説明

リポオリゴ糖(LOS)生合成に関わる遺伝子の有無の決定によるナイセリア属菌株の分子タイピング

本発明は、LOS生合成に関わる遺伝子のうち1つ以上の、機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在を判定することによる、ナイセリア属(Neisseria)菌株のLOS分子タイピングの方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイセリア属菌株のタイピングの分野に関する。より具体的には、本発明は分子技術によってLOS生合成に関わる遺伝子を分析することにより、LOSの分子タイピングでナイセリア属菌株を分類する方法に関する。この方法は、血中ナイセリア属菌の疫学的分類に有用である。
【背景技術】
【0002】
髄膜炎菌(ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis))は、しばしばヒト上気道から分離されるグラム陰性細菌である。これは、菌血症および髄膜炎などの重篤な侵襲性の細菌性疾患の原因である。髄膜炎菌による疾患の発生は、地域、季節および年次による相違を示す(Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V.; Clin. Microbiol. Rev. 2 (補遺), S18-S24, 1989)。この細菌は、通常、その莢膜多糖体の血清群によって分類される。
【0003】
温帯の国々における疾病の大半は、血清群Bの菌株に起因し、発生率は1〜10/100,000/年総人口で変動するが、時にもっと高い値に達することもある(Kaczmarski, E.B. (1997), Commun. Dis. Rep. Rev. 7: R55-9, 1995; Scholten, R.J.P.M., Bijlmer, H.A., Poolman, J.T.ら、Clin. Infect. Dis. 16: 237-246, 1993; Cruz, C., Pavez, G., Aguilar, E.ら、Epidemiol. Infect. 105: 119-126, 1990)。
【0004】
血清群Aの髄膜炎菌が優勢な伝染病は、主に中央アフリカで生じ、発生レベルが最大で1000/100,000/年のレベルに達することがある(Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V. Clin. Microbiol. Rev. 2 (補遺), S18-S24, 1989)。髄膜炎菌による疾患全体として、ほとんどすべての症例は、血清群A, B, C, W-135およびYの髄膜炎菌に起因し、4価A, C, W-135, Y莢膜多糖体ワクチンが利用できる(Armand, J., Arminjon, F., Mynard, M.C., Lafaix, C., J. Biol. Stand. 10: 335-339, 1982)。
【0005】
LOSタイピングは、これまで記載されていたよりも複雑であることがわかっている。α鎖の糖組成の先端部において、ヘプトースIIの「修飾」(図1)が、LOSの免疫原性に影響を与えると思われる。PEA(ホスホエタノールアミン)の数と位置、3位にグルコースが存在すること、7位にグリシンが存在すること、およびN-アセチルグルコサミン(GlcNac)のO-アセチル化が、交差防御の主要な決定要因であると思われる。
【0006】
分析学的方法によるLOS組成の分析は、長くて単調である。LOSタイピングの現行法には、免疫学的方法すなわちイムノタイピングがある。しかしながら、この方法には限界があり、その限界とは、適用範囲が不完全であり、試薬の生産および供給が困難であるため結果的にこの方法でタイプ分けすることができない分離株の増加を招くこと、タイピング対象の発現に対する信頼性、髄膜炎菌表面成分が受ける高レベルの正の選択と併せて少なくとも一部は遺伝子水平交換に起因して分離株の遺伝的関連性との対応に一貫性がないこと、ならびに、非培養診断およびタイピングに適用するのが困難であることなどである(Jolleyら、FEMS Microbiol Review 31:89)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V.; Clin. Microbiol. Rev. 2 (補遺), S18-S24, 1989
【非特許文献2】Kaczmarski, E.B. (1997), Commun. Dis. Rep. Rev. 7: R55-9, 1995
【非特許文献3】Scholten, R.J.P.M., Bijlmer, H.A., Poolman, J.T.ら、Clin. Infect. Dis. 16: 237-246, 1993
【非特許文献4】Cruz, C., Pavez, G., Aguilar, E.ら、Epidemiol. Infect. 105: 119-126, 1990
【非特許文献5】Armand, J., Arminjon, F., Mynard, M.C., Lafaix, C., J. Biol. Stand. 10: 335-339, 1982
【非特許文献6】Jolleyら、FEMS Microbiol Review 31:89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、血中ナイセリア属菌株を分類するための、LOS生合成に関わる遺伝子に基づいた、多数の菌株サンプルに迅速に適用可能な分子生物学的手段を開発した。この方法は疫学研究に役立つであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
「リポオリゴ糖」(もしくは"LOS")に関する表現は、「リポ多糖」もしくは"LPS"とも称することができる。
【0010】
本明細書の「〜を含んでいる」、「〜を含む」および「〜を含んでなる」という用語は、各事例において、場合により「〜からなる」および「〜からなっている」と置き換えることができるというのが、本発明者らの主旨である。
【0011】
本発明者らは、ある方法によって、現行のタイピング法より確実かつ容易にナイセリア属菌株をタイプ分けすることができることを発見した。現行法はイムノタイピングによるものであるが、これは本発明の方法より信頼性の低い方法である。本発明者らは、分子タイピング技術を用いて、LOS構造の生合成に関わる遺伝子の存在、ならびに、必要に応じてその機能を評価することで、菌株を正確にタイプ分けすることができることを明らかにした。下記の図1は、LOS構造に関わる遺伝子、およびその構造の内部コアおよびα鎖の中で遺伝子が作用する位置を図解したものである。
【0012】
lgtG遺伝子は、ヘプトースIIの3位にグルコースを付加する酵素を発現する。この酵素は、多くのナイセリア属菌株において、単独でまたはlpt6と共に欠失している。この遺伝子はフェーズ変動性である。lpt6遺伝子は、ヘプトースIIの6位にPEAを付加する酵素を発現する。この遺伝子は、多くのナイセリア属菌株(N.m.の保菌性菌株、高侵襲性菌株および実験室菌株のコレクションのうち約50%)において、単独でまたはlgtGと共に欠失しており、しかもフェーズ変動性でない。
【0013】
遺伝子lgtE (もしくはlgtH), lgtA, lgtC, lgtB, lgtD およびlstは、α鎖の生合成に関与する。
【0014】
ナイセリアLOSの内部コアおよびα鎖の概略図については図1を参照されたい。
【0015】
したがって、a)少なくともlpt6 およびlgtG遺伝子の機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を決定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる、ナイセリア属菌株のLOS分子タイピング法を提供する。すなわち

本発明は、ナイセリア属菌株をタイプ分けする方法およびキットに関する。こうした方法は、医療および診断に、または研究に使用することができる。「タイピング」もしくは「区別」は、細菌菌株の同定を意味し、それは、特有の遺伝子の存在および機能に基づいて他の菌株とは異なることを確認することを含んでいる。
【0016】
遺伝子の「存在」とは、特定の遺伝子の全体もしくは一部が、当業者に周知の方法により検出可能であることを意味する。「機能(性)の」とは、その遺伝子がmRNA転写可能であって、それが翻訳されたときに、結果として、その遺伝子に関連付けられる機能を実行することができるポリペプチドを生じることを意味する。
【0017】
機能性遺伝子の存在は、記号"+"で表され、逆に、遺伝子がない、または非機能性遺伝子が存在することは、記号"-"で示される。機能性遺伝子産物の有無も、+または-でそれぞれ表される。
【0018】
lpt3遺伝子は、ヘプトースIIの3位にPEAを付加する酵素を発現する。この遺伝子は、フェーズ変動性ではなく、髄膜炎菌の保菌性菌株、高侵襲性菌株および実験室菌株のコレクションのうち約14%で、部分的もしくは完全に、欠失している。
【0019】
本発明のある実施形態は、適宜、ナイセリア属菌株のLOS分子タイピングの方法を提供するが、その方法は、a) 少なくともlpt3, lpt6 およびlgtG遺伝子の1つの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在を決定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる。
【0020】

ヘプトースIIの7位にPEAを付加する酵素は不明である。加えて、ヘプトースIIの7位にグリシンを付加する酵素も知られていない。
【0021】
ナイセリア属においてGlcNAcにO-アセチルを付加する酵素は、最近まで不明であった。本発明者らによる最近の研究(WO2007/144316を参照されたい)により、LOSアセチル化に関わる遺伝子がoac1(髄膜炎菌(N.meningitidis)B MC58ゲノム中NMB0285)であることが明らかになった。上記の結果は、Stephenの研究室の類似の研究により確認された(Kalherら、[2006 J Biol Chem 281(29):19939-48])。oac1はテストしたすべての菌株に存在し、フェーズ変動によって制御されている。
【0022】
したがって、もう一つの実施形態において、ナイセリア属菌株のLOS分子タイピングの方法を提供するが、その方法は、a) 少なくともlpt3、lpt6、lgtGおよびoac1遺伝子の機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在を決定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる。
【0023】

また別の実施形態では、ナイセリア属菌株のLOS分子タイピングの方法を提供するが、その方法は、a) oac1, lpt6およびlgtG遺伝子のうち少なくとも1つの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在を決定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる。
【0024】

したがって、本発明のある実施形態において、下記のステップを含んでなるLOS分子タイピングの方法を提供する。すなわち
・ 機能性遺伝子lpt6 およびlgtGがナイセリア属菌の染色体中に存在するかどうか判定できるように設計されたプローブを用いて、前記染色体からPCR増幅を行うステップ、ならびに、必要に応じて
・ lpt6 およびlgtG遺伝子が、それぞれ機能性LgtGおよびLpt6タンパク質を発現することができるかどうか判断するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ナイセリア属LOS内部コアおよびα鎖の概略図である。
【図2】lgt3ゲノム領域の図である。
【図3A】LOS6275由来の内部コアOSのMS/MS分析(ES-)を示す図である。
【図3B】LOS6275由来の内部コアOSのMS/MS分析(ES+m/z 1803.6)を示す図である。
【図3C】C11由来のOSのMS/MS分析による内部コア組成を示す図である。
【図4】lgt3領域の遺伝子配列の代表的なリストの図である。
【図5】MC58由来のlpt3(NMB2010)遺伝子の配列の図である。
【図6】Z2491由来のlpt6(NMA0408)遺伝子の配列の図である。
【図7】760676由来のoac1(NMB0285)遺伝子の配列の図である。
【図8】N.m.35E由来のlgtG OPFの配列の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅は、細菌の染色体から、または細菌培養液より単離および/または精製された核酸から、行うことができる。当業者によく知られている染色体DNA調製技術を用いて、細菌細胞懸濁液、染色体粗標品、単離標品または精製標品で実施されるPCR反応が本発明の範囲に含まれるが、それに限定されない。本発明に含まれる染色体標品は、単離されたものまたは実質的に精製されたものとすることができる。「単離された」または「実質的に精製された」とは、その核酸分子が、実質的もしくは本質的に、その自然状態で核酸分子に付随して通常存在する成分を含まない、ということである。こうした成分には、他の細胞物質、組換え生産に由来する培地、ならびに核酸の化学合成に使用されるさまざまな化学物質がある。
【0027】
PCRプライマーをデザインする方法は当技術分野で広く知られており、SambrookおよびRussel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Harbour Laboratory Press)に記載されている。既知のPCR法には、対になったプライマー、ネステッドプライマー、単一の特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、一部ミスマッチのあるプライマーを用いる方法などがあるが、それらに限定されない。
【0028】
PCRを用いて、特定の標的配列のシングルコピーを、いくつかの異なる方法(たとえば、標識されたプローブとのハイブリダイゼーション、ビオチン標識プライマーを組み込んだ後、アビジン酵素複合体で検出、32P標識デオキシヌクレオチド三リン酸、たとえばdCTPもしくはdATPの増幅セグメントへの取り込み、 臭化エチジウムなどの蛍光色素、または他の市販の化合物の取り込みなどがあるが、これらに限定されない)で検出することができるレベルにまで増幅することができる。ゲノムDNAの他に、どのようなヌクレオチド配列も、適当なプライマー分子セットを用いて増幅することができる。特に、PCR法で作製された増幅セグメントは、それ自体、その後のPCR増幅のための有効なテンプレートである。
【0029】
PCRによる増幅は、「PCR試薬」または「PCR材料」を必要とし、これは本明細書では、ポリメラーゼ、プライマーおよびテンプレートを除いた、増幅の実行に必要なあらゆる試薬として定義される。PCR試薬は通常、核酸前駆体(dCTP, dTTPなど)およびバッファーを含む。
【0030】
ある実施形態において、全長lgtG およびlpt6遺伝子の存在を評価する、本発明の方法を提供する。他の実施形態において、ナイセリア属菌株の染色体上のlgtG遺伝子の有無によって、その遺伝子の機能性を評価する方法を提供する。遺伝子の有無はPCRにより評価することができる。したがって、次のプライマー、すなわち配列番号8または配列番号9のいずれかを用いてlgtG遺伝子の有無を決定する方法を提供する。
【0031】
「プライマー」という用語は、本明細書では、たとえばPCR技術において、プライマーとして使用することができる一本鎖オリゴヌクレオチド配列を意味するように使用される。したがって、本発明の「プライマー」は、コピーすべき核酸配列に相補的なプライマー伸長産物を合成するための開始点として機能しうる、一本鎖オリゴヌクレオチド配列を指す。プライマーの設計(長さおよび具体的な配列)は、DNAおよび/またはRNA標的の性質、ならびにプライマーを使用する条件(温度およびイオン強度など)によって決まってくる。
【0032】
プライマーは、配列番号1-40に示すヌクレオチド配列で構成されるとすることができるが、ストリンジェントな条件下で標的部位のDNAと特異的に結合するのに適しているのであれば、配列番号1-40の配列を含んでなる、もしくはそれらの配列内に含まれる10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100またはそれ以上の塩基であってもよい。所定の状況下で必要な特異性および感度を維持するために、必要に応じて、プライマーもしくはプローブの長さまたは配列を少し変更することができる。本明細書に記載のプローブおよび/またはプライマーは、たとえばどちらの方向にも、1、2、3、4または5ヌクレオチドだけ伸ばすことができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ストリンジェントな条件」とは、プライマーの、特定のヌクレオチド配列との結合は可能にするが、細菌染色体上の他の部位への結合はできないようにする、ハイブリダイゼーション条件を意味する。
【0034】
本発明の他の実施形態において、lpt6遺伝子の有無によって、その遺伝子の機能性を評価する方法を提供する。したがって、次のプライマー、すなわち配列番号4または配列番号5のいずれかを用いてlpt6遺伝子の有無を決定する方法を提供する。
【0035】
多くのナイセリア属遺伝子は、フェーズ変動性に供されており、フェーズ変動性は、遺伝子発現の高頻度で可逆的なオンオフ切り替えと定義することができる。フェーズ変動性はLOSを含むさまざまな髄膜炎菌抗原に関わる遺伝子の特徴である。
【0036】
いくつかのナイセリア属LOS生合成遺伝子は、3塩基以上のポリ(G)トラクトを含有する。こうした塩基トラクトが遺伝子のオンオフを切り替える。異なるLOS生合成遺伝子のオン/オフ状態に応じて、異なる生合成経路が使用され、異なるLOS構造を生じる。
【0037】
遺伝子lgtA、lgtC、lgtD、oac1 およびlgtGは、それらのコード領域内にあるホモポリマートラクトによってもたらされる、発現のフェーズ変動性に供される。
【0038】
したがって、本発明のある実施形態は、lgtG遺伝子の遺伝子産物の機能性を、遺伝子の、またはその一部の、配列決定により評価する方法を提供する。好ましくは、lgtGの遺伝子産物の機能性を、ポリC領域の配列決定により評価する、本発明の方法を提供する。配列決定の方法は当業者によく知られており、その方法には、配列決定反応において、放射標識ddNTPターミネーター、もしくは蛍光標識ターミネーターを使用することなどが含まれるが、それに限定されない。
【0039】
本発明のある実施形態は、適宜、次のプライマー、すなわち配列番号8もしくは配列番号9のいずれか一方、または両方を用いて、IgtGの遺伝子産物の機能性を判定する方法を提供する。
【0040】
さらなる実施形態は、下記のステップを含んでなるLOS分子タイピング法を提供する。すなわち
・ 次の機能性遺伝子、すなわちlpt6、lgtG、lpt3のうち1つ以上が細菌染色体中に存在するかどうか判定できるように設計されたプローブを用いて、前記染色体からPCR増幅を行うステップ、ならびに、必要に応じて
・ lgtG、 lpt6 およびlpt3遺伝子が、それぞれ機能性LgtG、Lpt6およびLpt3タンパク質を発現することができるかどうか判定するステップ。
【0041】
本発明の実施形態において、全長lgtG、lpt6およびlpt3遺伝子の存在を評価する方法、好ましくは、lpt3遺伝子の機能性をその遺伝子の有無によって評価する方法、特に、lpt3遺伝子の有無を、次のプライマー、すなわち配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3のいずれかを用いて決定する方法を提供する。
【0042】
本発明の他の実施形態では、下記のステップを含んでなるLOS分子タイピング法を提供する。すなわち
・ 次の機能性遺伝子、すなわちlpt6、lgtG、lpt3およびoac1のうち1つ以上が細菌染色体中に存在するかどうか判定できるように設計されたプローブを用いて、前記染色体からPCR増幅を行うステップ、ならびに、必要に応じて
・ lgtG、 lpt6、lpt3およびoac1遺伝子が、それぞれ機能性LgtG、Lpt6、Lpt3およびOac1タンパク質を発現することができるかどうか判定するステップ。
【0043】
本発明のもう一つの実施形態において、全長lgtG、 lpt6、lpt3およびoac1遺伝子の存在を評価する方法を提供する。
【0044】
特定の実施形態において、次のプライマー、すなわち配列番号6もしくは配列番号7のいずれか一方または両方を用いてoac1遺伝子の有無を決定する方法が与えられ、加えて、特定の実施形態において、oac1遺伝子もしくは遺伝子産物の機能性を、oac1遺伝子もしくはその一部の配列決定によって評価する、本発明の方法を提供する。
【0045】
oac1遺伝子は2つのフェーズ変動性領域を有しているので、oac1遺伝子の機能性を判断するために、oac1遺伝子のフェーズ変動性領域の一方もしくは両方を配列決定する方法、特に、oac1遺伝子のポリG領域を配列決定する方法を提供する。具体的な実施形態において、oac1遺伝子の遺伝子産物の機能性を、次のプライマー、すなわち配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17または配列番号18のいずれか1つ以上を用いて決定する方法を提供する。
【0046】
遺伝子もしくは遺伝子座の有無は、PCRによって、または当業者に知られている他の技法によって、決定することができる。遺伝子の有無を評価することができる他の技法には、in situ DNAハイブリダイゼーションを含めたDNAハイブリダイゼーションがあるが、これに限定されない。本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」または「特異的ハイブリダイゼーション」という用語は、プライマーもしくはプローブが、使用される実験条件下で、標的の一部またはその全領域と二本鎖(二本鎖ヌクレオチド配列)を形成すること、ならびに、そうした条件下でプライマーもしくはプローブは、分析すべきサンプル中に存在するヌクレオチド配列の他の領域とは二本鎖を形成しないことを意味する。当然のことながら、本発明のプライマーおよびプローブは、特定の遺伝子に対する特異的ハイブリダイゼーションのために設計されており、したがって、当該領域内に完全に含まれる、または当該領域と大幅にオーバーラップしている(すなわち、当該領域のみならず外側のヌクレオチドとも二本鎖を形成する)と考えられる。したがって、本発明のプライマーをPCR反応もしくはDNAハイブリダイゼーション中に使用することができる方法を提供する。
【0047】
遺伝子lgtGおよびlpt6は同一の染色体領域、すなわちlgt3にある(図2)。lgt3領域のPCR増幅は、lpt6/lgtG遺伝子の有無に関する情報をすでに与えることができる。得られたPCR断片の長さに基づいて、菌株は5つの異なる群に分類された(タイプI〜V)。
【0048】
したがって、本発明のある実施形態において、lgtGおよびlpt6遺伝子の存在または不在を、lgt3染色体領域の増幅によって同時に評価する方法を提供する。適宜、PCR産物を作製し、ナイセリア属染色体のlgt3領域の長さによってlgtGおよびlpt6遺伝子の有無を評価する方法を提供する。好ましくは、次のプライマー、配列番号10もしくは配列番号11のいずれか一方または両方を用いてlgtGおよびlpt6遺伝子を評価する方法を提供する。
【0049】
本発明のある実施形態において、次のプライマー、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21または配列番号22のうち1つ以上を用いてPCR増幅を行う、LOS分子タイピング法を提供する。
【0050】
本発明の他の実施形態において、次のプライマー、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26のうち1つ以上を用いて、遺伝子の機能性を判定するために配列決定反応を行う、LOS分子タイピング法を提供する。
【0051】
本発明の特定の実施形態において、それぞれの内部コア遺伝子を検出するPCR反応は、単一のPCR反応で行うことができる。したがって、本発明のある実施形態は、内部コア遺伝子に関するPCR増幅反応をマルチプレックス化(多重化)する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「マルチプレックス化」とは、単一のPCR反応を行って、前記遺伝子の有無の評価を可能にすることを意味する。本発明のプライマーは、別の遺伝子の増幅を損なうことなく、増幅すべき、内部コアの生合成に関与するそれぞれの遺伝子の増幅を可能にする特定の反応条件を用いて、単一のPCR反応を行うことができるように設計される。マルチプレックス化は、本明細書に記載の血中ナイセリア属菌株を分子タイピングする、より迅速で容易な方法を可能にする。
【0052】
したがって、ある実施形態は、次のプライマー、配列番号8、配列番号9、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26のうち1つ以上を用いてマルチプレックスPCR反応を行う、LOSタイピング法を提供する。
【0053】
さらに、次のプライマー、配列番号8、配列番号9、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26のうち1つ以上を用いて、内部コア生合成遺伝子の機能性を判定するために配列決定反応を行う方法を提供する。
【0054】
遺伝子lgtA、lgtB、lgtC、lgtD、lgtE、lgtHおよびlstは、α鎖の生合成に関与し、したがってその結果としてα鎖の最終構造に関与する。これらの遺伝子は当技術分野で周知である(WO 96/100086, WO 97/47749, Zhuら、2006 [Microbiology 152: 123-134])。遺伝子lgtA、lgtC、およびlgtDは、ポリ(G)トラクトを含有する。これらの遺伝子中に存在するグアニンの数がDNAの複製中に変化すると、コード配列に変化が生じ、これらの遺伝子によってコードされるタンパク質の翻訳が、中途終止を起こしやすくなる。これらの遺伝子のいずれかの機能が失われることは、LOSの構造の変化をもたらす。
【0055】
したがって、本発明のある実施形態は、LOSの外部コア構造を評価することによってLOSをさらにタイプ分けする方法、具体的には、a)lgtEの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる方法を提供する。
【0056】

他の実施形態において、a)lgtHの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる方法を提供する。
【0057】

他の実施形態において、a)lgtCの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる方法を提供する。
【0058】

他の実施形態において、a)lgtAの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる方法を提供する。
【0059】

他の実施形態において、a)lgtBの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる方法を提供する。
【0060】

他の実施形態において、a)lgtDの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる方法を提供する。
【0061】

他の実施形態において、a)lstの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる方法を提供する。
【0062】

本発明のある実施形態は、適宜、α鎖の構造に寄与するいかなる遺伝子の有無もPCR増幅によって評価する方法を提供する。好ましい実施形態では、α鎖に寄与する酵素をコードする遺伝子の有無を決定するためのPCR増幅反応をマルチプレックス化する方法を提供する。遺伝子の有無を決定することができる方法がいくつもあることを当業者は承知しており、それらもやはり本発明の範囲に含まれる。ハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションがこれらに含まれるがそれに限定されない。
【0063】
遺伝子lgtA、lgtCおよびlgtDはフェーズ変動性である。したがって、遺伝子の機能性を配列決定によって判定する、分子タイピングの方法を提供する。特定の実施形態において、lgtA、lgtCおよびlgtDの機能性をフェーズ変動性領域の配列、特にポリ(G)領域の配列によって判定する方法を提供する。配列決定の方法は当技術分野で周知である。
【0064】
ある実施形態において、PCR増幅反応がマルチプレックス化されている、α鎖のタイピング法を提供する。具体的には、次のプライマー、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39または配列番号40のうち1つ以上を用いてマルチプレックスPCR反応を行う方法を提供する。
【0065】
さらに、次のプライマー、配列番号29、配列番号30、配列番号37、配列番号38、配列番号39または配列番号40のうち1つ以上を用いて、遺伝子の機能性を判定するための配列決定反応を行う、LOSタイピング法を提供する。
【0066】
したがって、本発明のある実施形態では、下記のステップを含んでなるLOS分子タイピング法を提供する。すなわち
・ lgtG遺伝子、またはlgtGによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
・ lgtG遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうか判定するステップ、ならびに
・ lpt6遺伝子、またはlpt6によってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ。
【0067】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lpt3遺伝子、またはlpt3によってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ。
【0068】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ oac1遺伝子、またはoca1によってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
・ oac1遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうかを判定するステップ。
【0069】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lgtE遺伝子、またはlgtEによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ。
【0070】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lgtH遺伝子、またはlgtHによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ。
【0071】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lgtC遺伝子、またはlgtCによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
・ lgtC遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうかを判定するステップ。
【0072】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lgtB遺伝子、またはlgtBによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ。
【0073】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lgtA遺伝子、またはlgtAによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
・ lgtA遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうかを判定するステップ。
【0074】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lgtD遺伝子、またはlgtDによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
・ lgtD遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうかを判定するステップ。
【0075】
他の実施形態において、下記のステップを追加して含んでなる上記方法を提供する。すなわち
・ lst遺伝子、またはlstによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ。
【0076】
機能性遺伝子の存在を評価しうるさまざまな方法があることは、当業者に知られている。遺伝子の転写は、mRNA転写物の生成をもたらす。mRNAを検出する方法は当業者によく知られており、本発明の範囲に含まれる。本発明の方法としては、ハイブリダイゼーション(ノーザンブロット)および逆転写酵素-PCR(RT-PCR)があるがそれに限定されない。RT-PCRは当業者によく知られている。
【0077】
したがって、本発明のある実施形態は、下記のステップを含んでなるLOS分子タイピング法を提供する。すなわち
・ ナイセリア属菌株からRNAを精製するステップ、
・ lpt6およびlgtG mRNA転写物が存在するかどうか、ならびに、必要に応じて、lpt3、oac1、lgtE、lgtD、lgtH、lgtC、lgtB、lgtAまたは lstが存在するかどうかを判定できるよう設計されたプローブを用いて、RT-PCR増幅を行うステップ、
・ mRNA転写物からcDNAを作製するステップ、ならびに
・ 機能性lgtG遺伝子が存在するかどうか、さらに必要に応じてoac1、lgtC、lgtDおよびlgtA遺伝子のうち1つ以上が存在するかどうかを判定するために、cDNAの配列決定を行うステップ。
【0078】
本発明の他の実施形態において、下記のステップを含んでなるLOS分子タイピング法を提供する。すなわち
・ ナイセリア属菌株からRNAを精製するステップ、
・ lpt6、lgtG、lgtEおよびlgtH mRNA転写物が存在するかどうか、さらに必要に応じて、lpt3、oac1、lgtD、lgtC、lgtB、lgtAまたは lstが存在するかどうか判定することができるよう設計されたプローブを用いて、RT-PCR増幅を行うステップ、
・ mRNA転写物からcDNAを作製するステップ、および
・ 機能性lgtG遺伝子が存在するかどうか、さらに必要に応じてoac1、lgtC、lgtDおよびlgtA遺伝子のうち1つ以上が存在するかどうかを判定するために、cDNAの配列決定を行うステップ。
【0079】
本発明の他の態様において、下記のステップを含んでなる、前記のいずれか1つに記載のLOS分子タイピング法を提供する。すなわち
・ 菌株から細胞溶解液を作製するステップ、および
・ lpt6およびlgtG によってコードされるタンパク質の存在、ならびに必要に応じてlpt3、oac1、lgtE、lgtH、lgtC、lgtD、lgtB、lgtAおよび lstのうち1つ以上によってコードされるタンパク質の存在を検出するステップ。
【0080】
本発明の他の態様において、下記のステップを含んでなる、前記のいずれか1つの実施形態に記載のLOS分子タイピング法を提供する。すなわち
・ 菌株から細胞溶解液を作製するステップ、および
・ lpt6、lgtG、lgtEおよびlgtHによってコードされるタンパク質の存在、さらに必要に応じてlpt3、oac1、lgtD、lgtC、lgtB、lgtAおよび lstのうち1つ以上によってコードされるタンパク質の存在を検出するステップ。
【0081】
加えて、本発明は、本明細書に記載の方法に従って実施される、ナイセリア属菌定着の診断もしくは分子タイピングのための、プライマーを含んでなるキットを提供する。
【0082】
本発明はさらに、分子タイピングのための、もしくはナイセリア属菌の定着を診断するためのキットであって、ナイセリア属菌の定着および/または感染の診断、もしくは分子タイピングのための、本明細書に記載の少なくとも1つのプライマー、またはプライマーセットを含んでなる前記キットを提供する。
【0083】
本発明のある実施形態では、ナイセリア属菌の定着に感受性である宿主において、ナイセリア属菌の定着および/または感染を診断ならびに分類する方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる。すなわち
・ 宿主から生物学的サンプルを採取すること、
・ 必要に応じて本明細書に記載のキットを使用することにより、本明細書に記載の方法を実行すること。
【0084】
(実施例)
下記の実施例は、特に断って詳細に記載したところ以外は、当業者に周知であり通例となっている標準的な技法を用いて実施する。
【実施例1】
【0085】
オークタロニー法(イムノタイピング)、MS/MS分析、および分子生物学的分析法による菌株6275およびC11のLOSの特性評価
概要
・ 特異的なポリクローナル抗体を用いて、菌株6725およびC11を免疫拡散法によりイムノタイピングした(オークタロニー法)。これらの内部コアLOS組成を、MS/MS分析により決定した。LOS内部コアの修飾に関与する酵素をコードする遺伝子を、PCRおよび配列決定法により分析した。
【0086】
・ MS/MS分析に基づいて、菌株6275はHep IIに2つのPEA残基を有する。この菌株は、イムノタイピングではL3株に分類されたが、通常のL3株はPEAを1つだけ保有する(HepIIの3位に)。
【0087】
・ 菌株C11の内部コアLOSに関する2つの異なる組成がMS/MSによって観察された。一方はHepIIに1つのPEA残基を含有し、他方は2つのPEA残基を含有する。この菌株はイムノタイピングではL3株に分類されたが、抗L2血清とも微弱な反応をした。
【0088】
序論
髄膜炎菌LOSの内部コアLOS組成は、これまで記載されていたよりも複雑であるようだ。最近まで、内部コアLOSはHepII上の3位または6位(もしくは7位)に1つだけPEA残基を有するか、まったくPEA残基がないかのいずれかであると提唱されていた。しかし、3位および6位(もしくは7位)に2つのPEA残基を有する新規内部コアLOSが最近報告された。この新たなLOS構造は、以前イムノタイピングでL3と分類された菌株から報告されたので、この新たなLOS構造はL3バリアントにちなんでL3vと名付けられた。
【0089】
L3v構造の発見以前に、LOSのイムノタイピングに基づく疫学データから、侵襲性血清型Bの菌株のうちおよそ70%がL3(3位にPEA)であり、残りの菌株のほとんどがL2(6位にPEA)であったことが示されていた。
【0090】
L3およびL2菌株パネル、ならびにL3由来のブレブまたはL2由来のブレブのいずれかで免疫した動物の血清パネルを用いて得られた殺菌データに基づいて、本発明者らは、抗L3由来血清だけが、L3株の補体死滅を仲介することができ、さらに、抗L2抗体だけがL2株を死滅させることができるという結論に達した。しかし興味深いことに、2つの新規L3v株について得られた殺菌データは、本発明者らの以前の結論とは合致しない。実際、これら2つの菌株の補体死滅は、抗L2由来血清により仲介されるが、抗L3血清によっては仲介されない。これら2つの「異型」菌株は、血清型Bの菌株6275および血清型Cの基準菌株C11である。
【0091】
イムノタイプと殺菌結果とで相違する結果を理解するために、菌株6275およびC11の内部コア組成を、MS/MSにより決定した。加えて、オークタロニー法(特異的ポリクローナル血清を用いた免疫拡散法)によって上記菌株のイムノタイピングを行った。また、機能性lpt3、lpt6 およびlgtG遺伝子の存在を、分子生物学的方法を用いて分析した。これらの遺伝子は、それぞれ、HepII上で、3位にPEAを、6位にPEAを、ならびに3位にグルコースを付加するのに関与する酵素をコードする。
【0092】
結果
1. MS/MS分析による内部コア組成
MS/MS分析(図3参照)は、下記を示す。すなわち、
・ いずれの菌株においても、α鎖LOSは、末端シアル酸基を有する、L2およびL3菌株について報告されている典型的なLNnT四糖である、
・ 6275株の内部コアLOSは、2つのPEAを保有し、これらはほぼ確実に3位および6位に存在するが、NMR分析による確認が待たれる、
・ C11株は2つの異なる内部コアから構成されている。すなわち、1つのPEAを有する集団(HepII上のその位置は明確ではないが、HepII上のグリシンについて弱いシグナルが認められるので、7位のPEAは排除される)、2つのPEAを有する別の集団(ほぼ確実に3位および6位にあるが、それはグリシンもこのHepII上に検出されたからである)、
・ どちらの菌株についてもグルコースはHepII上で検出されない。
【0093】
2. LOSイムノタイピング
特異的な抗血清パネルを用いてイムノタイピングを行った。L3抗血清およびL2抗血清を用いて得られた結果だけを下記に示すが、これは他の抗血清(L1, L4, L5…)を用いて出たきた結果が菌株6275およびC11について陰性であったためである。この実験では、GSK Bioで現在使用されている菌株6275およびC11(GSK6275-1および2、ならびにGSK C11)を、アムステルダム大学(Amsterdam University)で20年よりも長期にわたり冷凍庫内で保存された類似の菌株(菌株Zol 6275およびRIV C11)と比較した。
【0094】
2つの菌株6275(Zol 6275ならびにGSK6275-1および2)は、イムノタイピングアッセイにおいて、類似の反応性を示す。これらは抗L3血清とは強く反応するが、抗L2抗血清とは反応しない。
【0095】
GSK C11株およびRIV C11株も同一結果を示す。どちらの株も抗L3血清に陽性であり、抗L2血清には弱い陽性である。
【0096】
C11株および抗L2血清で得られた微弱な沈降反応を確認するために、1980年にすでにL3,2としてタイプ分けされた5つの患者分離株と併せて、新たに免疫拡散法の実験を行った。C11株の結果はやはり抗L2血清と非常に弱い沈降を示すが、5つの疾病株のタイピングは確認されている。
【0097】

3. 分子的特性解析
3位にPEAを付加する酵素が同定され、これはlpt3遺伝子によってコードされている。HepIIの3位のPEAは、高病原性髄膜炎菌(N. meningitidis)菌株の70%で検出され、Wrightおよび共同研究者らは、分析された菌株の86%において、PCRによりlpt3遺伝子を検出している。この遺伝子は、フェーズ変動性によって制御されないが、血清型CおよびAのさまざまな菌株で部分的に欠失していることが明らかになった。3位へのPEAの付加は、同位置へのグルコースの付加と競合すると仮定された。これに関わる酵素はlgtG遺伝子によりコードされ(WO04/015099参照)、そのORFのポリCトラクトでフェーズ変動性によって制御される。Moxon研究室の仮説では、lgtG遺伝子が存在し、かつインフレームであるならば、機能性の酵素が産生され、グルコースが3位に付加されて、PEAはその位置に付加されない。
【0098】
6位にPEAを付加する酵素をコードする遺伝子は、lgtG遺伝子の近傍にあるlpt6である。この遺伝子は、フェーズ変動性による制御を受けやすい領域を含有しておらず、N.mの48%で検出された(Wrightら、2004)。HepIIの7位にグリシンを付加する酵素をコードする遺伝子は知られていない。
【0099】
menB(髄膜炎菌血清型B)菌株6275およびmenC(髄膜炎菌血清型C)菌株C11を、対応するL3およびL2基準菌株と並行して分析した。PCR増幅および配列決定実験を行った。すなわち、
・ lpt3遺伝子のフルコピーが存在する場合(PCR)、lgtG遺伝子の機能性について調査を進めた(PCRによる存在分析、およびORF内のポリCストレッチの配列分析)、
・ lpt6遺伝子の存在をPCRにより評価した。その遺伝子のフルコピーが存在する場合、その菌株が当然に6位にPEAを有するLOSを含有すると本発明者らは仮定する。
【0100】

そうしたデータに基づいて、menB 6275およびmenC C11株はL2イムノタイプに関連づけられると思われる。しかしながら、MS/MS分析は、いずれの菌株も、2つのPEA基があり、グルコースはないことを示す。* は、lgtG遺伝子がフェーズ変動性領域内に(活性遺伝子にみられる正常な数の)11個ではなくて14個の連続したCヌクレオチドを有することを表す。このことは、一方ではオープンリーディングフレームがインフレームなので機能性タンパク質を産生しうることを意味するが、他方では追加のプロリン残基が付加されることでタンパク質の構造が乱され、そのためにタンパク質の機能が損なわれる可能性もある。
【0101】
4. まとめ
次表は、異なる方法によるさまざまな髄膜炎菌株の特性評価をまとめたものである。
【0102】

考察
内部コアLOS組成の多様性は、以前に記述されているよりも複雑である。当初は、HepIIにPEAのない菌株、もしくは(3位または6/7位のいずれかに)1つのPEAを有する菌株が記述されていたが、最近になって2つのPEAを有する菌株が報告された。こうした菌株はたとえば、血清型Bの菌株6275および血清型Cの菌株C11である。
【0103】
驚くべきことに、菌株6275およびC11を用いて得られたイムノタイピング結果と血清殺菌性の結果は一致しない。実際、これら2つの菌株はL3株に分類されたが、それらの死滅は抗L2由来ブレブ血清によるものであって、抗L3由来ブレブ血清によるものではない(次の実施例を参照されたい)。
【0104】
これらの菌株の関連性について、ならびに、2つのPEA基の存在がin vitro培養の連続継代に起因する実験室での人為的結果でありうるのかについて、疑問が提起された。本発明者らは、菌株6275およびC11の異なる種菌を比較する機会を得た。各菌株について、現在本発明者らが使用している種菌を、(アムステルダム大学で)20年余り保存された古い種菌と比較した。それぞれの菌株について、2つの種菌はオークタロニー法で同じ反応性を示したが、それは、少なくともこの20年の間に少しずつ変化する(ドリフトする)ようなことはなかったことを示唆する。それでもやはり、もっとも古い種菌の内部コアLOS組成を測定して、2つのPEA残基の存在を確認すべきである。
【0105】
文献によれば、侵襲性髄膜炎菌菌株の約70%がL3である。L3v菌株を用いて得られたオークタロニー法の結果は、この方法がL3株とL3v株とを区別しないことを示唆した。したがって、「真のL3」株の数は、過大に評価されている可能性がある。lpt3およびlpt6遺伝子は、それぞれHepIIの3位および6位へのPEA基の付加に関与する。血中の菌株の約36%が両方の遺伝子を含有し、50%がlpt3のみを、12%がlpt6のみを保有する(Wright JCら、2004)。したがって、菌株のうち36%は、たとえL3に分類されたとしてもL3vである可能性がある。しかしながら、さまざまな内部コアLOS構造に特異的なMAbsパネルを用いて得られた最近の疫学データは、菌株の2%未満がHepIIに2つのPEA基を有することを示唆した(Gidney MAJら、Infect Immun. 2004 72: 559-69)。上記2つの研究の相違(36%と2%)は、6位にPEA基を有する菌株のヒト補体に対する感受性の高さで説明することができるであろう(Ram S et al., J Biol Chem. 2003 278:50853-62)。総合すると、全てのデータから、侵襲性菌株の大部分が「真のL3」であることが示唆される。
【0106】
lgtGおよびlpt3 はHepIIのO-3位について競合することが示唆されたが、PEA残基よりもGlc残基の付加に偏る傾向が報告されている(Wright JCら、2004)。この仮説は、たとえ機能性lgtG遺伝子の存在下でも、菌株6275およびC11の内部コアLOS内には2つのPEA残基が存在することによって実証されるように、一般的法則にはならないかもしれない(フェーズ変動性領域内に14個のCヌクレオチドを有するインフレームlgtG遺伝子が不活性でないならば)。Moxon研究所の仮説に加えて、菌株NMBのLOS内部コア構造の制御/組成に関与するもう一つの系が、最近報告された。この系は、MisR/MisS二成分制御系である(Tzeng YLら、J Biol Chem. 2004 279:35053-62)。結論として、内部コアLOSの構造に関与するメカニズムは複合的で完全には解明されていないと思われる。
【0107】
患者から分離された5つの菌株は驚くべきLOSイムノタイプを示したが、それは、これらの菌株が抗L3血清と主に沈降反応を示すが、抗L2血清とも弱い沈降を示すためである。抗L2血清との沈降反応が非常に弱いとはいえ、これは菌株C11にも当てはまる。菌株C11の内部コアLOSのMS/MS分析も、L3およびL2 LOSの同時発現に部分的に一致する、2つの異なる内部コア組成を示す。免疫沈降法により同定されたL3 LOSは、実はL3v LOS(2つのPEAを有する)である可能性がある一方、L2 LOSは、菌株C11において見かけ上機能性のlgtG遺伝子が検出されるため一部のLOS分子上には存在するはずである検出可能なGlcが存在しなくても、6位に1つのPEAを有する内部コアLOS(NMR分析により確認される)と関連づけられるはずである。それでもやはり、そうした患者の分離株のうち1つ以上の内部コアLOSの分析(MS/MS、分子的特性解析、およびSBA)を行い、これらのL3,2菌株がL3vおよびL2 LOSを同時発現することを確認すべきである。
【0108】
結論として、内部コアに2つのPEAを有する菌株は、イムノタイピングでL3菌株に分類されるが、このイムノタイピングはSBAにおける生物学的反応性、ならびに「機能性」lgtG、lpt3 およびlpt6遺伝子の存在に関する分析とは一致しない。本発明者らのデータによれば、そうしたL3v株はおそらくL3株から派生するのではなく(lpt6遺伝子が存在するため)、したがって名称を改めるべきである。
【実施例2】
【0109】
MS分析
この方法は、実施例3に示すMSデータを作成するために使用した。
【0110】
有機溶媒前処理
2-5 g(湿重量)の細胞を15 mlファルコンチューブに移した。細胞を、2 ml蒸留水、2 mlエタノール、2 mlアセトンおよび2 mlジエチルエーテルで順次洗浄した。次に、この細菌を減圧下で完全に乾燥した。
【0111】
フェノール/クロロホルム/石油エーテル抽出
90 gの固体フェノールを10 mlの水に溶解した。その溶液10 mlを、25 mlのクロロホルムおよび40 mlのヘキサン(あるいは沸点40-60℃の石油エーテル)と混合した。その混合物は単相であり透明となるはずである。もし混合物が濁っているならば、固体フェノールを追加することにより透明にすることができる。
【0112】
凍結乾燥LOSを上記抽出混合物5 mlに入れ、超音波処理槽で5分間ホモジナイズする。次にその混合物を1時間撹拌し、4℃にて10,000 gで15分間遠心分離した。上清を15 mlガラス管に回収し、ペレットの抽出を上記のように繰り返した。2回分の上清をプールした。
【0113】
上清中のクロロホルムおよびヘキサン/石油エーテルを窒素気流下で蒸発により除去した。
【0114】
残留フェノール相を氷上で冷却し、6倍容の冷ジエチルエーテル-アセトン(1:5)の添加によりLOSを沈殿させた。沈殿を4℃にて15分間遠心分離することにより集めた。ペレットを80%フェノール(1 ml)で3回、さらにジエチルエーテル(1 ml)で2回洗浄した。その後ペレットを乾燥した。
【0115】
LPS加水分解
乾燥残渣を、100 mM酢酸アンモニウムpH 4.5中に溶解した1% SDS溶液600μlに、15分間撹拌することによって溶解する。その後溶液を加熱し、80℃にて2時間撹拌する。
【0116】
OS精製
界面活性剤を除去するためにここでサンプルを処理する必要がある。溶液を減圧下で蒸発乾固する。
【0117】
界面活性剤の除去
100μlの水を加えてボルテックスする。1000μlの冷却した酸性化EtOH(20 ml EtOH + 0.5 ml HCl 1N)を加えてボルテックスする。5℃にて15分間遠心分離する。ペレットを200μl EtOHで3回洗浄する。
【0118】
リピドAの除去
ペレットをさらに250μlのCHCl3/MeOH (1:1)で2回洗浄する。OS水溶液をSPEカーボンカートリッジで精製する。OSを次に0.45μフィルターで濾過した後、HPLC SEC (0.05% TFA)により最終精製を行い、206 nmで検出する。集めた画分を蒸発乾固し、水/MeOH(1:1, v/v)10μl中で再構成した。
【0119】
質量分析
ナノスプレーイオン源を備えたQTof II (Micromass, Manchester, UK)でエレクトロスプレー質量分析を行った。オリゴ糖溶液5μlをナノスプレーニードルに入れた。サンプルは負イオンモードで実施した。質量スケールキャリブレーションはNaIを用いて行った。実験は、衝突の集中のためコリジョンセル内でアルゴンを用いて行った。積分時間は2秒とした。フルスキャンMSでは、コーン電圧は40 Vとし、衝突エネルギーは10 eVであった。
【実施例3】
【0120】
分子タイピング
分子タイピングは、施設内でSBA実験に使用された髄膜炎菌N. meningitidis の菌株20株について行い、本発明者らが得た結果は、質量分析後に確定したLOS構造と関連づけた。
【0121】
菌株
MenB株(H44/76 Norway; S3446; BZ232; M972500687, B16B6 (脱感作), BZ10, 760676 (脱感作), 2986 (脱感作), 6275およびNZ124, 608BおよびH355)、MenA株(8238, 3125)、MenW (3193, S4383 FDA)、MenY (S1975およびM010240539)、MenC 11および19は、前臨床免疫学(Preclinical Immunology)部門(C.Tans)から入手した。すべての菌株は、Mueller Hinton, GCまたはBHI固体培地で37℃+5% CO2にて一晩(o/n)培養した。30μlのH2Oに再懸濁した1/4プレートの細胞から得られた溶解物もしくは精製ゲノムDNA(QIAamp DNA Mini Kit (QIAGEN カタログ番号51304)、2 x 200μlのAEバッファー(Qiagen)で溶出させたDNA)を、ダイレクトPCR分析に使用した。
【0122】
PCRスクリーニング
鋳型DNAとして溶解物を使用する場合、全PCRプログラムは、96℃10分のステップで開始した。PCR反応は50μlで行った。すべてのプライマーは10pMで使用した。
【0123】
lpt3
- PCRプログラム:(1分96℃、1分50℃、2もしくは4分72℃)を25もしくは30サイクル行い、最終ステップは10分72℃とする。
【0124】

lpt6
- PCRプログラム:(1分96℃、1分50℃、2もしくは4分72℃)を25もしくは30サイクル行い、最終ステップは10分72℃とする。
【0125】

oac1
- PCRプログラム:(1分96℃、1分50℃、2もしくは4分72℃)を25もしくは30サイクル行い、最終ステップは10分72℃とする。
【0126】

lgtG
- PCRプログラム:(1分96℃、1分50℃、30秒もしくは2分72℃)を25もしくは30サイクル行い、最終ステップは10分72℃とする。
【0127】

Lgt3ゲノム領域
- PCRプログラム:(1分96℃、1分60℃、2もしくは4分72℃)を25もしくは30サイクル行い、最終ステップは10分72℃とする。
【0128】

DNA配列決定
lgtG
- DNA鋳型:ハイピュアPCR産物精製キット(High Pure PCR Product Purification Kit)(Roche)で精製したlgtGもしくはlgt3 PCR断片
- 配列決定プログラム:25サイクルの(30秒96℃、15秒50℃、2分30秒60℃)

oac1 (NMB2085)
- oac1は少なくとも2つの別個のフェーズ変動性領域によって制御され(IN phase:4Gおよび5G)、これはそれぞれ塩基354および1136から始まる(N.menB MC58 ゲノムのNMB0285)。
【0129】
- DNA鋳型:ハイピュアPCR産物精製キット(High Pure PCR Product Purification Kit)(Roche)で精製したoac1 PCR断片
- 配列決定プログラム:25サイクルの(30秒96℃、15秒50℃、2分30秒60℃)

oac1フェーズ変動性領域(ヌクレオチド1136-1140)の選択的PCR
- PCR増幅は、プライマーEDPoac15、EDPoac16およびoac1-4(下表)を用いて行った。フォワードプライマー(EDPoac15、EDPoac16)はそれぞれ5および6Gを有するフェーズ変動性領域を含有する。PCR増幅プログラムは、完全にマッチする場合のみ増幅可能となるようアニーリング温度が異なる(700bp)。
【0130】

上記で実施された条件下で、および別の条件およびプライマー(たとえば、異なる長さ、プライマーの中央にポリG領域に相補的な配列)を使用しても、oac1遺伝子の第1および第2のポリGフェーズ可変性領域に対する選択的PCRは、フェーズバリアントを区別することができなかった。しかしながら、フェーズ変動性領域の配列決定は、IN phaseまたはOUT of phaseの菌株をうまく区別することができたので、以下の分析はこの方法によった。
【0131】
データ概要および質量分析データとの相関
表2は、いくつかの髄膜炎菌(N. meningitidis)菌株におけるlpt3、lpt6、lgtGおよびoac1遺伝子の存在および機能性を示す。質量分析により得られた結果はグレーの地色部分である。括弧内のローマ数字はWrightら、2004により記載されたlgt3領域群である。
【表2】

【0132】
方法の検証
PEAの位置および数に関して、分析データと分子タイピングの相関は95%(20株中19株)である。
【0133】
LOSのO-アセチル化については、分析データと分子タイピングの相関は100%(20株中20株)である。
【0134】
グルコースの有無に関する、分析データと分子タイピングの相関は90%(20株中18株)であった。Heptose IIの3位にグルコースが付加された菌株の大部分において、lgtG遺伝子のCストレッチ(連続配列)は11個である。14Cを有する遺伝子はインフェーズ(in phase)であるが、その酵素は酵素活性に有害となる可能性がある1つ余分のプロリンを保有しており、このことは分析した2株においてMSと分子タイピングが一致しない理由を説明する。余分なプロリンを有するlgtGの不活化に関する仮説が確認されれば、2つの技法の相関は、100%に上がることになる。
【実施例4】
【0135】
LOS内部コアタイピングのためのPCRマルチプレックス化
- PCRマルチプレックス化の目的は、PCRによるLOSタイピング法の作業量を減らすことである。
【0136】
- PCR反応は50μlで行った。
- すべてのプライマーは10pMで使用した。
【0137】
鋳型DNA
30μlのH2Oに再懸濁した1/4プレートの細胞から得られた溶解物もしくは精製ゲノムDNA(QIAamp DNA Mini Kit (QIAGEN カタログ番号51304)のいずれかを、2 x 200μlのAEバッファー(Qiagen)で溶出したDNAを、ダイレクトPCR分析に使用した。
【0138】
プライマーおよびPCR増幅
- プライマーは200-400bpの断片を増幅するよう設計した。分析すべき異なる遺伝子(すなわちlgtG、lpt3、lpt6およびoac1)に対応する断片は、サイズが異なるはずである。
- フェーズ変動性領域を有する遺伝子(すなわちlgtGおよびoac1)のPCR増幅は、配列決定すべき領域を包含する。
- 2つのフェーズ変動性領域を分析する必要があるので、oac1のために2セットのプライマーを設計しなければならない。
【0139】

DNA配列決定
- DNA鋳型:ハイピュアPCR産物精製キット(High Pure PCR Product Purification Kit)(Roche)で精製したPCRマルチプレックス化断片
- 配列決定プログラム:(30秒96℃、15秒50℃、2分30秒60℃)を25サイクル。
【0140】

【実施例5】
【0141】
α鎖タイピングのためのPCRマルチプレックス化
菌株
MenB菌株(H44/76 Norway; S3446; BZ232; B16B6 (脱感作)、BZ10、760676 (脱感作)、2986 (脱感作)、6275、NZ124、2991、3356、DE10302_05、DE10672_06およびH355)、MenA菌株(F8238、3125および3048)、MenW (3151、3193、S4383)、MenY S1975、MenC C11、126E、DE9842およびC19は、当所の前臨床免疫学(Preclinical Immunology)部門から入手した。すべての菌株は、Mueller Hinton、GCまたはBHI固体培地で37℃+5% CO2にて一晩(o/n)培養した。
【0142】
鋳型DNA
30μlのH2Oに再懸濁した1/4プレートの細胞から得られた溶解物もしくは精製ゲノムDNA(QIAamp DNA Mini Kit (QIAGEN カタログ番号51304)、DNAは2 x 200μlのAEバッファー(Qiagen)で溶出)のいずれかを、ダイレクトPCR分析に使用した。
【0143】
プライマーおよびPCR増幅
- PCRマルチプレックス化の目的は、PCRによるLOSタイピング法の作業量を減らすことである。
- PCR反応は50μlで行った。
- すべてのプライマーは10pMで使用した。
- プライマーは200-400bpの断片を増幅するよう設計した。分析すべき異なる遺伝子(すなわちlgtA、lgtB、lgtC、lgtE、lgtHおよびlst)に対応する断片は、サイズが異なるはずである。
- フェーズ変動性領域を有する遺伝子(すなわちlgtAおよびlgtC)のPCR増幅は、配列決定すべき領域を包含する。
- PCR反応を行うためにQiagen Multiplex PCRキットを使用した。
- PCRプログラム:15分95℃、(30秒94℃、90秒50℃、40秒72℃)を30サイクル、最終ステップは10分72℃とする。
【0144】
下の表は、遺伝子lgtB、lgtA、lgtH、lgtE、lstおよびlgtCのそれぞれの断片を増幅するために使用されたプライマーセットを示す。lgtCについては、2つのプライマーセットであるEDPlgtC1s/EDPlgtC2as、およびEDPlgtC5s/EDPlgtC8asがある。PCR反応を実施する条件下で、プライマーセットEDPlgtC5s/EDPlgtC8asは、規定のlgtC遺伝子断片の最適な増幅をもたらした。
【0145】

DNA配列決定
- DNA鋳型:ハイピュアPCR産物精製キット(High Pure PCR Product Purification Kit)(Roche)で精製したPCRマルチプレックス化断片
- 配列決定プログラム:(30秒96℃、15秒50℃、2分30秒60℃)を25サイクル。
- プライマー:

トリシンゲル電気泳動および銀染色によるLOS分析
16%トリシンゲルでの電気泳動によって1〜5μlの細胞溶解液を分析した。硝酸銀染色後、LOSバンドサイズを、Novex Sharp着色済みタンパク質分子量マーカー(Invitrogen)とともに対照のL8およびL3/L7 LOSと比較した。
【0146】
データ概要および質量分析データとの相関
表3は、分子タイピングにより測定された25個の髄膜炎菌(N. meningitidis)菌株におけるlgtA、lgtB、lgtC、lgtE、lgtHおよびlst遺伝子の存在および機能性、ならびに電気泳動および銀染色により観察されたLOS分子量の推定を示す。質量分析により得られた結果はグレーの地色部分である。
【表3】

【0147】
結論
シアル酸付加:lst遺伝子は、すべての髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)菌株に存在すると報告されており、これは本発明者らの分析によって確認されているが、この遺伝子の発現は、フェーズ変動性により制御されているようではない。しかしながら、シアル酸に対する正しいアクセプター部位を示すLOSを有する菌株において、シアル酸付加のレベルが様々であることが、電気泳動によっても、MS分析によっても、観察されている。したがって、分子タイピングによるlst遺伝子の分析は、LOSシアル酸付加レベルについては情報を与えないが、マルチプレックス化分析ではポジティブコントロールとして機能しうる。
【0148】
本発明者らのマルチプレックスPCR分析から、それぞれの髄膜炎菌ゲノムがlgtEもしくはlgtH遺伝子を含有すること、ならびに、これらの遺伝子が相互排他的であることが確認されている。LOSトリシンゲル解析は、3株以外はMS分析と合致する。すなわちS3436およびBZ232 LOSは、MSにより、主としてL3タイプと決定されたが、銀染色で観察された主要な型はL8であり、ただしS3436にはL3およびL7 LOSも認められ、BZ232にはL3が認められる。S3436株において、lgtA遺伝子のフェーズ変動性Gストレッチの配列は、技術的問題または細胞混合群のいずれかの理由から、確実に決定することができなかった。反対に、菌株BZ232では、GストレッチのGの個数はORF枠を維持しており、発現されるLOSは実際に主としてL3型となるはずである。
【0149】
A3048 LOSα鎖はMSにより、六炭糖を2つだけ含有すると測定されたが、銀染色分析からは、L3 LOSと同じサイズのLOSバンドが現れ、したがってα鎖に3個の六炭糖を含有する。この菌株では、lgtAおよびlgtB遺伝子が存在し機能性であるので、分子タイピング分析は、電気泳動により観察されたサイズと合致する。
【0150】
25菌株のうち20株(80%)において、分子タイピング分析後α鎖の構造を提示することができた。残りの5株では、フェーズ変動性ストレッチのGの数が多い(最高15個)ことが、曖昧さなしにフレーム決定することを妨げている。
【0151】
構造が提示可能な20株のうち、19株(95%)は、MSおよび/またはトリシンゲル分析のデータと一致した。すなわち、それらのうち1株を除いて全株は、機能性lgtAおよびlgtB遺伝子をインフレームで保有し、L3/L7様α鎖を示す。菌株126EのゲノムはlgtA遺伝子を含有しないが、機能性lgtCを含有し、したがって2つの六炭糖からなる、予測されたL1α鎖を有する。
【0152】
菌株A3125のゲノムは、lgtBおよびlgtA遺伝子を含有するが、lgtA遺伝子はフェーズ外状態(out of phase)である。予想構造は、1個の六炭糖を有するL8様α鎖である。しかしながら、MSも銀染色分析も、2つの六炭糖からなるα鎖を示唆する。
【0153】
まとめると、本発明の25菌株のパネルにおいて、α鎖構造は、76%では正しく予測され、20%では予測不能であり(L3/L7またはL8)、4%では誤って予測される。
【0154】
LOSタイピングにおいて用いるプライマー
【表4】


【実施例6】
【0155】
分類
内部コア「修飾」:
上記実施例に示したタイピングに基づいて、表4Aに示す分類法によって菌株をタイプ分けすることができるが、この場合、菌株の内部コアはlpt3、lgtG、lpt6 およびoac1遺伝子/遺伝子産物によってタイプ分けされる。
【表4A】

【0156】
内部コアのHepIIの7位へのグリシン付加に関与する遺伝子が同定されると、表4Bでの分類にしたがって菌株をタイプ分けすることができる。
【表4B】

【0157】
内部コアのHepIIの7位へのPEA付加に関与する遺伝子が同定されると、これを用いてその構造をさらにタイプ分けすることができ、表4Cにおける分類を使用することができる。
【表4C】


【0158】
7位のグリシンおよびPEAに関与する2つの遺伝子がいずれも同定されると、これを用いてナイセリア菌株をさらにタイプ分けすることができ、表4Dに示す分類を用いることができる。
【表4D】


【0159】
α鎖タイピング
この内部コアタイピングは、α鎖の生合成に関与する遺伝子(lgtA、lgtB、lgtE、lgtH、lgtC、lgtD、lst)を用いて完成させることができ、別の分類を構成することもありうる。
【表5】

【0160】
この新たなタイピングにしたがい、
H44/76はB: 1.1.1:κと分類され、
NZ124はB: 1.2.1:κと分類され、
6275はB: 3.2.1: κと分類されることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくともlpt6 およびlgtG遺伝子の機能性遺伝子の存在(+)および/または遺伝子産物の存在(+)を決定するステップ、ならびにb) それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる、ナイセリア属(Neisseria)菌株のLOS分子タイピングの方法。

【請求項2】
a) 少なくともlpt3, lpt6 およびlgtG遺伝子の機能性遺伝子の存在(+)、および/または遺伝子産物の存在(+)を決定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる、請求項1に記載のナイセリア属菌株のLOS分子タイピングの方法。

【請求項3】
a) 少なくともlpt3、lpt6 、lgtGおよびoac1遺伝子の機能性遺伝子の存在(+)および/または遺伝子産物の存在(+)を決定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる、請求項1または2に記載のナイセリア属菌株のLOS分子タイピングの方法。

【請求項4】
a) oac1, lpt6およびlgtG遺伝子のうち少なくとも1つの機能性遺伝子の存在(+)および/または遺伝子産物の存在(+)を決定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップを含んでなる、請求項1または2に記載のナイセリア属菌株のLOS分子タイピングの方法。

【請求項5】
ステップa)が、
I. 遺伝子lpt6およびlgtGのうち1つもしくは両方がナイセリア属菌株の染色体中に存在するかどうか判定できるように設計されたプローブを用いて、前記染色体からPCR増幅を行うステップ、ならびに、必要に応じて
II. lgtGおよびlpt6遺伝子が、それぞれ機能性LgtGおよびLpt6タンパク質を発現することができるかどうか判定するステップ、
を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項6】
ステップa)において、ナイセリア属菌株の染色体における全長lgtG およびlpt6遺伝子の存在を評価する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイピングの方法。
【請求項7】
ステップa)において、ナイセリア属菌株の染色体におけるlgtG遺伝子の有無を、配列番号8もしくは配列番号9のプライマーのいずれか、または両方を用いて決定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)において、lgtG遺伝子の機能性を、ナイセリア属菌株の染色体における当該遺伝子の有無によって評価する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)において、lgtG遺伝子の機能性を、当該遺伝子もしくはその一部の配列決定によって評価する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
lgtG遺伝子の少なくともポリC領域を配列決定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
lgtG遺伝子の機能性を、配列番号8もしくは配列番号9のプライマーのいずれか、または両方を用いた配列決定によって評価する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)において、ナイセリア属菌株の染色体におけるlpt6遺伝子の有無をPCRによって判定する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ナイセリア属菌株の染色体におけるlpt6遺伝子の有無を、配列番号4もしくは配列番号5のプライマーのいずれか、または両方を用いて決定する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)において、lpt6遺伝子の機能性を、ナイセリア属菌株の染色体における当該遺伝子の有無によって評価する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップa)が、
I. 遺伝子lpt6、lgtGおよびlpt3のうち1つもしくは2つ以上もしくはすべてがナイセリア属菌株の染色体中に存在するかどうかを判定できるように設計されたプローブを用いて、前記染色体からPCR増幅を行うステップ、ならびに、必要に応じて、
II. lgtG、lpt6およびlpt3遺伝子が、それぞれ機能性LgtG、Lpt6およびLpt3タンパク質を発現することができるかどうか判定するステップ、
を含んでなる、請求項1〜14のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項16】
ナイセリア属菌株の染色体における全長lgtG、lpt6およびlpt3遺伝子の存在を評価する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップa)において、ナイセリア属菌株の染色体におけるlpt3遺伝子の有無をPCRによって判定する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ナイセリア属菌株の染色体におけるlpt3遺伝子の有無を、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3のプライマーのいずれか1つ、2つもしくは3つを用いて決定する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
lpt3遺伝子の機能性を、ナイセリア属菌株の染色体における当該遺伝子の有無によって評価する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップa)が、
I. 遺伝子lpt6、lgtG、lpt3およびoac1のうち1つ以上もしくはすべてがナイセリア属菌株の染色体中に存在するかどうかを判定するために設計されたプローブを用いて、前記染色体からPCR増幅を行うステップ、ならびに、必要に応じて、
II. lgtG、lpt6、lpt3およびoac1遺伝子が、それぞれ機能性LgtG、Lpt6、Lpt3およびOac1タンパク質を発現することができるかどうか判定するステップ、
を含んでなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項21】
ステップa)が、
I. 遺伝子lpt6、lgtGおよびoac1のうち1つもしくは2つもしくはすべてがナイセリア属菌株の染色体中に存在するかどうかを判定するために設計されたプローブを用いて、前記染色体からPCR増幅を行うステップ、ならびに、必要に応じて
II. lgtG、lpt6およびoac1遺伝子が、それぞれ機能性LgtG、Lpt6およびOac1タンパク質を発現することができるかどうか判定するステップ、
を含んでなる、請求項1〜20のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項22】
ステップa)において、全長lgtG、lpt6、lpt3およびoac1遺伝子の存在を評価する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ステップa)において、ナイセリア属菌株の染色体におけるoac1遺伝子の有無をPCRによって判定する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ナイセリア属菌株の染色体におけるoac1遺伝子の有無を、配列番号6もしくは配列番号7のプライマーのいずれか一方または両方を用いて決定する、請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
oac1遺伝子または遺伝子産物の機能性を、当該遺伝子もしくはその一部の配列決定によって評価する、請求項20〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ナイセリア属菌株染色体上のoac1遺伝子のフェーズ変動性領域のいずれか一方もしくは両方を配列決定する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
oac1遺伝子の機能性を判定するために、oac1遺伝子のポリG領域の配列を決定する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
配列番号12、配列番号13、配列番号14もしくは配列番号15のプライマーのいずれか1つを用いてoac1遺伝子を配列決定することによって、oac1遺伝子産物の機能性を評価する、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
PCR反応もしくはDNAハイブリダイゼーションに際して、次のプライマー、すなわち配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26のうち1つ以上を用いて、ナイセリア属細菌染色体上の遺伝子の有無を検出することができる、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ナイセリア染色体上のlgt3領域を増幅することによって、lgtGおよびlpt6遺伝子の有無を同時に評価する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
PCR産物を作製し、ナイセリア属染色体のlgt3領域の長さによってlgtGおよびlpt6遺伝子の有無を評価する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
配列番号10もしくは配列番号11のプライマーのいずれか一方または両方を用いて、lgtGおよびlpt6遺伝子をPCRで評価する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14もしくは配列番号15のプライマーのうち1つ以上を用いて配列決定反応を行う、請求項1〜32のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項34】
PCR増幅反応がマルチプレックス化されている、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
配列番号8、配列番号9、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26のプライマーのうち1つ以上を用いてマルチプレックスPCR反応を行う、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
LOSの外部コア構造を評価することによってLOSをさらにタイプ分けする、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、a)lgtEの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる、請求項36に記載の方法。

【請求項38】
前記方法が、a)lgtHの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、を含んでなる、請求項36または37に記載の方法。

【請求項39】
前記方法が、a)lgtCの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、をさらに含んでなる、請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法。

【請求項40】
前記方法が、a)lgtAの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、をさらに含んでなる、請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法。

【請求項41】
前記方法が、a)lgtBの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、をさらに含んでなる、請求項36〜40のいずれか1項に記載の方法。

【請求項42】
前記方法が、a)lgtDの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、をさらに含んでなる、請求項36〜41のいずれか1項に記載の方法。

【請求項43】
前記方法が、a)lstの機能性遺伝子および/または遺伝子産物の存在(+)を判定するステップ、ならびにb)それが下記のいずれであるかについて菌株をタイプ分けするステップ、をさらに含んでなる、請求項36〜42のいずれか1項に記載の方法。

【請求項44】
ナイセリア属の遺伝子の有無をPCR増幅によって評価する、請求項36〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
PCR増幅反応がマルチプレックス化されている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号39または配列番号40のプライマーのうち1つ以上を用いてマルチプレックスPCR反応を行う、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
配列番号29、配列番号30、配列番号39または配列番号40のプライマーのうち1つ以上を用いて配列決定反応を行う、請求項36〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
I. ナイセリア染色体上のlgtG遺伝子の有無、またはlgtGによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
II. lgtG遺伝子が機能性であるかどうかを判定するステップ、ならびに
III. lpt6遺伝子の有無、またはlpt6によってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
を含んでなる、請求項1〜47のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項49】
I. ナイセリア染色体上のlpt3遺伝子の有無、またはlpt3によってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
I. ナイセリア染色体上のoac1遺伝子の有無、またはoca1によってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
II. oac1遺伝子が機能性であるかどうかを判定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
I. ナイセリア染色体上のlgtE遺伝子の有無、またはlgtEによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
I. ナイセリア染色体上のlgtH遺伝子の有無、またはlgtHによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
I. ナイセリア染色体上のlgtC遺伝子の有無、またはlgtCによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
II. lgtC遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうかを判定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
I. ナイセリア染色体上のlgtA遺伝子の有無、またはlgtAによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
II. lgtA遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうかを判定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
I. ナイセリア染色体上のlgtB遺伝子の有無、またはlgtBによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
I. ナイセリア染色体上のlgtD遺伝子の有無、またはlgtDによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、ならびに
II. lgtD遺伝子が機能性タンパク質をコードしているかどうかを判定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
I. ナイセリア染色体上のlst遺伝子の有無、またはlstによってコードされる遺伝子産物の有無を決定するステップ、
をさらに含んでなる、請求項48〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
ステップa)が、
I. ナイセリア属菌株からRNAを精製するステップ、
II. lpt6およびlgtG mRNA転写物が存在するかどうか、ならびに、必要に応じて、lpt3、oac1、lgtE、lgtH、lgtC、lgtB、lgtA、lgtDまたは lstが存在するかどうかを判定できるよう設計されたプローブを用いて、RT-PCR増幅を行うステップ、
III. mRNA転写物からcDNAを作製するステップ、ならびに
IV. 機能性lgtG遺伝子が存在するかどうか、さらに必要に応じてoac1、lgtC、lgtDおよびlgtAのうち1つ以上が存在するかどうかを判定するために、cDNAの配列決定を行うステップ、
を含んでなる、請求項1〜57のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項59】
ステップa)が、
I. ナイセリア属菌株からRNAを精製するステップ、
II. lpt6、lgtG、lgtEおよびlgtH のmRNA転写物が存在するかどうか、さらに必要に応じて、lpt3、oac1、lgtD、lgtC、lgtB、lgtAまたは lstが存在するかどうかを判定することができるよう設計されたプローブを用いて、RT-PCR増幅を行うステップ、
III. mRNA転写物からcDNAを作製するステップ、ならびに
IV. 機能性lgtG遺伝子が存在するかどうか、さらに必要に応じてoac1、lgtC、lgtDおよびlgtA遺伝子のうち1つ以上が存在するかどうかを判定するために、cDNAの配列決定を行うステップ、
を含んでなる、請求項1〜58のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項60】
ステップa)が、
I. ナイセリア属菌株から細胞溶解液を作製するステップ、ならびに
II. lpt6およびlgtG によってコードされるタンパク質の存在を検出し、さらに必要に応じてlpt3、oac1、lgtE、lgtD、lgtH、lgtC、lgtB、lgtAおよび lstのうち1つ以上によってコードされるタンパク質の存在を検出するステップ、
を含んでなる、請求項1〜59のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項61】
ステップa)が、
I. ナイセリア属菌株から細胞溶解液を作製するステップ、ならびに
II. lpt6、lgtG、lgtEおよびlgtHによってコードされるタンパク質の存在を検出し、さらに必要に応じてlpt3、oac1、lgtD、lgtC、lgtB、lgtAおよび lstのうち1つ以上によってコードされるタンパク質の存在を検出するステップ、
を含んでなる、請求項1〜60のいずれか1項に記載のLOS分子タイピングの方法。
【請求項62】
請求項1〜58のいずれか1項に記載の方法に従って実施される、ナイセリア属菌定着の診断もしくは分子タイピングのための、プライマーを含んでなるキット。
【請求項63】
ナイセリア属菌の定着および/または感染の診断、もしくは分子タイピングのための、請求項1〜61のいずれか1項に記載のプライマーを含んでなるキット。
【請求項64】
I. 宿主から生物学的サンプルを採取するステップ、ならびに
II. 必要に応じて、請求項62または63に記載のキットを使用することにより、請求項1〜61のいずれか1項に記載の方法を実行するステップ、
を含んでなる、ナイセリア属菌の定着に感受性である宿主において、ナイセリア属菌の定着および/または感染を診断ならびに分類する方法。
【請求項65】
前記ナイセリア属菌が、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ナイセリア属菌が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)である、請求項64に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−535019(P2010−535019A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518679(P2010−518679)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060077
【国際公開番号】WO2009/016237
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】