説明

リボスイッチの調節に関連した方法および組成物

本明細書では、リボスイッチのコンフォメーション変化およびリボスイッチとトリガー分子との相互作用を検出することに関する方法および組成物を開示する。本発明は例えば、a)リボザイムリボスイッチ、コンフォメーション依存性標識で標識した基質、および化合物を接触させる工程であって、該基質が該リボザイムリボスイッチによる切断のための基質である、工程;ならびに(b)蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化が該リボザイムリボスイッチによる該基質の切断を示す、工程、を含む、方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2005年12月21日に出願された米国仮出願第60/752,726号の利益を主張する。2005年12月21日に出願された米国仮出願第60/752,726号は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載)
本発明は、国立衛生研究所による補助金第NIH GM068819号および米国陸軍研究所によるDARPA補助金第W911NF−04−1−0416号に基づく連邦政府の資金提供を受けて行われた。連邦政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、一般的にはリボスイッチの分野に関し、具体的にはリボスイッチの活性化を調節する領域に関する。
【背景技術】
【0004】
細胞は、遺伝子発現パターンを変えることによって数多くの生化学シグナルや環境手がかりに反応しなければならないことから、正確な遺伝子制御が生体系にとって必須な機能である。ほとんどの既知の遺伝子制御機序では、化学的または物理的刺激を感知した、関連するDNAまたはメッセンジャーRNA配列と選択的に相互作用することによって遺伝子発現を調節するタンパク質因子が使用される。タンパク質は、複雑な形態を採ることができ、また生体系が化学的および物理的環境を正確に感知できるようにする種々の機能を行うことができる。一般的には、代謝産物に反応するタンパク質因子が、DNAを結合して転写開始(例えば、lacリプレッサータンパク質;非特許文献1)を調節することにより、またはRNAを結合して転写終結(例えば、PyrRタンパク質;非特許文献2)もしくは翻訳(例えば、TRAPタンパク質;非特許文献3)を調節することにより作用する。タンパク質因子は、アロステリック調節または翻訳後修飾などの種々の機序によって環境刺激に反応し、これらの機序を反応性の高い遺伝子スイッチとして活用することに長けている(例えば、非特許文献4を参照)。
【0005】
遺伝子制御におけるタンパク質因子の幅広い関与に加えて、RNAは遺伝子調節に積極的な役割を果たすことが知られている。最近の試験では、スモール非コードRNAが、破壊するmRNAを選択的に標的にする上で実質的な役割を果たし、それによって遺伝子発現を下方調節することが明らかにされつつある(例えば、Hannon, G.J. 2002, Nature 418, 244−251、および本明細書の参考文献を参照)。このRNA干渉プロセスでは、短いRNAがワトソンクリック型の塩基相補性を介して目的のmRNA標的を選択的に認識する機能が活用されており、その後、結合したmRNAがタンパク質の作用によって破壊される。この系統ではRNAが分子認識に理想的な物質であると言える。なぜなら、新規で特異性の高いRNA結合部位を伴うタンパク質因子を生成することよりも、進化プロセスを通じて新しい標的特異的なRNA因子を生成すること方がはるかに簡単なためである。
【0006】
タンパク質は、生物学において酵素、レセプターおよび構造機能に求められる要件をほとんど満たしているが、RNAもこれらの機能を行うことができる。例えば、RNAは、大きな酵素作用と正確な分子認識機能を示す、数多くのリボザイムドメイン(非特許文献5;非特許文献6)およびレセプタードメイン(非特許文献7;非特許文献8)を形成するのに十分な構造的可塑性を有する。さらに、これらの作用を組み合わせることで、エフェクター分子により選択的に調節されるアロステリックリボザイムを作成することができる(非特許文献9;非特許文献10)。
【0007】
細菌のリボスイッチRNAは、主に特定のmRNAの主要コード領域の5’非翻訳領域(5’−UTR)内に所在する遺伝子制御エレメントである。構造プローブ試験(以下に詳述)では、リボスイッチエレメントが一般的に、リガンド結合ドメインとして機能する天然アプタマー(非特許文献11)、および遺伝子発現に関与するRNAエレメントと連係する「発現プラットフォーム」(例えば、シャインダルガノ配列、転写ターミネーターステム)という2つのドメインからなることが明らかにされている。
【非特許文献1】Matthews, K.S. and Nichols, J.C., 1998, Prog. Nucleic Acids Res. Mol. Biol. 58, 127−164
【非特許文献2】Switzer R.L., et al., 1999, Prog. Nucleic Acids Res .Mol. Biol. 62, 329−367
【非特許文献3】Babitzke, P., and Gollnick, P., 2001, J. Bacteriol. 183, 5795−5802
【非特許文献4】Ptashne, M., and Gann, A. (2002). Genes and Signals. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY
【非特許文献5】Cech & Golden, Building a catalytic active site using only RNA. In: The RNA World R.F. Gesteland, T.R. Cech, J.F. Atkins, eds., pp.321−350 (1998)
【非特許文献6】Breaker, In vitro selection of catalytic polynucleotides. Chem. Rev. 97, 371−390 (1997)
【非特許文献7】Osborne & Ellington, Nucleic acid selection and the challenge of combinatorial chemistry. Chem. Rev. 97, 349−370 (1997)
【非特許文献8】Hermann & Patel, Adaptive recognition by nucleic acid aptamers. Science 287, 820−825 (2000)
【非特許文献9】Soukup & Breaker, Engineering precision RNA molecular switches. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 3584−3589 (1999)
【非特許文献10】Seetharaman, et al., Immobilized riboswitches for the analysis of complex chemical and biological mixtures. Nature Biotechnol. 19, 336−341 (2001)
【非特許文献11】T. Hermann, D.J. Patel, Science 2000, 287, 820; L. Gold, et al., Annual Review of Biochemistry 1995, 64, 763
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な要旨)
本明細書では、リボスイッチを結合、活性化および/または不活性化する化合物をスクリーニングするための方法および組成物を開示する。本方法および組成物は一般的に、ハイスループットスクリーニングに好適である。本方法では、例えば、リボスイッチに結合することができる化合物を同定する、トリガー分子がまだ同定されていないリボスイッチのトリガー分子を同定する、推定リボスイッチのトリガー分子を同定する、推定リボスイッチを機能性リボスイッチとして同定する、ならびにリボスイッチを不活性化もしくは遮断する、および/またはリボスイッチの活性化を防止または低減することができる化合物(このような化合物は、例えば抗生物質として有用であり得る)ことが可能である。本方法で同定した化合物は、例えば、リボスイッチを活性化する(それによりRNAの構造に影響を及ぼし、リボスイッチと操作可能に結合する発現配列の発現を調節する)目的で、リボスイッチ、すなわちリボスイッチの天然リガンドを結合する(例えば、転置させることにより)ために競合する目的で、およびリボスイッチのトリガー分子として使用するが可能である。
【0009】
本明細書ではまた、リボザイムリボスイッチ、コンフォメーション依存性標識で標識した基質、および化合物を接触させる工程であって、前記基質がリボザイムリボスイッチにより切断するための基質である、工程;ならびに蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化が前記リボザイムリボスイッチによる前記基質の切断を示す、工程、を含む、方法も開示する。
【0010】
基質の切断は、化合物がリボザイムリボスイッチに結合すること、化合物がリボザイムリボスイッチを活性化すること、化合物がリボザイムリボスイッチと相互作用すること、または化合物がリボザイムリボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することを示すことができる。基質の切断はまた、化合物がリボザイムリボスイッチのトリガー分子であることも示すことができる。
【0011】
本方法は、複数の異なる化合物を使用して複数回並行して行うことができ、化合物の1つの化合物の存在下における基質の切断が、その化合物がリボスイッチを活性化することを示す。例えば、上に開示した方法の工程は、少なくとも20回、30回、40回、50回、75回、96回、100回、150回、200回、250回、300回、384回、または400回並行して行ってもよい。工程は複数回並行して、複数回連続して行ってもよい。工程は複数回並行して、少なくとも3回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、75回、100回、150回、200回、250回、300回、または400回連続して行ってもよい。本明細書で開示する方法は、ハイスループットシステムを使用して行ってもよい。
【0012】
蛍光変化は、化合物が基質の切断を調節することを示すことができる。コンフォメーション依存性標識は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識であってもよい。
【0013】
リボザイムリボスイッチは天然に存在するものであってもよければ、キメラなど操作されたものであってもよい。キメラは、リボザイムに融合したリボスイッチを含んでもよく、一例として自己切断型であってもよい。リボザイムリボスイッチはまた、切断部位を含むセグメントが除去された場合に自己切断する、天然に存在するリボザイムリボスイッチであってもよい。この場合、基質は除去されたセグメントを置き換えてもよい。一例として、リボスイッチはグアニンリボスイッチであってもよく、またリボザイムはハンマーヘッドリボザイムであってもよい。スクリーニングする化合物は、タンパク質であっても、ペプチドであってもよい。化合物はまた有機低分子を含んでもよい。
【0014】
本明細書では、リボスイッチ、蛍光トリガー分子、および化合物を接触させる工程;ならびに蛍光変化を検出する工程を含み、蛍光変化が、リボスイッチからトリガー分子が転置することを示す、方法が開示される。このような転置は、化合物の競合的結合を介して生じ得る。リボスイッチとトリガー分子は、化合物がリボスイッチおよびトリガー分子に接触する前に、接触させてもよい。トリガー分子は天然に蛍光性であってもよければ、蛍光標識を含んでもよい。
【0015】
リボスイッチからのトリガー分子の転置は、化合物がリボスイッチに結合することを示すことができる。リボスイッチからのトリガー分子の転置は、化合物がリボスイッチを不活性化もしくは遮断する、および/またはリボスイッチの活性化を防止または低減することを示すことができる。リボスイッチからのトリガー分子の転置はまた、化合物がリボスイッチと相互作用することも示すことができる。リボスイッチからのトリガー分子の転置は、化合物がリボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することも示すことができる。
【0016】
リボスイッチはFMNリボスイッチであってもよい。リボスイッチは天然に存在するものであってもよければ、操作されたものであってもよい。トリガー分子は蛍光活性フラビンモノヌクレオチドであってもよい。化合物はタンパク質であってもよければ、ペプチドであってもよい。化合物はまた有機低分子を含んでもよい。
【0017】
本明細書では、リボスイッチおよび化合物を接触させる工程であって、前記リボスイッチがコンフォメーション依存性標識を含む、工程;ならびに蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化がリボスイッチのコンフォメーション変化を示す、工程、を含む、方法が開示される。リボスイッチのコンフォメーション変化は、化合物がリボスイッチに結合することを示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチを活性化することも示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチと相互作用することも示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することも示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチのトリガー分子であることも示すことができる。コンフォメーション依存性標識は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識であってもよい。
【0018】
本明細書では、複数の異なる化合物を使用して複数回同時に行うことができ、化合物の1つの存在下におけるリボスイッチからのトリガー分子の転置は、化合物がリボスイッチを不活性化または遮断することを示す。例えば、上に開示した工程は、少なくとも20回、30回、40回、50回、75回、96回、100回、150回、200回、250回、300回、384回、または400回並行して行ってもよい。工程は複数回並行して、複数回連続して行ってもよい。工程は複数回並行して、少なくとも3回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、75回、100回、150回、200回、250回、300回、または400回連続して行ってもよい。本明細書に開示する方法は、ハイスループットシステムを使用して行ってもよい。
【0019】
リボスイッチはpreQリボスイッチであってもよい。リボスイッチはまたグアニン反応性リボスイッチであってもよい。リボスイッチはまたグリシン反応性リボスイッチであってもよい。リボスイッチは、コンフォメーション依存性標識を追加した天然に存在するリボスイッチであってもよい。リボスイッチはまた操作されたものであってもよい。例えば、リボスイッチはキメラであってもよい。化合物はタンパク質であってもよければ、ペプチドであってもよい。化合物はまた有機低分子であってもよければ、有機低分子を含んでもよい。
【0020】
本方法および組成物のさらなる利点は、以下の説明において一部を記載するが、一部はこの説明から理解されるか、あるいは本方法および組成物を実施に移すことによって認識することができる。本方法および組成物の利点は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載する要素および組み合わせによって実現および達成されるであろう。但し、前述の概説および後述の詳細説明は、請求する本発明を単に例示および説明するものであり、限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するものであるが、本方法および組成物のいくつかの実施形態を例示し、説明とともに本方法および組成物の原理を説明するものである。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本方法および組成物は、特定の実施形態の詳細な説明およびかかる説明に含まれる実施例、ならびに図面およびその前後の説明を参照することによってより容易に理解することができる。
【0023】
1.リボスイッチ
一部の天然のmRNAは、RNAが有機低分子を直接結合する代謝産物に敏感な遺伝子スイッチとして機能する。この結合プロセスによりmRNAのコンフォメーションが変わり、種々の異なる機序によって遺伝子の発現が変わる。これらの天然の「リボスイッチ」の変形例(種々の核酸工学法により作成)は、特異的エフェクター化合物(本明細書ではトリガー分子と呼ぶ)によって制御されるデザイナー遺伝子スイッチとして使用できる。天然のリボスイッチは、抗生物質やその他の低分子治療の標的である。さらに、リボスイッチを構築することにより、天然のリボスイッチのいくつかを使用して、新しい非免疫原生遺伝子制御エレメントを構成することができる。例えば、発現プラットフォームをリボザイムで置換(または他の方法で修飾)して、アプタマードメインがリボザイムの活性を調節できるようにすることができる。
【0024】
メッセンジャーRNAは一般的に、翻訳プロセスでタンパク質またはスモールRNA調節因子による、ならびにリボザイムによる作用を受ける、遺伝情報の受動的な担体と考えられている。一部のmRNAは天然のアプタマードメインを担持し、これらのRNAドメインに特定の代謝産物が直接結合すると、遺伝子発現が調節される。天然のリボスイッチは、天然のRNAと通常関連しない2つの機能を示す。まず、mRNAエレメントは、1つの構造が標的代謝産物の正確な結合ポケットとして機能する、異なる構造状態をとることができる。第二に、代謝産物により誘導される各構造状態間のアロステリック相互変換により、いくつかの異なる機序の1つによる遺伝子発現レベルの変化が生じる。天然のリボスイッチは一般的に、標的を選択的に結合するドメイン(アプタマードメイン)と、遺伝子制御に影響を及ぼすドメイン(発現プラットフォーム)という2つの異なるドメインに分けることができる。これらの2つのドメイン間の動的な相互作用により、代謝産物に依存した遺伝子発現のアロステリック制御が行われる。
【0025】
すでに種々のクラスのリボスイッチが同定されており、活性化化合物(本明細書ではトリガー分子と呼ぶ)を選択的に認識することが示されている。例えば、コエンザイムB12、チアミンピロリン酸塩(TPP)、およびフラビンモノヌクレオチド(FMN)は、これらの化合物の代謝経路または輸送経路における主な酵素をコードする遺伝子に存在するリボスイッチを活性化する。各リボスイッチクラスのアプタマードメインは、高度に保存されたコンセンサス配列および構造と一致する。したがって、配列ホモロジー検索を使用して、関連するリボスイッチドメインを同定することができる。リボスイッチドメインは、細菌、古細菌および真核生物の種々の生体で発見されている。リボスイッチについては、米国特許出願公開第US−2005−0053951号、米国特許第6,831,171号、PCT出願公開第WO2006/055351号、および米国仮特許出願第60/625,864号に記載されており、これらの特許文献はいずれも、リボスイッチとその機能の説明のために、全体が参考として本明細書で援用される。
【0026】
i.リボスイッチRNAの一般的な構造
細菌のリボスイッチRNAは、特定のmRNAの主なコード領域の5’末端非翻訳領域(5’−UTR)内に主に存在する遺伝子制御エレメントである。構造プローブ試験(以下に詳述)では、リボスイッチエレメントが一般的に、リガンド結合ドメインとして機能する天然アプタマー(T. Hermann, D.J. Patel, Science 2000, 287, 820; L. Gold, et al., Annual Review of Biochemistry 1995, 64, 763)、および遺伝子発現に関与するRNAエレメントと連係する「発現プラットフォーム」(例えば、シャインダルガノ配列、転写ターミネーターステム)という2つのドメインからなることが明らかにされている。これらの結論は、in vitroで合成したアプタマードメインが発現プラットフォームの非存在下において好適なリガンドを結合するという所見から導き出されたものである。さらに、構造プローブ試験では、ほとんどのリボスイッチのアプタマードメインが、独立して検査した際の特定の二次または三次構造の折りたたみであり、この構造は、5’リーダーRNA全体のコンテキストで検査した際のアプタマー構造と本質的に同じであることが示唆されている。これは、アプタマードメインが発現プラットフォームから独立して折りたたまれる分子ユニットである場合が多いことを意味する。
【0027】
最終的に、アプタマードメインのリガンド結合または非結合状態は、発現プラットフォームを介して解釈され、これが遺伝子発現に影響を及ぼす。リボスイッチを分子エレメントとする見解は、アプタマードメインが種々の生体の間で高度に保存されている(TPPリボスイッチの場合に認められているように、異なる生物界の間でも保存されている)(N. Sudarsan, et al., RNA 2003, 9, 644)のに対し、発現プラットフォームは、配列、構造、ならびに付随するオープンリーディングフレームの発現を制御する機序が異なるという事実によってもさらに裏付けられている。例えば、枯草菌のtenA mRNAのTPPリボスイッチにリガンドが結合すると、転写が終結する(A.S. Mironov, et al., Cell 2002, 111, 747)。この発現プラットフォームは、大腸菌由来のthiM mRNAのTPPリボスイッチの発現プラットフォームとは配列も構造も異なる。大腸菌では、TPPの結合によってSD遮断機序による翻訳の阻害が生じる。TPPアプタマードメインは容易に認識することができ、これらの2つの転写ユニットの間でほとんど同一の機能特性を有するが、遺伝子制御機序およびこれを担う発現プラットフォームは大きく異なる。
【0028】
リボスイッチRNAのアプタマードメインは一般的に、長さが約70〜170ntの範囲である。In vitro進化実験では、長さがかなり短く構造が複雑な種々の低分子結合アプタマーが同定されたことを考えると、この所見は幾分予想外であった(T. Hermann, D.J. Patel, Science 2000, 287, 820; L. Gold, et al., Annual Review of Biochemistry 1995, 64, 763; M. Famulok, Current Opinion in Structural Biology 1999, 9, 324)。人工のアプタマーに比べて天然のアプタマー配列の複雑性と情報量が大幅に多い理由はまだ不明であるが、この複雑性は、高い親和性と選択性で機能するRNAレセプターを形成する上で必要となる可能性が高い。リガンド−リボスイッチ複合体の見かけ上のK値は、低ナノモルから低マイクロモルまでの範囲である。また、一部のアプタマードメインは、付随する発現プラットフォームから分離すると、分離しないリボスイッチに比べて標的リガンドに対する親和性が高くなる(約10〜100倍)ことも注目すべき点である。おそらく、完全な分離しないリボスイッチRNAで必要とされる多くの異なるRNAコンフォメーションをサンプリングするには、エネルギー面での費用がかかり、これがリガンド親和性の低下に反映されているのであろう。アプタマードメインは分子スイッチとして機能しなければならないため、天然のアプタマーに対してはより高い機能が要求されおり、このためにより複雑な構造がとられているとも考えられる。
【0029】
ii.細菌における転写終結のリボスイッチ調節
細菌は主に2つの方法を使用して転写を終結する。遺伝子の中には、Rhoタンパク質に依存する終結シグナルを組み込んでいるものもあれば(J.P. Richardson, Biochimica et Biophysica Acta 2002, 1577, 251)、Rhoに依存しないターミネーター(内因性ターミネーター)を使用して、転写伸長複合体を不安定化させるものもある(I. Gusarov, E. Nudler, Molecular Cell 1999, 3, 495; E. Nudler, M.E. Gottesman, Genes to Cells 2002, 7, 755)。後者のRNAエレメントは、GCリッチステムループの次に一連の6〜9個のウリジル残基が続く構成となっている。内因性ターミネーターは細菌ゲノムに広く存在し(F. Lillo, et al., 2002, 18, 971)、一般的には遺伝子またはオペロンの3’末端に存在する。興味深いことに、5’−UTR内に存在する内因性ターミネーターにおいて観察される例が増えてきている。
【0030】
細菌が使用する幅広い遺伝調節方法においても、RNAポリメラーゼが調節下で5’−UTR内の終結シグナルに応答する例のクラスが増えてきている(T.M.Henkin, Current Opinion in Microbiology 2000, 3l, 149)。特定の条件下で、RNAポリメラーゼ複合体は、外部のシグナルの指示を受けて、終結シグナルを受け取るか無視する。転写は調節せずに行われる場合もあるが、mRNA合成(および遺伝子発現)の制御は、最終的には内因性ターミネーターの調節によって指示される。おそらく、少なくとも2つの相互に排他的なmRNAのコンフォメーションの1つによって、転写終結を通知するRNA構造が形成または破壊されるのであろう。トランス作用因子は、RNAである場合もあれば(F.J. Grundy, et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2002, 99, 11121; T.M. Henkin, C. Yanofsky, Bioessays 2002, 24, 700)、タンパク質である場合もあり(J. Stulke, Archives of Microbiology 2002, 177, 433)、一般的には、特定の細胞内シグナルを受け取ってから、RNAのコンフォメーションの1つを安定化させるために必要となる。リボスイッチは、RNAの構造調節と、遺伝制御機序によって解釈される代謝シグナルとを直接結び付ける役割を果たす。次に、枯草菌のmRNA由来のFMNリボスイッチについて簡単に概略し、この機序を説明する。
【0031】
本方法および組成物は、特に記載がない限り、特定の合成方法、特定の分析法、または特定の試薬に限定されるものではなく、そのため様々に異なってもよいことを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定することを目的としたものではないことも理解されたい。
【0032】
材料
本明細書では、本方法および組成物に使用できるか、本方法および組成物とともに使用できるか、本方法および組成物を調製するために使用できるか、または本方法および組成物の産物である、材料、組成物および成分を開示する。これらおよびその他の材料を本明細書に開示するが、これらの化合物の種々の個別のおよび集合的な組み合わせおよび順列それぞれの具体的な参考文献が明示されていなくても、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合は、それぞれが本明細書で具体的に企図され、記載されることを理解されたい。例えば、リボスイッチまたはアプタマードメインが開示および考察され、リボスイッチまたはアプタマードメインを含むいくつかの分子で行うことのできるいくつかの改変が考察される場合は、特に相反する具体的な記載がない限り、リボスイッチまたはアプタマードメインおよび可能な改変の組み合わせおよび順列がすべて具体的に企図される。したがって、クラスA、BおよびCの分子のほかに、クラスD、EおよびFの分子、ならびに分子の組み合わせ例A〜Dが開示される場合は、たとえそれぞれが個別に述べられていなくても、それぞれは個別かつ集合的に企図される。したがって、この例では、A〜E、A〜F、B〜D、B〜E、B〜F、C〜D、C〜EおよびC〜Fの各組み合わせが、具体的に企図され、A、BおよびC;D、EおよびF;ならびに組み合わせ例A〜Dの開示内容から開示されると見なさなければならない。同様に、これらのいずれかのサブセットまたは組み合わせも具体的に企図および開示される。したがって、例えば、A〜E、B〜FおよびC〜Eの亜群も具体的に企図され、A、BおよびC;D、EおよびF;ならびに組み合わせ例A〜Dの開示内容から開示されると見なさなければならない。この概念は、本組成物の製造および使用方法の工程も含むがこれらに限定されない、本出願のあらゆる側面に適用される。したがって、実施できる種々の追加の工程がある場合は、これらの追加工程のいずれも、本方法の特定の実施形態または実施形態の組み合わせにより実施することができ、かつこのような組み合わせのいずれも具体的に企図され、開示されると見なさなければならないことを理解されたい。
【0033】
A.リボスイッチ
リボスイッチは、発現するRNA分子の一部であり、かつトリガー分子が結合すると状態が変わる、発現制御エレメントである。リボスイッチは一般的に、標的を選択的に結合するアプタマードメインと、遺伝子制御に影響を及ぼす発現プラットフォームドメインの2つの別々のドメインに分けることができる。遺伝子発現の代謝依存性アロステリック制御をもたらすのは、これらの2つのドメイン間の動的な相互作用により、代謝産物に依存した遺伝子発現のアロステリック制御が行われる。また、本明細書では、分離した組換えリボスイッチ、このようなリボスイッチを含む組換え構成体、このようなリボスイッチに操作可能に結合する異種配列、このようなリボスイッチを有する細胞およびトランスジェニック生物、リボスイッチ組換え構成体、および異種配列に操作可能に結合するリボスイッチを開示する。異種配列は、例えば、レポータータンパク質またはペプチドを含めた、目的のタンパク質またはペプチドをコードする配列であってもよい。好ましいリボスイッチは、天然に存在するリボスイッチであるか、あるいは天然に存在するリボスイッチに由来する。本明細書で使用される「リボスイッチ」という用語は、天然に存在するリボスイッチおよびそれに由来するアプタマードメイン、ならびに天然に存在するリボスイッチの誘導体およびそれに由来するアプタマードメインを指す。リボスイッチは、天然に存在するリボスイッチおよびそのアプタマードメイン、ならびに天然に存在するリボスイッチの配列変異体を含む。天然に存在するリボスイッチに由来しないアプタマーは、本明細書ではリボスイッチとは考えない。天然に存在するリボスイッチに由来しないアプタマーは非リボスイッチアプタマーと呼ぶ。
【0034】
リボスイッチの活性化は、リボスイッチの天然のトリガー分子の結合時にリボスイッチの状態が変化することを指す。リボスイッチは、トリガー分子以外の化合物により、トリガー分子を結合する以外の方法で活性化してもよい。本明細書で使用されるトリガー分子という用語は、リボスイッチを活性化することができる分子および化合物を指す。これには、リボスイッチの天然または通常のトリガー分子、ならびにリボスイッチを活性化することができる他の化合物が含まれる。
【0035】
リボスイッチの不活性化は、トリガー分子が結合していない時にリボスイッチの状態が変わることを指す。リボスイッチは、トリガー分子以外の化合物を結合することにより、かつトリガー分子を除去する以外の方法で不活性化してもよい。リボスイッチの遮断は、トリガー分子が存在してもリボスイッチが活性化されない、リボスイッチの条件または状態を指す。
【0036】
本リボスイッチは、その誘導体および組換え体を含め、一般的には、天然に存在するリボスイッチおよびデノボ設計したリボスイッチを含めたいずれの供給源に由来してもよい。このようないずれのリボスイッチも、本方法でまたは本方法とともに使用してよい。しかし、リボスイッチは種々の型のものを定義してよく、一部のこのようなサブ型を特定の方法でまたは特定の方法とともに(一般的には本明細書の別の個所で記載の通り)使用してもよい。リボスイッチの型には、例えば、天然に存在するリボスイッチ、天然に存在するリボスイッチの誘導体および変形体、キメラリボスイッチ、操作されたリボスイッチ、および組換えリボスイッチが含まれる。天然に存在するリボスイッチは、天然で見られるようなリボスイッチの配列を有するリボスイッチである。このような天然に存在するリボスイッチは、天然に存在するリボスイッチから分離したまたは組み換えた形態であってもよい。すなわち、このリボスイッチは、一次構造が同じでありながら、新しい遺伝子または核酸を分離するか、または工学的に作成している。キメラリボスイッチは、例えば、いずれかまたは特定のクラスまたは型のリボスイッチのリボスイッチの一部、および同じまたはいずれかの異なるクラスまたは型のリボスイッチの異なるリボスイッチの一部;いずれかまたは特定のクラスまたは型のリボスイッチのリボスイッチの一部、およびいずれかの非リボスイッチの配列または成分;ならびにリボスイッチの一部(アプタマードメインなど)、およびリボザイム、から構成されてもよい。操作されたリボスイッチは、一部を除去したおよび/または他の配列で置き換えたリボスイッチである。キメラリボスイッチは、操作されたリボスイッチの一例である。組換えリボスイッチは、新しい遺伝子または核酸を分離したまたは操作されたリボスイッチである。
【0037】
異なるクラスのリボスイッチは、同じまたは同様のトリガー分子を有するリボスイッチ、あるいは同じまたは同様の(予想した、決定した、または組み合わせた)全体構造を有するリボスイッチを指す。同じクラスのリボスイッチは一般的に、同じまたは同様のトリガー分子を有し、同じまたは同様の全体構造を有するが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0038】
特に有用なアプタマードメインは、本明細書でP1ステム構造(または単にP1)と呼ばれるステム構造を形成してもよい。種々のリボスイッチのP1ステムについては、米国特許出願公開第US−2005−0053951号の図11に示されている。P1ステム構造のハイブリダイズ鎖は、アプタマー鎖と呼ばれ(P1a鎖とも呼ばれる)、制御鎖と呼ばれる(P1b鎖とも呼ばれる)。制御鎖は、アプタマー鎖と、調節鎖と呼ばれる(P1c鎖とも呼ばれる)結合した発現プラットフォームの配列とともに、ステム構造を形成してもよい。したがって、制御鎖(P1b)は、アプタマー鎖(P1a)と調節鎖(P1c)とともに別のステム構造を形成してもよい。リボスイッチの活性化および不活性化により、ステム構造が1つの構造から別の構造へ(P1a/P1bからP1b/P1cへ、またはその逆に)シフトする。P1b/P1cステム構造が形成されると、リボスイッチを含むRNA分子の発現に影響が及ぶ。本明細書では、この制御機序を介して動作するリボスイッチを、代替ステム構造リボスイッチ(または代替ステムリボスイッチ)と呼ぶ。
【0039】
また、異種のアプタマードメインおよび発現プラットフォームドメインを含むキメラリボスイッチも開示する。すなわち、キメラリボスイッチは、1つの供給源に由来するアプタマードメインと、別の供給源に由来する発現プラットフォームドメインで構成される。異種の供給源は、例えば、異なる特定のリボスイッチ、異なる型のリボスイッチ、または異なるクラスのリボスイッチに由来してもよい。異種アプタマーはまた、非リボスイッチアプタマーに由来してもよい。異種発現プラットフォームドメインは、非リボスイッチの供給源に由来してもよい。
【0040】
リボスイッチは、他の既知のリボスイッチ、開発したリボスイッチ、または天然に存在するリボスイッチから改変してもよい。例えば、スイッチドメイン部分は、リボスイッチの既知のまたは予想される二次構造、三次構造、または二次および三次の両構造を保存しながら、1つまたは複数のヌクレオチドを変えることによって改変してもよい。例えば、塩基対の両ヌクレオチドを、塩基対であってもよいヌクレオチドに変えてもよい。本明細書では、塩基対の保存を可能にする変化を、塩基対保存変化と呼ぶ。
【0041】
工学的に作成する有用なリボスイッチは、リボスイッチのアプタマードメインを、(キメラリボスイッチである)リボザイムに操作可能に結合することによって作成してもよい。アプタマードメインは、例えば、アプタマードメインのトリガー分子の作用によってリボザイムの活性を調節することができる。リボスイッチのアプタマードメインは、いずれかの好適な方法で(例えば、リボスイッチの発現プラットフォームの一部または全てをリボザイムと置き換えることによって)、リボザイムに操作可能に結合させてもよい。一般的には、アプタマードメインの由来元となるリボスイッチを活性化、不活性化または遮断することができるいずれの化合物または条件も、キメラリボスイッチの活性化、不活性化または遮断(それによるリボザイムの活性調節)に使用してもよい。リボザイムに操作可能に結合したリボスイッチを含むキメラリボスイッチは、リボザイムリボスイッチと呼んでもよい。glmSリボスイッチなどの一部の天然に存在するリボスイッチは、リボザイム活性を含むため、天然に存在するリボザイムリボスイッチである。
【0042】
一般的に、いずれのアプタマードメインも、リボザイムの調節鎖をアプタマードメインの制御鎖に対して相補的になるように設計または適合させることによって、いずれのリボザイムとも使用できるように適合させてよい。あるいは、アプタマーの配列およびアプタマードメインの制御鎖は、制御鎖がリボザイムの機能的に重要な配列に対して相補的になるように適合させてもよい。このような操作されたリボザイムのリボスイッチの機能は、トリガー分子でリボスイッチを活性化し、リボザイムの切断を検出することによって、容易に評価することができる。
【0043】
また、天然に存在するリボスイッチの非天然誘導体であるリボスイッチも開示する。このリボスイッチは、異種のアプタマードメインおよび発現プラットフォームドメインを含んでもよい。リボスイッチは、アプタマードメインおよびリボザイムを含んでもよい。リボスイッチはコンフォメーション依存性標識を含んでもよい。リボスイッチは、天然に存在するグアニン反応性リボスイッチ、アデニン反応性リボスイッチ、リジン反応性リボスイッチ、チアミンピロリン酸塩反応性リボスイッチ、アデノシルコバラミン反応性リボスイッチ、フラビンモノヌクレオチド反応性リボスイッチ、またはSアデノシルメチオニン反応性リボスイッチに由来してもよい。リボスイッチはトリガー分子で活性化させてもよく、このリボスイッチは、トリガー分子で活性化されると、シグナルを生成する。リボスイッチについては、米国特許出願公開第US−2005−0053951号、米国特許第6,831,171号、PCT出願公開第WO2006/055351号、米国仮特許出願第60/625,864号に記載されており、これらの特許文献はいずれも、リボスイッチとその機能の説明のために、全体が参考として本明細書で援用される。
【0044】
数多くのリボスイッチおよびリボスイッチ構成体が知られており、本明細書で記載および引用されている。但し、いずれの特定のリボスイッチまたはリボスイッチ構成体も、あるいはいずれのリボスイッチまたはリボスイッチ構成体の群も、本明細書に開示する発明の一部の態様から除外してもよいことが、具体的に企図されている。例えば、xpt−pbuXリボスイッチとレポーター遺伝子との融合は、レポーター遺伝子に融合したリボスイッチ群から除外してもよいと考えられる。
【0045】
1.アプタマードメイン
アプタマーは、特定の化合物および化合物のクラスに選択的に結合することができる核酸セグメントおよび構成体である。リボスイッチは、トリガー分子を結合した時にリボスイッチの状態または構造を変えるアプタマードメインを有する。機能性リボスイッチでは、トリガー分子がアプタマードメインと結合すると、アプタマードメインに結合する発現プラットフォームドメインの状態または構造が変化する。一般的に、リボスイッチのアプタマーは、(例えばステム構造を形成するにより)結合した発現プラットフォームドメインの一部と相互作用することができる、少なくとも1つの部分を有する。このステム構造は、トリガー分子を結合すると形成されるか、あるいは破壊される。
【0046】
種々の天然のリボスイッチのコンセンサスアプタマードメインについては、参考として本明細書で援用される、米国特許出願公開第US−2005−0053951号の図11に示されている。これらのアプタマードメインは(同特許特許出願公開で具体化されたすべての直接の変形例を含め)、リボスイッチで使用してもよい。コンセンサス配列および構造は、配列および構造の変形例を示すものである。記載した変形例に含まれるアプタマードメインは、本明細書で直接変形例と呼ぶ。これらのアプタマードメインを改変して、改変したまたは変形アプタマードメインを作成してもよい。保存的改変には、塩基対のヌクレオチドが相補性を維持するように塩基対ヌクレオチドを変更することが含まれる。中等度の改変には、示されている長さ範囲の20%以下のステムまたはループの長さを変更すること(長さまたは長さ範囲が示される場合)が含まれる。ループおよびステムの長さは、コンセンサス構造が特定の長さのステムまたはループを示す場合、または長さ範囲が列挙または図示される場合に、「示された」ものと見なされる。中等度の改変には、示されている長さ範囲の40%以下のステムまたはループの長さを変更すること(長さまたは長さ範囲が示されていない場合)が含まれる。中等度の改変はまた、アプタマードメインの不特定部分の機能変形例も含む。アプタマードメインの不特定部分については、米国特許出願公開第US−2005−0053951号の図11に実線で示されている。
【0047】
P1ステムおよびその構成鎖は、発現プラットフォームおよびRNA分子との使用にアプタマードメインを適合させる際に改変してもよい。このような広範囲にわたってもよい改変は、本明細書ではP1改変と呼ぶ。P1改変には、アプタマードメインのP1ステムの配列および/または長さを変更することが含まれる。
【0048】
本リボスイッチのアプタマードメインはまた、その他いずれの目的でも、その他いずれの状況においても、アプタマーとして使用してよい。例えば、アプタマーは、リボザイム、その他の分子スイッチ、ならびに構造の変更によってRNAの機能に影響が及ぶいずれかのRNA分子を制御するために、本方法で使用する本リボスイッチ組成物で使用してもよい。
【0049】
2.発現プラットフォームドメイン
発現プラットフォームドメインは、リボスイッチを含むRNA分子の発現に影響を及ぼすリボスイッチの一部である。発現プラットフォームドメインは一般的に、(例えばステム構造を形成するにより)結合したアプタマードメインの一部と相互作用することができる、少なくとも1つの部分を有する。このステム構造は、トリガー分子を結合すると形成されるか、あるいは破壊される。ステム構造は一般的に、発現調節構造であるか、または発現調節構造の形成を阻害する。発現調節構造は、構造を含むRNA分子の発現を実現、防止、強化または阻害する構造である。例としては、シャインダルガノ配列、開始コドン、転写ターミネーター、ならびに安定化および処理シグナルが含まれる。
【0050】
B.トリガー分子
トリガー分子は、リボスイッチを活性化することができる分子および化合物である。これには、リボスイッチの天然または通常のトリガー分子、およびリボスイッチを活性化することができるその他の化合物が含まれる。天然または通常のトリガー分子は、本質的に所与の天然のリボスイッチのトリガー分子であるか、あるいは一部の非天然リボスイッチの場合は、リボスイッチを設計したまたは(例えば、in vitro選択またはin vitro進化法で)リボスイッチを選択した元のトリガー分子である。非天然のトリガー分子は、非天然トリガー分子と呼んでもよい。
【0051】
C.化合物
本方法では、化合物がリボスイッチに対して及ぼす効果をスクリーニングする。本方法では、いずれの化合物を使用(スクリーニング)してもよい。化合物は、例えば、タンパク質、ペプチド、および有機低分子であってもよい。本明細書で使用される有機低分子とは、分子量が1000ダルトン未満の有機分子である。本方法は、例えば、リボスイッチに結合することができる化合物を同定する、トリガー分子がまだ同定されていないリボスイッチのトリガー分子を同定する、推定リボスイッチのトリガー分子を同定する、推定リボスイッチを機能性リボスイッチとして同定する、ならびにリボスイッチを不活性化もしくは遮断する、および/またはリボスイッチの活性化を防止または低減することができる化合物(このような化合物は、例えば抗生物質として有用であり得る)ことが可能である。本方法で同定した化合物は、例えば、リボスイッチを活性化する目的で(それによりRNAの構造に影響を及ぼし、リボスイッチと操作可能に結合する発現配列の発現を調節する)、リボスイッチ、すなわちリボスイッチの天然リガンドを結合する(例えば、転置させることにより)ために競合する目的で、およびリボスイッチのトリガー分子として使用するが可能である。
【0052】
また、リボスイッチを結合、調節、活性化、不活性化または遮断することができる、および/またはリボスイッチを結合するためにトリガー分子と競合する、化合物およびこのような化合物を含む組成物も開示する。リボスイッチは、トリガー分子の結合または除去を介して遺伝子発現を制御するように機能する。化合物は、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断するために使用してもよい。リボスイッチのトリガー分子(ならびにその他の活性化化合物)は、リボスイッチを活性化するために使用してもよい。トリガー分子以外の化合物は一般的に、リボスイッチを不活性化または遮断するために使用してもよい。リボスイッチはまた、例えばトリガー分子をリボスイッチの存在から除去することによって、不活性化してもよい。リボスイッチは、例えばリボスイッチを活性化しないトリガー分子の類似体を結合させることによって、遮断してもよい。本方法は、リボスイッチに対してこのような効果を及ぼす化合物を同定するために使用してもよい。
【0053】
同定した化合物は、リボスイッチを含むRNA分子の発現またはRNA分子をコードする遺伝子の発現を変化させるために使用してもよい。これは、化合物とRNA分子を接触させることによって達成してもよい。リボスイッチは、トリガー分子を結合または除去することによって遺伝子発現を制御するように機能する。したがって、リボスイッチを含む目的のRNA分子を、リボスイッチを調節、活性化、不活性化または遮断する条件に供することによって、RNAの発現を変化させてもよい。発現は、例えば、転写を終結するか、またはリボゾームとRNAの結合を遮断することなどによって、変化させてもよい。トリガー分子を結合すると、リボスイッチの性質によって、RNA分子の発現を低減または防止することもできれば、RNA分子の発現を促進または増加させることもできる。
【0054】
同定した化合物は、RNA分子の発現、またはRNA分子をコードする遺伝子の発現を調節するために使用してもよい。同定した化合物は、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断することにより、リボスイッチを含む天然に存在する遺伝子またはRNAの発現を調節するために使用してもよい。遺伝子がその遺伝子を有する細胞または生物の生存に必須である場合は、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断することによって、その細胞または生物の死、静止状態または衰弱を招くことができる。
【0055】
同定した化合物は、リボスイッチを調節、活性化、不活性化または遮断することにより、そのリボスイッチを含む分離した、操作された、または組換え遺伝子またはRNAの発現を調節するために使用してもよい。遺伝子が所望の発現産物をコードする場合は、リボスイッチを活性化または不活性化することにより、遺伝子の発現を誘導し、それによって発現産物を産生することができる。遺伝子が遺伝子発現または別の細胞プロセスのインデューサーまたはリプレッサーをコードする場合は、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断することにより、他の調節した遺伝子または細胞プロセスを誘導、抑制または脱抑制することができる。このような多くの二次調節効果は知られており、リボスイッチとの使用に適合させることができる。このような調節の一次制御としてリボスイッチを使用する利点としては、リボスイッチトリガー分子が非抗原性の低分子であってもよいことがあげられる。
【0056】
D.蛍光標識
リボスイッチの活性化、不活性化、遮断または調節、あるいはリボスイッチの活性化、調節、不活性化または遮断時に産生される核酸またはタンパク質の発現を検出および定量化する支援として、蛍光標識を使用してもよい。例えば、蛍光標識をコンフォメーション依存性標識で使用してもよい。好適な蛍光標識の例には、フルオレセインイソチオシアン酸塩(FITC)、5,6−カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンズ−2−オクサ−1,3−ジアゾル−4−イル(NBD)、クマリン、ダンシルクロライド、ローダミン、アミノメチルクマリン(AMCA)、イオシン、エリスロシン、BODIPY(登録商標)、カスケードブルー(登録商標)、オレゴングリーン(登録商標)、ピレン、リサミン、キサンセネス、アクリジン、オキサジン、フィコエリスリン、クアンタム染料TMなどのランタニドイオンの大環状キレート、チアゾールオレンジエチジウムヘテロダイマーなどの蛍光エネルギー転移染料、ならびにシアニン染料Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5およびCy7が含まれる。その他の具体的な蛍光標識の例には、3−ヒドロキシピレン5,8,10−トリスルホン酸、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、酸性フクシン、アリザリンコンプレクソン、アリザリンレッド、アロフィコシアニン、アミノクマリン、アントロイルステアリン酸塩、アストラゾンブリリアントレッド4G、アストラゾンオレンジR、アストラゾンレッド6B、アストラゾンイエロー7 GLL、アタブリン、オーラミン、オーロフォスフィン、オーロフォスフィンG、BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール)、BCECF、ベルベリン硫酸塩、ビスベンズアミド、ブランコフォアFFG溶液、ブランコフォアSV、ボディピィF1、ブリリアントスルホフラビンFF、カルセインブルー、カルシウムグリーン、カルコフルオアRW溶液、カルコフルオアホワイト、カルコフォアホワイトABT溶液、カルコフォアホワイト標準溶液、カルボスチリル、カスケードイエロー、カテコールアミン、チナクリン、コリフォスフィンO、クマリンファロイジン、CY3.1 8、CY5.1 8、CY7、Dans(1−ジメチルアミノナファリン5スルホン酸、Dansa(ジアミノナフチルスルホン酸)、ダンシルNH−CH3、ジアミノフェニルオキシジアゾール(DAO)、ジメチルアミノ−5−スルホン酸、ジフッ化ジピロメテンボロン、ジフェニルブリリアントフラビン7GFF、ドーパミン、エリスロシンITC、オイクリシン、FIF(ホルムアルデヒド誘導蛍光)、フラゾオレンジ、フルオ3、フルオレスカミン、フラ−2、ゲナクリルブリリアントレッドB、ゲナクリルブリリアントイエロー10GF、ゲナクリルピンク3G、ゲナクリルイエロー5GF、グロキサン酸、グラニュラーブルー、ヘマトポルフィリン、インド−1、イントラホワイトCf液、ロイコフォアPAF、ロイコフォアSF、ロイコフォアWS、リサミンローダミンB200(RD200)、ルシファーイエローCH、ルシファーイエローVS、マグダラレッド、マリナブルー、マキシロンブリリアントフラビン10 GFF、マキシロンブリリアントフラビン8 GFF、MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン)、ミトラマイシン、NBDアミン、ニトロベンゾキサジドール、ノルアドレナリン、ヌクレアファストレッド、ヌクレアイエロー、ニロサンブリリアントフラビンE8G、オキサジアゾール、パシフィックブルー、パラロサニリン(フュールゲン)、ホルワイトAR液、ホルワイトBKL、ホルワイトレブ、ホルワイトRPA、ホスフィン3R、フタロシアニン、フィコエリスリンR、ポリアザインダセンポントクロームブルーブラック、ポルフィリン、プリムリン、プロシオンイエロー、ピロニン、ピロニンB、ピロザールブリリアントフラビン7GF、キナクリンマスタード、ローダミン123、ローダミン5 GLD、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミンB 200、ローダミンBエクストラ、ローダミンBB、ローダミンBG、ローダミンWT、セロトニン、セブロンブリリアントレッド2B、セブロンブリリアントレッド4G、セブロンブリリアントレッドB、セブロンオレンジ、セブロンイエローL、SITS(プリムリン)、SITS(スチルベンイソチオスルホン酸)、スチルベン、スナーフ1、スルホローダミンBキャンC、スルホローダミンGエクストラ、テトラサイクリン、チアジンレッドR、チオフラビンS、チオフラビンTCN、チオフラビン5、チオライト、チオゾールオレンジ、チノポールCBS、トゥルーブルー、ウルトラライト、ウラニンB、ユビテックスSFC、キシレンオレンジ、およびXRITCが含まれる。
【0057】
有用な蛍光標識は、フルオレセイン(5−カルボキシフルオレセイン−N−ヒドロキシサクシンイミドエステル)、ローダミン(5,6−テトラメチルローダミン)、ならびにシアニン染料Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5およびCy7である。これらのフルオアの吸収および放出極大はそれぞれ、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm、588nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)、およびCy7(755nm;778nm)であり、したがって同時に検出することが可能である。フルオレセイン染色のその他の例には、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,4’,1,4−テトラクロロフルオレセイン(TFT)、2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、2’、7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE)、2’−クロロ−5’−フルオロ−7’,8’−縮合フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(NED)、2’−クロロ−7’−フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオロセイン(VIC)が含まれる。蛍光標識は、Amersham Pharmacia Biotech(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)、Molecular Probes(米国オレゴン州ユージーン)、Research Organics(米国オハイオ州クリーブランド)を含めた種々の販売元から入手してもよい。
【0058】
さらなる目的の標識には、標識が関連するプローブが標的分子に特異的に結合した時にのみシグナルを提供する標識が含まれ、このような標識には、Tyagi & Kramer, Nature Biotechnology (1996) 14: 303、および欧州特許第EP 0 070 685 B1号に記載されるような「分子ビーコン」が含まれる。その他の目的の標識には、米国特許第5,563,037号、国際特許第WO97/174171号、および同第WO97/17076号に記載の標識が含まれる。
【0059】
標識したヌクレオチドは、合成時に核酸に直接組み込む検出標識の有用な形態である。核酸に組み込むことのできる検出標識の例には、BrdUrd(5−ブロモデオキシウリジン、Hoy and Schimke, Mutation Research 290: 217−230 (1993))、アミノアリルデオキシウリジン(Henegariu, et al., Nature Biotechnology 18: 345−348 (2000))、5−メチルシトシン(Sano, et al., Biochim. Biophys. Acta 951: 157−165 (1998))、ブロモウリジン(Wansick, et al., J. Cell Biology 122: 283−293 (1993))、ならびにビオチンで(Langer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 6633 (1981))またはジゴキシゲニンなどの好適なハプテンで修飾したヌクレオチド(Kerkhof, Anal. Biochem. 205: 359−364 (1992))などのヌクレオチド類似体が含まれる。好適な蛍光標識ヌクレオチドは、フルオレセイン−イソチオシアン酸塩−dUTP、シアニン−3−dUTP、およびシアニン−5−dUTP(Yu, et al., Nucleic Acids Res., 22:3226−3232 (1996))である。DNAの好ましいヌクレオチド類似体検出標識は、BrdUrd(ブロモデオキシウリジン、BrdUrd、BrdU、BUdR、Sigma−Aldrich Co.)である。DNAへの検出標識の組み込みに有用なその他のヌクレオチド類似体は、AA−dUTP(アミノアリル−デオキシウリジン三リン酸塩、Sigma−Aldrich Co.)、および5−メチル−dCTP(Roche Molecular Biochemicals)である。RNAへの検出標識の組み込みに有用なヌクレオチド類似体は、ビオチン−16−UTP(ビオチン−16−ウリジン−5’−三リン酸塩、Roche Molecular Biochemicals)である。フルオレセイン、Cy3、およびCy5は、直接標識を行うためにdUTPに結合させてもよい。Cy3.5およびCy7は、ビオチンまたはジゴキシゲニン標識プローブの二次検出のためのアビジンまたは抗ジゴキシゲニンコンジュゲートとして使用できる。
【0060】
フラビンモノヌクレオチド(FMN)は、リボフラビン−5’−リン酸塩としても知られ、キャピラリー電気泳動法(CE)による分離後に無機陰イオン、有機酸、陰イオン界面活性剤、およびポリリン酸塩の間接レーザー誘導蛍光(LIF)検出試薬として特徴付けられてきた。FMNは、488nmのレーザー励起に良好な波長マッチングを提供し、水溶液または水溶液/有機溶液に容易に溶解し、フルオレセインとは異なり、酸性および塩基性の両pH値で強力な蛍光を提供する。FMN蛍光の損失による検体ピークは、予想通り弱アルカリ性pH値で生成されるが、ピークの方向は8.6または9.0などのより強いアルカリ性pH値で切り替わる。21種の無機陰イオンと有機酸の分離は、2mMジエチレントリアミンを電気浸透流サプレッサーとして伴う10μM FMNを使用して、間接LIFモードにより約20分間で行うことができる。これらの検体の検出限界は、10〜20μg/Lの範囲であり、前濃縮を行う必要はない。FMNはFMNリボスイッチのトリガー分子であり、本明細書の他の箇所に記載の通り、蛍光トリガー分子として使用できる。
【0061】
1.コンフォメーション依存性標識
コンフォメーション依存性標識とは、標識が結合する分子または化合物(リボスイッチなど)の形態またはコンフォメーションの変化に基づいて、蛍光強度または波長を変化させるすべての標識を指す。プローブおよびプライマーで使用されるコンフォメーション依存性標識の例には、分子ビーコン、アンプリフルオア、FRETプローブ、切断可能FRETプローブ、タックマンプローブ、スコルピオンプライマー;トリプレックス分子ビーコンまたはトリプレックスFRETプローブを含むがこれらに限定されない蛍光トリプレックスオリゴ;蛍光水溶性共役ポリマー、蛍光ヌクレオシド類似体、PNAプローブ、およびQPNAプローブが含まれる。このような標識、および特に標識機能の原理は、リボスイッチとの使用に適合させてもよい。コンフォメーション依存性標識のいくつかの型については、Schweitzer and Kingsmore, Curr. Opin. Biotech. 12: 21−27 (2001)にレビューが記載されている。本明細書で使用されるFRET標識とは、標識が結合する分子または化合物(リボスイッチなど)の形態またはコンフォメーションの変化に基づいて蛍光を変化させるFRET対を指す。
【0062】
コンフォメーション依存性標識の1形態であるステムクエンチ標識は、ステム構造が形成された時に、クエンチ部分が近接して、標識からの蛍光がクエンチされるように、核酸上に配置された蛍光標識である。ステムが破壊される(例えば、標識を含むリボスイッチが活性化される、基質がリボザイムによって切断される)と、クエンチ部分はもはや蛍光標識に近接しなくなり、蛍光が増大する。この効果の例は、リボスイッチとの使用に動作原理を適合させることができる、分子ビーコン、蛍光トリプレックスオリゴ、トリプレックス分子ビーコン、トリプレックスFRETプローブ、およびQPNAプローブにおいて見られる。
【0063】
コンフォメーション依存性標識の1形態であるステム活性化標識は、ステム構造の形成によって蛍光が増大または変化する標識または標識の対である。ステム活性化標識はアクセプター蛍光標識とドナー部分を含んでよく、アクセプターとドナーが近接する(標識を含む核酸鎖がステム構造を形成する)と、ドナーからアクセプターへの蛍光共鳴エネルギー転移により、アクセプターが蛍光を発する。ステム活性化標識は一般的に、ステム構造が核酸分子内に形成されるとアクセプターとドナーが近接するように、核酸分子(リボスイッチまたはリボザイムの基質など)上に配置された標識の対である。ステム活性化標識のドナー部分自体が蛍光標識の場合、アクセプターに近接しない時(すなわち、ステム構造が形成されない時)には、(一般的にはアクセプターの蛍光とは異なる波長で)エネルギーを蛍光として放出することができる。ステム構造が形成されると、全体の効果としては、ドナー蛍光が低下し、アクセプターの蛍光が増大する。FRETプローブは、リボスイッチとの使用に動作原理を適合させることができる、ステム活性化標識の使用例である。
【0064】
同様のクエンチ原理を蛍光トリガー分子に適用してもよい。したがって、FMNおよびグアニンなどの蛍光トリガー分子は、リボスイッチから離れると蛍光が変化する。
【0065】
E.リボザイム
リボザイムは本組成物および方法で使用することができる。例えば、リボザイムは、キメラリボザイムリボスイッチおよび操作されたリボザイムリボスイッチで使用してもよい。このようなリボザイムリボスイッチでは、リボザイム部分の活性をリボスイッチ部分によって調節してもよい。リボザイムの活性は、リボスイッチの型のほか、リボザイムとリボスイッチの統合の性質によって、リボスイッチの活性化により増大させることもできれば、減少させることもできる。リボザイムは、分子内または分子間で化学反応を触媒することのできる核酸分子である。自然分類系で認められるリボザイムに基づくヌクレアーゼまたは核酸ポリメラーゼ型の反応を触媒するリボザイムには、いくつかの異なる型のものがあり、例えば、ハンマーヘッドリボザイム(例えば、これらに限定されないが、米国特許第5,334,711号、第5,436,330号、第5,616,466号、第5,633,133号、第5,646,020号、第5,652,094号、第5,712,384号、第5,770,715号、第5,856,463号、第5,861,288号、第5,891,683号、第5,891,684号、第5,985,621号、第5,989,908号、第5,998,193号、第5,998,203号国際特許第WO9858058号[Ludwig and Sproat]、第WO9858057号[Ludwig and Sproat]、および第WO9718312号[Ludwig and Sproat])、ヘアピンリボザイム(例えば、これらに限定されないが、米国特許第5,631,115号、第5,646,031号、第5,683,902号、第5,712,384号、第5,856,188号、第5,866,701号、第5,869,339号、および第6,022,962号)、およびテトラヒメナリボザイム(例えば、これらに限定されないが、米国特許第5,595,873号および第5,652,107号)などがある。また、自然分類系では認められないが、特定の反応を触媒するように工学的にデノボ合成したリボザイムはいくつかある(例えば、これらに限定されないが、米国特許第5,580,967号、第5,688,670号、第5,807,718号、および第5,910,408号)。好ましいリボザイムはRNAまたはDNA基質を切断し、より好ましくはRNA基質を切断する。リボザイムは一般的に、標的基質を認識および結合した後、切断することによって、核酸基質を切断する。この認識は、大部分がカノニカルまたは非カノニカル塩基対相互作用に基づくことが多い。標的基質の認識は標的基質の配列に基づくため、この性質によりリボザイムは、核酸の標的特異的切断に特に優れた候補となる。種々の異なる反応を触媒するようにリボザイムを製造および使用する方法の代表的な例については、以下に列挙する米国特許に記載されているが、これらに限定されない:米国特許第5,646,042号、第5,693,535号、第5,731,295号、第5,811,300号、第5,837,855号、第5,869,253号、第5,877,021号、第5,877,022号、第5,972,699号、第5,972,704号、第5,989,906号、および第6,017,756号。
【0066】
F.ソリッドサポート
ソリッドサポートとは、化合物、分子(トリガー分子など)、およびリボスイッチ(または本方法で使用または作成されるその他の化合物)を結合させるまたは含めることができる固体の基質またはサポートである。リボスイッチおよびその他の分子は、ソリッドサポートに直接的または間接的に結合させてもよい。例えば、検体(例えば、トリガー分子、試験化合物)をソリッドサポートの表面に結合させてもよければ、ソリッドサポートに固定された捕捉物質(例えば、検体を結合する化合物または分子)に結合させてもよい。別の例として、リボスイッチは、ソリッドサポートの表面に結合させてもよければ、ソリッドサポート上に固定されたプローブに結合させてもよい。アレイとは、アレイ、グリッドまたはその他の組織パターンにおいて多くのリボスイッチ、プローブ、またはその他の分子を結合させたソリッドサポートである。ソリッドサポートは、本方法のハイスループット形態に有用である。
【0067】
ソリッドサポートで使用する固体基質は、諸成分を直接的または間接的に結合させることができる、あるいは諸成分を含めることができる、いずれの固体材料を含んでもよい。これには、アクリルアミド、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、金、ポリスチレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、機能性シラン、ポリプロピルフマレート、コラーゲン、グリコサミノグリカン、およびポリアミノ酸などの材料が含まれる。固体基質は、薄膜、膜、ボトル、ディッシュ、プレート、繊維、織物、成型ポリマー、粒子、ビーズ、微粒子、またはこれらの組み合わせを含めたいずれかの有用な形態を有してよい。固体基質およびソリッドサポートは、多孔性であってもよければ、非多孔性であってもよい。チップは、長方形または正方形の小さな材料片である。固体基質の好ましい形態は、ディッシュおよびプレートである。固体基質の有用な形態は、マイクロタイターディッシュである。いくつかの実施形態においては、マルチウェルガラススライドを使用してもよい。
【0068】
アレイは、ソリッドサポートの特定したまたは予め定めた位置に固定または配置した複数のリボスイッチ、トリガー分子、その他の分子、化合物、またはプローブを含んでもよい。化合物のスクリーニングにおいては、ソリッドサポート上の特定したまたは予め定めた位置に複数の化合物を配置させるのが有用である。このような場合は、複数の異なる化合物のそれぞれとともにその他の同じ化合物を使用するのも有用である。例えば、スクリーニングする異なる化合物のそれぞれとともに同じリボスイッチを使用するのが有用である。一般的に、ソリッドサポート上のそれぞれの予め定めた位置には、1種類の成分が含まれる(すなわち、その位置に含まれる成分はすべて同じである)。あるいは、ソリッドサポート上の予め定めた同じ位置に数種類の成分を固定させても、含めてもよい。したがって、各位置には所与の成分の複数のコピーが含まれる。ソリッドサポート上の異なる成分を空間的に分離させることで、個々の検出および同定が可能となる。
【0069】
ソリッドサポートが単一のユニットまたは構造であると便利ではあるが、必ずしも必須なわけではない。リボスイッチ、トリガー分子、その他の分子、化合物、および/またはプローブの組を任意の数のソリッドサポートに分配してもよい。例えば、極端な例として、各成分を個別の反応管または容器に固定させてもよければ、個別のビーズまたは微粒子上に固定させてもよい。
【0070】
オリゴヌクレオチドを固体基質に固定する方法は、十分に確立されている。オリゴヌクレオチドは、アドレスプローブおよび検出プローブを含め、確立されたカップリング方法を使用して基質にカップリングさせてもよい。例えば、好適な付着方法については、Pease, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91(11): 5022−5026 (1994)、およびKhrapko, et al., Mol Biol (Mosk) (USSR) 25: 718−730 (1991)に記載されている。3’アミンオリゴヌクレオチドをカゼインでコーティングしたスライドに固定する方法については、Stimpson, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6379−6383 (1995)に記載されている。オリゴヌクレオチドを固体基質に付着させる有用な方法については、Guo, et al., Nucleic Acids Res. 22: 5456−5465 (1994)に記載されている。
【0071】
ソリッドサポート上またはソリッドサポート内の各成分(例えば、リボスイッチ、トリガー分子、またはその他の分子)はいずれも、ソリッドサポートの予め定めた異なる領域に含めてもよい。この異なる位置とは、異なる反応チャンバーであってもよい。予め定めた異なる領域のそれぞれはいずれも、互いに物理的に分離させてもよい。ソリッドサポートの予め定めた異なる領域間の距離は、一定であってもよければ、可変であってもよい。例えば、アレイでは、各成分を互いに一定の距離を置いて配置してもよく、その場合、各ビーズと結合する各成分は、一定の空間的関係にない。特に、複数のソリッドサポートユニット(例えば、複数のビーズ)を使用する場合は、距離が可変になる。
【0072】
成分は、任意の密度でソリッドサポート上に結合させてもよければ、固定してもよい。成分は1立方センチメートルあたり400種類の成分を超える密度でソリッドサポートに固定してもよい。成分のアレイには、任意の数の成分が含まれても宵。例えば、アレイには、ソリッドサポート上に固定された少なくとも1,000種類の成分が、ソリッドサポート上に固定された少なくとも10,000種類の成分が、ソリッドサポート上に固定された少なくとも100,000種類の成分が、またはソリッドサポート上に固定された少なくとも1,000,000種類の成分が含まれてもよい。
【0073】
G.キット
上記の材料ならびにその他の材料は、本方法を実施するまたは本方法の実施を助けるのに有用なキットとして、いずれかの好適な組み合わせで、一緒にパッケージ化してもよい。所与のキットに含まれるキット成分を、本方法で一緒に使用するように設計し、適合させるのが有用である。例えば、化合物を検出するキットであって、1つまたは複数のリボスイッチを含むキットも開示する。キットはまた、リボスイッチの活性化を検出する試薬および標識を含んでもよい。
【0074】
H.混合物
また、本方法を実施するまたは本方法を実施するために準備することによって形成される混合物も開示する。例えば、リボスイッチおよびトリガー分子を含む混合物も開示する。本方法が組成物または成分または試薬を混合するまたは接触させる工程を伴う場合は必ず、本方法を実施することで、いくつかの異なる混合物が形成される。例えば、本方法が3つの混合工程を含む場合は、これらの各工程の後、各工程を個別に実施した場合は固有の混合物が形成される。また、本発明では、工程をどのように実施したとしても、工程がすべて終了した時に混合物が形成される。本開示内容は、本方法を実施することによって得られるこれらの混合物、ならびに例えば本明細書に開示する試薬、組成物または成分を含む混合物を企図する。
【0075】
I.システム
また、本方法を実施する、または本発明の実施を助けるのに有用なシステムも開示する。システムは一般的に、構造、機械、装置などの製造物品、ならびに組成物、化合物、材料などの組み合わせを含む。このような組み合わせとしては、開示されるまたは本開示内容から明らかになる組み合わせが企図される。例えば、リボスイッチ、ソリッドサポート、およびシグナル読み取り装置を含むシステムも開示および企図する。
【0076】
J.データ構造およびコンピュータ制御
また、本方法で使用する、本方法により生成される、または本方法から作成されるデータ構造も開示する。データ構造とは一般的に、組成物または媒体に収集、構成、保存および/または具体化されるいずれかの形態のデータ、情報および/またはオブジェクトである。RAMまたは保存ディスクなどの電子形態に保存されたリボスイッチ構造および活性化測定値は、データ構造の1つの種類である。
【0077】
本方法、あるいは本方法の一部または作成は、コンピュータ制御によって制御、管理、またはその他の方法により補助してもよい。このようなコンピュータ制御は、コンピュータ制御プロセスまたは方法により達成されてもよく、データ構造を使用および/または生成してもよく、かつコンピュータプログラムを使用してもよい。このようなコンピュータ制御、コンピュータ制御プロセス、データ構造、およびコンピュータプログラムが企図され、本明細書で開示されるものとして理解する必要がある。
【0078】
方法
本明細書では、リボスイッチを結合、活性化および/または不活性化する化合物をスクリーニングする方法を開示する。本方法および組成物は一般的に、ハイスループットスクリーニングに好適である。本方法では、例えば、リボスイッチに結合することができる化合物を同定する、トリガー分子がまだ同定されていないリボスイッチのトリガー分子を同定する、推定リボスイッチのトリガー分子を同定する、推定リボスイッチを機能性リボスイッチとして同定する、ならびにリボスイッチを不活性化もしくは遮断する、および/またはリボスイッチの活性化を防止または低減することができる化合物(このような化合物は、例えば抗生物質として有用であり得る)ことが可能である。本方法で同定した化合物は、例えば、リボスイッチを活性化する(それによりRNAの構造に影響を及ぼし、リボスイッチと操作可能に結合する発現配列の発現を調節する)目的で、リボスイッチ、すなわちリボスイッチの天然リガンドを結合する(例えば、転置させることにより)ために競合する目的で、リボスイッチのトリガー分子として、ならびにリボスイッチを不活性化または遮断する目的で、使用するが可能である。リボスイッチを不活性化または遮断する化合物は、例えば、抗生物質として使用してもよい。
【0079】
本方法はまた、既知のリボスイッチエレメントに結合する新規の化合物を同定する、既知のリボスイッチエレメントに結合するタンパク質を同定する、天然の同種のエフェクター(トリガー分子)が知られていない推定リボスイッチエレメントに結合する化合物を同定する、ならびに抗生物質としての活性がリボスイッチの結合に関連する潜在的な抗菌化合物を同定するために使用してもよい。
【0080】
A.方法1および2
一部の形態において、本方法は、リボザイムリボスイッチ、コンフォメーション依存性標識で標識した基質、および化合物を接触させる工程であって、前記基質がリボザイムが前記リボスイッチによる切断を行うための基質である、工程;ならびに蛍光変化を測定する工程であって、蛍光変化が前記リボザイムリボスイッチによる前記基質の切断を示す、工程、を含む。本方法のこの形態の例は、実施例のセクション1および2に記載する。
【0081】
基質の切断は、化合物がリボザイムリボスイッチに結合すること、化合物がリボザイムリボスイッチを活性化すること、化合物がリボザイムリボスイッチと相互作用すること、または化合物がリボザイムリボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することを示すことができる。基質の切断はまた、化合物がリボザイムリボスイッチのトリガー分子であることも示すことができる。蛍光変化は、化合物が基質の切断を調節することを示すことができる。コンフォメーション依存性標識は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識であってもよい。スクリーニングする化合物は、タンパク質であってもよければ、ペプチドであってもよい。化合物はまた有機低分子を含んでもよい。
【0082】
リボザイムリボスイッチは天然に存在するものであってもよければ、キメラなど操作されたものであってもよい。キメラは、リボザイムに融合したリボスイッチを含んでもよく、一例として自己切断型であってもよい。一例として、リボスイッチはグアニンリボスイッチであってもよく、またリボザイムはハンマーヘッドリボザイムであってもよい。リボザイムリボスイッチは、自己切断する天然に存在するリボザイムリボスイッチであってもよい。
【0083】
切断部位を含むリボザイムリボスイッチのセグメントは、除去してもよい。この場合、基質は、除去されたセグメントを置換してもよい。切断部位を含むリボザイムセグメントの除去は、数多くのリボザイムで行われてきた。これにより、リボザイムは、in transで基質配列を切断することができる。このような変化とこれに関連する原理は、本リボザイムおよびリボザイムリボスイッチとともに、本方法で使用するトランス切断リボザイムおよびリボザイムリボスイッチを作成することができる。本方法はまた、同様の変化を伴うリボザイムを使用して、基質を切断してもよい。基質はコンフォメーション依存性標識を含んでもよい。あるいは、コンフォメーション依存性標識を含むように、自己切断型リボザイムリボスイッチの切断部位を含むセグメントを工学的に作成してもよい。リボザイムリボスイッチの自己切断により、標識されたセグメントが切断によって分離することで、蛍光変化が生じる。本明細書においてリボザイムおよびリボザイムリボスイッチの文脈において使用される基質とは、リボザイムまたはリボザイムリボスイッチの切断部位を含む核酸セグメントである。基質は、リボザイムまたはリボザイムリボスイッチの一部であってもよければ、これらに共有結合していてもよく、また個別の分子であってもよい。
【0084】
天然に存在するリボザイムリボスイッチの例には、glmSリボザイムがある。これは、グルコサミン−6−リン酸シンセターゼをコードする細菌mRNAの5’−UTRに存在するシス切断触媒リボスイッチである。このリボザイムは、代謝産物であるグルコサミン−6−リン酸塩(GlcN6P)、すなわち、glmSでコードされたタンパク質自体の代謝産物によるglmS−mRNA切断に関して、特異的に活性化させてもよい。したがって、この複雑な調節は、細胞壁の前駆物質として機能する代謝産物の存在を感知するフィードバック阻害機序に依存する。このリボザイムは、GlcN6Pに対する著明な感度および特異性を示し、グルコース、グルコース−6−リン酸塩、またはグルコサミン(GlcN)などの関連する代謝産物では活性化することができない。一方、GlcN6Pと同様の方法でリボザイムを活性化する低分子が存在する場合は、この低分子が、細菌の細胞壁前駆物質分子の合成に必要なタンパク質をコードするmRNAの破壊を誘引することから、抗生物質作用を示す可能性がある(Mayer, et al., ChemBioChem 2006, 7, 602−604)。
【0085】
B.方法3
一部の形態において、本方法は、リボスイッチ、蛍光トリガー分子、および化合物を接触させる工程、ならびに蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化が、リボスイッチからのトリガー分子の転置を示す、工程を含む。このような転置は、化合物の競合的結合を介して生じる。リボスイッチおよびトリガー分子は、化合物をリボスイッチおよびトリガー分子と接触させる前、接触と同時、接触させた後に、接触させてもよい。トリガー分子は天然に蛍光性であってもよければ、蛍光標識を含んでもよい。FMNおよびグアニンは、天然に蛍光性のトリガー分子の例である。本方法のこの形態の例は、実施例のセクション3に記載する。
【0086】
リボスイッチからのトリガー分子の転置は、化合物がリボスイッチに結合することを示すことができる。リボスイッチからのトリガー分子の転置は、化合物がリボスイッチを不活性化もしくは遮断する、および/またはリボスイッチの活性を防止または低減することを示すことができる。リボスイッチからのトリガー分子の転置はまた、化合物がリボスイッチと相互作用することも示すことができる。リボスイッチからのトリガー分子の転置はまた、化合物がリボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することも示すことができる。リボスイッチは天然であってもよければ、工学的に作成してもよい。トリガー分子は蛍光活性フラビンモノヌクレオチドであってもよい。化合物はタンパク質であってもよければ、ペプチドであってもよい。化合物はまた有機低分子を含んでもよい。
【0087】
リボスイッチはFMNリボスイッチであってもよい。RFNエレメントと呼ばれる高度に保存されたRNAドメインが、リボフラビンおよびFMNの生合成および輸送に関与する細菌遺伝子で同定された(M.S. Gelfand, et al., Trends in Genetics 1999, 15, 439; A.G. Vitreschak, et al., Nucleic Acids Research 2002, 30, 3141)。このエレメントに突然変異が生じるとFMNにより媒介される調節が行われなくなるため、このエレメントは、枯草菌のribDEAHTオペロン(以下「ribD」と呼ぶ)の遺伝子操作に必要となる(Y.V. Kil, et al., Molecular & General Genetics 1992, 233, 483; V.N. Mironov, et al., Molecular & General Genetics 1994, 242, 201)。rib DNAは、約5nMの見かけ上のKを示す飽和可能リガンド結合部位を含む。さらに、RNAは、約3オーダの大きさで脱リン酸化型FMN(リボフラビン)を識別する。このribD mRNAの例外的なリガンド特異性は驚くべきものである。なぜなら、アプタマーは、リン酸基と生産的な相互作用を行うFMNの結合ポケットを生成しなければならないためである。FMNは、FMNが過剰な条件下ではribD転写産物と直接相互作用する。その後、複合体の形成により、5’−UTR内で転写終結が誘導され(図12)、これにより、ORFの転写が阻止されるため、遺伝子の発現が不可能になる。FMNが限定された条件下では、ribD新生転写物内にアンチターミネーター構造が形成され、下流の遺伝子の合成が可能になる。
【0088】
C.方法4
一部の形態において、本方法は、リボスイッチおよび化合物を接触させる工程であって、前記リボスイッチがコンフォメーション依存性標識を含む、工程;ならびに蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化が前記リボスイッチのコンフォメーション変化を示す、工程を含む。リボスイッチのコンフォメーション変化は、化合物がリボスイッチに結合することを示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチを活性化することも示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチと相互作用することも示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することも示すことができる。リボスイッチのコンフォメーション変化はまた、化合物がリボスイッチのトリガー分子であることも示すことができる。コンフォメーション依存性標識は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識であってもよい。本方法のこの形態の例は、実施例のセクション4に記載する。
【0089】
リボスイッチは、コンフォメーション依存性標識を付加した天然に存在するリボスイッチであってもよい。リボスイッチはまた工学的に作成してもよい。例えば、リボスイッチはキメラであってもよい。リボスイッチへのコンフォメーション依存性標識の付加は、例えば、蛍光標識または蛍光部分をリボスイッチに組み込むことによって達成してもよい。蛍光標識の位置は、リボスイッチのコンフォメーションが活性化により変化する位置となるように選択してもよい。例えば、蛍光標識は、リボスイッチが活性化すると形成または破壊されるステムに含まれてもよければ、その位置またはコンフォメーションのループに含まれてもよい。リボスイッチ内におけるこのような標識の機能は、リボスイッチをトリガー分子で活性化することにより容易に評価できる。リボスイッチの構造およびコンフォメーション変化は知られているか、あるいは米国特許出願公開第US−2005−0053951号に記載の技法を使用して測定してもよい。
【0090】
リボスイッチはpreQ1リボスイッチであってもよい。リボスイッチはまた、グアニン反応性リボスイッチであってもよい。リボスイッチはグリシン反応性リボスイッチであってもよい。本明細書に開示する化合物は、タンパク質であってもよければ、ペプチドであってもよい。化合物はまた有機低分子であってもよければ、有機低分子を含んでもよい。
【0091】
D.ハイスループットスクリーニング
本方法は、多くの化合物をスクリーニングするために使用してもよく、このようなスクリーニングはハイスループットで行ってもよい。本明細書で使用されるハイスループットスクリーニングとは、20以上の化合物または試料を同時にまたは並行してスクリーニングすることを含むか、あるいは20以上の化合物または試料を連続して、同時に、または並行して自動的にスクリーニングすることを含む、方法を指す。効率的なスクリーニング技法は、例えば、連続して少数または単一の化合物または試料を高速スクリーニングすること、多くの化合物を並行してスクリーニングすること(例えば、マルチウェルプレートを使用する方法)、および並行してスクリーニングした化合物群を連続してスクリーニングすることを含んでもよい。例えば、いくつかの化合物を同時にスクリーニングしてもよく(例えば、マルチウェルプレートで)、またこのような複数のスクリーニングを連続して行ってもよい。したがって、例えば、本方法は、複数の異なる化合物を使用して複数回並行して行ってもよく、この場合、化合物の1つの存在下においてリボスイッチからトリガー分子が転置されれば、その化合物がリボスイッチを不活性化または遮断することを示す。例えば、上に開示した工程は、少なくとも20回、30回、40回、50回、75回、96回、100回、150回、200回、250回、300回、384回、または400回並行して行ってもよい。工程は、複数回並行して、複数回連続して行ってもよい。工程は、少なくとも3回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、75回、100回、150回、200回、250回、300回、または400回並行して連続して行ってもよい。
【0092】
本明細書で開示する方法は、ハイスループットシステムを使用して行ってもよい。自動スクリーニングおよび/またはハイスループットスクリーニングに使用する技法、装置およびシステムは、数多く知られている。このような技法、装置およびシステムを使用して、本方法を行ってもよい。
【0093】
E.同定した化合物の製造および使用
また、リボスイッチを活性化する、リボスイッチと相互作用、リボスイッチを調節、不活性化または遮断する化合物を同定し、同定した化合物を製造することによって作成される化合物も開示する。これは、例えば、本明細書の別の箇所に開示した化合物の同定方法と、同定した化合物の製造方法とを組み合わせることによって達成することができる。例えば、試験化合物とリボスイッチを接触させ、リボスイッチの活性化を評価し、リボスイッチが試験化合物によって活性化された場合は、リボスイッチを活性化した試験化合物を化合物として製造することによって、化合物を作成してもよい。
【0094】
また、化合物によるリボスイッチの調節、活性化、不活性化または遮断を確認し、確認した化合物を製造することによって作成される化合物も開示する。これは、例えば、本明細書の別の箇所で開示した化合物の活性化、不活性化または遮断を評価する方法を、確認した化合物を製造する方法と組み合わせることによって達成することができる。例えば、試験化合物とリボスイッチを接触させ、リボスイッチの活性化を評価し、リボスイッチが試験化合物によって活性化された場合は、リボスイッチを活性化した試験化合物を化合物として製造することによって、化合物を作成してもよい。リボスイッチを活性化、不活性化または遮断する機能について化合物を確認することとは、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断することがこれまで知られていなかった化合物を同定すること、ならびに化合物がリボスイッチを活性化、不活性化または遮断することがすでに知られている場合は、その化合物がリボスイッチを活性化、不活性化または遮断する機能を評価することを指す。
【0095】
また、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断することによって、リボスイッチを含む天然に存在する遺伝子またはRNAの発現を調節するための組成物および方法も開示する。遺伝子がその遺伝子を有する細胞または生物の生存に必須である場合は、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断することによって、その細胞または生物の死、静止状態または衰弱を招くことができる。例えば、微生物の生存に必須である天然に存在する遺伝子の天然に存在するリボスイッチを活性化すると、その微生物の死を招くことができる(リボスイッチの活性化によって発現が終了または抑制される場合)。これは、本化合物および方法を抗菌剤および抗生物質として使用する1つの根拠である。本方法を使用して同定した化合物は、この目的のために使用してもよい。
【0096】
また、リボスイッチを活性化、不活性化または遮断することによって、リボスイッチを含む分離した、操作された、または組換え遺伝子またはRNAの発現を調節するための組成物および方法も開示する。遺伝子またはRNAは、任意の方法で工学的に作成してもよければ、組み換えてもよい。例えば、RNAのリボスイッチおよびコード領域は異種であってもよく、リボスイッチは組換え、キメラ、またはその両方であってもよい。遺伝子が所望の発現産物をコードする場合は、リボスイッチの活性化または不活性化を使用して、遺伝子の発現を誘導し、それによって発現産物を産生してもよい。遺伝子が遺伝子発現または別の細胞プロセスのインデューサーまたはリプレッサーをコードする場合は、リボスイッチの活性化、不活性化または遮断によって、調節した他の遺伝子または細胞プロセスが誘導、抑制または脱抑制される。多くのこのような二次調節効果が知られており、リボスイッチとの使用に適合させることができる。このような調節の一次制御としてリボスイッチを使用する利点としては、リボスイッチトリガー分子が非抗原性の低分子であってもよいことがあげられる。本方法を使用して同定した化合物は、この目的のために使用してもよい。
【0097】
また、リボスイッチを共有結合により変えることによって(例えば、リボスイッチの一部を架橋結合する、または化合物をリボスイッチに結合することによって)リボスイッチを不活性化するための組成物および方法も開示する。この方法でリボスイッチを不活性化することで、例えば、リボスイッチのトリガー分子が結合することを防止する、トリガー分子の結合時にリボスイッチの状態が変化することを防止する、トリガー分子の結合時にリボスイッチの発現プラットフォームドメインが発現に影響を及ぼすことを防止するなどの変化が生じる。本方法を使用して同定した化合物は、この目的のために使用してもよい。
【0098】
F.蛍光検出
本明細書に開示する方法では、例えば、リボスイッチの結合、および活性化、コンフォメーションの変化を検出するために蛍光標識を使用することができる。特にコンフォメーション依存性標識が有用である。コンフォメーション依存性標識は蛍光変化に基づいて検出することができる。このような変化は例えば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)または、蛍光標識からの蛍光クエンチの変化を含む。有用な検出技法は米国特許出願公開第2003165846号、およびPCT出願公開第WO2002/083953号に記載される。
【0099】
1.蛍光共鳴エネルギー転移
蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を使用して検体の濃度を測定する蛍光インジケーターは、1つをドナー蛍光部分にし、もう一方をアクセプター蛍光部分にする発光スペクトルと励起スペクトルを有する、2つの蛍光部分を含む。蛍光部分は、1つの部分の励起スペクトル(アクセプター蛍光部分)が、励起される部分(ドナー蛍光部分)の発光スペクトルと重複するように選択する。ドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分は、検体と結合するとコンフォメーションを変える結合部分に結合する。コンフォメーションが変化すると、ドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分の相対的な位置と向きが変わり、ドナーが放射によって励起すると2つの蛍光部分からの蛍光の相対的な量が変わる。特に、検体の結合によりドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分から放射される光の量の比が変わる。2つの放射波長の間の比は、試料中の検体の濃度の測定値を提供し、これは部分的には結合部分と検体の結合親和性に基づく。本明細書では、FRET標識は、標識が関連付けられた分子または化合物(リボスイッチなど)の形態またはコンフォメーションの変化に基づいて蛍光を変化させるFRET対を指す。
【0100】
検体に結合するとドナー部分とアクセプター部分が近づくように、ドナー蛍光部分は結合部分の第一の領域と共有結合しており、アクセプター蛍光部分は結合部分の第二の領域と共有結合している。あるいは、検体に結合するとドナー部分とアクセプター部分は離れるように移動する。ドナー部分はドナー部分の励起スペクトル内の好適な強度の光により励起する。ドナー部分は吸収したエネルギーを蛍光として放出する。アクセプター蛍光部分が励起状態のドナー部分をクエンチする位置になると、蛍光エネルギーは蛍光を放出するアクセプター部分に転移する。FRETはドナー部分からの蛍光シグナルの強度が低減すること、またはドナー部分の励起状態の寿命が短くなること、アクセプター部分のより長い波長(低いエネルギー)特性で蛍光が放出することで示される。検体に結合して結合部分のコンフォメーションが変化すると、蛍光部分は近づき(または物理的に分離し)、これに従ってFRETが増加(または減少)する。
【0101】
FRETの効率はドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分の分離距離と方向に依存する。例えば、Forster公式は、ドナー部分の蛍光量子収率とアクセプター部分とのエネルギー重複に一部分基づいて、励起状態のエネルギー転移の効率を記載している。Forster公式はE=(F−F)/F=F/(R+R)であり、式中、EはFRETの効率、FおよびRはそれぞれ、アクセプターの存在下および非存在下のドナー部分の蛍光強度であり、Rはドナー部分およびアクセプター部分の距離である。
【0102】
FRETが50%有効である特性距離Rは、ドナー部分(すなわち、より短い波長のフルオロフォア)の量子収率、アクセプター部分(すなわち、より長い波長のフルオロフォア)の減衰係数、ならびにドナー部分の放射スペクトルとアクセプター部分の励起スペクトルの重複に依存する。RはR=9.79×10(KQJn−41/6で求められる(単位はÅ)。式中、Kは自由に移動できるドナーとアクセプターについては0.67に近い平均値を有する方向係数であり、Qはクエンチされないドナー部分の量子収率であり、nはドナー部分とアクセプター部分を分離する媒体の屈折率、Jは重なり積分である。Jは、ドナー部分とアクセプター部分の間のスペクトル重複の程度として定量的に表現することができる。例えば、Forster, T. Ann. Physik 2: 55−75 (1948)を参照されたい。スペクトル重なり積分の表は、当業者であればすぐに入手できる(例えば、Berlman, I.B. Energy transfer parameters of aromatic compounds, Academic Press, N.Y. and London (1973))。FRETは生体細胞のフルオロフォアの近接と相対的な角度方向をモニタリングできる非破壊的な分光法である。例えば、Adams, S.R., et al., Nature 349: 694−697 (1991);およびGonzalez, J. & Tsien, R.Y. Biophy. J. 69: 1272−1280 (1995)を参照されたい。
【0103】
ドナー蛍光部分は紫外線(<400nm)によって励起し、青色光(<500nm)を放射し、アクセプター蛍光部分は青色光によって効率的に励起するが紫外線では励起せず、緑色光(>500nm)を放射し、例えば、それぞれP4−3およびS65Tなどである。あるいは、ドナー蛍光部分は紫色(400〜430nm)によって励起し、青緑色(450〜500nm)を放射し、アクセプター蛍光部分は青緑(400〜430nm)によって効率的に励起し、黄緑色色光(.gtoreq.520nm)を放射し、例えば、それぞれWIBと10Cである。
【0104】
試料中の検体の量は、試料中のFRETの程度を決定することによって測定することができる。検体濃度の変化は試料と蛍光インジケーターの間の接触後1回目と2回目にFRETをモニタリングし、FRETの程度の差を測定することによって測定できる。試料中の検体の量は、滴定によって確立された較正曲線によって計算することができる。FRETの程度は、励起したドナー部分のスペクトルまたは蛍光寿命特性から決定することができる。例えば、ドナーからの蛍光シグナルの強度、またはアクセプターからの蛍光シグナルの強度、アクセプターの最大放射に近い蛍光振幅とドナーの最大放射に近い蛍光振幅の比、ドナーの励起状態の寿命をモニタリングすることができる。
【0105】
FRETの程度の変化は、ドナー部分からの蛍光の量とアクセプター部分からの蛍光の量の比の変化の関数として測定され、このプロセスは「比演算」と呼ばれる。インジケーターの絶対量の変化、励起強度、励起波長における試料中の濁度または他のバックグランド吸光度は、ドナーとアクセプターからの蛍光の強度に対してほぼ平行に影響を及ぼす。したがって、2つの放射強度の比はどちらか一方の強度よりも、標識分離に関して確かで好ましい測定値となる。
【0106】
試料中の蛍光は蛍光光度計で測定することができる。一般的に、第一の波長を有する励起源からの励起放射は励起光学素子を通過する。励起光学素子により励起放射が起き、試料を励起する。試料中の蛍光分子はこれに応じて放射するが、その波長は励起波長とは異なる。ついで集光光学素子が試料からの放射を収集する。この装置は温度調節装置を含み、試料をスキャンする間に試料を特定の温度に維持することができる。一実施形態においては、多軸平行移動段が複数の試料を維持するマイクロタイタープレートを移動し、暴露するウェルの位置を変える。多軸平行移動段、温度調節装置、自動フォーカス機能、イメージングとデータ収集に関連する電子部品は、適切にプログラミングされたデジタルコンピュータで管理することができる。またコンピュータは、検定中に収集したデータを別の表示用の形式に変形することができる。
【0107】
蛍光物質で検定を行う方法は、当業界で周知であり、例えば、Lakowicz, J.R., Principles of Fluorescence Spectroscopy, New York: Plenum Press (1983); Herman, B., Resonance energy transfer microscopy in: Fluorescnce Microstopy of Living Cells in Culture, Part B, Methods in Cell Biology, vol.30, ed. Taylor, D.L. & Wang, Y.−L., San Diego: Academic Press (1989), pp.219−243; Turro, N.J., Modern Molecular Photochemistry, Menlo Park: Benjamin/Cummings Publishing Col, Inc. (1978), pp.296−361に記載されている。
【0108】
ドナー部分の励起状態の寿命は同様に、基質の絶対量、励起強度、濁度またはその他のバックグランド吸光度から独立している。この測定にはナノ秒の解像度を持つ装置が必要である。
【0109】
野生型GFP、S65T、およびP4−1突然変異体の量子収率は、0.1N NaOH中のフルオレセインを量子収率の標準0.91として比較することにより推定できる。J.N. Miller, ed., Standards in Fluorescence Spectrometry, New York: Chapman and Hall (1981)。P4およびP4−3の突然変異体を、同様に水中の9−アミノアクリジンと比較した(量子収率0.98)。
【実施例】
【0110】
A.実施例1:リボスイッチの活性を調節するリガンドの同定
1.方法1:FRETを使用した、天然リボザイムリボスイッチによる基質切断の検出
天然に存在するglmS RNAエレメントは、適度の濃度(>100μM)のグルコサミン−6−リン酸塩(Gln6P、図1A)の存在下において自己切断を触媒する。この重要な代謝産物の非存在下においては、切断活性が観察されない。glmSエレメントの天然配列は、単分子のシス切断リボザイムを形成するが、活性glmSリボザイムは、二分子のシス作用リボザイムとして構成してもよい。この形式では、基質と呼ばれる切断鎖が、対になるエレメント(P1)の半分とP1の上流にある保存されたヌクレオチド(図1B)を形成する5’末端塩基対を含む。非切断リボザイム鎖は、P1の3’末端側半分およびglmSエレメントの残りの配列を含む。この二分子形式を使用すると、16ヌクレオチド基質鎖の3’末端および5’末端がそれぞれ、蛍光プローブフルオレセイン(F1)およびcy3により標識された。切断しない基質RNAでは、励起状態のフルオレセインの放射が、cy3クエンチャーを強制的に近接させることによってクエンチされる。Gln6P系の存在下で切断すると、Gln6P(または関連する誘導体)とglmSリボスイッチとの結合が、標準的なハイスループット技法により高速スクリーニングすることができる。
【0111】
10時間以上培養した後、F1の蛍光強度は約160μMのグルコサミン−6−リン酸塩の存在下で約4倍に増加し、エフェクターの非存在下では変化が検出されなかった(図2)。特に、ハイスループット方法でスクリーニングすると、完全なリボザイムの活性には0.01%のドデシル硫酸ナトリウムを含めることが必要であった。これは、低濃度のRNAがプラスチック管およびプレートに付着することを防止するためにこの洗剤が有効であることを示した以前の所見と一致する。さらにこの検出系の判別限度を探索するため、16個のGln6P誘導体のライブラリをスクリーニングした。得られたglmS結合活性は、ゲル電気泳動法で独立して測定した結合活性と良好に一致する(表1)。検出系はまた、glmSリボザイムの結合についてGln6Pと関連しない20000化合物の新規ライブラリ(Microsource Discovery Systems, Inc.)をスクリーニングするために使用している。
【0112】
【表1】

2.方法2:FRETを使用した、天然リボスイッチエレメントとRNA切断リボザイムの間の工学的な融合による基質切断の検出
アロステリックリボザイムは工学的に作成することができ、選択性の高いアプタマーを同種の分子に結合すると、融合ハンマーヘッドリボザイムの適切な折りたたみおよび切断が誘引されることが繰り返し明らかにされている。特定の代謝産物を、同等の天然に存在するアプタマーである同種のRNAリボスイッチに結合することを報告するために、この技法を適合させる。グアニン感受性リボスイッチとシス切断ハンマーヘッドの融合は、結合を正確に報告するように構成されている(図3)。方法1と同様のフルオロフォア/クエンチャーの組み合わせを使用すると、結合により誘導されるリボザイム切断が蛍光シグナルの増加により感知される。密接に関連する代謝産物を区別するこのリボザイム/リボスイッチ融合の活性、感度および機能は確立されている。
【0113】
3.方法3:新規化合物による天然蛍光リボスイッチリガンドの転置の蛍光検出
FMNリボスイッチは、蛍光標識した活性フラビンモノヌクレオチド(FMN、図4)に結合する。FMNの蛍光強度はRNAの結合により減少することは、すでに明らかにされている。結合に関してFMNと競合し、それによってFMNを転置させる新規のリガンドは、蛍光を増大させ、結合の蛍光読み取りを提供する。FMNの転置による蛍光増大の程度を測定するため、折りたたまれていないRNAエレメントの小さなセグメントとハイブリダイズするDNAオリゴヌクレオチドが設計されている。これは、FMNを結合できない別の二次構造を形成することから、このオリゴヌクレオチドが折りたたまれていないFNAとハイブリダイズすると、RNAとFMNの結合の平衡が非結合状態にシフトし、FMNの転置が生じる。この検定は96ウェルまたは384ウェル形式に適合させることができ、FMNリボスイッチを結合する新規分子について大規模の化学ライブラリを高速スクリーニングすることができる。
【0114】
4.方法4:構造敏感な蛍光タグを使用した、エフェクターの結合に伴うリボスイッチの構造変化の検出
リボスイッチ機能の特徴は、リガンドの結合によってRNAの構造が変化することである。リボスイッチRNA内に構造敏感な蛍光ヌクレオシド誘導体を組み込むことにより、リガンドの結合に特徴的な構造変化を検出して、結合の蛍光読み出しの手段として利用することができる(図5)。確立されたハイスループット液体処理と蛍光分光分析装置を使用することで、この読み出しを96ウェルまたは384ウェル形式に適合させることができ、リボスイッチの活性を誘導する新規分子について大規模な化学ライブラリを高速スクリーニングすることができる。蛍光ヌクレオチドの2−アミノプリンによる置換に対して耐性を有するグリシン反応性およびグアニン反応性リボスイッチ内のヌクレオチドが同定される。
【0115】
B.実施例2:glmSリボスイッチアクチベーターに関するハイスループット検定の開発および応用
リボスイッチは新しく発見された遺伝子制御エレメントであり、抗菌剤開発の有望な標的である。リボスイッチを標的とする化合物の迅速な発見および開発を促進するには、構造ベースの設計およびハイスループットスクリーニングなどの現在の創薬法を応用する必要がある。1つの有望なリボスイッチの薬剤標的はglmSリボスイッチであり、グルコサミン−6−リン酸塩(GlcN6P)の結合時に自己切断を触媒する。ここでは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によるglmSリボスイッチ切断のハイスループット検定の開発例を示す。この検定は、glmSリボザイムに結合し切断を活性化する化合物のスクリーニングに使用できる。スクリーニングを確認するため、この検定では、放射標識したRNAを使用して、一般的に使用される電気泳動法によりリボザイムに対する親和性が測定されているGlcN6P類似体のフォーカスライブラリから、活性を有することが知られている化合物が同定されることが明らかになった。さらに、ヒトでの使用がすでに承認されている960の化合物のライブラリの一次スクリーニングにより、5つの活性化合物が同定され、その1つは、リボザイム活性を刺激することが知られているGlcN6P類似体であった。これらの結果は、現在のハイスループットスクリーニング技法を、リボスイッチ標的薬剤化合物の発見に適用できることを示している。
【0116】
1.材料および方法
化学物質およびオリゴヌクレオチド: 以下の化合物を、記載した販売元から入手した。GlcN6PおよびグルコサミンはSigmaから購入した。残りのGlcN6P類似体の合成、精製および完全な同定については、別の箇所に記載している。合成DNAは、既述の通り、購入後使用前に精製した(Seetharaman, et al., Nature Biotechnology 2001; 19: 336−341)。960の生体活性化合物のライブラリは、MicroSource Discovery(米国コネティカット州ゲイロードビル)から購入したSpectrum CollectionTMであった。
【0117】
RNA調製: 黄色ブドウ球菌のglmSリボスイッチ(図6B)を表すリボザイムドメインは、既述の方法と同様の方法により、T7ポリメラーゼを使用したin vitro転写で調製した(Milligan and Uhlenbeck, Methods Enzymol 1989: 180: 51−62)。転写テンプレートは、黄色ブドウ球菌のRosebach(ATCC 35556d)由来のゲノミックDNAを使用したPCR増幅により、glmSリーダー配列の対応する領域から生成した。転写したRNAを、PAGEの変性により精製した。放射標識切断分析に使用した基質鎖5’−AAAGCGCCUGUGCAAAUA−3’(配列番号19)は、Dharmacon, Inc.(米国コロラド州ラファイエット)から購入し、製造業者の指示通りに脱保護し、既述の通り5’−32P標識した(Seetharaman, et al., Nature Biotechnology 2001: 19: 336−341)。5’末端をCy3TMアクセプターで、3’末端を5/6−FAMドナーで標識した基質鎖5’−AAGCGCCUGUGCAAA−3’(配列番号20)(5−、5−フルオレセインのイソメトリック混合)は、IBA GmbH(ドイツ ゲッティンゲン)から購入した。
【0118】
ロースループットglmS動態解析: すべての動態検定は、50mM HEPES(pH7.5、25℃)、10mM MgCl、および200mM KClで行った。反応を開始するため、GlcN6Pを添加し、200μMの最終濃度を得た。放射標識基質による動態検定は、既述の通りに行った(Soukup, Nucleic Acids Res 2006; 34: 968−975)。未切断のままである基質の画分の天然対数を時間に対してプロットして速度定数を設定した後、得られた線の負の勾配を測定した。約20%のRNA基質が切断せずに残っていたため、最大の速度定数にはプロットの初期相のみを使用した。λexcit=488nm(スリット幅=1nm)、λemit=523nm(スリット幅=8nm)で単一反応FRETベースの動態検定を行った。
【0119】
ハイスループットglmS検定: ハイスループット蛍光検定のバリデーションおよびスクリーニングは、50mM HEPES(pH7.5、25℃)、10mM MgCl、および200mM KClの溶液10μL中で、384ウェルのブラックポリプロピレンプレート(Corning、部品番号3677)により、本文に記載の0.01%のSDSを使用して行った。Tecan Aquariusマルチチャンネルピペッター(Tecan Group, LTD、スイス)を使用して、自動液体処理を行った。通常の実験では、緩衝剤と両RNAドメインを含む反応混合物を液体ハンドラーで検定プレートに移し、蛍光を測定した後、DSMO中に10mMで懸濁した約50nlのGlcN6P、GlcN6Pの類似体、またはライブラリ化合物をTecanのピンツールで添加して、反応を開始した(化合物の最終濃度は約50μM)。プレートは非通気性密封テープで密封して、指定の培養時間の間遮光した。この時、プレートを軽く遠心分離して、蛍光を測定した。すべてのマルチプレート蛍光測定を、480nmの励起フィルター(帯域幅30nm)および535nmの放射フィルター(帯域幅25nm)を備えたWallach Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer、米国マサチューセッツ州ウェレスリー)で行った。
【0120】
2.結果および考察
一般的に処方される抗生物質に対して耐性を有する病原性細菌が頻繁に出現しているため、新規の抗菌療法の発見が医学の最前線となっている(Wolfson, Chem Biol 2006: 13: 1−3)。現在処方されているほとんどの抗菌剤は、翻訳、細胞壁の形成、葉酸の生合成、およびDNAの複製という4つの細胞プロセスの1つを標的としている(Walsh, Nat Rev Microbiol 2003: 1: 65−70)。多くの病原体は、これらのプロセスを標的とした薬剤の作用を回避する機序を発達させているため、抗菌療法を強化するためには新たな標的を発見することが必要となる(Nathan, Nature 2004: 431: 899−902)。リボスイッチと呼ばれるRNA遺伝子制御エレメントの1クラスは、新規の効果的な抗菌薬剤標的の有力な候補である(Sudarsan, et al., Chem Biol 2005; 12: 1253−1358; Milewski, Biochim Biophys Acta 2002; 1597: 173−192)。
【0121】
リボスイッチは、隣接するコード領域またはオペロンの発現を調節するメッセンジャーRNAの非翻訳領域(UTR)に存在する構造化されたRNAレセプターである(Winkler, et al., Nature 2002; 419: 952−956; Tucker and Breaker, Curr Opin Struct Biol 2005; 15: 342−348)。既知の各リボスイッチクラスのメンバーは、特定の基礎代謝産物に結合し、これによって、通常はオープンリーディングフレーム内でコードされたタンパク質の発現を抑制する、隣接したmRNAの構造変化を誘引する。一例としては、枯草菌由来のglmS遺伝子の上流にある5’非翻訳領域がある(図6A)。glmS遺伝子は、グルコサミン−6−リン酸塩シンセターゼをコードする(Milewski, Biochim Biophys Acta 2002; 1597: 173−192)。十分に高濃度だと(見かけ上のKは200μMであるが、わずか1μMという低濃度でも切断を活性化する)、この酵素の産物であるグルコサミン−6−リン酸塩(GlcN6P)は、glmSリボスイッチと結合し、glmS RNAの特定のヌクレオチドで自己切断を誘引する(Winkler, et al., Nature 2004: 428: 281−286)。したがって、glmSリボスイッチは、GlcN6P依存性の自己触媒リボザイムである。
【0122】
glmSリボザイムは、抗菌剤開発の有力な標的となり得ることが見出されている。glmS遺伝子を抑制すると、細胞壁の形成の必須の基質であるウリジン5’−ジフォスフォ−N−アセチル−D−グルコサミンの前駆物質であるGlcN6Pの細胞内濃度が低下するとされている(Milewski, Biochim Biophys Acta 2002: 1597: 173−192)。したがって、GlmSタンパク質は、正常な細胞成長に必須である(Kobayashi, et al., Proc Natl Acad Sci USA 2003: 100: 4678−4683)。そのため、リボザイム作用をトリガーする化合物によるglmS抑制は、成長を阻害するとされている。さらに、glmSリボザイムは、炭疽菌および黄色ブドウ球菌を含めた多くの優先順位の高い病原性細菌のゲノムに存在し、高度に保存されているため、glmSリボザイムを標的とした薬剤は、幅広いグラム陰性およびグラム陽性の病原性細菌を阻害するために使用することができる。
【0123】
リボスイッチ標的薬剤の迅速な発見を実現するには、これらのRNAレセプターに対するリガンドのハイスループットスクリーニングなどの最新技術が有益であるとされている。最近の報告では、単分子の枯草菌glmSリボザイムの切断を検出するハイスループット適合検定が記載されている(Mayer and Famulok, ChemBioChem 2006; 7: 602−604)。黄色ブドウ球菌由来の二分子glmSリボザイムに結合し活性化する化合物について化学ライブラリをスクリーニングする目的から、優れた全自動のハイスループット検定が開発されている。論理的に設計されたGlcN6P類似体および960の生体活性化合物のライブラリの集合を、リボザイムに結合し活性化するものについてスクリーニングした。GlcN6P類似体に関するこのスクリーニングにより報告された活性は、一般的に使用される検定で測定した結合親和性を正確に反映している。
【0124】
glmSリボザイム配列は多くの細菌種にわたって高度に保存されているが、黄色ブドウ球菌は臨床的に重要であるため、黄色ブドウ球菌の配列をスクリーニング開発に選択した。切断の検出を促進するため、天然の自己切断glmSリボザイムを、個別の基質オリゴヌクレオチドとリボザイムオリゴヌクレオチドが短縮されたP1ステムを介して結合する二分子リボザイム(図6B)に変換した。枯草菌由来の同様の二分子glmSリボザイムが最近同定され、天然の単分子リボザイムと同様の触媒特性を有することが見出されている(Soukup, Nucleic Acids Res 2006; 34: 968−975)。RNA基質は、短縮されたP1ステムの5’末端側の半分と、切断部位を囲む保存されたヌクレオチドを囲むのに対し、リボザイム鎖はP1の3’末端側の半分と、黄色ブドウ球菌由来のglmS配列の残りを含む。この二分子リボザイムの切断活性を、5’末端を放射標識した基質を使用してマルチターンオーバーの条件下で確認した(図7A)。0.5μMのリボザイム、20μMのGlcN6P、および飽和基質濃度では、二分子構成体が25℃にて0.25min−1の見かけ上の速度定数で切断し、これは、すでに報告されている1min−1のシングルターンオーバ速度定数と同等であった(Winkler, et al., Nature 2004; 428: 281−286)。この条件下で、2つの鎖について測定した見かけ上のKは0.2μMであり、同様の二分子構成体について報告されている1μMの値と同等であった(Soukup, Nucleic Acids Res 2006; 34: 968−975)。
【0125】
切断のFRET検出を行うため、3’末端の5−(および6−)カルボキシフルオレセイン(5/6−FAM)ドナー、および5’末端のCy3TMアクセプターで基質を合成した。485nmで励起すると、5/6−FAMドナーは通常、最大波長526nmで放射する。しかし、基質鎖をそのままにすると、5/6−FAMの蛍光は、おそらく近接したCy3TMアクセプターのクエンチングにより低下する。GlcN6Pを付加し、基質鎖が切断すると、2つの産物の鎖が分離し、5/6−FAMとCy3TMが離れ、同時に5/6−FAMの蛍光が増大する。同様の蛍光ベースのシステムが、リボザイム切断のリアルタイム検出に使用されている(Singh, et al., RNA 1999; 5: 1348−1356; Hanne, et al., Nucleosides Nucleotides 1998; 17: 1835−1850)。このFRET検出方法を使用し、40μM GlcN6Pを添加すると、20分以内に蛍光シグナルが6倍以上に増加する(図7B)。この蛍光増大の適度な上昇は、リガンド結合により生じた基質のコンフォメーション変化によるものと考えられる。リボザイムと基質の三次接触は、短い塩基対領域よりも大きく基質を拘束し、ドナーとアクセプターの間の平均距離を増加させる。重要な点として、この期間にGlcN6Pまたはリボザイムの非存在下において、蛍光の増大は観察されなかった。
【0126】
大規模な化合物ライブラリの切断の迅速な液体ベースの測定を促進するため、384ウェルのマイクロプレートでの自動液体処理および蛍光測定に、検定条件を最適化した。酵素と基質RNAの需要を低減するため、これらの分子の濃度を変化させて、蛍光シグナルの再現可能で統計的に有意な増加をもたらす各分子の最少濃度を測定した。10nMの各鎖では、100μM GlcN6cの存在下で68時間後に蛍光が4倍増大した(図7C)。この低濃度のRNAでは、シグナルの増加が0.01%のSDSの含有により変動した。これはおそらく、RNAがポリプロピレンプレートに付着することをSDSが抑制するためであると考えられる。48時間未満の培養時間では、蛍光の増大が著しく少なかった。これはおそらく、2つのRNA鎖の濃度が測定した解離定数0.2μMよりも小さく、観察された切断速度を低下させたためである可能性が高い。しかし、GlcN6Pの非存在下でシグナルの増加がみられなかったという事実により、シグナルの増加は、この時間中に非特異的なRNAの分解作用ではなくリボザイムの触媒作用を示していることが確認されている。さらに、リボザイム−基質の複合体の形成は、このハイスループット検定の律速段階である可能性が高いものの、全体の蛍光増大は、複合体の形成後にリガンドがリボザイム作用を誘導することができる程度を示す関数となる。
【0127】
培養後のシグナル変化は、反応を手動のピペッティングで調製しても、自動液体ハンドラーで調製しても、ほぼ同じであった(図7C)。これらのデータから、スクリーニングのZ’を以下の通り計算することができる。
【0128】
【数1】

式中、SDpositive、SDnegative、Mpositive、およびMnegativeはそれぞれ、GlcN6の存在下および非存在下におけるウェルの標準偏差および平均値を示す。Z’は、陽性対照群と陰性対照群の間の分離の相対的な指標であり、スクリーニングの統計的性能の評価として広く認められている(Zhang, et al., J Biomol Screen 1999; 1999: 67−73)。図7Cのデータで計算したZ’は0.64であり、薬学的に有効なスクリーニングの業界基準である0.5超よりもはるかに高い。しかし、この数値は、一般的に使用されるよりも少ない回数で測定したものである。また、このZ’は、すでに公開されている単分子glmSスクリーニングと比べても遜色ない(Mayer and Famulok, ChemBioChem 2006: 7: 602−604)。この事実により、ハイスループットライブラリスクリーニングへのスクリーニングの有効性が確認される。
【0129】
この検定で活性化合物と不活性化合物をどの程度区別できるかを評価するため、glmSリボザイムに対する相対的な結合親和性が電気泳動によりすでに測定されている12のGlcN6P類似体(図8)のライブラリをスクリーニングした。リボザイムに対する結合親和性がGlcN6Pの10倍以内である化合物は蛍光が2.5倍以上増大したのに対し、GlcN6Pの蛍光は3.5倍増大した。この2.5倍の蛍光増大という機能性化合物(ヒット)のカットオフは、リガンドの非存在下(NL)における蛍光値の平均に対して、統計的に有意な18の標準偏差を表す。逆に、親和性がGlcN6Pの10倍未満である化合物は、5と13を除き、蛍光シグナルの増加が1.5倍未満であった。5と13で観察された大きな蛍光増大は、これらの化合物がより遅い速度で切断を刺激し44時間後に検出可能になったが、先に行った30分の培養後のゲル分析では検出できなかったことを示す可能性が高い。同様の例がグルコサミンでも見られた。グルコサミンでは、44時間後に蛍光が3.0倍に増大したが、リボザイムに対して測定された親和性は、GlcN6Pの100分の1以下であった(McCarthy, et al., Chem Biol 2005: 12: 1221−1226)。したがって、ハイスループットスクリーニングからの蛍光報告は、glmSリボザイムに対する結合活性を正確に反映している。
【0130】
glmSリボザイムに結合し、および/または活性化することができる新しい化合物を検索するモデルスクリーニングとして、ヒトでの使用が承認され市販されている960の生体活性化合物ライブラリをスクリーニングした。GlcN6Pだけを添加した対照ウェルでは、リボザイムと基質の混合物の蛍光シグナルが34時間後に3.74倍に増加した(±0.28)(図9Aの最も右側の行、および図9BのS+R+l)。これに対し、リガンド非存在下では増加が1.18倍であった(図9Aの右から2番目の行、および図9BのS+R)、これは28標準偏差の差である。ライブラリ化合物を含むウェルでは、リガンドの非存在下において平均相対蛍光よりも10標準偏差以上の蛍光増大が活性化合物を示すと考えられた(このヒット閾値は捕捉するヒット化合物を最大化するために選択された)。このパラメータを使用して、5つのヒット化合物を同定し(図9C)、最も注目すべきものはグルコサミンであった。ヒット率は0.06%であり、スクリーニングの各プレートで計算した平均Z’係数が0.57であったことから、最近発表された他のスクリーニング法と遜色はなかった(Zhang, et al., J Biomol Screen 2005; 10: 695−704; Kroemer, Biochem Soc Trans 2003; 31: 980−984; Macarron and Hertzberg, In: WP Janzen ed. Totowa, NJ: Humana Press, 2002: 1−29)。特に既述のglmSスクリーニングでは、30分後にグルコサミンの活性は見られなかったが(Mayer and Famulok, ChemBioChem 2006: 7: 602−604)、本実験では長い培養時間を使用したため、GlcN6Pの100分の1の結合親和性で結合するこの類似体が同定されたと考えるのが妥当である(McCarthy, et al., Chem Biol 2005: 12: 1221−1226)。
【0131】
同定した5種類の化合物のそれぞれについて、蛍光スクリーニングまたは電気泳動のいずれかによってglmS活性化を再試験した。驚くべきことに、どの化合物も再現可能で時間に依存した蛍光増大を誘導したのに対し(図9D)、グルコサミンのみが2時間培養後にゲル上で検出可能な切断を刺激した(図示なし)。おそらくライブラリのサイズも多様性も限られているという理由で、新規のglmS活性化化合物がまだ同定されていなかったという点では、この結果は既述のglmSスクリーニングを反映している(Mayer and Famulok, ChemBioChem 2006: 7: 602−604)。さらに、これらの少ない疑陽性ヒットは他の蛍光ベースのハイスループットスクリーニングでも観察されており(Zhang, et al., J Biomol Screen 2005: 10: 695−704)、二次的なリボザイム切断検定で本件でも容易に確認または反論することができる(Soukup and Breaker, RNA 1999; 5: 1308−1325)。疑陽性の1つの説明としては、これらが44時間の間にRNA上の蛍光標識をクエンチングまたは他の方法で改変したか、または化合物が時間の経過とともに蛍光性になったということが考えられる。しかし、グルコサミンが同定されたことによって、このスクリーニングが複雑な化合物ライブラリから親和性が低くてもglmS活性化合物を同定できることが確認されている。
【0132】
要約すると、glmSリボザイムに結合し活性化する化合物を同定するために、全自動化の統計的に確かなハイスループットスクリーニングが開発された。このことは、最新の創薬技法がリボスイッチ標的薬剤の発見および開発に適用できることを示している。さらに、この例に記載した技法は、既述の通り、RNA切断リボザイムとリボスイッチアプタマーの間のアロステリック融合を工学的に作成することによって、他のリボスイッチについても容易に再構成することができる(Breaker, Curr Opin Biotechnol 2002; 13: 31−39; Breaker, Nature 2004; 432: 838−845)。このようなスクリーニングは、これらの有望なRNA標的クラスを対象とした新規の抗菌薬の発見を大幅に進歩させることができる。
【0133】
本方法および組成物は、特定の方法、プロトコル、および試薬が変動することから、特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書の用語は単に特定の実施形態を説明する目的で使用されており、本発明の適用範囲を限定することを目的としたものではなく、本発明の適用範囲は、添付の請求項によってのみ限定されることも理解されたい。
【0134】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈で特に明記されない限り、複数の言及も包含することに留意する必要がある。したがって、例えば、「リボスイッチ(a riboswitch)」という言及は複数のリボスイッチも包含し、「リボスイッチ(the riboswitch)」という言及は、当業者に既知の1つ以上のリボスイッチおよびそれらの等価物を指す。
【0135】
「任意の」または「場合により」という用語は、次に説明する事象、状況または材料が生じても生じなくても存在していてもよく、この説明は、このような事象、状況または材料が生じるか存在する場合と、これらが生じないか存在しない場合とを包含する。
【0136】
本明細書において、範囲は1つの特定の「約」の値から、および/またはもう1つの特定の「約」の値までを表す。このような範囲が表わされている場合は、文脈で特に明記されない限り、1つの特定の値から、および/または別の特定の値までの範囲が具体的に企図され、考慮される。同様に、値の前に「約」をつけて値を概算で表す場合、文脈で特に明記されない限り、特定の値は別の具体的に企図された実施形態を形成し、これも開示されていると考えるべきであることを理解されたい。さらに、文脈で特に明記されない限り、各範囲のエンドポイントは他のエンドポイントとの関係でも重要であり、他のエンドポイントとは独立しても重要であることも理解されたい。最後に、文脈で特に明記されない限り、明示的に開示された範囲内のすべての個別の値と値の小範囲は、具体的に意図され開示されていると理解すべきである。前述の事柄は、これらの実施形態の一部が明示的に開示されているか全部が明示的に開示されているかにかかわらず適用される。
【0137】
別に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、開示した方法および組成物が属する業界の当業者であれば一般的に理解している意味と同じ意味を有する。本明細書に記載した方法および材料と同様または同等な方法および材料も、本方法および組成物の実行またはテストに使用できるが、特に有用な方法、装置、材料は記載の通りである。本明細書に引用した刊行物および引用した資料は、参照により本明細書に具体的に組み込まれている。本発明がこのような先行発明の開示により予想されたものと解釈することはできない。参考文献が先行技術を構成するという了解はない。参考文献に関する考察はその著者が主張したことを示し、出願者は、引用した文書の正確さと妥当性を調べる権利を有する。本明細書では多くの刊行物を参照しているが、このような参考文献が当業界の一般知識の一部を形成していると認めるわけではないことを理解されたい。
【0138】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、「含まれる」という用語および、この変形である「含めた」という用語は、「含まれるが、これらに限定されない」ということを意味し、例えば、他の添加物、構成要素、整数、または工程を排除することを意味するものではない。
【0139】
当業者であれば、日常的な実験で、本明細書に記載した方法および組成物の具体的な実施形態の多くの等価物を十分に認識または確認することができるであろう。このような等価物も添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、実施例1の方法1によるハイスループットスクリーニングの設計を示す。A)天然のシス切断glmSリボザイムが、Gln6Pの存在下において、矢印で示す部位で切断する。B)Gln6Pの新規の機能類似体または擬態の結合を感知する二分子glmSリボザイム。
【図2】図2は、図1Bに示すglmSリボザイムにより検出されたGln6Pの結合を示す。
【図3】図3は、結合を検出するための、リボスイッチ/リボザイムの融合に基づくハイスループットスクリーニングの設計を示す。エフェクターの非存在下では、リボザイムが主に不活性型に折りたたまれる。グアニンまたは機能類似体の結合によって、折りたたみが変わり活性型リボザイムとなる(切断部位は矢印で示す)。図1と同様のフルオロフォア−クエンチャーの対により、エフェクターの結合が蛍光で読み取られる。
【図4】図4は、FMNアプタマーに結合するFMNの新規の類似体または擬態のハイスループットスクリーニング方法を示す。
【図5】図5は、エフェクターの結合の検出に構造敏感な蛍光性プローブを使用した例を示す。
【図6】図6Aおよび図6Bは、2つのglmSリボザイムの配列と構造を示す図である。A)枯草菌由来の一分子glmSリボザイム(5’末端〜3’末端。配列番号1〜8)。矢印はGlcN6Pの刺激を受けたリボザイム媒介切断部位を示す(Wolfson, Chem Biol 2006; 13: 1−3)。B)黄色ブドウ球菌由来の二分子glmSリボザイム構成体(5’末端〜3’末端。配列番号9〜18)。この構成体は、P1ステムを切断し、15ヌクレオチド基質RNA(灰色で示す;配列番号9および10)を使用しているため、野生型glmSリボザイムとは異なる。基質は5’末端のCy3TMアクセプター、3’末端の5/6−FAMドナーで標識されている。
【図7】図7A、図7Bおよび図7Cは、二分子glmSリボザイムのRNA切断活性を示す。A)基質切断に関する見かけ上のkobs(0.1nM、5’32P放射標識)を、リボザイム濃度の関数として測定した図である。B)40μM GlcN6P(上方の黒色の線)の存在下において、二分子のリボザイム基質複合体の切断を、FRET対の蛍光増加によりモニタリングした図である。リボザイム(灰色)またはGlcN6P(下方の黒色の線)の非存在下では活性が認められなかった。C)200μM GlcN6Pの存在下において68時間にわたり384ウェルプレート内で基質およびリボザイムRNAをそれぞれ10nM培養した後の蛍光変化を示す図である。エラーバーは8回反応を繰り返して得たそれぞれの値の標準偏差を示す。
【図8】図8Aおよび図8Bは、リボザイム活性を誘導するGlcN6P類似体の同定を示す。A)glmS切断を活性化する機能について検査したGlcN6Pの構造である。B)各類似体の追加から21時間または44時間後(0時間(左軸)を基準)の蛍光により、どの化合物が切断を活性化するのかを示す図である。比較として、リガンドを含まない場合(NL)の相対的な蛍光は、21時間で0.8、44時間で0.9であったのに対し、200μM GlcN6P(Wolfson, Chem Biol 2006; 13: 1−3)の追加後の相対的な蛍光は、21時間で3.5、44時間で3.4であった。また比較として、PAGE分析では、数字を円で囲んだ化合物がいずれもglmSリボザイムを活性化し、見かけ上の親和性がGlcN6Pの10倍以内であったことが明らかにされている。
【図9】図9A、図9B、図9Cおよび図9Dは、960化合物パイロットglmS活性スクリーニングの結果を示す。A)3つの内のプレート1は、384個のウェルで蛍光反応を示している。カラム1および2は基質鎖のみを含む。カラム23(最後から2番目)は基質鎖およびリボザイム鎖を含み、カラム24(最後)はリボザイム鎖および基質鎖のほかに、80μM GlcN6Pを含む。蛍光反応がリガンド非含有対照を上回る10個の標準偏差よりも大きいウェルは、反転標識されている(グルコサミン、15、14および16)。B)プレート1の各対照反応およびヒット化合物の平均蛍光反応を示す。エラーバーは1つの標準偏差を示す。C)960種類の化合物のスペクトルコレクションのスクリーニングから、44時間後に2.3倍以上の蛍光の増大を示した5件のヒットが同定された。D)第二の分析により、Cで同定された5種類の化合物がいずれも、時間に依存した蛍光の増大を示すことが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)リボザイムリボスイッチ、コンフォメーション依存性標識で標識した基質、および化合物を接触させる工程であって、該基質が該リボザイムリボスイッチによる切断のための基質である、工程;ならびに
(b)蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化が該リボザイムリボスイッチによる該基質の切断を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記基質の切断は、前記化合物が前記リボザイムリボスイッチに結合することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基質の切断は、前記化合物が前記リボザイムリボスイッチを活性化することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基質の切断は、前記化合物が前記リボザイムリボスイッチと相互作用することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基質の切断は、前記化合物が前記リボザイムリボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基質の切断は、前記化合物が前記リボザイムリボスイッチのトリガー分子であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
蛍光変化は、前記化合物が基質の切断を調節することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンフォメーション依存性標識が蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)および工程(b)が、複数の異なる化合物を使用して複数回並行して行われ、該化合物のうちの1つの存在下における前記基質の切断は、該化合物が前記リボザイムリボスイッチを活性化することを示す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)および工程(b)が、少なくとも、20回、30回、40回、50回、75回、96回、100回、150回、200回、250回、300回、384回、または400回並行して行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)および工程(b)が、複数回並行して、複数回連続して行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)および工程(b)が、複数回並行して、少なくとも、3回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、75回、100回、150回、200回、250回、300回、または400回連続して行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法がハイスループットシステムを使用して行われる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記リボザイムリボスイッチがglmSリボスイッチである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リボザイムリボスイッチが天然に存在する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記リボザイムリボスイッチが操作されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記リボザイムリボスイッチが、前記切断部位を含むセグメントが除去された場合に自己切断する、天然に存在するリボザイムリボスイッチである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基質が前記除去されたセグメントに置き換わる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リボザイムリボスイッチがキメラである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記キメラが、リボザイムに融合したリボスイッチを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記リボザイムが、前記リボザイムの前記切断部位を含むセグメントが除去された場合に自己切断するリボザイムである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基質が前記除去されたセグメントに置き換わる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記リボスイッチがグアニンリボスイッチである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記リボザイムがハンマーヘッドリボザイムである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物がタンパク質またはペプチドである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物が有機低分子であるか、または有機低分子を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
(a)リボスイッチ、蛍光トリガー分子、および化合物を接触させる工程;ならびに
(b)蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化が、該リボスイッチからの該トリガー分子の転置を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項28】
前記化合物を前記リボスイッチおよびトリガー分子と接触させる前に、該リボスイッチおよびトリガー分子を接触させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記トリガー分子が天然に蛍光性である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記トリガー分子が蛍光標識を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項31】
前記リボスイッチからの前記トリガー分子の転置は、前記化合物が該リボスイッチに結合することを示す、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記リボスイッチからの前記トリガー分子の転置は、前記化合物が該リボスイッチを不活性化または遮断することを示す、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記リボスイッチからの前記トリガー分子の転置は、前記化合物が該リボスイッチと相互作用することを示す、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記リボスイッチからの前記トリガー分子の転置は、前記化合物が該リボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することを示す、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
工程(a)および工程(b)が、複数の異なる化合物を使用して複数回並行して行われ、該化合物のうちの1つの存在下における前記リボスイッチからの前記トリガー分子の転置は、該化合物が該リボスイッチを不活性化または遮断することを示す、請求項27〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
工程(a)および工程(b)が、少なくとも、20回、30回、40回、50回、75回、96回、100回、150回、200回、250回、300回、384回、または400回並行して行われる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
工程(a)および工程(b)が、複数回並行して、複数回連続して行われる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
工程(a)および工程(b)が、複数回並行して、少なくとも3回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、75回、100回、150回、200回、250回、300回、または400回連続して行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法がハイスループットシステムを使用して行われる、請求項27〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記リボスイッチがFMNリボスイッチである、請求項27〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記リボスイッチが天然に存在する、請求項27〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記トリガー分子が蛍光活性フラビンモノヌクレオチドである、請求項27〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記リボスイッチが操作されている、請求項27〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物がタンパク質またはペプチドである、請求項27〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物が有機低分子であるか、または有機低分子を含む、請求項27〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
(a)リボスイッチおよび化合物を接触させる工程であって、該リボスイッチがコンフォメーション依存性標識を含む、工程;ならびに
(b)蛍光変化を検出する工程であって、蛍光変化が、該リボスイッチのコンフォメーション変化を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項47】
前記リボスイッチのコンフォメーション変化は、前記化合物が該リボスイッチに結合することを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記リボスイッチのコンフォメーション変化は、前記化合物が該リボスイッチを活性化することを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記リボスイッチのコンフォメーション変化は、前記化合物が該リボスイッチと相互作用することを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記リボスイッチのコンフォメーション変化は、前記化合物が該リボスイッチのコンフォメーション変化を誘導することを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記リボスイッチのコンフォメーション変化は、前記化合物が該リボスイッチのトリガー分子であることを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記コンフォメーション依存性標識が蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識である、請求項46〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
工程(a)および工程(b)が、複数の異なる化合物を使用して複数回並行して行われ、該化合物のうちの1つの存在下における前記リボスイッチのコンフォメーション変化は、該化合物が該リボスイッチを活性化することを示す、請求項46〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
工程(a)および工程(b)が、少なくとも、20回、30回、40回、50回、75回、96回、100回、150回、200回、250回、300回、384回、または400回並行して行われる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
工程(a)および工程(b)が、複数回並行して、複数回連続して行われる、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
工程(a)および工程(b)が、複数回並行して、少なくとも、3回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、75回、100回、150回、200回、250回、300回、または400回連続して行われる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記方法がハイスループットシステムを使用して行われる、請求項46〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記リボスイッチがpreQリボスイッチである、請求項46〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記リボスイッチがグアニン反応性リボスイッチである、請求項46〜57に記載の方法。
【請求項60】
前記リボスイッチがグリシン反応性リボスイッチである、請求項46〜57に記載の方法。
【請求項61】
前記リボスイッチが、コンフォメーション依存性標識を付加した天然に存在するものである、請求項46〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記リボスイッチが操作されている、請求項46〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記リボスイッチがキメラである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記化合物がタンパク質またはペプチドである、請求項46〜63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記化合物が有機低分子であるか、または有機低分子を含む、請求項46〜63のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2009−524411(P2009−524411A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547774(P2008−547774)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/062494
【国際公開番号】WO2007/100412
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】