説明

リベット

【課題】抜けにくく、破損し難く、信頼性、生産性及び環境性に優れたリベットを提供する。
【解決手段】雄部材1と雌部材2とによって対象物を挟持するリベットであって、雄部材1は、頭部11と、頭部11に垂設された複数の脚部12とからなり、雌部材2は、底部23を有する筒体22と、筒体22の上部に開口部25を有する鍔部21とからなり、対象物に形成された孔に嵌装した雌部材2に対し雄部材1を挿通すると、脚部12が、筒体22の底部23に当接した後に底部23からの力を受けて水平方向に屈曲し、当該屈曲した脚部12と雌部材2の鍔部21とにより対象物を挟持する構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板などの対象物に形成された孔に嵌装してその固着を行うリベットに関し、特に、対象物の片側からの作業によって固着を完結することができる雄部材及び雌部材からなるリベットに関する。
【背景技術】
【0002】
孔を形成した二枚の板(以下、適宜「対象物」という)に嵌装することによって平材同士を固着することができる係止具がある。
一般的な係止具としては、円柱状で、一方の軸先端部には直径の大きな頭が付いており、対象物の孔に通した後、突出した他方の軸先端部をつぶすことで対象物を固く密着させるリベットが知られている。
しかしながら、このようなリベットの方法によれば、対象物の両側で同時に作業を行う必要があるため、煩わしく、改善すべき問題となっていた。
特に、対象物の面積が大きいほど作業性は低下し、その大きさによっては複数人でリベットの取付けを行わなければならず、大幅に作業効率が低下することもあった。
【0003】
このような問題に対し、対象物の片側からの作業によって取付けを完結することができるリベット(ワンサイドリベット)が提案されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2727454号公報
【特許文献2】特開2010−265952号公報
【特許文献3】実公平4−7375号公報
【特許文献4】実開平4−64609号公報
【特許文献5】特開2009−8249号公報
【特許文献6】登録実用新案第2582073号公報
【特許文献7】特許第3967738号公報
【特許文献8】実公昭57−52413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のリベットは、作業性のよいワンサイドリベットである一方で下記のような問題を有していた。
まず、特許文献1〜6のリベットは、拡大した脚が斜めの状態で保持されるようになっているため、リベットが外れ易いといった問題がある。特に、対象物が、気泡シート等の撓みやすい素材の場合には、リベットを取付けるための孔が広がり易く、簡単にリベットが抜けてしまうことがあった。
また、特許文献7のリベットは、外向挟持片を用いることでリベットが外れにくい構造となっているが、リベットが複数のパーツの組み合わせによって構成されているのに加え、各々のパーツが複雑な形状となっている。このため、生産性が低く、また、破損しやすいといった問題があった。
また、特許文献8のリベットは、工程の最後に切断処理を行う手間が必要となるためワンサイドリベットの易作業性を阻害していた。また、この処理によって生ずる切断片の後処理について経済性や環境保護の観点から課題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、作業性に優れたワンサイドリベットでありながら、単純かつ特徴的な形状及び動作によって脚部を水平に屈曲させる構造とすることで、抜けにくく、破損し難く、信頼性、生産性及び環境性に優れたリベットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のリベットは、所定の雄部材と雌部材とによって対象物を挟持するリベットであって、前記雄部材は、頭部と、該頭部に垂設された複数の脚部とからなり、前記雌部材は、底部を有する筒体と、該筒体の上部に開口部を有する鍔部とからなり、前記対象物に形成された孔に嵌装した前記雌部材に対し前記雄部材を挿通すると、前記脚部が、前記筒体の底部に当接した後に当該底部からの力を受けて水平方向に屈曲し、当該屈曲した脚部と前記雌部材の鍔部とにより前記対象物を挟持するようにしてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抜けにくく、破損し難く、信頼性、生産性及び環境性に優れたリベットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態のリベットを構成する雄部材と雌部材の外観を示した斜視図である。
【図2】雄部材を雌部材に挿通したときのリベット全体の外観を示した斜視図である。
【図3】雄部材を雌部材に挿通したときの雄部材の外観を示した斜視図である。
【図4】本実施形態のリベットの取付方法を説明するための説明図である。
【図5】第二実施形態に係るリベットに係る雄部材の外観を示した斜視図である。
【図6】第三実施形態に係るリベットに係る雄部材、雌部材及びスペーサの外観を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態のリベットを構成する雄部材と雌部材の外観を示した斜視図である。
本実施形態に係るリベットは、図1に示すように、雄部材1と雌部材2とからなり、雄部材1を雌部材2に挿通して用いられる。具体的には、板などの対象物に形成された穴に雌部材2を嵌装し、この雌部材2に雄部材1を挿通することによって雄部材1と雌部材2とが対象物を挟持して固着するようにする。
【0011】
(雄部材1)
雄部材1は、図1(a)に示すように、頭部11とこの頭部11に垂設された複数の脚部12とによって構成される。頭部11や脚部12は、例えば、プラスチックや気泡シートなどの合成樹脂材を用いて形成することができる。但し、所定の形状及び機能を実現できるものであれば、前記素材に代えて他の素材を用いることもできる。
【0012】
脚部12は、4つの板材が接合されて形成される。具体的には、第一の板材121、第二の板材122、第三の板材123、及び、第四の板材124の順に連接され、このうち第一の板材121の端部が頭部11に垂設されて雄部材1を形成する。
脚部12は、頭部11の下面に、雌部材2の開口部25の径(又は、筒体22の内径)に合わせて配置される。すなわち、雄部材1を雌部材2に挿入したときに、脚部12が丁度筒体22の内壁に沿って挿通するように、かつ、等間隔で配置する。
なお、図1(a)には、3本の脚部12を有する雄部材1の例が示されているが、4本以上でも良く、また、2本でも良い。本数が多いほど抜けにくく、本数が少ないほど簡易な構造のリベットを形成することができる。
【0013】
脚部12は、ヒンジ125〜127を備え、各板材はヒンジを中心に屈曲できるようにしている。具体的には、各板材間(第一の板材121と第二の板材122の間、第二の板材122と第三の板材123の間、及び、第三の板材123と第四の板材124の間)において、内側の面同士をシール材等で接合することでヒンジを構成することができる。
この際、第一の板材121及び第二の板材122は、伸展した状態において、その接合箇所の外側にV字の溝ができるように、それぞれの端部の断面を約45°に斜め加工する。また、第三の板材123及び第四の板材124についても同様に加工する。第二の板材123と第三の板材124との接合箇所については、断面矩形とし、伸展した状態で相互の断面が合わさるようにする。
このようにすると、脚部12に対し上下から荷重が加わった場合に、脚部12が膝状に水平方向に折れ曲がる。
なお、脚部12の屈曲動作については後述する。
【0014】
(雌部材2)
雌部材2は、図1(b)に示すように、底部23を有する筒体22と、この筒体22の上部に開口部25を有する鍔部21とによって構成される。
筒体22(底部23を含む)は、雄部材1と同様、合成樹脂材などの各種素材を用いて形成することができる。
鍔部21は、肉厚の弾性体によって形成される。雄部材1の頭部11から押圧されて生ずる反発力を利用して対象物の挟持に利用するためである(図4のS5参照)。例えば、鍔部21は、ウレタンゴム等によって形成することができる。
【0015】
筒体22は、使用前(即ち、伸展した状態)の雄部材1の脚部12を丁度挿通することができる程度の内径を有する。鍔部21における開口部25は、筒体22の内径とほぼ同径とする。このようにすると、雄部材1を雌部材2に挿通したときのぐらつきを防ぎ円滑な嵌合を可能とすることができる。
筒体22は、これと一体化した平面の底部23を備える。雄部材1を挿入したときに脚部12の先端(即ち、第四の板材124の先端)をこの底部23の面に当接させ、その後の挿通を進めることによって、脚部12がこの底部23から反作用を受けるようにするためである。
また、筒体22の側部の対応箇所には切欠き窓24を備える。これは、雄部材1を雌部材2(筒体22)に挿通した後において、雄部材1の脚部12が水平方向に屈曲するために必要な空間を確保するためである。
【0016】
図2は、雄部材を雌部材に挿通したときのリベット全体の外観を示した斜視図である。
図3は、雄部材を雌部材に挿通したときの雄部材の外観を示した斜視図である。つまり、図2から雄部材だけを抜き出したものである。
ここで、脚部12の屈曲動作について説明する。
雄部材1を雌部材2に挿通すると、脚部12の先端が底部23に当接する。したがって、挿通を進めると、脚部12が底部23からの反作用の力を受ける。
【0017】
前述の通り、脚部12は、板材121〜124を有し、各板材間にヒンジ125〜127を有する。
具体的には、第一の板材121と第二の板材122の間、第二の板材122と第三の板材123の間、及び、第三の板材123と第四の板材124の間において、内側の面同士をシール材等で接合することでヒンジを構成している。
また、第一の板材121及び第二の板材122は、伸展した状態において、その接合箇所の外側にV字の溝ができるように、それぞれの端部の断面を約45°に斜め加工されており、第三の板材123及び第四の板材124についても同様に加工されている。第二の板材123と第三の板材124との接合箇所については、断面矩形とし、伸展した状態で相互の断面が合わさるようにしている。
【0018】
すなわち、ヒンジ126は内側への屈曲を許容せず、外側への屈曲のみ許容している。また、ヒンジ125及びヒンジ127は、第二の板材122及び第三の板材123を外側最大の90°まで屈曲できるようにしている。
このため、脚部12の上方からは頭部11を押し下げる力が働き、脚部12の下方から底部23からのその反作用力を受けると、各ヒンジの機能にもとづいて第二の板材122と第三の板材123はそれぞれ水平方向に屈曲し、最終的には相互に重なり合った状態で、水平に屈曲することになる。
【0019】
なお、第二の板材122には、凸状のホゾ131が施されるとともに、第二の板材122と重なったときの第三の板材123のホゾ131に対応する位置に、ホゾ131の嵌め込みを可能とする凹状のホゾ孔132が施される。すなわち、第二の板材122と第三の板材123とが屈曲して、これらが水平になって重なり合ったときには、ホゾ131がホゾ孔132に嵌ることで接合され(接合手段)、屈曲した脚部12の形状が保持される。なお、この接合手段は、ホゾ等を用いた形式に限るものではなく、他の接合方法(例えば、接合面に接着材を塗布するなど)でもよい。
本実施形態において、頭部11の径は、雌部材2の開口部25の内径より大きくする必要がある。雄部材1を雌部材2に挿通したあと、この頭部11によって雌部材2の鍔部21を押圧する必要があるからである(後述のリベットの取付方法のS5参照)。
【0020】
(リベットの取付方法)
次に、リベットの取付方法について図面を参照しながら説明する。
図4は、リベットの取付方法を説明するための説明図である。
まず、リベットを取付ける対象物を準備する(S1)。
ここでは、合成樹脂の薄膜のシートが積層してなる気泡シート91,92を対象物とし、これらを本実施形態のリベットで挟み込み、固着するものとする。
また、準備として、気泡シート92と気泡シート93とを重ね、必要な箇所に孔を開けるか、予め対応する箇所に孔が開いている気泡シート92と気泡シート93とを孔が一致するようにして重ね合わせる作業を予め行う。
【0021】
次に、気泡シート91,92の孔に雌部材2を嵌装する(S2)。
続いて、雌部材2の開口部25から筒体22に対し雄部材1を挿通する。挿通により、脚部12は、筒体22の底部23にまで達する(S3)。
【0022】
雄部材1の挿通を進めると、脚部12が底部23から反作用力を受け、これを機に第二の板材122及び第三の板材123は、水平方向に屈曲し始める(S4)。雄部材1の挿通をさらに進めると、雄部材1の頭部(下面)11が、雌部材2の鍔部(上面)21に当接する。
ここで、頭部11を鍔部21に対し押さえ込む。これにより、鍔部21がその弾性によって沈み込む。すなわち、この押さえ込みにより、雄部材1の挿通がさらに進み、第二の板材122及び第三の板材123は完全に水平に屈曲し、重なり合う(S5)。
重なり合った状態において、ホゾ131とホゾ孔132とが嵌り、結果、第二の板材122と第三の板材123とは重なり合った状態で固定される。この時点においては、対象物と脚部12とは空間がある。
【0023】
最後に、頭部11の押さえ込みを解除すると、鍔部21の弾性反発力により、頭部11が持ち上がり、第二の板材122の水平面がその分上昇する(S6)。
この結果、脚部12(第二の板材122)の水平面と対象物とが密着し、結果、鍔部21と脚部12とによって気泡シート91,92が挟み込まれる。
【0024】
(第二実施形態)
図5は、本発明の第二実施形態に係るリベットを構成する雄部材1aの外観を示す斜視図である。
図5に示すように、本実施形態に係るリベットは、雄部材1aが、二以上の脚部12における伸展及び屈曲が連動するように、各脚部12同士を、円弧状に形成した接合部材14によって接合している点において前述の実施形態と異なる。他の構成は同様である。
すなわち、このようにすると、ばらつきやすい複数の脚部12の動きを統一することができ、雌部材2に対する雄部材1の挿通を円滑化することができる。
このため、本実施形態のリベットによれば、作業性を一層向上させることができる。
【0025】
(第三実施形態)
図6は、本発明の第三実施形態のリベットを構成する雄部材、雌部材及びスペーサの外観を示す斜視図である。
図6に示すように、本実施形態に係るリベットは、対象物の厚みに応じた高さのスペーサ15を備える点において前述の実施形態と異なる。他の構成は同様である。
スペーサ15は、図6に示すように、内径が筒体22の外径とほぼ同じの環状の単純形状からなり、これを対象物と雌部材2の間に装着して用いる。
また、スペーサ15の高さは、任意で設定して、様々なバリエーションを持たせることができる。
例えば、図4で示した気泡シート91、92の半分の厚みの対象物を挟み込む場合、同図に示すリベットによれば鍔部21と脚部12(第二の板材122)との間に隙間ができてしまい、対象物を十分に挟み込むことはできない。
このような場合、少なくとも対象物の半分の高さを有するスペーサ15を雌部材2との間に装着することで対象物を適切に固着できるようになる。
したがって、本実施形態に係るリベットによれば、対象物の厚みや薄さを問わず、柔軟かつ適切にその機能を奏することができる。
【0026】
以上のように、上述した各実施形態に係るリベットによれば、作業性に優れたワンサイドリベットでありながら、単純な形状とその動作によって効果的に対象物を挟持することができる。
具体的には、雄部材1と雌部材2とからなり、雌部材2に雄部材1を挿入することによって、対象物を係止するための脚部12を水平に屈曲させ、この屈曲した脚部12を利用して対象物を固着することを基本的な特徴としている。
このため、リベットが抜けにくく、また、単純な構造であるため、破損し難く、信頼性、生産性及び環境性に優れる。
また、弾性体の反発力を用いて対象物を挟持するため、強固に固定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、板同士を固着するための係止具として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 雄部材
11 頭部
12 脚部
121〜124 板材
125〜127 ヒンジ
13 接合手段
14 接合部材
15 スペーサ
2 雌部材
21 鍔部
22 筒体
23 底部
24 切欠き窓
25 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の雄部材と雌部材とによって対象物を挟持するリベットであって、
前記雄部材は、頭部と、該頭部に垂設された複数の脚部とからなり、
前記雌部材は、底部を有する筒体と、該筒体の上部に開口部を有する鍔部とからなり、
前記対象物に形成された孔に嵌装した前記雌部材に対し前記雄部材を挿通すると、前記脚部が、前記筒体の底部に当接した後に当該底部からの力を受けて水平方向に屈曲し、当該屈曲した脚部と前記雌部材の鍔部とにより前記対象物を挟持することを特徴とするリベット。
【請求項2】
前記脚部は、前記頭部に垂設された第一の板材に、第二の板材、第三の板材及び第四の板材が順に連接してなり、
前記雌部材に前記雄部材を挿通すると、前記第四の板材が前記筒体の底部に当接した後に当該底部からの力を受けて前記第二の板材及び前記第三の板材が水平に屈曲する請求項1記載のリベット。
【請求項3】
前記脚部は、前記第二の板材及び前記第三の板材が水平に屈曲することでこれらが重なる部分に当該屈曲した状態を保持するための接合手段を備える請求項2記載のリベット。
【請求項4】
前記筒体は、前記脚部が水平方向に屈曲する空間を確保するための切欠き窓を備える請求項1〜3のいずれか一項記載のリベット。
【請求項5】
前記雄部材は、二以上の脚部における伸展及び屈曲が連動するように、各脚部同士を連接した形状からなる請求項1〜4のいずれか一項記載のリベット。
【請求項6】
前記雌部材の鍔部は、肉厚の弾性体からなり、
前記雌部材に対し前記雄部材を挿通するにあたり、前記雄部材の頭部が前記鍔部に当接した後の前記頭部の押し込みに係る前記雄部材の挿通により前記脚部が水平に屈曲し、前記押し込みの解除により開放される前記鍔部の反発力により、当該屈曲した脚部と前記鍔部とにより前記対象物を挟持する請求項1〜5のいずれか一項記載のリベット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate