説明

リポソームの製造方法、該方法によって製造されるリポソーム組成物、及び該リポソーム組成物の使用方法

【課題】栄養補助剤又は医薬品として使用されるリポソームの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも約18w/w%のベシクル形成脂質を約1〜12w/w%の水性溶媒又は水混和性溶媒に室温で可溶化して脂質溶液を形成し、前記薬剤を0.005〜0.01w/w%のEDTAに室温で可溶化して薬剤含有溶液を形成し、前記薬剤含有溶液をろ過し、前記脂質溶液を前記薬剤含有溶液に攪拌しながら注入し、得られる脂質及び薬剤含有溶液を頻回攪拌しながら少なくとも1時間水和させ、リポソームを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性薬剤又は所望の物質をリポソーム封入形態で含むリポソームの製造方法、及び該リポソーム組成物の使用方法に関する。なお、本出願は、2011年1月5日に出願された米国仮出願61/430,024号に基づく優先権を伴う出願であり、当該米国仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、両親媒性脂質で構成される球状に閉じた(self-enclosed)ベシクルである。リポソームは広く研究されており、薬剤、組成物及び化合物のin vivo投与の担体として使用されている。リポソームは、その内部に水相を有する少なくとも1つの閉じた脂質二重膜を含む。従来、水溶性薬剤をリポソーム内部水相に封入することにより、及び/又は、水に不溶の薬剤を脂質二重層に封入することにより、リポソームは薬物送達の目的で使用されてきた。リポソームは、1つの脂質二重層を有する単層リポソームである場合もあるし、同心円状に配置された2又はそれ以上の二重層を有する多層リポソームである場合もある。
【0003】
様々なリポソーム調製方法及びリポソームへの治療薬の封入方法が知られている(例えば、米国特許第3,932,657号(特許文献1),第4,311,712号(特許文献2)及び第5,013,556号(特許文献3)。これら全ては参照により本明細書に組み込まれる。)。公知の方法としては、例えば、米国特許第4,235,871号(特許文献4,当該文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような逆相蒸発法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,932,657号
【特許文献2】米国特許第4,311,712号
【特許文献3】米国特許第5,013,556号
【特許文献4】米国特許第4,235,871号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
数多くの公知のリポソーム製剤の調製方法は、一般的に経口デリバリーが意図される、栄養価を高めたリポソーム製剤にとっては、あまり望ましいものではない。その理由の一つは、リポソーム製剤における非食品等級の成分の使用にある。さらに、数多くの公知の方法では、加熱工程、例えば、脂質溶液の温度を上昇させる、脂質の可溶化のための加熱工程が採用される。そのような工程は、薬剤、化合物又は組成物、特に熱及び/又は酸化に対する感受性の高いものの性能又は効能に影響を与える場合がある。
したがって、栄養補助剤又は医薬品として使用されるリポソームの新規な調製方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の態様及びその実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。関連技術の制約は、本明細書に基づき、当業者に明らかであろう。
【0007】
本発明の一態様では、薬剤が封入されたリポソームを製造する方法が提供される。一般的には、適当な量のベシクル形成脂質を水性溶媒又は水混和性溶媒に室温又はその付近の温度で可溶化して脂質溶液を形成する。それとは別に、封入すべき薬剤を水性溶媒又は水混和性溶媒に室温又はその付近の温度で可溶化して薬剤含有溶液を形成する。脂質及び封入薬剤を可溶化するための水性溶媒又は水混和性溶媒は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0008】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、少なくとも約18w/w%のベシクル形成脂質を約1〜12w/w%の水性溶媒又は水混和性溶媒(例えばアルコール)に室温で可溶化して脂質溶液を形成する。
【0009】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、所定量の薬剤を0.005〜0.01w/w%の水性溶媒(例えばEDTA)又は水混和性溶媒に室温で可溶化して薬剤含有溶液を形成する。薬剤がアスコルビン酸又はその塩もしくはエステルである実施形態では、好ましくは、0.005〜0.1w/w%の水性溶媒(例えばEDTA)又は水混和性溶媒に室温で可溶化して薬剤含有溶液を形成する。
【0010】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、水混和性溶媒(例えば、脂質溶液を形成するための水混和性溶媒)はアルコールを含む。
【0011】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、水性溶媒(例えば、薬剤含有溶液を形成するための水性溶媒)はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。
【0012】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、薬剤含有溶液をろ過する。
【0013】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、脂質溶液及び薬剤含有溶液を混合する。ある実施形態では、脂質溶液を薬剤含有溶液に攪拌しながら注入する。
【0014】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、得られる溶液(脂質及び薬剤含有溶液)を適当な時間水和させる。ある実施形態では、頻回攪拌しながら溶液を少なくとも1時間水和させる。
【0015】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、追加の脂質及び/又は増粘剤を加えてゲルを形成させる。ある実施形態では、追加の脂質及び/又は増粘剤を水和工程の後に加える。
【0016】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、ベシクル形成脂質が少なくとも約45〜50%のホスファチジルコリンを含む。ある実施形態では、ホスファチジルコリンが卵又は大豆に由来する。
【0017】
本発明のリポソーム製造方法の一実施形態では、薬剤は、アスコルビン酸又はその塩もしくはエステル、GSH及びALAから選択される。
【0018】
本発明の別の態様では、活性薬剤の投与のためのリポソーム組成物が提供される。好ましい実施形態では、リポソーム組成物は低温法によって形成される。ある実施形態では、低温法は、室温で、すなわち、加熱及び/又は加熱工程なしで、実施される。ある実施形態では、活性薬剤は栄養補助食品、サプリメント(dietary supplement)又は医薬品である。別の実施形態では、活性薬剤はアスコルビン酸又はその塩(例えばアスコルビン酸ナトリウム)もしくはエステル、GSH及びALAから選択される。さらに別の実施形態では、活性薬剤がアスコルビン酸又はその塩であって、少なくとも約22w/w%のアスコルビン酸又はその塩がリポソームに封入されている。
【0019】
本発明のリポソーム組成物の一実施形態では、リポソーム組成物のリポソームは、約200〜500nmの平均粒径(直径)を有する。
【0020】
本発明のリポソーム組成物の一実施形態では、リポソーム組成物のリポソームは、少なくとも約18w/w%のベシクル形成脂質を含む。
【0021】
本発明のリポソーム組成物の一実施形態では、リポソーム組成物のリポソームは、0.005〜0.1w/w%のEDTAを含む。
【0022】
本発明のリポソーム組成物の一実施形態では、リポソーム組成物のリポソームは、10〜12w/w%のアルコールを含む。
【0023】
本発明のリポソーム組成物の一実施形態では、ベシクル形成脂質は少なくとも約45〜50%のホスファチジルコリンを含む。ある実施形態では、ホスファチジルコリンは、大豆又は卵に由来する。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは高純度のホスファチジルコリンである。さらに別の実施形態では、リポソーム組成物は、増粘剤及び/又は乳化剤を含む。ある実施形態では、増粘剤及び/又は乳化剤は、キサンタンガム又はTweenTM80を含む。ある実施形態では、0〜0.6w/w%のキサンタンガムを含む。別の実施形態では、0.4w/w%のTweenTM80を含む。
【0024】
本発明の別の態様では、単位用量パッケージと該パッケージ中に含まれるリポソーム組成物とを含む単位用量製剤(剤形)が提供される。ある実施形態では、N2のガスフラッシュの下、リポソーム組成物がパッケージ中に密封されている。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、対象における壊血病、心臓血管疾患、脳血管疾患、癌、加齢性黄斑変性症、白内障、痛風、重金属毒性又は糖尿病を、リポソームに封入したアスコルビン酸又はその塩で処置する方法が提供される。ある実施形態では、高用量のリポソーム組成物が投与される。
【0026】
本発明のさらに別の態様では、対象における癌、肝機能障害、悪性腫瘍、AIDS、外傷(trauma)、熱傷、敗血症、肺疾患、パーキンソン病、糖尿病、アルツハイマー病、統合失調症、嚢胞性線維症、心臓麻痺及び心臓発作、痙攣(癲癇)、鎌状赤血球貧血、躁鬱病(bipolarism)、慢性疲労症候群、自閉症又は関連免疫疾患を、リポソームに封入したGSHで処置する方法が提供される。ある実施形態では、高用量のリポソーム組成物が投与される。
【0027】
本発明のさらに別の態様では、対象における酸化的ストレスもしくはダメージ、糖尿病、肝疾患、炎症、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)、心臓血管疾患、末梢神経損傷、統合失調症、肥満、癌又は高血圧を、リポソームに封入したALAを用いて治療又は予防する方法が提供される。ある実施形態では、高用量のリポソーム組成物が投与される。
【0028】
上記した例示的な態様及び実施形態に加え、さらなる態様及び実施形態が以下の記載を参照することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1AはL−アスコルビン酸の化学構造を示す図であり、図1BはL−アスコルビン酸ナトリウムの化学構造を示す図である。
【図2】図2A及び2Bは、例示的な容器の平面図及び側面図である。
【図3】図3は、室温(実線)又は50℃(点線)で保存(日数)した場合のビタミンCの重量%の経時変化によって、リポソームに封入されたアスコルビン酸ナトリウムの安定性を示す図である。
【図4】図4は、本発明の方法の一実施形態によって調製したリポソームをバイアル中、50℃で保存した場合(実線)、市販品のリポソーム封入アスコルビン酸ナトリウム(LivOn Lypo-SphericTM Vitamin C)をバイアル中、50℃で保存した場合(点線)、ならびに、市販品のリポソーム封入アスコルビン酸ナトリウム(LivOn Lypo-SphericTM Vitamin C)をオリジナルパッケージ中、50℃で保存した場合(破線)の安定性を、19日間にわたるビタミンCの重量%の経時変化によって示す図である。
【図5】図5は、本発明の方法の一実施形態によって調製したリポソームをバイアル中、50℃で保存した場合(図中の黒ひし形)、市販品のリポソーム封入アスコルビン酸ナトリウム(LivOn Lypo-SphericTM Vitamin C)をバイアル中、50℃で保存した場合(図中の黒四角)、ならびに、市販品のリポソーム封入アスコルビン酸ナトリウム(LivOn Lypo-SphericTM Vitamin C)をオリジナルパッケージ中、50℃で保存した場合(図中の黒三角)の安定性を、90日間にわたるビタミンCの重量%の経時変化によって示す図である。
【図6】図6は、本発明の方法の一実施形態によって調製したリポソームをバイアル中、25℃(実線)又は40℃(点線)で保存した場合の安定性を、アスコルビン酸ナトリウムの重量%の経時変化によって示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
I.定義
「活性薬剤」、「活性化合物」及び「化合物」という用語は、リポソームによる封入に適した組成物又は化合物を意味する。これらの用語には、栄養補助食品、サプリメント(dietary supplement)及び医薬品が含まれる。本発明の方法及び組成物での使用が意図される薬剤は広範にわたり、治療適応及び診断適応に適した薬剤が含まれる。
【0031】
「栄養補助食品」という用語は、健康上及び/又は医学上の利点を提供する食物又は食品を意味する。そのような利点は、生理学的、治療的、予防的又は診断的な利点であり得る。栄養補助食品としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ハーブ、サプリメント(dietary supplement)等の食品が挙げられる。
【0032】
「サプリメント(dietary supplement)」という用語は、食事を補う又は栄養素を提供する化合物又は組成物を意味する。サプリメントとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、ビタミン、ミネラル、ハーブ及びその他の植物製品、ファイバー、脂肪酸及びアミノ酸又はペプチドが挙げられる。
【0033】
「医薬」又は「医薬品」という用語は、疾患の医学的な診断、療養、治療又は予防での使用が意図される化学物質又は組成物を意味する。
【0034】
「リポソーム組成物」という用語は、少なくとも一部が水性相及び/又は脂質二重層に封入された薬剤、化合物又は組成物を含むリポソームを意味する。
【0035】
「ベシクル形成脂質」という用語は、安定なリポソーム組成物を形成し得る脂質を意味する。そのような脂質には、典型的には、1もしくは2つの疎水性アシル炭化水素鎖又はステロイド基が含まれ、また、化学反応性官能基、例えば、アミン、酸、エステル、アルデヒド又はアルコールをその極性頭部基として含んでいてもよい。炭化水素鎖は、典型的には、約14〜22個の炭素原子の鎖長を有し、様々な程度の不飽和度を有していてもよい。
【0036】
「高用量(high-dose)」及び「メガドーズ(mega-dose)」という用語は、活性薬剤又は化合物の用量が、公式に推奨されている用量よりも大きいことを意味する。ある実施形態では、「高用量」及び「メガドーズ」は、公式に推奨されている用量(例えば米国食品医薬品局(FDA)、英国保健省及び欧州連合等の政府機関によって推奨されている用量)よりも約5〜500倍大きい用量を意味する。他の実施形態では、「高用量」及び「メガドーズ」は、公式に推奨されている用量よりも約10〜1000倍、約10〜500倍、約10〜250倍、約10〜100倍又は約10〜50倍大きい用量を意味する。
【0037】
「処置」、「処置する」等の用語は、一般的に、疾患の症状の軽減及び/又は疾患の重症度の低減に有効なリポソーム組成物の投与によって、所望の薬理作用及び/又は生理作用を得ることを意味する。そのような作用は、疾患又はその症状を完全又は部分的に予防するという点で予防的なものであってもよいし、疾患及び/又は該疾患に起因する悪影響を完全又は部分的に治すという点で治療的なものであってもよいし、両者を兼ね備えたものであってもよい。
【0038】
「処置」という用語には、哺乳動物(特にヒト)の疾患又は症状に対するいかなる処置も含まれ、例えば、ある疾患を発症する可能性が高いが未だ発症していると診断されていない対象に対して、当該疾患の発症を予防すること、当該疾患を抑制すること(すなわち、その進行を停止させること)、又は当該疾患を緩和すること(すなわち、当該疾患を退行(regression)させること)が含まれる。アスコルビン酸ナトリウムに関する具体例を挙げれば、「処置」には、壊血病、心臓血管疾患、脳血管疾患、癌、加齢性黄斑変性症、白内障、痛風、重金属(鉛、ヒ素等)毒性及び糖尿病に罹患する対象に対して、検出可能で有益な治療効果を提供することが含まれる。
【0039】
「有効量」、「有効な量」又は「治療的に有効な量」という用語は、当該用語がリポソーム封入薬剤の量について用いられる場合、治療効能に十分なリポソーム組成物の量又は用量(例えば、疾患又は障害の症状を予防、治療又は緩和するのに十分な量)を意味する。
【0040】
「薬学的に許容可能な」という用語は、例えば、その他の製剤成分と混合可能な担体、希釈剤又は賦形剤であって、レシピエントに一般的に安全に投与可能なもの、あるいは、投与によって望ましくない有害な身体的反応を引き起こさないものを意味する。
【0041】
「室温」という用語は、約10℃〜37.78℃、好ましくは約15.5℃〜27℃、さらに好ましくは約18.3℃〜26.7℃の範囲の温度を意味する。「室温」の好ましい範囲は、約20℃〜30℃である。特定の実施形態では、「室温」は約15.5℃、18.3℃、18.9℃、19.4℃、20℃、20.6℃、21.1℃、21.7℃、22.2℃、22.8℃、23.3℃、23.9℃、24.4℃、25℃、25.6℃、26.1℃、26.1℃、26.7℃、27.2℃、27.8℃、27.8℃、28.3℃、28.9℃、29.4℃、30℃、30.6℃、31.1℃、31.7℃及び32.2℃であり得る。
【0042】
「高温」という用語は、室温よりも高い温度を意味する。非限定的な実施形態では、「高温」は約25℃〜約60℃である。その他の非限定的な実施形態では、「高温」は約25℃〜約50℃である。特定の非限定的な実施形態では、「高温」は40℃又は50℃であり得る。
【0043】
本発明の組成物は、単独で、又は慣用の賦形剤(例えば、薬学的又は生理学的に許容可能な有機又は無機担体物質であって、本発明で用いる組成物との有害な反応を生じず、経口、腸内又は非経口(経静脈)投与に適したもの)との混合物として投与することができる。薬学的に許容可能な担体の好適な例としては、水、塩溶液(例えば、リンガー溶液)、アルコール、油、ゼラチン及び炭水化物(糖質)、具体的には、ラクトース、アミロース、でんぷん、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース及びポリビニルピロリドンが挙げられる。そのような調製物は滅菌し得るし、所望により、本発明の方法で用いる組成物との有害な反応を生じない助剤、例えば、滑剤、保存料(防腐剤)、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を調節可能な塩、緩衝液、着色剤及び/又は芳香剤と混合し得る。また、そのような調製物は、所望により、代謝低下(metabolic degradation)を低減するその他の活性物質と組み合わせることもできる。
【0044】
「対象」という用語は、その通常の意味で用いられ、霊長類(例えば、ヒト、非ヒト霊長類等)、実験動物(例えば、マウス、ラット等の齧歯動物)、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ等)及び愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ等)が含まれる。封入化ビタミンCを含むリポソーム組成物の「対象」は、一般的には、アスコルビン酸を合成できない動物を意味する。アスコルビン酸を合成できない哺乳動物としては、霊長類の直鼻猿亜目(Suborder Haplorrhini)(例えば、ヒト、サル、類人猿等)が挙げられる。
【0045】
「ビタミンC」という用語は、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸塩、あるいは、アスコルビン酸の無機塩又はエステルを意味する。
【0046】
「GSH」という用語は、グルタチオン、すなわち、(2S)−2−アミノ−4−{[(1R)−1−[(カルボキシメチル)カルバモイル]−2−スルファニルエチル]カルバモイル}ブタン酸を意味する。
【0047】
「ALA」という用語は、アルファリポ酸、2種類のエナンチオマー(R−(+)−リポ酸(RLA)及びS−(−)−リポ酸(SLA))のラセミ混合物、活性エナンチオマーRLA又はALAの無機塩を意味する。
【0048】
「ATP」という用語は、アデノシン−5'−三リン酸エステル又はATPの無機塩を意味する。
【0049】
「関連する」という用語は、単に、両方の事象が存在することを意味するのであり、一方が他方と因果的関係を有するという意味に解釈されるべきではない。
【0050】
II.リポソーム組成物の調製方法
リポソームを調製する典型的な方法は、脂質又はリポソーム組成物を加熱する少なくとも一工程、一般的には二工程を含む。まず、一般的には、脂質−溶媒組成物を高温まで加熱し、溶媒への脂質の溶解を促進する。リポソーム組成物を製造するための脂質は、一般的には、ワックス状材料(waxy material)の顆粒(granule)又は塊(chunk)として供給され、溶媒に加えられる熱は、一般的には、脂質を可溶化するために必要である。次いで、慣用のリポソーム調製方法は、活性薬剤の封入のために、及び/又は、リポソームのサイジングのために、均質化(homogenization)、超音波処理又は微少溶液操作(microfluidization)の工程を必要とする。均質化工程(場合によっては、超音波処理工程又は微少溶液操作工程)において、脂質−活性薬剤組成物を、強制的に、高速ホモジナイザーの相互作用チャンバー(interaction chamber)を通過させることにより、熱が発生し、その結果、脂質−活性薬剤混合物が高温まで加熱される。組成物は、ホモジナイザーチャンバー外で冷却されるが、組成物の大部分は、均質化工程の後、長期間、上昇した温度を維持する。多くの活性薬剤、脂質及び化合物、例えば、ビタミン及びその他の栄養補助剤(ビタミンC、グルタチオン、ALA等)は、酸化に対して感受性が高く、酸化は高温で促進される。例えば、ビタミンCは、熱、光及び酸素に対して感受性が高く、したがって、均質化工程及びリポソーム封入工程での加熱によって生じる高温状態で直ちに品質が低下する。このように、リポソーム封入薬剤の調製方法では熱を利用するため、その過程で薬剤の大部分の品質が低下する。
【0051】
本発明の低温法の一実施形態では、室温又は室温付近の温度(約20〜25℃)下及び/又は非加熱下で、小さなサイズのリポソームを一工程で形成させることにより、この問題を解決する。好ましい実施形態では、「低温法」とは、非加熱下及び/又は加熱工程の不存在下でリポソームを形成する方法を意味する。別の実施形態では、「低温法」とは、室温又は室温付近の温度でリポソームを形成する方法を意味する。この実施形態では、「低温法」は「室温」と同義である。その他の実施形態では、本発明の方法は、非加熱下でリポソームを調製する工程を含む。別の実施形態では、本発明の方法は、1又は2以上の溶媒の加熱等の加熱工程の不存在下でリポソームを調製する工程を含む。
【0052】
この一工程プロセスは、活性薬剤をリポソームベシクルに封入するために、又は、リポソームをサイジングするために、さらに別の工程(例えば、均質化、超音波処理又は微少溶液操作)を含まないか、又は必要としない。したがって、本発明の低温法で製造したリポソーム組成物中の薬剤は、従来の方法で製造したリポソームに封入された薬剤と比較して、品質低下及び/又は活性喪失が有意に抑えられている。
【0053】
本発明の低温法において、脂質は、好ましくは、完全に又は大部分が水性溶媒又は水と混合可能な溶媒(例えば、大部分のアルコール)に可溶化される。リポソーム組成物が経口投与用である場合、水性溶媒は、好ましくは、摂取に適したものである。低温法で用いる溶媒がアルコールである実施形態では、最終産物中の最終アルコール含量は、最終産物の重量を基準として約10〜12重量%未満であることが好ましい。アルコールは、安定なリポソーム産物を形成するために必須ではないが、透明(translucent)なゲルを製造するのに役立つと思われる。アルコールは、さらに、効果的な保存料として役立つという利点を有している。また、アルコールの使用は、約200〜500nmの範囲のサイズの小さなリポソームを形成するのに適しているか、又は有効である。その他の好適な水性溶媒は当業者に公知である。しかしながら、幾つかの溶媒を用いる場合には、アルコールを用いて製造した組成物よりも不透明な外観となり得る。
【0054】
本発明の低温法の幾つかの実施形態では、アルコールへの脂質の溶解を上昇した温度(室温よりも高温)下で行い、脂質の溶媒への溶解を促進することができる。しかしながら、脂質の可溶化のために加熱する場合、脂質溶液は、活性薬剤の水溶液で水和する前に、より低い温度(例えば室温)まで冷却される(この際、例えば、標準的な手段又は大規模処理工程用の熱交換器が用いられる)。この工程は、脂質と活性薬剤(溶液)の両方が加熱される上記のような「典型的な」リポソーム製造工程とは根本的に異なる。
【0055】
活性薬剤の溶液に関して、ある実施形態では、活性薬剤を含有する水溶液が室温で調製される。所望により、溶液の特性を向上させるための、又は活性薬剤の水への溶解を促進するためのその他の化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有していてもよい。水は、任意の適当な方法、例えば、特に限定されるわけではないが、逆浸透、脱イオン化、ろ過等によって精製することができる。可溶化の後、薬剤を含有する溶液をさらにろ過して混入物質を除去してもよい。ある適当なフィルターは、0.2μm膜(例えば、Pall Life Sciencesから市販されている0.2μm膜であるMini Capsule Sterile Filter)である。膜のサイズは溶液から除去されるべき混入物質のサイズに応じて調節することができる。適当なサイズのフィルターの選択は、当業者が適宜行うことができる。適当なフィルターのサイズは、特に限定されるわけではないが、例えば、0.5μm、0.4μm、0.45μm、0.3μm、0.2μm、0.15μm及び0.1μmである。
【0056】
次いで、本発明の低温法において、脂質溶液は、例えば、活性薬剤水溶液への注入(injecting又はpouring)により、活性薬剤水溶液に加えられ、必要に応じて攪拌される。攪拌は、例えば攪拌器による機械攪拌、手動混合又は攪拌等の任意の適当な方法によって行うことができる。脂質溶液を活性薬剤溶液に加えた後、脂質の水和が少なくとも約1/2時間又は1時間、頻回攪拌しながら行われる。その工程の終了時に、脂質組成物は好ましくは滑らかな液体となる。
【0057】
適当かつ容易な取り扱いが可能なリポソーム組成物を製造するために、ある実施形態では、リポソーム栄養補助剤又は組成物が一定の稠度(consistency)のゲルに製剤化される。ある実施形態では、追加の脂質が組成物に加えられ、リポソーム組成物の粘度をゲル様粘度まで増加させる。別の実施形態では、増粘剤及び/又は乳化剤が、組成物をゲルにするために、追加の脂質とともに、又は追加の脂質なしで加えられる。適当な増粘剤及び/又は乳化剤としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、TweenTM80(ポリソルベート80)、TweenTM20(ポリソルベート20)、TweenTM40(ポリソルベート40)、TweenTM60(ポリソルベート60)、レシチン、乳化ろう、セテアリルアルコール及びセテアレス20が挙げられる。さらなる適当な増粘剤については、ウエブサイトen.wikipedia.org/wiki/Category:Edible_thickening_agentsに記載されている。増粘剤及び/又は乳化剤は、ゲルを調製するために必要とされる脂質の量を減少させるために用いることができる。また、脂質の量は、増粘剤及び/又は乳化剤の不存在下で、ゲル様稠度を有するリポソーム組成物を製造するために、リポソームを形成するのに必要な量から30〜35%まで増加させることができる。ゲル組成物を調製するために過剰の脂質を用いると、活性薬剤の封入効率がより高くなる。追加の脂質と増粘剤及び/又は乳化剤との組み合わせは、ゲル組成物を調製するために用いることができる。また、過剰の脂質、増粘剤及び/又は乳化剤の添加には、経口用にさらに適したゲルを製造できるという利点がある。そのような組成物は、オレンジ色又は褐色(その他の方法で形成される組成物の色)というよりもむしろ蜂蜜のような色を有するかもしれない。また、本発明の方法で形成された組成物は、好ましくは、部分的に又は全体的に透明である。
【0058】
活性薬剤がアスコルビン酸ナトリウムである場合のリポソーム製剤の例を表1に示す。表1の処方は、例示のみのために提供されるものである。製剤はこれに限定されるものではなく、その他の成分を含んでいてもよいし、異なる範囲を有していてもよい。活性薬剤の割合(%)は活性薬剤の性質に基づいて変更してもよい。
【0059】
【表1】

【0060】
III.リポソーム組成物
ある態様では、薬剤、組成物又は化合物がリポソームに封入される。
活性薬剤、化合物又は組成物を封入して、多様なリポソーム組成物とすることができる。薬剤の形態(例えば、ビタミンCに関して、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、無機塩、エステル等)、投与方法等を考慮して、リポソーム組成物の構成及びその比率を選択することは、当業者に公知である。
【0061】
リポソーム組成物の形成に使用される脂質としては、例えば、2つの炭化水素鎖(典型的にはアシル鎖)と極性頭部基とを有するベシクル形成脂質が挙げられる。このような種類の脂質には、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、スフィンゴミエリン(SM)等のリン脂質が挙げられ、2つの炭化水素鎖は典型的には約14〜22個の炭素原子の鎖長を有し、様々な不飽和度を有する。好ましい実施形態では、脂質は、比較的不飽和であるリン脂質(炭化水素鎖中に1、2又は3個の二重結合を有する)。特に好ましい実施形態では、脂質はホスファチジルコリンである。ホスファチジルコリンは、頭部基としてコリンが組み込まれ、グリセロリン酸を2つの脂肪酸と結合させたリン脂質である。PCは、生体膜の主要成分であり、卵黄、大豆等から公知の方法で抽出することができる。ある実施形態では、脂質は、大豆由来のホスファチジルコリンである。別の実施形態では、脂質は、卵黄由来のホスファチジルコリンである。適当なホスファチジルコリン脂質としては、特に限定されるわけではないが、例えば、American Lecithin Company(Oxford, CT)から市販されているPhospholipon 50IP及びAlcolec PC 50が挙げられる。リポソーム組成物を調製する際、2種以上の脂質を使用してもよい。脂質の選択及び比率は、所望の流動性又は剛性を得るために、安定性を制御するために、及び/又は封入薬剤の放出速度を制御するために、変化させることができる。リポソーム組成物を調製する際に2種以上の脂質を使用する場合、安定なリポソームを形成させるために、比較的不飽和の脂質(例えばPC)の好適量が用いられるべきである。ある実施形態では、調製物に用いられる脂質のうち少なくとも45〜50モル%がPCである。また、リポソームは、ポリエチレングリコール(PEG)等の親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含んでいてもよい。好適な親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド及び親水性ペプチド配列が挙げられる。親水性ポリマーで誘導体化された脂質を調製する方法は公知である(例えば、米国特許第5,395,619号参照。当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0062】
リポソームは、ゼラチンカプセル、軟質ゲルカプセル等の公知のカプセルで投与してもよい。
【0063】
実施例4、5及び9に記載されるように、本発明のリポソーム組成物は高い安定性を有する。さらに示されているように、本発明のリポソーム組成物は、高温(室温よりも高い温度)で保存された場合にも高い安定性を有する。「安定性」という用語は、保存の間又は後に、封入薬剤の大部分が保持される調製物を意味する。非限定的な実施形態では、リポソームは、少なくとも約6ヶ月又は1年の保存の後に安定性を維持する。その他の非限定的な実施形態では、リポソームは、少なくとも約1〜12ヶ月の保存の後に安定性を維持する。その他の非限定的な実施形態では、少なくとも約1,2,3,4,5,6もしくは9ヶ月又はそれを超える保存の後に安定性を維持する。ある実施形態では、少なくとも約65〜100%又はそれを超える封入薬剤が、保存の後にリポソーム内に保持される。好ましくは、少なくとも約65%,70%,80%,90%,95%,97%,98%もしくは99%又はそれを超える、あるいは100%の封入薬剤が、保存の後にリポソーム内に保持される。リポソームを高温(室温を超える温度、例えば25〜60℃、好ましくは約50℃)で保存する場合、好ましくは少なくとも約65%の封入薬剤が保存の後にリポソーム内に保持される。
【0064】
ある実施形態では、本発明のリポソームは、200〜600nm、好ましくは約200〜500nm又は約300〜500nmの粒径を有する。実施例3に示されるように、本発明の低温法で形成されたリポソームは、市販の経口用リポソームよりも実質的に小さな粒径を有する。リポソームの粒径が小さいほど、一般的に、経口投与に適する。したがって、本発明の方法で形成されたリポソームは、市販の経口用リポソームよりも経口投与に適する。ある実施形態では、本発明の方法で形成されたリポソームは、その他の方法で形成されたリポソーム(例えば市販のリポソーム等)よりも、25〜75%小さい平均粒度分布を有する。非限定的な実施形態では、本発明のリポソームは、その他の方法で形成されたリポソーム(例えば市販のリポソーム等)よりも、25%,35%,40%,45%,60%,65%又は75%小さい平均粒度分布を有する。
【0065】
IV.封入薬剤
本発明の方法及びリポソーム組成物での使用が意図される薬剤、化合物及び組成物は多種多様であるが、例えば、サプリメント等の栄養補助剤及び医薬品が挙げられる。
【0066】
A.栄養補助剤
1.アスコルビン酸及びその塩
アスコルビン酸は、抗酸化特性を有する水溶性糖酸である。その抗酸化特性ゆえ、アスコルビン酸ならびにそのナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩は、一般に、食品添加物として用いられる。同様に、長鎖脂肪酸を有するアスコルビン酸の脂溶性エステル(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル等)は、一般に、脂質の酸化を防止するために用いられる。アスコルビン酸のL−エナンチオマー(ビタミンC又はL−アスコルビン酸として、その塩であるL−アスコルビン酸塩とともに知られている)は、ヒト及びその他の数種類の哺乳動物では合成されないため、それらの必須栄養素である。ビタミンCの欠乏によって、ヒトで壊血病が生じる。また、ビタミンCは、コラーゲン、L−カルニチン及びある種の神経伝達物質(例えばノルエピネフリン)の合成でも必要である。さらに、ビタミンCは、タンパク質代謝に関連するとともに、非常に有効な抗酸化物質である。
【0067】
ビタミンCは、食事で十分なビタミンCを摂取できない大勢の人たちに、栄養補助剤として利用されている。国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)の1999年から2000年のデータによると、約35%の成人が総合ビタミン剤を摂取しており、総合ビタミン剤には、通常、ビタミンCが含まれる。また、同データによると、12%の成人が別のビタミンC栄養剤を摂取している(Radimer等, Am. J. Epidemiol., (2004), 160:339-49)。ビタミンCは、最も広く摂取されている栄養補助剤である。ビタミンCは、錠剤の形態で経口用として用いられるとともに、静脈内投与もされている。経口用の剤形としては、カプレット、錠剤、カプセル、ドリンクミックスパケット(drink mix packet)、マルチビタミン製剤、抗酸化物質の複合剤及び結晶性粉末が挙げられる。しかしながら、経口投与によって大量投与すると腸過敏症及び下痢が生じるため、一般的には、約2〜3グラム/日に制限される。腸の許容レベル(bowel tolerance level)を超える量のビタミンCを摂取した場合、下痢を引き起こす可能性があることが知られている(Cathcart, Medical Hypothesis (1981), 7:1359-1376)。ビタミンCの腸の許容範囲は個人ごとに異なり、1日あたり5mgから1日あたり数千mgまでの範囲をとり得る。
【0068】
ビタミンCの使用、例えば高用量又はメガドーズでの使用は、従来、様々な疾患及び疾病、例えば心臓血管疾患、癌、白内障、痛風、重金属毒性(例えば鉛、ヒ素等)等の処置として推奨されてきた。高用量又はメガドーズのビタミンCは、経口投与による副作用を避けるために、及び血漿中濃度を増加させて経口投与による通常の血漿中濃度よりも高くするために、通常、静脈内投与される。ビタミンCの腸内吸収は、一般的には、少なくとも1種の特定の用量依存性の能動輸送体によって制御され、これによってビタミンCの吸収量が制限されると考えられている(Jacob等, Nutr. Clin. Care, (2002), 5:66-74)。4時間ごとにアスコルビン酸3gという用量が経口で摂取された場合、ピーク血漿濃度は220μモル/Lにしか達しないことが薬動力学モデルで予測された(Padayatty等, Ann. Intern. Med. (2004) 140:533-7)。
【0069】
経口投与における吸収の増大及び副作用の低減のために、ビタミンCは経口投与用リポソームに封入されてきた。Lipoflowによって、脂質代謝疾患及びアテローム性動脈硬化症に対するリポソームビタミンCが提供されている。大さじ(テーブルスプーン)1杯の栄養補助剤は、大豆レシチン由来の必須リン脂質に封入されたビタミンCを1000mg含有する。LivOn Laboratoriesによって提供される栄養補助剤は、必須リン脂質1000mgに封入されたビタミンCを1000mg含むリポソームを含有する。従来のビタミンCのリポソーム製剤は、直径の大きな(約800〜1000nm)リポソームを含み、このため経口投与に適さない。リポソームのサイズのせいで、従来のリポソーム製剤は、不透明である。したがって、より経口投与に好適であって、安定な経口用リポソーム製剤が求められている。
【0070】
ある態様では、L−アスコルビン酸、L-アスコルビン酸塩、又はアスコルビン酸の無機塩もしくはエステルを含む栄養補助剤又は組成物が、リポソーム組成物として提供される。ある実施形態では、栄養補助剤又は組成物は、L−アスコルビン酸のアルカリ金属塩を含む。好適な無機塩としては、特に限定されるわけではないが、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸亜鉛、アスコルビン酸モリブデン、アスコルビン酸クロム及びアスコルビン酸マンガンが挙げられる。無機塩の緩衝化作用によって、アスコルビン酸の無機塩はアスコルビン酸よりも摂取時に刺激が少ない。アスコルビン酸の無機塩を組み合わせて使用してもよい。このような使用は、無機塩の推奨摂取量の範囲内で又はその付近で、そのカチオンの推奨摂取量を維持できるように、高用量又はメガドーズを投与する場合に重要となるかもしれない。別の実施形態では、栄養補助剤又は組成物は、脂溶性剤形とするために、飽和脂肪酸にエステル化されたアスコルビン酸を含む。好適な脂肪酸の例は、パルミチン酸アスコルビルを形成するパルミチン酸である。L−アスコルビン酸又はその無機塩もしくはエステルは、好ましくはリポソーム中に封入されている。
【0071】
a.高用量
別の態様では、L−アスコルビン酸又はその無機塩もしくはエステルを含む栄養補助剤又は組成物を含有する、高用量又はメガドーズのリポソーム組成物が提供される。ビタミンCの食事摂取基準(the Institute of Medicine's Food and Nutrition Boardによる基準)は、未成年及び成人1人あたり45〜120mg/日の範囲である。喫煙者には、それに追加して35mg/日を摂取することが推奨されている。1日あたりの推奨摂取量(RDI)(FDAによって推奨される2009年の基準)は、1日あたり60mgである(www fda.gov)。一般的に、「高用量」及び「メガドーズ」とは、1日あたり約100〜10000mgの用量を意味する。また、「高用量」及び「メガドーズ」は、「腸の許容用量(bowel tolerance dosage)」でもあってもよく、それは、対象が下痢を引き起こす用量よりも少ない用量である。(「腸の許容用量」を決定するための例示的な方法については、Cathcart, Medical Hypotheses, 7:1359-1376, 1981を参照のこと。当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。)。好ましい実施形態では、「メガドーズ」とは、アスコルビン酸又はその塩の用量として、2000mg/日又はそれを越える用量を意味する。別の実施形態では、ビタミンCを含むリポソーム組成物の高用量は、全米科学アカデミーによる推奨摂取量(2000年における推奨摂取量は90mg/日)、食品栄養委員会(Food and Nutrition Board)による推奨摂取量(75〜120mg/日)、あるいはUSDA又はその他の政府規制機関による推奨摂取量を上回るビタミンCの用量を含む。ある実施形態では、約100〜10000mgの用量が1日あたりに投与される。別の実施形態では、1日あたりの用量は、約200〜2000mg/日,200〜5000mg/日,200〜10000mg/日,400〜10000mg/日,400〜8000mg/日,400〜6000mg/日,400〜5000mg/日,400〜4000mg/日,400〜3000mg/日,400〜2000mg/日,500〜10000mg/日,500〜8000mg/日,500〜6000mg/日,500〜5000mg/日,500〜4000mg/日,500〜3000mg/日,500〜2000mg/日,500〜1000mg/日,1000〜10000mg/日,1000〜8000mg/日,1000〜6000mg/日,1000〜5000mg/日,1000〜4000mg/日,1000〜2000mg/日,2000〜10000mg/日,2000〜6000mg/日,2000〜5000mg/日,2000〜4000mg/日,4000〜10000mg/日,4000〜8000mg/日,4000〜6000mg/日,4000〜5000mg/日又は5000〜10000mg/日である。ヒトにおける用量はLD50よりも低くすべきである。経口でのLD50は、ラット群において体重1kgあたり11900mgであり(アスコルビン酸に関する製品安全データシート)、マウスの場合にはそれよりも低い(3367mg/kg)。用量は1日あたり1回又は数回投与され得る。1000mgを超える用量が1日あたり2回以上投与される場合、投与間隔は少なくとも30分間であることが好ましい。
【0072】
幾つかの研究によって、経口でのビタミンCの血清濃度は約200〜240mgの用量で飽和に達することが示唆されているが、これらの研究は、一般的に、12又は24時間後の血漿濃度の測定結果を基準としている。ビタミンCの半減期は30分であるので、実際の血清飽和濃度はもっと高いはずであり、高用量又はメガドーズのビタミンCの投与が実現可能であるはずである。米国農務省(USDA)の人間栄養研究センター(Human Nutrition Research Center)が1991年に実施した研究によって、2000mg/日のビタミンCを摂取する高齢者では、148mg/日のビタミンCを摂取する高齢者と比較して、眼のビタミンC濃度がより高いことが報告されており、それは、より高用量のビタミンCが組織に吸収され、分布することを示している(Taylor等, Current Eye Research, 1991, 10(8):751-759)。30〜180mg/日の用量において、約70〜90%の経口摂取ビタミンCが吸収される(ビタミンCに関する報告書(Fact Sheet at ods.od.nih.gov))。しかしながら、用量が増加するほど、吸収は減少する。高濃度のビタミンCは、白血球、眼、副腎、下垂体及び脳で観察される最も高濃度を有する細胞及び組織で維持される(ビタミンCに関する報告書(Fact Sheet at ods.od.nih.gov))。
【0073】
ビタミンCは水溶性であるので(33g/100mL)、体内に蓄積されず、高用量又はメガドーズであってもビタミンCの毒性は極めて稀である。ビタミンCを大量に摂取すると、消化不良を引き起こし得る。特に空腹時に大量に摂取すると、下痢を引き起こし得る(news-medical.net/Vitamin-C-Side-Effects.aspx)。1936年の試験では、アスコルビン酸を6g以下の用量で1400日以上にわたり、29人の幼児、未就学年齢及び就学年齢の93人の子供、並びに20人の成人に与えた。高用量では、中毒症状が5人の成人及び4人の幼児で観察された。成人における兆候及び症状は悪心、嘔吐、下痢、顔面紅潮、頭痛、倦怠感及び睡眠障害であった。幼児における主要な中毒反応は、皮膚発疹であった(Widenbauer, Klin. Wschr, 33:1157, 1936)。別の研究では、3年までの期間、毎日、ビタミンCを10000mgまでの用量で摂取しても安全であることが報告されている(Bendich等, J. Am. College Nutr., 1995, 14(2):124-136)。
【0074】
b.リポソーム組成物
栄養補助剤又は組成物を様々なリポソーム組成物に封入することができる。ビタミンCの形態(アスコルビン酸、アスコルベート、無機塩、エステル等)、投与方法等の検討事項に応じて、リポソーム組成物の構成及び比率を選択することは、当業者の技術常識の範囲内にある。ある実施形態では、リポソーム封入薬剤はL−アスコルビン酸又はその無機塩もしくはエステルである。
【0075】
本発明のリポソーム組成物は、安定性が高いことが証明されている。さらに、高温で保存した場合にも本発明のリポソーム組成物の安定性が高いことが証明されている。このことは、熱に対する感受性が高く、熱によってその分子の酸化が加速されるビタミンCにとって特に有益である。「安定性」とは、ビタミンCの大部分を保持する製剤を意味する。好ましくは、少なくとも約65%,70%,80%,90%,95%,97%,98%もしくは99%又はそれを超える、あるいは100%のビタミンCがリポソーム中に保持される。リポソームが高温(例えば約50℃)で保存される場合、好ましくは、少なくとも約65%のビタミンCがリポソーム中に保持される。実施例のリポソーム組成物は、アスコルビン酸ナトリウム(18.4重量%)をAlcolec PC 50脂質を含むリポソーム中に封入することにより調製された(実施例1及び4参照)。実施例4に記載されるように、リポソーム組成物は、N2下で密閉された2mLのバイアル中、室温(25℃)又は高温(50℃)で保存された。4,5,7(2つのバイアルを測定した),8及び38日目に、アスコルビン酸の重量%をHPLCで測定した。図3に示すように、室温で保存されたバイアルにおけるアスコルビン酸(重量%)は、保存期間全体にわたり安定性が高かった。38日目では、4日目に存在していたアスコルビン酸の99.8%が、依然としてサンプル中に存在していた。このことは、25℃で38日間保存した後、ビタミンCがほとんど又は全く分解されていないことを示す。好ましくは、アスコルビン酸の大部分が少なくとも約1週間,2週間,3週間,1ヶ月間,2ヶ月間,3ヶ月間,6ヶ月間又は1年間、リポソーム中に保持される。
【0076】
高温下でさえ、リポソーム組成物中のビタミンC含有量は高度に安定である。図3に示すように、50℃で20日間の保存後、ビタミンCの出発量の約96%が安定に保持されていた。42日間の保存後であっても、アスコルビン酸の80.8重量%が依然としてリポソーム組成物中に存在していた。さらに、図6に示すように、封入アスコルビン酸ナトリウムの重量%は、室温(25℃)及び高温(40℃)の保存後(120日間の保存後でさえも)、安定性を維持していた。
【0077】
この安定性は、現在利用されているビタミンC組成物に少なくとも匹敵する。実施例1に記載されるように非GMO脂質を用いて調製された本発明のリポソーム組成物の保存安定性は、実施例5に記載されるように、市販のビタミンCリポソーム製剤(LivOn Laboratoriesの市販品であるLypo-SphericTM ビタミンCリポソーム)に匹敵した。本発明のリポソーム組成物及びLypo-SphericTM ビタミンCリポソームは、N2下で密閉された2mLのバイアル中、高温(50℃)で保存された。比較として、Lypo-SphericTM ビタミンCリポソームについて、オリジナルパッケージ中で保存した場合のリポソーム安定性についてもモニタリングした。アスコルビン酸の重量%を0,4,13及び19日目に測定した。図4に示されるように、4日後、出発量の約92%のビタミンCが安定性を維持しており、13日後、出発量の約97%のビタミンCが安定性を維持しており、19日後、約89%のリポソームが安定性を維持していた。これは、19日間にわたってアスコルビン酸の約99〜90%がリポソーム中に保持されるLypo-SphericTM ビタミンCリポソームと匹敵する。
【0078】
図4に示されるように、Lypo-SphericTM ビタミンCリポソームの安定性は、オリジナルパッケージ中で保存した場合(N2下で密閉)に、より大きく、19日後にアスコルビン酸の99.5重量%が保持される。本発明のリポソーム組成物の安定性はLypo-SphericTM ビタミンCリポソームに匹敵するので、本発明のリポソームを同様にN2密閉フラッシュパッケージ中で保存すれば、同様の安定性が得られるであろう。
【0079】
図5は、様々なロットの本発明のリポソーム及びLypo-SphericTM ビタミンCリポソームについて、90日間にわたるリポソームの安定性を比較した図である。図5に示すように、出発量の約65%のアスコルビン酸が、50℃で3ヶ月の保存後に活性を維持していた。これは、Lypo-SphericTM ビタミンCリポソームと比較して、非常に高い安定性である。図5に示すように、 Lypo-SphericTM ビタミンCリポソーム中のアスコルベートは、本発明のリポソームよりも速く安定性を失った。
【0080】
c.使用方法
別の態様では、本発明の方法で調製したリポソーム組成物の使用方法が意図される。もちろん、使用方法又は処置方法は、封入された化合物に依存する。以下に、使用方法の幾つかの例を示すが、それが単なる例示であることが当業者に理解されるであろう。
【0081】
ある態様では、リポソーム封入ビタミンCの投与により、壊血病、心臓血管疾患、脳血管疾患、癌、加齢性黄斑変性症、白内障、痛風、重金属毒性(例えば鉛、ヒ素、カドミウム、銅、水銀等)又は糖尿病を治療又は予防する方法が提供される。ある実施形態では、その用量は、高用量又はメガドーズのリポソーム封入ビタミンCである。ビタミンCは、抗酸化物質であるとともに、少なくとも8種類の酵素反応の補因子である。また、ビタミンCは、血管、靱帯及び骨の重要な構成成分であるコラーゲン合成で必要とされる。また、ビタミンCは、神経伝達物質であるノルエピネフリンの合成において重要な役割を果たす。さらに、ビタミンCは、血中コレステロール濃度に影響を与える、胆汁酸へのコレステロール代謝に関連する(Simon等, Arch. Intern. Med., 2000, 160(7):931-936)。何人かの個人及び幾つかの機関によって、様々な疾病及び疾患を処置するために、ビタミンCの大量投与が推奨されている(Linus Pauling Institute at lpi.oregonstate.edu/infocenter/vitamins/vitaminC/index.html)。ビタミンCが、壊血病の治療及び予防に加え、心臓血管疾患、脳血管疾患、癌、加齢性黄斑変性症、白内障、痛風、重金属毒性(例えば鉛、銅(Mahajan等, Asian J. of Microbiology, Biotech. & Env. Sci., 2001, 3(1-2):95-100)、水銀(Mahajan等)、カドミウム(Borane等, J. Aquatic Biology, 2006, 21(2):244-248)、ヒ素(Karasawas等, Blood, 2005, 105(10):4004-4012)等)及び糖尿病の治療又は予防に有効であることが、調査によって示されている。
【0082】
心臓血管疾患
心臓血管疾患は、心臓又は血管に関連する一群の疾患である。心臓血管疾患としては、特に限定されるわけではないが、例えば、高血圧、冠動脈性心疾患(例えば心筋梗塞、狭心症等)、脳卒中及び心不全が挙げられる。冠動脈性心疾患は、コレステロール等の脂肪物質の蓄積による冠状動脈の狭窄であるアテローム性動脈硬化によって引き起こされる。冠動脈性心疾患は米国における主要な死因の一つである(American heart.org)。
【0083】
ビタミンCが、単球の内皮細胞への接着を低減させ、内皮細胞依存的な酸化窒素産生及び血管拡張を促進させ、血管平滑筋細胞のアポトーシスを低減させることが示されている(Honarbakhsh等, Br. J. Nutr., 2008, 1-19)。ランダム化二重盲検プラセボ対照試験によって、ビタミンCでの処理の結果、冠動脈性心疾患に罹患する被験者、あるいは狭心症、鬱血性心不全、高コレステロール又は高血圧に罹患する被験者における血管拡張が促進したことが示されている(Gokce, Circulation, 1999, 99(25):3234-3240; Versari等, Br. J. Pharmacol., 2009, 157(4):527-536; 及び Frikke-Schmidt等, Basic Clin. Pharmacol. Toxicol., 2009, 104(6):419-433)。
【0084】
幾つかの研究によって、心臓血管疾患に対するビタミンC補給の効果が示されている。脳卒中既往歴のない40〜79歳の男女20649人の前向き研究において、血漿ビタミンC濃度が、脳卒中との関連でモニタリングされた。血漿ビタミンCのベースライン濃度が最上位の四分位数にある被験者は、最下位の四分位数にある被験者よりも、脳卒中のリスクが42%低かった(Myint等, Am. J. Cling. Nutr., 2008, 87(1):64-69)。Linxian試験では、5〜6年間、毎日、ビタミンC(120mg)及びモリブデンを補給したところ、脳血管疾患による死亡リスクが8%減少したことが、補給中断後10年間の追跡調査で示された(Qiao等, J. Natl. Cancer Inst., 2009, 101(7):507-518)。9つの研究の統合分析によって、≧700mg/日のビタミンCを摂取した人々は、冠動脈性心疾患のリスクが25%低かったことが示された(Knekt等, Am. J. Clin. Nutr., 2004, 80(6):1508-1520)。
【0085】

疫学的証拠によって、果物及び野菜の摂取量が大きいほど、大部分のタイプの癌のリスクが低くなるという関連性が示唆されており、それは、おそらく部分的には、それらのビタミンC含有量が大きいことに起因する(Li等, J. Nutr., 2007,137:2171-84)。多数の症例対照研究によって、食事によるビタミンC摂取と、肺癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、口腔癌、喉頭癌、咽頭癌及び食道癌との間の逆相関が示されている(Jacob等, Nutr. Clin. Care, 2002, 5:66-74)。また、血漿ビタミンC濃度は、対照よりも癌患者の方が低い(Carr等, Am. J. Clin. Nutr., 1999, 69:1086-107)。
【0086】
ビタミンCの静脈内投与によって、血漿濃度が26000μモル/Lに達することが示されている(Padayatty等, CMAJ 2006, 174:937-942)。この濃度は、in vitroで、腫瘍細胞に対する選択的な細胞傷害性を示す(Li等, J Nutr 2007, 137:2171-84; 及びShekelle等, Evidence Report/Technology Assessment No. 83 AHRQ Publication No. 03-E043. Rockville, MD: Agency for Healthcare Research and Quality, 2003)。マウスでの研究において、薬理学的量のビタミンCの静脈内投与が、それ以外では治療が困難な腫瘍に対する治療効果が期待されることが示唆されている(Chen等, Proc Natl Acad Sci USA 2008, 105:11105-11109)。高濃度のビタミンCは、酸化促進剤として機能し、癌細胞に対して選択的な細胞傷害性を示す過酸化水素を発生させ得る(Chen等, 2009; Chen等, Proc Natl Acad Sci U S A, 2005, 102:13604-13609; 及び Chen等, Proc Natl Acad Sci U S A, 2007,104:8749-8754)。また、高用量のビタミンCを静脈内投与した後に、進行癌の患者の生存期間が顕著に延長したという、幾つかの症例報告がある(Levine等, Free Radic, Biol. Med., 2009, 47:27-29)。
【0087】
糖尿病
糖尿病は、身体におけるインスリン産生能力及び/又は利用能力の異常によって生じる高血糖レベルで特徴付けられる一群の疾患である。米国のみで、23.6百万人もの人たちが、1型糖尿病、2型糖尿病及び妊娠性糖尿病のうちの1種の糖尿病に罹患している(diabetes.org)。
【0088】
1型糖尿病は、通常、子供及び若年成人に見られ、インスリン産生不能によって特徴づけられる。1型糖尿病の治療は、通常、インスリン療法を必要とする。1993年に行われた1型糖尿病患者の研究において、ビタミンCの静脈内投与により、インスリンに関する二峰性(bimodal)の血漿濃度曲線が得られることが示されている(Kodama等, In Vivo, 1993, 7(6A):535-542)。これらの結果は、ビタミンCが、インスリンのメカニズムを刺激することにより糖尿病の治療に有効であることを示唆する。さらに、ビタミンCは、グルコース調節に異常がある糖尿病患者で生じる血管損傷を予防又は低減するために用いることができる。
【0089】
2型糖尿病は、最も一般的な糖尿病の形態である。2型糖尿病は、十分なインスリンを産生する身体能力の低下(不能)又はインスリンを効率的に利用する細胞能力の低下(不能)によって特徴付けられる。2型糖尿病の患者に関する研究(Yazd Diabetes Research Center)において、1日あたり1000mgのビタミンC補給剤を摂取した患者では、1日あたり500mgのビタミンC補給剤を摂取した患者と比較して、42日後には、空腹時血糖、トリグリセリド、低比重リポタンパク、糖化ヘモグロビン及び血清インスリン濃度が有意に減少したことが示されている(Afkhami-Ardekani等, Indian J. Med. Res., 2007, 126(5):471-474)。空腹時血糖の平均濃度は、169.33mg/dlから144.80mg/dlまで減少した。平均HbA1Cは、8.82%から7.66%まで減少した。平均LDLは、130.95mg/dlから125.91mg/dlまで減少した。インスリン濃度は、16.91μユニット/mLから8.77μユニット/mLまで減少した。これらの結果は、少なくとも約1000mgのビタミンC補給剤の毎日の摂取が、2型糖尿病の患者における血糖及び血中脂質を減少させるのに有効であることを示す。
【0090】
加齢性黄斑変性症及び白内障
加齢性黄斑変性症(AMD)及び白内障は、高齢者における失明の主要な2つの原因である。AMDは、黄斑に影響を与え、その結果、中心視野(sharp, central vision)が徐々に失われる。滲出型(wet type)のAMDは、網膜の後ろの異常血管が黄斑下で増殖し、黄斑にダメージを与えることにより発症する。萎縮型(dry type)のAMDは、黄斑内の感光性細胞がゆっくりと破壊され、中央視野のぼやけを引き起こされることにより発症する。白内障は、眼の水晶体又はその膜において進行する混濁である。重症の白内障に対する現在の治療は、レンズを取り替える外科手術である。
【0091】
酸化的ストレスはAMD及び白内障の両方の病因となり得るので、ビタミンC等の抗酸化物質がこれらの疾患を治療又は予防するために用いることができる。研究によって、ビタミンCがAMDの進行を遅らせ得ることが示されている(Evans, Cochrane Database Syst. Rev., 2006, (2):CD000254)。さらに、前向き研究によって、食事によるビタミンC摂取が、中高年の日本人女性において、加齢に関連した白内障のリスクを低減したことが示されている(Yoshida等, Eur. J. Nutr., 2007, 46:118-124; 及び Rautiainen等, Am. J. Clin. Nutr., 2010, 19(2):487-493)。
【0092】
ビタミンCは、よく知られた抗酸化物質であるので、ある態様において、リポソーム封入ビタミンCによって治療又は予防される疾患又は症状は、抗酸化物質によって治療又は予防が可能である任意の疾患又は症状が意図される。
【0093】
2.グルタチオン
グルタチオン(GSH)は、アミノ酸であるシステイン、グルタミン酸及びグリシンから合成されるトリペプチドである。GSHは、システインのアミン基と、グルタミン酸の側鎖のカルボキシル基との間のペプチド結合を含む。GSHは、細菌及び哺乳動物細胞に1〜10ミリモル濃度で存在し、還元状態において細胞タンパク質のシステイン残基を維持するスルフヒドリル緩衝剤として機能する(米国特許第7,785,900号)。GSHは、2種類の基本的な形態で存在する。抗酸化物質である「還元型」グルタチオントリペプチドは、一般的に、「グルタチオン」又は「GSH」と呼ばれる形態であり、酸化型形態は、硫黄−硫黄結合を有する化合物であり、グルタチオンジスルフィド(GSSG)として知られている。GSHは、細胞によって産生される主要な内因性抗酸化物質であり、フリーラジカル及び活性酸素化合物の中和に直接的に関与するとともに、ビタミンC、E等の外因性抗酸化物質をその還元型(活性)形態に維持する。GSHは、抗酸化物質、抗毒素及び赤血球保護物質として機能するので、免疫系において非常に重要である(米国特許RE40849)。GSHは、フリーラジカルを中和し、それによるダメージを最小限にするので、細胞恒常性において重要である。哺乳動物細胞における還元型GSH濃度は、様々な病態生理学的状態、例えば、癌、肝機能異常、悪性腫瘍、AIDS、外傷(trauma)、熱傷、敗血症、肺疾患、パーキンソン病、糖尿病、アルツハイマー病、統合失調症、嚢胞性線維症、心臓麻痺及び心臓発作、痙攣(癲癇)、鎌状赤血球貧血、躁鬱病(bipolarism)、慢性疲労症候群、自閉症又は関連免疫疾患及び生理学的症状と関連する(例えば、Kidd, Alternative Medicine Review, 1997, 2(3): 156-176)。
【0094】
経口されたGSHは消化管で十分に吸収されないため、GSHの直接的な補給は困難である(Witschi等 (1992), European Journal of Clinical Pharmacology, 43(6):667-669)。米国特許第7,446,096号には、リン脂質に共有結合したPEGにグルタチオンを共有結合させて、リポソーム担体に挿入するというデリバリーシステムが記載されている。さらに、肺に投与された場合のリポソーム封入GSHの分布に関する研究によって、GSHは肺にとどまったことが示されている(Romet等, Int. J. Pharma., 63(3):227-235)。LipoceuticalTM グルタチオンは経口用液体であり、現在市販されているリポソーム封入グルタチオンである。小さじ一杯(5mL)には422.7mgのグルタチオンが含まれる(成分リスト)。
【0095】
GSHに関する推奨食事許容量(RDA)は存在しないが、その補給について有害な副作用は知られていない(website at vitaminstuff.com/glutathione.html)。ある実施形態では、リポソーム封入GSHの有効量が投与される。治療又は予防に要する正確な用量は、試験用量の投与及び臨床反応の観察に基づいて決定することができる。一般的に、投与されるべき有効量は、約0.1mg/kg体重から約50mg/kg体重までの範囲内にある。別の実施形態では、1日あたり約0.5mg/kg体重から約25mg/kg体重が投与される。さらに別の実施形態では、1日あたり約50〜1000,50〜2000,50〜3000,50〜4000,50〜5000mg又は50〜10000mgが投与される。好ましくは、1日あたり約50〜500mgが投与される。
【0096】
a.リポソーム封入グルタチオンの使用方法

ある態様では、リポソーム封入GSHが、癌の症状の予防、治療又は改善のために投与される。多くの癌が、細胞DNAに対するダメージによって進行し、その結果、ダメージを受けた細胞の無制御かつ自律的な成長及び増殖が生じる。ある理論によれば、細胞DNAに対するダメージは、フリーラジカルへの曝露によってたびたび引き起こされる。抗酸化物質であるGSHは、フリーラジカルと反応し、フリーラジカルとDNAとの接触を防止することにより、癌を引き起こすダメージを防止する。
【0097】
最近の研究の予備結果において、グルタチオンが実験室で成長させた単離細胞における活性酸素種レベルを変化させ、癌の進行を低減させ得ることが示されている(Park, Oncology Reports, 2009, 385-391)。1993年に行われた動物実験において、GSHが口腔発癌の進行を抑制したことが示されている。DMBAへの曝露後にGSHが経口で補給された動物は、未処理対照群よりも、腫瘍の数及び大きさが有意に減少したことが示されている(Yance等, Herbal Medicine, Healing and Cancer, Keats Publishing, 1999)。別の研究において、化学療法(シスプラチン)で処置するとともに、グルタチオンを静脈内投与した卵巣癌女性は、化学療法による副作用をほとんど示さず、処置サイクル数の増加に忍容性を示し、全生存率が向上したことが示されている(Yance等)。
【0098】
GSHの投与を、癌の処置のための慣用の放射線療法及び化学療法とともに行うと、予後が改善することが示されている。結腸直腸癌において、GSHの投与を、オキサリプラチン(oxaliplatin)/5−フルオロウラシル/ロイコボリン療法とともに行うと、当該療法の単独投与と比較して神経毒性が減少したことが示されている(Milla等, 2009, Anticancer Drugs, 20(5):396-402)。ある実施形態では、リポソーム封入GSHが、化学療法剤と併用投与(化学療法剤の投与前、投与後、又は化学療法剤の投与と同時)され、化学療法剤の有毒作用が低減、防止又は改善される。GSHと併用投与し得る化学療法剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン)、タキソール(パクリタキセル)及びその誘導体(例えば、タキソテール)、アントラサイクリン、及び白金製剤(例えばシスプラチン)(米国特許第5,618,823号,当該文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0099】
AIDS
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)レトロウイルスへの曝露によって引き起こされる免疫系のダメージの結果として生じる様々な感染症及び症状である。症状が進行すると、罹患患者における日和見感染症及び腫瘍増殖のリスクが増大する。さらに、HIV感染患者は、非感染者よりも、酸化的ストレス、内皮機能不全及び心臓血管疾患の発症率が高い(Kline等, Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol., 2008, 294(6):H2792-H2804)。HIV−1ラットモデルを用いた研究において、GSH前駆物質の投与によってグルタチオンレベルが回復すると、スーパーオキシド、NO及び血管弛緩に対するHIV−1タンパク質媒介作用が逆転することが示されている(Kline等)。また、GSHの投与は、免疫系を亢進し、日和見感染を予防することにより、AIDSを治療することができる。HIV感染患者から単離された血球をGSH前駆物質で処理すると、M.tuberculosisの細胞内感染のコントロールが改善したことが示されている(Venketaraman等, 2006, AIDS Res. Ther., 3:5)。また、GSHは、ウイルス複製後期における抗ウイルス効果を有することが示されている(Garaci等, 1997, J. Leukoc. Biol., 62(1):54-59)。HIV患者の低GSHレベルに基づき、それ以外では区別できないHIV感染患者の低生存率が予測されたことが示されている(Garaci等)。ある実施形態では、リポソーム封入GSHがHIV感染又はAIDSの治療又は予防のために投与される。別の実施形態では、リポソーム封入GSHが日和見感染ならびにHIV及びAIDS関連疾患の治療又は予防のために投与される。
【0100】
熱傷
熱傷は皮膚の損傷であり、例えば、熱、電気、化学品、光、放射線、摩擦又は低温への曝露によって引き起こされる。熱傷は、ショック、感染症及び呼吸困難を伴う場合もある。熱傷は、一般的に、第一度、第二度、第三度、第四度、第五度又は第六度に分類される。第一度熱傷は、通常、表皮の浅い損傷に限定される。第二度熱傷は、真皮表層(真皮乳頭層)の損傷を含み、真皮深層(真皮網状層)の損傷も含む場合がある。また、第二度熱傷は、神経損傷も含む場合がある。第三度熱傷は、皮下組織に対する表皮損傷又は障害を含む。第四度熱傷は、真皮破壊及び筋肉損傷を含む。第五度熱傷は、表皮、真皮及び皮下組織の破壊を含む。第六度熱傷は、表皮、真皮、皮下組織及び筋肉の破壊を含む。これらの熱傷は、骨の炭化(charring)も含む場合がある。最新の分類では、熱傷を厚さ(表層(superficial),中間層(partial))及び深さ(表層(superficial),中間層(partial))で分類する。免疫系に対する効能に加え、GSHの使用は、熱傷治療の目標の一つである血流の停滞(zone of stasis)の治療に有効である(Zor等, 2005, Burns, 31(8):972-976.)。ある実施形態では、リポソーム封入GSHが熱傷の処置のために投与される。
【0101】
3.アルファリポ酸
アルファリポ酸(ALA)は、体内に存在する抗酸化物質である。水溶性又は脂溶性のいずれかでしかない他の抗酸化物質と異なり、ALAは水溶性及び脂溶性を兼ね備える。また、ALAが他の抗酸化物質を再生させる能力を有することを示唆する証拠が示されている(Jones等, Free Radic Biol Med., 2002, 33(1):83-93.)。
【0102】
ALAのC6炭素原子はキラルであるので、ALA分子はR及びSエナンチオマーとして存在する。R−(+)−リポ酸(R−LA)は、エネルギー産生ならびにアルファ−ケト酸及びアミノ酸の異化(分解)に関連した重要な反応を触媒する幾つかのミトコンドリア酵素複合体の必須の補因子である(Bustamante等, Free Radic Biol Med. 1998, 24(6):1023-1039)。R/Sラセミ混合物(R/S−LA)及びR−LAは、米国において、カプセル剤、錠剤及び水性液剤の剤形のOTC(over-the-counter)栄養補助剤として広く利用されている。さらに、リポソームALA皮膚クリームも利用されている(Reviva Labs)。ALAは様々な食物中に存在するが、食物からのALAの摂取によって、ヒト血漿又は細胞における遊離ALAが検出可能に増加することは未だ示されていない(Hermann等, Eur J Pharm Sci. 1996, 4:167-174)。これとは対照的に、高用量(50mg又はそれを超える)の遊離ALAの経口摂取によって、血漿及び細胞における遊離ALAが、有意ではあるが一時的に増加することが示されている(lpi.oregonstate.edu/infocenter/othernuts/la/)。ヒトでの薬物動態学的研究において、R−LAの経口投与量の約30〜40%が吸収されることが示されている(Hermann等)。アルファリポ酸は、30〜100mg用量の錠剤として購入可能である。
【0103】
ALAに関するRDAは存在しないが、一定量(labeled dose)の補給による有害な副作用は知られていない。高用量では、胃のむかつき、悪心、下痢及び鼓腸が生じる場合がある(nutritional-supplements-health-guide.com/alpha-lipoic-acid-side-effects.html)。ある実施形態では、有効量のリポソーム封入ALAが投与される。ある実施形態では、リポソーム組成物は、ALAのR−エナンチオマーを含む。別の実施形態では、リポソーム組成物は、ALAのラセミ混合物を含む。治療又は予防に要する正確な用量は、試験用量の投与及び臨床反応の観察に基づいて決定することができる。ある実施形態では、1日あたり約10〜10000mgが投与される。別の実施形態では、1日あたり約10〜50,10〜100,10〜500,10〜1000,20〜100,20〜500,20〜100,50〜100,50〜200,50〜300,50〜400,50〜600,50〜800,50〜900,50〜1000,50〜2000,50〜3000,50〜4000,50〜5000又は50〜10000mgが投与される。好ましくは、1日あたり約50〜500mgが投与される。一般的な抗酸化物質の効能を得るために、ある実施形態では、1日あたり20〜50mgが投与される。用量は、分割して1日あたり2回又はそれ以上投与してもよい。
【0104】
ある非限定的な実施形態では、リポソームは約2.5〜10重量%のALA(Na ALA又はNa R−ALA)を含む。別の実施形態では、リポソームは少なくとも約2.5〜5重量%のALAを含む。相分離を防止又は低減させるために、約7.5%よりも少ない重量%を含むことが好ましい場合もある。実施例9に記載されるように、リポソームは高い安定性を示し、室温又は高温(40℃)で50日間保存した後に、封入ALAの90%がリポソーム内に保持された。非限定的な実施形態では、ALA封入リポソームは、少なくとも約1〜3ヶ月安定である。好ましい実施形態では、ALA封入リポソームは少なくとも約3ヶ月安定である。
【0105】
a.リポソーム封入ALAの使用方法
ある実施形態では、ALAは、酸化的ストレス又はダメージ(Toklu等, J. Spinal. Cord Med., 2010, 33(4):401-409)、糖尿病、肝臓疾患、炎症(Odabasoglu等, Br. J. Nutr., 2010, Nov. 15:1-12)、アルツハイマー病等の神経変性疾患(Zara等, Exp. Gerontol., 2010, Nov. 8)、心臓血管疾患、末梢神経損傷(Ranieri等, J. Brachial. Plex. Peripher. Nerve Inj., 2010, 5:15)、統合失調症(Seybolt, Med. Hypotheses, 2010, 75(6):572-575)、肥満(Carbonelli等, Curr. Pharm., Des., 2010, 16(7):840-846)、癌(Schwartz, Oncol., Rep., 2010, 23(5):1407-1416)及び高血圧(Kizhakekuttu等, Cardiovasc., Ther., 2010, 28(4):e20-e32)を治療又は予防するために使用される。
【0106】
糖尿病
複数の研究において、高用量のALAが2型糖尿病患者におけるグルコース利用を改善し得ることが示されている。13人の2型糖尿病患者の臨床試験において、1000mgのラセミALAを単回静脈内注入したところ、偽薬注入と比較して、インスリン刺激性の糖処理(インスリン感受性)が50%改善したことが示されている(Jacob等, Arzneimittelforschung. 1995, 45(8):872-874)。72人の2型糖尿病患者における別のプラセボ対照比較試験において、ラセミALAを600mg/日,1200mg/日又は1800mg/日の用量で経口投与したところ、処理4週間後、インスリン感受性が25%改善したことが示されている(Jacob等, Biofactors, 1999, 10(2-3):169-174)。この試験において、ALAの3種類の用量に有意な差がないことが示されており、600mg/日が最大有効用量となり得ることが示唆される(Ziegler等, Treat Endocrinol., 2004, 3(3):173-189)。さらに、ALAは、糖尿病患者の血糖レベルを低減し得ることが示されている(Melhem等, J Am Soc Nephrol., 2002, 13:108-116)。
【0107】
ALAのフリーラジカル消去能は、糖尿病により神経損傷(末梢神経障害)が生じた患者において、痛み、灼熱感(burning)、かゆみ、うずき(tingling)及びしびれ(numbness)を低減するのに有効である(Androne等, In Vivo, 2000, 14(2):327-330)。ALAは、欧州で数年間、末梢神経障害の治療に使用されている。
【0108】
別の実施形態では、リポソームALAは、糖尿病に関連する又は糖尿病に伴う血管疾患の処置に使用される。血管の内壁(内皮細胞)は、血管疾患を予防する上で重要な役割を果たす。内皮機能は、糖尿病患者において損なわれている場合が多く、そのような患者は、血管疾患リスクが高い(Schalkwijk等, Clin Sci (Lond)., 2005,109(2):143-159)。ラセミLAの動脈内注入により、糖尿病患者では、内皮細胞依存性の血管拡張が改善するが、健常対照ではしないことが示されている(Heitzer等, Free Radic Biol Med., 2001, 31(1):53-61)。
【0109】
また、ALAは、糖尿病に関連する症状である自律神経障害の処置に使用され、心臓に分布する神経に作用する。ある研究において、73人の自律神経障害患者が800mgのアルファリポ酸を経口摂取したところ、プラセボと比較して自律神経障害が改善したことが示されている(umm.edu/altmed/articles/alpha-lipoic-000285.htm)。
【0110】
ある実施形態では、1日あたり少なくとも約600〜800mgのリポソーム封入ALAが、糖尿病、糖尿病性神経障害及び/又は糖尿病に起因する血管合併症に罹患した患者に投与される。
【0111】
肝臓疾患
ALAは、C型肝炎の処置において、シリマリン及びセレンと組み合わせて使用されている(Berkson, Med Klin, 1999, 94(Suppl. 3):84-89)。この研究において、慢性C型肝炎感染症に続発する肝硬変、門脈圧亢進症及び食道静脈瘤に罹患した3人の患者をALAで処置したところ、臨床検査値が改善したことが示されている。ある実施形態では、リポソーム封入ALAが、肝臓疾患及び/又は肝炎の処置のために投与される。
【0112】
脳卒中
アルファリポ酸は脳内に容易に進入できるので、脳及び神経組織に対する保護作用を有する。ALAは、脳卒中、及びフリーラジカルによるダメージに関連するその他の脳疾患に対する治療の可能性について研究されている。例えば、アルファリポ酸で処置した動物では、生じる脳のダメージが減少し、脳卒中後の生存率が、アルファリポ酸を摂取していない動物よりも4倍高かったことが示されている(Panigrahi等, Brain Res., 1996, 717(1-2):184-188)。ある実施形態では、リポソーム封入ALAが脳卒中の処置のために投与される。
【0113】
HIV/AIDS
ALAの補給は、血中総GSHレベルを回復させ、リンパ球のT細胞マイトジェンに対する反応性を改善することにより、HIV及びAIDS患者に対してプラスの影響を与える(Jariwalla等, 2008, J. Altern. Complement Med., 14(2):139-146)。ある実施形態では、リポソーム封入ALAがHIV及びAIDSの処置のために投与される。
【0114】
B.医薬品
本発明の低温法を用いてリポソーム中に封入するのに適した医薬品としては、例えば、以下の治療活性を有する天然及び合成の化合物が挙げられる:抗関節炎薬,抗不整脈薬,抗菌剤,抗コリン作用薬,抗凝血剤,抗利尿薬,解毒剤,抗てんかん薬,抗真菌薬,抗炎症薬,代謝拮抗薬,抗片頭痛薬,抗腫瘍薬,抗寄生虫薬,解熱薬,抗けいれん薬,抗血清,鎮痙薬,鎮痛薬,麻酔薬,β遮断薬,生物反応修飾薬,骨代謝調節薬,心臓脈管薬,利尿薬,酵素薬,排卵誘発薬,成長促進薬,止血薬,ホルモン薬,ホルモン抑制薬,高カルシウム血症改善薬,低カルシウム血症改善薬,低血糖改善薬,高血糖改善薬,免疫抑制薬,免疫増強薬,筋弛緩薬,神経伝達物質,副交感神経作用薬,交感神経作用薬,血漿増量薬,血漿増補液,向精神薬,血栓溶解薬及び血管拡張薬。ある実施形態では、医薬品は細胞毒性薬又は物質であり、以下の具体例が挙げられる。アントラサイクリン系抗生物質、例えば、ドキソルビシン,ダウノルビシン,エピルビシン及びイダルビシン;白金化合物、例えば、特に限定されるわけではないが、シスプラチン,カルボプラチン,オルマプラチン,オキサリプラチン,ゼニプラチン,エンロプラチン,ロバプラチン,スピロプラチン,((−)−(R)−2−アミノメチルピロリジン(1,1−シクロブタン ジカルボキシラト)白金)(DWA2114R),(SP−4−3(R)−1,1−シクロブタン−ジカルボキシラト(2−)−(2−メチル−1,4−ブタンジアミン−N,N')白金)(CI−973),ネダプラチン(254−S)及び(ビス−アセタト(acetato)−アンミン(ammine)−ジクロロ−シクロヘキシルアミン−白金(IV));トポイソメラーゼ1阻害物質、例えば、特に限定されるわけではないが、トポテカン,イリノテカン,(7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトセシン),7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトセシン,9−アミノカンプトテシン及び9−ニトロカンプトテシン;ビンカアルカロイド、例えば、特に限定されるわけではないが、ビンクリスチン,ビンブラスチン,ビンロイロシン(vinleurosine),ビンロジシン(vinrodisine),ビノレルビン(vinorelbine)及びビンデシン(vindesine);血管形成阻害薬、特に限定されるわけではないが、例えば、アンギオスタチン,エンドスタチン及びTNF−α;ならびにDNA及びRNA等の核酸。
【0115】
V.単位用量
ある実施形態では、リポソーム封入栄養補助剤又は組成物が、適当な容器中の単位用量として提供される。好ましくは、容器は、単位用量を収容するのに適当なサイズ袋状(pouch)又はパック状(packet)容器である。容器は、紙(コーティング紙又は非コーティング紙)、ホイル、ポリマー、金属、プラスチック、耐穿刺性ナイロンフィルム又はそれらの任意の組み合わせで形成されていてもよい。ある実施形態では、ホイル−ラミネート,ヒートシールラミネート又はストリップ包装で形成される。容器は、適当な材料からなる1又は2以上の層で形成されてもよい。また、容器は異なる適当な材料からなる層で形成されてもよい。ある実施形態では、容器は、適当な材料からなる1又は2以上のシートで形成される。例えば、栄養補助剤又は組成物と接触する内層は、栄養補助剤又は組成物の成分と反応しない不活性物質で形成することができる。また、内層は、水分(湿気)、空気又は光を通さない材料で形成することができる。外層は、ラベリングに適当な材料で形成することができる。ある実施形態では、容器は、多層ラミネートで形成される。この実施形態では、内層は、防湿バリアーとなり、組成物の消散を防止し、及び/又はUV及びその他の光源による分解を防止する材料で形成することができる。ある実施形態では、内層は、アルミニウム等の金属で形成される。別の実施形態では、容器は、1また2以上の熱可塑性ポリマーシートで形成される。好適な熱可塑性ポリマーとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリアミド又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0116】
容器が1又は複数の材料からなる単一部材で形成される場合、好ましくは、少なくとも2つの縁部(edge)によって単位用量を充填するための開口部が形成されるように、単一部材は折り畳まれ、シールされる。容器が1又は複数の材料からなる2又はそれ以上の部材で形成される場合、単位用量を充填するための開口部が形成されるように、3方向の面が任意の適当な方法でシールされる。このように、容器は、開口部と、開口部を通じて単位用量を充填できる内部部分を有する。
【0117】
例示的な容器を図2A−2Bに示す。図2Aに示すように、容器10は、対向する2つのシートで形成されており、シートの内側部分14はシールされていないが、シートの周縁部12はシールされている。図2Bに示すように、最初は、周縁部のうち、ある縁部はシールされておらず、リポソーム組成物等の製品を収容可能な充填可能領域16が形成されている。容器の充填後、この未シール縁部はシールされる。
【0118】
適当な用量のリポソーム組成物が、容器の内部部分に収容される。リポソーム組成物が容器に収容されると、開口部が存在する面はシールされる。容器は、N2等の不活性ガス下でシール(密封)することができる。不活性ガス下で容器をシールすることによって、ビタミンC等の封入薬剤の安定性を向上させることができる。容器の面は、熱シール、適当な接着剤の使用等の任意の適当な方法でシールすることができる。容器の面は、容器を形成する材料の少なくとも一部が少なくとも部分的に溶融するのに十分な熱量を加えることにより、熱シールすることができる。このように、容器の面はラミネートされる。別の実施形態では、容器は、超音波溶接で熱シールされる。別の実施形態では、容器は、適当な接着剤でシールされる。適当な接着剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、アクリルポリマー及びコポリマー、天然ラテックスゴム及び酢酸ビニルが挙げられる。また、容器は、ジッパーでシールしてもよい。また、容器は、密封容器が容易に開封できるように剥離可能な部分を有していてもよい。
【実施例】
【0119】
以下の実施例は例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]
アスコルビン酸ナトリウム封入リポソームの調製
97gのホスホリポン(phospholipon)50IP(Lipoidから市販されている非遺伝子組換え(non-GMO)ベシクル形成脂質ホスファチジルコリン)を、56.3gのアルコール(200 proof)に室温で可溶化した。全ての脂質が完全に可溶化し、溶解せずに残存する脂質が存在しないように注意した。109.5gのアスコルビン酸ナトリウム及び26.4mgのEDTAを別々に251gの逆浸透処理水に室温で標準攪拌しながら可溶化した。アスコルビン酸ナトリウム−EDTA溶液のpHを6.3に調節した。アスコルビン酸ナトリウム−EDTA溶液を0.2μmフィルターでろ過し、塵埃粒子及びその他の混入物質を除去した。攪拌器で継続的に攪拌しながら、脂質溶液をゆっくりとビタミン溶液(アスコルビン酸ナトリウム−EDTA溶液)に注入した。全ての脂質溶液を添加した後、頻回攪拌しながら、脂質の水和を約15分間継続した。この時点で、滑らかな半透明の液体中にリポソームが形成された。
【0120】
2.2gのキサンタンガム(Sigma-Aldrich社の市販品)及び1.38gのTweenTM80(Sigma-Aldrich社の市販品)を加え、溶液の粘性を高め、ゲル化した。得られたリポソーム溶液は透明な蜂蜜色(honey-like color)であった。
【0121】
[実施例2]
EmpiricalリポソームとLivOnリポソームの比較
幾つかのバッチ数のLypo-SphericTM ビタミンCリポソームをLivOn Laboratories社から入手した。製品成分表の通り、5.7mL容量(packet)の各Lypo-SphericTMビタミンCリポソームは、1000mgのアスコルビン酸ナトリウム及び1.0gの必須リン脂質を含有する。Lypo-SphericTMビタミンCリポソーム製品の色は、淡オレンジ色から褐色であった。第2の市販品として、リポソームビタミンC製剤をEmpirical Laboratories社から入手した。製品成分表の通り、4mL分量(serving size)のEmpiricalリポソームビタミンC製剤は、1000mgのアスコルビン酸ナトリウム及び400mgのホスファチジルコリンを含有する。
【0122】
LivOn及びEmpiricalリポソーム製剤間のアスコルビン酸ナトリウム量、粒径、乾燥材料(dry material)量及び脂質量(推測量)を比較した結果を表2に示す。Empiricalリポソームは、LivOnリポソームと比較して希釈されているようであった。Empiricalリポソームは、比較的短時間(<1時間)作業台に放置しておくと、2層に分離した。分離したEmpiricalリポソームを遠心すると、下層は総容量の約70〜80%を占めた。Empiricalリポソームの両層は褐色で比較的透明であった。下層は液状(water-like)であり、上層はゲル状であった。Empiricalリポソームは、手を震わせて攪拌すると、不透明となり、粘性が増加した。
【0123】
リポソーム中のアスコルビン酸ナトリウム量をHPLCで測定した。遠心ろ過法によって遊離のアスコルビン酸ナトリウムを分離して、アスコルビン酸ナトリウム封入量(封入率)を測定した。200μgの製品を計量し、10mLの0.5M NaCl溶液で希釈した。混合物を攪拌し、リポソームを緩衝液中に完全に分散させた。この溶液を、さらに80/20%のエタノール/水で10倍希釈し、透明な溶液を得、HPLCによって総アスコルビン酸ナトリウム濃度を分析した。遊離のアスコルビン酸ナトリウム量を測定するために、小容量(約0.5〜1mL)の溶液を遠心濃縮器(Nanosep(登録商標)10K OMEGA p/n OD010C34(Pall社の市販品)又はMillipore's Biomax UFV5BTK25 30K)にかけ、1〜2時間遠心した。フィルターは、遊離(非封入)アスコルビン酸ナトリウムを含有する水性溶液だけを通過させることができる細孔を有し、リポソームは滞留する。次いで、ろ過物(filtrant)を80/20% エタノール/水で10倍希釈した。ろ過物中のアスコルビン酸ナトリウム濃度をHPLCで測定し、総アスコルビン酸ナトリウム濃度と比較し、封入効率を決定した。
【0124】
リポソーム中の乾燥材料量を評価するために、大量の製品を凍結乾燥器で2〜3日間乾燥させた。真空乾燥後の重量変化を測定した。
【0125】
粒径は、食塩水(saline)に希釈した後、動的光散乱(NICOMP 370)によって測定した。溶液を攪拌し、リポソームを完全に分散させた。Empiricalリポソームについて3回の測定を行なった結果、平均粒径は620〜760nm、標準偏差は460〜615nmであった。2つの別々のバッチのLivOnリポソームについて粒径を測定した。バッチL0809(新しいバッチ)の平均粒径は約1200nmであり、バッチL1208(古いバッチ)よりも広範な分布を示した(SD 760nm)。バッチL1208の平均粒径は約800nmであり、標準偏差(SD)は450nmであった。これに対して、本発明の低温法で調製したリポソームの粒径は、典型的には300〜500nmの範囲である。
【0126】
別の実験において、5バッチのLivOnリポソームのうちの17コンテナについて、粒径を測定した。粒径(直径)は850nm未満から1200nmを超える範囲であり、平均粒径は1030±100nmであった。試験したバッチ間で粒径に関する統計学的差異はなかった。粒径ピークの幅は、平均して約740±60nmであり、バッチ間で統計学的差異はなかった。
【0127】
pHを測定するために、少量の製品をMilliQ水で希釈した。混合物を攪拌し、リポソームを完全に分散させた。標準的な実験用pHメーターを用いてpHを測定した。
【0128】
Empiricalリポソーム及びLivOnリポソームを顕微鏡下で観察した。顕微鏡で観察したところ、Empiricalリポソームは、非常に大きな油滴を多数含んでいた。油滴は、粒径測定機器のレーザービームを透過するので、表2に示される粒径の測定結果は、油滴の作用効果を説明するものではない。Empiricalリポソームの製品成分リストには、オリーブオイル、ビタミンE及び香味料が挙げられている。これらのいずれか1つが、製品中に見られる巨大な油滴を説明し得るかもしれない。また、Empiricalリポソームの製造時にグレードの低い脂質が用いられているならば、油滴は脂質原材料に由来するものかもしれない。希釈されたEmpiricalリポソーム溶液は、顕微鏡観察下、LivOn溶液よりも均質性が低いようであった。
【0129】
【表2】

【0130】
[実施例3]
低温法リポソームとLivOn Laboratoriesリポソームの比較
低温法リポソームを実質的に実施例1に記載したように調製した。Lypo-SphericTMビタミンCリポソームをLivOn Laboratories社から入手した。リポソーム製剤の様々な特性を測定した結果を表3に示す。
【0131】
リポソーム製剤中のアスコルビン酸の重量%は、HPLCによって測定した。アルコール含量は、ガスクロマトグラフィーによって測定した。平均粒径は、動的光散乱によって測定した。アスコルビン酸ナトリウム封入量(封入率)は、実施例2に記載したようなろ過及びHPLCによって測定した。
【0132】
【表3】

【0133】
[実施例4]
室温及び高温におけるリポソームの安定性
低温法で調製したリポソームの保存安定性を試験した。リポソームは、non-GMO脂質ではなくAlcolec PC50 脂質(American Lecithin Companyから市販されているGMO ホスファチジルコリン脂質)を使用した点を除き、本質的に実施例1に記載したように調製した。2.0mLのプラスチックバイアルをリポソームで満たし、N2下、ネジ蓋で密閉した(各蓋はゴム製Oリングによって完全に密閉できる)。バイアルを室温(25℃)又は高温(50℃)で保存した。室温で保存したリポソームに関しては、4日目、5日日、7日目(2回測定)、8日目及び38日目に、アスコルビン酸含量(重量%)をHPLCで測定した。高温で保存したリポソームに関しては、0日目、5日目、6日目(2回測定)、11日目、20日目及び42日目に、アスコルビン酸含量(重量%)をHPLCで測定した。結果を表4に示す。
【0134】
【表4】

【0135】
[実施例5]
50℃で保存した場合のリポソーム安定性の比較
50℃で保存した後の低温法リポソーム及びLivOnリポソームの安定性を試験した。低温法リポソームは本質的に実施例1に記載したように調製した。Lypo-SphericTMビタミンCリポソームはLivOn Laboratories社から入手した。低温法リポソームはN2でフラッシュした後、2.0mLプラスチックバイアル中で保存した。LivOnリポソームは、オリジナルパッケージ中で保存するか、あるいは、該パッケージから取り出し、N2をフラッシュした後、2.0mLプラスチックバイアル中で保存した。アスコルビン酸の重量%はHPLCによって測定した。リポソームは次いで50℃で保存した。4日後、13日後又は19日後に、リポソーム組成物を取り出し、アスコルビン酸の重量%をHPLCによって測定した。結果を表5に示す。図4は、19日間にわたり、低温法で調製したリポソーム及びLypo-SphericTMビタミンCリポソーム(LivOn Laboratories社の市販品)の安定性を比較したグラフである。
【0136】
【表5】

【0137】
低温法で調製したリポソームアスコルビン酸塩の安定性を評価するために、大量のバッチ(14kg)のリポソーム封入アスコルビン酸ナトリウムを製造した。成分重量を測定したところ、アスコルビン酸ナトリウム量は22.1重量%であった。製造法は、脂質及びビタミンC可溶化のために大きな容器(5ガロン容器)を用いた点を除き、実施例1記載の方法と同様である。工業用ホモジナイザー/ブレンダーを用いて、リポソームを混合した。最終産物の外観は実施例1で製造したものと類似していた。最終産物のリポソームアスコルビン酸塩を、市販品であるLypo-SphericTMビタミンCリポソームの包装と同様、LivOn Labsの小袋(sachet)あたり5.5g充填した。アスコルビン酸塩の安定性を25℃及び40℃でモニタリングした。HPLCアッセイの結果を表6に示す。
【0138】
[実施例6]
還元型グルタチオン封入リポソームの調製
80g Alcolec PC50を48gのアルコール(200 proof)に室温で可溶化した。全ての脂質が完全に可溶化し、溶解せずに残留する脂質がないように注意した。80gの還元型グルタチオン(GSH)を、標準攪拌しながら、0.9% NaCl、50mM PO4(pH3.9)に室温で可溶化した。120mgのEDTAをGSH溶液に加え、完全に溶解させた。GSH封入リポソームを製造するために、高速ブレンダーで継続的に混合しながら、エタノール脂質溶液をゆっくりとGSH溶液に注入した。全ての脂質溶液を加えた後、頻回攪拌しながら、脂質の水和を約30〜60分間継続した。この時点で、リポソームが滑らかな黄色の混濁液中に形成された。動的光散乱機器(ZetaPALS(Brookhaven))によって粒径を測定したところ、典型的には200〜600nmの範囲であった。
【0139】
リポソームの粘性を高めてゲル化するために、1.6gのキサンタンガム(Sigma-Aldrich社の市販品)を、攪拌しながら、リポソームに混合し、次いで、2.0gのTween80(Sigma-Aldrich社の市販品)を混合した。最終産物は、高粘性の透明なゲルであり、蜂蜜色(honey-like color)であった。最終産物のGSH濃度(理論値)は20.0重量%であった。
【0140】
[実施例7]
リポソーム中の還元型グルタチオンのHPLC測定
実施例6で調製したリポソームGSH製剤中の還元型グルタチオン濃度を、公知の方法(Raggi等, 1997, Chromatographia, vol. 46, 17-22)に基づき、HPLCアッセイによって測定した。測定されたGSH濃度は18.4±0.3重量%であり、これは、理論値である20重量%に非常に近似しており、出発物質のGSHのうち92%近くが製剤過程で安定したままであったことを示している。
【0141】
[実施例8]
アルファリポ酸封入リポソームの調製
20gの脂質AlcolecTM PC50を12gのエタノール(200 proof アルコール)に室温で可溶化した。全ての脂質が完全に可溶化し、溶解せずに残留する脂質がないように注意した。5.0、7.5もしくは10.0gのアルファリポ酸ナトリウム塩(Na ALA)又は5.0、7.5もしくは10gのR−ALAナトリウム塩を別々に、標準攪拌しながら0.3%EDTA(pH7.5)含有水に室温で可溶化した。Na R−ALA封入リポソームを製造するために、高速ブレンダーで継続的に攪拌しながら、エタノール脂質溶液をゆっくりとNa R−ALA溶液に加えた。全ての脂質溶液を加えた後、頻回攪拌しながら、脂質の水和を約30〜60分間継続した。この時点で、リポソームが滑らかな黄色の混濁液中に形成した。
【0142】
リポソームの粘性を高めてゲル化するために、攪拌しながら、リポソームに0.4gのキサンタンガムを混合し、次いで、0.3gのTween80を混合した。最終産物は、高粘性の不透明な黄色のゲルであった。最終産物のNa ALA又はR−ALA濃度(理論値)は5、7.5又は10.0重量%であった。
【0143】
[実施例9]
リポ酸リポソームの有効性及び安定性のHPLC測定
実施例8記載のように調製したNa−ALA及びR−ALAリポソームの安定性を調べた。安定性のモニタリングは、ガラス製バイアルの上端まで(すなわち、曝気を最小限にするためにバイアル上部に空隙がないように)リポソーム製剤を満たし、ネジ蓋で密閉した。サンプルを室温又は40℃で保存した。数日で10% Na−ALA及び10% Na R−ALA製剤にいくつかの相分離が生じ、容器の下部に透明な溶液が分離した。また、7.5% Na ALA及びNa−R−ALAにも明らかではあるが、より軽度な相分離が生じた一方、5重量%製剤は少なくとも8週間均一のままであった。
【0144】
5重量% Na−ALA及び5重量% R−ALA含有製剤におけるリポ酸の有効性を、公知の方法(GeroNova Research Inc web site (geronova.com/sites/default/files/LA_HPLC_Mod_USP.pdf)で公開された“Analysis of Lipoic Acid Salts for Quality Assurance”)に基づき、HPLC法で測定した。アッセイの結果を表6に示す。表6に示されるように、低温法で製造されたリポソームに封入されたALAは非常に安定であった。また、インキュベーション(室温又は40℃で50日間)後のALA又はR−ALA有効性の減少は10%未満であった。
【0145】
【表6】

【0146】
別の試験のために、実施例8に従って、3つのNa−ALAリポソーム製剤(2.5、5.0又は7.5重量%のNa−ALAを含有)を調製した。安定性のモニタリングのために、ガラス製バイアスの上端まで(バイアス上部に空隙がないように)リポソームを満たし、ネジ蓋で密閉した。ここでも、7.5重量% ALA及び7.5重量% R−ALA製剤において相分離が生じた。5.0重量%及び2.5重量%製剤は試験を通じて均一のままであった。サンプルを室温又は40℃で保存し、ALA濃度をHPLCで測定した。結果を表7に示す。表7に示すように、低温法で製造したリポソームに封入されたALAは、少なくとも3ヶ月間、非常に安定であった。また、1ヶ月目の末から3ヶ月目の末までのALA有効性の減少は、全てのケースで(40℃で保存した場合でさえ)10%未満であった。HPLCで測定した値のうち、2つの7.5%製剤に関するものは、製剤の相分離のためにサンプリングが不均一となってしまったため、正確性が劣るものだった。これらの製剤が調製された時点でHPLC法が確立されていなかったため、T=0の時点の値はない。
【0147】
【表7】

【0148】
多数の例示的な態様及び実施形態を上述したが、当業者は、それらに対する修正、置換、付加又はサブコンビネーションを認識するであろう。したがって、本発明の範囲にはそのような全ての修正、置換、付加及びサブコンビネーションを含むと解釈されるべきである。本明細書で引用された全ての特許文献及び刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が封入されたリポソームを製造する方法であって、
少なくとも約18w/w%のベシクル形成脂質を約1〜12w/w%の水性溶媒又は水混和性溶媒に室温で可溶化して脂質溶液を形成すること、
所定量の前記薬剤を0.005〜0.01w/w%のEDTAに室温で可溶化して薬剤含有溶液を形成すること、
前記薬剤含有溶液をろ過すること、
前記脂質溶液を前記薬剤含有溶液に攪拌しながら注入すること、並びに
得られる脂質及び薬剤含有溶液を頻回攪拌しながら少なくとも1時間水和させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記水混和性溶媒がアルコールである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水和の後、追加の脂質又は増粘剤を加えてゲルを形成させることを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ベシクル形成脂質が少なくとも約45〜50%のホスファチジルコリンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ホスファチジルコリンが卵又は大豆に由来する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤がアスコルビン酸又はその塩である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤がグルタチオンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤がアルファリポ酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
アスコルビン酸又はその塩の投与のための、請求項6記載の方法によって形成されたリポソーム組成物。
【請求項10】
少なくとも約18w/w%のベシクル形成脂質、
0.005〜0.1w/w%のEDTA、及び
10〜12w/w%のアルコールを含む、請求項9記載のリポソーム組成物であって、
前記リポソームが200〜500nmの平均粒径(直径)を有し、
少なくとも約22w/w%のアスコルビン酸又はその塩が前記リポソームに封入されている、前記組成物。
【請求項11】
前記ベシクル形成脂質の少なくとも約45〜50%がホスファチジルコリンである、請求項9又は10記載の組成物。
【請求項12】
前記ホスファチジルコリンが大豆ホスファチジルコリンである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
0〜0.6w/w%のキサンタンガムをさらに含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
0.4w/w%のTween80をさらに含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記アスコルビン酸又はその塩がアスコルビン酸ナトリウムである、請求項9〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
単位用量パッケージと、該パッケージ中に含まれる請求項9〜15のいずれか1項に記載のリポソーム組成物とを含む単位用量製剤。
【請求項17】
2のガスフラッシュの下、前記リポソーム組成物が前記パッケージ中に密封されている、請求項16記載の単位用量製剤。
【請求項18】
対象における壊血病、心臓血管疾患、脳血管疾患、癌、加齢性黄斑変性症、白内障、痛風、重金属毒性又は糖尿病を、リポソームに封入したアスコルビン酸又はその塩で処置する方法であって、
請求項9〜15のいずれか1項に記載のリポソーム組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記リポソーム組成物を高用量で投与することを含む、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140395(P2012−140395A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59542(P2011−59542)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511070190)リブオン ラボラトリーズ (1)
【Fターム(参考)】