説明

リフレクトロンを含む広い角度受け入れを有する質量分析装置

試料(101)を収容する手段と、試料(101)の表面からイオンを抽出する手段と、第1の方向における第1の曲率および第1の曲率中心(105)と第1の方向と垂直な第2の方向における第2の曲率および第2の曲率中心とによって等電位線が規定されるトロイダル静電界を生成するリフレクトロン(103)とを含む、特に質量分析計または原子プローブ顕微鏡型の、広い角度受け入れを有する質量分析装置(100)であって、第1の曲率中心(105)の近くに試料(101)が位置決めされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクトロンを含む広い角度受け入れを有する質量分析装置に関する。以下、角度受け入れという用語は、広い角分散で、分析されるべき試料の表面などの源から放出されるイオンをリフレクトロン内蔵の装置が処理する能力を意味するものとする。
【0002】
本発明は特に、飛行時間型分析法の分野、より詳細には、静電ミラーまたはリフレクトロンを装備した質量分析計および飛行時間型原子プローブなどの質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0003】
飛行時間型またはTOF質量分析計は、分析箱を介してイオン源の実または虚の判定位置から検出器へのイオンの衝突までのイオン飛行時間を測定することによって、試料から引きはがされたイオンの質量を判定するのに使用可能である。静電界によるイオンの飛行時間は、所与の運動エネルギーに対するこのイオンの質量対電荷比の平方根に比例している。飛行時間型分析計の質量分解能は、イオンの出発および衝突の瞬間を測定できる精度に加えて、イオンのエネルギー分散に左右され、実際には、異なるエネルギー対電荷比を有するが同じ質量対電荷比を有するイオンは、イオン源から検出器までの異なる飛行時間を示す。
【0004】
少なくとも第1の近似値として、イオンの飛行時間のそのイオンエネルギーへの依存性を無くす、従って飛行時間型分析計の質量分解能を向上させるのに使用できる1つの既知の方法は、質量分析計の分析箱にイオンミラー型の装置を組み込むことである。この方法は、Aikhanovによって初めて提案され、Mamyrinによって実施された。対応する各論文:Aikhanov、Soviet Physics Journal of Experimental and Theoretical Physics(JETP)、4(1956)452、およびMamyrinら、Soviet Phys. JETP、37(1973)45を参照することができる。
【0005】
最高エネルギーを有するイオンは、イオンミラーによって生成される静電界に一層深く侵入し、従って、イオンが移動する経路および分析箱内のイオン飛行時間は、より弱いエネルギーの場合よりも長い。その結果、イオンミラーによって生成される静電界内で最低エネルギーを有するイオンに比べて最高エネルギーを有するイオンの飛行時間の延長は、ミラーによって生成される静電界の外側に位置する分析箱の領域内で最高エネルギーを有するイオンに対して飛行時間は一層短いという事実を補償する。従って、分析箱内の総飛行時間は、イオンのエネルギーと無関係である。質量分析器、即ち、特に静電ミラーを装備した質量分析計および原子プローブは、リフレクトロン質量分析器と一般的に呼ばれている。
【0006】
リフレクトロン飛行時間型質量分析器で使用されるイオンミラーは通常、一様なまたは区分的に一様な、即ち判定空間領域で一様な遅延静電界を組み込む。イオンミラーは一般に、電位によって励起される特定の形状の主電極と、異なる電位によって励起される同様の形状のゲート電極とからなる。これらの電極によって生成される静電界は、これらの電極を分離する空間に含まれ、その特性を、例えば、励起電位に従って調整することができる。
【0007】
異種の質量分析計は、最先端技術から本来知られている電界脱離、レーザー脱離または二次イオン放出などの各種イオン放出方法に依拠する。これらの技法に起因するイオンビームの1つの特性は、約90度以上もの高い値を有することができる、放出イオンの強い角分散である。質量分析計の感度を最高にするために、広い角分散でイオンビームを制限しないことが重要である。さらに、広い角分散で放出されるイオンの分析は、例えば、イオンを引きはがす試料の表面上の異なる位置に異なる放出角度が対応すると仮定すると、角度受け入れの増大が顕微鏡の視野の拡大と同義である、原子プローブ顕微鏡とも呼ばれる原子プローブなどの特定の用途で大きな関心があることもある。
【0008】
すべてのイオン放出方法、より詳細には電界脱離は、エネルギー分散が著しいという特徴があることに留意すべきであり、従って、飛行時間型質量分析装置の性能レベルを向上させるためにイオンミラーを使用するように特に指摘する。
【0009】
区分的一様静電界を有する従来のリフレクトロンのイオンミラーは、約10度を超えるイオンビームの角分散を受け入れることができない。強い角分散を受け入れながら妥当な寸法の検出器でイオン信号を記録できるために、曲線形状を有するミラーが、Vialleらによる論文Rev. Sci. Instrum.、68(1997)2312で提案された。曲線形状を有するリフレクトロンは、国際公開第2006/120428号パンフレットに提案されている。この種のリフレクトロンは、小さいサイズの試料から発散するイオンビームを、妥当な寸法の検出器によって差し込み可能な実質的に平行なビームに変換する。さもなければ避けられない、検出器の寸法の増大を避けるために、検出器の面はイオンビームと実質的に垂直である。空間集束特性およびイオンのエネルギーに応じた飛行時間に関する集束に加えて、そのような装置は、イオンのエネルギーに応じた空間集束特性を有し、従って、原子プローブ顕微鏡において空間的に解像される試料の像を得るのに使用可能である。
【0010】
しかし、そのようなリフレクトロンには幾つかの欠点がある。一方、そのような装置の角度受け入れは、装置の形状に単に関連があるという理由で90度を超えることができない。また、そのようなリフレクトロンの角度受け入れは、エネルギーに応じた飛行時間に関する集束を行う表面の、検出器の面に対する実質的な傾斜によって減少する。この種のリフレクトロンの別の欠点は、リフレクトロンミラーの入力ゲート電極に垂直な方向とイオンの軌道の大部分との間の交差がかなり開いた角度に応じて行われるという事実に関連があり、ゲートによって生成される局所的な電界の不均一性のレベルでイオンの分散がかなり増大する。
【0011】
要するに、曲面電界ミラーを使用すると、質量分析計またはリフレクトロン原子プローブ顕微鏡に関して角度受け入れが向上する。しかし、最先端技術から知られているリフレクトロンは、これらの装置に十分な角度受け入れを与えず、幾つかの他の欠点を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、少なくとも1つの方向に試料の小表面から放出されるイオンの広い角度受け入れを可能する新規なリフレクトロン設計を提案することによって、少なくとも上述の欠点を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明の主題は、
− 試料を収容する手段と、
− 試料の表面からイオンを抽出する手段と、
− 検出器と、
− 質量分析装置の放射面に含まれる第1の方向における第1の曲率および第1の曲率中心と、質量分析装置の横断面で第1の方向と垂直な第2の方向における第2の曲率および第2の曲率中心とによって等電位線が規定されるトロイダル形状の静電界を生成するイオンミラーと、
を含み、第1の曲率中心から第1の曲率半径の4分の1よりも短く離れて試料が位置決めされていることを特徴とする、特に質量分析計または原子プローブ型の飛行時間型質量分析装置である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、飛行時間型質量分析装置は、イオンミラーによる反射後、第1の方向に試料から放出されるイオンの空間焦点から第1の曲率半径の4分の1よりも短く離れて検出器が位置決めされていることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、イオンミラーによる反射後、第1の方向に試料から放出されるイオンの空間焦点の下流に検出器が位置決めされていることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、検出器が、その検出器の表面上のイオンの衝突の二次元位置に敏感であることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、質量分析装置の主軸に沿って検出器を変位させることができることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、イオンミラーが後部電極とゲート電極とを含み、静電界が後部電極とゲート電極との間に形成されていることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、後部電極およびゲート電極が円筒面を有することを特徴とすることができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、後部電極およびゲート電極が球面を有することを特徴とすることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、イオンミラーによって生成される静電界を変えることができる追加手段を含むことを特徴とすることができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、試料を、全方向に変位させるおよび/または枢動させることができることを特徴とすることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、飛行時間型質量分析装置は、イオン抽出手段が、電界脱離および/またはレーザー脱離、または二次イオン放出によって試料の表面からイオンを引きはがすことを特徴とすることができる。
【0024】
本発明によれば、この目的のために特定のリフレクトロン飛行時間型質量分析器の形状を提案する。この形状によれば、分析されるべき試料を、放出イオン電界の方向に曲面電界ミラーの曲率中心に実質的に近い距離に配置する。次に、曲面電界ミラー上の反射後、曲率中心に対して試料の位置と反対の位置に位置している共役点で関連方向に放出イオンを集束する。解決すべき物理的な問題によって、焦点にまたはこの焦点の下流で検出器を位置決めすることができる。焦点の場合、すべてのイオン放出方向に対するイオンのエネルギーに応じた飛行時間に関する焦点の、検出器の位置からの片寄りは、最小である。焦点の下流の場合、妥当な寸法の検出器上で試料の角度像を解像することができる。
【0025】
本発明の1つの利点は、理論的に無限の角分散に対して、換言すれば最大180度までこれらの特性が有効なままであるという事実にある。
【0026】
本発明の別の利点は、角分散とは無関係に、関連方向に対するミラーの入力ゲート電極の表面の法線に対するイオン軌道の交角が小さいままであり、従ってこのレベルでイオンの角分散の減少を可能にするという事実にある。
【0027】
本発明によるリフレクトロン飛行時間型質量分析器によって与えられるエネルギーにおける空間分散は、検出器のレベルでゼロでない。しかし、試料と電界の曲率中心との間の小さい片寄りおよび球形ミラーの電界を使用することによって、この分散は、無視することができ、ゼロの方に傾く。これは、実際には実現不可能であるが、試料の位置が電界の曲率中心と一致する場合、イオンの運動エネルギーとは無関係に、イオンは、ミラーの方へ、次にミラーから戻ると同じ軌道に従うという事実による。
【0028】
従って、焦点の下流に位置している検出器および球形ミラー電界を含むリフレクトロン飛行時間型質量分析器の、この発明に特有の特定の構成は、高分解能および高感度原子プローブ顕微鏡で使用するのに特に適している、イオンビームの広い角度受け入れに特に有利な特性を与える。
【0029】
本発明の他の特徴と利点は、下記の添付図面を考慮して、例として与えられた説明を読めば明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】最先端技術から知られているリフレクトロン形状の質量分析装置の放射面における断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による例示的なリフレクトロン形状の質量分析装置の放射面における断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による放射面および横断面で異なる方向に試料から放出されるイオンの、位置に敏感な検出器上で形成される像の例の斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態による、試料が位置している点と共役の焦点に配置された検出器を有するリフレクトロンの例示的な形状の、質量分析装置の放射面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、上述の国際公開第2006/120148号パンフレットに提示のような最先端技術から知られているリフレクトロン形状の、質量分析装置の放射面における断面図を示す。
【0032】
質量分析器100は、イオンを抽出電極102によって放出して加速する、例えば、点の形の小さいサイズの試料101を含む。放出イオンは、質量分析器100の分析箱内で軌道109および110に従う。イオンは、等電位曲面104を有する静電界を形成するイオンミラー103で反射される。等電位線は、曲率中心104を有する。イオンミラー103は、後部電極107とゲート電極106とからなる。検出器108は、イオンを収集する。
【0033】
検出器108は、その検出器の表面上のイオンの衝突点の位置に敏感である。イオンミラー103によって生成される電界の等電位線の曲率中心105は通常、ミラー103から試料101よりも遠い距離に位置している。
【0034】
イオンミラー103は、試料101から生じる発散イオン軌道が、反射後に実質的に少ない発散状態になる、それどころか僅かに収束状態になることを可能にする。従って、ミラー103から遠い距離で、大きさが妥当なままである検出器108によってイオン軌道を等しく捕捉することができる。軌道のこの大きい間隔により、質量分析器100に高質量分解能を与えるのに十分な飛行時間をイオンが持つことができる。イオンミラー103内の静電界の強度、従ってイオンミラー103内の軌道の長さは、軌道109および110に沿って異なるエネルギーで同じ方向に試料から放出されるイオンが実質的に同じ瞬間に検出器108に到達するように、即ちイオンのエネルギーに対する飛行時間に関する集束を保証するように選択される。
【0035】
イオンミラー103と検出器108との間の距離は、異なるエネルギーで同じ方向に試料から放出されるイオンが実質的に同じ衝突点で検出器108に到達するように、即ちイオンのエネルギーに対する空間集束を保証するように選択される。
【0036】
従って、試料101の表面上の異なる出発点が異なる放出角度に対応する場合、例えば原子プローブ顕微鏡の場合のように、色収差が低い検出器のレベルで試料の像を解像することができる。
【0037】
図1では、ここに提示の質量分析器100の形状は90度を超えて角度受け入れを増大できないことが明らかである。また、広い角分散の場合、イオンの大部分は、ゲート電極106の表面の法線に対して比較的大きい角度でイオンミラー103のゲート電極106と交差することも明らかである。そのような交角がゲート電極106のレベルにおける局所的な静電界の不均一性のレベルで分散に影響することは、イオン光学理論の専門家に知られている。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態による例示的なリフレクトロン形状の質量分析装置の放射面における断面図を示す。
【0039】
試料101は、イオンミラー103によって生成される静電界の等電位線104の曲率中心105の近くに位置決めされている。図の例において、静電ミラー103の電極107は、ゲート電極106と同様に、球形を有する。従って、静電界の等電位線104は、球対称を有する。図1を参照して上述した説明と同様にして、イオンを、試料101の表面から放出し、抽出電極102によって加速してから、イオンミラー103によって反射する。イオンは、点を形成する試料101を第1の近似値と同等にみなすことができる点と共役の点111を通過する。点111の下流で、イオンは、その検出器の表面との衝突点の位置に敏感な検出器108に到達する。
【0040】
イオンミラー103内に広がっている静電界、従ってイオンミラー103内のイオンの軌道の長さは、軌道109および110に従って異なるエネルギーで全く同じ方向に試料101の表面から放出されるイオンが実質的に同じ瞬間に検出器108に到達するように、即ちイオンのエネルギーに対する飛行時間に関する集束を保証するように選択される。そのような集束の条件を満たす表面が、共役点111に位置している中心を有する実質的に球形であると仮定すると、イオンのエネルギーに対する飛行時間に関する集束を検出器108のレベルで厳密に行うことができない。それにもかかわらず、この表面は、検出器108の表面の中心領域と実質的に平行であるので、比較的大きい角放出分散の場合、イオンの飛行時間のイオンのエネルギーへの依存性は低いままであり、この依存性は、検出器108の表面に対するイオンの衝突点から検出器108の中心が離れる距離の二乗に比例して増大する。
【0041】
試料101がイオンミラー103の曲率中心105に近いと仮定すると、ゲート電極106の表面の法線との交点でイオンの軌道とイオンミラー103のゲート電極106の表面の法線とが成す角度は減少する。これらの角度は、試料101がイオンミラー103の曲率中心105の方に傾くと、ゼロの方に傾く。換言すれば、イオンの軌道は、イオンミラー103のゲート電極106の表面と実質的に垂直である。この特定の構成により、ゲート電極106に近い局所的な静電界の不均一性に起因するイオンの分散の影響を減らすことができる。
【0042】
さらに、異なるエネルギーを持つが全く同じ方向に試料101の表面から出発したイオンの軌道109および110間のずれは、イオンミラー103による反射後、小さいままであり、このずれは、試料101がイオンミラー103によって生成される静電界の等電位線104の曲率中心105の方に傾くと、ゼロの方に傾く。従って、異なるエネルギーを持つが同じ初期方向を有するイオンの軌道の一致は検出器108のレベルで完全ではないけれども、イオンのエネルギー分散が比較的低いままである場合、その一致は依然として優れている。また、空間色収差も低いままであると言える。これは、異なる放出方向を有するイオンを高い精度で検出器108のレベルで解像できることを意味する。
【0043】
本発明の一実施形態において、後部電極107の曲率半径は、例えば、400mmに等しく、試料101から曲率中心105までの距離は、30mmに等しく、検出器108から焦点111までの距離は、275mmに等しい。
【0044】
より一般的に、後部電極107の曲率半径の所与の割合、例えば25%よりも短く曲率中心105から離れて試料101を位置決めするように選択することができる。
【0045】
図3は、本発明の一実施形態による放射面および横断面で異なる方向に試料から放出されるイオンの、位置敏感型検出器のレベルで形成される例示的な像の斜視図を示す。
【0046】
本発明のこの実施形態は、有限サイズの検出器108を使用することによって理論的に最大πラジアンまで、大きい角分散で試料101の表面から放出されるイオンを分析するのに使用可能である。試料101を同等にみなす点と共役の点111に検出器108の中心が近い場合、角度受け入れはますます大きい。
【0047】
飛行時間型質量分析器100が原子プローブである、従って異なるイオン放出方向が試料101の表面上の異なる点に対応する特定の場合、本発明のこの実施形態は、広い角分散で高い質量分解能を可能にし、低い色収差によって優れた空間分解能を可能にする。換言すれば、本発明のこの実施形態は、原子プローブ顕微鏡型の用途に特に適している。
【0048】
放射面における軸に対する試料101の片寄りのために、開口またはエネルギーに関する集束を放射面および横断面で異なって行うことがある。この問題を克服するために、厳密な球形を有しない静電ミラー103を使用することは有利である。そのような構成において、放射面における曲率中心および曲率半径は、横断面における曲率中心および曲率半径と異なる。
【0049】
図4は、本発明の別の実施形態による、試料101が位置している点と共役の焦点のレベルに配置された検出器108を有するリフレクトロンの例示的な形状の斜視図を示す。
【0050】
この実施形態によれば、イオンミラー103によって生成される静電界の強度は、検出器108のレベルでイオンのエネルギーに対する飛行時間に関する集束を可能にするように選択可能である。
【0051】
この特定の実施形態は、イオンの空間分解能が必要でない場合に有利である。この実施形態は、大きい角分散で試料101の表面から放出されるイオンの場合、高い質量分解能を可能にする。この特性は、イオンのエネルギーに対する飛行時間に関する焦点111と一致する位置に検出器を配置することによって得られる。
【0052】
より一般的に、後部電極107の曲率半径の所与の割合、例えば25%よりも短く焦点111から離れて検出器108を位置決めするように選択することができる。
【0053】
最後に、図示しない本発明の別の実施形態を想像することができる。この実施形態は、単一面で角分散が大きい用途に適している。そのような構成では、円筒面を有するゲート電極106および後部電極107を使用することによってリフレクトロンの形状を単純化することができる。
【0054】
一般に、追加の機械的アライメント手段および/または静電界の形を調整できる追加の電極セットをイオンミラー103の電極に装備できることに最後に留意すべきであり、それ自体は当業者に既知である。また、質量分析器100の性能レベルを調整して一層上げる場合、分析装置100の主軸に沿った検出器108および/または3軸すべてに沿った試料101の変位を可能にすることは有利である。また、試料および/または試料保持器の傾斜欠陥を補正するために試料を傾斜させる手段を試料保持機構に設けることは有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(101)を収容する手段と、
前記試料(101)の表面からイオンを抽出する手段と、
検出器(108)と、
質量分析装置(100)の放射面に含まれる第1の方向における第1の曲率および第1の曲率中心(105)と、前記質量分析装置(100)の横断面で前記第1の方向と垂直な第2の方向における第2の曲率および第2の曲率中心とによって等電位線が規定される静電界を生成するイオンミラー(103)と、
を含み、前記第1の曲率中心(105)から第1の曲率半径の4分の1よりも短く離れて前記試料(101)が位置決めされていることを特徴とする、特に質量分析計または原子プローブ型の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項2】
前記イオンミラー(103)による反射後、前記第1の方向に前記試料(101)から放出される前記イオンの空間焦点(111)から第1の曲率半径の4分の1よりも短く離れて前記検出器(108)が位置決めされていることを特徴とする、請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項3】
前記イオンミラー(103)による反射後、前記第1の方向に前記試料(101)から放出される前記イオンの空間焦点(111)の下流に前記検出器が位置決めされていることを特徴とする、請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項4】
前記検出器(108)は、その検出器の表面上の前記イオンの衝突の二次元位置に敏感であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項5】
前記質量分析装置(100)の主軸に沿って前記検出器(108)を変位させることができることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項6】
前記イオンミラー(108)は後部電極(107)とゲート電極(106)とを含み、前記静電界が前記後部電極(107)と前記ゲート電極(106)との間に形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項7】
前記後部電極(107)および前記ゲート電極(106)は円筒面を有することを特徴とする、請求項6に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項8】
前記後部電極(107)および前記ゲート電極(106)は球面を有することを特徴とする、請求項6に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項9】
前記イオンミラー(103)によって生成される前記静電界を変えることができる追加手段を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項10】
前記試料(101)を、全方向に変位させるおよび/または枢動させることができることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。
【請求項11】
前記イオン抽出手段は、電界脱離および/またはレーザー脱離、または二次イオン放出によって前記試料(101)の表面から前記イオンを引きはがすことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−518246(P2012−518246A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549575(P2011−549575)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051764
【国際公開番号】WO2010/092141
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511124079)
【Fターム(参考)】