、得られる成形体に変色が見られる場合がある。
【0079】
<(D)白色顔料>
本実施形態に係る(D)白色顔料は、公知のものを使用することができ、特に限定されない。白色顔料として、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上併用することができる。無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス(白砂)が挙げられる。中でも、熱伝導性及び光反射特性の観点からは、白色顔料として、アルミナを用いることが好ましい。
【0080】
白色顔料の中心粒径は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が低下する傾向があり、50μmを超えると硬化物の光反射特性が十分に得られ難くなる。
【0081】
(D)白色顔料の配合量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10〜85体積%であることが好ましく、20〜75体積%であることがより好ましい。この配合量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が十分に得られ難い傾向があり、85体積%を超えると熱硬化性樹脂組成物の成型性が低下する傾向がある。
【0082】
また、熱硬化性樹脂組成物が(D)白色顔料と共に後述する無機充填剤を含有する場合、(D)白色顔料と無機充填材との合計配合量が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10〜85体積%であると、熱硬化性樹脂組成物の成形性をより一層向上することができる。
【0083】
<その他の成分>
(無機充填材)
熱硬化性樹脂組成物は成形性を調整するために、無機充填材を含むことが好ましい。なお、無機充填剤として、上記白色顔料と同様のものを用いてもよい。無機充填材として、例えば、シリカ、酸化アンチモン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、アルミナ、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素が挙げられる。熱伝導性、光反射特性、成形性及び難燃性の点から、無機充填剤は、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる2種以上の混合物であることが好ましい。無機充填材の平均粒径は、白色顔料とのパッキング性を向上させる観点から、1〜100μmであることが好ましく、1〜40μmであることがより好ましい。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物における無機充填剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、1〜800質量部であることがより好ましい。
【0084】
(カップリング剤)
熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂成分である(A)〜(C)成分と、(D)白色顔料及び必要に応じて添加される無機充填材との接着性を向上させる観点からカップリング剤を添加することが好ましい。カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤及びチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系が挙げられ、任意の添加量で用いることができる。なお、カップリング剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0085】
また、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、イオン捕捉剤等の添加剤を添加してもよい。
【0086】
[光反射用熱硬化性樹脂組成物の作製方法]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記した各種成分を均一に分散混合することで得ることができ、その手段や条件等は特に限定されない。熱硬化性樹脂組成物を作製する一般的な方法として、各成分を押出機、ニーダー、ロール、ミキシングロール、エクストルーダー等によって混練した後、混練物を冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。各成分を混練する際には、分散性を向上する観点から、溶融状態で行うことが好ましい。混練の条件は、各成分の種類や配合量により適宜決定すればよく、例えば、15〜100℃で5〜40分間混練することが好ましく、20〜100℃で10〜30分間混練することがより好ましい。混練温度が15℃未満であると、各成分を十分に溶融混練させ難くなり、分散性も低下する傾向にあり、100℃を超えると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、成形前に樹脂組成物が硬化してしまう可能性がある。また、混練時間が5分未満であると、トランスファー成形時に樹脂バリが発生してしまう可能性がある。混練時間が40分を超えると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、成形前に樹脂組成物が硬化してしまう可能性がある。
【0087】
本実施形態では、(B)硬化剤と(A)エポキシ樹脂を予め混合する予備混合工程を経た後に、他の成分を加えて、ロールミルや押出機により混練することによって製造することもできる。例えば、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が、0〜35℃で液状である場合、又は、100〜200℃で10mPa・s未満の低粘度である場合には、予備混合工程を行うことが好ましい。このような(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を用いて予備混合を行うことで得られる熱硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性が向上し、トランスファー成形時の成形性により優れるものとなる。
【0088】
なお、予備混合工程において(A)エポキシ樹脂の全量と(B)硬化剤とを予備混合してもよく、(A)エポキシ樹脂の一部と(B)硬化剤とを予備混合してもよい。予備混合に用いるエポキシ樹脂の量は、(A)エポキシ樹脂全量の10〜50質量%とすることが好ましい。
【0089】
予備混合の温度及び時間は、特に制限されるものではなく、(B)硬化剤を(A)エポキシ樹脂中に分散させることが可能なであればよい。例えば、室温〜220℃の温度条件下で、0.5〜20時間にわたって成分を攪拌することができる。分散性及び効率性の観点からは、混合温度は100〜200℃であることがより好ましく、150〜170℃であることが更に好ましい。攪拌時間は、1〜10時間とすることがより好ましく、3〜6時間とすることが更に好ましい。
【0090】
予備混合工程において、具体的には、(A)エポキシ100質量部及び(B)硬化剤120質量部を耐熱ガラス製の容器に秤量し、この混合容器をシリコーンオイルや水等の流体を媒体としたヒーターを用いて、35〜180℃で加熱する方法を用いることができる。加熱方法としては上記の方法に限定されるものではなく、熱電対、電磁波照射等を用いることができ、さらに溶解を促進するために超音波を照射してもよい。
【0091】
また、予備混合工程において、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤は、熱硬化性樹脂組成物に配合する(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の一部を予備混合することが可能である。具体的には、(A)エポキシ樹脂100質量部に対し、(B)硬化剤120質量部含む熱硬化性樹脂組成物を製造する場合、まず、(A)エポキシ樹脂50質量部及び(B)硬化剤120質量部を耐熱ガラス製の容器に秤量し、この混合容器をシリコーンオイルや水などの流体を媒体としたヒーターを用いて35〜180℃で加熱することで予備混合物を得る。そして、得られた予備混合物と、残りの(A)エポキシ樹脂50質量部、(C)硬化促進剤及びその他の成分とをロール混練などにより混合し熱硬化性樹脂組成物を製造してもよい。
【0092】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、室温付近(15〜30℃)において、加圧成形しタブレットを作製可能であり、熱硬化後の、波長350〜800nmにおける光反射率が80%以上であることが好ましい。上記加圧成形は、例えば、室温において、5〜50MPa、1〜5秒間程度の条件で行うことができる。上記光反射率が80%未満では、光半導体装置の輝度向上に充分寄与できない傾向があり、より好ましい光反射率は90%以上である。
【0093】
また、耐熱着色性を良好にする観点から、硬化後の成形物が、150℃の環境下に500時間晒す耐熱性試験の後でも、波長350〜800nmにおいて80%以上の光反射率を保持することが望まれる。より好ましくは、上述の耐熱性試験後の測定時に、波長400nmにおける光反射率が85%以上となることがより好ましく、90%以上となることがさらに好ましい。このような成形物の光反射特性は、熱硬化性樹脂組成物を構成する各種成分の配合量を適切に調整することによって実現することができる。
【0094】
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、高い透明性及び耐熱性を必要とする電気絶縁材料、光半導体封止材料、接着材料、塗料材料並びにトランスファー成型用エポキシ樹脂成形材料など様々な用途において有用である。
【0095】
光反射用熱硬化性樹脂組成物は、トランスファー成形を行う際に連続成形可能なショット数が30回以上であることが好ましい。ここで、本明細書における「連続成形可能」な状態とは、せん断離型力が200KPa以下となる状態をいう。そして、この状態が連続して30ショット以上持続することを、連続成形性に優れることを意味する。トランスファー成形時に離型不良が発生すると、その都度、トランスファー成形金型の掃除及び洗浄、さらに外部離型剤の塗布が必要となる。そして、離型不良が頻繁に発生すると、単位時間当たりの成形回数が減少し、生産性は著しく低下する。したがって、生産性の観点から、光反射用熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも30回を超えて安定したショット成形が可能であることが好ましい。
【0096】
「せん断離型力」とは、光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて光半導体搭載用基板を製造する際の成形品と金型との離型性の程度を表す指標となる。より具体的には、縦50mm×横35mm×厚さ0.4mmのクロムめっきステンレス板の上に、直径20mmの円板を、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形した後、直ちにステンレス板を引き抜き、その時に測定される最大引き抜き力を示している。
【0097】
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、トランスファー成形時のせん断離型力が10ショット以内に200KPa以下となり、かつ連続成形可能なショット数が100回以上となることが好ましい。また、30ショット以上の成形を実施した後でも光反射用熱硬化性樹脂組成物が200KPa以下のせん断離型力を維持することが好ましい。
【0098】
なお、離型剤を含む光反射用熱硬化性樹脂組成物を使用してトランスファー成形を行う場合、樹脂組成物中の離型剤の染み出しによって金型表面がコーティングされ離型性が改善されるため、10ショット以内にせん断離型力を200KPa以下とすることは可能である。しかし、従来の光反射用熱硬化性樹脂組成物では離型剤の分散性が十分ではないため、成形を繰り返すにつれて、せん断離型力は上昇し、30ショット以内に200KPaを超えてしまう傾向がある。このような場合、100ショットを超す前に金型から成形物を離型するのが困難となり、成形品に外観不良及び破損といった不具合が生じることがある。
【0099】
これに対し、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物では、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が従来の離型剤としての作用を有するため、離型剤を添加しなくとも十分に高い離型性を有するものとなる。離型性の観点から、光反射用熱硬化性樹脂組成物のせん断離型力は、10ショット以内に150KPa以下となることがより好ましく、100KPa以下となることが更に好ましく、50KPa以下となることが特に好ましい。また、生産性の観点から、光反射用熱硬化性樹脂組成物の連続成形可能なショット数が、100回以上であることがより好ましく、150回以上であることが更に好ましく、200回以上となることが特に好ましい。
【0100】
上述のように本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて光半導体搭載用基板を製造することによって、ゲートブレイク等の離型不良を低減することが可能となる。
【0101】
[光半導体素子搭載用基板]
本発明の半導体素子搭載用基板は、底面及び壁面から構成される凹部を有し、凹部の底面が光半導体素子搭載部であり、凹部の壁面の少なくとも一部が本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。図1は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す模式断面図である。光半導体素子搭載用基板110は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105と、リフレクター103とを備え、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105とリフレクター103とから形成された凹部200を有している。すなわち、凹部200の底面はNi/Agめっき104が形成された金属配線105から構成され、凹部200の壁面はリフレクター103から構成されるものであり、リフレクター103は、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体である。
【0102】
本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成形により製造することができる。より具体的には、以下の手順に従って光半導体素子搭載用基板を製造することが可能である。まず、金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線105を形成し、電気めっきによりNi/Agめっき104を施して、リードフレームを形成する。次いで、リードフレームを所定形状の金型に配置し、金型の樹脂注入口から本発明の熱硬化性樹脂組成物(タブレット成型体の溶融物)を注入し、所定の条件でトランスファー成形する。その後、金型をはずし、アフターキュアをして熱硬化させる。このようにして作製される光半導体素子搭載用基板には、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター103に周囲を囲まれてなる光半導体素子搭載領域(凹部)200が形成される。なお、上記トランスファー成形の条件としては、金型温度170〜190℃、成形圧力2〜8MPaで60〜120秒間、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間が好ましい。
【0103】
[光半導体装置]
本発明の光半導体装置は、上記光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、凹部を充填して光半導体素子を封止する封止樹脂部とを備えるものである。
【0104】
図3及び4は、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図3及び4に示すように、光半導体装置は、光半導体素子搭載用基板110と、光半導体素子搭載用基板110の凹部200内の所定位置に設けられた光半導体素子100と、凹部200を充填して光半導体素子を封止する蛍光体106を含む透明封止樹脂101からなる封止樹脂部とを備えている。また、光半導体素子100と金属配線105とは、Ni/Agメッキ104を介してボンディングワイヤ102又ははんだバンプ107により電気的に接続されている。
【0105】
図5もまた、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図5に示す光半導体装置では、リフレクター303が形成されたリード304上の所定位置にダイボンド材306を介してLED素子300が配置され、LED素子300とリード304とがボンディングワイヤ301により電気的に接続され、蛍光体305を含む透明封止樹脂302によりLED体素子300が封止されている。また、リード304はメタル基板307を囲むように形成されている。
【0106】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0107】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
(参考合成例)
<5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物の合成>
撹拌装置、冷却管及び温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物(日立化成工業社製、融点164.5〜166℃、以下、「endo−HAC」と表記する。)300gを仕込み、170℃で5時間加熱撹拌した。その後、フラスコを放冷して100℃になったときにトルエン300gを加え撹拌し、そのまま1晩放置した。析出した結晶を濾過操作で取り出した。結晶の重量は、223gであった。この結晶に対して300gのトルエンを加えて、再結晶操作を行い、再結晶で得られた結晶を真空乾燥させ、付着しているトルエンを除去した。得られた結晶は156gであり、融点は146.5〜148.5℃であった。NMRスペクトルを解析して、この結晶が、5−ノルボルネン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「exo−HAC」と表記する)であることを確認した。
【0109】
(合成例1)
<化学式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の合成>
撹拌子、滴下ロート、冷却管及び温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、トルエン240g及びexo−HAC123.20g(0.7505モル)を仕込み、加熱撹拌を開始した。フラスコ内の温度が80℃になった時点で、アルドリッチ社製Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane complex(白金濃度2%のキシレン溶液)2.99g(白金金属として3.07×10−4グラム原子)を加え、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(以下、「TMDS」と表記する)50.17g(0.3735モル)を滴下ロートからフラスコ内に徐々に滴下した。TMDSの滴下に伴って反応温度が上昇するので、フラスコ内の温度が90℃を維持するよう注意しながら1時間かけて滴下した後、更にフラスコ内温度を90℃に保ちながら1時間反応を続けた。その後、反応液を冷却し、活性炭15gを加え室温で2時間撹拌し、濾過操作で活性炭を除いた。ロータリーエバポレーターを使って濾液を減圧濃縮し、粘性のある無色透明の液体166.4gを得た。GPC分析の結果、この液体中に溶媒として用いたトルエンが含まれていないことを確認した。
【0110】
次いで、反応時に副生する成分である上記化学式(9a)で表される化合物を除去するために、抽出精製を行った。連続単抽出装置の抽出側フラスコに、粘性のある無色透明の液体86.8g、ヘキサン169.4g及びトルエン23.9gを仕込み、蒸留側フラスコにヘキサン101.3g及び滴下ロートにヘキサンを60.0g仕込んだ。抽出側のウオーターバス温度を65℃、蒸留側のオイルバス温度を115℃に設定して10時間運転した。抽出側フラスコの下層を回収し、含まれる溶媒を除去して重量を求めたところ、62.0gであった。さらに、副生するもう1つの成分である上記化学式(9b)で表される化合物を、70Paの減圧下で窒素を微量吹き込みながら蒸留で除去した。
【0111】
このようにして目的物である上記化学式(6)で表される5,5’−エキソ−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「exo−NB−DiSXDA」と表記する)を得た。exo−NB−DiSXDAの純度は98.3質量%であり、0℃以上で明確な融点は観察されず、25℃で43000Pa・sの粘性液体であった。
【0112】
(合成例2)
<化学式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の合成>
撹拌子、滴下ロート、冷却管及び温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、トルエン270g及びexo−HAC67.45g(0.4109モル)を仕込み、加熱撹拌を開始した。フラスコ内の温度50℃になった時点で、アルドリッチ社製Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane complex(白金濃度2%のキシレン溶液)1.609g(白金金属として1.65×10−4グラム原子)を加え、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(以下、「HMTS」と表記する)42.80g(0.2053モル)を滴下ロートからフラスコ内に徐々に滴下した。HMDSの滴下に伴って反応温度が上昇するので、フラスコ内の温度が55℃を維持するよう注意しながら1時間かけて滴下した後、フラスコ内温度を55℃に保ちながら3時間反応を続けた。
【0113】
反応液をGPCで分析したところ、反応は定量的に進行しており目的物である5,5’−エキソ−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「exo−NB−TriSXDA」と表記する)98.8質量%及び原料であるexo−HAC1.2質量%の組成であった。
【0114】
その後、冷却し、活性炭13gを加え室温で2時間撹拌し、濾過操作で活性炭を除いた。ロータリーエバポレーターを使って濾液を減圧濃縮し、次いで残存するexo−HACを、70Paの減圧下で窒素を微量吹き込みながら除去した。
【0115】
このようにして目的物であるexo−NB−TriSXDA109.2gを純度99.6質量%(exo−HAC0.4質量%含む)で得た。得られたexo−NB−TriSXDAは、0℃以上で明確な融点が観察されず、25℃で200Pa・sの粘性液体であった。40℃で40Pa・sの粘度を有する無色透明な液体であった。
【0116】
(合成例3)
<5,5’−エキソ−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物の合成>
撹拌子、滴下ロート、冷却管及び温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、トルエン200g及びendo−HAC82.08g(0.5000モル)を仕込み、加熱撹拌を開始した。フラスコ内の温度が80℃になった時点で、アルドリッチ社製Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetra−methyldisiloxane complex(白金濃度2%のキシレン溶液)2.01g(白金金属として2.06×10−4グラム原子)を加え、TMDS33.55g(0.2498モル)を滴下ロートからフラスコ内に徐々に滴下した。TMDSの滴下に伴って反応温度が上昇するので、フラスコ内の温度が90℃を維持するよう注意しながら1時間かけて滴下した後、更にフラスコ内温度を90℃に保ちながら6時間反応を続けた。
【0117】
反応液をGPCで分析したところ、5,5’−エキソ−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「endo−NB−DiSXDAと表記する)87.0質量%、化学式(8a)において酸無水物基がノルボルナン環に対してエンド配置した化合物6.3質量%及び原料のendo−HACとこれが水素化したノルボルナン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物が6.8質量%の組成であった。
【0118】
その後、反応液を冷却し、活性炭15gを加え室温で2時間撹拌し、濾過操作で活性炭を除いた。ロータリーエバポレーターを使って濾液を130gになるまで減圧濃縮した後、ジエチルエーテルを183g加え、1晩放置した。容器壁に析出した結晶を取り出し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させて重量を量ったところ、81.6gであった。この結晶の融点は135.5〜159℃であった。
【0119】
(実施例1〜6、比較例1〜7)
<光反射用熱硬化性樹脂組成物の作製>
表1及び2に示した配合比(質量部)に従い各成分を配合した。配合物を、ミキサーによって十分に混合してからミキシングロールによって所定条件で溶融混練し、冷却してから粉砕して、実施例1〜6及び比較例1〜7の光反射用熱硬化性樹脂組成物を作製した。
【0120】
<光反射用熱硬化性樹脂組成物の評価>
得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物を成形金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、キュア時間90秒の条件でトランスファー成形し、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0121】
(光反射性試験)
得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物を上述の条件でトランスファー成形した後、150℃で2時間ポストキュアして、厚み1.0mmの試験片を作製した。積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製、商品名)を用いて、波長460nmにおける上記試験片の初期光学反射率(光反射率)を測定した。
【0122】
(熱時硬度)
得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物を上述の条件で直径50mm×厚さ3mmの円板状にトランスファー成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて硬度を測定した。
【0123】
(スパイラルフロー)
EMMI−1−66の規格に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、熱硬化性樹脂組成物を上記条件でトランスファー成形し、そのときの流動距離(cm)を求めた。
【0124】
(離型性)
縦50mm×横35mm×厚さ0.4mmのクロムめっきステンレス板を挿入し、この上に直径20mmの円板を成形する金型を用いて、各実施例及び各比較例の光反射樹脂組成物を上記条件で成形し、成形後直ちに該ステンレス板を引き抜いて最大引き抜き力を記録した。これを同一のステンレス板に対して連続繰り返し、2回目以降の引き抜き力を求め、1ショット目から起算して10ショット以内に、その引き抜き力が200KPa以下の場合を離型可能であるとし、さらに連続成形可能なショット数を評価した。評価結果を表1に示す。
【0125】
(パッケージ連続成形試験)
リードフレーム上に外寸10mm×10mm×1mmの枠体パッケージを5個の成形し、イジェクタピンで離型できる金型を用いて、得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物を使用して成形性を評価した。成形条件は成形金型温度180℃、成型圧力6.9MPa、硬化時間90秒とした。連続成形性は、30ショット連続成形する際、離型時にゲートブレイク、ランナ折れ等の成形物の破壊が発生しない場合を良好であると判断した。30ショットに満たなかった場合については成形不良となったときの最大連続成形ショット数を示した。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
表1及び2中、*1〜13は以下の通りである。
*1:トリスグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100、日産化学社製、商品名:TEPIC−S)
*2:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬工業社製)
*3:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチエート(日本化学工業社製、商品名:PX−4ET)
*4:トリメトキシエポキシシラン(東レダウコーニング社製、商品名:A−187)
*5:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名:FB−301)
*6:中空粒子(住友3M社製、商品名:S60−HS)
*7:アルミナ(アドマテックス社製、商品名:AO−25R)
*8:離型剤1(日本油脂株式会社製、商品名:ジンクステアレート)
*9:離型剤2(日本油脂株式会社製、商品名:アルミニウムステアレート300)
*10:離型剤3(カルナバワックス、東亜化成社製、商品名:カルナバワックス)
*11:離型剤4(シリコーン系ワックス、信越化学工業社製、商品名:KF910)
*12:離型剤5(モンタン酸エステル系ワックス、クラリアントジャパン社製、商品名:LICOWAX E)
*13:離型剤6(アルキルポリエーテル系ワックス、東洋ペトロライト社製、商品名:ユニトックス420)
【0129】
表1から明らかなように、実施例1〜6の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を硬化剤として含有することにより、トラスファー成形時の離型性が十分に高く連続成形性に優れることが確認された。これに対し、比較例1〜5の光反射用熱硬化性樹脂組成物では離型性が悪く連続成形できなかった。また、比較例6〜7の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、初期の離型性は比較的良好であるものの、連続成形数が30ショット未満となり、連続成形が困難であった。これは離型剤の分散性が十分ではなく、離型性を低下させる金型汚れがショット毎に蓄積されて、少ないショット数で離型不可能となったためと考えられる。
【0130】
以上の結果から、本発明の構成を備える光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いることで金型離型性が飛躍的に向上することが確認された。本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物によれば、離型剤を添加せずとも連続成形を良好に実施可能となり、トランスファー成形工程時の生産性を高めることができる。
【0131】
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形することにより、光学特性に優れる光半導体素子搭載用基板を作製することができる。そして、本発明によれば、信頼性の十分に高い光半導体導体素子搭載用基板及び光半導体装置を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0132】
100…光半導体素子、101…透明封止樹脂、102…ボンディングワイヤ、103…熱硬化性樹脂組成物の硬化物(リフレクター)、104…Ni/Agめっき、105…金属配線、106…蛍光体、107…はんだバンプ、110…光半導体素子搭載用基板、200…光半導体素子搭載領域、300…LED素子、301…ボンディングワイヤ、302…透明封止樹脂、303…リフレクター、304…リード、305…蛍光体、306…ダイボンド材、307…メタル基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形により成形して、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターを形成する工程を備え、
前記熱硬化性樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒及び(D)白色顔料を含有し、前記(A)エポキシ樹脂及び前記(B)硬化剤の少なくとも一方が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含む、リフレクターの製造方法。
【請求項2】
前記(B)硬化剤が、オルガノシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記(A)エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基と反応可能な前記(B)硬化剤中に含まれる活性基が0.5〜1.2当量である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記(D)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記(D)白色顔料の中心粒径が、0.1〜50μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記(D)白色顔料の配合量が、前記熱硬化性樹脂組成物全体に対して10〜85体積%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
底面及び壁面から構成される凹部を有するLED素子搭載用基板と、
前記LED素子搭載用基板の凹部内に設けられたLED素子と、
前記凹部を充填して前記LED素子を封止する封止樹脂部と、
を備え、
前記凹部の壁面が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法により作製されたリフレクターから構成される、LED装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−40343(P2013−40343A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233791(P2012−233791)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2009−35497(P2009−35497)の分割
【原出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】