説明

リボフラビンの改善された生産

本発明は、リボフラビン生合成遺伝子(ribオペロン)を含有するオペロンの改変、特に対応するリボフラビン生合成遺伝子(ribオペロン)上流のリーダー配列(ribリーダー)の改変を通じた、リボフラビン(本明細書ではビタミンB2とも称する)の改善された生物工学的生産を提供する。さらに本発明は、前記改変配列を有する遺伝子改変微生物、前記改変配列/微生物を作成する方法、およびリボフラビン生産のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、リボフラビン生合成遺伝子(ribオペロン)を含有するオペロンの改変、特に対応するリボフラビン生合成遺伝子(ribオペロン)上流のリーダー配列(ribリーダー)の改変を通じた、リボフラビン(本明細書ではビタミンB2とも称する)の改善された生物工学的生産を提供する。さらに本発明は、前記改変配列を有する遺伝子改変微生物、前記改変配列/微生物を作成する方法、およびリボフラビン生産のためのその使用に関する。
【0002】
リボフラビンは全ての植物と多数の微生物が合成するが、高等動物では生成されない。炭水化物の酵素的酸化で必要とされるフラビンアデニンジヌクレオチドやフラビンモノヌクレオチドなどの補酵素の前駆物質であることから、リボフラビンは基本的な代謝に必須である。高等動物では、不十分なリボフラビン供給は、脱毛、皮膚炎症、視覚劣化、および成長阻害を引き起こし得る。
【0003】
リボフラビンの生合成は、グアノシン三リン酸(GTP)およびリブロース−5−リン酸から開始する。リボフラビン生合成に関与する遺伝子は、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、エレモテシウム・アシュビー(Eremotecium ashibyii)、アシュビア・ゴッシピイ(Ashbya gossypii)、カンジダ・フラレリ(Candida flareri)、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、大腸菌(E.coli)などの様々な起源から知られている(例えば欧州特許第405370号明細書、またはUllman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第7版,2007年,Vitaminsの章を参照されたい)。
【0004】
リボフラビン産生(微)生物の一例としての枯草菌(Bacillus subtilis)中の状況に関しては、リボフラビン生合成に関与する遺伝子として、ribG(ribD)、ribB(ribE)、ribA、およびribHが挙げられる。ribA遺伝子は、リボフラビン生合成の第1段階を触媒するGTPシクロヒドロラーゼIIと、リブロース−5−リン酸から3,4−ジヒドロキシ−2−ブタノン4−リン酸(DHBP)への変換を触媒する3,4−ジヒドロキシ−2−ブタノン4−リン酸シンターゼ(DHBPS)との2つの酵素活性をコードする。デアミナーゼおよび還元酵素は、オペロンの1番目の遺伝子ribG(ribD)によってコードされる。リボフラビン生合成中の最後から2番目の段階は、ribHの遺伝子産物であるルマジンシンターゼによって触媒される。経路の最終段階を触媒するリボフラビンシンターゼは、オペロンの2番目の遺伝子ribB(ribD)によってコードされる。ribオペロンの3’末端に位置するribTの機能は現在のところ明確でないが、その遺伝子産物はリボフラビン合成に必要でない。
【0005】
ribプロモーター(Prib)からのリボフラビンオペロンの転写は、リボスイッチによって制御され、オペロンribGの1番目の遺伝子の転写開始と翻訳開始コドンとの間のribオペロンの5’領域に位置する、約300ヌクレオチドの非翻訳制御リーダー領域(以下ribリーダーと称される)が関与する。枯草菌(Bacillus subtilis)を使用した研究から、ribリーダー内の少なくとも3つの異なる部分がribオペロンの転写調節に関与することが知られている。(i)rho非依存性転写終結または転写減衰構造に特徴的な逆方向反復と、それに続くpoly−Tストレッチとを含んでなる、ribリーダーの3’末端に位置するrho非依存性ターミネーター(Kilら,Mol.Gen.Genet.233,483〜486頁,1992年;Mironovら,Mol.Biol.24,256〜261頁,1990年);(ii)アンチターミネーターとして機能することが示唆される、ターミネーターの5’−halfにおける逆方向反復(Mironovら,Cell 111,747〜756頁,2002年);(iii)ターミネーターの中央部分に位置して互いに逆相補的であり、抗アンチターミネーターとして機能して、アンチターミネーターとターミネーターとの塩基対合を妨げ、抗転写終結構造形成を妨げることが推測される2つの因子(Mironovら、Cell 111(5):747〜56頁、2002年)。ターミネーターの機能が転写アッセイ中のFMNの存在に依存することが、生体外転写研究によって確認されている(Winklerら、PNAS99(25):15908〜13頁、2002年)。例えば配列番号1に記載される枯草菌(B.subtilis)のribオペロンに関しては、それぞれターミネーターは配列番号1のヌクレオチド230〜263からなり、アンチターミネーターはヌクレオチド30〜37からなり、抗アンチターミネーターはヌクレオチド157〜164からなる。
【0006】
rib遺伝子発現制御の現行のモデルによれば、ribリーダーから転写された新生のmRNAは2つの代替え構造を取る(いわゆるFMN riboスイッチ)。FMNがribリーダー内に位置するRFN因子に結合する場合(例えば配列番号1中の位置25〜164のDNA配列を参照されたい)、抗アンチターミネーターはアンチターミネーターと塩基対合し、したがってそれは転写終結ループの形成を妨げられず、rib遺伝子転写の早期終結がもたらされる。いずれのFMNもRFN因子に結合しない場合、アンチターミネーターは転写ターミネーターの逆相補的配列と塩基対合して、読み過ごし転写ならびに全長rib mRNA形成を可能にする。この機序は、FMN結合RFN因子と非結合形態との比率を決定する細胞内FMN濃度と、全長rib mRNA生産の程度とを結びつける。RFN因子はFMNの結合部位としての役割のみを果たし、リボフラビンのためには働かないことが示されている(Mironovら,2002年;Winklerら,2002年)。
【0007】
したがって調節解除、リボフラビン過剰産生、および培養ブロス中への分泌は、以下のいずれによって達成されてもよい(i)FMNと、ribリーダー配列から転写された新生のmRNAとの結合妨害、(ii)アンチターミネーターと効果的に塩基対合できないようにする抗アンチターミネーターの改変、または(iii)ターミネーターの改変または除去。
【0008】
リボフラビン過剰産生枯草菌(B.subtilis)変異株の1つのクラスは、ribリーダー配列の5’−halfの様々な位置に、ribO突然変異と称される単一点突然変異を含有することが同定された(Kilら,1992年)。ribO突然変異は、RFN因子中に位置してFMN結合を妨げるか、または抗アンチターミネーターDNA配列中に位置するかのどちらかである。rib遺伝子発現およびリボフラビン分泌の最大調節解除は、究極の因子であるrib遺伝子転写が依存する抑制が除去されることから、ターミネーター構造の欠失に際して達成されることが予期され得る。RibO突然変異は、例えばラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、リューコノストック・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)またはプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)中でさらに同定されている(Burgesら,Microbial Cell Factories 5:24頁,2006年)。
【0009】
ribC変異株と称されるリボフラビン過剰産生枯草菌(B.subtilis)変異株の第2のクラスでは、染色体傷害は枯草菌(B.subtilis)ゲノムの147番目にマッピングされている(KrenevaおよびPerumov.Mol.Gen.Genet.222,467〜469頁,1990年)。RibC変異株は、ribC遺伝子にミスセンス突然変異を含有する。ribC遺伝子は、枯草菌(B.subtilis)のフラビンキナーゼ/FADシンターゼをコードすることが示されている(Mackら,J.Bacteriol.,180:950〜955頁,1998年)。リボフラビン生合成を調節解除する突然変異は、ribC遺伝子産物のフラボキナーゼ活性を低下させ、リボフラビン制御系のエフェクター分子であるフラビンモノヌクレオチド(FMN)の細胞内濃度の低下をもたらす。
【0010】
さらに古典的変異誘発が使用されて、選択された生物ゲノム中にランダム突然変異を有する変異株を発生させ、例えばプリン類似体に対するより高い抵抗性の選択がそれに続いた。代案としては、例えば天然の(弱い)プロモーターを強力プロモーターによって置き換えることで、または染色体内の発現カセットを増幅することで、リボフラビン生合成に関与する遺伝子が過剰発現され、前記カセットは、例えば抗生物質耐性マーカーなどの増幅可能な選択可能マーカー遺伝子と共に、関心のある遺伝子と作動的に連結する単一プロモーターを含有した。増幅は、染色体中に、発現カセットおよび選択可能なマーカー遺伝子の複数コピーの生産をもたらした。さらに前記宿主細胞の成長からの脱結合リボフラビン産生によって、培養ブロス中へのリボフラビンの分泌増大を達成し得た。
【0011】
いくつかの不都合が、上述のアプローチに付随する。例えば単一プロモーターによって駆動される遺伝子増幅によって、飽和レベルのmRNAを達成することは可能でないかもしれない。さらに宿主細胞染色体中の発現カセットおよび選択可能マーカー遺伝子の複数コピーの生成は安定していないかもしれず、またはそれぞれの遺伝子のさらなる発現を妨げることすらあるかもしれない(フィードバック阻害)。
【0012】
意外にも、ribリーダーは、現行のモデルによって推測されるrib遺伝子発現の負の制御因子としてのその機能以外にも、全長rib mRNAの存在量に強い影響力を有することが発見され、5’mRNA安定化機能が示唆された。ribリーダー配列中に特定の変異/欠失を導入することは、リボフラビン生産の増大をもたした。
【0013】
したがって連続的rib遺伝子の発現に対する抑制効果を緩めまたは低下させるようにribリーダーが改変されており、完全な状態の全長rib mRNA転写物の蓄積をもたらす、変異リボフラビン産生株を提供することで、リボフラビン生産の収率および/または生産性を改善することが本発明の目的である。したがって適切な宿主細胞中への改変ribリーダー、すなわち野生型ribリーダーと比較して改善されたribリーダーの導入は、例えばribAなどの連続的rib遺伝子の安定性のより高い全長rib mRNAへのより高い転写速度、そしてribオペロンのさらなる調節解除、すなわちより調節解除されたリボフラビン生産をもたらす。
【0014】
特に(i)ターミネーター配列またはその機能的部分と、(ii)ターミネーターの5’隣接領域とを含む、ribリーダーの3’末端の欠失は、特異的にリボフラビン生産の収率および/または生産性を改善するのに効果的であることが分かった。RFN因子の3’末端からターミネーターの3’末端までのDNA配列全体が除去されている改変ribリーダーは、リボフラビン生産を改善するのに特に有用である。
【0015】
さらにribO突然変異と、ターミネーター配列またはその機能的部分を含むribリーダー3’末端の欠失との組み合わせは、リボフラビン生産の収率および/または生産性を改善するのに特に効果的であることが分かった。これはターミネーターの5’隣接領域を含めることで、さらに改善し得る。意外にも(ribO突然変異との組み合わせなしでの)ターミネーター配列全体またはその機能的部分どちらかの欠失または改変は、5’隣接領域と共にターミネーターを含むより大きな欠失、またはターミネーター欠失とribO突然変異との組み合わせとは対照的に、リボフラビン生産に強力な影響を及ぼさない。事実上、ターミネーター配列またはその機能的部分のみの欠失または改変は、リボフラビン生産の調節解除において、古典的ribO突然変異よりも明らかに効果が小さかった。1つ以上のribO突然変異と組み合わさって、RFN因子の3’末端からターミネーターの3’末端までのDNA配列全体が除去されている改変ribリーダーは、リボフラビン生産を改善する上で特に有用である。これはRFN因子のより大きな部分を除去すれば、例えばRFN因子の3’末端のおよそ5分の1を除去すれば、なおも改善し得る。
【0016】
したがって本発明は、
(a)配列番号42に記載されるヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド、
(b)(a)の断片または誘導体を含んでなるribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(c)その相補鎖がストリンジェントな条件下で(a)〜(b)のいずれか1つで定義されるポリヌクレオチドとハイブリダイズするribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(d)(a)〜(b)のいずれか1つで定義されるポリヌクレオチドと80、85、90、95または98%など少なくとも70%同一であるribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、および
(e)(a)〜(d)で定義されるポリヌクレオチドの相補鎖であるポリヌクレオチド
からなる群から選択される、改変または変異ポリヌクレオチドを対象とし、前記ポリヌクレオチド、特に配列番号42に記載されるポリヌクレオチドは改変/突然変異を含んでなり、完全な状態の全長rib mRNA転写物の蓄積が非改変ribリーダーと比較して少なくとも5%増大して、さらにリボフラビン生産増大がもたらされ、前記改変/突然変異は、
(i)ターミネーターおよびその5’隣接領域を含むribリーダーの3’末端における1つ以上の突然変異、および
(ii)ribリーダーの3’末端の1つ以上の突然変異を伴う1つ以上のribO突然変異
からなる群から選択される。
【0017】
例えば配列番号42に記載される非改変ribリーダーは、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)から単離された配列番号1に記載される非改変ribオペロンの一部であってもよい。本発明のribリーダー配列は、天然のribプロモーター、または例えば配列番号55または56に記載されるPspo15またはPvegなどの構成的プロモーターのどちらかと共に使用してもよい。
【0018】
ribリーダーに導入されてリーダーの3’末端の改変と組み合わせられ、本明細書で定義される改変ribリーダー配列をもたらすribO突然変異は、Kilら(1992年)によって定義/特性決定されたRFN因子を含むribリーダーの5’末端のあらゆる箇所に位置して、本明細書で定義される非改変ribリーダーを有する株と比較して改善されたリボフラビン生産をもたらす、あらゆる突然変異(塩基置換、欠失、挿入)を指す。
【0019】
特に本発明は改変ribリーダーに関し、それは3’部分で改変されており、Kilら(1992年)によって定義されるものに相当する1つ以上のribO突然変異を含有し、または例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個のribO突然変異、すなわち例えば位置31、39、40、41、55、85、86、88、93、116、121、および128から選択される、配列番号42に記載される位置に相当する位置の置換などの1つ以上をさらに含有する。好ましくはribO突然変異は、T31G、G39A、G40A、G41A、C55T、C85T、C86T、G88A、C93T、A116C、G121A、C128G、およびそれらの組み合わせから選択され、ここでヌクレオチドは配列番号42に記載される位置に相当する。5’末端の天然ribプロモーターを含む、このようなribO突然変異を有するribリーダー配列の例は、配列番号45、46、および47に記載される。これらのribO突然変異はまた、例えばそれぞれ配列番号57、58または60、および配列番号59に記載される、例えばPvegまたはPspo15などの構成的プロモーターと融合してもよい。好ましくは本明細書で定義される改変ribリーダーは、例えば配列番号42に記載される位置39、40、41、85または121に相当する位置に位置するような単一ribO突然変異を含んでなり、より好ましくはribO突然変異はG39A、G40A、G41A、C85T(「RK41」と称される)、G121A(「RK1a」と称される)、およびそれらの組み合わせから選択される。前記ribO突然変異は、本明細書で定義されるribリーダーの3’末端の突然変異とさらに組み合わせられる。
【0020】
特定の実施態様では、本発明の改変ribリーダーは、ribリーダーの3’末端における突然変異と組み合わさった、1つを超えるribO突然変異を有する。好ましいのは3つのribO突然変異の組み合わせ、より好ましくは配列番号42の位置39、40、および41に相当する位置にある、なおもより好ましくは「triple ribO」と称されるribO突然変異G39−G40A−G41Aである。ribリーダーに導入されるこのようなtriple ribO突然変異の一例は配列番号47に記載される(天然のribプロモーターを含む)。これらのribO突然変異はまた、例えば配列番号57に記載される天然の構成的プロモーターを置換することで、構成的プロモーターと融合してもよい。
【0021】
前記ribO突然変異は、ribリーダーの3’末端の改変とさらに組み合わせられる。ribリーダーの3’末端におけるこのような改変は、少なくともターミネーターまたはその機能的部分の欠失を含んでもよく、本発明の改変ribリーダーがもたらされ、それを適切な宿主細胞中に導入すると、非改変ribリーダーを有する宿主細胞と比較してリボフラビン生成の増大がもたらされる。前記3’末端における改変は、例えばターミネーターの5’隣接領域の欠失、特に例えば配列番号42のヌクレオチド166〜263または136〜263に相当するヌクレオチドなどのRFN因子の3’末端に相当するヌクレオチドの欠失などの改変をさらに含んでもよい。
【0022】
好ましい実施態様では、上述のribO突然変異と組み合わさったribリーダーの3’末端における改変は、RFN因子の3’末端(すなわちRFN因子下流に位置する全配列)とribリーダーの3’末端との間に位置し、配列全体またはその一部のみが除去されていてもよい。特定の一実施態様では、ターミネーターまたは少なくともその機能性部分が前記欠失に含まれる。
【0023】
枯草菌(B.subtilis)から単離されるターミネーター配列の一例は配列番号39に記載され、それはribリーダーから除去されて、天然のribプロモーターを含む、例えば配列番号51または80に記載される改変ribリーダーがもたらされるかもしれない。天然プロモーターはまた、例えばPspo15およびPveg(例えば配列番号63または64参照)などの構成的プロモーターによって置換されていてもよい。したがって配列番号42のヌクレオチド231〜263に相当するヌクレオチド中で、本発明の改変ribリーダーが除去されていてもよく、すなわち上で定義されるribO突然変異のいずれかと組み合わさって、「del terminator」と称される(隣接領域のない)ターミネーター全体が欠失していてもよい。
【0024】
ターミネーターの機能性部分の欠失は、1つ以上のステムループおよび/またはその隣接領域の欠失を含んでもよい。上に明記されているribO突然変異と組み合わさって、ターミネーターの機能性部分のみが除去されているribリーダー配列の例は、配列番号48、49、50、77、78、および79に記載される。天然のribプロモーターはまた、例えばPspo15およびPvegなどの構成的プロモーターによって置換されていてもよい(例えば配列番号61または62参照)。配列番号42に記載される枯草菌(B.subtilis)ribオペロンを参照配列にすると、前記機能性部分欠失は、「del stem loop−right」と称されるヌクレオチド250〜257に相当するヌクレオチド欠失、「del stem loop−left」と称されるヌクレオチド231〜238に相当するヌクレオチド欠失、または「del flank−right」と称されるヌクレオチド239〜263に相当するヌクレオチド欠失を含んでもよい。
【0025】
上に明記されているribO突然変異と組み合わさった、ターミネーターおよび5’隣接領域が除去されている改変ribリーダー配列の例は、配列番号52、53、81、および82に記載されている。天然のribプロモーターはまた、例えばPspo15およびPveg(例えば配列番号65参照)などの構成的プロモーターによって置換されていてもよい。配列番号42に記載される枯草菌(B.subtilis)ribオペロンを参照配列にすると、本発明の改変ribリーダーは、「SWITCH deletion」と称される配列番号42のヌクレオチド166〜263に相当するヌクレオチドの欠失、または「del mro175」と称されるヌクレオチド136〜263に相当するヌクレオチドの欠失を含有してもよく、それは上のribO突然変異のいずれかと組み合わせられる。
【0026】
本明細書に記載される改変ribリーダー配列は、ribリーダーの3’末端における突然変異/改変と組み合わさった、上で定義されるribO突然変異を有し、3’末端の改変は、例えば完全なターミネーターの欠失、機能性部分のターミネーターの欠失、またはターミネーターならびに5’隣接領域の欠失から選択されてもよい。
【0027】
さらに、そして本発明の一環として、本明細書で定義される改変ribリーダー配列は、ribリーダーの3’末端に突然変異/改変を有し、改変は、ターミネーターならびにその5’隣接領域の欠失から選択されてもよく、それは例えばターミネーターの最大60、70、80、90または100ヌクレオチド上流、特に64または94ヌクレオチド上流、好ましくは配列番号42のヌクレオチド166〜263または136〜263に相当するヌクレオチドなどである。
【0028】
特定の好ましい一実施態様では、上で定義される改変ribリーダーを有する宿主細胞は、例えばribO突然変異T31G、G39A、G40A、G41A、C55T、C85T、C86T、G88A、C93T、A116C、G121A、C128G、およびそれらの組み合わせなど、Kilら(1992年)によって定義される既知のribO変異株と比較して、培養養液中に50、100、200、300、400、500、600、700、800mg/L以上のリボフラビン、または1g/Lよりなおも多量のリボフラビンなど、25mg/Lを超えるリボフラビンを蓄積し、ヌクレオチドは、配列番号42に記載される位置に相当する。当業者はこれらの量が、例えば培養条件、宿主株および/または基質次第で変動することを知っている。
【0029】
一実施態様では、本発明の改変ribリーダーは、ターミネーター全体の欠失、SWITCH deletionまたはdel mro175(上記参照)から選択される3’末端欠失と組み合わさった、枯草菌(B.subtilis)ribオペロン(配列番号42)中のRK1a、RK41またはtriple ribOから選択されるribO突然変異に相当する、ribO突然変異を含有する。好ましい組み合わせは、RK1aとdel terminator、SWITCH deletion、またはdel mro175である。RK41とdel terminator、SWITCH deletion、またはdel mro175との組み合わせもまた好ましい。さらに好ましいのは、triple ribOとdel terminator、SWITCH deletion、またはdel mro175との組み合わせである。より好ましくは本発明の改変ribリーダーは、RK41とdel terminator、RK41とSWITCH deletion、triple ribOとdel mro175との組み合わせを含有する。なおもより好ましいのは、例えばPspo15およびPveg(例えば配列番号67、68、69、70または71参照)などの構成的プロモーターと融合した前記改変ribリーダー配列である。
【0030】
本発明に従った改変ribリーダーはまた、mRNA安定化因子の導入を通じた改変を含んでもよい。前記因子は、rib遺伝子のプロモーターとコード配列との間に導入してもよい。この様な因子の例としては、配列番号43(いわゆるaprE mRNA安定化因子)または配列番号44(いわゆるgrpE mRNA安定化因子)に記載されるもの、そして好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、それにハイブリダイズする配列が挙げられる。
【0031】
核酸配列、すなわち本発明の改変ribリーダー配列は、構成的または誘導性プロモーターのどちらであってもよく、適切なプロモーターと作動可能なように結合してもよい。プロモーターは、天然のプロモーター、または天然ではリボフラビン生合成に関与するそれぞれの遺伝子に元々関係のないプロモーターのどちらかである。当業者は、どのように適切なプロモーターを選択するかを知るであろう。有用な完全プロモーターの例は文献にあり、特に例えば欧州特許第405370号明細書を参照されたい。
【0032】
したがって好ましい実施態様では、本発明は、
(a)配列番号65、67、68、69、70または71に記載される(改変)ヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド、
(b)その相補鎖がストリンジェントな条件下で(a)で定義されるポリヌクレオチドとハイブリダイズする改変ribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(c)(a)で定義されるポリヌクレオチドと80、85、90、95または98%など少なくとも70%同一である改変ribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、および
(d)(a)〜(c)で定義されるポリヌクレオチドの相補鎖であるポリヌクレオチド
からなる群から選択される、改変または変異ポリヌクレオチド(ribリーダー配列)に関し、
前記ポリヌクレオチド、特に配列番号65、67、68、69、70または71に記載される配列は改変または変異配列と称され、適切な宿主細胞中への導入に際して、対応する非改変配列を有する細胞と比較して、完全な状態の全長rib mRNA転写物の蓄積が少なくとも5%増大する。
【0033】
本明細書での用法では、「ribリーダー配列」という用語は、1つ以上の下流rib遺伝子と関連付けられており、連続的rib遺伝子発現に影響を与える非翻訳制御因子を含有する、あらゆるDNA配列を指す。これらの制御因子は、典型的に(i)DNA配列3’末端のターミネーター、(ii)抗ターミネーター、および(iii)ターミネーター上流のRFN結合部位を含んでなる。枯草菌(Bacillus subtilis)から知られているように、ribリーダーは、オペロンribG中の第1の遺伝子の転写開始と翻訳開始コドンとの間のribオペロンの5’領域に位置する約300個のヌクレオチドを包含する。枯草菌(B.subtilis)のribリーダー中のターミネーター配列は、ヌクレオチド231と263の間に位置する(図1参照)。このようなribリーダー配列は、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)などのその他の真正細菌、特に炭疽菌(B.anthracis)、B.セレウス(B.cereus)、B.ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、ジフテリア菌(C.diphteriae)およびC.グルタミカム(C.glutamicum)、緑膿菌(P.aeruginosa)、P.プチダ(P.putida)またはP.シリンガエ(P.syringae)でさらに同定されている(参照によって本明細書に援用するVitreschakら,Nucleic Acid Res 30,3141〜3151頁,2002年の表1を参照されたい)。
【0034】
「RFN因子」という用語は、本明細書での用法では、ribリーダー配列内の高度に保存されたDNA配列を指す。mRNAに転写後、RFN因子は、5個のヘアピンがある保存された構造に折り畳まれ、FMNの結合部位を形成し得る。可能なRFN因子は、非コードRNAファミリーに相当する複数配列アラインメントおよび共分散モデルの集合であるRFAMを使用して、同定され得る。(Griffiths−Jonesら:Rfam:an RNA family database.Nucleic Acids Res2003年,31:439〜441頁;http://www.sanger.ac.uk/cgi−bin/Rfam/getacc?RF00050で利用できる)。様々な細菌のゲノム中のRFN因子の例は、Gelfandら,Trends Genet.15,439〜442頁,1999年によって提供される。異なる生物からのRFN因子のヌクレオチド配列をはじめとする概要は、Vitreschakら,Nucleic Acid Res30,3141〜3151頁,2002年の図2にある。Mironowら,Cell 111(5):747〜56頁,2002年の定義によれば、枯草菌(B.subtilis)のribリーダー配列内のRFN因子は、ヌクレオチド22と165の間に位置する(図1または配列番号42を参照されたい)。Vitreschakら,2002年の図2に示すアラインメントの助けを借りて、当業者はこのようなRFN因子を含有する生物中に改変ribリーダーを作り出し、リボフラビン生産増大をもたらすことができる。
【0035】
「非改変ribリーダー」または「非改変ポリヌクレオチド」、および「野生型ribリーダー」または「野生型ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で同義的に使用される。非改変ribリーダーまたは非改変ポリヌクレオチドは、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で配列番号42に記載される配列とハイブリダイズする、あらゆるポリヌクレオチドを含んでもよく、そのためにはribリーダーの抑制的効果を軽減するため、rib遺伝子mRNAの安定性を増大させるため、より調節解除されたribオペロンをもたらすため、および/または所定の微生物中でリボフラビンの生産を増大させるために、比活性の増大が望ましい。次にこれらの配列を本発明に従った活性増大がある変異ribリーダー配列をデザインするための出発点として使用する。「野生型」は、本発明の文脈では、本発明の教示のいずれかによってより活性にでき得れば、天然由来ならびに合成配列の変異型の双方の配列を含んでもよい。特にこのようなポリヌクレオチドは原核生物起源であり、好ましくは細菌起源、特に例えばバシラス(Bacillus)、好ましくは枯草菌(Bacillus subtilis)などのグラム陽性またはグラム陰性細菌起源である。
【0036】
「改変ポリヌクレオチド」または「改変ribリーダー」、および「変異ポリヌクレオチド」または「変異ribリーダー」という用語は、本明細書で同義的に使用される。変異/改変ポリヌクレオチドまたは改変ribリーダーは、本発明の教示に従って(上の定義に従った)所定の野生型ポリヌクレオチド/ribリーダーから誘導でき、それぞれの野生型配列よりも活性がより高い(例えば所定の基質から生成するリボフラビンの増大として、またはrib mRNA安定性の増大として測定可能な)あらゆる変異型を含んでもよい。本発明の範囲では、変異体がどのようにして得られるかは関連性がない;このような変異体は、例えば部位特異的変異誘発、飽和変異誘発、ランダム変異誘発/定方向進化、細胞/生物全体の化学またはUV変異誘発、および当該技術分野で知られているその他の方法によって得られてもよい。これらの変異体はまた、例えば合成遺伝子をデザインすることで作り出してもよい。ribリーダー配列の改変、およびそれらのrib遺伝子発現に対する影響は、当業者に知られている方法によって判定し得る。例えばこれらの方法としては、レポーター遺伝子としてβ−ガラクトシダーゼを使用した、または野生型ribリーダー配列の代わりにまたはそれに加えて改変ribリーダー配列を含有する微生物の培養ブロス中へのリボフラビン分泌を使用した、アッセイが挙げられる。それぞれのmRNAレベルに対する改変ribリーダーの(ポジティブな)影響はまた、ノーザンブロット法またはリアルタイムPCRを通じて判定してもよい。
【0037】
当業者はmRNA安定化因子の導入および/または天然プロモーターの置換をはじめとして、変異/改変ribリーダー配列をどのように作り出すかを知っている。一実施態様では、あらかじめ改変されていないribリーダーへのmRNA安定化因子の導入を通じて、改変ribリーダーを作り出す。このようなmRNA安定化因子の導入のための有用な方法の一例を図2に示す。
【0038】
前記変異/改変ribリーダー配列作成は、例えば宿主生物が変異ribリーダーを生成するように、それを本明細書に記載されるように遺伝的に改変することで達成されてもよく、rib遺伝子発現に対する抑制効果は非改変ribリーダーと比較して緩和され、または低下しており、それは次に完全な状態の全長rib mRNA転写物の蓄積の増大、ひいてはリボフラビン生産の効率および/または収率の増大をもたらす。したがって改変ribリーダーによって、ribオペロンは非改変ribリーダーを有する株と比較して、制御がより緩やかになりまたはより高度に調節解除される。
【0039】
「改善された活性」または「強化された活性」とは、本明細書での用法では、リボフラビン産生微生物中のribリーダーの抑制効果の(全体または部分的)緩和または低下/制御低下と理解すべきである。したがって本発明の目的では、活性が増大している改変ribリーダーは、非改変ribリーダーと比較してrib遺伝子転写に対する抑制効果がより低く、ribオペロンの調節解除をもたらす。さらに本明細書で定義される活性が改善された改変ribリーダーは、ノーザンブロット法またはリアルタイムPCRによる測定で、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%、200%または500%以上にさえ増大した完全な状態の全長rib mRNAの蓄積をもたらす。これはribリーダー抑制/制御が最小化された際のリボフラビン生産増大を通じて、または全長転写物のmRNA濃度またはrib遺伝子から転写されたリボフラビン生合成酵素濃度の測定を通じて、(間接的に)測定し得る。改変ribリーダーは、野生型ribリーダーと比較して、rib遺伝子発現に対して少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%、200%または500%以上にさえ抑制/制御が低下している。したがって活性が改善された改変ribリーダーとは、本明細書で定義される非改変ribリーダーと比較して、調節解除レベルが少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%、200%または500%以上にさえ増大しているribリーダーを指す。
【0040】
「mRNA安定化因子」という用語は、本明細書での用法では、例えばそれぞれの遺伝子の転写開始点の下流などの5’非翻訳領域への導入に際して、前記mRNA安定化因子を含んでなるそれぞれの遺伝子から転写されたmRNAに安定性増大を提供できる、DNA配列を指す。mRNA安定化因子は好ましくは1つ以上のステムループを含有するが、またステムループを全く含有しなくてもよい。
【0041】
好ましくはリボフラビン生産に関与する、1つ以上の標的遺伝子からのmRNA転写物の安定性増大をもたらす、1つ以上のステムループを形成できるあらゆる核酸配列は、本発明の範囲内であってもよい。mRNAの安定化はまた、強力リボソーム結合部位(RBS)を通じて可能かもしれず、それは必ずしもループを形成しなくてもよい。
【0042】
上で定義されるmRNA安定化因子は、あらゆる長さであってもよいが、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド、最も好ましくは39〜87ヌクレオチドからなり、好ましくは1つ以上のステムループ、特に1つまたは2つのステムループを含んでなる。ステムは、少なくとも4塩基対、好ましくは少なくとも8、10、12、15塩基対(ミスマッチヌクレオチド/内部ループおよび/またはバルジループが恐らく存在する)からなってもよく、ループは例えば3〜30の非結合ヌクレオチド、好ましくは4、6、8、10、11、14、15、25以上のヌクレオチドからなってもよい。内部ループの長さは、好ましくは2、4、6、8、10、12非結合ヌクレオチドである。例えば1、2または6個でさえある非結合ヌクレオチドから構成される、1つ以上のバルジループが存在してもよい。計算されるステムループの熱力学的安定性(ΔG)は、Zukerによって開発されたアルゴリズム(2003年,Nucleic Acids Res.31:3406〜3415頁)に従って計算してもよい。一実施態様では、計算される熱力学の安定性は−2.8kcal/mol以下、好ましくは−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12、−15、−20kcal/mol以下である。本発明の別の実施態様では、mRNA安定化因子はループを全く含まなくてもよい。
【0043】
rib mRNA転写物の安定性または完全性は、例えばAllenbyら,Microbiology,150,2619〜2628頁(2004年);またはSharpおよびBechhofer,Mol.Microbiol.57,484〜495頁(2005年)に記載されるようなノーザンブロット法および/またはリアルタイムPCR安定化を使用した、例えばmRNA半減期の判定によって判定してもよい。野生型、すなわち本発明の改変ribリーダーを含有しないribオペロンから転写されたmRNAの半減期と比較して、前記mRNAの半減期が少なくとも1%、2%、5%、10%、25%、50%、75%、100%、200%または500%以上にさえ増大すれば、本明細書での用法では、mRNAの安定性または完全性は増大している(またはmRNA分解が低下/ブロックされている)。
【0044】
テンプレートDNAは、リボフラビン生産のために使用されるのと同じまたは異なる宿主細胞に由来してもよい。さらに反応のためのテンプレートは、本発明に従ったポリヌクレオチドを含んでなることが知られている、または疑われる株から調製されたmRNAの逆転写によって得られるcDNAであってもよい。PCR産物をサブクローンニングし配列決定して、増幅された配列が本明細書に記載される新たな核酸配列の配列、またはその機能的同等物に相当することを確実にしてもよい。さらに本発明に従った核酸配列は、当該技術分野で良く知られている方法を使用して、完全にまたは部分的に合成してもよい。
【0045】
本発明はまた、ポリヌクレオチド(ribリーダー配列)と、リボフラビン生産のためのそれらの使用にも関し、その相補鎖はストリンジェントな条件下で本明細書で定義されるポリヌクレオチドとハイブリダイズし、またそれは完全な状態の全長rib mRNA転写物の蓄積を改善できる。
【0046】
本発明はまた、ポリヌクレオチド、およびそれらのリボフラビン生産のための使用にも関し、前記ポリヌクレオチドは、本明細書で定義されている改変ribリーダー活性を有するポリヌクレオチドと少なくとも70%同一である。一実施態様では本発明の核酸は、配列番号42、55、56、67、68、69、70、71に記載されるポリヌクレオチドまたはその補体と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一である。
【0047】
本発明はまた、プライマー、プローブ、および断片にも関し、それらは本発明に従ったDNAを増幅または検出するのに使用してもよく、このようなribリーダー配列を有する関連微生物種または科を同定するのに使用してもよい。
【0048】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、およびポリヌクレオチドまたは前記ベクターで遺伝子改変された微生物にも関する。
【0049】
本発明はまた、本明細書で定義される改変ポリヌクレオチドを有する微生物を作り出す方法、すなわち完全な状態の全長rib mRNA転写物の蓄積を増大させるために適切な微生物を遺伝子操作する方法、およびリボフラビン生産の収率および/または効率を改善しおよび/または高めるためのそれらの使用にも関する。
【0050】
本明細書での用法では、DNA配列の導入は、例えば宿主細胞染色体への形質転換、結合、または形質導入によるDNA配列の付加または挿入であってもよい。前記付加または挿入はDNA組み換えによって起きてもよく、それは染色体DNAヌクレオチドの除去または欠失をもたらしても、もたらさなくてもよい。それによって宿主細胞、例えば微生物へのDNA配列導入を特に部位特異的導入により達成する方法については当該技術分野で良く知られており、例えばSambrookら,1989年,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.;およびAusubelら(編),1995年,Current Protocols in Molecular Biology,(JohnWiley & Sons,N.Y.)に記載される。
【0051】
適切な宿主細胞としては、所定の炭素源をリボフラビンに転換できるような、リボフラビン産生能のある微生物細胞が挙げられ、それらは例えば非改変リーダーまたは同等物またはその相同体を含む非改変ribオペロンを有し(次にそれは本明細書に記載されるようなリボフラビン生産増大をもたらすように変異される)、またはその中に前記ribオペロン/ribリーダーの修正バージョンまたはその同等物が導入される。次にこのような細胞を「組み換え細胞」または「形質転換細胞」と称する。このような非改変ribオペロン/ribリーダーまたはその同等物を有する適切な微生物は、野生型株として、古典的変異誘発と選択法によって得られる変異株として、または組み換え株として、例えばグラム陰性およびグラム陽性細菌などの細菌から選択されてもよい。RFN因子を有する適切な株は、Vitreschakら,Nucleic Acid Res 30,3141〜3151頁,2002年の表1および図2に列挙される。このような細菌の例としては、バシラス(Bacillus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、クロストリジウム(Clostridium)、デイオノコッカス(Deionococcus)、サーマス(Thermus)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)、クロロフレクサス(Chloroflexus)、およびサーモモノスポラ(Thermomonospora)が挙げられる。好ましくは微生物または宿主細胞は、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・セレアス(Bacillus cereus)、バシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バシラス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)および黄色ブドウ球菌(Streptococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis);またはストレプトミセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、サーモモノスポラ・フスカ(Thermomonospora fusca)、デイオノコッカス・ラジオデュランス(Deionococcus radiodurans)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、およびクロロフレクサス・アウランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)のような関連性がより低い生物からなる群から選択される。より好ましいのは枯草菌(B.subtilis)、特に枯草菌(B.subtilis)1A747または枯草菌(B.subtilis)168である。例えば本明細書で開示される枯草菌(B.subtilis)からの調節解除/改変ribリーダーを使用して、上述のその他の微生物の1つの中の天然/野生型ribリーダー置換することも、または枯草菌(B.subtilis)のribオペロンの前で上述の別の生物の改変ribリーダーを使用することもまた、本発明の範囲内である。
【0052】
前記改変ribリーダーを有するこのような微生物はまた、遺伝子改変または組み換え微生物または組換え的に生成された/遺伝子改変宿主細胞と称される。
【0053】
本発明のために使用し得る微生物は、ドイツ国ブラウンシュヴァイクのInhoffenstrasse 7B,D−38124のDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)、米国バージニア州マナッサス20108 P.O.Box 1549の米国微生物系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)、米国イリノイ州ピオリアのAgricultural Research Culture Collection(NRRL)、〒292−0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8の製品評価技術基盤機構(NITE)生物資源センター(BRC)(かつての〒532−8686日本国大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号の財団法人発酵研究所(IFO))、または米国オハイオ州コロンバス43210のオハイオ州立大学(The Ohio State University)のBacillus Genetic Stock Center(BGSC)などの異なる供給元から公的に入手可能かもしれない。
【0054】
本発明との関連で上述の微生物はまた、国際原核生物命名規約(International Code of Nomenclature of Prokaryotes)によって規定される、同一の生理学的特性を有する種の異名または基礎異名を含むものと理解される。微生物命名法は本明細書での用法では、(優先出願の提出日において)国際微生物連合(International Union of Microbiological Societies)のInternational Committee on Systematics of Prokaryotes and the Bacteriology and Applied Microbiology Divisionにより正式に認可されて、その機関紙媒体であるInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(IJSEM)にて公開されたものである。
【0055】
本発明は改変微生物を対象とし、前記改変は、例えばグルコースのような基質からのリボフラビンの収率、生産および/または効率の増大をもたらす。これは本明細書に記載されるようにribリーダーの活性を増大させることで、すなわち制御レベルを低下させることで、実施してもよい。さらに改変がリボフラビン生産の収率、生産および/または効率に直接的影響を及ぼしさえすれば、本発明の微生物はさらなる改変を有してもよい。
【0056】
したがって一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるような改変ribリーダーを有し、例えばribオペロンの天然のプロモーターが、例えばPspo15またはPvegなどの強力(構成的または誘導性)プロモーターによって置換されているような追加的改変を有する微生物を対象とする。このような強力プロモーターの導入は、天然プロモーター下流の改変ribリーダーを有する微生物と比較して、少なくとも50%、75%、100%、200%、250%、300%、350%、500%または1000%さえ超える、リボフラビン生産の増大をもたらす。これは1つ以上のrib遺伝子、特にribAの過剰発現によって、または枯草菌(B.subtilis)RB50株で実施されたような(例えば欧州特許第405370号明細書を参照されたい)宿主細胞中のribオペロンの複数コピーの導入によって、さらに増大されてもよい。強力プロモーターと融合した、本明細書で定義されるribリーダー中の改変を有するように微生物を遺伝的に改変することで、リボフラビン生産は、枯草菌(B.subtilis)RB50中でのリボフラビン生産と比較して少なくとも100%、200%、250%、500%、または750%さえ超えて増大し得る。任意に強力プロモーターおよび/またはribオペロンの複数コピーの導入と組み合わさった、本明細書で定義される改変ribリーダーを有する微生物は、例えばビオチンについて欧州特許第1186664号明細書で記載されるような栄養要求性の導入を通じたリボフラビン生産からの成長の切り離しにより、および/または例えば国際公開第07/051552号パンフレットで記載されるような改変トランスケトラーゼ遺伝子の導入をさらに組み合わせることで、さらに改変してもよい。
【0057】
本発明は、(i)ribリーダーの3’末端の改変と共に1つ以上のribO突然変異を有し、または(ii)ターミネーターとその5’隣接領域の欠失を有する、本明細書で定義される改変ribリーダーを提供し、前記改変ribリーダーは例えばPspo15またはPvegなどの強力プロモーターに癒合する。
【0058】
リボフラビン生産のために特に好ましい株は、枯草菌(B.subtilis)である。より好ましい株は、強力プロモーターPspo15で改変されてrib遺伝子の転写を増強する、ribオペロンをコードするpRF69の複数(n)コピー(例えば約5〜約20コピー)を含有する枯草菌(B.subtilis)RB50::[pRF69]である(リボフラビン生産をもたらす株の構築および培養条件については、例えば欧州特許第405370号明細書およびPerkinsら,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.,22:8〜18頁,1999年を参照されたい)。枯草菌(B.subtilis)RB50およびプラスミドpRF69は、それぞれNRRL(登録番号B18502)およびATCC(登録番号ATCC68338)から入手できる。
【0059】
さらなる本発明の目的に従って、上で定義される改変ポリヌクレオチド、またはこのようなポリヌクレオチドで遺伝子改変された微生物のリボフラビン生産のための使用が提供される。
【0060】
本発明はまた、微生物中で改変ribリーダーを含む(改変)ribオペロンを発現させる方法、上で定義される(改変)ポリヌクレオチドを微生物中で生産する方法、およびリボフラビンを産生できるこのような改変微生物を生産する方法にも関する。これらの全ての方法は微生物を改変するステップを含んでなってもよく、「改変する」とはここでの用法では、リボフラビンの収率および/または生産性および完全な状態の全長rib mRNAの蓄積の双方が、野生型微生物と比較して改善され得るようなやり方で「遺伝的に改変する」過程を包含する。「改変する」という用語はまた、本明細書に記載されるような改変ポリヌクレオチド、特に改変ribリーダーを作成することも含む。本明細書での用法では「リボフラビンの改善された収率」とは、野生型/非改変微生物、すなわち遺伝的に改変されていない微生物と比較して、少なくとも50%、75%、100%、200%、250%、300%、350%、500%または10000%または100000%(上記参照)さえも超える、増大を意味する。
【0061】
「遺伝子改変」または「遺伝的に改変された」という用語は、生きている生物中における遺伝物質構造の化学的改変を意味する。それは組み換えDNAの生成と使用を伴う。より具体的には、それは天然生物から遺伝子改変または改変生物を描写する(delineate)ために使用される。遺伝子操作は、プラスミド、ウィルス、またはその他のベクターを使用した、例えば遺伝子置換、遺伝子増幅、遺伝子破壊、付加、挿入、欠失、形質移入、形質転換などの当該技術分野で知られているいくつかの技術によって行ってもよい。遺伝子改変生物、例えば遺伝子改変微生物はまた、例えば組み換え微生物など、組み換え生物と称されることが多い。遺伝子改変の微生物は、上で定義される改変ribリーダーを有する。
【0062】
本発明に従って、リボフラビンの収率、生産および/または生産効率が改善されるように、本発明に記載される改変ribリーダーを有する、遺伝子改変/組換え的に生成された宿主細胞(組み換え細胞または形質転換細胞とも称される)が提供される。宿主細胞は、所定の炭素源からリボフラビンを産生できる微生物、特にバシラス(Bacillus)、好ましくは枯草菌(B.subtilis)から選択されてもよい。
【0063】
「形質転換細胞」または「組み換え細胞」とは、完全な状態の全長rib mRNAの蓄積の増大および/または改善をもたらす本発明に従った核酸が、組み換えDNA技術の手段によってその中に(またはその祖先中に)導入されている細胞である。それはまた、前記細胞に既在の野生型ribリーダー中に、1つ以上の突然変異を導入することも含む。適切な宿主細胞としては、例えば上で定義されるように所定の炭素源をリボフラビンに転換するような、リボフラビンを産生できる微生物の細胞が挙げられる。前記発酵方法を実施するのに有用な株は上に列挙され、当該技術分野で知られている。
【0064】
本発明の核酸は、好ましくは単離形態で提供され、好ましくは均質になるよう精製される。
【0065】
「単離された」という用語は、その元の環境(例えばそれが天然であれば天然環境)から物質が取り出されることを意味する。例えば生きている微生物中に存在する天然ポリヌクレオチドは単離されていないが、自然システム中に共存する物質の一部または全部から分離された同じポリヌクレオチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であることができ、および/またはこのようなポリヌクレオチドは組成物の一部であることができてなおも単離され、このようなベクターまたは組成物はその天然環境の一部でない。
【0066】
本明細書での用法では「遺伝子」という用語は、染色体DNAから単離されてもよい核酸分子を指し、それはタンパク質、例えば枯草菌(B.subtilis)リボフラビン生合成経路からの酵素などのリボフラビン合成に関与するタンパク質をコードする読み取り枠を含む。
【0067】
遺伝子は、コード配列と、例えば誘導されるポリペプチドの適切な発現および安定化に重要なプロモーター領域、制御領域、およびターミネーター領域などの遺伝子コード領域の3’および5’末端に位置する非翻訳配列などの非コード配列とを含んでもよい。
【0068】
本明細書での用法では、「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)と、RNA分子(例えばmRNA)と、ヌクレオチド類似体を使用して作り出されたDNAまたはRNA類似体とを含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体または誘導体(例えばイノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドを使用して、例えば塩基対合能力が改変されており、またはヌクレアーゼ抵抗性が増大している核酸を調製してもよい。
【0069】
特に断りのない限り、本明細書でDNA分子を配列決定して判定された全てのヌクレオチド配列は、自動化DNA配列決定装置を使用して判定された。したがってこの自動化アプローチによって判定されたあらゆるDNA配列について当該技術分野で知られているように、本明細書で判定されたあらゆるヌクレオチド配列はいくつかの誤りを含有するかもしれない。自動化によって判定されたヌクレオチド配列は、配列決定されたDNA分子の実際のヌクレオチド配列と、典型的に少なくとも約90%同一、より典型的には少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%同一である。実際の配列は、当該技術分野で良く知られている手動DNA配列決定法をはじめとする、その他のアプローチによってより正確に判定してもよい。
【0070】
当業者はこのような誤って同定された塩基を同定でき、このような誤りをどのように修正するかを知っている。
【0071】
本発明に従ったポリヌクレオチドは、それらが改変または非改変であるかどうかに関わりなく、ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして使用してもよい。さらに適切な宿主細胞として、バシラス(Bacillus)と近縁関係にあり、上述のようであるその他の生物において、相同的なribリーダー配列の機能または活性を高めおよび/または改善するための、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドの使用もまた含まれる。本明細書での用法では、「相同的なribリーダー配列」という用語は、Vitreschakら,Nucleic Acid Res 30,3141〜3151頁,2002年の図2に記載される異なる生物からのribリーダー配列を包含し、異なるRFN因子は位置合わせされている。この位置合わせによって、当業者は、本明細書に記載される列挙された生物中で改変ribリーダー配列を作り出すために、枯草菌(B.subtilis)に由来する本明細書に記載されるものに相当する、ribリーダーの部分を容易に同定し得る。
【0072】
本発明はまた、例えば配列番号42、45、46、47、48、49、50、51、52、53、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82に記載され、好ましくは配列番号42、67、68、69、71、70から選択されるポリヌクレオチドなどのストリンジェントな条件下、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能な単離されたポリヌクレオチドにも関する。有利には、このようなポリヌクレオチドは、リボフラビン産生能のある微生物、特に枯草菌(Bacillus subtilis)から得られてもよい。
【0073】
本明細書での用法では、「ハイブリダイズする」という用語は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、なおもより好ましくは少なくとも約85%〜90%、最も好ましくは少なくとも95%互いに相同的なヌクレオチド配列が、その下で典型的に互いにハイブリダイズしたままである、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件について記述することが意図される。
【0074】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中約45℃でのハイブリダイゼーションと、それに続く1×SSC、0.1%SDS中50℃、好ましくは55℃、より好ましくは60℃、なおもより好ましくは65℃での1回以上の洗浄である。
【0075】
高度にストリンジェントな条件としては、ジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブなどの標識DNAプローブを使用した2〜4日間など数日間にわたる42℃でのインキュベーションと、それに続く2×SSC、0.1%SDS中、室温で1回以上の洗浄、および0.5×SSC、0.1%SDSまたはO.1×SSC、0.1%SDS中65〜68℃での1回以上の洗浄が挙げられる。特に高度にストリンジェントな条件としては、(例えばドイツ国マンハイム68298の有限責任会社ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics GmbH)からのDIG標識システムを使用して調製された)DIG標識DNAプローブを使用した、100μg/mlのサケ精子DNA添加または非添加のDigEasyHyb溶液(有限責任会社ロシュ・ダイアグノスティックス)、または50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、0.02%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%N−ラウロイルサルコシン、および2%ブロッキング試薬(有限責任会社ロシュ・ダイアグノスティックス)を含んでなる溶液などの溶液中における、42℃で2時間〜4日間のインキュベーションと、それに続く2×SSCおよび0.1%SDS中室温での5〜15分にわたる2回のフィルター洗浄、そして次に0.5×SSCおよび0.1%SDSまたはO.1×SSCおよび0.1%SDS中65〜68℃での15〜30分にわたる2回の洗浄が挙げられる。
【0076】
当業者は、ストリンジェントなそして高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件では、どのような条件が適用されるかを知るであろう。このような条件に関する追加的ガイダンスは、例えばSambrookら,1989年,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.;およびAusubelら(編),1995年,Current Protocols in Molecular Biology,(John Wiley & Sons,N.Y.)など当該技術分野で容易に入手できる。
【0077】
さらに本発明に従ったヌクレオチド配列に相当し、またはそれとハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは、例えば自動化されたDNA合成機を使用して、標準合成技術によって調製してもよい。
【0078】
「相同性」または「%同一性」という用語は、本明細書で同義的に使用される。本発明の目的では、2つの核酸配列の%同一性を判定するために、配列を最適比較目的で位置合わせすることと定義される(例えば第2の核酸配列の最適位置合わせのために、第1の核酸配列中にギャップを導入してもよい)。次に対応する位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じヌクレオチドによって占められる場合、分子はその位置において同一である。2つの配列間の%同一性は、配列により共有される同一の位置数の関数である[すなわち%同一性=同一の位置数/位置総数(すなわち重複する位置)×100]。好ましくは、2つの配列は長さが同一である。
【0079】
当業者は、2つの配列間の相同性を判定するのに、いくつかの異なるコンピュータプログラムを利用できるという事実を承知している。例えば2配列間の配列比較および%同一性の判定は、数学的アルゴリズムを使用して達成されてもよい。好ましい実施態様では2つのアミノ酸配列間の%同一性は、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのどちらかと、16、14、12、10、8、6または4のgap weight、および1、2、3、4、5または6のlength weightを使用する、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.comで入手できる)のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman−Wunsch(J.Mol.Biol.48,444〜453頁,1970年)アルゴリズムを使用して判定される。当業者は、異なるアルゴリズムを使用した際に、これらの異なる全てのパラメーターがわずかに異なる結果を生じるが、2つの配列の総体的百分率の同一性は、顕著に改変されないことを理解するであろう。
【0080】
さらに別の実施態様では、2つのヌクレオチド配列間の%同一性が、NWSgapdna.CMPマトリックス、および40、50、60、70または80のgap weightと、1、2、3、4、5または6のlength weightを使用する、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.comで入手できる)中のGAPプログラムを使用して判定される。別の実施態様では、PAM120 weight residue table、gap length penalty=12、およびgap penalty=4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)(http://vega.igh.cnrs.fr/bin/align−guess.cgiで入手できる)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(CABIOS、4:11〜17頁、1989年)を使用し、2つのヌクレオチド配列間の%同一性を判定する。
【0081】
本発明の微生物を構築する、すなわちリボフラビン生産に関与する遺伝子の5’非翻訳領域に改変ribリーダーを導入する有用な方法は実施例で示され、本明細書で開示される改変ribリーダーの導入が、それぞれのrib遺伝子からのより完全な状態の全長mRNA転写物をもたらし、それはさらにリボフラビンの収率および/または生産性の増大をもたらす。組み換え微生物の選択は、例えばクロラムフェニコール、ネオマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシンなどの抗生物質耐性遺伝子の導入を通じて実施し得る。
【0082】
本発明は、改変ribリーダーを有する微生物を使用したリボフラビン発酵生産を対象とする。本明細書での用法では「リボフラビン」という用語は、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ならびに例えばリボフラビン−5−リン酸またはナトリウムリボフラビン−5−リン酸などのリボフラビン、FMNまたはFADの前駆物質、誘導体、および塩を含むが、これに限定されるものではない。リボフラビン、FMN、およびFADの前駆物質および/または誘導体は、例えばDRAPP;5−アミノ−6−リボシルアミノ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン−5’−リン酸;2,5−ジアミノ−6−リビチルアミノ−4(3H)−ピリミジノン−5’−リン酸;5−アミノ−6−リビチルアミノ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン−5’−リン酸;5−アミノ−6−リビチルアミノ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン;6,7−ジメチル−8−リビチルルマジン(DMRL);およびフラボタンパク質から選択されてもよい。「リボフラビン」および「ビタミンB2」という用語は、本明細書で同義的に使用される。リボフラビン生合成に関与する遺伝子、ならびにリボフラビンの発酵生産法、特にバシラス(Bacillus)株を使用した発酵生産法が知られている(例えば欧州特許第405370号明細書またはUllman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第7版,2007年,Vitaminsの章を参照されたい。)。これらの方法はまた、本明細書に記載される改変ribリーダー配列を含んでなる変異株を使用した、リボフラビン生産のために応用してもよい。
【0083】
本発明の方法、すなわち上述のリボフラビン製造法においては、炭素源としていくつかの基質を使用してもよい。特に適切な炭素源は、例えばD−グルコース、グリセロール、てん菜濃厚汁、デキストロース、デンプン、スクロースまたはリボースなどの3、5または6個の炭素原子からなる化合物から選択されてもよい。好ましくは炭素源は、D−グルコースである。「炭素源」、「基質」、および「生産基質」という用語は、上記方法との関連で本明細書では同義的に使用される。
【0084】
改変微生物を使用する上記方法のための本明細書の用法では、培地はリボフラビン生産のためのあらゆる適切な培地であってもよい。典型的に培地は、例えば塩、基質、および特定のpHを含んでなる水性培地である。その中で基質がリボフラビンに転換される培地はまた、生産培地とも称される。
【0085】
「発酵」または「生産」または「発酵過程」とは、本明細書での用法では、当業者に知られている培地、条件、および手順を使用した増殖細胞の使用、または適切な基質をリボフラビンに転換するのに適した条件下で、当業者に知られている培地、条件、および手順を使用して培養した後の非増殖性のいわゆる休止細胞の使用であってもよい。
【0086】
生成したリボフラビンは、あらゆる適切な手段によって細胞から回収してもよい。回収とは、例えば生成したリボフラビンを生産培地から分離してもよいことを意味する。任意に、この生成した発酵産物をさらに処理し、例えば精製してもよい。
【0087】
微生物を使用した上記方法との関連で、一態様では、成長させるステップは、好気性条件下において常態で成長させるための適切な栄養素を添加した水性培地、すなわち増殖培地中で実施し得る。培養は、例えばバッチ、流加、半連続または連続様式で実施してもよく、流加または半連続様式が好ましい。
【0088】
培養期間は、例えば使用する宿主、pH、温度、および栄養培地次第で変動してもよく、微生物次第で、例えば約10時間〜約10日間、好ましくは約4〜約7日間、より好ましくは約2〜約6日間であってもよい。当業者は、適切な微生物の最適培養条件を知るであろう。
【0089】
培養は、例えば約7.0、好ましくは約6〜約8、より好ましくは約6.5〜7.5の範囲のpHで実施してもよい。培養を実施する適切な温度範囲は、例えば約13℃〜約70℃、好ましくは約35℃〜約39℃、より好ましくは約30℃〜約39℃、最も好ましくは約36℃〜約39℃であってもよい。成長のための培地は、通常、例えば、D−グルコース、グリセロール、てん菜濃厚汁、デキストロース、デンプン、スクロースまたはリボースなどの同化できる炭素源;そして例えばペプトン、酵母抽出物、およびアミノ酸などの有機物質などの可消化窒素源のような栄養素を含有してもよい。培地には、尿素および/またはコーンスティープリカーおよび/またはパン用酵母を添加しても添加しなくてもよい。窒素源として、例えば硝酸およびアンモニウム塩などの様々な無機物質もまた使用してもよい。さらに増殖培地は、通常は例えば硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、リン酸カリウム、および炭酸カルシウムなどの無機塩を含有してもよい。次に上述の手順を使用して得られた細胞を上述のような基質存在下で、上述したのと本質的に同一の様式、温度、およびpH条件で、これらの基質を所望の標的発酵産物に転換するようにさらにインキュベートし得る。インキュベートは、例えばペプトン、酵母抽出物、パン用酵母、尿素、アミノ酸、およびコーンスティープリカーなどの有機窒素源;または例えば硝酸塩およびアンモニウム塩などの無機窒素源を含有する窒素に富む培地内で実施し得て、その場合、細胞は所望の発酵産物を産生しながらさらに成長できる。代案としては窒素欠之培地中でインキュベートを実施し得て、その場合、細胞は実質的に成長せず、休止細胞状態、または生体内変換状態になる。全ての場合で、培地はまた、例えば硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、リン酸カリウム、および塩化カルシウムなどの無機塩を含有してもよい。リボフラビン生産のための適切な培地の一例は、国際公開第04/113510号パンフレット(VF−培地)に記載され、それはバシラス(Bacillus)に関して特に有用である。
【0090】
「生産」または「生産性」という用語は当分野で認められており、所定時間内に所定発酵体積内で形成されるリボフラビンの濃度を含む(例えば、1Lあたり1時間あたりの生成物kg)。「生産効率」という用語は、達成すべき特定レベルの生産に要する時間を含む(例えば細胞が発酵産物の特定生産速度に達するのにどのくらい時間がかかるか)。「収率」という用語は技術分野で認識され、炭素源から生成物(すなわちリボフラビン)への転換効率を含む。これは一般に例えば1kgの炭素源あたりの生成物kg数として記述される。化合物の「収率および/または生産/生産性が増大する」とは、所定量培養物中のその化合物の回収された分子の量、または有用な回収された分子の量が、所定時間にわたり増大することを意味する。
【0091】
リボフラビンの収率/生産性を判定するための分析法は、当該技術分野で知られている。このような方法としては、HPLCまたは指標株の使用が挙げられるが、これに限定されるものではない(例えばBretzelら,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.22,19〜26頁,1999年を参照されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】5’および3’隣接領域を含む枯草菌(Bacillus subtilis)のribリーダーを示す。ribリーダーは、ヌクレオチド位置562〜857の間に位置する。(A)5’制御因子(それぞれ「ttgcgt」および「tataat」)、ならびに配列番号42に記載されるribリーダーの第1のヌクレオチドに相当する転写開始(「A」)が太字で示される、野生型ribオペロン。(B)triple ribO、RK41、およびRK1などのribO突然変異の位置が太字で示されるribリーダー。(C)〜(I)flank−right、terminator、stem loop−right、stem loop−left、SWITCH deletion、del mro175、および全ribリーダーの位置が、それぞれ下線で示されるribリーダー。より詳しい説明は本文、特に実施例を参照されたい。
【図2−A】LFH−PCRを通じて、遺伝子ribD、ribE、ribAを含んでなるribオペロンの5’末端に位置する、強力構成的Pspo15プロモーター下流のmRNA安定化因子(St)を有する、遺伝的に改変された微生物を構築するための異なるステップを示す。組み換え微生物の選択のために、クロラムフェニコール(Cm)抗生物質耐性カセットが使用される。(A)LFH−PCRを使用した、強力プロモーターによる天然プロモーターの置換。(B)mRNA安定化因子の導入。より詳しい説明は実施例を参照されたい。
【図2−B】LFH−PCRを通じて、遺伝子ribD、ribE、ribAを含んでなるribオペロンの5’末端に位置する、強力構成的Pspo15プロモーター下流のmRNA安定化因子(St)を有する、遺伝的に改変された微生物を構築するための異なるステップを示す。組み換え微生物の選択のために、クロラムフェニコール(Cm)抗生物質耐性カセットが使用される。(A)LFH−PCRを使用した、強力プロモーターによる天然プロモーターの置換。(B)mRNA安定化因子の導入。より詳しい説明は実施例を参照されたい。
【0093】
以下の実施例は単に例証を目的とし、本発明の範囲をどのようにも限定することは意図されない。本明細書全体を通じて引用した、参考文献、特許出願、特許、および公開特許公報、特に欧州特許第405370号明細書、国際公開第04/106557号パンフレット、国際公開第07/051552号パンフレット、および欧州特許第1186664号明細書は、その内容を参照によって本明細書に援用する。
【0094】
[実施例]
実施例で言及される以下の培地については、国際公開第04/106557号パンフレットに記載されている。
トリプトース血液寒天ブロス(TBAB)培地、仔ウシ肉浸出液−酵母抽出物ブロス(VY)培地、10×Spizizen塩および最少培地(MM)。
さらに、以下の培養液を使用した。
100×微量元素溶液A:12.5gのMgCl・6HO;0.55gのCaCl;1.35gのFeCl・6HO;0.1gのMnCl・4HO;0.17g/LのZnCl;0.043gのCuCl・2HO;0.06gのCoCl・6HO;0.06gのNaMoO・2HO;1LのHOを添加し、オートクレーブ。
【0095】
5×最小塩溶液:0.057MのKSO;0.31MのKHPO・5HO;0.22MのKHPO;0.017MのNa−クエン酸・7HO;0.004MのMgSO・HO、pH7.0、オートクレーブ。
【0096】
100×微量元素溶液B:0.55gのCaCl;0.17gのZnCl;0.043gのCuCl・2HO;0.06のCoCl・6HO;0.06gのNaMoO・2HO;1LのHOを添加し、オートクレーブ。
【0097】
リボフラビンスクリーニング培地(RSM):200mlの10×Spizizen塩;10mlの100×微量元素溶液A;2mlの50%グルコース;36mlの25%ラフィノース;10mlの10%酵母抽出物;1LのHOを添加。
【0098】
Spizizen最少培地(SMM):100mlの10×Spizizen塩;10mlの50%グルコース;1mlの40%グルタミン酸ナトリウム;10mlの微量元素溶液A;1LのHOを添加。
【0099】
振盪フラスコ内のリボフラビン生産は、次のように実施した。菌株を凍結グリセロール保存液から5mlのVY富栄養培地に接種し、280rpmで撹拌しながら37℃で一晩生育させた。細胞を遠心分離によって収集し、1mlのRSM(上記参照)に再懸濁した。250μlの細胞懸濁液を使用して、250mlの邪魔板付き振盪フラスコ内の25mlのRSMに接種した。220rpmで撹拌しながら39℃で48時間の培養後、500μlの培養物を取り出し、サンプルと35μlの4N NaOHを室温で1分間混合して、リボフラビンの結晶を溶解させた。465μlの1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)の添加によってサンプルを中和し、遠心分離(5分間、13200rpm)によってペレット化した。上清を使用して、リボフラビン濃度と、6,7−ジメチル−8−リビチルルマジン(DMRL)およびオキソルマジンの2つの副生物濃度をHPLC測定した。さらに第2の培養物サンプルを取り出して、遠心分離(5分間、13200rpm)後に上清を使用して培地中の残留グルコースおよびラフィノース濃度を測定し、炭素源に対するリボフラビン収率を計算した。
【0100】
振盪フラスコ培養物からのサンプルをHPLCによって分析した。サーモスタットで調温されるオートサンプラー、ダイオードアレー、および蛍光検出器を装着したAgilent 1100 HPLCシステム上でクロマトグラフィーを実施した。4mm LC−8DBガードカラムを装着したSupelcosil LC−8DB−5μカラム(150mm×4.6mm)上で分離を実施した。0.1M酢酸とメタノールとの混合物を移動相として使用した。2%メタノール(5分間にわたり一定)で開始して、15分以内に50%メタノールにまで上昇させる勾配溶出を行った。カラムは20℃に保った。シグナルを280nmでUVによって記録した。リボフラビンは不純物(例えば副生物であるDMRLおよびオキソルマジン)から良好に分離し、15.2分で溶出した。較正はFlukaから得られる標準物質を基準にした。方法は10μg/ml〜1mg/mlのリボフラビンで較正した。
【0101】
さらにクォータナリー・ポンプ、オートサンプラー、UVおよび屈折率検出器を使用して、Agilent 1100シリーズHPLCシステムによって、培養ブロス中のグルコースおよびラフィノース濃度を分析した。分離は、CAPCELL PAK NH2 UG80カラム(4.6mm×250mm、5μ)(資生堂)上で達成した。最適カラム温度は35℃であった。移動相は、65/35の比率のアセトニトリルとDI水との混合物であった。流速は1.0ml/分であり、注入量は5μlに設定した。屈折率シグナルをモニターして、検出のために使用した。各化合物の較正範囲は0.5mg/ml〜30mg/mlである。
【0102】
[実施例1:リボフラビン栄養要求株の作成]
枯草菌(B.subtilis)のリボフラビンオペロンのオリジナルのリーダーおよびプロモーター配列を操作するために、リボフラビンプロモーター、RibDのデアミナーゼ領域をコードするribD(ribG)の5’リーダー配列および5’部分をプラスミドpUB110から得られたネオマイシン抵抗性(neo)カセットによって置換し(Itayaら,1989年,Nucleic Acid Res.17:4410頁)、リボフラビン栄養要求枯草菌(B.subtilis)BS3813株を作り出した。枯草菌(B.subtilis)168(trpC2)の誘導体である、枯草菌(B.subtilis)1A747株(SPβ、原栄養株)に由来するゲノムDNAは、米国オハイオ州43210コロンバスのオハイオ州立大学のBacillus Genetic Stock Centerから得た。
【0103】
株構築のためには、Long Flanking Homology Polymerase Chain Reaction(LFH−PCR)を使用して、天然Pribプロモーター(flank 5’)の526bpの上流領域とribD遺伝子の502bpの3’末端(flank 3’)とに挟まれた、1236bpのneo抵抗性カセットを含有するDNA断片を作り出した。したがってflank 5’、neo抵抗性カセット、およびflank 3’の3個のDNA断片を最初にPCRによって増幅した。flank 5’とflank 3’とに挟まれたDNA断片は、次のようにして作り出した。100μMのプライマーp50(配列番号6)ならびにp51(配列番号7)溶液1μl、または100μMのプライマーp44(配列番号4)ならびにp45(配列番号5)溶液1μlを1μlの10mM dNTP、5μlの10×緩衝液、および0.5μlのPfuポリメラーゼ(ストラタジーン(Stratagene))を含有する50μlの反応体積中の0.1μgの枯草菌(B.subtilis)1A747染色体DNAに添加した。neo抵抗性カセットを含有するDNA断片を作り出すために、1μlの10mM dNTP、5μlの10×緩衝液、および0.5μlのPfuポリメラーゼ(ストラタジーン)を含有する50μl反応体積中のneo抵抗性カセットを含有する0.05μgのpUB 110 DNAに、100μMのプライマーp9(配列番号2)ならびにp10(配列番号3)の溶液1μlを添加した。PCR反応は、(i)94℃で30秒間の変性ステップ、(ii)52℃で30秒間のアニーリングステップ、(iii)72℃で1分間の伸長ステップの3つの逐次段階、35サイクルで実施した。PCRサイクルには、95℃で3分間の変性ステップが先行した。3つのPCR産物をアガロースゲル電気泳動法によって分離し、MinElute Gel Extractionキット(キアゲン(Qiagen))を使用してゲルから抽出した。最終LFH−PCR反応では、3つの精製PCR産物(flank 5’、neo抵抗性カセット、およびflank 3’)をアセンブルした。1μlの100μMプライマーp45およびp51溶液、1μlのflank 5’PCR産物(50ng)、1μlのflank 3’PCR産物(50ng)、および1μlのneo抵抗性カセット(100ng)を添加して、1μlの10mM dNTP、5μlの10×緩衝液、および0.5μlのPfuポリメラーゼ(ストラタジーン)を含有する最終反応体積50μlを得た。LFH−PCR反応は、(i)94℃で30秒間の変性ステップ、(ii)52℃で30秒間のアニーリングステップ、(iii)72℃で2.5分間の伸長ステップの3つの逐次段階、35サイクルで実施した。PCRサイクルには、95℃で3分間の変性ステップが先行した。QiaQuick PCR精製キット(キアゲン)を使用して、アセンブルされたLFH−PCR産物を精製した。精製されたLFH−PCR産物(2μg)をコンピテント枯草菌(B.subtilis)1A747細胞の形質転換のために使用した。2mg/Lネオマイシンおよび100mg/Lリボフラビンを含有するTBABプレート上で、ネオマイシン−抵抗性(Nm)形質転換体を選択した。得られたリボフラビン栄養要求株およびNmBS3813株の正確な遺伝子型は、プライマーp45ならびにp10、およびプライマーp51ならびにp9、およびテンプレートDNAとして形質転換体の染色体DNAを使用した2回のPCR反応によって確認した。PCR反応は、DNA断片flank 5’およびflank 3’の作成について上述した標準反応条件を使用して実施した。さらに配列決定によって、BS3813からのribDの配列を確認した。
【0104】
国際公開第07/051552号パンフレット(実施例6参照)に記載される方法に従って、PBS−1ファージを用いて欠失コンストラクトの形質導入を実施し、そこではトランスケトラーゼ遺伝子に突然変異を有するリボフラビン過剰産生枯草菌(B.subtilis)BS3534株に形質導入するために、BS3813の溶解産物が使用される(BS3534の構築については国際公開第07/051552号パンフレットを参照されたい)。BS3534は、欧州特許第405370号明細書に詳細に記載され供託番号NRRLB−18502の下に入手できる、リボフラビン過剰産生枯草菌(B.subtilis)RB50株をベースとする。Nm被形質導入体は、2mg/Lネオマイシンおよび100mg/Lリボフラビンを含有するTBAB寒天プレート上で選択される。単離された被形質導入体の遺伝子型は、上述のようにPCRによって確認した。得られた株をBS3798と命名した。
【0105】
[実施例2:改変ribリーダー配列有株の作成]
2つのタイプの突然変異をribリーダー中に導入してrib遺伝子の転写を調節解除し、そこではI型はribO突然変異を指し、II型はribリーダーの(部分的)欠失を指す(図1参照)。
【0106】
3つのribO突然変異、すなわち「RK41」と称されるC85T、「RK1a」と称されるG121A、および「triple ribO」と称される三つ組みG39A−G40A−G41Aを作り出した。II型変異株では以下の部分がribリーダーから除去され、ここでヌクレオチドの番号は、枯草菌(B.subtilis)から単離された配列番号42に記載されるribリーダー配列を指す。「del stem loop−right」と称されるヌクレオチド250〜257(配列番号36)の欠失、「del stem loop−left」と称されるヌクレオチド231〜238(配列番号37)の欠失、「del flank−right」と称されるヌクレオチド239〜263(配列番号38)の欠失、「del terminator」と称されるヌクレオチド231〜263(配列番号39)の欠失、「SWITCH deletion」と称されるヌクレオチド166〜263(配列番号40)の欠失、「del mro175」と称されるヌクレオチド135〜263(配列番号41)の欠失、および完全なリーダーの欠失、すなわち「leader deletion」と称されるヌクレオチド1〜263(配列番号42)の欠失。mro175欠失の場合、4個のヌクレオチドの挿入も起きた(5’−ATGG−3’)。
【0107】
ribプロモーター(配列番号45〜54)と共に改変ribリーダー配列を有する株の構築は、実施例1で概説したプロトコル/条件に従って、基本的に2つのPCR反応を通じて実施し、第1のPCR反応では枯草菌(B.subtilis)1A747からの染色体DNAを使用して、flank 5’およびflank 3’と称される2つのDNA断片を作り出した。実施例1で記載されるプロトコル/条件に従った第2のPCR反応では、プライマーp45およびp51を使用してこれらの2つのPCR断片をアセンブルした。所望の変異/欠失(上記参照)をもたらす、第1のPCR反応のためのそれぞれのプライマーのペア、すなわちflank 5’作成のためのプライマーおよびflank 3’作成のためのプライマーをそれぞれ表1の2および3欄に列挙する。QiaQuick PCR精製キット(キアゲン)を使用した精製後、コンピテント枯草菌(B.subtilis)BS3813細胞を形質転換するために2μgの精製された全長PCR産物を使用した(実施例1参照)。細胞をSMMプレート上に播種した。リボフラビン原栄養株形質転換体を1mlの0.9%NaCl溶液に懸濁した。オリジナル細胞懸濁液の500倍希釈の100μlをTBAB寒天プレート上に播種した。単一コロニーは、新鮮なTBAB寒天プレート上に、および2mg/LのNmと100mg/Lのリボフラビンを添加したTBAB寒天プレート上に移した。正しい形質転換体はネオマイシンに感応性であり、したがってTBAB寒天プレート上のみで生育し、ネオマイシンを添加したプレート上では生育しなかった。さらに新たに導入されたribプロモーターおよびribDの配列決定によって、遺伝子型を確認した。ribリーダー中にそれぞれの突然変異/欠失を含有する、新たに作り出された枯草菌(B.subtilis)株は表1の4欄に示すように命名された。
【0108】
新たに作り出された株からPBS−1溶解産物を調製し、BS3798(実施例1で作成)の形質導入のために使用した。形質導入細胞は、SMMプレート上で選択した。リボフラビン原栄養株枯草菌(B.subtilis)被形質導入体を1mlの0.9%NaCl溶液に懸濁した。オリジナル細胞懸濁液の500倍希釈の100μlをTBAB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを新鮮なTBAB寒天プレート、および2mg/LのNmと100mg/Lのリボフラビンを添加したTBAB寒天プレートの上に移した。正しい被形質導入体はTBAB寒天プレート上でのみ生育し、したがってネオマイシン感応性である。新たに形質導入された株を表1の5欄に示すように命名した。
【0109】
【表1】



【0110】
新たに作り出された株を上述の振盪フラスコスクリーニングにおいて、リボフラビン生産について試験した。48時間後に、4N NaOHの添加によって500μlサンプルのリボフラビンを溶解し、中和して遠心分離後、処理済サンプルのリボフラビンの濃度をDMRLとDMRLの分解産物であるオキソルマジンの濃度と共に、HPLCによって測定した。炭素源からのリボフラビン収率の計算のために、全炭素源の開始および残留濃度をHPLCによって測定した。
【0111】
結果を表2に示す。野生型株(1A747)バックグラウンド中の天然ribオペロンが、基本的にいかなるリボフラビンも培地中に分泌しないのに対し、リボフラビン過剰産生(RB50)について選択された株バックグラウンド中の同一ribオペロンは、測定可能量のリボフラビンを分泌した。最良の結果は、それぞれ野生型(BS3958)およびRB50バックグラウンド(BS3987)の双方において、ribO変異株RK41で得られた。ターミネーターの欠失は、特に野生型バックグラウンド(BS3815)では、予期された結果をもたらさなかった。野生型バックグラウンドでは、第2の最良の結果がRK1a ribO変異株(BS3833)で得られたのに対し、RB50バックグラウンドにおける第2の最良の結果は、SWITCH deletion(BS3900およびBS3916)で達成され、それはリーダー欠失株よりもさらにより高いリボフラビン収率を示した。
【0112】
【表2】



【0113】
【表3】



【0114】
[実施例3:強力構成的プロモーターによる天然ribプロモーターの置換]
強力プロモーターと組み合わさったribリーダー突然変異の可能な相乗効果を評価するために、新たに作り出されたコンストラクトのオリジナルのribプロモーター(実施例2参照)を強力構成的プロモーターPvegまたはPspo15のどちらかで置換した。構築方法は実施例2のアプローチと極めて類似していた。DNA断片flank 3’およびflank 5’の作成のために、100μlのプライマーp60(配列番号12)ならびにp51(Pveg構築のため)溶液、またはプライマーp62(配列番号14)ならびにp51(Pspo15構築のため)溶液、および100μlのプライマーペアp45ならびにp61(配列番号13)(Pveg構築のため)溶液またはプライマーp45ならびにp63(配列番号15)(Pspo15構築のため)溶液の1μlを1μlの10mM dNTP、5μlの10×緩衝液、および0.5μlのPfuポリメラーゼ(ストラタジーン)を含有する50μl反応体積中の0.1μgの1A747染色体DNAに添加した。PCR反応は、(i)94℃で30秒間の変性ステップ、(ii)52℃で30秒間のアニーリングステップ、(iii)72℃で1分間の伸長ステップの3つの逐次段階、35サイクルで実施した。サイクルには95℃で3分間のDNA変性ステップが先行した。2つのPCR産物をアガロースゲル電気泳動法によって分離し、MinElute Gel Extractionキット(キアゲン)を使用してゲルから抽出した。最終PCR反応では、2つの精製PCR産物(flank 5’およびflank 3’)をアセンブルした。1μlの100μMプライマーp45およびp51溶液、1.0μlのflank 5’PCR産物(50ng)および1.0μlのflank 3’PCR産物(50ng)を混合して、1μlの10mM dNTP、5μlの10×緩衝液、および0.5μlのPfuポリメラーゼ(ストラタジーン)を含有する最終反応体積50μlにした。PCR反応を(i)94℃で30秒間の変性ステップ、(ii)52℃で30秒間のアニーリングステップ、(iii)72℃で2.5分間の伸長ステップの3つの逐次ステップ、35サイクルで実施した。PCRサイクルには、95℃で3分間の変性ステップが先行した。アセンブルされたPCR生成物は、QiaQuick PCR精製キット(キアゲン)を使用して精製した。精製された全長PCR産物(2μg)をコンピテント枯草菌(B.subtilis)BS3813細胞の形質転換のために使用した。細胞をSMMプレート上に播種した。リボフラビン原栄養株バシラス(Bacillus)形質転換体を1mlの0.9%NaCl溶液に懸濁した。オリジナル細胞懸濁液の500倍希釈の100μlをTBAB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを新鮮なTBAB寒天プレート上に移し、TBAB寒天プレートに2mg/LのNmおよび100mg/Lのリボフラビンを添加した。正しい形質転換体はTBAB寒天プレート上のみで生育し、したがってネオマイシン感応性であった。さらに新たに組み込まれたプロモーター、ribリーダー、およびribDの配列決定によって遺伝子型を確認した。Pvegによって駆動されるribオペロンのある株をBS3811と称し、Psspo15によって駆動されるribオペロンのある株をBS3817と称した。
【0115】
強力プロモーターとリーダー改変とを組み合わせるために、実施例2の記載されたPCR反応の全てで、1A747株のgDNAをBS3811株(Pvegプロモーター)およびBS3817株(Pspo15プロモーター)のgDNAによってそれぞれ置換した。プライマーペアの使用をはじめとする各PCR反応のその他の条件は、全て同じままであった。最終PCR産物をBS3813に形質転換して、得られた形質転換体を記載されるように検証した(実施例2)。コンストラクトPspo15_leader deletionの場合、表4に示すようにflank 5’PCR産物のためのプライマーペアp45/p95、およびflank 3’PCR産物のためのp96/p51を使用した。全てのその他のステップは、上述のように実施した。以下のコンストラクトを作り出し、そのコンストラクトで形質転換して得られる枯草菌(B.subtilis)株の名称を括弧内に示す。Pvegdel flank−right(BS3840)、Pspo15_del flank−right(BS3831)、Pveg_del terminator(BS3844)、Pspo15_del terminator(BS3871)、Pspo15_SWITCH deletion(BS3874)、Pspo15_leader deletion(BS3944)、Pveg_RK41(BS3887)、Pveg_RK1a(BS3953)、Pspo15_RK1a(BS3884)、Pveg_triple ribO(BS3912)。
【0116】
上述の株からPBS−1溶解産物を調製して、BS3798に形質導入した。形質導入細胞をSMMプレート上で選択した。リボフラビン原栄養株枯草菌(B.subtilis)形質転換体を1mlの0.9%NaCl溶液に懸濁した。オリジナル細胞懸濁液の500倍希釈の100μlをTBAB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを新鮮なTBAB寒天プレート上に移し、TBAB寒天プレートに2mg/LのNmおよび100mg/Lリボフラビンを添加した。正しい形質転換体はTBAB寒天プレート上のみで生育し、したがってネオマイシン感応性であった。以下の株を作り出した。BS3953からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3970およびBS3971;BS3884からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3905およびBS3907;BS3887からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3903およびBS3914;BS3912からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3981−83;BS3840からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3890;BS3844からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3880およびBS2882;BS3817からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3850およびBS3851;BS3944からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS5026およびBS5041;BS3831からのPBS−1溶解産物で形質導入されたBS3853;BS3874からの溶解産物で形質導入されたBS3897およびBS3956。
【0117】
大部分の株は、上述のように振盪フラスコ内でリボフラビン生産について試験した。48時間後、NaOHの添加によって500μlサンプルのリボフラビンを溶解し、中和して遠心分離後、処理済サンプルのリボフラビン濃度をDMRLおよびオキソルマジンの濃度と共に、HPLCによって測定した。炭素源からのリボフラビン収率の計算のために、全ての炭素源の開始および残留濃度をHPLCによって測定した。結果を表3に示す。
【0118】
【表4】



【0119】
【表5】



【0120】
ribリーダーまたはribプロモーターに対して行われた操作は全て、リボフラビン生産の増大をもたらした。実施例2に記載される結果(表2参照)によれば、ribO突然変異RK41はまた、天然プロモーターをより強力な構成プロモーターで置換した場合に最も効果的であった。強力プロモーターを使用することにより、PvegとRK41との組み合わせで最大4.2%の収率が達成された。意外にもPspo15とSWITCH deletionとの組み合わせは2番目に最良の収率3.8%を示し、それは2.4%の収率をもたらしたPspo15とdel terminatorとの組み合わせよりもはるかに良い。
【0121】
ribリーダーまたはribプロモーターに対して行われた全ての操作は、リボフラビン生産の増大をもたらした。実施例2に記載される結果(表2参照)によれば、ribO突然変異RK41はまた、天然プロモーターをより強力な構成プロモーターで置換した際に、最も効果的であった。強力プロモーターを使用することにより、PvegとRK41との組み合わせで最大4.2%の収率が達成された。意外にもPspo15とSWITCH deletionとの組み合わせは2番目に最良の収率3.8%を示し、それは2.4%の収率をもたらしたPspo15とdel terminatorとの組み合わせよりもはるかに良い。
【0122】
[実施例4:ribO突然変異とリーダー欠失との組み合わせ、および強力構成的プロモーターによる天然ribプロモーター置換]
典型的な調節解除ribO突然変異とリーダー欠失との組み合わせが、リボフラビン生産を増大できるかどうかを見るために、実施例2および3で作り出した突然変異のいくつかを組み合わせた。構築は上で概説したプロトコルに従った。flank 5’および3’PCRのテンプレートおよびプライマーペアを表4に示す(より詳しくは実施例1もまた参照されたい)。PCRのアセンブルおよびBS3813への形質転換は、実施例2および3に記載されるように実施した。配列決定は、2つの追加的突然変異、すなわちT25GおよびC101Tが、コンストラクトPspo15_triple ribO_del mro175およびPveg_triple ribO_del mro175中に存在することを明らかにし、ここで番号付けは配列番号42に関連する。新たに作り出されたコンストラクトを有する新たな株の名称を表4の4欄に示す。
【0123】
新たに作り出された株からPBS−1溶解産物を調製して、BS3798(実施例1で作成)の形質導入のために使用した。SMMプレート上での形質導入細胞の選択は、実施例2に記載されるように実施した。新たに形質導入された株は、表4の5欄で示すように命名される。
【0124】
【表6】



【0125】
新たに作り出された株のリボフラビン生産に関する試験は、上述の振盪フラスコスクリーニングによって実施した。表5に示す結果は、実施例3(表4参照)に示す結果と比較して、リボフラビン生産のさらなる増大を示す。ribO突然変異RK41およびtriple ribOのそれぞれと、強力プロモーターおよびribリーダー欠失との組み合わせは、振盪フラスコスクリーニングにおいて、リーダー欠失のない最良の組み合わせであるPvegプロモーターとribO突然変異RK41(表4参照)との組み合わせで達成される4.2%と比較して、7.6%を超えるリボフラビン収率をもたらす。本明細書に記載される特定のリーダー欠失は、調節解除(ribO突然変異構成的プロモーター)ribリーダーとプロモーターとの組み合わせの収率をほぼ倍増した。「SWITCH deletion」以外には、「del mro175」もまた、欠失のないコンストラクトに比べてRB50バックグラウンド中でリボフラビン収率を意外にも改善できた。ターミネーターの欠失(「del terminator」)はまた、ポジティブであるがあまりはっきりしない効果も有した。ribDのシャイン−ダルガノ配列の直前にPspo15が配置されるリーダー欠失コンストラクトは、最良のtripleコンストラクト(BS5026、表4および6参照)よりも3.6倍より低い収率を示した。これらの結果は、ribリーダーが全長転写物の調節のためだけでなく、安定化のためにも必要であることを示す。
【0126】
【表7】



【0127】
[実施例5:天然ribリーダーをmRNA安定化因子で置換する]
aprE mRNAのDNA配列安定化因子を2つのPCR産物全体に分配する。aprE mRNA安定化因子の5’末端にribオペロンの5’領域を含有するPCR産物1を増幅するために、標準PCR条件下でプライマーp45ならびにp143’(配列番号33)およびBS3817株からの染色体DNAをテンプレートとして使用した。aprE mRNA安定化因子の3’末端にribDを含有するPCR産物2を増幅するために、標準PCR条件下でプライマーp51ならびにp142(配列番号32)およびBS3817株からの染色体DNAをテンプレートとして使用した。標準LFH−PCR反応では、既述したようにゲル精製されたPCR産物1および2を1つのDNA断片にアセンブルした。BS3817株からの染色体DNAをテンプレートとして、最初の2回のPCRのためにプライマーペアp45/p145’(配列番号35)およびプライマーペアp51/p144(配列番号34)を使用して、同一方法をgrpE mRNA安定化因子に使用し、上述の条件下でプライマーペアp45/p51を使用したPCRのアセンブルがそれに続いた。精製されたLFH−PCR産物をリボフラビン栄養要求枯草菌(B.subtilis)BS3813株のコンピテント細胞に再度形質転換し、その中でリボフラビンプロモーター領域およびribDの5’部分をネオマイシン抵抗性カセットによって置換した。リボフラビン原栄養株形質転換体をSMMプレート上で選択した。単離された形質転換体を1mlの0.9%NaCl溶液に懸濁した。オリジナル細胞懸濁液の500倍希釈の100μlをTBAB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを新鮮なTBAB寒天プレート上に移し、TBAB寒天プレートに2mg/LのNmおよび100mg/Lのリボフラビンを添加した。正しい形質転換体はTBAB寒天プレートのみの上で生育し、したがってネオマイシン感応性であった。さらに新たに導入されたDNAストレッチの配列決定によって遺伝子型を確認した。得られた株は、それぞれBS5193(P15ΩαprEribDEATHTを有するコンストラクト)およびBS5196(P15ΩgrpEribDEATHTを有するコンストラクト)と称される。
【0128】
BS5193株およびBS5196株からのPBS−1溶解産物を調製して、BS3798(実施例1で作成)の形質導入のために使用した。SMMプレート上での形質導入細胞の選択は、実施例2に記載されるように実施した。BS5193株をベースとする新たな形質導入株は、それぞれBS5260およびBS5262と称され、BS5196株をベースとする新たな形質導入株はBS5244と称された。
【0129】
リボフラビン生産を上述のように振盪フラスコ実験で試験した。結果を表6に示す。
【0130】
【表8】



【0131】
【表9】



【0132】
ribプロモーターをPspo15のような非制御的構成的プロモーターで置換することは、制御的野生型ribオペロンと比較して、振盪フラスコスクリーニングにおけるリボフラビン収率を野生型バックグラウンドで41倍、RB50バックグラウンドで3.4倍増大させた。ribリーダーを除去してPspo15プロモーターをribDの直前に配置させると、リボフラビン収率は再度、野生型宿主株で7倍に、RB50バックグラウンドで1.4倍増大した。ribリーダーをaprE mRNA安定化因子で置換しても、上の2つの株バックグラウンドにおける収率に対する影響を示さなかった。しかし、ribリーダーをgrpE mRNA安定化因子で置換することにより、リボフラビン収率は野生型宿主で3.7倍、RB50バックグラウンドで1.44倍増大した。
【0133】
改変ribオペロン性能に関する宿主株の影響を調べるために、枯草菌(B.subtilis)1A747(野生型ribオペロン)、BS5193、BS5196、およびBS3944からの溶解産物をBS5178(spo0A,rib::neo,ribC1,bpr::cam,tktmut)と称される別のRB50変異株にも形質導入した。振盪フラスコスクリーニングを上述のように実施した。新たに構築された株の名称を含む結果を表7に示す。
【0134】
【表10】



【0135】
新しい株バックグラウンドでは、振盪フラスコ様式で試験すると、安定化因子の好ましい効果がより明白であった。ここではaprE mRNA安定化因子もまた、リーダーのないribオペロンを有する株と比較してリボフラビン収率を40%増大させた。grpE mRNA安定化因子は、ribリーダーのないコンストラクトと比較して収率に2.7倍の増大さえも示した。
【0136】
新しい株バックグラウンドでは、振盪フラスコ様式で試験すると、安定化因子の好ましい効果がより明白であった。ここではaprE mRNA安定化因子もまた、リーダーのないribオペロンを有する株と比較してリボフラビン収率を40%増大させた。grpE mRNA安定化因子は、ribリーダーのないコンストラクトと比較して収率に2.7倍の増大さえも示した。
【0137】
[実施例6:追加的ribO突然変異のリーダー欠失と強力構成的プロモーターとの組み合わせ]
ribO突然変異RK41(=RK61a)と同様に、Kilら,1992年のribO突然変異RK4、RK8、RK5(=RK2)が組み合わさったRK1aおよび「triple ribO」をribリーダーに導入し、代案の最適化されたribリーダー作成のために、Kilら,1992年に記載される追加的ribO突然変異を使用した。突然変異の番号付けは、配列番号42に記載されるribリーダー配列を参照する。記載されている突然変異RK111a(G59A)、RK116a(G56A)、RK62a(G60A;RK82aと同一である)、RK93a(C87T)、およびRK27a(C128T)は、flank 5’およびflank 3’作成のために使用されるテンプレート次第で、強力構成的プロモーターPspo15またはPvegと共に、del terminator、SWITCH deletionおよびdel mro175(上記参照)と組み合わせられる。ribO突然変異として有効なあらゆる突然変異が、このようにして記載されるプロモーターおよびリーダー欠失と組み合わせ得る。
【0138】
ribO突然変異構築のために、以下のプライマーペアを使用した。プライマーペアp111a_f/p111a_r(配列番号83および84)の構築のためにRK111a、プライマーペアp116a_f/p116a_r(配列番号85および86)の構築のためにRK116a、プライマーペアp62a_f/p62a_r(配列番号87および88)の構築のためにRK62a、プライマーペアp93a_f/p93a_r(配列番号89および90)の構築のためにRK93a、およびプライマーペアp27a_f/p27a_r(配列番号91および92)の構築のためにRK27a。これらのプライマーを実施例2で記載されるように、PCR反応で使用する。flank 5’の作成のためには、アンチセンスプライマーと共にプライマーp45を応用する。flank 3’の作成のためには、プライマーp51と共にセンスプライマーを応用する。Flank 5’および3’は、プライマーp45およびp51を使用して3回目のPCRでアセンブルする(実施例2参照)。株の形質転換および形質導入は、実施例2で記載されるように実施する。天然プロモーターの代替では実施例3に記載の指示、ribO突然変異とリーダー突然変異との組み合わせでは実施例4に記載の指示に従った。
【0139】
【表11】



【0140】
表9に列挙する全てのコンストラクトで生じたPCR産物をBS3813に形質転換する。選択は実施例2に記載されるように行い、確認された株の溶解産物をBS3798の形質導入のために使用する。上述のフラスコ振盪実験で得られるリボフラビンの収率は、コンストラクトRK41_SWITCH deletionまたはtriple ribO_del mro175(表5参照)の範囲と同様である。これらの量は、例えば実施例5に記載される別の株バックグラウンドを使用すると、なおも増大する。
【0141】
[実施例7:枯草菌(B.subtilis)以外の改変ribリーダー配列有株の作成]
上の実施例で記載されるコンストラクトを使用して、定位置にriboスイッチを有することが知られており、リボフラビン生産の適切な宿主株であるその他の株からのribリーダー配列中に、対応する改変を同定/作成し得る。
【0142】
Vitreschakら,Nucleic Acid Res 30,3141〜3151頁,2002年の図2に描写されるアラインメントに従って、非改変ribリーダーの対応部分をその他の生物中で同定した。欠失突然変異を上述のように生じさせて、任意に(枯草菌(B.subtilis)で同定されたものと相同的な)ribO突然変異と組み合わせる。コンストラクトは、当業者に知られている適切な培養条件下でリボフラビン生産を増大させるために、強力プロモーター、または上述のような宿主株のその他の既知の改変とさらに組み合わせ得る。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号42に記載されるヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド、
(b)(a)の断片または誘導体を含んでなるribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(c)その相補鎖がストリンジェントな条件下で(a)〜(b)のいずれか1つで定義されるポリヌクレオチドとハイブリダイズするribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(d)(a)〜(b)のいずれか1つで定義されるポリヌクレオチドと80、85、90、95または98%など少なくとも70%同一であるribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、および
(e)(a)〜(d)で定義されるポリヌクレオチドの相補鎖であるポリヌクレオチド
からなる群から選択される改変ポリヌクレオチドであって、
前記ポリヌクレオチド、特に配列番号42に記載されるポリヌクレオチドが、ターミネーターおよびその5’隣接領域を含むribリーダーの3’末端の1つ以上の突然変異を含んでなり、
完全な状態の完全長rib mRNA転写物の蓄積が非改変ribリーダーと比較して少なくとも5%増大する、改変ポリヌクレオチド。
【請求項2】
(a)配列番号42に記載されるヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド、
(b)(a)の断片または誘導体を含んでなるribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(c)その相補鎖がストリンジェントな条件下で(a)〜(b)のいずれか1つで定義されるポリヌクレオチドとハイブリダイズするribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(d)(a)〜(b)のいずれか1つで定義されるポリヌクレオチドと80、85、90、95または98%など少なくとも70%同一であるribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、および
(e)(a)〜(d)で定義されるポリヌクレオチドの相補鎖であるポリヌクレオチド
からなる群から選択される改変ポリヌクレオチドであって、
前記ポリヌクレオチド、特に42配列番号に記載されるポリヌクレオチドが、ribリーダーの3’末端の1つ以上の突然変異と共に1つ以上のribO突然変異を含んでなり、完全な状態の完全長rib mRNA転写物の蓄積が非改変ribリーダーと比較して少なくとも5%増大する、改変ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記1つ以上のribO突然変異が、配列番号42に記載されるヌクレオチド位置39、40、41、85、121、およびそれらの組み合わせに相当するポリヌクレオチドの置換からなる群から選択され、好ましくはG39A、G40A、G41A、C85T、G121A、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の改変ポリヌクレオチド配列。
【請求項4】
前記ribリーダーの3’末端の1つ以上の突然変異が、前記RFN因子の3’末端と前記ribリーダーの3’末端との間に位置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の改変ポリヌクレオチド配列。
【請求項5】
前記ribリーダーの3’末端の1つ以上の突然変異が、配列番号42に記載されるヌクレオチド231〜263またはその機能的部分に相当するターミネーター配列を含んでなる欠失である、請求項4に記載の改変ポリヌクレオチド配列。
【請求項6】
(a)配列番号65、67、68、69、70または71に記載の(改変)ヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド、
(b)その相補鎖がストリンジェントな条件下で(a)で定義されるポリヌクレオチドとハイブリダイズする改変ribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、
(c)(a)で定義されるポリヌクレオチドと80、85、90、95または98%など少なくとも70%同一である改変ribリーダー活性を有するポリヌクレオチド、および
(e)(a)〜(d)で定義されるポリヌクレオチドの相補鎖であるポリヌクレオチド
からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の改変ポリヌクレオチド配列であって、
前記ポリヌクレオチド、特に配列番号65、67、68、69、70または71に記載される配列が改変または変異配列と称され、適切な宿主細胞中への導入に際して、対応する非改変配列を有する細胞と比較して、完全な状態の全長rib mRNA転写物の蓄積が少なくとも5%増大する、改変ポリヌクレオチド配列。
【請求項7】
好ましくはPvegまたはPspo15から選択される、構成的プロモーターと融合した請求項1〜6のいずれか一項に記載の改変ポリヌクレオチド配列。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の改変ポリヌクレオチドによって遺伝子改変された、リボフラビン産生微生物。
【請求項9】
野生型微生物を使用したリボフラビン生産と比較して、所定の炭素源から少なくとも5%より多くのリボフラビンを生産できる、請求項8に記載のリボフラビン産生微生物。
【請求項10】
完全な状態の全長リボフラビンmRNAの蓄積が野生型微生物と比較して改善されている、請求項8または9に記載のリボフラビン産生微生物。
【請求項11】
リボフラビン生産のための請求項1〜7のいずれか一項に記載の改変ポリヌクレオチド、または請求項8または9に記載のリボフラビン産生微生物の使用。
【請求項12】
(a)リーダー配列を含むribオペロンを含んでなるリボフラビンを産生できる微生物を提供するステップと、
(b)前記微生物を請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドで遺伝子操作するステップ
を含んでなる、請求項8〜10のいずれか一項に記載の微生物の生成方法。
【請求項13】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の微生物を使用するステップと、生成されたリボフラビンを任意に反応混合物から単離および/または精製するステップを含んでなる、リボフラビンを生産する方法。
【請求項14】
前記微生物が、所定の基質からのリボフラビンの精製を可能にする水性培地条件下でインキュベートされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドをリボフラビン産生微生物に導入するステップを含んでなる、前記微生物中でリボフラビン生合成遺伝子から全長mRNA転写物を生産する方法。

【図2−A】
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【図2−B】
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【公表番号】特表2012−507984(P2012−507984A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533772(P2011−533772)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064825
【国際公開番号】WO2010/052319
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】