説明

リポキシン化合物

【課題】 リポキシン類は、複数の疾患及び状態に生体内投与することができる効力のある小分子であるが、これらの分子は生体内で寿命が短い。天然のリポキシン類と同じ生物活性を有するが、もっと長い生体内半減期を有する化合物は、有益な薬である。
【解決手段】 本発明は、天然のリポキシンと同じか又は類似の活性領域を有するが、生体内異化作用に対してより抵抗性の代謝的変換領域を有するリポキシン類似体を特徴とする。従って本開示リポキシン類似体は天然のリポキシン類の生物活性を有するが、より長い代謝半減期を有する。本開示リポキシン類似体のあるものはさらに、天然のリポキシン類と比較して増加した生体内力価、より高いリポキシンレセプターへの結合親和力、又は強化された生物活性を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然のリポキシンと同じか又は類似の活性領域を有するが、生体内異化作用に対してより抵抗性の代謝的変換領域を有するリポキシン類似体を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
リポキシン類は、リポキシゲナーゼ酵素系の作用を介してアラキドン酸から誘導される生物活性媒介物の群である。(非特許文献1)。ヒトの細胞型における生成は5−リポキシ1ゲナーゼ又は15−リポキシゲナーゼにより開始される。(非特許文献2)。単細胞型(single−cell type)は、エイコサノイドのヒト好中球−血小板及び好酸球経細胞生合成(eosinophil transcellular biosynthesis)の間にナノグラムの量でリポキシン類を生成する。(非特許文献3)。リポキシン類は共役テトラエン−含有エイコサノイド類であり、それはいくつかの臓器系において細胞で起こる事を調節する。
【0003】
リポキシンA(LXA)及びリポキシンB(LXB)は2つの主要なリポキシン類である。それぞれは10nMで、赤白血病細胞の核におけるプロテインキナーゼC(PKC)活性を強化する(非特許文献4)。それぞれ、nMの量で敏速な血管拡張を誘導する(非特許文献5);(非特許文献6)。リポキシン類の血管拡張効果は十分に例証されている。例えば吸入を介してマイクロモルの量でLXAを投与すると、喘息の患者の気管支収縮が妨害される。(非特許文献7)。
【0004】
10−10Mの範囲でLXAは、最適濃度以下の顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)と組み合わされて細胞増殖も刺激し、骨髄性骨髄コロニー形成を誘導する(非特許文献8)。LXAはヒト単核細胞コロニー形成も刺激する(非特許文献9)。
【0005】
LXAは、多形核白血球の化学走性を阻害する(非特許文献10)。リポキシン類の等モル量の組み合わせは、糸球体炎症(glomerular inflammation)における多形核好中球−糸球体間質細胞相互作用を調節することが見いだされた。(非特許文献11)。多形核好中球(PMN)の活性化は、糸球体炎症の初期に伴う構造的及び機能的異常の媒介物の放出を含む。(非特許文献12)。
【0006】
リポキシン類は、炎症の媒介物であるロイコトリエン(LT)に対する拮抗剤として作用する。LXAは、喘息患者における気道のLTC−誘導閉塞を調節する。(非特許文献13)。LXAは、動物の生体内モデルにおいてLTD−及びLTB−媒介炎症を阻害する。(非特許文献14);(非特許文献15)。先にLXA(nM)に暴露すると、LTDの腎血管収縮作用が妨害される(非特許文献6)。ロイコトリエン−誘導炎症は、例えば関節炎、喘息、種々の型のショック、高血圧、腎疾患、アレルギー反応及び心筋梗塞を含む循環器疾患において起こる。
【0007】
リポキシン類は、複数の疾患及び状態に生体内投与することができる効力のある小分子であるが、これらの分子は生体内で寿命が短い。天然のリポキシン類と同じ生物活性を有するが、もっと長い生体内半減期を有する化合物は、有益な薬である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Serhan,C.N.and Samuelsson,B.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5335
【非特許文献2】Serhan,C.N.(1991)J.Bioenerg.Biomembr.23:105
【非特許文献3】Serhan,C.N.and Sheppard,K.−A.(1990)J.Clin.Invest.85:772
【非特許文献4】Beckman,B.S.et al.(1992)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.201:169
【非特許文献5】Busija,D.W.et al.(1989)Am.J.Physiol.256:H468
【非特許文献6】Katoh,T.et al.(1992)Am.J.Physiol.263(Renal Fluid Electrolyte Physiol32:F436
【非特許文献7】Christie,P.E.et al.(1992)Am.Rev.Respir.Dis.145:1281
【非特許文献8】Stenke,L.et al.(1991)Biochem.Biophys.Res.Commun.180:255
【非特許文献9】Popov,G.K.et al.(1989)Bull.Exp.Biol.Med.107:93
【非特許文献10】Lee,T.H.et al.(1991)Biochem.Biophys.Res.Commun.180:1416
【非特許文献11】Brady,H.R.et al.(1990)Am.J.Physiol.809
【非特許文献12】Wilson,C.B.and Dixon,F.J.(1986)In:The Kidney,B.M.Brenner and F.C.Rector.Philadelphia,PA:Saunders出版,p.800−891
【非特許文献13】Christie,P.E.et al.(1992)Am.Rev.Respir.Dis.145:1281
【非特許文献14】Badr.K.F.et a.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.86:3438
【非特許文献15】Hedqvist,P.et al.(1989)Acta Physiol.Scand.137:571
【発明の概要】
【0009】
従って本開示リポキシン類似体は天然のリポキシン類の生物活性を有するが、より長い代謝半減期を有する。本開示リポキシン類似体のあるものはさらに、天然のリポキシン類と比較して増加した生体内力価、より高いリポキシンレセプターへの結合親和力、又は強化された生物活性を有することができる。
【0010】
本発明は、開示化合物の好ましい製造法及び製造において有用な中間体、ならびに生物活性、生体内半減期、リポキシン代謝を阻害する能力に関してリポキシン化合物を特性化するために、及び/又はリポキシンレセプターへの結合親和力を決定するために有用なアッセイも特筆する。
【0011】
本発明はさらに、リポキシンに基づく小分子薬剤、及び患者における不適当な、又は不相応なリポキシン媒介細胞応答に伴う疾患又は状態の処置又は予防におけるそれらの利用を特徴とする。1つの実施態様において、リポキシン類似小分子はロイコトリエン拮抗剤として作用し、従ってロイコトリエン誘導炎症などのロイコトリエン刺激から生ずる疾患又は状態の処置において有用である。他の実施態様の場合、リポキシン類似小分子は骨形成を開始し、従って骨髄抑制疾患(myeloid suppressive disorders)の処置に有用である。
【0012】
天然のリポキシン類と同様に、本開示小分子は非常に効力が高く、生物適合性である(すなわち無毒性)。しかし天然のリポキシン類と異なり、リポキシン類似体は代謝を阻害、抵抗又はもっとゆっくり受け、従ってより長い薬理学的活性を有する。さらに本開示化合物は天然のリポキシン類より親油性であり、従って生体膜によりより容易に吸収される。
【0013】
本発明はさらにリポキシン化合物の診断的及び研究的利用に関する。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から、より明らかになるであろう。
【0014】
発明の詳細な記述
本発明で用いられる場合、以下の句及び用語は以下の通りに定義される:
「リポキシン類似体」は、「天然のリポキシン」の活性領域と同様に機能する「活性領域」を有するが、天然のリポキシンと異なる「代謝的変換領域」を有する化合物を意味する。リポキシン類似体は、天然のリポキシンに構造的に類似の化合物、同じレセプター認識部位を共有する化合物、リポキシンと同じ又は類似のリポキシン代謝的変換領域を共有する化合物、及びリポキシンの類似体であることが当該技術分野において認められる化合物を含む。リポキシン類似体はリポキシン類似代謝物も含む。本明細書に開示される化合物は、1つ又はそれ以上の不整中心を含むことができる。不整炭素が存在する場合、1つより多くの立体異性体が可能であり、すべての可能な異性体は、示される構造表示に含まれるものとする。光学活性(R)及び(S)異性体は、熟練者に既知の従来の方法を用いて分割することができる。本発明は可能なジアステレオマー、ならびにラセミ体及び光学的に分割された異性体を含むものとする。
【0015】
「対応するリポキシン」及び「天然のリポキシン」という用語は、天然に存在するリポキシン又はリポキシン代謝物を言う。類似体がリポキシン−特異的レセプターに対する活性を有する場合、対応する、又は天然のリポキシンはそのレセプターに対する正常なリガンドである。例えば類似体が分化HL−60細胞上のLXA特異的レセプターに対する特異的活性を有するLXA類似体である場合、対応するリポキシンはLXAである。類似体が天然に存在するリポキシンにより拮抗される他の化合物(例えばロイコトリエン)に対する拮抗剤としての活性を有する場合、天然のリポキシンは対応するリポキシンである。
【0016】
「活性領域」は、天然のリポキシン又はリポキシン類似体の、生体内細胞相互作用に伴う領域を意味する。活性領域は細胞のリポキシンレセプター、あるいは酵素及びその補因子を含む巨大分子又は巨大分子の複合体の「認識部位」に結合することができる。好ましいリポキシンA類似体は、天然のリポキシンAのC−C15を含む活性領域を有する。好ましいリポキシンB類似体は、天然のリポキシンBのC5−C14を含む活性領域を有する。
【0017】
「認識部位」又はレセプターという用語は、当該技術分野において認められており、一般にそれを用いてホルモン類、ロイコトリエン類及びリポキシン類などの細胞メッセンジャーのある群が、これらのメッセンジャーへの生物化学的及び生理学的応答が開始される前に最初に相互作用するべき機能性巨大分子又は巨大分子の複合体を言うものとする。本出願において用いられる場合、レセプターは無傷の、又は透過化(permeabilized)細胞において、あるいは臓器を含む組織において単離することができる。レセプターは生存患者からのもの、又は生存患者中のものであることができ、あるいはそれをクローニングすることができる。レセプターは正常に存在することができ、あるいは疾患状態により、外傷により又は人工的手段により誘導することができる。本発明の化合物は認識部位の天然の基質に関して可逆的に、不可逆的に、競合的に、非競合的に、又は不競合
的に結合することができる。
【0018】
「代謝的変換領域」という用語は一般に、酵素又は酵素とその補因子が、リポキシンにおいて正常にその酵素又は酵素とその補因子が行う1つ又はそれ以上の代謝的変換を行おうとする、リポキシン、リポキシン代謝物又はリポキシン類似体代謝物を含むリポキシン類似体の部分を言うものとする。代謝的変換領域は、変換に感受性であることもでき、感受性でないこともできる。リポキシンの代謝的変換領域の非制限的例は、LXAにおける、C−13,14二重結合又はC−15ヒドロキシル基、あるいは両者を含む部分である。
【0019】
「検出可能標識分子」という用語は、検出可能標識分子が結合した化合物又はレセプター認識部位を追跡、探知又は同定するために用いられる蛍光、リン光及び放射性標識分子を含むものとする。標識分子は当該技術分野において既知のいくつかの方法のいずれかを用いて検出することができる。
【0020】
「標識リポキシン類似体」という用語はさらに、これらに限られるわけではないがトリチウム(H)、ジューテリウム(H)、炭素(14C)などの放射性同位体を用いて標識された、又は他の方法で(例えば蛍光により)標識された化合物を含むと理解される。本発明の化合物は、例えば速度論的結合実験のために、代謝経路及び酵素的機構をさらに解明するために、あるいは分析化学の分野において既知の方法による特性化のために標識又は誘導することができる。
【0021】
「代謝を阻害する」という用語は、本来のリポキシンを代謝する酵素の活性の妨害又は減少を意味する。妨害又は減少は共有結合により、不可逆的結合により、事実上不可逆的結合の効果を有する可逆的結合により、又は酵素が通常の方法でリポキシン類似体代謝物を含むリポキシン類似体、リポキシン又はリポキシン代謝物に作用するのを防ぐ他の手段により行うことができる。
【0022】
「代謝に抵抗する」という用語は、リポキシン類を代謝する酵素の少なくとも1つによる代謝的分解的変換の1つ又はそれ以上を行わないことを含むものとする。代謝に抵抗するLXA類似体の2つの非制限的例は1)15−オキソ形態に酸化されることができない構造、及び2)15−オキソ形態に酸化されることができるが、13,14−ジヒドロ形態への酵素還元に感受性でない構造である。
【0023】
「代謝をもっとゆっくり受ける」という用語は、もっと遅い反応速度論を有すること、又はリポキシンを代謝する1つ又はそれ以上の酵素による一連の代謝的変換の完了に、より長い時間を必要とすることを意味する。代謝をもっとゆっくり受けるLXA類似体の非制限的例は、類似体がC−16において立体障害があるために、C−15脱水素に関してLXAが有するより高い遷移状態エネルギーを有する構造である。
【0024】
「組織」という用語は、無損傷の細胞、血液、血漿及び血清などの血液製剤(blood preparation)、骨、関節、筋肉、平滑筋及び臓器を含むものとする。
【0025】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、又はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含むものとする。
【0026】
「製薬学的に許容し得る塩」という用語は、当該技術分野において認められた製薬学的に許容し得る塩類を含むものとする。これらの無毒性塩類は通常、生理学的条件下で加水分解され、有機及び無機塩基を含む。塩類の例はナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、銅及びアルミニウム、ならびに第1、第2及び第3アミン類、塩基性イオン
交換樹脂、プリン類、ピペラジンなどを含む。この用語はさらに低級炭化水素基、例えばメチル、エチル及びプロピルのエステルを含むものとする。
【0027】
「製薬学的組成物」という用語は、活性成分として1種又はそれ以上のリポキシン類似体、又はそれらの製薬学的に許容し得る塩(類)を含み、製薬学的に許容し得る担体及び場合により他の治療的成分も含むことができる。組成物は経口的、直腸内、眼内、肺内、鼻内、皮膚的、局所的、非経口的(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)、又は吸入的投与に適した組成物を含む。いずれの特定の場合にも、最も適した経路は処置されるべき状態の性質及び重度、ならびに活性成分の性質に依存するであろう。組成物は単位投薬形態で存在することができ、薬学の分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。投薬計画は、治療応答を向上させる目的に合わせることができる。例えば1日数回の分割された投薬量を投与することができ、あるいは投薬量を時間を経て相対的に減少させることができる。当該技術における熟練者は通常、有効な投薬量及び適した計画を決定することができる。リポキシン類似体製薬学的組成物は、リポキシン類、リポキシン類似体、及び/又はリポキシン類似体の代謝物を含むリポキシン代謝物を含む組み合わせも言うことができる。組み合わせの非制限的例は、リポキシン類を代謝する1つの酵素を阻害し、場合によりリポキシンレセプター認識部位との特異的活性を有するリポキシン類似体x、及びリポキシンレセプター認識部位との特異的活性を有し、場合によりリポキシン代謝を阻害又は抵抗する第2のリポキシン類似体yを含む混合物である。この組み合わせは、xがリポキシン類を代謝する酵素の1つを阻害するので、少なくともyに関して、より長い組織半減期を生ずる。かくしてyにより媒介される、又は拮抗されるリポキシン作用が強化される。
【0028】
「患者」という用語は、炎症、炎症応答、血管収縮及び骨髄抑制によって起こる、又はそれらが寄与する状態又は疾患に感受性の生存生物を含むものとする。患者の例は、人間、犬、猫、牛、羊及びねずみが含まれる。患者という用語はさらに、形質転換された種を含むものとする。
【0029】
リポキシン化合物
本発明は、リポキシン類が生体内においてある種の細胞により独特のやり方で急速に代謝されるという驚くべき発見に基づいている。他のリポキシゲナーゼ−誘導生成物(例えばロイコトリエン)はω−酸化及び続くβ−酸化により代謝されるが(Huwyler et al.,(1992)Eur.J.Biochem.206,869−879)、本発明は、リポキシン類がリポキシン分子のある部位に作用する一連の酸化及び還元反応により代謝されるという予想に反した発見に基づいている。例えばLXA代謝は少なくとも部分的に、15−オキソ−LXAを生成するC−15ヒドロキシルの酸化、13,14−ジヒドロ−15−オキソ−LXAを与えるC−13,14二重結合の還元、及びさらに13,14−ジヒドロ−LXAを与える還元を介して起こることが見いだされた。LXB及びその天然の異性体の場合、類似の酸化がC−5ヒドロキシルにおいて起こり、還元がC−6,7二重結合において起こる。
【0030】
かくして本発明は、リポキシン活性を有するが、脱水素及び従って続く生体内における分解を防ぐように化学的に修飾されたリポキシン類似体を特筆する。これらの類似体においては、天然のリポキシンのC−1〜C−13部分は保存されていることも、又は保存されていないこともできる。C−1〜C−13部分の変形は、異なるシス又はトランス幾何学、ならびに置換を含む。開示化合物を下記に構造的種類により示し、それをさらに細分種類に分割する。以下の2つのR基のそれぞれに含まれる細分種類を、頁の左にローマ数字で示す。
【0031】
両用語共本明細書に定義される通りの、「活性領域」及び「代謝的変換領域」を含む本
リポキシン類は一般に以下の構造のものである:
【0032】
【化1】

【0033】
ここでAは
【0034】
【化2】

【0035】
であることができ、
Bは
[式中、Aは
【0036】
【化3】

【0037】
ここでXはR、OR又はSRであり;
ここでR
(i)水素;
(ii)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;
(iii)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(iv)炭素数が7〜12のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0038】
【化4】

【0039】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH及び水素から成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(vii)検出可能標識分子;又は
(viii)炭素数が2〜8の直鎖状もしくは分枝鎖状アルケニル全体;
であり;
は(C=O)、SO又は(CN)であり;
はO、S又はNHであり;
及びRの1つは水素であり、他は
(a)H;
(b)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;
(c)炭素数が3〜6のシクロアルキル全体;
(d)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜8のアルケニル全体;
(e)R
ここでQは−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;Rは直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体である;
であり;

(a)H;
(b)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜6のアルキル全体;である;
【0040】
【化5】

【0041】
ここでR
(i)水素;
(ii)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;
(iii)炭素数が3〜10のシクロアルキル;
(iv)炭素数が7〜12のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0042】
【化6】

【0043】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して−NO、−CN、−C(=O)−R、水素及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(vii)検出可能標識分子;又は
(viii)炭素数が2〜8の直鎖状もしくは分枝鎖状アルケニル全体;
であり;
n=1〜10全体であり;
、R3a及びR3bは独立して
(a)H;
(b)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;
(c)炭素数が3〜6のシクロアルキル全体;
(d)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜8のアルケニル全体;
(e)R
ここでQは−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;Rは直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体である;
から選ばれ;
又はYは−OH、メチル又は−SHであり、他は
(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンであり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;
(d)炭素数が1〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルコキシ全体;であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
である;
【0044】
【化7】

【0045】
ここでR
(a)H;又は
(b)炭素数が1〜8のアルキル;
から成る群より選ばれる;
【0046】
【化8】

【0047】
ここでR
(i)水素;
(ii)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;
(iii)検出可能標識分;
であり;
n=1〜10全体であり;
、R3a及びR3bは独立して
(a)H;
(b)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;
(c)炭素数が3〜6のシクロアルキル全体;
(d)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜8のアルケニル全体;
(e)R
ここでQは−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;Rは直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体である;
から選ばれ;

(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはハロゲンであり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;である;
であり;
Bは
【0048】
【化9】

【0049】
ここでY又はYは−OH、メチル又は−SHであり、他は
(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンであり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;
(d)炭素数が1〜4のアルコキシ全体;
であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり;

(a)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【0050】
【化10】

【0051】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R、メトキシ及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全
体であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体であり;
(d)−C(Riii)(Riv)−R
ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;
(ii)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0+3であり、Zは独立してハロゲンから成る群より選ばれ
(e)炭素数が1〜8であり、1〜6個のハロゲン原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ハロアルキル全体;
であり;

(a)H;
(b)炭素数が1〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
(c)ハロゲン;
である;
【0052】
【化11】

【0053】
ここでY又はYは−OH、メチル、−H又は−SHであり、他は
(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはシアノ、ニトロ又はF、Cl、Br、Iを含むハロゲンであり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;
(d)炭素数が1〜4のアルコキシ全体;
であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり;

(a)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【0054】
【化12】

【0055】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R、メトキシ及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体であり;
(d)−C(Riii)(Riv)−R
ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;及び
(ii)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0+3であり、Zは独立してハロゲンから成る群より選ばれる:
から成る群より選ばれ;
(e)炭素数が1〜8であり、1〜6個のハロゲン原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ハロアルキル全体;
である;
【0056】
【化13】

【0057】
ここでY又はYはヒドロキシル、メチル、水素又はチオールであり、他は
(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはシアノ、ニトロ又はハロゲン[F、Cl、Br、Iを含む]であり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;
(d)炭素数が1〜4のアルコキシ全体;
であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり;

(a)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;
(iii)置換フェニル
【0058】
【化14】

【0059】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R、メトキシ及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体であり;
(d)−C(Riii)(Riv)−R
ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;及び
(ii)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0+3であり、Zは独立してハロゲンから成る群より選ばれる:
から成る群より選ばれる;
である;
【0060】
【化15】

【0061】
ここでY又はYは−OH、メチル又は−SHであり、他は
(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンであり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;
(d)炭素数が1〜4のアルコキシ全体;
であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり;

(a)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【0062】
【化16】

【0063】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R、メトキシ及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体であり;
(d)−C(Riii)(Riv)−R
ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;又は
(ii)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0+3であり、Zは独立してハロゲンから成る群より選ばれる;
から選ばれ;
(e)炭素数が1〜8であり、1〜6個のハロゲン原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ハロアルキル全体;
であり;

(a)H;
(b)炭素数が1〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
(c)ハロゲン;
である;
【0064】
【化17】

【0065】
ここでY又はYは−OH、メチル、水素又は−SHであり、他は
(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンであり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;
(d)炭素数が1〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルコキシ全体;であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり;
又はYは−OH、メチル、水素又は−SHであり、他は
(a)H
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;
Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンであり;
(c)直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数が2〜4のアルキル全体;
(d)炭素数が1〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルコキシ全体;であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり;

(a)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【0066】
【化18】

【0067】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素、メトキシ及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体又は置換フェニルであり;
(d)−C(Riii)(Riv)−R
ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;又は
(ii)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0+3であり、Zは独立してハロゲンから成る群より選ばれる;
から選ばれ;
(e)炭素数が1〜8であり、1〜6個のハロゲン原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ハロアルキル全体;
であり;
C−1位アミド類、C−1位アルカノエート類及び(5S,14R,15S)−トリヒドロキシ−6E,8Z,10E,12E−エイコサテトラエン酸(LXB)の製薬学的に許容し得るC−1位塩類;LXBのC−5、C−6及びC−5位アルカノエート類を除外する;
【0068】
【化19】

【0069】
ここでR
【0070】
【化20】

【0071】
から成る群より選ばれる;
【0072】
【化21】

【0073】
ここでR及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又は−CF及び−CHFを含むハロメチル類;
(d)ハロゲン;
(e)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ
から成る群より選ばれ;
及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又は−CF及び−CHFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ全体;あるいは
(f)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜4のアルキル又はハロアルキル全体;
から成る群より選ばれる;
【0074】
【化22】

【0075】
ここでR及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)CFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素数が1〜3の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;あるいは
(f)炭素数が1〜3のアルコキシ全体;
から成る群より選ばれ;
及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又は−CF及び−CHFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ全体;あるいは
(f)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜4のアルキル又はハロアルキル全体;
から成る群より選ばれる;
【0076】
【化23】

【0077】
ここでR及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)CF及びCHFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素数が1〜3の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
(f)炭素数が1〜3のアルコキシ全体;
から成る群より選ばれ;

(a)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【0078】
【化24】

【0079】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素、メトキシ及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体又は置換フェニルであり;
(d)−C(Riii)(Riv)−R
ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;又は
(ii)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0+3であり、Zは独立してハロゲンから成る群より選ばれる;
から選ばれ;あるいは
(e)炭素数が1〜8であり、1〜6個のハロゲン原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ハロアルキル全体;
であり;
しかしC−1位アミド類、C−1位アルカノエート類及び(5S,14R,15S)−トリヒドロキシ−6E,8Z,10E,12E−エイコサテトラエン酸(LXB)の製薬学的に許容し得るC−1位塩類;LXBのC−5、C−6及びC−5位アルカノエート類を除外する。
【0080】
本発明の他の実施態様において、リポキシン類似体は以下の構造式VIを有する:
【0081】
【化25】

【0082】
式中、R
(a)H;又は
(b)炭素数が1〜8のアルキル
の群から選ばれ;
式中、Rは:
【0083】
【化26】

【0084】
から成る群より選ばれる。
【0085】
本発明の他の好ましい実施態様の場合、リポキシン類似体は以下の構造式VIIを有する:
【0086】
【化27】

【0087】
式中、R
(a)H;又は
(b)炭素数が1〜8のアルキル;
の群から選ばれ;
式中、R及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又は−CF及び−CHFを含むハロメチル類;
(d)ハロゲン;
(e)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ;
の群から選ばれ;
式中、R及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又は−CF及び−CHFを含むハロメチル類;
(d)ハロゲン;
(e)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ;又は
(f)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜4のアルキル又はハロアルキル全体;
の群から選ばれ;
しかしC−1位アミド類、C−1位アルカノエート類、及び(5S,6R,15S)−トリヒドロキシ−7E,9E,11Z,13E−エイコサテトラエン酸(LXA)の製薬学的に許容し得るC−1位塩類、LXAのC−5、C−6及びC−15位アルカノエート類を除外する。
【0088】
本発明の他の好ましい実施態様において、リポキシン類似体は構造式VIIIを有する:
【0089】
【化28】

【0090】
式中、R
(a)H;又は
(b)炭素数が1〜8のアルキル;
の群から選ばれ;
式中、R及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)CFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素数が1〜3の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;又は
(f)炭素数が1〜3のアルコキシ全体;
の群から選ばれ;
式中、R及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又は−CF及び−CHFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ全体;又は
(f)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜4のアルキル又はハロアルキル全体;
の群から選ばれる。
【0091】
本発明の他の好ましい実施態様において、リポキシン類似体は構造式IXを有する:
【0092】
【化29】

【0093】
式中、R
(a)H;又は
(b)炭素数が1〜8のアルキル;
の群から選ばれ;
式中、R及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)CF及びCHFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素数が1〜3の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
(f)炭素数が1〜3のアルコキシ全体;
の群から選ばれ;
式中、R
(a)炭素数が1〜9の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【0094】
【化30】

【0095】
ここでZ、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R及び−SOHから成る群より選ばれ;
ii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素、メトキシ及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体又は置換フェニルであり;
(d)−C(Riii)(Riv)−R
ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;又は
(ii)CH
から成る群より選ばれ、ここでa+b=3、a=0〜3、b=0+3であり、
Zはハロゲンから成る群より選ばれ;あるいは
(e)炭素数が1〜8であり、1〜6個のハロゲン原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ハロアルキル;
である。
【0096】
他の好ましい実施態様において、化合物は構造式Xを有する:
【0097】
【化31】

【0098】
式中、R
(a)H;又は
(b)炭素数が1〜8のアルキル全体;
の群から選ばれ;
式中、R及びRは独立して
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)例えばCFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素数が1〜3の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
(f)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ全体;
の群から選ばれる。
【0099】
他の好ましい実施態様において、化合物は構造式XIを有する:
【0100】
【化32】

【0101】
式中、R
(i)水素;
(ii)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;又は
(iii)検出可能標識分子;
であり;
式中、n=1〜10全体であり;
式中、Y、R3a及びR3bは独立して
(a)H;
(b)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜8のアルキル全体;
(c)炭素数が3〜6のシクロアルキル全体;
(d)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が2〜8のアルケニル全体;又は
(e)R
ここでQは−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;Rは直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜8のアルキル全体である;
から選ばれ;
式中、Yは−OH、メチル又は−SHであり;
式中、Y
(a)H;
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり
Zはハロゲンである;あるいは
(c)炭素数が2〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
であり;
式中、Y及びYは独立して
(a)H;
(b)CH
ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり
Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンである;あるいは
(c)炭素数が2〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
から成る群より選ばれ;
式中、Y及びYは独立して
(a)H;
(b)炭素数が2〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル全体;
(c)炭素数が1〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状アルコキシ全体;あるいは
(d)ヒドロキシル又はチオール;
から成る群より選ばれ;
式中、R
(a)直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH−R
ここでn=0〜3であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル全体;
(ii)フェニル;
(iii)置換フェニル
【0102】
【化33】

【0103】
ここでZii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素、メトキシ及びヒドロキシルから成る群より選ばれ;
(c)−R
ここでQ=−O−又は−S−であり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状であることができる炭素数が0〜6のアルキレン全体であり;

【0104】
【化34】

【0105】
であり;
(d)炭素数が1〜8であり、1〜6個のハロゲン原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ハロアルキル全体;
であり、
しかしC−1位アミド類、C−1位アルカノエート類、及び(5S,6R,15S)−トリヒドロキシ−6E,8Z,10E,12E−エイコサテトラエン酸(LXB)の製薬
学的に許容し得るC−1位塩類、LXBのC−5、C−6及びC−5位アルカノエート類(酢酸塩類)を除外する。
【0106】
最も好ましい本発明の実施態様において、本発明の化合物は以下の構造式を有する:
【0107】
【化35】

【0108】
【化36】

【0109】
式中、R’はH又はCHである。
【0110】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明の化合物は以下の構造式を有する:
【0111】
【化37】

【0112】
リポキシン化合物の製造法
好ましい化合物は、以下の実施例1に特定的に記載する通りにして製造することができる。本発明の他の化合物は、選択的水素化、Pd(0)−Cu(I)カップリング、Wittig−型カップリング、Sharplessエポキシ化、ならびに下記及び文献に記載の主要な中間体のカップリングに続く非対称還元などの標準的な化学的方法を用いるリポキシン(LX)及びプロスタグランディン合成のための戦略を組み合わせることにより製造することができ、安定な本発明のLX類似体を生成することができる。(Webbe
r,S.E.et al.(1988)Adv.Exp.Med.Biol.229:61;Raduechel,B.and Vorbrueggen,H.(1985)Adv.Prostaglandin Thromboxane Leukotriene Res.14:263;及びNicolaou,K.C.et al.(1991)Angew Chem.Int Ed.Engl.30:1100)。幾何学的変更は、例えば米国特許第4,576,758号及びNicolaou,K.C.(1989)J.Org.Chem.54:5527に記載の通りに行うことができる。
【0113】
下記に示す通り、案Iにおける細分種類を含むリポキシン類似化合物は3つの主な断片(及び)として製造することができ、それを次いで組み合わせて分子全体を形成することができる。
【0114】
案I
【0115】
【化38】

【0116】
前駆体断片のためのエポキシ−アルコールの合成は、水素、フェニル、ハロゲン又はメチルから選ばれる置換基R、R及びRを有して生成することができる。これらのそれぞれのエポキシ−アルコールの各々を、PhNCO、ピリミジン及びCHClを用いてとしてフェニルウレタン誘導体に変換することができ、
【0117】
【化39】

【0118】
その後SN開環によるルイス酸触媒反応を行い、結合に必要な(R)立体配置におけるC−6、ならびに生物活性及び認識部位における結合のためにやはり確立される(S)立
体配置におけるC−5において隣接ジオールを含む1,2環状カーボネートを得る。これらのアルコールを次に保護し、として前駆体断片を生成する。
【0119】
【化40】

【0120】
これでこれらの断片は、Webber,S.E.et al.(1988)Adv.Exp.Med.Biol.229:61における通りにして断片、中間体、ホスホニウムブロミドにグラムの量でカップリングさせ、組み合わされた断片生成物を生成することができる。
【0121】
【化41】

【0122】
案Iからの断片中間体はA−Bカップリングの製造と平行して生成される。これらの断片において、Y及び/又はYにおける置換はメチル、メトキシ、水素、シアノ、ニロト又はハロゲンである:特定的実施例3を参照されたい。かくして15−メチル及び/又は、例えば16−メチルもしくは16−フェノキシを有する誘導体は、これらの置換−LXA類似体を脱水素に感受性でないようにすることができる。
【0123】
かくして酵素酸化及び/又は脱水素に対して好ましい抵抗性を有する断片を、重要部位の保護、続く臭素化により変換し、6bのような断片のビニルブロミド生成物を得ることができ、それを触媒量のP(Ph及びCuIを用いることによりにカップリングさせ、種類式IのLXA類似体の完全な主鎖構造を生成することができる。この案を以下の実施例によりさらに例示する。
【0124】
【化42】

【0125】
案II
【0126】
【化43】

【0127】
細分種類式II及びIIIに含まれる本発明の化合物は、類似の方法で合成することができる。
【0128】
種類II及びIIIにおける化合物は、最初に断片の置換化合物を個別に製造し、それらをそれぞれ案Iにおけると同様に、個別に製造された断片にカップリングさせ、X、Q、R、R及びRにおいて指示されている通りにそれぞれの置換を有する又は断片を生成することにより生成することができる。
【0129】
【化44】

【0130】
アセチレン基C−14,15及びω−C−20末端置換を有する断片はそれぞれ、構造6のプロスタグランディン類似体に関して上記に示した通りに生成することができ、(K.C.Nicolau et al.J.Am.Chem.Soc.107,7515(1985))におけると同様にして対応するビニルブロミド生成物に変換し、それぞれの個別に置換された断片C又は化学種の臭素化生成物を与え、それは触媒量のP(Ph及びCuIを用いて20にカップリングさせ、アセチレン性−LXA類似体の種類の組み合わされた生成物を生成するのに適している。次いで最終生成物のそれぞれにつき、精製のために、ラピッドダイオードアレー検出(rapid diode array detection)を用いた勾配RP−HPLCを行う(Serhan,C.N.,Methods in Enzymologyにおけると同様)。LXAのC−15からC−20における修飾の存在は、立体障害を与えることによりデヒドロゲナーゼ及びオキシダーゼによる代謝を変更することができ、C−15からω−末端置換を有する安定なプロスダランディン類似体が製造され、デヒドロゲナーゼにより代謝されない(Raduechel,B.and Vorbrueggen,H.(1985)Adv.Prostaglandin Thromboxane Leukotriene Res.15:263及びVorbrueggen H.et al.In:Chemistry,Biochemistry,and Pharmacological Activity of Prostanoids(Roberts,S.M.,Scheinmann,F.eds).Oxford:Pergamon Press)。
【0131】
種類式IVに含まれる本発明のシクロ−LXA化合物は以下の方法で製造することができる。
【0132】
案III
【0133】
【化45】

【0134】
この種類の親化合物も類似の全合成戦略に供され、構造30において3つの主断片及びが指定される。断片Aのための前駆体は、7−シス,11−トランス−LXAメチルエステルの合成において10の製造のためにNicolaou,K.C.(1989)J.Org.Chem.54:5527で用いられた経路により製造することができる。
【0135】
【化46】

【0136】
30における断片Bは、前駆体11又は(Vorbrueggen et al.,p.353)において生成されたサリゲニン−([O−ヒドロキシベンジルアルコール)を介して得ることができる。ベンジルアルコール11をDMF中でNaHの存在下に、10と反応させ(1:1)、12を得る。この重要中間体をBSTFA中でシリル化し、続いてC前駆体のために設計されたそれぞれの断片とカップリングさせる。
【0137】
【化47】

【0138】
次いで、臭素化前駆体を4.0当量のAgNO、次いで7.0当量のKCN、EtOH/THF/HO(1:1:1)、0→25℃、2〜4時間により処理することにより、与えられたそれぞれの設計のビニルブロミネート断片Cに13をカップリングさせることができ、次いでそれぞれの生成物をCHCl中で穏やかな選択的接触水添のためのLindlar触媒に2〜3時間供し、種類IVに属するそれぞれの化合物を得る。それぞれをLiOH/THF中でけん化し、RP−HPLCによる単離の後に対応する遊離の酸を得ることができる。
【0139】
【化48】

【0140】
種類IV化合物の本発明を下記の実施例、15(±)メチル−シクロ−LXAメチルエステル及び対応する遊離の酸の合成によりさらに例示する。
【0141】
種類式Vに含まれる本発明の化合物は以下の方法で製造することができる。LXBを用いて研究されたいくつかの系は、天然の化合物内のいくつかの部位が生物活性に必要であることを示している(Serhan,C.N.(1991)J.Bioenerg.and Biomembr.23:105)。これらの部位は(R)立体配置におけるC−14アルコール及びシス立体配置におけるテトラエンのC−8,9の二重結合を含む。さらに結果として本発明を生ずる代謝研究に基づき、いくつかの重要付加部位がLXB生物活性の保存に必要であることが同定された。これらはデヒドロゲナーゼ活性からのC−15アルコールの保護(すなわち5−オキソ−LXB生成の妨害);△8結合と14(R)アルコールの両方の保持;ならびに△6−7二重結合の還元及び得られる化合物のβ/ω−酸化の予防を含む。
【0142】
案IV
【0143】
【化49】

【0144】
かくして種類V(14)はLXBの、その生物活性に必要な領域を保持しており、しかし代謝的分解に利用できる領域を修飾してある。この場合も逆合成分析が、14において明示されている3つの重要断片A、B及びCに優先権を与えている。LXB類似体の種類のメンバーを生成するための重要中間体のカップリングは、LXA及びその類似体の場合に概述された標準的方法、すなわち選択的水素化(8−シス幾何学の生成のため);独特の置換を有する及び断片の結合のためのPd(0)−Cn(I)カップリング;必要な置換を有するC断片を結合するためのWittig−型カップリング、及び14(R)隣接アルコールを得るためのSharplessエポキシ化を用いる(参照文献Nicolaou,K.C.et al.(1991)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.30:1100)、参照文献:Weber,S.E.et al.(1988)Adv.Exp.Med.Biol.229:61 Ed.Wong,P.K.and Serhan,C.N.)ならびにこれらに引用されている文献を参照)。かくしてLXA類似体及び本来のLXBの構築と類似の戦略を用いることにより、特定的な類似体を得ることができる。
【0145】
【化50】

【0146】
H、CH、OCH、フェニル、ハロ−置換フェニルであることができる置換をR、R、Rに有する15断片は、例えばCHの鎖長が増加する16から標準的方法により生成される。
【0147】
【化51】

【0148】
化合物16は(Nicolaou,K.C.et al.(1991)Angew.Chem.Int.Ed.Engl30:1100−16)におけると同様に、トリメチルシリルアセチレン性中間体17を介し、それをピナニル−9BBNにより、次いでTHF中でn−BuNNFにより還元し、18を得、それをここでアルコールなどの必須の部分の保護の後に臭素化し、15(断片A)を得ることにより、ビニルブロミド15に変換する。
【0149】
14の断片は、指示される通りのR置換を有する化合物19から生成される。
【0150】
【化52】

【0151】
次いでアセチレン性アルコール19をLAH中で還元し、続いてSharpless非対称エポキシ化を行い、20を生成し、それをRP−HPLCにより単離し、LXB類似体の、必要な(R)立体配置におけるC−14アルコールの生成に用いられる(+)異性体を得、化合物20をR及びRにおける置換基の保護、ならびにメチレンクロリド中でPCCを用いたアルコールの保護の後に対応するアルデヒド21に変換する。(Nicolaou,K.C.et al.(1991)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.30:1100)。
【0152】
【化53】

【0153】
ホスホニウム塩22は、参照文献における通りにして製造することができ(Weber,S.E.et al.(1988)Adv.Exp.Med.Biol.229:61,Ed.Wong,P.K.and Serhan,C.N.)、ここではWigg−型カップリングを介した断片カップリングを生じ、R及びRが置換を有する23の群において、設計された置換を有する23を与えるために用いられる。23のこのシス二重結合は、触媒としてIを用いて異性化し、トランス異性体を与えることができ、14の親前駆体の形態を24として与えることができる。
【0154】
【化54】

【0155】
【化55】

【0156】
2415へのカップリングはPd(0)−Cu(I)カップリングにより行われ、25と明示される14のアセチレン性前駆体を与える。選択的Lindlar接触水添に続き、それぞれのLXB類似体を、それぞれの生成物の単離のための簡便な手段としてテトラエン骨格を用い、急速ダイオードアレー検出を用いたRP−HPLCを介してさらに精製することができる(Serhan,C.N.81990)Meth.Enzymol.187:167)。
【0157】
効用
本発明の化合物は天然のリポキシン類の生物活性を有するが、分解に対してもっと抵抗性であるか、あるいは別の場合、天然のリポキシン類の分解を阻害する。従って開示化合物は、患者における不適切な、又は不相応なリポキシン媒介細胞応答に伴う複数の疾患又は状態の処置又は予防のための薬としての効用を有する。
【0158】
リポキシン類の細胞刺激作用に基づき、本発明は患者に有効量のリポキシン類似体を含む製薬学的組成物を投与することによる、骨髄抑制障害を有する患者の処置の方法を提供する。有効量は通常、標的細胞集団に十分な暴露を保証するのに必要な量である。そのような量は通常、類似体の性質、投与の様式、骨髄抑制の重度及び投与計画を決定する時に通常の熟練者が考慮する他の因子に依存するであろう。
【0159】
細胞増殖性リポキシン類似体の治療的利用は、患者からの細胞の取り出し、試験管内における細胞増殖の刺激、及び強化された細胞調剤を全部又は部分的に患者に再導入することを含む。追加の治療薬(例えばGM−CSFなどのサイトカイン類)を場合により、刺激の間にリポキシンと一緒に、又は細胞調剤の導入と一緒に用いることができる。
【0160】
他の実施態様において、本発明の化合物は炎症又は炎症応答の処置又は予防に用いられる。LXAは炎症の媒介物である白血球の活性化を阻害する。LXA−誘導効果は、白血球移動の阻害、反応性酸素種の生成、及び組織腫脹(tissue swelling)に含まれる炎症前媒介物(pro−inflammatory mediators)の生成を含む(Raud,J.et al.(1991)Adv.Exp.Med.Biol.314:185.Cell−Cell Interactions in the Release of Inflammation Mediators vol.314)。LXBは、マウスの造血幹細胞(hematopoietic stem cells)を用いた生体内アッセイにおいて、下痢及び運動失調の予防などの放射線保護作用を示す。(Walken,T.L.Jr.,(1988)J.Radiat.Res.29:255)
白血球−媒介炎症又は炎症応答は、種々の形態の喘息及び関節炎を含む多様な疾患及び状態を引き起こすか、又はそれらに寄与する。身体的外傷、放射線暴露及び他などの身体的損傷への炎症応答は本発明の範囲内に含まれる。
【0161】
他の実施態様において、本発明の化合物はロイコトリエン類の作用に拮抗することによる炎症の処置又は予防に用いられる。LXAはLTB−誘導炎症を阻害し、ハムスター頬窩(cheek pouch)の生体内アッセイにおいて、血漿漏出及び白血球移動の両方を妨害する(Hedqvist,P.et al.(1989)Acta Physiol.Scand.137:571)。血漿漏出及び白血球移動は、傷の治癒及び炎症の両方における重要な事象である。LXAは又、LTD−誘導腎血管力学的作用に拮抗し、腎臓における血管力学の調節を部分的に担うLTDの糸球体間質への結合を妨害する。(Badr.K.F.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:438)。
【0162】
本発明の化合物は、LTD、LTC及びLTBなどのスルフィドペプチドロイコトリエン類の作用に拮抗するために投与することができる。ロイコトリエン−媒介血管収縮応答は:喘息、アナフィラキシー反応、アレルギー反応、ショック、炎症、慢性関節リウマチ、通風、乾癬、アレルギー性鼻炎、成人呼吸困難症候群、クローン病、内毒素性ショック、外傷性ショック、出血性ショック、腸虚血性ショック、腎糸球体疾患、良性前立腺肥大、炎症性腸疾患、心筋虚血、心筋梗塞、循環器性ショック、脳損傷、全身性エリテマトーデス、慢性腎疾患、心臓血管疾患及び高血圧などの疾患を伴う。
【0163】
他の実施態様において、本発明の化合物は血管収縮応答又は状態の処置又は予防に用いられる。リポキシン類は内皮−依存性血管拡張(LXA)(Lefer,A.M.et
al(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8340)及び生体内において新生豚における脳小動脈の拡張(LXA及びLXB)(Busija,D.W.et a.(1989)Am.J.Physiol.256:468)を引き起こす。さらにLXAは、生体内でハムスターの頬窩において(Dahlen,S
.−E.et al.(1987)Acta Physiol.Scand.130:643)、及びラットの腎血管力学(Badr.K.F.et al.(1987)Biochem.Biophys.Res.Commun.145:408)において急速な小動脈拡張を引き起こす。
【0164】
血管収縮応答又は状態は、糸球体疾患を含む腎血管力学疾患、高血圧、心筋梗塞、心筋虚血及び血管性疾患を含む心臓血管疾患、ならびに胃腸疾患などの疾患及び状態を引き起こすか、それらに寄与するか、あるいはそれらを伴う。
【0165】
リポキシン類似体又は他の化合物をスクリーニングし、対応する天然のリポキシンより長い組織半減期を有するものを同定する方法も本発明により意図されている。この方法は、化合物が天然のリポキシンと比較して代謝を阻害、抵抗、又はもっとゆっくり受けるか否かを決定するために用いることができる。この方法は、リポキシン類を代謝する少なくとも1つの酵素を調製し、化合物を酵素調剤と接触させ、化合物が酵素による代謝を阻害、抵抗又はもっとゆっくり受けるか否かを決定することにより行われる。多形核好中球、末梢血単球及び分化HL−60細胞などの、リポキシン認識部位を有する細胞は、酵素調剤のための適した源に含まれる。リポキシン認識部位は天然に存在することができ、あるいは疾患状態又は損傷により人工的に誘導することができる。人工的−誘導LXA認識部位の非制限的例は、分化HL−60細胞におけるそのような部位である。
【0166】
1つの実施態様において酵素の調製は、細胞を収穫し、凍結−解凍リシスを3回行い、続いて超遠心により100,000g上澄み液を得ることから成る。無細胞100,000gペレットも用いることができる。さらに酵素調剤は、天然のリポキシン代謝に関与しないが、自然にリポキシン類を代謝する酵素により行われる変換と類似の、又は同等の変換をリポキシン類に行う酵素を含むことができる。適した酵素の非制限的例は、15−ヒドロキシプロスタグランディンデヒドロゲナーゼ、ヒト白血球からのシトクロムP−450モノゲナーゼ類及びラット及びヒト肝臓ミクロソームである。
【0167】
リポキシン代謝物の特性化は、抽出、クロマトグラフィー及び定量HPLC、ならびに続くトリメチルシリル誘導、O−メトキシム誘導及びガスクロマトグラフィー/質量スペクトル分析などの標準的方法を含んだ。この実施態様の実験的詳細は下記の実施例1に記載する。
【0168】
リポキシン類似体は、例えば化合物をレセプター認識部位と接触させ、化合物が結合するか否か、及びその程度を決定することにより、リポキシンレセプター認識部位との結合活性に関してもスクリーニングすることができる。速度論的結合アッセイの例は、相同置換、競合結合、等温及び平衡結合アッセイを含む。
【0169】
レセプター認識部位は通常存在するか、あるいはそれを疾患状態により、損傷により、又は人工的手段により誘導することができる。例えばレチノイン酸、PMA又はDMSOを用い、HL−60細胞における分化を誘導することができる。分化HL−60細胞は、LXA−特異的レセプター認識部位を発現する。リポキシン特異性に関してスクリーニングすることができる他の細胞の例には、PMN、上皮細胞及び末梢血単球が含まれる。
【0170】
競合リガンドの選択は認識部位の性質、天然の基質、当該技術分野で既知の天然の基質の構造的又は機能的類似体の構造、ならびにそのような決定を行う熟練者が考慮する他の因子に依存するであろう。そのようなリガンドには既知のレセプター拮抗剤も含まれる。本発明の化合物は、放射化学又は合成化学の分野において既知の標準的方法により、H、H、13C及び14Cを含む同位体で放射性標識することができる。
【0171】
本方法の1つの実施態様において、誘導されたLXA認識部位の構造的特異性をLXB、LTC、LTB及びトリヒドロキシヘプタン酸メチルエステルを用いて評価した。この実施態様の実験的詳細を下記の実施例2において記載する。
【0172】
さらに本発明の化合物は、炎症及び損傷の場合の発生モデル(developmental model)として特定の細胞型にある作用を与えるのに用いることができる。例えばLXAは、細胞内Ca2+の動態化、脂質改造作用(remodeling)、及びヒトPMNにおける凝集のない化学走性を刺激する(Palmblad,J.et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.(1987)145:168;Lee,T.H.et al.Clin.Sci.(1989)77:195;Nigam,S.et al.J.Cell.Physiol.(1990)143:512;Luscinskas,F.W.et al.(1990)Biochem.Pharmacol.39:355)。LXAはLTB及びFMLP−誘導応答の両方、例えばIP生成も妨害する。LXBも、脂質改造作用を刺激する。LXAは単離されたPKCを活性化し、脳及び脊髄に存在するPKCのγ−亜種に関して特異的である。(Hansson,A.et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.(1986)134:1215;Shearman,M.S.et al.FEBS Lett.(1989)245:167)。Nicolaou,K.C.et al.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(1991)30:1100の文献及びそこに引用されている参照文献は、引用することにより明白に本明細書の内容となる。
【0173】
本発明をさらに以下の実施例により例示し、実施例はさらに制限であると理解されるべきではない。背景を含む本出願のすべての部分を通じて引用されたすべての参照文献及び公開特許は、引用することにより明白に本明細書の内容となる。
【0174】
実施例
【実施例1】
【0175】
リポキシン類似化合物の合成
【0176】
【化56】

【0177】
【化57】

【0178】
化合物1のメチルエステル前駆体の製造:
ベンゼン(1.5mL)中の3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブロモ−1−オクテン(130mg、0.44ミリモル)の溶液に、n−プロピルアミン(0.05mL、0.61ミリモル)及びPd(PPh(20mg、0.02ミリモル)を加え、溶液を光から保護した。次いでそれを凍結−解凍法により脱ガスし、室温で45分間撹拌した。(7E,9E,5S,6R)メチル5,6−ジ(tert−ブチルジメチルシロキシ)−ドデカ−7,9−ジエン−11−イノエート(183mg、0.44ミリモル)(化合物12)及びヨウ化銅(14mg、0.07ミリモル)を加え、溶液をもう一度凍結−解凍法により脱ガスした。混合物を室温で3時間撹拌し、NHClの飽和水溶液でクエンチし、エーテルで抽出した。次いでそれをブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥し、溶媒を蒸発させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、3%エーテルヘキサン)は、純粋な化合物を無色の液体として与えた(171mg、収率57%)。
【0179】
THF(0.5mL)中の化合物(171mg、0.25ミリモル)の溶液に、n−BuNF(0.9mL、0.90ミリモル)を加え、混合物を室温で撹拌した。反応は2時間で完了し、その時点でそれを水中に注ぎ、エーテルで抽出した。エーテル抽出物をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を蒸発させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、4%MeOH/CHCl)はメチルエステル(24mg)をいくらかの対応するラクトンと共に与えた。HPLC保持時間:9:39分(ミクロソルブ(microsorb)逆相、4.6mmX25cm、C−18カラム、MeOH/HO 70:30、流量1ml/分、300nmにおけるUV検出器)。MeOH中におけるUV:λmax283,294,311nm、H NMR(500MHz CDCl)δ6.53(dd,15.2 10.9Hz,1H),6.32(dd,J=15.1,11.0Hz,1H),6.17(d,J=15.9Hz,1H),5.83(dd,J=17.5,2.1Hz,1H),5.80(dd,J=15.2,6.7Hz,1H),5.72(dd,J=17.0,2.1Hz,1H),4.17(m,1H),3.68−3.64(m,4H),2.35−2.31(m,2H),1.51−.48(m,1H),1.43−1.42(m,2H),1.30−1.23(m,15H),0.85(t,3H)。13C NMR(126MHz.CDCl)δ150.01,140.18,132.95,132.26,112.43,107.50,75.23
,73.76,42.49,33.67,32.17,31.36,27.96,23.56,22.58,21.03,14.03。
【0180】
化合物2のメチルエステル前駆体の製造:
化合物1のメチルエステル前駆体の溶液(3mg、CHCl(1ml)中)をLindlar触媒(1mg)と混合し、水素雰囲気下に置いた。混合物を暗所において室温で、約80%変換まで(1時間)、撹拌及び続くHPLCを行った。セライト上の濾過、溶媒の蒸発及びHPLCによる分離は純粋なメチルエステルを与えた。HPLC保持時間:10:02分(ミクロソルブ逆相。10mmX25cm C−18カラム、MeOH/HO 70:30 流量4ml/分。300nmにおけるUV検出器)。MeOH中におけるUV:ηmax287,315nm。
【0181】
化合物3のメチルエステル前駆体の製造:
この化合物は化合物1のメチルエステル前駆体の製造と同様にして(3−シクロヘキシル−3−トリメチルシロキシ−1−ブロモ−1−オクテンから)製造した。この化合物の脱シリル化も同様の方法で行い、メチルエステルを得た。HPLC保持時間8:02分(ミクロソルブ逆相、4.6mmX25cm。C−18カラム、MeOH/HO 70:30。流量1ml/分、300nmにおけるUV検出器)。MeOH中におけるUV:λmax282,293,311nm。H NMR(360MHz,CDCl)δ6.56(dd,15.4,10.9Hz,1H),6.33(dd,J=15.2,10.9Hz,1H),6.13(dd,J=15.8,6.5Hz,1H),5.81(dd,J=15.2,6.4Hz,1H),5.80(d,J=15.6Hz,1H),5.73(dd,J=15.4,2.1Hz,1H),4.15(br,1H),3.93−3.90(m,1H),3.67(br,1H),3.65(s,3H),2.34(t,2H),1.82−1.65(m,10H),1.46−1.38(m,3H),1.26−1.01(m,5H)。
【0182】
化合物4のメチルエステル前駆体の製造:
化合物3のメチルエステル前駆体の選択的水素化、続くHPLC精製は、化合物4のメチルエステル前駆体を与えた。HPLC保持時間9.72分(ミクロソルブ逆相、10mmX25cm。C−18カラム、MeOH/HO 70:30。流量4ml/分、300nmにおけるUV検出器)。MeOH中におけるUV:λmax288,301,315nm。H NMR(250MHz,C)δ6.66−6.89(m,2H),5.95−6.24(m,4H),5.55−5.66(m,2H),3.82(m,1H),3.73(m,1H),3.41(m,1H),3.31(s,3H,OCH),2.08(t,2H,CHCOO),1.00−1.81(m,18H)。
【0183】
メチルエステル類は標準的方法を用いて対応するアルコール類に変換することができる。
【0184】
15(R)−15−メチル−LXA及び15(±)メチル−LXAの合成
ヘキサノイルクロリドを用いたビス(トリメチルシリル)アセチレンのFriedel−Craftsアシル化を用い、約1グラムのアセチレン性ケトンを製造し、Webber,S.E.et al.(1988)Adv.Exp.Med.Biol.229:61;Nicolaou K.C.et al.(1991)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.30:1100;及びVorbrueggen,H.et al.:In:Chemistry,Biochemistry,and Pharmacological Activity of Prostanoids(Roberts,S.M.,Scheinmann,F.eds.).Oxford:Pergamon Pressにおける通りに、(−)−ピナニル−9−BBNを用いて還元し、CH
中で(S)アルコールを得、C−15におけるメチルを生成する。
【0185】
【化58】

【0186】
別の場合、Vorbrueggen,H.et al.:In:Chemistry,Biochemistry,and Pharmacological Activity of Prostanoids(Roberts,S.M.,Scheinmann,F.eds.).Oxford:Pergamon Pressにおける通りにケト基をCHMgBr(60→70℃)で処理し、2,6−ルチジン(5.2ml)及びtert−ブチルジメチルシリルトリフレート(6.9ml)を連続的に添加し、0℃において乾燥CHCl(〜20ml)中での15(±)メチル(2〜5g)を得ることができる。この反応物を1時間撹拌し、次いで水性抽出のために100mlのエーテルで希釈し、MgSOを用いて乾燥する。
【0187】
【化59】

【0188】
次いで生成物を、
【0189】
【化60】

【0190】
Nicolaou,K.C.et al.(1991)Angew.Chem.Int.
Ed.Engl.30:1100;Nicolaou K.C.et al.(1989)J.Org.Chem.54:5527及びWebber.S.E.et al.(1988)Adv.Exp.Med.Biol.229:61におけると同様にして生成されるとカップリングさせる。案Iの断片からの構造を、0〜25℃においてEtOH:THF:HO(1:1:1)を含む4.0当量のAgNO、次いで7.0当量のKCN中に2時間懸濁させ、C−メチルエステル保護15−メチル−LXA類似体を生成し、それを濃縮し、THF中でLiOH(2滴、0.1M)を用い、4℃で12〜24時間けん化し、対応する遊離の酸を得る。
【0191】
16−ジメチル−LXAの合成
【0192】
【化61】

【0193】
この化合物は類似の戦略を用い、上記とカップリングさせることにより、上記参照、又はとカップリングさせ、15−フェニル−LXA類似体を生成する、あるいはとカップリングさせて17−m−クロロフェノキシ−LXA類似体を生成することにより生成される。
【0194】
【化62】

【0195】
案Iにおける適宜の断片(すなわち)はそれぞれ、Raduechel,B.and Vorbrueggen,H.(1985)Adv.Prostaglandin Thromboxane Leukotriene Res.14:263において既知の対応するプロスタグランディン類似体に関して考察されている通りに製造される。において、R=H;Cl、メトキシ又はハロゲンである。
【0196】
13,14−アセチレン性−LXA及びハロゲン−含有類似体の合成
【0197】
【化63】

【0198】
案IIからのA生成断片を用い、対応するC断片をカップリングのために製造する。構造及びはNicolaou,K.C.et al.(1989)J.Org.Chem.54:5527における通りに生成され、Raduechel,B.and
Vorbrueggen,H.(1985)Adv.Prostaglandin Thromboxane Leukotriene Res.14:263における通りにメチル化され、にカップリングされ、これらのLX類似体を与える。材料は精製のためにRP−HPLCに供することができる、上記参照。
【0199】
【化64】

【0200】
14,15−アセチレン性−LXAの合成
【0201】
【化65】

【0202】
明示されている組み合わされたA断片は、断片へのカップリングのために、又は、上記参照、の構造を有する経路IIに示される、断片A及びBのカップリングから製造することができる。断片のための前駆体は、プロスタグランディン類似体の場合のRaduechel,B.and Vorbrueggen,H.(1985)Adv.Prostaglandin Thromboxane Leukotriene Res.14:263におけると同様にして製造することができる。
【0203】
【化66】

【0204】
前に製造された前駆体(Nicolaou,K.C.(1989)J.Org.Chem.54:5527)を1.2当量において、ベンゼン中の0.05当量のPd(PPh、0.16当量のCuI、n−PrNHに、MeAl−保有と共に加え、室温で2〜3時間後、を得る。
【0205】
【化67】

【0206】
アルコール保護基TBDMS=Rを、10当量のHF−pyr、THFを用い、0〜25℃(4時間)において除去し、続いて3.0当量のEtN、MeOHに25℃で15分間暴露し、リポキシン類において通常C−1−カルボキシとC−5アルコールの間に生成される酸−誘導δ−ラクトンを開環する(Serhan,C.N.(1990)Meth.Enzymol.187:167及びNicolaou,K.C.(1989)J.Org.Chem.54:5527)。5重量%のLindlar触媒で穏やかに処理した後、抽出した材料をTHF中のLiOHけん化に供し、目的分子の遊離の酸を生成することができ、それをさらに(Serhan.C.N.et al.(1990)Meth.Enzymol.187:167)における通りにRP−HPLC勾配可動相により精製することができる。
【0207】
15(±)メチル−シクロ−LXAの合成
【0208】
【化68】

【0209】
SiMe誘導体としての化合物を、アルゴンを濃縮した雰囲気下における100mlの丸底フラスコ中で脱ガスしたベンゼン(20ml)中に入れる(〜1グラム)ことができる。これに、3.0当量のビニルブロミド断片、上記参照、を加える。このカップリング反応は、触媒量のPd(PPh及びCuI中で行われ、この懸濁液のアリコートをRP−HPLC中に注入し、急速走査ダイオードを用いてUV吸収により監視することにより、監視することができる。23℃において1〜3時間の進行の後、材料を酢酸エチル:HO 4:1(v/v)を用いて抽出し、回転蒸発により濃縮する。メチルエステルはLiOH/THF中でけん化することができ、定量的収量の遊離のカルボン酸を得る。他の誘導体は、断片を置換された種々の断片部分と共に用い、上記の通りに製造することができ、例えばジメチル又は他の誘導体を得ることができる。これは容易に入手可能なケトンを用い、それをCHMgBr(60℃)で処理し、を生成し、それをPd(0)−Cu(I)カップリングなどの従来の方法を用いて上記の通りに断片にカップリングさせることにより得ることができる。C−15からの鎖長の増加も得ることができる。
【0210】
【化69】

【0211】
5−メチル−LXB及び4,4−ジメチル−LXBの合成
5−メチル−LXBは5−オキソ−LXB生成を妨げるか、又は遅延させる。上記に概述した一般的案を用い、ビニルブロミド前駆体において5−メチルを有するように断片を構築することができ、それを、結合した断片に、Pd(0)−Cu(I)カップリングによりカップリングさせる。
【0212】
【化70】

【0213】
ビニルブロミドは、ジメチル又は水素置換をそのC−4位に含むから得ることができる。断片を含む保護前駆体は、参照文献に報告されている通りに生成される(Nicolaou K.C.et al.(1991)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.30:1100−16)。化合物は、指示されているビニルブロミドとのカップリングにより又は28に変換される。かくしてを1.0当量(約1グラム)で、脱ガスされ、溶媒としてEtNHを含む丸底フラスコに加え、を1.2当量でEtNHに注入し、Pd(PPhを0.02当量で加え、の8(9)−含有アセチレン性前駆体メチルエステルを得ることにより、目的分子を生成することができる。
【0214】
材料を抽出し、回転蒸発させ、CHCl中のキノリン(0.5当量)中に懸濁させ、(10%;25℃)でLindlar触媒及びHガス流を用いて水素化し、選択的に8位におけるアセチレン性二重結合を還元する。5−メチル−LXBのメチルエステル又は4−ジメチル−LXBメチルエステルのテトラエン成分の生成は、還元の完了を評価するRP−HPLCにより監視することができる(すなわち1〜3時間)。次に生成物を25μlのHOを加えたTHF中で、0→24においてLiOHを用い、8〜24
時間処理することにより、メチルエステルを対応する遊離の酸にけん化する。
【実施例2】
【0215】
ヒト前骨髄球性白血病細胞及び単球によるリポキシンA代謝:半減期アッセイ
HL−60細胞はAmerican Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入し、他の細胞培養試薬はGIBCO(Grand Island,NY)から購入した。ベルセン(EDTA)はWhittaker Bioproducts(Walkersville,MD)から購入した。合成11,12−アセチレン性LXAメチルエステル及びリポキシン類はCascade Biochemical(Reading,U.K.)から購入した。15(S)−15−m−PGE、PGE及び5−HETEはCayman Chemical Co.(Ann.Arbor,MI)から購入した。[11,12−H]LXAは、11,12−アセチレン性LXAからLindlar触媒を用い、通常のトリチウム化として製造した(NET−259、ロット02793−275、New England Nuclear,Boston.MA)。トリチウム化された生成物はRP−HPLCを用いて単離した(Fiore et al.(1992)J.Biol.Chem.267:16168;Serhan,C.N.(1990)Meth.Enzymol.187:167)。メトキシアミン及びNADはSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から購入した。二酸化マンガン及びアダムス試薬(Adams reagent)はAldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)から購入した。
【0216】
ヒト多形核細胞(PMN)は、健康なボランティアから、新しいヘパリン添加静脈血の勾配遠心により得た(Boeyum,A.(1986)Scand.J.Clin.Lab.Invest.21:77)。HL−60細胞は、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μ/ml)、牛胎児血清(10%)(Hycone,Logan,UT)を補足したRPMI中に播種し、プラスチックの250mlフラスコ中でインキュベートした(5%CO雰囲気で37℃)。5x10−7HL−60細胞/mlを含むそれぞれのフラスコをホルボール12−ミリステート13ホアセテート(PMA)(10又は16nM、24〜27時間)の存在下又は不在下でインキュベートし、Collins,S.J.(1987)Blood 70:1233における通りにマクロファージ−様表現型の誘導に関して付着(adherence)を監視した。新しい単核細胞をグルコース(1mg/ml)と共にPBSを含むプラスチックペトリ皿上に37℃で1時間平板培養した後、末梢血単球を得た(Goldyne,M.E.et al.(1984)J.Biol.Chem.259:8815)。非−付着細胞を除去し、付着単核細胞をベルセン(7ml/プレート)を用いて穏やかに懸濁させ、PBS中で洗浄した。PMN(>98%)、付着単球(>95%)及びHL−60細胞を光学顕微鏡により計数し、インキュベーションのためにPBS中に懸濁させ、それぞれの場合に<2〜3%がトリパンブルーに透過性であった。いくつかの実験の場合、PMA(16nM)で24〜72時間処理したHL−60細胞から無細胞上澄み液を調製した。収穫後、分化細胞を洗浄し、次いで凍結−解凍リシス(3回繰り返す)に供し、超遠心(100,000g、1時間)した。
【0217】
エイコサノイドを用いたインキュベーションは、PGB又は5−HETEを内部標準として含む冷メタノールを用いて停止した(5−HETEは、15−オキソ−ETEの定量の場合に用いた)。生成物はSep−pak C18を用いて抽出し、Serhan,C.N.(1990)Meth.Enzymol.187:167における通りに、慣例的にクロマトグラフィーにかけた。RP HPLC系は、Altex Ultrasphere−ODS(4.6mmx25cm)カラムを備えたLKB勾配デュアルポンプ(dual pomp)を含み、流量は1ml/分であり、メタノール/HO/酢酸(65
:35:0.01)を用いて(0〜20分)、及びメタノール/酢酸(99.99/0.1)を直線勾配で用いて(20〜45分)溶離し、それをLTBのω−代謝物(すなわち20−COOH及び20−OH−LTB)、ならびにLXAの定量に用いた。内部標準の回収率は82.2、7.9平均S.D.(n=13)であった。化合物I−IVはAltex Ultrasphere−ODSカラム(10mmx25cm)を用いて分離し、3.0ml/分の流量でメタノール/HO/酢酸(60:40:0.01,v/v/v)を用いて溶離した。100,000g上澄み液による15−オキソ−ETEの生成(Agins,A.P.et al.(1987)Agents Actions 21:397;Xun,C−Q.et al(1991)Biochem.J.279:553;及びSok,D−E.et al.(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.156:524を参照)は、ODSカラム(4.6mmx25cm)を用い、メタノール/HO/酢酸(70:30:0.01,v/v/v)を用いて1ml/分の流量で溶離し、280nmにおいて監視されたRP−HPLCの後に定量した。単球−誘導生成物も、Hypersilカラム(5IL、4mmx300mm)を用いてクロマトグラフィーにかけ、メタノール/HO/酢酸(60:40:0.01,v/v/v)を用いて1ml/分の流量で溶離した。オン−ラインスペクトルを、HPLC3DChemStationソフトウェア(DOSシリーズ)を備えたダイオードアレー検出器(Hewlett−Packard 1040MシリーズII)を用いて記録した。スペクトルはステップ4nm、B=10nm、領域=235〜360nmを用い、1.28秒のサンプリング間隔で得た。
【0218】
GC/MSは、HPG1030Aワークステーション及びGC 5890を備えたHewlett−Packard 5971A質量選択的四極検出器(mass selective detector quadrupole)を用いて行った。カラムはHPUltra2(架橋5%フェニルメチルシリコンゴム相;25mx0.2mmx0.33μm)であり、注入はビス(TMS)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)中において、スプリットレスモード(splitless mode)で行った。温度プログラムは150℃で開始し、10分で250℃に達し、20分で325℃に達するものであった。標準的飽和脂肪酸メチルエステルC16−C26は以下の保持時間を与え(分:秒;n=6の平均)C16,8.03;C18,9.77;C20,12.22;C22,16.11;C24,20.72;C26,23.62、それをSerhan,C.N.(1990)Meth.Enzymol.187:167におけると同様にLX−誘導代謝物のそれぞれのC値の算出に用いた。ジアゾメタンを製造し、メチルエステル生成物をBSTFA(Pierce Chemcal Co.,Rockville,IL)で処理してMeSi誘導体を得た。メチルエステルO−メトキシム誘導体は、Kelly,R.W.and Abel,M.H.(1983)Biomed.Mass Spectrom.10:276におけると同様に製造した。接触水添はメタノール(1ml)中でAdams試薬(Aldrich,Milwaukee,WI)を用い、酸化白金IV(1〜2mg)を発泡水素流で飽和させることにより(20分間、室温)行った。抽出後、材料をジアゾメタン、続いてBSTFAで処理した(終夜、室温)。
【0219】
結果
LXAの代謝:健康なドナーの末梢血からの無損傷の好中球は、外因性LXAを有意に代謝しなかったが、同一のドナーからの細胞はω−酸化を介してLXAを急速に変換した。対照的に、単球/マクロファージ−様特性を示すPMA−処理HL−60細胞は、急速にLXAを変換した。暴露の最初の60秒以内に、LXAの>70%が代謝された。PMA処理をしないと、無損傷のHL−60細胞(未分化)もそれらの無細胞上澄み液(100,000xg)もLXAを(不明)(n=3)。
【0220】
LXAと共にインキュベートされた分化HL−60細胞は、このエイコサノイドを数
種の生成物に変換した。標識LXAは、トリチウムを有する4つの主生成物に変換され(化合物I−IVと表す)、それをさらに分析するために集めた。
【0221】
化合物I−IVの構造 構造研究できる量のこれらの化合物を得るために、RP−HPLCにおける保持時間をH−標識溶離プロファイルを用いて確定し、境界を記し、数回のインキュベーションからプールした非標識試料をクロマトグラフィーにかけ、それぞれこれらの領域からGC/MS分析用に集めた。ジアゾメタン及びBSTFAで処理した後に得た生成物の選択的イオン監視は、化合物I−IVがそれぞれm/z203[−CH(OSiMe)−(CH−COOCH]において突出したイオンを示し、LXAの炭素1から5(カルボキシル炭素が1番)が変更されなかったことを示したが、それぞれの生成物はLXAと異なる保持時間を与えた。LXAのメチルエステル、トリメチルシリル誘導体は、その電子衝撃スペクトルにおいて、m/z203(ベースピーク)及び173において突出したイオン、及び582(M4)においてその分子量を示した。このLXAの誘導体における診断的価値を有する他のイオンは、m/z171(203−32)、406(M−173)、379(M−203)、482(M−100)及び492(M−90)において観察される(Serhan,C.N.et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5335;及びSerhan,C.N.(1990)Meth.Enzymol 187:167)。一般にリポキシン類は非常に弱い分子イオンピークを与えることが知られていることは、注目に値する(Serhan,C.N.et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5335)。それにもかかわらず、標識化合物I及びIIはm/z173(MeSiO=CH−(CH−CH)においても突出したイオンを有し、これらのLXA−誘導生成物の炭素15〜20断片が無損傷であることを示しているが、化合物III及びIVにおいてはm/z173におけるイオンは明確でなかった。かくして化合物I−IVがLXAの代謝物であるという結論は、それらの物理的性質(HPLC及びGC/MS)、それらがトリチウム標識を有するという発見、ならびにPMAを用いて処理しなかったHL−60細胞を用いたインキュベーションにおけるこれらの生成物の不在に基づいた。
【0222】
次に、化合物III及びIVがLXAの炭素15〜20断片において構造的修飾を有する代謝物を示すと思われるので、それらに焦点を当てた。可能性はω−酸化(炭素20におけるヒドロキシル化)であったので、誘導の後のそれぞれLXAの20−OH及び20−COOH形態から生じ得るイオン、すなわちm/z261及び217(MeSiO=CH−(CH−CHOSiMe及びMeSiO=CH−(CH−COMe)を、得られたGC−MSデータプロファイルにおいて走査した。III又はIVのいずれもm/z261又は217において突出したイオンを示さず、これらの生成物がω−酸化の結果でないらしいことを示した。]
【0223】
MeSi誘導体、化合物IIIのメチルエステルの質量スペクトル(C値24.3)を得た。そのスペクトルにおける突出イオンはm/z203(ベースピーク、CH(OSiMe)−(CH−COOCH)、171(203−32;CHOHの脱離)、215[(M−203)−90、トリメチルシラノール(MeSiOH)の脱離]及び99(O=C−(CH−CH)において観察された。強度が比較的低いイオンはm/z508(M)及び418(M−90;MeSiOHの消失)であった。これらのイオンの存在は、H−標識化合物IIIと共溶離された材料がLXAの15−オキソ−誘導体であったことを示唆した。これはいくつかの証拠、すなわちm/z173(MeSiO=CH−(CH−CH)における突出したイオンの事実上の消失、m/z99(O=C−(CH−CH)の存在、テトラエン発色団の不在及び335〜340nmのUVλmaxにおける新しい発色団の出現により支持される。テトラエン発色団は、プロスタグランディン変換の場合に用いられる通り、クロロホルム中に
おいてLXAをMnOで処理することにより確証された(Aenggard,E.and Samuelsson,B.(1964)J.Biol.Chem.239:4097)。又、接触水添生成物の質量スペクトルもm/z203(ベースピーク)、m/z99(66%)、m/z313(M−203又はM−CH(OSiMe)−(CH−COOCH;35%)及びm/z171(36%)において突出したイオンを有し、m/z173において突出したイオンのない25.1のC値を与えた。比較的弱いイオンはm/z516(M)及びm/z426(M−90)においてあった。かくして8amuの上方への移動及びこの飽和誘導体の分裂は、対応する15−オキソ−誘導体の生成と一致した。
【0224】
このLXA−誘導生成物をさらに調べるために、標識IIIのピークの下で溶離する材料のアリコートをジアゾメタンで処理し、続いてメトキシム化し(Bergholte,J.M.et al.(1987)Arch.Biochem.Biophys.257:444におけると同様に)、BSTFAで処理した。C値が25.4のそのスペクトルはm/z203(ベースピーク)、171(203−32;CHOHの消失)及び229[M−128又はCHO−N=C−(CHCH−(2x90)]における突出したイオンを示した。比較的強度が低いイオンはm/z537(M)、466(M−71、αt−分裂イオンM−CH(CHCH)、481(M−56又はM−CH=CH−CH−CH、McLafferty転位イオン)、431[M−106(おそらくCの消失)]、401[M−136(MeSiOH+CH+・OCHの脱離)]及び460(M−77、NOCHとMeOHの消失)においてあった。この場合も、アルコール−含有C−15断片を起源とするm/z173におけるイオン(MeSiO−CH−(CH−CH)はそのスペクトル中に事実上不在であった。かくして存在するイオンはLXAの15−オキソ−含有誘導体から生成されるメチルエステル、O−メトキシム誘導体と一致した。これらの種々の誘導体の場合に観察される突出したイオンが一緒になって、標識IIIのピークの下で溶離する材料がLXAの15−オキソ−生成物(すなわち15−オキソ−LXA)であったことを示唆している。
【0225】
化合物IVのメチルエステルMeSi誘導体(C値26.0)の質量スペクトルは、m/z203(ベースピーク、CH(OSiMe)−(CHCOOCH)、171(203−32;CHOHの消失)、99(O=C−(CH−CH)及び307(M−203又はMCH(OSiMe)−(CH−COOCH)において突出したイオンを示した。比較的低い強度のイオンはm/z510(M)、420(M−90、トリメチルシラノールの消失)及び208(M−(99+203))においてあった。そのUVスペクトルは、259、269及び280nmにおいて最大を有する吸収のトリプレットを示し、共役トリエン発色団と一致した。これらのイオンの存在及びUVスペクトルは、IVがLXAのジヒドロ−15−オキソ−代謝物であったことを示す。この基本的構造は、炭素15位におけるケト基と一致するm/z99におけるイオンの存在、及び炭素5及び6におけるアルコール基が無損傷のままであることを明らかにするベースピークとしてのm/z203の存在により支持された。さらにトリエンオン発色団(λcal=310nm)の不在は、二重結合の消失が△13−14位においてであり、観察されたトリエン発色団を与えることを示す。これらの結果が一緒になって、化合物IVが13,14−ジヒドロ−15−オキソ−LXAであったことを示している。
【0226】
化合物IIのメチルエステル、MeSiO誘導体(C値−25.4)は、m/z203(ベースピーク;CH(OSiMe)−(CHCOOCH)、173(MeSiO−CH−(CH−CH)、171(203−32)及び584(M)においてイオンを与えた。その分子イオンはLXA誘導体より2質量単位高かった。これらのイオン及びλmaxMeOH259nm、269nm及び282nmにおける吸
収のトリプレットバンドは、化合物IIがLXAのジヒドロ−誘導体であったことを示す。HL−60細胞からの化合物Iのメチルエステル、MeSiO誘導体はGCにおいて2つの生成物を与えた。主要な生成物(C値=25.0)は、その質量スペクトルにおいてLXAと類似のイオンを与えたが、その分子イオンはm/z586においてであり、m/z555(M−31)及び496(M−90)におけるイオンも存在し、4つの二重結合の2つが還元された(示されていない)ことを示している。しかし末梢血単球(上記参照)の場合に同一の生成物は観察されず、かくしてピークIからのHL−60細胞−誘導材料は本実験においてこれ以上特性化しなかった。I−IVの構造及び図1からの結果は、LXAが無損傷の白血球によるω−酸化により代謝されず、代わりに炭素15アルコールにおいて脱水素され、共役テトラエンからトリエン構造にも変換されることを示す。これらの観察を一緒にして、LXAは、プロスタノイドを基質として類似の反応を行うことが知られている酵素であるNAD−依存性15−プロスタグランディンデヒドロゲナーゼ(5−PGDH)により攻撃され得ることが示唆される(Aenggard,E.and Samuensson,B.(1964)J.Biol.Chem.239:4097及びHansen,H.S.(1976)Prostaglandins 12:647において考察)。
【0227】
15−PGDH活性は最近、HL−60細胞において誘導されることが示され(Xun,C−Q.et al.(1991)Biochem.J.279:553)、それはPGEと比較して92%の効率で基質として15−HETEを用いると思われる(Agins,A.P.et al.(1987)Agents Action 21:397)。実際に、PMA−処理HL−60細胞から調製された100,000g上澄み液は、15−HETEを15−オキソ−ETEに変換し、分化の後のデヒドロゲナーゼ活性の存在を示している。LXAは15−HETEの触媒作用に関して競合し、Lineweaver−Burkeプロットから算出されるK=8.2±2.6μM(S.E.M.,n=6)を与えた。等モル濃度のLXA及び15−HETEにおいて、LXAは15−オキソ−ETE生成を約50%妨害した。PGEと比較したLXに関する、100,000g上澄み液による相対的変換率(図5)は、LXA、11−トランス−LXA及びLXBが変換されるが15−メチル−PGEは変換されないことを示した。これらの結果は一緒になって、LXA>11−トランス−LXA>LXBが15−PGDH又は同等の酵素系に関する基質であることを示す。
【0228】
PMAはHL−60細胞の単球−マクロファージ−様整列(lineage)を誘導するので(Collins,S.J.(1987)Blood 70:1233)、末梢血単球をインキュベートし、それらがリポキシンを代謝するか否かを決定した。リポキシン類は単球との有力な作用を示し(Stenke,L.et al.(1991b)Biochem.Biophys.Res.Commun.180:255)、これらの細胞はエイコサノイド類をω−酸化しない(Woldyne,M.E.et al.(1984)J.Biol.Chem.259:8815)。無損傷の単球(n=5)及び透過化細胞(凍結−解凍又はサポニン−処理、n=5)の両方の懸濁液をLXAに暴露すると、LXAは15−オキソ−LXAならびに共役トリエン含有生成物、13,14−ジヒドロ−LXA及び13,14−ジヒドロ−15−オキソ−LXAに変換される(表1を参照)。分化HL−60細胞の場合と同様に、単球は30秒以内に急速にLXAを変換した(>60%)(図6)。無損傷の、及び透過化単球の両方におけるこれらの代謝物の生成に関する時間的(temporal)関連性は類似であり、15−オキソ−LXA代謝物が遷移的中間体であることを示唆している。又、H−LXA(d=33)と共にインキュベートされた各単球懸濁液において、13,14−ジヒドロ−15−オキソ−LXA及び13,14−ジヒドロ−LXAが放射性標識を有する主要な生成物であった。15.5〜17分において13,14−ジヒドロ−LXAより前に溶離する生成物が観察され、それもトリエン発色団を示し、仕上げの間に遭遇するシス−トランス異性
化から生ずる13,14−ジヒドロ−LXAの11−トランス異性体であると思われたことは、注意するに値する。本来のLXAの11−シス二重結合は不安定であり、抽出及び単離の間に全−トランスに容易に異性化する(Romano,M.and Serhan,C.N.(1992)Biochemistry 31:8269)。
【実施例3】
【0229】
リポキシンレセプター類似体への結合親和力
ヒト前骨髄球性白血病細胞(HL−60)はAmerican Type Culture Collection(Rockville,MD)らか購入した。RPMI培地及び細胞培養試薬はGIBCO(Grand Island NY)から購入した。合成LXA.トリヒドロキシヘプタン酸(メチルエステル)、LXB、LTD、LTC及びLTBはBiomol(Plymouth Meeting,PA)から、及びSKF104353はSmith Kline and French Laboratoriesから購入した。ONO4057はONO Pharmaceutical Col,Ltd(Osaka,Japan)から購入した。[14,15−H]LTB(32.8mCi/ミリモル)、[1−14C]アラキドン酸(50.2mCi/ミリモル)、32PγATP(3,000Ci/ミリモル)、[9,10−H(N)]パルミチン酸(30.0mCi/ミリモル)及び[9,10−H(N)]ミリスチン酸(30.7Ci/ミリモル)はNew England Nuclear(DuPont Co.,Boston,MA)から購入した。11,12−アセチレン性LXAはCascade Biochemicals(Oxford,UK)から購入した。微量遠心管フィルター(0.45μm酢酸セルロース)はPGC Scientific(Gaithersburg,MD)から、及びシリコン油はHarwick Chemical Corp.(Akron,OH)(d=1.05)及びThomas Scientific(Swedesboro,NJ)(d=0.963)からそれぞれ購入した。ニトロブルーテトラゾリウム、PMA、DMSO、プロテアーゼ、レチノイン酸及びアクチノマイシンDはSigma(St.Louis,MO)から購入した。インスリン分泌活性タンパク質(islet activating protein)(IAP)はLIST Biological Lab.,Inc.(Campbell,CA)から購入した。プラスチックウェア、Whatman LK6D TLCプレート及び溶媒(HPLC等級)はFisher(Springfield,NJ)から購入した。
【0230】
[11,12−H]LXAの製造 11,12−アセチレン性LXAメチルエステルのトリチウム化は、New England Nuclear(Boston,MA)による通常のトリチウム化サービス(NET−259:92−2326)下で行った。簡単に言うと、11,12−アセチレン性メチルエステルを(Nicolaou,K.C.et al.(1985)J.Am.Chem.Soc.107:7515)におけると同様にUV吸収及び逆相HPLCにより特性化し、室温においてメチレンクロリド中でトリチウム雰囲気に暴露した。このインキュベーション物をLindlar触媒(Fluka Chemicalsからの1.0mg)の存在下で約1時間撹拌した。得られた混合物をメタノール中に保存し、RP−HPLCを用いて単離した。トリチウム化生成物を、光ダイオードアレー急速スペクトル検出器(photodiode array rapid spectral detector)を備えた勾配HPLC系を用いてメチルエステルとしてクロマトグラフィーにかけた(Serhan,C.N.,Methods
in Enzymology:Arachidonate Related Lipid Mediators,in Murphy R.C.,Fitzpatrick,F.(eds.)vol.187,Orlando,FL.Academic,(1990),p.167)。この混合物は[11,12−H]LXA及び[11,12−H]−11−トランス−LXAメチルエステル(〜1:3の比率)の両方を含むことが合成標準との共溶離により決定された。RP−HPLCの後、[11,12−H]LXA
を含む画分を集め、酢酸エチル中に抽出した。LiOHけん化により遊離の酸を製造した(Fiore,S.et al.(1992)J.Biol.Chem.267:16168)。これらの画分からの材料は、UV−電気化学的検出HPLC中に注入すると、合成LXAと共溶離したテトラエン−含有生成物に伴う90%以上の放射性を与えた。2つのHPLC系において基準LXAの保持時間を有して溶離した材料を結合実験に採用した。[11,12−H]LXAに関して算出された比活性は40.5Ci/ミリモルであった。
【0231】
細胞培養及び分化 HL−60細胞を100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン及び10%の牛胎児血清(Hyclone,Logan,UT)を補足したRPMI培地に播種し、250mlのフラスコにおいて5%CO雰囲気を用い、37℃でインキュベートした。次に〜50x106細胞/mlを含むそれぞれのフラスコにジメチルスルホキシド(DMSO)(1.12% v/v、120時間)又はレチノイン酸(RA)(1μM、120時間)又はホルボールミリステートアセテート(PMA)(20nM、48時間)を与えた。結合アッセイを開始する前に、細胞をCa2+及びMg2+を含まないリン酸塩緩衝食塩水(PBS)中で2回洗浄し、計数し、Tris緩衝液(10mM)、pH7.4中に20x10細胞/mlで懸濁した(Fiore,S.et al.(1992)J.Biol.Chem.267:16168)。ニトロブルーテトラゾリウム還元を行い、(Imaizumi,M.and Breitman,T.R.(1986)Blood 67:1273)におけると同様に多形核表現型の誘導を監視し、マクロファージ−様表現型の誘導に関して細胞付着を決定した(Collins S.J.(1987)Blood 70:1273)。第3継代培養に保持されたヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をDr.M.Gimbrone(Brigham and Women’s Hospital Department of Patholohy)から得た。
【0232】
末梢血からのPMN、血小板及びRBCの単離
ヒトPMNは、健康で正常なボランティアの静脈穿刺の後に、新しいヘパリン血から修正Boeyum法(Boeyum,A.(1968)Scan.J.Clin.Lab.Invest.21:77)により得た。PBS中の懸濁液を細胞数に関して、及びトリパンブルーを排除する能力により生存率に関して監視し、両者は98%を越えた。10mlのヘパリン血から、PBS中で3回遠心した後、赤血球を得た(2,500rpm、20℃において10分間)。酸性クエン酸塩デキストロース(9:1 v/v)中に採血した血液を用い、前記の通りに血小板を単離した(Serhan,C.N.and Sheppard,K.−A.(1990)J.Clin.Invest.85:772)。
【0233】
リガンド結合 H−LXA及びH−LTB結合を本質的にFiore.S.et al.(1992)J.Biol.Chem.267:16168におけると同様にして行った。Tris緩衝液10mM(pH7.4、Ca2+2.5mM、Mg2+1.2mM)中に細胞を懸濁させた後、アリコート(0.5ml)をH−リガンドのみ(0.3nM)と、又は濃度を増加させたホモリガンド又は他の化合物(3〜300nM)の存在下でインキュベートした(4℃において20分間)。インキュベーション物をシリコン油上(d=1.028)で急速に遠心し(60秒間、12,000g)、細胞−付随放射性を液体シンチレーションカウント(Wallac 1409,Pharmacia,Piscataway,NJ)により決定した。HUVEC細胞との結合実験は、3.5x10細胞/ウェルを有する12ウェルプレートにおいて行った。10分後、ウェルをPBSで2回洗浄し、氷酢酸(0.5ml)を加えることにより細胞−付随標識を回収した。これらのアッセイから得た結果から、リガンドプログラムを用いた実験をさらに行うこととなった。
【0234】
PLD活性 上記の通りに調製されたヒトPMN及びHL−60細胞(50x10細胞/ml)をH−ミリスチン酸又はH−パルミチン酸(8μCi/50x10細胞)と共にPBS中で37℃において40〜60分間インキュベートした。細胞吸収は加えられた標識の60〜80%の範囲であり、7.1±4.2%(n=10;平均±S.D.)及び32.6±10.3%(n=6;平均±S.D.)がそれぞれPMN及びHL−60細胞の全リン脂質中に吸収された。インキュベーションは37℃において行った(10x10細胞/mlPBS)。Billah.M.M.et al.(1989)J.Biol.Chem.264:17069におけると同様に、拮抗剤を50μLのPBS中で、又はホスファチジルエタノール生成のために1:10(v/v)EtOH:PBSを用いて加えた。指示された時間に、ここでは抽出回収物を定量するための内部標準として用いられる1−14C−アラキドン酸(5,000cpm)を含む3.5mlの氷冷CHCl/MeOH(2/5 v/v)を加えることによりインキュベーションを停止した。試料を、(Serhan,C.N.and Sheppard,K.−A.(1990)J.Clin.Invest.85:772)におけると同様に修正Bligh and Dyer抽出を用いて抽出した。50μLのCHCl/MeOH(8/2 v/v)中で濃縮された有機相を線状(linear)K6D TLCプレート上にスポットし、酢酸エチル/イソオクタン/酢酸/水(110/50/20/100,v/v/v/v)の有機相を用いて50分間展開した(Billah.M.M.et al.(1989)J.Biol.Chem.264:17069)。この系において、ホスファチジン酸(PA)はR=0.1±0.04を与え、PEtはR=0.56±0.04を与え;n=38±S.D.、それらは他のリン脂質(起点に残った)又は天然の脂質(R=0.75〜0.90)から明確に分離された。脂質をヨウ素蒸気を用いて視覚化し、やはり各TLCプレートにおいてスポットされてクロマトグラフィーにかけられた基準標準試料と共溶離することにより同定した。PA、PEt及び内部標準に相当する領域をこすり落とし、液体シンチレーションカウントにより定量した。H−ミリステート又はH−パルミテート標識の他に、[1−14C]アラキドネート(0.25μCi/30x10PMN)及び32PγATP(20μCi/50x10PMN)標識細胞の両方を用い、PA及びPEt生成のLXA−刺激生成を監視した。これらの実験において、PAは酢酸エチル/イソオクタン/酢酸(45/15/10、v/v/v)を溶媒系として用いて分離され(Bocckino,S.B.et al.(1989)Anal.Biochem.180:24)、R=0.46±0.03(n=15)を与えた。表4及び5におけるPEt生成に関して報告されているすべての値は、拮抗剤のみの存在下で得たdpmを拮抗剤及び0.5%EtOHの存在下で測定されたdpmから引き去ることにより算出した。
【0235】
LXA−誘導PLD活性へのIAP及びスタウロスポリンの影響
上記の通りに行われたPLD活性アッセイ(上記参照)の前に、IAP又はスタウロスポリンのいずれかへの細胞暴露を行った。PMNのIAP処理は、以前に記載された通りに行い(Nigam.S.et al.(1990)J.Cell Physiol.143:512)、HL−50はIAP(300ng/ml)の存在下又は不在下で37℃において2時間インキュベートした(Kanaho,Y.et al.(1992)J.Biol.Chem.267:23554)。アリコート(10細胞/0.5ml)を0.4mlの緩衝液に加えた。次に、インキュベートされた細胞を100μlのビヒクル(PBS、EtOH0.04%)又はLXA(10−7M及び10−9M)のいずれかに、0.5%EtOHの存在下で暴露した。スタウロスポリン(100nM)は、LXAを加える前に37℃で5分間細胞懸濁液に加えた。
【0236】
結果
合成[11,12−H]LXAの製造の後、その前骨髄球性白血病細胞(HL−60)への特異的結合を特性化し、[14,15−H]LTBの特異的結合との直接的
比較を行った。慣例的表現型マーカーを監視すると、未処理HL−60細胞はH−LXA及びH−LTBリガンドの両方に関して低い程度の特異的結合を示した。DMSO(1.12%)又はレチノイン酸(1μM)に5日間暴露することにより誘導された分化は、両方の放射性リガンドに関する特異的結合の3〜5倍の増加を伴った。マクロファージ−様表現型の特性を示すPMA−処理細胞(20nM、48時間)、すなわちプラスチックに付着するNBT陰性細胞(Imaizumi,M.and Breitman,T.R.(1986)Blood 67:1273;Collins,S.J.(1987)Blood 70:1233を参照)もH−LXA及びH−LTBの両方との特異的結合の出現に導いた。4℃において10分でH−LXAとの平衡結合に達し、次の20分間、事実上変化しないままであった。
【0237】
H−リガンドに関する特異的結合の誘導が始めからの合成(de novo synthesis)を必要とするか否かを評価するために、アクチノマイシンD(2μg/ml)をPMNインキュベーション物と共に加えた。アクチノマイシンDは、両標識エイコサノイド類に関する特異的結合におけるPMA−誘導増大を妨害し、始めからのタンパク質生合成の阻害が特異的結合部位の出現も妨害することを示唆した。プロテアーゼ及びグリコシダーゼ処理の影響を、H−LXA特異的結合に関して分化HL−60細胞及びヒトPMNの両方を用いて評価した。プロテアーゼ処理は特異的結合を減少させ、LXA特異的結合部位のタンパク質成分を支持する証拠を追加した。
【0238】
分化HL−60細胞及び[11,12−H]LXA(0.1〜30nM)を用いた等温結合アッセイ(4℃、10分間)からの結果は、[11,12−H]LXA特異的結合部位がK=0.6±0.3nMを与えることを示した。ヒトPMNとのLXA特異的結合の場合に観察された濃度に関し、Scatchardプロットの非直線状部分が観察された(Fiore,S.et al.(1992)J.Biol.Chem.267:16168)。HL−60細胞とのLTB特異的結合の場合にここで得た結果、K=0.12nMは本質的に、Harada(Xie,M.et al.(1991)J.Clin.Invest.88:45)により最近報告された値、すなわちK=0.23nMと一致する。
【0239】
H−LXAのその特異的結合部位との相互作用をさらに特性化するために、分化HL−60細胞を用いて競合結合実験を行った。LXA、LXB、LTB、LTC及びロイコトリエンレセプター拮抗剤SKF 104353(LTD拮抗剤;Harada.Y.(1990)Hiroshima J.Med.Sci.39:89)及びONO−4057(LTB拮抗剤;Gleason.J.G.et al.(1987)J.Med.Chem.30:959)を、可能性のある競合リガンドとして評価した。LXB、LTB又はトリヒドロキシヘプタン酸(メチルエステル)(300nM)のいずれも分化HL−60細胞とのH−LXA特異的結合を置換することができなかったが、LTCは3対数モル過剰(3 log molar excess)で加えると特異的結合を約30%減少させた。LXA(300nM)が、分化HL−60細胞へのH−LTB(0.3nM)結合と競合できないという発見は、LXA及びLTBが別の種類の特異的結合部位と相互作用することを示唆している。ロイコトリエンレセプター拮抗剤SKF 104353及びONO−4057は、分化HL−60細胞とのH−LXA結合を置換しなかったが、SKF 104353及びLTDはHUVECとの特異的H−LXA結合との競合において有効であった。HUVECはH−LXAに関して11.0±2.6nMのK及び2.5x10−10MのBmaxを示し、LTD競合に関して事実上同一の値が算出された。H−LTBの場合、HUVECはLTBに特異的に結合しなかったが、このH−リガンドとの非特異的細胞会合が明白であった(n=3;示されていない)。H−LXAの特異的会合は、調査されたいくつかの他の細胞型の中で明らかではなかった。ここで、洗浄された血小板、RBC、β−細
胞(Raji)又はT−細胞(Jurkat)培養細胞系のいずれもH−LXAに関する特異的結合を示さなかった。これらの結果を一緒にすると、LXAは、ロイコトリエンレセプター拮抗剤(SKF 104353又はONO−4057)に感受性でない、分化HL−60細胞における独特の結合部位と相互作用することが示されている。HUVECにおいて、H−LXA特異的結合部位はLTD及びSKF 104353の両方に感受性であったが、ONO−4057に感受性でなく、この細胞型におけるH−LXA特異的結合が推定LTDレセプターとのその相互作用を反映し得ることを示唆している。
【0240】
LXAはヒト好中球におけるホスファチジン酸生成を急速に刺激する(Nigam.S.et al.(1990)J.Cell.Physiol.143:512)。H−LXA結合がPLD活性化を与えるか否かの決定のために、PEt及びPAをPMN及びHL−60細胞の両方において監視した。結果は、これらの細胞型においてLXAは、類似の時間的応答でPLD活性を刺激することを示した。LXA(10−10M)に暴露されたPMNは、60秒以内に急速にエタノール捕獲生成物PEtを生成し、それは5分までにベースライン量まで減少した。EtOHを加えない場合、PEtは統計的に有意な量では生成されなかった。PMN及び分化HL−60細胞の両方において、PEt生成に関する2相濃度依存性(biphasic concentration dependence)が得られた。見掛けの最大応答は、約10−9〜10−10MのLXAの濃度範囲の場合に見られ、活性の第2のピークは10−7MのLXAにおいて観察された。10−8M以下では、化学走性ペプチドFMLP及びLXAの両方が類似の大きさの結果を与え、FMLPが何人かのドナーからのPMNの場合にわずかに、より効力があると思われる。他の生合成経路の寄与の可能性を評価するために、LXA−誘導PA生成を32PγATP及び[1−14C]−アラキドネート−標識PMNの両方においても調べた。32P−標識PAは、LAX(10−7M)への暴露の30分後に初めて統計的に有意な量で明らかとなった。14C−アラキドネート−標識前駆体から誘導される14C−標識PA生成の場合、類似の結果が得られた。これらの発見は、LXAがPMNにおけるPA生成の他の経路も刺激することができるが、暴露のやっと30分後であることを示した。
【0241】
LXAと共にインキュベートされた分化HL−60細胞のみ(H−LXAに関する特異的結合部位を発現する)がPEtを急速に生成し、それは30秒以内に明らかとなった。LXA(10−9M)と共にインキュベートされた未分化HL−60細胞は、急速にPEtを生成しなかった。これらの細胞の場合の濃度依存性もLXAとの2相応答を与え、10−9Mにおいて見掛けの最大値を与えた。LXA−媒介PLD活性化に含まれる可能な信号導入事象(signal transduction events)を調べるために、次にPMN及びHL−60細胞をIAP又はスタウロスポリンのいずれかに暴露した。結果は、低濃度範囲(10−9〜10−10M)内で引き出されたLXA−媒介PLD活性は、両細胞型においてIAP処理に感受性であり、同様にLXAの高濃度(10−7M)において刺激されたPLD活性はスタウロスポリンにより阻害されたことを示す。かくして10−8Mより低い濃度における両細胞系の場合、LXAは急速に特異的結合部位と相互作用し、それがPLD活性の引金を引き、従って機能的応答を与えるが、LXAのマイクロモル以下の濃度の範囲内でそれは、やはりPLDの活性化に導くことができる別の過程を刺激することができる。
【実施例4】
【0242】
リポキシン生物活性アッセイ
好ましいリポキシン類似体のいくつか(上記の化合物1〜8として構造を示した)を実施例1に記載の通り、全合成により製造した。製造及びHPLCを介したこれらの化合物の単離の後に、最初にそれらが生物活性を保持しているか否かを決定するために、好中球
付着アッセイ及び上皮細胞移行アッセイにより化合物を評価した(Nash,S et al.(1987)J.Clin.Invest.80:1104−1113;Nash,S et al.,(1991)J.Clin.Invest.87:1474−1477;Parkos,C.A.et al.,(1991)J.Clin.Invest.88:1605−1612;Parkos,C.A.et al.(1992)J.Cell.Biol.117:757−764;Madara J.L.et al.,(1992)J.Tiss.Cult.Meth.14:209−216に記載の通り)。
【0243】
化合物1〜8(10−7〜10−10M)は、内皮細胞への好中球付着及び上皮細胞上におけるそれらの移行を阻害することが見いだされた。アセチレン性前駆体(化合物1、3、5及び7)は、それらに対応するテトラエンより物理的に安定であることが見いだされた。C15位におけるアルコール基又は系列における他の修飾を有していない化合物7は、アッセイにおいて生物活性を示さなかった。従ってリポキシンのC15位における置換基が、少なくともリポキシンA類似体の生物活性のために必要であると思われる。15−メチル−リポキシンA(化合物2)も、ロイコトリエンB(LTB)により引金を引かれるヒト内皮細胞への多形核(PMN)付着を、約1nMのIC50で阻害することが証明された。リポキシン類似体1〜8は、合成リポキシンAより大きいか、又は等しい力価において移動を妨害することが見いだされた。化合物7は、LXA又は他の類似体により誘導される阻害の場合の濃度範囲内で、本質的に不活性であることが見いだされた。これらの好中球−含有バイオアッセイの結果は、C15〜20位に修飾を有するリポキシンA類似体がそれらの生物学的作用を保持しており、PMN移行及び付着事象を阻害することができることを示している。
【0244】
化合物1〜8の「生物学的半減期(bio−half−life)」を、実施例2に記載の通りにホルボールエステル−処理ヒト前脊髄球性白血病(HL−60)細胞を用いて評価した。これらの細胞は、細胞インキュベーション物へのその添加の5分以内にリポキシンAの95%以上を変換する。この系におけるリポキシンAは急速に15−オキソ−リポキシンAに変換される。しかし同一のアッセイにおいて、15−メチル−リポキシンA(化合物2)及びシクロヘキシル−リポキシンA(化合物4)は、最高2時間の時点でインキュベーション培地において定量的に回収された。これらの結果は、炭素20〜炭素15位における修飾が、白血球によるリポキシンAのさらなる代謝を予防することを例示している。
【0245】
さらに、アセチレン性メチルエステルリポキシンA(化合物1)の安定性は、抽出及び逆相HPLCの後に評価すると、生体外にける全血(37℃)中で60分間インキュベートした後、本質的に無損傷で回収された。これらの結果を一緒にすると、リポキシン類似体は生物学的作用を保持しており、試験管内におけるさらなる代謝に抵抗性であることを示している。
【0246】
本発明の主たる態様または特徴は次のとおりである。
【0247】
態様1:構造式:
【化71】

[式中、XはR、OR又はSRであり、
ここでR
(i)水素;
(ii)炭素数が1〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル;
(iii)炭素数が3〜10のシクロアルキル;
(iv)炭素数が7〜12のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【化72】

[式中、Z、Ziii及びZはそれぞれ独立して−NO、−CN、−C(=O)−R
水素及び−SOHから成る群より選ばれ;Zii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、
メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれる];
(vii)蛍光標識のような検出可能な標識分子;あるいは
(viii)炭素数が2〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルケニル;
であり、
は(C=O)、SO又は(C=N)であり、
はO、S又はNHであり、
及びRの一方は水素であり、他方は
(a)H;
(b)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜8のアルキル;
(c)炭素数が3〜6のシクロアルキル;
(d)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が2〜8のアルケニル;又は
(e)R[ここでQは−O−又は−S−であり;Rは原子価結合または直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜6のアルキレンであり;Rは直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜8のアルキルである];
であり、

(a)H;または
(b)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜6のアルキル;
であり、
又はYは一方が−OH、メチル、−H又は−SHであり、他方は
(a)H;(b)CH[ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;Zはシアノ、ニトロ又はF、Cl、Br、Iを含むハロゲンである];
(c)直鎖状もしくは分枝状の炭素数が2〜4のアルキル;または
(d)炭素数が1〜4のアルコキシ;
であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり、

(a)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;
(b)−(CH)n−R
[ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【化73】

[式中、Z、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R、メトキシ及び−SOHから成る群より選択され;Zii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれる];
である];
(c)−R[ここでQは−O−又は−S−であり;そしてRは原子価結合または直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜6のアルキレンであり;Rは直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜8のアルキルである];
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;および
(ii)CH[ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり、Zはハロゲンから成る群より選択される];
から成る群より選択される];または
(e)1〜6個のハロゲン原子を含む炭素数が1〜8の直鎖状もしくは分枝状のハロアルキル;
である]
で表されるリポキシン。
【0248】
態様2:構造式:
【化74】

[式中、XはR、OR又はSRであり、ここでR
(i)水素;
(ii)炭素数が1〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル;
(iii)炭素数が3〜10のシクロアルキル;
(iv)炭素数が7〜12のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【化75】

[式中、Z、Ziii及びZはそれぞれ独立して−NO、−CN、−C(=O)−R
水素及び−SOHから成る群より選ばれ;ここでZii及びZivはそれぞれ独立してハロ
ゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;或いは
(viii)炭素数が2〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルケニル;
であり、
は(C=O)、SO又は(C=N)であり、
はO、S又はNHであり、
及びRの一方は水素であり、他方は
(a)H;
(b)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜8のアルキル;
(c)炭素数が3〜6のシクロアルキル;
(d)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が2〜8のアルケニル;又は
(e)R[ここでQは−O−又は−S−であり;Rは原子価結合または直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜6のアルキレンであり;Rは直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜8のアルキルである];
であり、

(a)H;もしくは
(b)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜6のアルキル;
であり、
もしくはYの一方はヒドロキシ、メチル、水素又はチオールであり、他方は
(a)H;
(b)CH[ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり;Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンである];
(c)直鎖状もしくは分枝状の炭素数が2〜4のアルキル;
(d)炭素数が1〜4のアルコキシ;
であるか、
あるいはY及びYは一緒になって
(a)=N;又は
(b)=O;
であり、

(a)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;または
(b)−(CH−R
[ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル;
(ii)フェニル;
(iii)置換フェニル
【化76】

[式中、Z、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R、メトキシ及び−SOHから成る群より選ばれ;Zii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素及びヒドロキシルから成る群より選ばれる];
である];
(c)−R[ここでQは−O−又は−S−であり;Rは原子価結合または直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜6のアルキレンであり;Rは直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が0〜8のアルキルである];または
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[ここでRiii及びRivは独立して
(i)H;および
(ii)CH[ここでa+b=3、a=0〜3、b=0〜3であり、Zはハロゲンから成る群より選択される];
から成る群より選択される];
である]
で表されるリポキシン類似体
【0249】
態様3:構造式:
【化77】

[式中、R
(a)H;および
(b)炭素数が1〜8のアルキル;
から成る群より選択され、

【化78】

から成る群より選択される]
で表されるリポキシン類似体。
【0250】
態様4:構造式:
【化79】

[式中、R
(a)H;および
(b)炭素数が1〜8のアルキル;
から成る群より選択され、
およびRは独立に
(a)H;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)CFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン:
(e)直鎖状もしくは分枝状の炭素数が1〜3のアルキル;および
(f)炭素数が1〜3のアルコキシ;
から成る群より選択され、
およびRは独立に
(a)H;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)メチルもしくは−CFおよび−CHFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン:
(e)メトキシを含む炭素数が1〜3のアルコキシ;および
(f)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が2〜4のアルキルもしくはハロアルキル;
から成る群より選択される]
で表されるリポキシン類似体。
【0251】
態様5:構造式:
【化80】

[式中、R
(a)H;および
(b)炭素数が1〜8のアルキル;
から成る群より選択され、
およびRは独立に
(a)H;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)CFおよびCHFを含むハロメチル;
(d)ハロゲン:
(e)直鎖状もしくは分枝状の炭素数が1〜3のアルキル;および
(f)炭素数が1〜3のアルコキシ;
から成る群より選択され、

(a)直鎖状もしくは分枝状であることができる炭素数が1〜9のアルキル;または
(b)−(CH−R
[ここでn=0〜4であり、R
(i)炭素数が3〜10のシクロアルキル;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【化81】

[式中、Z、Ziii及びZはそれぞれ独立して水素、−NO、−CN、−C(=O)−R及び−SOHから成る群より選ばれ;Zii及びZivはそれぞれ独立してハロゲン、メチル、水素、メトキシ及びヒドロキシルから成る群より選ばれる];
である]
で表されるリポキシン類似体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された態様の発明。

【公開番号】特開2011−148815(P2011−148815A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59185(P2011−59185)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【分割の表示】特願2008−159575(P2008−159575)の分割
【原出願日】平成6年6月15日(1994.6.15)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】