説明

リブロース−1,5−二リン酸の固定化方法

【課題】二酸化炭素固定化反応において有用なリブロース−1,5−二リン酸を固定化する手法、及び、有機溶媒に抽出する方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で示される化合物。


[式中、A1、A2、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、ただし、R1〜R3、及び、R4〜R6は、それぞれ、互いに架橋し飽和又は不飽和環を形成し特に、ピリジン環であり、L1及びL2は連結基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテコール誘導体である新規化合物、それを用いたリブロース−1,5−二リン酸を固定化する方法および抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題との関連で、植物の光合成反応による二酸化炭素固定化メカニズムの解明が重要視されている。二酸化炭素を固定化するに際して、リブロース−1,5−二リン酸(RuBP)が最も重要な役割を果たしていることが知られている。Calvinらによって提案されたCalvin-Benson回路(C3回路)によれば、下記に示すように、リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ(RuBisCO)によってRuBPに二酸化炭素が固定化され、ついで、その付加体は加水分解されて、2分子のホスホグリセリン酸(PGA)へと変換するとされている。
【化4】

【0003】
C3回路は、数多くの酵素が関与する複雑な反応系であるが、そのほとんどのステップについては酵素反応による再現がなされている(例えば、D. W. Lawlor, "Photosynthesis : molecular, physiological and environmental processes. 2nd ed.”, Harlow Essex:非特許文献1)。しかしながら、C3回路で最も重要な二酸化炭素固定に関与しているRuBisCOの構造に関しては多くの議論がおこなわれているが、(例えば、J. Mol. Biol. (1997) 265, 432-444:非特許文献2)二酸化炭素固定反応の再現はなされていない。
【非特許文献1】D. W. Lawlor, "Photosynthesis : molecular, physiological and environmental processes. 2nd ed.”, Harlow Essex
【非特許文献2】J. Mol. Biol. (1997) 265, 432-444
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この理由として以下の2つが提案される。1つ目としては、リブロース−1,5−二リン酸(RuBP)の平衡の偏りが考えられる。すなわち、RuBPは直鎖状構造と環状構造が共存しているが、平衡状態では環状構造に大きく偏っている。
【化5】

これに対し、C3回路では、直鎖状のRuBPに対して二酸化炭素が反応するとされている。しかしながら、直鎖状RuBPを固定する手法が従来存在しなかった。
【0005】
次に、RuBPの有機溶媒への不溶性・難溶性が考えられる。すなわち、RuBPは水以外の溶媒に対してほとんど溶けないため、その反応性を化学的に検討することが困難であった。
【0006】
したがって、直鎖状のRuBPを固定化する手法、RuBPを有機溶媒に抽出する方法が望まれていた。
【0007】
本発明は、二酸化炭素固定化反応において有用なRuBPを固定化する手法、有機溶媒に抽出する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様では、下記式(1)で示される化合物が提供される。
【化6】

[式中、A1、A2、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6〜C10アリール基であり、ただし、R1〜R3、及び、R4〜R6は、それぞれ、互いに架橋し飽和又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、L1及びL2は連結基を表す。]
【0009】
本発明の第1態様において、前記式(1)中、
【化7】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、上記の意味を有する。]が、それぞれ、
【化8】

[式中、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9及びB10は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6〜C10アリール基である。]であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第1態様において、前記式(1)中、−L1−及び−L2−が、−(CH23−であることが好ましい。
【0011】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様にかかる化合物を使用することを特徴とする、リブロース−1,5−二リン酸の固定化方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第3態様では、本発明の第1態様にかかる化合物を使用することを特徴とする、リブロース−1,5−二リン酸の抽出方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、リブロース−1,5−二リン酸を固定化することができ、また、水のみならず有機溶媒に抽出することが可能となる。本発明の化合物によれば、リブロース認識剤、リブロースキレート剤、リブロース分離剤等としての応用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1態様では、下記式(1)で示される化合物が提供される。
【化9】

【0015】
上記式中、A1、A2、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6〜C10アリール基である。
【0016】
本明細書において、「C1〜C10アルキル基」は、C1〜C6アルキル基であることが好ましく、C1〜C3アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、又はヘキシル等を挙げることができる。
【0017】
本明細書において、「C6〜C10アリール基」の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、又はインデニル等を挙げることができる。
【0018】
本発明の第1態様において、A1、A2、R1、R2、R3、R4、R5及びR6で示される「C1〜C10アルキル基」、「C6〜C10アリール基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
本発明の第1態様において、A1及びA2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、合成の簡便性、立体的要因の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明の第1態様において、R1〜R3、及び、R4〜R6は、それぞれ、互いに架橋し飽和又は不飽和環(N+を含む環)を形成してもよい。これらの置換基が形成する環は、3員環〜16員環であることが好ましく、4員環〜12員環であることがより好ましく、5員環〜7員環であることが更に好ましい。これらの置換基が形成する環は芳香族環であってもよく、また、更に単数又は複数の環が形成されていてもよい。
【0021】
前記飽和環または不飽和環は、N+のほかに、酸素原子、硫黄原子、または式―N(P)―で示される基(式中、Pは水素原子またはC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよい。
ここで、Pは、水素原子またはC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはC1〜C7炭化水素基であることが更に好ましく、Bは水素原子、C1〜C3アルキル基、フェニル基またはベンジル基であることが更になお好ましい。
【0022】
前記飽和環または不飽和環としては、例えば、アジリジン環、アジリン環、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、ピラゾリジン環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環等であって、環を構成する窒素の一つが第四級アンモニウム形になったものを挙げることができる。
【0023】
この飽和環又は不飽和環は、置換基を有していてもよく、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等のC1〜C10アルキル基、フェニル等のC6〜C10アリール基など)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などの置換基が導入されていてもよい。
【0024】
本発明の第1態様において、本発明にかかる化合物の溶解度を向上させる観点から、前記飽和環又は不飽和環は、1以上の置換基を有することが好ましく、1以上のC1〜C10アルキル基を有することがより好ましい。本発明にかかる化合物の合成および単離を容易にする観点からは、前記飽和環又は不飽和環は、置換基として1以上のブチル基、又は1以上のペンチル基を有することが特に好ましい。
【0025】
本発明の第1態様において、前記飽和環又は不飽和環は、ピリジン環であることが好ましい。すなわち、前記式(1)中、
【化10】

が、それぞれ、
【化11】

であることが好ましい。
【0026】
上記式中、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9及びB10は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6〜C10アリール基である。
【0027】
本発明の第1態様において、本発明にかかる化合物の溶解度を向上させる観点からは、上記2つのピリジン環は、それぞれ、1以上の水素原子以外の置換基を有することが好ましい。すなわち、B1、B2、B3、B4およびB5のうちの1以上の基(NMRの解析を簡便にする、分子の対称性をあげ結晶性を向上させる、原料の入手が容易等の観点からはB3であることが好ましい)、並びに、B6、B7、B8、B9及びB10のうち1以上の基(NMRの解析を簡便にする、分子の対称性をあげ結晶性を向上させる、原料の入手が容易等の観点からはB8であることが好ましい)が、C1〜C10アルキル基であることがより好ましく、本発明にかかる化合物の合成および単離を容易にする、溶解度を向上させる観点からは、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC4〜C6アルキル基であることが更に好ましく、n−ペンチル基であることが特に好ましい。
【0028】
本発明の第1態様において、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9及びB10で示される「C1〜C10アルキル基」、「C6〜C10アリール基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
本発明の第1態様において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C10アルキル基、C6〜C10アリール基であることが好ましく、あるいは、R1〜R3、及び、R4〜R6が、それぞれ互いに架橋して、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和環(N+を含む)を形成することが好ましく、この場合、置換基を有していてもよいピリジン環を形成することがより好ましく、4位にC4〜C6アルキル基を有するピリジン環を形成することが更に好ましく、4位にn−ペンチル基を有するピリジン環を形成することが特に好ましい。
【0030】
本発明の第1態様において、上記式(1)中、L1及びL2は連結基を表す。連結基は、置換基を有していてもよいアルキレンであることが好ましく、直鎖状のリブロース−1,5−二リン酸に適合させる観点から、C1〜C10アルキル基、オキソ基、ヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい直鎖状プロピレンであることがより好ましく、−(CH23−であることが最も好ましい。
【0031】
本発明の第1態様における化合物は、たとえば、ジヒドロキシテレフタル酸を出発物質として、10段階の反応を経て合成することができる。本発明の第1態様における化合物がピリジン環を有する場合の合成方法の一例を下記に示す。
【化12】

上記式中、略語の説明を下記に示す。
LAH:水素化アルミニウムリチウム
THF:テトラヒドロフラン
PCC:クロロクロム酸ピリジニウム
【0032】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様にかかる化合物を使用することを特徴とする、リブロース−1,5−二リン酸(RuBP)の固定化方法が提供される。
【0033】
本発明の第2態様では、溶媒中で、本発明の第1態様にかかる化合物と、RuBPとの直鎖状会合体を形成させることによって、RuBPを固定化させることができる。
典型的には、RuBPの塩(Na塩など)の溶液に、本発明の第1態様にかかる化合物の塩(塩化物など)を添加し、脱塩させる。この際、カテコールは2+のカチオンであるから、RuBPが2-のアニオンであれば電荷が釣り合い、会合が進行しやすくなると考えられる。このような観点からは、RuBP塩の溶液のpHを4.3〜1.1に調整させることが好ましい。
【0034】
本発明の第2態様において、固定化反応は、好ましくは10℃〜60℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは20℃〜40℃の温度範囲で行われる。
本発明の第2態様において、圧力は常圧であることが好ましい。
また、溶媒中のRuBP1モルを固定化するためには、0.5モル〜5モルの本発明の第1態様にかかる化合物を使用することが好ましく、より好ましくは0.75モル〜3モル、更に好ましくは1モル〜1.5モルを使用する。
【0035】
本発明の第2態様において、溶媒としては、RuBPの塩、および本発明の第1態様にかかる化合物の塩を溶解することができる溶媒を使用することができ、そのような溶媒としては、水を挙げることができる。
【0036】
本発明の第2態様にかかるRuBPの固定化方法において、直鎖状会合体は下記の要領で形成されていると考えられる。
【化13】

なお、上記機構は仮説に過ぎず、本発明は上記機構に限定されるものではない。
【0037】
本発明の第3態様では、本発明の第1態様にかかる化合物を使用することを特徴とする、リブロース−1,5−二リン酸(RuBP)の抽出方法が提供される。
【0038】
本発明の第2態様に従って、本発明の第1態様にかかる化合物を使用してRuBPを固定化させることにより、有機溶媒に不溶なRuBPを、有機溶媒に可溶な形態にすることができる。これにより、RuBPを各種の有機溶媒へ抽出させることが可能となる。
【0039】
本発明の第3態様において、抽出溶媒としては、水のほか、メタノール、エタノールを挙げることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0041】
使用した測定機器は以下のとおりである。
NMR: GX 500 FT (JEOL)
MSの測定:LCMS-2010(島津)およびESI-TOF-MS(Waters micromass LCT)
脱塩装置:Micro-acilyzer S1(旭化成)
【0042】
実施例で用いた各試薬の入手先を下記に示す。
D-リブロース-1,5-二リン酸 四ナトリウム塩 (RuBP):nacalai tesque Inc.(ナカライ)
D(-)-3-ホスホグリセリン酸 二ナトリウム塩(PGA):SIGMA-Aldrich Corp.(シグマ)
炭酸カリウム :nacalai tesque Inc.(ナカライ)
硫酸ジメチル:Wako(和光)
硫酸ナトリウム:nacalai tesque Inc.(ナカライ)
水素化アルミニウムリチウム:Wako(和光)
クロロクロム酸ピリジニウム:Aldrich(アルドリッチ)
シリカゲル60(230〜400mesh) :nacalai tesque Inc.(ナカライ)
フロリジル(100〜200mesh):nacalai tesque Inc.(ナカライ)
水素化ナトリウム:nacalai tesque Inc.(ナカライ)
ジエチルホスホノ酢酸エチル:TCI.(東京化成)
塩化ニッケル・六水和物:Wako(和光)
水素化ホウ素ナトリウム:Wako(和光)
ピリジン:Wako(和光)
メタンスルホニルクロリド:Wako(和光)
ヘキサフルオロリン酸アンモニウム:Wako(和光)
4-t-ブチルピリジン:Aldrich(アルドリッチ)
4-n-アミルピリジン:TCI(東京化成)
48%臭化水素酸水溶液 :Aldrich(アルドリッチ)
アンバーライト (IRA900J-Cl):ORGANO(オルガノ)
過ヨウ素酸ナトリウム:Kanto(関東化学)
【0043】
2,3-ジヒドロキシテレフタル酸 および 2,3-ジヒドロキシテレフタル酸ジメチル は既知化合物でB.-C. Chen, M. S. Bednarz, J. E. Sundeen, Z. J. Zhang, T. J. Caulfield and G. S. Bisacchi, Org. Prep. Proc. Int. 1999, 31, 106-109をもとに合成した。
【0044】
参考例1および参考例3で得られた既知化合物で、それぞれ文献(Y. Fukuda, S. Seto, H. Furuta, H. Ebisu, Y. Oomori, and S. Terashima, J. Med. Chem. 2001, 44, 1396-1406、S. P. Waters and M. C. Kozlowski, Tetrahedron Lett. 2001, 42, 3567-3570、R. G. Janssen, J. H. P. Utley, E. Carre, E. Simon and H. Schirmer, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2001, 2, 1566-1572.)を参考に(修正して)合成した。
【0045】
参考例2、参考例4〜6は、T. Koizumi, K. Tsutsui and K. Tanaka, Eur. J. Org. Chem. 2003, 4528-4532.を、参考例7〜9は、米国特許第3,997,519号を、実施例1〜3はW.-P. Deng, K. A. Wong and K.L.Kirk, Tetrahedron Asymmetry. 2002, 13, 1135-1140を、参考例10は、T. Takata, R. Tajima and W. Ando, J. Org. Chem. 1983, 48, 4764-4766を参考に(修正して)合成した。
以下、詳細に説明する。
【0046】
参考例1
2,3-ジメトキシテレフタル酸ジメチル
【化14】

B.-C. Chen, M. S. Bednarz, J. E. Sundeen, Z. J. Zhang, T. J. Caulfield and G. S. Bisacchi, Org. Prep. Proc. Int. 1999, 31, 106-109に従って合成した2,3-ジヒドロキシテレフタル酸ジメチル(5.0 g, 22.1 mmol)のアセトン溶液(200 mL)に炭酸カリウム(18.4 g, 133.1 mmol)と硫酸ジメチル(22.4 g, 177.8 mmol)を加え、16時間加熱還流した。放冷後、反応溶液に水(100 mL)を加え、酢酸エチル(50 mL x 3回)抽出した。有機層を水で洗浄後、硫酸ナトリウムを加え一晩放置した。懸濁液をろ過し、減圧下で濃縮乾固すると茶色のオイルを得た。オイルを真空乾燥することにより収量5.5 g(21.8 mmol)収率98.7%で標題化合物を得た。
【0047】
1H NMR (500 MHz in CDCl3): δ7.50 (s, 2H, H(aromatic)), 3.95 (s, 6H,, COOCH3), 3.93 (s, 6H, OCH3).
【0048】
参考例2
2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレンジメタノール
【化15】

水素化アルミニウムリチウム(3.2 g, 84.3 mmol)を懸濁した脱水THF溶液(80 mL)に、参考例1で得られた2,3-ジメトキシテレフタル酸ジメチル(3.0 g, 11.8 mmol)の脱水THF溶液(20 mL)をN2雰囲気下、0 ℃で滴下した。反応溶液の温度を徐々に上げ、室温で二時間撹拌した。再び反応溶液を0 ℃に冷却した後、水(50 mL)をゆっくりと加えた。溶液をエーテル(50 ml x 3回 )で抽出し、有機層を水で洗浄後硫酸ナトリウムを加え一晩放置した。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧下に濃縮乾固すると白色の粉末が析出した。粉末を真空乾燥することにより収量1.3 g(6.7 mmol)収率57.0%で標題化合物を得た。
【0049】
1H NMR (500 MHz in CDCl3): δ7.06 (s, 2H, H(aromatic)), 4.69 (d, 4H, J = 6.5 Hz, CH2OH), 3.92 (s, 6H, OCH3), 2.11 (t, 2H, J = 6.4 Hz, CH2OH ). C10H14O4 (198.22): 計算値C, 60.59; H, 7.12; 実測値C, 60.45; H, 7.03%.
【0050】
参考例3
2,3-ジメトキシテレフタルアルデヒド
【化16】

300 mLのナスフラスコにクロロクロム酸ピリジニウム(11.0 g, 51.0 mmol)と シリカゲル (11.0 g)を加え、そこへ、参考例2で得られた2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレンジメタノール(2.5 g, 12.6 mmol)の脱水CH2Cl2溶液 (200 mL)をN2雰囲気下、室温で加えた。室温、窒素下で4時間撹拌した後、固体をろ別し、ろ液を減圧下に濃縮乾固すると茶色のオイルを得た。オイルをCH2Cl2:アセトン=1:1に溶かし、カラム(フロリジル、CH2Cl2:アセトン=1:1)で精製した。分取した緑色溶液を減圧下に濃縮乾固すると、みどり色の粉末が析出した。粉末を真空乾燥することにより収量2.3 g(12.0 mmol)収率95.3%で標題化合物を得た。
【0051】
1H NMR (500 MHz in CDCl3): δ10.45 (s, 2H, CHO), 7.64 (s, 2H, H(aromatic)), 4.06 (s, 6H, OCH3).
【0052】
参考例4
3,3'-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ビス(2-プロペン酸)ジエチルエステル
【化17】

水素化ナトリウム(0.5 g, 20.8 mmol)を懸濁した脱水ベンゼン(70 mL)に、30-35 ℃ 、N2 雰囲気下で、ジエチルホスホノ酢酸エチル(2.3 g, 10.3 mmol)を加えた。1時間撹拌した後、その溶液に参考例3で得られた2,3-ジメトキシテレフタルアルデヒド (1.0 g, 5.2 mmol)の脱水ベンゼン溶液(40 mL)を20-30 ℃で滴下した。反応溶液を60 ℃で3日間、加熱撹拌した後、不溶物をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮乾固すると白色の粉末が析出した。粉末を真空乾燥することにより収量1.4 g(4.1 mmol)収率77.9%で標題化合物を得た。
【0053】
1H NMR (500 MHz in CDCl3): δ7.93 (d, 2H, J = 16.1Hz, Hα), 7.30 (s, 2H, H(aromatic)), 6.52 (d, 2H, J = 16.1 Hz, Hβ), 4.28 (q, 4H, J = 7.1Hz, CH 2CH3), 3.90 (s, 6H, OCH3), 1.35 (t, 6H, J = 7.1Hz, CH2CH3). C18H22O6 (334.36): 計算値 C, 64.66; H, 6.63; 実測値 C, 64.63; H, 6.63%.
【0054】
参考例5
3,3'-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ビス(2-プロパン酸)ジエチルエステル
【化18】

参考例4で得られた3,3'-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ビス(2-プロペン酸)ジエチルエステル(3.2 g, 9.6 mmol)のエタノール溶液(200 mL)に塩化ニッケル・六水和物(0.9 g, 3.8 mmol)と 水素化ホウ素ナトリウム(2.9 g, 76.7 mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。不溶物をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮乾固した。析出した黒色の粉末をエーテル(150 ml)に溶解し、水で洗浄した後、硫酸ナトリウムを加え、一晩放置した。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮乾固させると白色の粉末が析出した。粉末を真空乾燥することにより収量3.0 g(8.9 mmol)収率93.0%で標題化合物を得た。
【0055】
1H NMR (500 MHz in CDCl3): δ6.83 (s, 2H, H(aromatic)), 4.13 (q, 4H, J = 7.1 Hz, CH2CH3), 3.85 (s, 6H, OCH3), 2.91 (t, 4H, J = 7.6 Hz, Hα), 2.59 (t, 4H, J = 7.6 Hz, Hβ), 1.24 (t, 6H, J = 7.1Hz, CH2CH3). C18H26O6 (338.40): 計算値 C, 63.89; H, 7.74; 実測値 C, 63.71; H, 7.57%.
【0056】
参考例6
3,3'-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ジプロパノール
【化19】

【0057】
水素化アルミニウムリチウム(2.1 g, 55.3 mmol)の脱水THF懸濁液(50 mL)に、参考例5で得られた3,3’-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ビス(2-プロパン酸)ジエチルエステル(2.4 g, 7.1 mmol)の脱水THF溶液(20 mL)をN2雰囲気下、0 ℃で滴下した。反応溶液の温度を徐々に上げ、室温で3.5時間撹拌した。再び反応溶液を0 ℃に冷却した後、水(50 mL)をゆっくりと加えた。溶液をエーテル(50 ml x 3回 )で抽出し、有機層を水で洗浄後、硫酸ナトリウムを加えて一晩放置した。乾燥剤をろ別した後減圧下で濃縮乾固すると白色の粉末が析出した。粉末を真空乾燥することにより収量1.7 g(6.8 mmol)収率95.9%で標題化合物を得た。
【0058】
1H NMR (500 MHz in CDCl3): δ6.86 (s, 2H, H(aromatic)), 3.85 (s, 6H, OCH3), 3.74 (t, 2H, J = 6.4 Hz, OH), 3.60 (t, 4H, J = 6.1 Hz, Hγ), 2.70 (t, 4H, J = 7.8Hz, Hα), 1.84 (m, 4H, Hβ). C14H22O4 (254.32): 計算値 C, 66.12; H, 8.72; 実測値 C, 65.92; H, 8.72%.
【0059】
参考例7
ジヘキサフルオロリン酸1,1'-(2,3-ジメトキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビスピリジニウム
【化20】

【0060】
参考例6で得られた3,3’-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ジプロパノール(662 mg, 2.6 mmol)のアセトニトリル溶液(5 mL)に、ピリジン(5.3 mL, 6.6 mmol)と メタンスルホニルクロリド(0.5 mL, 6.5 mmol)を加え、120 ℃で 24 時間撹拌した。反応溶液を氷浴で冷却した後、析出した沈殿をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮乾固した。析出したオイルを少量のメタノールに溶かし、そこへNH4PF6 の飽和水溶液を加えると、白色の粉末が析出した。ろ過した粉末を真空乾燥することにより、収量1.26 g(1.9 mmol)収率72.3%で標題化合物を得た。
【0061】
1H NMR (500 MHz in CD3CN): δ8.68 (d, 4H, J = 5.5 Hz, Hα), 8.50 (t, 4H, J = 8.0 Hz, Hγ), 8.02 (t, 4H, J = 6.5 Hz, Hβ), 6.87 (s, 2H, H(aromatic)), 4.55 (t, 4H, J = 7.5 Hz, Hγ), 3.75 (s, 6H, OCH3), 2.64 (t, 4H, J = 8.0 Hz, Hα), 2.23 (tt, 4H, J = 8.0 and 7.5 Hz, Hβ). MS[ESI(MeCN)]: m/z 189 [M-PF6]+. C24H30F12N2O2P2 (668.44): 計算値 C, 43.12; H, 4.52; N, 4.19; 実測値 C, 43.04; H, 4.60; N, 4.19%.
【0062】
参考例8
ジヘキサフルオロリン酸1,1'-(2,3-ジメトキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビス(4-t-ブチルピリジニウム)
【化21】

【0063】
参考例6で得られた3,3’-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ジプロパノール(440 mg, 1.7 mmol)のアセトニトリル(4 mL)溶液に、4-t-ブチルピリジン(6.4 mL, 43.7 mmol)と メタンスルホニルクロリド(0.3 mL, 3.9 mmol)を加え、120 ℃で 3日間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、減圧下に濃縮乾固した。析出した粉末を少量のメタノールに溶解し、そこへヘキサフルオロリン酸アンモニウム飽和水溶液を加えると、白色の粉末が析出した。粉末をろ過し、真空乾燥することにより収量778 mg(1.0 mmol)収率57.5%で標題化合物を得た。
【0064】
1H NMR (500 MHz in CD3CN): δ8.54 (d, 4H, J = 6.5 Hz, Hα), 7.97 (d, 4H, J = 6.0 Hz, Hβ), 6.84 (s, 2H, H(aromatic)), 4.47 (t, 4H, J = 7.5 Hz, Hγ), 3.74 (s, 6H, OCH3), 2.61 (t, 4H, J = 7.0 Hz, Hα), 2.19 (tt, 4H, J = 7.5 and 7.0 Hz, Hβ), 1.38 (s, 9H, tBu). MS[ESI(MeCN)]: m/z 245 [M-PF6]+. C32H46F12N2O2P2 (780.65): 計算値C, 49.23; H, 5.94; N, 3.59; 実測値 C, 49.05; H, 5.93; N, 3.57%.
【0065】
参考例9
ジヘキサフルオロリン酸1,1'-(2,3-ジメトキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビス(4-n-ペンチルピリジニウム)
【化22】

【0066】
参考例6で得られた3,3’-(2,3-ジメトキシ-1,4-フェニレン)ジプロパノール(438 mg, 1.7 mmol)のアセトニトリル溶液(4 mL)に、4-n-アミルピリジン(5.0 mg, 33.5 mmol)とメタンスルホニルクロリド(0.3 mL, 3.9 mmol)を加え、120 ℃で 3日間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を留去した。残ったオイル状の物質にヘキサフルオロリン酸アンモニウム飽和水溶液を加え30分間撹拌すると、水とオイルの相に分離した。水相をデカンテーションにより除き、オイルに少量のアセトンと2M-水酸化ナトリウム(20 mL)を加え、3時間室温で激しく撹拌した。再び水相をデカンテーションにより除いた後、未反応のピリジンを除去するため、残ったオイルをエーテルに懸濁し、ろ過した。オイルを真空乾燥することにより収量457 mg(0.6 mmol)収率32.7%で標題化合物を得た。
【0067】
1H NMR (500 MHz in CD3CN): δ8.49 (d, 4H, J = 6.0 Hz, Hα), 7.81 (d, 4H, J = 6.0 Hz, Hβ), 6.85 (s, 2H, H(aromatic)), 4.56 (t, 4H, J = 7.5 Hz, Hγ), 3.74 (s, 6H, OCH3), 2.88 (t, 4H, J = 7.0 Hz, H1), 2.61 (t, 4H, J = 7.0 Hz, Hα), 2.19 (tt, 4H, J = 7.5 and 7.0 Hz, Hβ), 1.69 (m, 4H, H2), 1.32 - 1.37 (m, 8H, H3and H4), 0.89 (t, 6H, J = 7.5 Hz, H5). MS[ESI(MeCN)]: m/z 259 [M-PF6]+. C34H51F12N2O2.5P2 (10c・0.5H2O, 817.32): 計算値C, 49.92; H, 6.24; N, 3.43; 実測値 C, 49.84; H, 6.17; N, 3.48%.
【0068】
実施例1
ジ塩化1,1'-(2,3-ジヒドロキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビスピリジニウム
【化23】

【0069】
参考例7で得られたジヘキサフルオロリン酸1,1’-(2,3-ジメトキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビスピリジニウム(348 mg, 0.5 mmol)を48% 臭化水素酸水溶液(4.0 mL)に懸濁させ、N2雰囲気下、3.5時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をメタノールに溶解し、アンバーライト(IRA900J-Cl)を用いてイオン交換した。溶液を減圧下に濃縮乾固し、析出したオイルを真空乾燥することにより収量175 mg(0.4 mmol)収率83.0%で標題化合物を得た。
【0070】
1H NMR (500 MHz in CD3OD): δ8.96 (d, 4H, J = 6.0 Hz, Hα), 8.55 (t, 4H, J = 8.0 Hz, Hγ), 8.06 (t, 4H, J = 6.5 Hz, Hβ), 6.58 (s, 2H, H(aromatic)), 4.66 (t, 4H, J = 7.0 Hz, Hγ), 2.69 (t, 4H, J = 7.5 Hz, Hα), 2.34 (tt, 4H, J = 7.5 and 7.0 Hz, Hβ). MS[ESI(MeOH)]: m/z 175 [M-Cl]+. C22H26Cl2N2O2 (421.36):含水でオイル性の物質のため、ESI-MSで合成できたことを確認した。
【0071】
実施例2
ジ塩化1,1'-(2,3-ジヒドロキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビス(4-t-ブチルピリジニウム)
【化24】

【0072】
参考例8で得られたジヘキサフルオロリン酸1,1’-(2,3-ジメトキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビス(4-t-ブチルピリジニウム)(390 mg, 0.5 mmol)を48%臭化水素酸水溶液(4.0 mL)に懸濁させ、N2雰囲気下、3.5時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をメタノールに溶解し、アンバーライト (IRA900J-Cl)を用いてイオン交換した。溶液を減圧下で濃縮乾固し、析出したオイルを真空乾燥することにより収量217 mg(0.4 mmol)収率82.3%で標題化合物を得た。
【0073】
1H NMR (500 MHz in CD3OD): δ8.78 (d, 4H, J = 5.5 Hz, Hα), 7.87 (d, 4H, J = 5.5 Hz, Hβ), 6.56 (s, 2H, H(aromatic)), 4.59 (t, 4H, J = 6.5 Hz, Hγ), 2.90 (t, 4H, J = 7.0 Hz, H1), 2.67 (t, 4H, J = 7.0 Hz, Hα), 2.31 (tt, 4H, J = 7.0 and 6.5 Hz, Hβ), 1.72 (m, 4H, H2), 1.37 (m, 8H, H3and H4), 0.91 (t, 6H, J = 6.5 Hz, H5). MS[ESI(MeOH)]: m/z 245 [M-Cl]+. C32H46Cl2N2O2 (561.62): 含水でオイル性の物質のため、ESI-MSで合成できたことを確認した。
【0074】
実施例3
ジ塩化1,1'-(2,3-ジヒドロキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビス(4-n-ペンチルピリジニウム)
【化25】

【0075】
参考例9で得られたジヘキサフルオロリン酸1,1’-(2,3-ジメトキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビス(4-n-ペンチルピリジニウム)(439.6 mg, 0.5 mmol)を48%臭化水素酸水溶液(4.0 mL)に懸濁させ、N2雰囲気下、3.5時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をメタノールに溶解し、アンバーライト (IRA900J-Cl)を用いてイオン交換した。溶液を減圧下で濃縮乾固し、析出したオイルを真空乾燥することにより収量221 mg(0.4 mmol)収率78.8%で標題化合物を得た。
【0076】
1H NMR (500 MHz in CD3OD): δ8.78 (d, 4H, J = 7.0 Hz, Hα), 8.04 (d, 4H, J = 6.5 Hz, Hβ), 6.57 (s, 2H, H(aromatic)), 4.58 (t, 4H, J = 6.5 Hz, Hγ), 2.69 (t, 4H, J = 7.5 Hz, Hα), 2.32 (tt, 4H, J = 7.5 and 6.5 Hz, Hβ), 1.69 (m, 4H, H2), 1.42 (s, 9H, tBu). MS[ESI(MeOH)]: m/z 231 [M-Cl]+. C30H42Cl2N2O2 (533.57): 含水でオイル性の物質のため、ESI-MSで合成できたことを確認した。
【0077】
参考例10
ジヘキサフルオロリン酸1,4-ジピリジニウムプロピルオルトベンゾキノン
【化26】

【0078】
参考例7で得られたジヘキサフルオロリン酸1,1’-(2,3-ジメトキシ-1,4フェニレンジ-3,1-プロパンジイル)ビスピリジニウム(348 mg, 0.5 mmol)を48%臭化水素酸水溶液(4.0 mL)に懸濁させ、N2雰囲気下、3.5時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で留去した。残渣を水(3.0 mL)に溶解し、過ヨウ素酸ナトリウム (111.3 mg, 0.5 mmol)の水溶液(3.0 mL)を加え、超音波に2分間かけた。沈殿をろ過し、ろ液にNH4PF6 水溶液を加えると、緑がかった赤色の粉末が析出した。粉末をろ過し、水とエーテルで洗浄した後に真空乾燥することにより収量188.0 mg(0.28 mmol)収量56.6%で標題化合物を得た。
【0079】
1H NMR (500 MHz in CD3CN): δ8.69 (d, 4H, J = 5.5 Hz, Hα), 8.51 (t, 4H, J = 8.0 Hz, Hγ), 8.04 (t, 4H, J = 7.0 Hz, Hβ), 6.86 (s, 2H, H(aromatic)), 4.53 (t, 4H, J = 7.5 Hz, Hγ), 2.38 (t, 4H, J = 8.0 Hz, Hα), 2.14 (tt, 4H, J = 8.0 and 7.5 Hz, Hβ). MS[ESI(MeCN)]: m/z 174 [M-PF6]+. C22H24F12N2O2P2 (638.37): 計算値C, 41.39; H, 3.79; N, 4.39; 実測値 C, 41.07; H, 3.88; N, 4.39%.
【0080】
実施例4
D-リブロース-1,5-二リン酸 四ナトリウム塩(RuBP)(20.0 mg, 0.05 mmol)を水(2.5 mL)に溶かし、塩酸でpHの値が4.3-1.1になるように調整し、実施例3で得られた0.05 mmolのカテコール誘導体の水溶液(0.5 mL)を加えた。反応溶液を図1に示す脱塩装置にかけて塩化ナトリウムを除去した後、水を減圧下に留去し、残渣を乾燥した。生成物(サンプル1)はD2O(重水)もしくはCD3OD(重メタノール)に溶かし、31P-NMRを測定した。
【0081】
また、対象実験として、RuBP(サンプル2)、カテコール誘導体とRuBP(1:1)の混合物(サンプル3)、D(-)-3-ホスホグリセリン酸 二ナトリウム塩(PGA)(サンプル4)、カテコール誘導体とPGA(1:1)の混合物(サンプル5)、および、カテコール誘導体とPGAの脱塩サンプル(サンプル6)も同様に31P-NMRを測定した。
測定結果を図2A・図2B(31P-NMRスペクトル(D2O))および図3A・図3B(31P-NMRスペクトル(CD2OD))に示す。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例で用いた脱塩装置の概念図である。
【図2A】サンプル1〜3の31P-NMRスペクトル(D2O)を示す図である。
【図2B】サンプル4〜6の31P-NMRスペクトル(D2O)を示す図である。
【図3A】サンプル1〜3の31P-NMRスペクトル(CD2OD)を示す図である。
【図3B】サンプル4〜6の31P-NMRスペクトル(CD2OD)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物。
【化1】

[式中、A1、A2、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6〜C10アリール基であり、
ただし、R1〜R3、及び、R4〜R6は、それぞれ、互いに架橋し飽和又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、
1及びL2は連結基を表す。]
【請求項2】
前記式(1)中、
【化2】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、上記の意味を有する。]
が、それぞれ、
【化3】

[式中、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9及びB10は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6〜C10アリール基である。]
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(1)中、−L1−及び−L2−が、−(CH23−である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物を使用することを特徴とする、リブロース−1,5−二リン酸の固定化方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物を使用することを特徴とする、リブロース−1,5−二リン酸の抽出方法。



【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2007−63148(P2007−63148A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247760(P2005−247760)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第85春季年会 講演予稿集 2」に発表
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】