説明

リポソームアミカシン処方物による肺疾患の治療方法

ここでは、肺疾患を治療する方法が開示され、該方法は、患者に、少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物の有効用量を投与する工程を含み、ここで、該治療サイクルは、15〜75日間の投与期間及びこれに伴う、15〜75日間の非-投与期間を含み、また該有効用量は、該投与期間中毎日、100〜2,500mgなる範囲のアミカシンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件特許出願は、2008年10月13日付で出願された、米国特許出願第12/250,412号に基く優先権の利益を請求するものである。この米国特許出願の内容全体を、参考としてここに組入れるものである。
【0002】
膵臓線維症とも呼ばれる嚢胞性線維症(CF)は、外分泌腺の常染色体劣性遺伝性疾患の一つである。これは、肺、汗腺及び消化器系に影響を及ぼし、慢性的な呼吸器系及び消化器系に係る問題を生じる。これは、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質における突然変異によって引起される。これは、白色人種における最も一般的な致命的な常染色体劣性遺伝性疾患である。
【背景技術】
【0003】
CFの最初の発現は、しばしばCFを発症した幼児の16%において起る、胎便性イレウスである。CFの他の症状は、幼児期初期に現れる。肺及び膵臓両者が、異常に粘稠な粘液を生成する。この粘液は、膵臓及び肺の開口部に蓄積され、かつこれを閉塞し始める。肺疾患の問題は、濃厚で粘着性の粘液の絶え間のない存在で始まり、またCFの最も重篤な合併症の一つである。肺中の粘液は、細菌増殖用の媒体となり得、慢性呼吸器感染症及び結果として肺組織に対する永続的な損傷を引起す恐れがある。CFの最終的段階において、該患者は、高い胸部の鬱血、活性の不耐性、高い断続性ラ音、及び高頻度の咳を経験し、該咳は、しばしば肺動脈を介する細気管支出血による血液の混じった痰(喀血)を含む。慢性的かつ痰を伴う激しい咳は、CFに罹っている人々において共通してみられる。これらの濃厚な分泌物は、また膵臓を閉塞してしまって、食物を分解し、またその吸収を助けるべく、消化酵素が腸に達するのを阻害する。しばしば、高頻度での悪臭のある排便が、該排便中に見ることのできる脂肪油と共に、CFの初期の徴候である。これは、生活における初期に、消化を助ける適切な処置が利用されない場合には、成長及び全体的な栄養摂取を危うくする恐れがある。肺機能が劣化するので、CF患者は、肺性高血圧、慢性気管支炎、及び細気管支の慢性拡張(気管支拡張症)を発症する恐れがある。肺膿瘍は極めて一般的である。通常は、死が、重度の感染、肺炎又は心不全により引き起こされる。
【0004】
嚢胞性線維症は、専ら遺伝性のものであり、小児がこの疾患に罹患するためには、両親共に該劣性遺伝子を持つ必要がある。遺伝子レベルにおいて、嚢胞性線維症は、最も高頻度には、DNAにおける3つの塩基対の枠内(in-frame)欠失の結果である。嚢胞性線維症は、異常な形状にある、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)と呼ばれるタンパク質の生産により起こる。CFTRは、肺及び腸管において見出される上皮細胞を横切る、塩素イオンの輸送において機能を果たしている。CF患者において、CFTRは、適切に機能しておらず、上皮細胞内でのイオンの蓄積を引起す。浸透現象によって水がイオンに伴われるので、これは、水の欠乏をもたらし、また肺胞表面上に粘稠な粘液の生成をもたらす。最も一般的なCFTRタンパク質の異常性は、ΔF508と呼ばれる突然変異であり、これは、アミノ酸であるフェニルアラニンをコードする、染色体位置:7q31.1-31.2における、DNA塩基対配列の3-bpの欠失によって特徴付けられる。
肺感染に加えて、CFに罹患した殆どの人々は、また消化、特に脂肪の消化に係る問題を抱えている。これは、吸収不全並びに体重増及び維持の困難に導き、結果として全体的な健康に悪影響を及ぼす。これは、膵臓からの消化酵素の放出を遮断する、異常に高い粘着性を持つ粘液によるものである。膵臓機能不全は、補足的な酵素によって治療される。該低下した脂肪吸収性が、脂溶性ビタミンA、D、E、及びKの欠乏に導くので、通常は、水-混和性形状にあるこれらのビタミンが必要となる。
【0005】
CF患者は、また膵臓遮断のために高い糖尿病の発病率をも示す。この慢性的な遮断は、経時に伴ってランゲルハンス島の劣化、及びインシュリン生産の低下を引起し、高血糖症を引起す。CFに罹患した患者が、生成されるインシュリンに対してより抵抗性となることも明らかとなっており、これが、感染症又はコルチコステロイドによる治療により引き起こされる可能性がある。CF患者における糖尿病は、一般的に嚢胞性線維症関連糖尿病:CFDRと呼ばれている。典型的な糖尿病の食養生は、実行の可能性が低く、従ってこれに代ってインシュリンの用量が、典型的な高カロリー/高脂肪CF食養生に適応すべく調節される。
多くのCF患者は、ある程度まで、「バチ指形成」として知られる、その指の先端部における肥大化を経験する。この状態は、指及び足指に影響を与え、また指先端部の円形化及び肥大化をもたらす。これは、またCOPD又は重度の心臓疾患に罹っている人々においても観測することができる。CFに罹患した人々は、栄養分の吸収が貧弱になりやすいので、低い骨密度のために、初期成人期において、骨粗鬆症を引起す恐れがある。CFに罹患した人々にとって、規則的なデュアルエネルギーX-線吸光光度測定法(DEXA)により走査して、骨の密度を測定し、かつ必要ならば治療を開始することは重要なことである。早期に診断した場合には、治療により、より重度の合併症の発症を防止することが可能となる。
【0006】
幾分かのCF患者は、肺感染を根絶するために使用される、トブラマイシン等の-マイシン/-ミシン(-mycin/-micin)群の薬物の長期使用による副作用の一つとして、聴力喪失を被る。この副作用は周知であり、また理解されているが、これらの特別な抗生物質は、CF患者の治療において高い有益性を持ち、またしばしば聴力の喪失を、生命及び健康を保持するために、必要な犠牲と考えねばならない。CFは、主として中央及び西部ヨーロッパの人々において起る。米国においては、死亡者年齢の中央値は、1969年の8.4歳から、1998年の14.3歳へと高まっている。死者の平均年齢は、1969年の14歳から、2003年の32.4歳へと増大している(嚢胞性線維症財団(Cystic Fibrosis Foundation))。平均余命における大幅な増大に対する主な寄与因子は、CF患者における慢性気道感染の、改善された抗生物質による治療(Gross & Rosenfeld, 2004))並びに改善された栄養摂取及び早期診断である。
CF患者の呼吸器系の衛生に係る主な因子は、シュードモナスエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)による慢性的な感染である。P.エルギノーザによる感染率は、年齢と共に18歳まで増大し、米国におけるCF患者の80%が感染している。この感染の治療の困難さは、粘膜の詰まりを初めとする、感染部位への抗生物質の不十分な浸透、CF痰による抗生物質の不活性化、生体膜における微生物の増殖、P.エルギノーザの粘膜型への変換を含む表現型における変化、及び多剤耐性の出現等を含む多元性にある(Chmiel & Davis, 2003; Gibson, Burns等, 2003)。肺疾患治療の基礎は、この病原体による感染が、貧弱な臨床的結果と関連していることから、P.エルギノーザの治療を最適化することである(Doring, Conway等, 2000; Chmiel & Davis, 2003; Gibson, Burns等, 2003; Gibson, Emerson等, 2003)。
【0007】
CFに罹患したヒトにおける慢性的なP.エルギノーザ感染を管理するための一般的な方法の一つは、吸入トブラマイシン(TOBITM)による抑制療法の利用を含む。1日当たり2回の300mgのトブラマイシンの吸入からなる28日間の期間、これに続く28日間の投薬停止期間からなるサイクルが、P.エルギノーザのコロニー数を減じ、予想FEV1%を高め、入院期間を短縮し、また抗生物質の使用量を減じることが示された(Ramsey, Pepe等, 1999)。それにも拘らず、患者は、1回の投薬につき約15-20分間の吸入期間を要する投薬を、1日当たり2回受ける必要がある。
毎日の胸部物理療法及びエーロゾルの吸入治療が、CF患者に対して極めて一般的に処方される。典型的な物理療法は、濃厚な粘液を緩めるという同一の効果を達成する、手作業での胸部の打診(叩き)、正の圧力印加技術(positive pressure techniques)及び/デバイス又はThAIRapyベスト(Vest)又はイントラパルモナリーパーカッシブベンチレータ(Intrapulmonary Percussive Ventilator; IPV)等のデバイスを用いた療法を含む。一般的に与えられるエーロゾル化される医薬は、アルブテロール、臭化イプラトロピウム及びパルモザイム(Pulmozyme)を含み、これらは、分泌を緩くし、また炎症の発生を低下する。サーフィンを行っているCF患者が、より健康であることが分かっており、従って幾つかの病院では、喘息を患っていないCF患者に対して、霧化した6-10%の塩水溶液を使用して、分泌を緩くしている。吸入されたアミノグリコシド抗生物質が、しばしば感染を根絶するために投与されている。粘液の浄化を助ける幾つかの薬剤が使用されている。しかし、粘液の糖タンパク質を溶解するN-アセチルシステインが、著しく有効であることは立証されていない。組換えヒトDNAseは、CF患者の痰における濃縮された量のDNAを分解することによって、痰の粘性を減じる。DNAse療法は、短期使用中の空気流の増大において有利であり、また肺病態再発エピソード間の間隔を延長した。
【0008】
CF患者は、典型的には幾分規則的に、症例の重篤度に依存してしばしば6カ月毎に入院させられる。患者には、しばしばPICCライン、セントラルライン(Central Line)又はポルタカス(Port-a-Caths)を介して、抗生物質が静脈内投与される。
嚢胞性線維症は、また気管支拡張症に導かれる恐れがある。気管支拡張症は、粘膜の閉塞により起こる、呼吸器通路の異常な伸長及び拡大である。生体が、粘液を排除できない場合、粘液は、気道中に堆積されかつ蓄積される。この閉塞及びそれに伴う感染は、炎症を引起し、該炎症は、該通路の脆弱化及び拡大化に導く。脆弱化された該通路は、瘢痕化され、また変形され、より多くの粘液及び細菌の蓄積を可能とし、感染と気道遮断からなるサイクルをもたらす。気管支拡張症は、気管支樹の一部の、局所的な不可逆的な拡張を引起す疾患である。関連する気管支が拡張され、炎症を起こし、また容易に破壊し得るものとなり、結果として空気流を妨害し、かつ分泌物の排除を害する。気管支拡張症は、広範囲の疾患と関連しているが、これは、通常壊死性細菌感染、例えばスタフィロコッカス(Staphylococcus)又はクレブシエラ(Klebsiella)種又はボルデテラペルツシス(Bordetella pertussis)によって引起される感染に起因する。
【0009】
気管支拡張症は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一種であり、これは、気腫及び気管支炎を併発する恐れがある。この疾患は、一般的に喘息又は肺炎として誤診される。気管支拡張症は、あらゆる年代において発症する可能性があり、最も頻繁には小児期に開始されるが、その症状は、かなり後になるまで明らかにならない恐れがある。気管支拡張症は、先天性欠損症、例えば初期繊毛異動症又は嚢胞性線維症等の一部として起る可能性がある。米国における気管支拡張症の全症例の約50%が、嚢胞性線維症に起因している。これは、また傷害又は他の疾病、例えば結核、肺炎及びインフルエンザ等の結果として、誕生後にも起こり得る。
気管支壁の拡張は、気道閉塞及び低下した分泌物クリアランスをもたらす。というのは、該拡張された領域は、該気管支の正常な空気圧を妨害し、痰を上方に押し上げる代わりに、該壁の拡張領域内に溜め込むからである。該溜め込まれた痰は、感染性の病原体の増殖に導く環境を提供し、肺におけるこれらの領域は、結果的に極めて感染を受け易いものとなる。肺の経験する感染が酷いほど、肺の組織及び小窩(肺胞)の損傷は激しいものとなる。このような状態が起ると、気管支は、より一層柔軟性を欠き、かつ拡張されることになり、結果としてこの疾患における永続的な破壊的サイクルが生じる。
【0010】
重篤度のレベルによって変わる、3種の型の気管支拡張症がある。紡錘状(円筒状)気管支拡張症(最も一般的な型)は、遠位において漸減していない、穏やかな炎症を被った気管支と呼ばれる。異常に拡張した気管支拡張症において、該気管支壁は、ビーズ状に見えるが、これは拡張領域が収縮領域と混在していることによる。嚢状の(嚢胞性)気管支拡張症は、空気流動レベルに応じた又はこれと無関係の、末梢部気管支の重度の不可逆的な風船様拡大によって特徴付けられる。慢性の痰を伴う咳が顕著であり、これは、90%までの気管支拡張症に罹っている患者において見られる。痰は、1日当たり、76%の患者において生成される。
CFに加えて、気管支拡張症に対する他の遺伝的要因又は寄与因子は、カルタゲナー症候群、ヤング症候群、α-1-抗-トリプシン欠乏症、及び原発性免疫不全症を含む。後天性気管支拡張症はより頻繁に起こり、その最大の原因の一つは結核である。子供におけるこの疾患のとりわけ一般的な原因は、ヒト免疫不全症ウイルスによって起こる後天性免疫不全症候群である。気管支拡張症のその他の原因は、呼吸器系の感染、閉塞、アンモニア及びその他の有毒ガスの吸入及び吸引、肺への誤飲、アルコール中毒症、ヘロインの常習及びアレルギーを含む。喫煙も、気管支拡張症に寄与する可能性がある。
【0011】
気管支拡張症の診断は、臨床的履歴及び高解像度のCTスキャンの結果における特徴的なパターンの精査に基いて行われる。このようなパターンは、「ツリーインバッド(tree-in-bud)」の異常性及び限定可能な縁部を持つ嚢胞を包含する。気管支拡張症は、また臨床的履歴が、頻繁な呼吸器感染の存在を明らかに示している場合には、CTスキャンの確認なしに、また血液の働き及び痰の培養サンプルを介する、主な問題点の確認により診断することも可能である。
症状は、咳(より悪化した場合には、寝込んでしまう)、息切れ、異常な胸部音、衰弱、体重減、及び疲労を含む。感染を伴う場合、その粘液は変色し、腐敗臭を伴い、また血液を含む可能性がある。症状の重篤性は、患者毎に異なり、また場合により、患者は、無症候性である。
気管支拡張症の治療は、感染及び気管支分泌物の調節、気道閉塞の解除、及び合併症の予防を目標とする。この治療は、有害な感染を予防するための長期に及ぶ抗生物質の使用、並びに体位排液法による蓄積された流体の排除及び胸部の物理的療法を含む。外科手術を用いて、局所的な気管支拡張症を治療して、該疾患の進行を引起す恐れのある障害物を除去することも可能である。
【0012】
終始一貫して支持されている吸入によるステロイド療法は、痰の生成を減じ、また気道収縮を減じることができ、さらに気管支拡張症の進行を防止するであろう。一般的に利用されている療法の一つは、二プロピオン酸ベクロメタゾンの使用であり、これは喘息の治療においても使用されている。吸入剤、例えばアルブテロール(Albuterol)(サルブタモール)、フルチカゾン(フロベント(Flovent)/フリキソチド(Flixotide))及びイプラトロピウム(アトロベント)の使用は、気道を浄化し、かつ炎症の発生を減じることによって、感染の可能性を減じるのに役立つ可能性がある。
ブロンキトール(Bronchitol)なる名称のマニトール乾式吸入用粉末は、FDAにより、気管支拡張症に罹患した嚢胞性線維症患者における使用が承認されている。2005年2月に承認された最初の稀用薬の効能は、気管支拡張症の治療のためのその使用を可能とした。この初めての承認は、該製品が安全であり、十分に許容されるものであり、粘液の水和/浄化を刺激するのに効果的であり、その結果気管支拡張症等の慢性的閉塞性肺疾患に罹っている患者の生活の質を改善することを示す、第2相の臨床的研究の結果に基いている。該治療の安全性及び有効性を確認するために、長期に渡る研究が、2007年から継続状態にある。
【0013】
気管支拡張症患者には、しばしば感染防止のための抗生物質が、また通路開放のための気管支拡張薬が投与される。しばしば、抗生物質は、特に嚢胞性線維症に罹っている人々においては、感染再発防止のために長期間に渡り処方されている。粘液の浄化を助けるための、物理療法も存在する。肺の移植も、重篤な症例に対する一つの選択肢である。死亡は一般的ではないが、大量出血のために起こる可能性がある。肺感染を即座に治療した場合には、気管支拡張症は、あまり発生することがない。
肺炎は、肺及び呼吸器系の疾患の一つであり、ここでは、肺胞(大気からの酸素の吸収に応答する、肺の微視的な空気で満たされた袋)が、炎症を生じまた流体で溢れる。肺炎は、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫等による感染、及び肺に対する化学的又は物理的な損傷等を含む、様々な原因により起こり得る。肺炎と関連する典型的な症状は、咳、胸部痛、発熱、及び呼吸困難を含む。診断手段は、X-線検査及び痰の検査を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、CF、肺感染症、COPD、気管支拡張症及びその他を含む肺疾患を治療するための治療法に対する要求がある。さらには、このような疾患に罹患した患者における肺機能の改善に対する要求もある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、一部には、患者における肺疾患を治療する方法に係り、該方法は、該患者に、少なくとも1回の治療サイクルに渡り、有効用量の霧化されたリポソームアミカシン処方物を投与する工程を含み、
該治療サイクルは、15〜75日なる範囲の投与期間、これに続く15〜75日なる範囲の非-投与期間を含み;及び
該有効用量は、該投与期間中、毎日100〜2,500mgなる範囲のアミカシンを含む。
幾つかの態様において、該治療サイクルは、該患者に対して、少なくとも2回に渡り行われる。幾つかの態様において、該投与期間は、15〜35日なる範囲、又は20〜35日なる範囲内にある。他の態様においては、該投与期間は、約28日間である。幾つかの態様において、該非-投与期間は、15〜35日なる範囲、又は20〜35日なる範囲内にある。他の態様においては、該非-投与期間は、約28日間である。さらに別の態様において、該非-投与期間は、25〜75日なる範囲、35〜75日なる範囲、あるいは45〜75日なる範囲内にある。他の態様では、該非-投与期間は、約56日間である。
【0016】
幾つかの態様において、該投与期間は約28日間であり、かつ該非-投与期間は約28日間であり、一方他の態様において、該投与期間は約28日間であり、かつ該非-投与期間は約56日間である。
幾つかの態様において、該有効用量は、250〜1,500mgなるアミカシン、250〜1,000mgなるアミカシン、又は約280〜約560mgなるアミカシンを含む。他の態様では、該有効用量は、約280〜約560mgなるアミカシンである。
幾つかの態様において、該肺疾患は、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺感染症、嚢胞性線維症、α-1-抗-トリプシン酵素欠乏症及びこれらの組合せからなる群から選択される。他の態様において、該肺の状態は、細菌性肺感染症、例えばP.エルギノーザ感染症である。幾つかの態様において、該肺の状態は気管支拡張症である。
幾つかの態様において、該患者は、上記投与期間中に、約10mcg/mL未満の前記アミカシンの血清Cmaxを有する。他の態様において、該患者は、該投与期間中又は投与後少なくとも15日までの期間に渡り、痰1g当たり、少なくとも1,000mcgなる前記アミカシンの痰Cmaxを有する。
幾つかの態様において、該患者は、上記投与期間の終了後少なくとも15日間に渡り、少なくとも0.5なる、肺における上記細菌感染の、log10CFUにおける低下を示す。他の態様では、該log10CFUにおける低下は、少なくとも1.0である。
【0017】
幾つかの態様において、該患者は、上記投与期間の終了後少なくとも15日間に渡り、肺機能における改善を体験する。例えば、該患者は、該FEV1値における増大、血中酸素飽和濃度における増大、又はこれら両者を体験する。幾つかの態様において、該患者は、上記治療サイクル前の該FEV1値を、少なくとも5%越えて増大する、FEV1値を示す。幾つかの態様において、該FEV1値は、5〜50%だけ増大する。他の態様において、該治療サイクル前の該FEV1値を、25〜500mLなる範囲の値だけ越えて増大する。幾つかの態様において、該血中酸素飽和濃度は、該治療サイクル前の酸素飽和濃度を、少なくとも1%だけ越えて増大する。
幾つかの態様において、肺疾患の再発までの期間の長さは、投与最終日から少なくとも20日である。他の態様において、救護治療までの期間の長さは、投与最終日から少なくとも25日である。
【0018】
幾つかの態様において、上記リポソームアミカシン処方物は、エッグホスファチジルコリン(EPC)、エッグホスファチジルグリセロール(EPG)、エッグホスファチジルイノシトール(EPI)、エッグホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水添エッグホスファチジルコリン(HEPC)、水添エッグホスファチジルグリセロール(HEPG)、水添エッグホスファチジルイノシトール(HEPI)、水添エッグホスファチジルセリン(HEPS)、水添ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水添ホスファチジン酸(HEPA)、水添大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水添大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水添大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水添大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水添大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水添大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ-オレイルホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、トコフェロール、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質のアンモニウム塩、グリセライドのアンモニウム塩、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)及びジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロプ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ホスファチジルグリセロール(PGs)、ホスファチジン酸(PAs)、ホスファチジルイノシトール(PIs)、ホスファチジルセリン(PSs)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、及びこれらの混合物からなる群から選択される脂質を含む。他の態様において、該リポソームアミカシン処方物は、リン脂質及びステロール、例えばDPPC及びコレステロールを含む。別の態様において、該リポソームアミカシン処方物は、DPPCとコレステロールとを、質量基準で約2:1なる比率で含む。幾つかの態様において、該リポソームアミカシン処方物は、質量基準で約0.5〜約1.0なる範囲、約0.5〜約0.7なる範囲、又は約0.6なる脂質対薬物の比を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、カットオフ径の関数として、インパクタステージ上に集められた、リポソームアミカシンの霧化物の質量分布を示す図である。表15の3種のリポソームアミカシンロットの凡例(1、2及び3として表した)を、イーフロー(eFlow)噴霧機及びACI装置(塗潰された記号)又はLCスター(Star)噴霧機及びNGI装置(白抜きの記号)と共に使用した。
【図2】図2は、リポソームアミカシン75mg/mL又はトブラマイシンを吸入した後の、log10CFU/ラット肺における低下を示す図である。記号は、寒天ビーズ中のPA3064の滴注後の18日目、塩水又は上記抗生物質の1種の最終吸入期後の3日目における、log10CFU/各ラットの値を表す。2.0 log10CFUにおける値は、この方法における肺中の細菌の検出限界を表す。図におけるバーは、各群の平均値を表す。該平均及び標準偏差並びに両側t-テストの結果は、マイクロソフト(Microsoft)社のエクセル(Excel)ソフトウエアを用いて計算した。
【図3】図3は、18日間に渡りリポソームアミカシン又はトブラマイシンを吸入した後の、log10CFU/ラット肺における低下を示す図である。上記抗生物質の等価な用量を、該吸入療法によって投与したが、投与は異なるスケジュールで行った。トブラマイシンは、28日間に渡り一日当たり全体で104分間に渡り、毎日BID投与された。リポソームアミカシンは、塩水と同様に、28日間に渡り、1日1回80分間投与された(Q1Dx28)。リポソームアミカシンは、また28日間に渡り、1日1回、1日置きに160分間投与し(Q2Dx14)、又は1日1回、連続的に14日間に渡り160分間投与(Q1Dx14)し、次いで安楽死させるまで観測を続けた。記号は、寒天ビーズ中のP.エルギノーザ3064の滴注後の35日目における、log10CFU/各ラット肺の値を示す。平均及び標準偏差並びに両側t-テストの結果は、マイクロソフト(Microsoft)社のエクセル(Excel)ソフトウエアを用いて計算した。
【図4】図4は、研究4に関する研究計画を示し、ここでは、患者に、28日間に渡り毎日リポソームアミカシンを投与し、引続き投与最終日後の28日間に渡り監視を行った。
【図5】図5は、用量280mgにてアミカシンの投与を受けた小児患者における、ベースラインを越える酸素飽和濃度の増加割合(%)を、プラセボを用いた場合と比較して示したグラフである。
【図6】図6は、用量560mgにてアミカシンの投与を受けた小児患者における酸素飽和濃度を、プラセボを用いた場合と比較して示したグラフである。
【図7a】図7aは、プラセボ投与群におけるFEV1によって測定した、年齢による肺機能の変化を示すグラフである。本研究の280及び560mgのアミカシンアーム(arms)両者に対する、プラセボに関するデータをプールし、かつ年齢で割った。同様に、280及び560mgのアミカシンアーム両者に対する、アリケース(ArikaceTM)に関するデータをプールし、かつ年齢で割った。
【図7b】図7bは、吸入によるリポソームアミカシンの投与を受けた患者における、年齢による肺機能の変化を示すグラフである。
【図8】図8は、560及び280mgのアミカシン投与群におけるFEV1(mL単位で測定)の変化を、該プラセボ投与群と比較したグラフである。
【図9】図9は、560及び280mgのアミカシン投与群における、ベースラインに対する百分率としての、FEV1の変化を、該プラセボ投与群と比較したグラフである。
【図10】図10は、全ての患者におけるlog10CFUの変化を示すグラフである。
【図11】図11は、ムコイド菌株に関するlog10CFUの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I. 定義
便宜的に、本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例及び添付した特許請求の範囲において使用する幾つかの用語を、ここに集めておく。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読まれ、また当業者によって理解されるべきものである。特に定義されない限り、ここで使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、当業者によって普通に理解されるものと同様の意味を持つ。
用語「肺疾患」とは、対象の気道、特に対象の肺に関連するあらゆる疾患、病気又は他の不健康な状態を意味する。一般的に、肺性の窮迫は、呼吸困難をもたらす。
用語「治療」とは、当分野において認識されており、また任意の状態又は疾患の少なくとも一つの症状の治癒並びに改善を意味する。
用語「予防的」又は「治療的」処置とは、当分野において認識されており、また宿主に対する、1又はそれ以上の対象とする組成物の投与を意味する。該組成物が対象とする望ましからぬ状態(例えば、該宿主動物の他の望ましからぬ状態又は疾患)の、臨床的な出現以前に投与される場合には、該処置は予防であり、即ち該組成物は、該宿主を、該望ましからぬ状態の発現から保護するものであり、一方で該望ましからぬ状態の発現後に投与される場合には、該処置は治療(即ち、該処置は、該既存の望ましからぬ状態又はこれに起因する副作用を減じ、改善しあるいは維持することを意図する)である。
【0021】
用語「治療上有効な用量」及び「治療上有効な量」とは、患者における症状の防止又は改善、あるいは所望の生物学的な利益、例えば改善された臨床的徴候、疾患の発症の遅延、細菌数の低減等をもたらす、化合物の量を意味する。
用語「FEV1(値)」は、当分野において肺機能の尺度として周知であり、また1秒間における最大努力呼気量を意味する。ここで使用する該FEV1値は、mL単位で測定され、またベースラインからの%変化、例えば治療前の値からの変化によっても測定される。
上記の対象とする方法によって処置(治療)すべき「患者」、「対象」又は「宿主」とは、ヒト又はヒト以外の動物を意味することができる。
用語「哺乳動物」とは、当分野において公知であり、また例示的な哺乳動物は、ヒト、霊長類、牛、豚、犬、猫、及び齧歯目動物(例えば、マウス及びラット)を含む。
用語「生物学的利用性」とは、当分野において認識されており、また本発明の一形態であって、その、又は投与されたその一部が、投与された対象又は患者によって吸収され、組込まれ、あるいはさらに生理的に利用され得ることを意味する。
【0022】
用語「製薬上許容される塩」とは、当分野において認識されており、また化合物の、比較的無害な、無機又は有機酸付加塩、例えば本発明の組成物中に含まれているものを意味する。
用語「製薬上許容される担体」とは、当分野において認識されており、またある器官、又はその本体の一部、他の器官、又はその本体の一部を由来とする、任意の対象組成物又はその成分の担持又は搬送に関与する、製薬上許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば液状又は固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶剤又は封入材料を意味する。各担体は、該本発明の組成物及びその成分と相溶性であるという意味で「許容性」であり、また患者に対して非-損傷性である必要がある。製薬上許容される担体として機能し得る物質の幾つかの例は、以下に列挙するものを包含する:(1) 糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2) デンプン、例えばコーンスターチ及びポテトスターチ;(3) セルロース及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセテート;(4) 粉末化トラガカンス;(5) モルト;(6) ゼラチン;(7) タルク;(8) 賦形剤、例えばココアバター及び坐剤用ワックス;(9) オイル、例えばピーナッツオイル、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10) グリコール、例えばプロピレングリコール;(11) ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マニトール及びポリエチレングリコール;(12) エステル、例えばエチルオレエート及びエチルラウレート;(13) 寒天;(14) 緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15) アルギン酸;(16) 発熱因子を含まない水;(17) 等張性塩水;(18) リンゲル液;(19) エチルアルコール;(20) リン酸緩衝液;及び(21) 薬剤処方物において使用される、他の無害な相溶性物質。
【0023】
II. リポソームアミカシン
本願明細書で開示した方法において有用なリポソームアミカシン処方物は、例えばU.S.公開特許出願第2006/0073198号又は同第2008/0089927号に記載されているようにして調製することができる。これら公開特許出願両者を、参考としてここに組入れる。一般に、アミカシンは、製薬上許容される塩、例えばアミカシンの硫酸塩として使用される。
本発明の組成物において使用される上記脂質は、合成、半-合成又は天然産の脂質であり得、その例は、リン脂質、トコフェロール、ステロイド、脂肪酸、糖タンパク質、例えばアルブミン、アニオン性脂質及びカチオン性脂質を含む。該脂質は、アニオン性、カチオン性、又は中性であり得る。一態様において、該脂質処方物は、実質的にアニオン性脂質を含まず、実質的にカチオン性脂質を含まず、あるいはこれら両者を含まないものである。一態様において、該脂質処方物は、中性脂質のみを含む。もう一つの態様において、該脂質処方物は、アニオン性脂質を含まず、カチオン性脂質を含まず、あるいはこれら両者を含まないものである。他の態様において、該脂質は、リン脂質である。リン脂質は、エッグホスファチジルコリン(EPC)、エッグホスファチジルグリセロール(EPG)、エッグホスファチジルイノシトール(EPI)、エッグホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、及びエッグホスファチジン酸(EPA);同等な大豆等価物、大豆ホスファチジルコリン(SPC);SPG、SPS、SPI、SPE、及びSPA;水添エッグ及び大豆等価物(例えば、HEPC、HSPC)、12〜26個の炭素原子を持ち、2及び3か所のグリセロール位置における脂肪酸のエステル結合、及びコリン、グリセロール、イノシトール、セリン、エタノールアミンを含むグリセロールの1つの位置に異なる頭基で作られたその他のリン脂質、並びに対応するホスファチジン酸を含む。これら脂肪酸上の鎖は、飽和又は不飽和であり得、また該リン脂質は、異なる鎖長及び異なる不飽和度を持つ複数の脂肪酸から作られていてもよい。特に該処方物を含む本発明の組成物は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、天然産の長鎖界面活性剤を持つ主構成成分並びにジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)を含むことができる。その他の例は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、及びジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)及びジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン((DOPE)及び混合リン脂質、例えばパルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)とパルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)との混合物、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、セラニド(seranide)、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン及び単一アシル化リン脂質、例えばモノ-オレイルホスファチジルエタノールアミン(MOPE)を含む。
【0024】
使用する脂質は、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質及びグリセライド、ホスファチジルグリセロール(PGs)、ホスファチジン酸(PAs)、ホスファチジルコリン(PCs)、ホスファチジルイノシトール(PIs)、及びホスファチジルセリン(PSs)を含むことができる。該脂肪酸は、飽和又は不飽和であり得る、炭素原子数12〜26の炭素鎖長を持つ脂肪酸を含む。その具体例の幾つかは、以下に列挙するものを含む:ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン及びステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)及びジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロプ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)及び1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)。PGs、PAs、PIs、PCs及びPSsの例は、DMPG、DPPG、DSPG、DMPA、DPPA、DSPA、DMPI、DPPI、DSPI、DMPS、DPPS及びDSPS、DSPC、DPPG、DMPC、DOPC、エッグPCを含む。
もう一つの態様において、該リポソームは、ホスファチジルコリン(PCs)、ホスファチジルグリセロール(PGs)、ホスファチジン酸(PAs)、ホスファチジルイノシトール(PIs)及びホスファチジルセリン(PSs)からなる群から選択される脂質を含む。
【0025】
もう一つの態様において、該脂質は、エッグホスファチジルコリン(EPC)、エッグホスファチジルグリセロール(EPG)、エッグホスファチジルイノシトール(EPI)、エッグホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水添エッグホスファチジルコリン(HEPC)、水添エッグホスファチジルグリセロール(HEPG)、水添エッグホスファチジルイノシトール(HEPI)、水添エッグホスファチジルセリン(HEPS)、水添ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水添ホスファチジン酸(HEPA)、水添大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水添大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水添大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水添大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水添大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水添大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ-オレイルホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、トコフェロール、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質のアンモニウム塩、グリセライドのアンモニウム塩、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)及びジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロプ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
もう一つの態様において、該リポソームは、ホスファチジルコリンを含む。該ホスファチジルコリンは、DOPC又はPOPC等のように不飽和であり得、あるいはDPPC等のように飽和であってもよい。もう一つの態様において、該リポソームは、ステロールを含まないものである。一態様において、該リポソームは、本質的にホスファチジルコリンとステロールとからなる。もう一つの態様において、該リポソームは、本質的にDPPCとコレステロールとからなる。
ホスファチジルコリン、例えばDPPCを含むリポソーム又は脂質抗-感染性処方物は、肺中の細胞、例えば肺胞マクロファージによる取込みを補助し、また肺中での該抗-感染性薬剤の放出維持を助ける(Gonzales-Rothi等(1991))。負に帯電した脂質、例えばPGs、PAs、PSs、及びPIs等は、粒子の凝集を減じる以外にも、該吸入処方物の持続放出特性、並びに全身的な摂取のために、肺を横切って該処方物を輸送する(トランスサイトーシス(transcytosis))上である役割を演じることができる。
如何なる特別な理論にも拘束されるものではないが、該脂質が中性脂質を含み、即ち負に帯電した又は正に帯電したリン脂質を含まない場合、該リポソーム含有処方物は、改善された肺による取込み性を持つ。例えば、該リポソームは、該脂質が中性脂質のみを含む場合には、生体膜又は粘液層内への改善された浸透性を持つことができる。例示的な中性脂質は、上記のホスファチジルコリン、例えばDPPC及びステロール、例えばコレステロールを含む。
【0027】
IV. 治療法
本発明は、治療を要する対象における、肺の状態を治療する方法の提供を目的としており、該方法は、該対象に、上記リポソーム抗生物質処方物の任意の一種を、その有効量で投与する工程を含む。幾つかの態様において、該肺の状態は、細菌感染である。幾つかの態様において、本発明の方法は、治療を要する患者に、毎日、吸入により、リポソームアミカシン処方物(本明細書においては、「リポソームアミカシン」とも呼ぶ)の有効量を投与する工程を含む。幾つかの態様において、該吸入による投与は、リポソーム処方物を霧化する工程を含む。
幾つかの態様において、該リポソームアミカシン処方物は、所定期間に渡り毎日投与され、次いでリポソーム処方物を投与しない第二の期間(非-投与期間)を伴う。例えば、幾つかの態様において、本発明の肺疾患の治療方法は、該患者に、少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物を有効用量にて投与する工程を含み、ここで
該治療サイクルは、15〜75日間の投与期間及びこれに伴う15〜75日間に及ぶ非-投与期間を含み;また
該有効用量は、該投与期間中毎日、100〜2,500mgなる量のアミカシンを含む。
【0028】
幾つかの態様において、上記治療サイクルは、患者に対して少なくとも2回行われる。他の態様では、該治療サイクルは、3、4、5、6、又はそれ以上の回数に渡り行われる。
該投与期間中、リポソームアミカシンは、毎日投与される。幾つかの態様において、リポソームアミカシンは、該投与期間中、2日に1回又は3日に1回の割合で投与することができる。上で説明したように、該投与期間は、15〜75日なる範囲の期間であり得る。幾つかの態様において、該投与期間は、15〜35日間なる範囲、あるいは20〜35日間なる範囲内にある。幾つかの態様において、該投与期間は、20〜30日間なる範囲、25〜35日間なる範囲又は25〜30日間なる範囲内にある。他の態様では、該投与期間は、約25、26、27、28、29又は30日間である。別の態様において、該投与期間は、約28日間である。
上記非-投与期間中、該リポソームアミカシン処方物は、該患者に投与されない。幾つかの態様において、該非-投与期間は、15日間又はそれ以上、例えば15〜75日間なる範囲、15〜35日間なる範囲、又は20〜35日間なる範囲内にある。他の態様では、該非-投与期間は、20〜30日間なる範囲、25〜35日間なる範囲又は25〜30日間なる範囲にある。別の態様において、該非-投与期間は、約25、26、27、28、29又は30日間である。別の態様において、該非-投与期間は、約28日間であり、一方でさらに別の態様において、該非-投与期間は、少なくとも29日間である。
【0029】
幾つかの態様において、該非-投与期間は、25〜75日間なる範囲、35〜75日間なる範囲、又は45〜75日間なる範囲内にある。他の態様では、該非-投与期間は、50〜75日間なる範囲、50〜70日間なる範囲、50〜65日間なる範囲又は50〜60日間なる範囲内にある。別の態様において、該非-投与期間は、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60日間であり、一方で他の態様では、該非-投与期間は、約56日間である。
幾つかの態様において、該投与期間は、約28日間であり、かつ該非-投与期間は、約28日間であり、一方で別の態様において、該投与期間は、約28日間であり、かつ該非-投与期間は、約56日間である。
幾つかの態様において、上記有効用量は、該投与期間中の各日々において、250〜1,500mgなるアミカシン、250〜1,000mgなるアミカシン、250〜750mgなるアミカシン、又は250〜700mgなるアミカシンを含む。他の態様では、該有効用量は、アミカシン約280〜約560mgなる範囲の量である。他の態様において、該有効用量は、約230〜約330mgなる範囲、又は約510〜約610mgなる範囲内にある。他の態様において、該アミカシンの有効用量は、毎日のアミカシンの量として、約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700又は750mgである。他の態様において、該アミカシンの有効用量は、約280又は約560mgである。
【0030】
幾つかの態様において、該投与期間は、約28日間であり、また該アミカシンの用量は、約280〜約560mgである。他の態様において、該投与期間は、約28日間であり、該非-投与期間は、約28日間であり、また該用量は、約280〜約560mgなる範囲にある。他の態様において、該投与期間は、約28日間であり、該非-投与期間は、約56日間であり、また該用量は、約280〜約560mgなる範囲にある。
幾つかの態様において、上記肺疾患は、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺感染、嚢胞性線維症、α-1-抗-トリプシン酵素欠乏症及びこれらの組合せからなる群から選択される。幾つかの態様において、該肺の状態は、嚢胞性線維症である。他の態様において、該肺の状態は、細菌による肺感染、即ちシュードモナス(Pseudomonas)属(例えば、P.エルギノーザ(aeruginosa)、P.パウシモビリス(paucimobilis)、P.プチダ(putida)、P.フルオレッセンス(fluorescens)、及びP.アシドボランス(acidovorans))、スタフィロコッカス属、メチシリン-耐性スタフィロコッカスオーレウス(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)、ストレプトコッカス属(ストレプトコッカスニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)を含む)、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)、ヘモフィルス(Haemophilus)、エルシニアペソス(Yersinia pesos)、ブルコルデリアシュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)、B.セパシア(B.cepasia)、B.グラジオリ(B.gladioli)、B.マルチボランス(B.multivorans)、B.ベトナミエンシス(B.vietnamiensis)、マイコバクテリウムチューバークローシス(Mycobacterium tuberculosis)、M.アビウムコンプレックス(M. avium complex)(MAC)(M.アビウム及びM.イントラセルラレ(M. intracellulare))、M.カンザシー(M. kansasii)、M.ゼノピ(M. xenopi)、M.マリナム(M. marinum)、M.ウルセランス(M. ulcerans)、又はM.フォーチュイタムコンプレックス(M. fortuitum complex)(M.フォーチュイタム及びM.ケロネイ(M. chelonei)感染症である。幾つかの態様において、該感染症は、P.エルギノーザ感染症であり、一方他の態様において、該感染症は、非-結核性マイコバクテリア感染症である。該肺感染は、嚢胞性線維症を伴うものでも、これを伴わないものでもよい。従って、幾つかの態様において、該肺の状態は、嚢胞性線維症及びP.エルギノーザ等による肺感染症両者である。他の態様において、該肺の状態は気管支拡張症である。この気管支拡張症は、嚢胞性線維症を伴うものでも、伴わないものでもよい。
【0031】
本発明の方法は、肺疾患の部位においてアミカシンの有利な濃度を与え、一方で該薬物に対する全身的な暴露を制限し、また驚くほどに長い期間に渡り、該対象に持続放出するという利益を与える。如何なる特別な理論にも拘泥するつもりはないが、ここに記載する本発明の方法による、アミカシンの投与は、該対象の肺における「貯蔵」効果をもたらすものと考えられる。具体的には、該リポソーム粒子は、CF痰を通して、また該細菌の生体膜内に浸透及び拡散するのに十分に小さく、また適当な脂質処方物を含んでいるものと考えられる。該リポソームは、天然リポソーム内に封入されたカチオン性アミカシンを保護して、該負に帯電した痰/生体膜との相互作用を最小化する。この保護がないと、その
生物学的利用性が低下してしまう。さらに、P.エルギノーザ由来の有毒の因子(ラムノリピド)があり(Davey等, 2003)、これが、該リポソームからアミカシンを遊離させる。従って、比較的高い濃度の薬物が、細菌の巨大コロニー環境に送達されるものと考えられる。
【0032】
その上、リポソームアミカシンの吸入は、薬物/脂質処方物の吸入に適合する応答として、用量依存性のマクロファージの補充現象へと導くものと考えられる。肺胞マクロファージ(これらは、リポソームアミカシン処理されたラット内で、機能的に正常であることが立証されている)の存在は、CF患者において特に有利であり得る。CF患者は、その肺内部に低下された数量の、及び恐らく低い機能性を持つマクロファージを持つことが知られており、これは、P.エルギノーザによる肺感染の慢性化に、及びこの個体群における非-結核性マイコバクテリア感染のより高い感染率に寄与する恐れがある。この用量依存性のマクロファージ補充現象は、また本発明の方法を用いて観測される、上記持続効果に対しても寄与する可能性がある。具体的には、肺中の該マクロファージは、リポソームアミカシンを取込み、次いで該肺内部に所定期間止まり、さらに該マクロファージによるリポソームアミカシンの遊離を伴う。P.エルギノーザによって慢性的に感染したCF患者におけるリポソームアミカシンの臨床的研究(以下の例において説明される)は、安全性、許容性及び肺機能及び呼吸系の症状における用量-依存性の改善を示すことが立証されており、また28日間の治療の終了時点における痰中の細菌密度の低下をもたらすことが明らかにされた。この肺機能における改善は、用量560mgなるリポソームアミカシンによる治療の完了後(56日目)に、少なくとも28日間持続した。このことは、持続治療効果の存在を示すものである。
【0033】
従って、本発明の方法は、幾つかの態様において、血中及び痰における有利なアミカシン濃度を与える。例えば、本発明の方法は、アミカシンによる比較的低い全身的な暴露をもたらし、一方で該肺の疾患状態にある部位において、高い、持続的なアミカシン濃度を与える。例えば、幾つかの態様において、該患者は、上記投与期間中に、約25mcg/mL未満の、血清Cmaxを持つ。他の態様において、該血清Cmaxは、該投与期間中、20、15、10、5又は2mcg/mL未満である。
幾つかの態様において、該患者は、該投与期間中、又は投与後の所定の持続期間中、例えば少なくとも15日間に渡り、痰1g当たり少なくとも約500mcg/mLなるアミカシンの痰Cmaxを持つ。他の態様において、該アミカシンの痰Cmaxは、痰1g当たり少なくとも750、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000又は3,500mcg/gである。
該肺疾患が、肺感染を含む場合、本発明は、また所定の持続期間に渡り、肺中の細菌のコロニー形成単位(CFU)の低下をもたらす。例えば、該CFUは、ベースライン値と比較して低下される。幾つかの態様において、該患者は、上記投与期間の終了後、少なくとも15日間に渡り、少なくとも約0.5なる、肺中の細菌感染のlog10CFUにおける低下を示す。他の態様において、該log10CFUにおける低下は、少なくとも1.0、1.5、2.0又は2.5である。特にシュードモナス(Pseudomonas)感染は、とりわけ嚢胞性線維症に罹っている患者において、「粘液性」シュードモナスとして知られている、大きなコロニーを形成する可能性がある。幾つかの態様において、該CFUは、シュードモナス感染の粘液性菌株において、上記の如く低下する。
【0034】
幾つかの態様において、該患者は、上記投与期間終了後少なくとも15日間に渡り、肺機能における改善を経験する。例えば、該患者は、一秒間における最大努力呼気量(FEV1)における増加、血中酸素飽和濃度における増加、又はこれら両者を体験する。幾つかの態様において、該患者は、上記治療サイクル前のFEV1を、少なくとも5%又は少なくとも10%越えて増大するFEV1を持つ。他の態様において、FEV1は、5〜50%なる範囲、5〜25%なる範囲、又は5〜20%なる範囲の割合で増大する。他の態様において、FEV1は、5〜15%なる範囲又は5〜10%なる範囲の割合で増大する。他の態様において、FEV1は、10〜50%なる範囲、10〜40%なる範囲、10〜30%なる範囲、又は10〜20%なる範囲の割合で増大する。FEV1は、しばしばmL単位で測定される。従って、幾つかの態様において、FEV1は、該治療サイクル前のFEV1と比較して、少なくとも25mLだけ増大する。幾つかの態様において、FEV1は、25〜500mLなる範囲、25〜400mLなる範囲、25〜300mLなる範囲又は25〜 mLなる範囲の量だけ増大する。他の態様において、FEV1は、50〜500mLなる範囲、50〜400mLなる範囲、50〜300mLなる範囲、50〜200mLなる範囲、50〜100mLなる範囲の量だけ増大する。
幾つかの態様において、血中酸素飽和濃度は、前記投与前の血中酸素飽和濃度と比較して、対象において増大する。幾つかの態様において、血中酸素飽和濃度は、前記投与期間後少なくとも15日間に渡り、少なくとも1%、又は少なくとも2%だけ増大する。他の態様において、該血中酸素飽和濃度は、約1〜50%なる範囲、1〜25%なる範囲、1〜20%なる範囲、1〜15%なる範囲、1〜10%なる範囲又は1〜5%なる範囲の割合だけ増大する。他の態様において、該血中酸素飽和濃度は、約2〜10%なる範囲又は2〜5%なる範囲の割合だけ増大する。
【0035】
上記の持続期間は、該投与期間後少なくとも20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75日間であり得る。他の態様において、該持続期間は、該投与期間後少なくとも28、35、42、48又は56日間である。他の態様において、該持続期間は、15〜75日間、15〜35日間、又は20〜35日間である。他の態様において、該持続期間は、20〜30日間、25〜35日間又は25〜30日間である。他の態様において、該持続期間は、約25、約26、約27、約28、約29又は約30日間、あるいは約28日間、又は少なくとも29日間である。他の態様において、該持続期間は、25〜75日間なる範囲、35〜75日間なる範囲、又は45〜75日間なる範囲にある。他の態様において、該持続期間は、50〜75日間なる範囲、50〜70日間なる範囲、50〜65日間なる範囲又は50〜60日間なる範囲にある。他の態様において、該持続期間は、約50日間、約51日間、約52日間、約53日間、約54日間、約55日間、約56日間、約57日間、約58日間、約59日間、又は約60日間であり、一方他の態様において、該持続期間は、約56日間である。
【0036】
幾つかの態様において、上記方法は、有利には該患者における肺疾患の病状再発の低い発生率をもたらす。該方法は、また有利なことに、肺疾患の病状再発までの期間を増大する。例えば、幾つかの態様において、該肺疾患の病状再発までの期間は、少なくとも約20日である。他の態様において、該病状再発までの期間は、20〜100日間なる範囲にある。他の態様において、該病状再発までの期間は、25〜100日間なる範囲、30〜100日間なる範囲、35〜100日間なる範囲又は40〜100日間なる範囲にある。他の態様において、該病状再発までの期間は、25〜75日間なる範囲、30〜75日間なる範囲、35〜75日間なる範囲又は40〜75日間なる範囲にある。他の態様において、該病状再発までの期間は、30〜60日間である。
幾つかの態様において、救護治療の発生率は低下される。他の態様において、救護治療までの期間は、例えば該患者が肺感染に罹っている場合には、短縮され、また感染防止救護治療までの期間は短縮される。幾つかの態様において、該期間の長さは、20〜100日間である。他の態様において、該期間の長さは、25〜100日間なる範囲、30〜100日間なる範囲、35〜100日間なる範囲、又は40〜100日間なる範囲にある。他の態様において、該期間の長さは、25〜75日間なる範囲、30〜75日間なる範囲、35〜75日間なる範囲、又は40〜75日間なる範囲にある。他の態様において、該期間の長さは、30〜60日間である。
【0037】
幾つかの態様において、上記方法において使用される、前記リポソームアミカシン処方物は、アミカシン及び任意の上記脂質を含む。幾つかの態様において、該リポソームアミカシン処方物は、リン脂質とステロール、例えばDPPC及びコレステロールを含む。他の態様において、該リポソームアミカシン処方物は、質量基準で、約2:1なる比率で、DPPC及びコレステロールを含む。幾つかの態様において、該リポソームアミカシン処方物は、質量基準で、約0.5〜約1.0なる範囲、約0.5〜0.7なる範囲、又は約0.6なる、脂質対薬剤の比を持つ。他の態様において、該リポソームアミカシン処方物は、約0.3〜1.0なる範囲の脂質対薬剤の質量比を持ち、一方で他の態様において、脂質対薬剤の比は、質量基準で、約0.5〜0.7なる範囲、又は約0.65である。該処方物中の該リポソームは、100〜1,000nmなる範囲、100〜500nmなる範囲、200〜500nmなる範囲、又は約300nmなる修正された径(amend diameter)を持つことができる。幾つかの態様において、該リポソームアミカシン処方物中のアミカシンの全濃度は、約20〜100mg/mLなる範囲、20〜90mg/mLなる範囲、30〜90mg/mLなる範囲、30〜80mg/mLなる範囲、又は40〜80mg/mLなる範囲内にある。他の態様において、該濃度は、約30、40、50、60、70、80又は90mg/mLである。
【0038】
幾つかの態様において、上記方法は、
該患者に、少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物の有効用量を投与する工程を含み;ここで
該治療サイクルは約28日間の投与期間、これに続く約28日間の非-投与期間を含み;
該有効用量は、該投与期間中毎日、約280〜約560mgなる範囲の量のアミカシンを含み;及び
該リポソームアミカシン処方物は、DPPC及びコレステロールを約2:1なる比にて、また約0.5〜約0.7なる範囲の脂質対アミカシンの比にて含む。
他の態様において、該方法は、
該患者に、少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物の有効用量を投与する工程を含み;ここで
該治療サイクルは約28日間の投与期間、これに続く約56日間の非-投与期間を含み;
該有効用量は、該投与期間中毎日、約280〜約560mgなる範囲の量のアミカシンを含み;及び
該リポソームアミカシン処方物は、DPPC及びコレステロールを約2:1なる比にて、また約0.5〜約0.7なる範囲の脂質対アミカシンの比にて含む。
【0039】
他の態様において、本発明は、対象内に持続的治療効果をもたらす方法に係り、該方法は、該患者に少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物の有効用量を投与する工程を含み;ここで該治療サイクルは15〜75日間なる範囲の投与期間、これに続く15〜75日間なる範囲の非-投与期間を含み;かつ該有効用量は、該投与期間中毎日、100〜2,500mgなる範囲の量のアミカシンを含む。
もう一つの態様において、本発明は、肺疾患状態にある患者中の酸素飽和濃度を改善する方法に係り、該方法は、該患者に少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物の有効用量を投与する工程を含み;ここで該治療サイクルは15〜75日間なる範囲の投与期間、これに続く15〜75日間なる範囲の非-投与期間を含み;かつ該有効用量は、該投与期間中毎日、100〜2,500mgなる範囲の量のアミカシンを含む。
【0040】
もう一つの態様において、本発明は、肺疾患状態にある患者中のFEV1値を改善する方法に係り、該方法は、該患者に少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物の有効用量を投与する工程を含み;ここで該治療サイクルは15〜75日間なる範囲の投与期間、これに続く15〜75日間なる範囲の非-投与期間を含み;かつ該有効用量は、該投与期間中毎日、100〜2,500mgなる範囲の量のアミカシンを含む。
他の態様において、本発明は、細菌による肺感染に罹患した患者の、肺又は痰における細菌密度を減じる方法に係り、該方法は、該患者に少なくとも1回の治療サイクルに渡り、霧化されたリポソームアミカシン処方物の有効用量を投与する工程を含み;ここで該治療サイクルは15〜75日間なる範囲の投与期間、これに続く15〜75日間なる範囲の非-投与期間を含み;かつ該有効用量は、該投与期間中毎日、100〜2,500mgなる範囲の量のアミカシンを含み;また該細菌密度は、該投与の最終日の後、少なくとも15日間に渡り低下された状態に維持される。
【実施例】
【0041】
材料及び方法に関する緒言
吸入用の、脂質を主成分とするあるいはリポソームアミノグリコシド、例えばアミカシンを含む処方物は、吸入による投与のために工夫されたナノスケールのリポソーム担体内に封入された、徐放性処方物である。肺及び生体膜内に高濃度のアミカシンを持続放出するという目的にとって、これら処方物の浸透特性は、「遊離」の抗生物質の吸入、例えば吸入されたトブラマイシンを越える幾つかの利点を持つ。アミカシンは、約0.6-0.7:1(w/w)なる目標とする脂質対薬剤比にて、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及びコレステロールを含むリポソーム内に封入することができる。上記方法において有用な用量約70mg/mLのリポソームアミカシン処方物の例を、以下に示す:
【0042】
【表1】

1:アミカシン硫酸塩(USP)として該処方物に添加。
【0043】
これらの処方物は、米国特許出願公開第2006/0073198号又は同第2008/0089927号に記載されている方法に従って製造することができる。これら公開特許出願両者を、参考としてここに組入れる。
これらの処方物は、肺疾患状態、例えばP.エルギノーザにより引き起こされた慢性的感染状態にあるCF患者の治療において、以下に列挙するものを含む、幾つかの利点を持つ:
1. 高濃度及び持続放出による長い半減期の達成により、肺におけるアミカシンの長い抗生物質作用を達成する能力。
2. 該アミノグリコシドの低い全身的な濃度を維持しつつ、肺におけるアミカシンの有効濃度を達成し、かつ高める能力。
3. 脂質を主成分とするあるいはリポソームアミノグリコシドの固有の特性の結果として、生体膜内での細菌の増殖をより良好に標的とする可能性。
4. 細菌由来の分泌されたホスホリパーゼC及びラムノリピド及び/又は活性化された多形核白血球由来のホスホリパーゼA2又はディフェンシンの目標とする作用による、CF患者の肺の感染部位における、該薬物の付随的な放出。
5. アミカシンは、アミノグリコシド不活化酵素に対する固有の抵抗性を持つ、半-合成アミノグリコシドである。その結果、トブラマイシンに対して耐性である幾つかのP.エルギノーザ菌株は、アミカシンに対する感受性を維持する可能性がある。
6. アミカシンは、他のアミノグリコシドよりも低い、腎皮質アミノグリコシドの蓄積に対して応答性の輸送体であるメガリン(megalin)に対する結合アフィニティーを持ち、結果的に腎毒性に関して低い可能性を持つ。
7. 脂質を主成分とするあるいはリポソームアミノグリコシド処方物の半減期、及び濃度曲線(AUC)下の面積両者における増加は、生体膜浸透と共に、低頻度での投与、高い殺菌活性及び耐性生物の選別に係る低い可能性の達成を可能とするはずである。
【0044】
予備臨床的薬物動態学は、用量60mg/kgなるリポソームアミカシンエーロゾルの投与を受けたラットの肺におけるアミカシンの該AUC(0-48時間)は、吸入によって等価な用量のトブラマイシンの投与を受けたラットの肺におけるトブラマイシンのAUCよりも5倍高いものであった。一般に、該投与された抗生物質の10%が、ラットの肺に沈積される。逆に、等価な用量のトブラマイシンの投与を受けたラットの腎臓における薬物のAUCは、リポソームアミカシンのエーロゾルの投与を受けたラットの腎臓におけるAUCよりも大幅に高いものであった。さらに、ラット及びイヌにおける30-日間の吸入に係る毒物学的な研究により得たデータは、吸入されたリポソームアミカシンについて、如何なる安全性に係る薬理的問題も見られないことを示唆している。
シュードモナス感染に係る14日間のラットモデル研究において、1日おきに14日間に渡り(Q2Dx7)投与された60mg/kgのリポソームアミカシン(75mg/mL)は、他の群よりも効果的に、アミノグリコシドの積算用量の半分を送達するが、これは、1日当たり1回の割で与えられた60mg/kgのリポソームアミカシンと同様に、及び14日間に渡り毎日、1日当たり2回の割合で投与されたトブラマイシンと同様に効果的であった。このモデルにおける28日間の投与により、毎日約60mg/kgなる用量で、又は1日おきに約120mg/kgなる用量でリポソームアミカシンの投与を受けたテスト動物において、CFUにおける等価な減少が見られた。14日間に渡り1日当たり1回の割で約120mg/kgなる用量で投与されたリポソームアミカシンは、28日間に渡り60mg/kg/日なる用量(1日に2回投与)でトブラマイシンを投与した場合と同程度に効果的であったが、このことは、1日当たり1回の割で120mg/kgなる用量で投与されたリポソームアミカシンに関して、高いAUC及び恐らく長期に渡る投与後-抗生物質効果が見られることを示唆している(実施例3を参照のこと)。
【0045】
上記動物モデルにおける、吸入によるリポソームアミカシンの投与は、該細菌のMICを越える肺における増大(AUC)をもたらし、また持続的治療効果の存在、トブラマイシンに比して低い投与頻度、及び短い投与期間を明らかにしている。重大なことに、リポソームアミカシンに関する予備臨床的データは、この特別な処方物が、肺組織からの迅速な排除によって妨害される他の吸入製品よりも有利であり得るという仮説を支持しているものと考えられる。即ち、該他の吸入製品は、高頻度での投薬を要し(Geller, Pitlick等, 2002)、これは患者に対して負担を強い、また患者の忠実な服用を困難にする可能性がある。
さらに、臨床的な経験は、14日間に渡る、1日当たり1回の割で500mgにて投与された、50mg/mLの霧化されたリポソームアミカシンは、十分に許容されるものであり、また肺機能に対して臨床的に有意の効果を引き出し、かつCF患者におけるP.エルギノーザ密度を減少することを明らかにした。また、PKデータの評価は、該500mgなる用量においてさえ、リポソームアミカシンに対する全身的な暴露の程度が極めて低いことを示している。Cmax又はAUC若しくは尿中に回収されたmg単位で表したアミノグリコシドの何れかにより、吸入により投与された、リポソームアミカシンと関連する、アミカシンに対する観測された全身的暴露は、600mg/dのTOBIについて見られた暴露の約1/5〜1/4なる範囲内にあり、またアミカシンの通常の腸管外用量と比較して1/200未満である。これらのデータは、さらに高濃度のアミカシンが、痰において達成されることを示している。痰に関する中央AUC値は、夫々1日目及び14日目において、血清に関する中央AUC値よりも290及び980倍高い値であった。
【0046】
吸入されたリポソームアミカシンは、長期に及び目的とする肺に対する暴露を維持し、また感染部位に対する薬物の取込みを増強する。P.エルギノーザによる慢性的な感染状態にあるCF患者が、50mg/mLなるリポソームアミカシンの多数回の投与を受ける、ヒトに関する臨床段階1b/2aの研究で得たデータを用いて、ここに記載される分析の目標は、(1) 凡その全身的生物学的利用性を含む、アミカシンの全身的暴露を特徴付けるための個体群薬物動態学的モデルを使用し;(2) 痰におけるリポソームアミカシンの性向を特徴付けるために;及び(3) 1秒間における最大努力呼気量(FEV1)における変化、1秒間における予測最大努力呼気量(予測FEV1%)における%で表された変化、努力量の25-75%間の努力呼気流量(FEF25-75%)、及び努力量(FVC)の変化、7日目及び14日目におけるベースラインに対するP.エルギノーザコロニー形成単位(CFU)における変化と、アミカシン暴露との間の、薬物動態学的-薬物速度論的(PK-PD)関係を特徴付けるために、3-倍とした。
リポソームアミカシンを用いた予備臨床的研究
20及び50mg/mLの処方物を用いて、数種の予備臨床的研究を行った。インビトロ及びインビボモデルにおけるリポソームアミカシンの抗-シュードモナス活性を明らかにした。さらに、研究は、シュードモナスによって分泌される毒性因子が、該リポソームからのアミカシンの更なる遊離を容易にすることを確認し、またラット及びイヌの肺におけるアミカシンの沈着及び持続的放出を特徴付けた。これら2つの種におけるリポソームアミカシンの30日間に及ぶ投与の安全性も、確立された。
【0047】
非-臨床的な薬物動態学は、噴霧療法により60mg/kgなる用量のリポソームアミカシンの投与を受けたラットの肺における、アミカシンのAUC(0-48時間)は、等価な用量のトブラマイシンの吸入による投与を受けたラットの肺における、トブラマイシンのAUCよりも5倍高いことを明らかにした。高濃度のアミカシンは、該肺において持続した(150時間に渡り>250μg/mL)が、このことは、貯蔵効果を示唆している。対照的に、トブラマイシンの肺における濃度は、投与中止後6時間以内には検出不可能であった。逆に、等価な用量のトブラマイシンの投与を受けたラットの腎臓における該薬物のAUCは、リポソームアミカシンのエーロゾルの投与を受けたラットのAUCよりも著しく高い値であった。これらテスト動物の血清及び尿におけるアミノグリコシドのAUCにおける有意な差は見られず、血清中の濃度は、24時間後には検出不可能であった。このプロフィールは、意図された持続放出及び霧化されたリポソームアミカシンの投与に伴う肺中のアミカシンの貯蔵効果を支持しており、このことは、恐らく増強された効力プロフィールを表すものである。リポソームアミカシンに関するこれらのデータは、この特別な処方物が、肺組織からの迅速なクリアランスによって妨害される他の吸入製品よりも有利であり得るという仮説を支持しているものと考えられる。即ち、該他の吸入製品は、頻繁な投薬を要し(Geller, Pitlick等, 2002)、これは患者に対して負担を強いるものである。さらに、ラット及びイヌにおける30-日間に及ぶ吸入GLP毒物学的研究から得た毒物動態学的データは、遊離アミカシン治療群と比較して、イヌにおけるアミカシンの肺貯蔵量は15倍に増加することを、匹敵する血漿及び尿濃度と共に示したが、これは、低い全身的な暴露を伴う高い肺における濃縮性を示すものである。
【0048】
リポソームアミカシンの薬物動態学的効果を、インビボにて、シュードモナスによる慢性的な感染状態にあるラットモデルにおいて評価した(Cash, Woods等, 1979)。14日間に渡りシュードモナス感染モデルにおいて、60mg/kgなる用量のリポソームアミカシン(75mg/mL)を、14日間に渡り1日おきに投与した(Q2Dx7)。この治療法式は、60mg/kgなる用量のリポソームアミカシン(14日間に渡り1日1回あて投与)及びトブラマイシン(14日間に渡り1日当たり2回投与)と同様に有効であった。投薬を28日間に延長した場合、毎日約60mg/kgなる用量で、又は1日おきに約120mg/kgなる用量でリポソームアミカシンの投与を受けた動物に関して、CFUにおける同等な低下が観測された。また、本実験において、14日間に渡り1日1回あて、120mg/kgなる用量で投与されたリポソームアミカシンは、28日間に渡り60mg/kg/日(1日当たり2回投与)なる用量のトブラマイシンと同程度に有効であった。これは、1日1回あて、120mg/kgなる用量で投与されたリポソームアミカシンによる、高いAUC及び長期に渡る投与後の抗生物質効果を示すものであった。従って、これらの予備臨床的薬物動態学的データは、吸入による薬物の肺へのサイト-特異的送達によって増強された、持続的抗-生物的利益と一致するものであった。
従って、吸入によるリポソームアミカシンの投与は、特にトブラマイシンと比較して低い投与頻度、及び短い投薬期間をもたらす能力と共に、該細菌のMICの数倍の高い肺濃度(AUC)をもたらす。
【0049】
実施例1
段階1b/2a研究
この集団PK分析に使用したデータは、2つのヒト臨床的段階1b/2a研究から得たものであり、ここで該臨床的段階1b/2a研究において、慢性的にP.エルギノーザに感染しているCF患者には、14日間に渡り、全体で500mgのリポソームアミカシンを毎日(2回の20分間に渡る投与期間とその間の5分間の休止)投与された。
アミカシン血清サンプルを、投与前、及び投与後1、2、4、6、8、12及び24時間後に、1日目及び14日目に採集し、一方尿サンプルは、6時間間隔で、24時間の期間に渡り1日目及び14日目に採集した。痰のサンプルも、1日目及び14日目に、投薬直後、投与後4〜6時間の間、及び次の日の投薬前に、並びに4日目、21日目及び28日目に採集した。血清、痰及び尿サンプルを、液体クロマトグラフィー-マススペクトル分析/マススペクトル分析(LC-MS/MS)法を用いて、アミカシンにつき分析した。
肺機能テスト(PFT)を、スクリーニング中(-14日目〜0日)、及びベースライン(即ち、1日目の投薬前)及び1日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目、及び42日目に実施した。微生物学的検査のために、ベースライン及びこれら経過日各々において痰サンプルをも採集した。追加のPFTを、1日目及び14日目の投薬後1.5時間及び3時間の時点において実施した。
【0050】
薬理動態学的研究
データは、S-ADAPT 1.53において行われているように、モンテカルロパラメータ期待値最大化法(Monte Carlo Parametric Expectation Maximization: MC-PEM)を用い、先ず該血漿濃度を合わせ、次いで血清及び尿データを同一モデル化することにより、候補PKモデルによって適合させた。モデルの識別は、該データの適合及び目標関数における変化に基いていた。血清アミカシン値に関する、定常状態における曲線(AUC)下方の24時間の面積を、最終の集団PKモデルからのポスト-ホックパラメータ評価値を用いて算出した。患者人口統計及び個々のポスト-ホックパラメータ間の共変量関係を、先ずグラフにより評価し、次いでシスタット(SYSTATTM) 11(CA州、リッチモンドの、シスタットソフトウエア(SYSTAT Software)社製)を用いて作成した統計的モデルによって評価した。1日目及び14日目の0〜24時間なる範囲の痰AUC値を、線形台形公式を用いて得た。
該PK-PD分析のための従属変数は、ベースライン(1日目における薬物投与前)に対する、7日目及び14日目の、FEV1に対するPFT値における変化、予想されたFEV1%値、FEF25-75%及びFVC並びにこれら各日にちにおけるベースラインに対するlog10CFUにおける変化を含んでいた。評価した独立変数は、P.エルギノーザに関する、ベースライン最小阻害濃度(MIC)対、血清及び尿に関する平均の24時間のAUCの比:AUC/MIC比を含んでいた。該平均の24時間の血清及び尿のAUCは、該1日目及び14日目の値の平均をとることにより計算した。
【0051】
1標本t-テストを利用して、上記従属変数各々に関する、ベースラインからの平均の変化の統計的有意性を評価した。スピアマンの順位相関係数(RS)を用いて、各従属変数と血清及び尿に関するAUC:MIC比との間の関係の、方向及び強さを評価した。ベースラインからの各PFT値における変化と、ベースラインからのlog10CFUにおける変化との間の関連性に係る方向及び強さをも評価した。
結果:
全体として24名の患者がこれら2つの研究を完了したが、そのうち13名の患者は研究1に係り、また残りの11名に患者は、研究2に係ったものである。これらすべての患者の中央(最小、最大)年齢は、23.7(14、38)歳であり、126(76.8、173)mL/分/1.73m2なる、ベースラインにおける中央(範囲)クレアチニンクリアランス(CrCL)値を有していた。
該血清濃度データに対する最も強固な適合は、肺への0-次の薬物投入の施された、2-区画モデル(一つの吸収サイトとしての肺、及び中央区画)、即ち肺から該中央区画までの一次法、及び線形消去法を利用して得た。1日目と14日目との間の分布の見掛け上の中央体積値(Vc/F)及び見掛け上の全クリアランス(CLt/F)についての、インターオケイジョナル変動(inter-occasional variation)を許すことにより、統計的に目標関数を改善した。尿のデータは、血清濃度及び腎臓でのクリアランス(CLr)の関数として、所定の採集間隔において回収されたアミカシンの量を適合させることによって、モデル化した。以下の表1は、適合PKパラメータ値をまとめたものである:
【0052】
【表2】

【0053】
観測されたデータ対ベイジアン(Bayesian)ポスト-ホックの個人的に適合された血清濃度データの適合の良好性は、優れたものであり、全体としてのr2は0.98であった。
該血清及び痰のデータに関するAUCの値を、夫々以下の表2及び3に示した。痰に関する中央AUC値は、1日目及び14日目夫々において、血清に関する中央AUC値よりも286倍及び978倍高いものであった。該高いCV%値により明らかな如く、血清AUC値(1日目に51.9%及び14日目に42.4%)と比較して、痰(1日目に117%及び14日目に91.2%)においてより大きな変動性が見られることが明かであった。
【0054】
【表3】

1:mcg/mL・時で表されたAUC値。
【0055】
【表4】

1:mcg/mL・時で表されたAUC値。
【0056】
血清(r2=0.98)及び尿(r2=0.38)濃度は、夫々モデルに対して十分にまた適度に適合していた。7、14及び21日目に、FEF25-75%に関して観測された変化は、夫々0.49(p<0.001)、0.42(p=0.02)及び0.34L/秒(p=0.04)であった。7及び14日目に、FEV1について観測された変化は、夫々0.24(p=0.002)及び0.13L(p=0.10)であり、また予想されたFEV1%に関しては、7.49(p≦0.001)及び4.38(p=0.03)であった。log10CFUとAUC:MIC比との間、及びlog10CFU及びFEV1、予想されたFEV1%及びFVC間の有意な関連性(p≦0.05)が、確認された。
ベースライン及び14日目のPFTは、24名全ての患者から入手でき、また7及び21日目に行われたPFTに関して、このようなデータは、23名の患者から入手できた。微生物学的データは、24名全ての患者から入手できた。研究2に関して1日目の投薬前に集められたMICの値は、報告されていないので、スクリーニングMIC値並びにCFU計数値を、ベースライン値として使用した。
一標本t-テストを利用して、上記従属変数各々に関する、ベースラインからの平均変化の統計的有意性を評価した。スピアマンの順位相関係数(rS)を用いて、該従属変数各々と血清及び痰に関するAUC:MIC比との間の関連性の方向並びに強さを評価した。
【0057】
ベースラインに対する、7日目のPFT値における平均の変化は、全てのPFT終点に対して統計的に有意であった。ベースラインに対する、14日目の予想されたFEV1%及びFEF25-75%における平均の変化も、統計的に有意であった(夫々p=0.029及びp=0.016)。21日目までに、ベースラインに対する、FEF25-75%における平均の変化は、統計的な有意さを維持(p=0.036)した、単一のPFTであった。考察している研究日とは無関係に、ベースラインからのlog10CFUの平均の変化は、統計的に有意ではなかった。
以下の表4に示すように、ベースラインからのPFT値の変化と、痰又は血清何れかのAUC:MIC比と間の相関関係は、7日目又は14日目における変化が評価されたか否かとは無関係に、統計的に有意ではなかった。以下の表5に示すように、ベースラインからのlog10CFUの変化と、血清AUC:MIC比との間の相関は、7日目及び14日目両者に対して統計的に有意であった。血清AUC:MIC比の増大は、ベースラインに対する、7日目(rS=-0.46、p=0.048)及び14日目(rS=-0.45、p=0.048)のlog10CFUにおける大きな減少と関連していた。
ベースラインに対する、7日目及び14日目のPFT値及びlog10CFU両者における変動間の相関は、FEV1、予想されたFEV1%及びFVCに対して統計的に有意であった(p<0.05)。
【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
7日目及び14日目のベースラインからのP.エルギノーザに関するlog10CFUにおける平均の変化は、統計的に有意ではなかったが、これら時点両者におけるベースラインからのlog10CFUにおける変化と、血清のAUC:MIC比との間の相関は、統計的に有意であり;血清のAUC:MIC比における増加は、log10CFUにおける減少と関連していた。対照的に、この関係は、痰のAUC:MIC比については維持されず、またリポソームアミカシンの痰における速度論における大きな変動性を追認するものであり、これはTOBIについても示される(Geller, Pitlick等, 2002)。
log10CFUにおける変化と血清AUC:MIC比との間の、及びPFT値及びlog10CFUの変化同士の間の上記有意な関連性、及び吸入用のリポソームアミカシンによる2週間に及ぶ治療中の、P.エルギノーザのlog10CFUにおける有意な減少がないことは、より高い信頼度で効果的であるためには、より高い用量が、大きな患者集団において必要とされる可能性があることを示唆している。
【0061】
段階1b/2a研究のまとめ
リポソームアミカシン50mg/mLを用いた2つの段階1b/2a研究が、完了した。これら2つの研究は、その計画において類似していた。全体として24名のCF患者(予想の≧40%のFEV1値を持つ)が、14日間に渡り毎日、500mgのリポソームアミカシンの投与を受けた。この薬物は、パリLCスター(PARI LC Star)噴霧機を用いて、2回の20-分間の吸入期間に渡り投与され、また該吸入期間同士の間には、5分間の休止期間が設けられていた。研究1においては13名の患者が登録されており、また研究2においては11名の患者が登録されていた。患者動態統計は類似しているが、ベースラインにおけるシュードモナスのMICを除く。研究1において、平均のMIC(μg/mL)は、8(1.5-16なる範囲)であり、また研究2において、該平均MICは、41μg/mL(8-192なる範囲)であった。研究2において登録された患者は、吸入による抗生物質治療の前歴があり、またそのプロトコールによれば、本研究の28日目以降の、TOBITM/コリスチン(Colistin)による養生治療が許可された。研究1における患者は、吸入による抗生物質に対して先入的知識がなく、またフォローアップ期間中、追加の抗生物質の吸入を受けなかった。該リポソームアミカシン(50mg/mL)の500mgなる用量は、十分に許容され、また選ばれた患者においては、肺機能が改善され、また痰におけるP.エルギノーザ密度の低下を示した。研究1及び2(併合)に関する患者動態統計の詳細を、以下の表6に示す:
【0062】
【表7】

【0063】
これらヒトの臨床的段階1b/2a研究におけるすべての効力分析は、その性質上試験的なものであった。該効力の終点は、以下のものを含む:
痰における、P.エルギノーザ密度におけるベースラインからの変化(log10CFU);
肺機能テストにおけるベースラインからの変化(FEV1、予測されたFEV1%、FVC及びFEF25-75%);
P.エルギノーザの痰中密度、FEV1、及び14日目に予測されたFEV1%における変化は、主効力終点として認定された。
痰サンプルの定量的な培養を行い、またその後形態学的に明白なP.エルギノーザ各々のアミカシン感受性テストを行った。スクリーニング及び14日目における、各対象由来の培養した最大のMICを持つ単離体に関する、アミカシンのMICを実証した。痰におけるP.エルギノーザの密度(痰1g当たりのCFU)を、全形態型の和に関するlog10値として算出した。併合した集団(n=24)に関するベースライン特性のまとめを、以下の表7に示す。
【0064】
【表8】

【0065】
研究1:本研究において、CF患者は、アミカシンに対して敏感な(アミカシンMIC <64μg/mL)P.エルギノーザ単離体により感染されており、また吸入される抗生物質に対して先入的知識を持たないこれら対象を登録した。毎日1回あて2週間に渡る、500mgのアミカシンの投与は、1.09なる、14日目に対するベースラインからの、P.エルギノーザの計数値の和の対数値における平均の変化を示した(n=13;95%信頼区間:2.09〜0.09)。該計数値における減少は、該13名の対象中9名において観測された。リポソームアミカシンによる治療は、P.エルギノーザの耐性菌株の選択性をもたらさなかった。平均のP.エルギノーザアミカシンMICは、第0日において8.04μg/mLであり、また14日目には30.79μg/mLであった。14日目に、1名の対象における単一の単離体は、非-感受性MIC(>256μg/mL)を有し;全ての他の14日目の単離体は、アミカシンに対して感受性であった。何れのヒトも入院することはなく、あるいは抗-シュードモナス抗生物質の静脈内投与を受けることはなかった。さらに、14日目の+260mLなる、ベースラインからのFEV1値の増大によって測定されたように、肺機能における改善が見られた(n=13;95%信頼区間:+30mL〜+500mL)。14日目のベースラインからの予想されるFEV1%における対応する変化は、+7.32%であった。FEV1値における増加が、該13名の対象中9名において観測された。同様に特記すべきことは、FEF25-75%(平均:570mL)及びFVC(平均:180mL)における増加であった。
【0066】
研究2:
研究2は、P.エルギノーザに感染しており、また吸入による抗生物質治療を受けているCF患者集団において行った。これらの患者においては、2週間に渡る500mg q.d.でのリポソームアミカシンの投与は、この研究中にP.エルギノーザ密度における如何なる有意な変化をも示さなかった(1日目からの変化に対してp-値≧0.297)。ムコイドP.エルギノーザに罹っている患者の割合は、本研究全体を通して一定に維持された。FEV1値、予測されたFEV1%、FVC、及びFEF(25-75%)における如何なる統計的に有意な変化も、7日目、14日目(治療の終了時)、及び15日目において、観測されなかった。
統合的効力のまとめ:研究1及び2
研究1及び2における併合された24名の患者の集団から得たデータを、以下の表8、9、10及び11にまとめた。P.エルギノーザのlog10CFUにおける変化のbi微生物学的終点は、併合された該集団における細菌密度の低下を明らかにしたが、これは統計的な有意性を達成しなかった。しかし、抗生物質の吸入につき先入的知識のない患者(研究1)から得たデータを解析した場合には、CFUにおける統計的に有意な減少が治療の終了時点において観測された。この効果を説明するものと思われる因子は、痰における固有の変動性、方法、手順における研究室間の変動性、及び定量的細菌学に係る報告、並びに研究2における高いMIC(耐性単離体を含む)を持つ患者の登録である。上記全ては、さらに各研究のサンプル規模が小さいことによって倍加される。
【0067】
肺機能テストにおける測定による臨床的な利益の評価は、+240mL(n=23;p-値:0.0024)という、7日までのベースラインからのFEV1における増加によって評価されたように、肺機能における統計的に有意な改善を示した。14日目における効果は、126mLという、ベースラインからのFEV1における増加であった。これは、統計的に有意なものではなかった。7日目までのベースラインからの予想されたFEV1%における、対応する統計的に有意な増加は、+7.49%(n=24;p-値:0.0002)であり、また14日目におけるそれは、+4.37%(n=24;p-値:0.0285)であった。該肺機能における改善も、7日目における+494mL(n=23;p-値:0.001)、及び14日目における+423mL(n=24;p-値:0.0162)なる増加という、FEF(25-75%)によって評価される如く、小さな気道という評価と共に認められた。これらのデータは、慢性的なシュードモナス感染に罹っている、14日間に及ぶリポソームアミカシンによる治療クールを受けたCF患者における、肺機能の臨床的に意味のある改善を支持している。
【0068】
【表9】

【0069】
【表10】

【0070】
【表11】

【0071】
【表12】

【0072】
実施例2
段階1の臨床的研究
2種の段階1に関する一回投与の研究を、健康な志願者及びCF患者夫々において、リポソームアミカシンの処方物20及び50mg/mLを用いて行った。6名の健康な志願者は、一回のリポソームアミカシン120mgの投与を受け、これを十分に許容し、またその肺内の放射性標識したリポソームの長期に及ぶ保有能力を示し、その半減期は46時間であった。
リポソームアミカシンは、ヒトの臨床的段階1に関する研究(研究3)において、慢性的にP.エルギノーザによる感染状態にあるCF患者に投与した。一回の、90mg(n=6)、270mg(n=6)、又は500mg(n=4)なる用量を、CF患者に投与して、吸入用リポソームアミカシンの安全性、耐薬力(許容性)及び薬物動態特性を評価した。パリLCスター噴霧機を用いて、吸入によりリポソームアミカシン又はプラセボの単一用量の投与の、全体で24名の患者に関する投薬期間を評価した。2例の著しく不利な事例が報告された(いずれもプラセボ投与群において発生)。両事例共に、続発症を伴うことなしに回復した。全体で41例の不利な事例(AEs)が、この試み中に、投与期間中の24名の患者のうち17名が経験した(71%)。報告された該AEsの内、不利な事例を報告した16名の患者中10名(62.5%)が、薬剤投与群に属し、また8名の患者中7名(87.5%)が、該プラセボ投与群に属していた。該薬物投与群において報告されたAEの最も一般的なものは、頭痛であり、またAEsのためにこの研究を中断した患者は皆無であった。リポソームアミカシンは、十分に許容性のあるものであり、また吸入投与による一回の用量、500mgまで十分に安全であった。
さらに、該PKデータは、全身的薬物濃度が最小であり、また痰中の薬物濃度が高いことを確証しており、また薬物動態学的なモデルにより、緩慢なリポソームからの放出性によるものと思われる、長い排出半減期が見積もられる。
【0073】
実施例3
段階2の臨床的研究
本研究の計画を、図4にまとめた。本研究に含まれる患者は、慢性的なP.エルギノーザ感染に罹っている、年齢が6歳又はそれ以上のCF患者であった。患者は、本研究開始前の28日間に渡り抗生物質の吸入を受けなかった。患者は、ベースラインFEV1(%予測値)により成層化され、また2:1の割合で、アリケース(ArikaceTM)又はプラセボ(1.5% NaCl)に対して無秩序化された。コホート1は、280mg、コホート2は560mgの活性薬剤又はプラセボを、28日間に渡り、パリイーフロー(PARIeFlowTM)噴霧機により吸入による投与を受け、またこれに引続き、28日間に渡る、吸入による抗生物質を投与しない期間を設けた。安全性、薬物動態学的性質、Paの痰における密度、生活の質(CFQ-R)及び病状再燃の割合を、56日間という研究期間中、週毎に評価した。
概して、28日間に渡る、毎日のリポソームアミカシン280mg及び560mgの投与は、安全であり、十分に許容されるものと思われた。28日間に及ぶリポソームアミカシンの280mg及び560mgなる用量での投与は、肺機能における用量-依存性の改善をもたらし、この改善は該投薬の完了後少なくとも28日間に渡り持続しする。リポソームアミカシンの投与を受けた患者は、プラセボの投与を受けた患者(18.18%)と比較して、より低い(7.14%)肺疾患の病状再発を体験した。さらに、該病状再発までの期間は、該プラセボ投与群(19日)と比較して、該アミカシン投与群では延長された(41日)。該アミカシン投与群は、該28日間という治療期間中に肺疾患の病状再発を体験することはなかった。リポソームアミカシンの投与を受けた患者は、生活の質としてのCFQR-呼吸スケールにおける改善によって判断されるように、該プラセボ投与群と比較して、より大きな臨床的利益を得ることが立証された。
【0074】
図5及び6は、プラセボと比較して示された、小児患者(年齢6〜12歳)における、ベースラインからの酸素飽和濃度における変化を示すグラフである。これらの結果は、該28日間の治療期間の開始時点から、該治療期間を越えて持続する、酸素飽和濃度における改善の存在を明らかにしている。同様な酸素飽和濃度における改善は、12歳を越える患者においても観測された。
図7a及び7bは、各年齢群に分類された、夫々該プラセボ投与群及び該アミカシン投与群における、努力呼気量(FEV1値)によって評価されるような、肺機能における変化を示す図である。該プラセボ投与群の患者は、56日まで、全体としてのFEV1における低下を示し、一方該リポソームアミカシン投与群の患者は、治療中及び治療後28日目までの両期間に渡り、一貫したFEV1における増大を示した。該プラセボ投与群は、肺機能値(mL単位で測定)において以下のような変化を示した。
【0075】
【表13】

【0076】
該アミカシン投与群は、肺機能値(mL)において以下のような変化を示した。
【0077】
【表14】

【0078】
560mg、280mg及びプラセボ投与群における全ての患者に関する、ベースラインからのFEV1値における変化(mL単位で測定)の比較を、図8に示す。ここでも、該データは、リポソームアミカシンの投与を受けた患者において、56日間に及ぶ期間に渡り維持される持続効果の存在を立証している。ここで、該効果は、280mg投与群に比して、560mg投与群においてより一層顕著である。図9は、百分率としての、ベースラインからの変化を表す。560mg投与群において有意に増加したFEV1は、224mL(17.6%)という持続的治療効果を伴って、56日目において、プラセボ投与群と比較して、増大する。
この研究から得た結果は、また該プラセボ投与群と比較して、リポソームアミカシンの投与を受けた患者におけるCFUの有意な減少をも立証し、またこの減少は、少なくとも35日まで持続した。このCFUにおける減少は、図10に見られるように、アミカシンの280mg投与群に比して、560mg投与群においてより一層顕著であった。図11は、ムコイド菌株に対するlog10CFUの変化を示す図である。これらの結果は、P.エルギノーザ密度が、log10CFUにより評価されるように、プラセボ投与群と比較して、リポソームアミカシンの投与を受けた群において低下されること、及びこの効果がこの研究の少なくとも35日目まで持続したことを明らかにしている。P.エルギノーザのムコイド菌株を持つ患者も、リポソームアミカシンによる処置に対して感受性であった。1.2 log10CFUなる減少が、該280mg投与群において見られ、また2.0 log10CFUなる減少が、該560mg投与群において観測された。この減少は、1.8 log10CFUなる減少を伴って、該560mg投与群において35日目まで維持され、一方この減少は、log0.4CFUなる減少を伴って、該280mg投与群において維持された。
【0079】
上記薬物動態学的データは、リポソームアミカシンの投与を受けた患者の痰における、高濃度のアミカシンの存在を明らかにしたが、その平均のCmax(CV)は3496(0.973)mcg/gであった。該曲線(AUC)値の下方の平均面積は、22,445(0.831)mcg/g*時であった。他方において、上記血清に関する薬物動態学的データは、アミカシンに対する全身的暴露の程度が低いことを明らかにしており、そのCmax平均(SD)は、2.27(1.58)mcg/mLであった。
リポソームアミカシンの投与を受けた患者は、また低い肺疾患の病状再発頻度及びそれまでの期間を有していた。以下の表14参照のこと:
【0080】
【表15】

*:治療期間中、病状再発は観測されなかった。
【0081】
表14において見られるように、リポソームアミカシンで治療された患者(280mg投与群及び560mg投与群両者を含む)における病状再発の割合は、該プラセボ投与群と比較して、減じられた。その上、病状再発までの期間は、該プラセボ投与群における19.3日間に比して、アミカシンの投与を受けた患者では著しく長い(40.6日間)ものであった。
抗-シュードモナス救護治療も、以下の表15に見られるように、該プラセボ投与群と比較して、吸入によるリポソームアミカシンの投与を受けた患者においては減じられた。
【0082】
【表16】

*:治療期間中、救護の必要はなかった。
【0083】
表15において見られるように、該プラセボ投与群と比較して、吸入によるリポソームアミカシンの投与を受けた患者は、より低い割合で、抗-シュードモナス救護治療を必要とした。さらに、該救護治療が必要となる前の期間は、該プラセボ投与群(21.3日)と比較して、該リポソームアミカシン投与患者(43.0)日)において減じられた。
実施例4:
リポソームアミカシンの霧化
イーフロー(eFlow) 40Lにより生成されたリポソームアミカシンのエーロゾル特性を、以下の表16に示す。LCスター(LC Star)により発生した霧化生成物と比較した場合、該イーフローに関する質量中央値空力的径(MMAD)の値は、約0.5μm大きい。無化されたリポソームアミカシンを得るための、ACI(イーフローを使用)とNGI(LC スターを使用)カスケードインパクタ両者から得られる、実際のサイズ依存性の質量分布を、図1に示した。イーフロー/ACI測定に基くエーロゾルは、サイズ分布において、LCスター/NGIにより得られるエーロゾルよりも、僅かに狭かった。この差は、より低い幾何平均標準偏差(GSD)(1.66対1.99)に反映され、これは、該MMADの周りの分布の幅の尺度である。これについては表16の値を参照のこと。この狭い分布は、より大きなMMADのあらゆる可能な効果を相殺し、結果として吸入可能な範囲以内(<5μmなる液滴サイズ)で霧化された薬物の量を、イーフロー及びLCスター両者に対して匹敵するものとする。
【0084】
【表17】

該アンダーセン(Andersen)カスケードインパクタは、18℃、及び50%湿度条件にて、流量28.3L/分にて使用した。該NGIインパクタは、>60%湿度を達成するように5℃にて、流量15L/分で使用した。*:径5μm未満の公称投与薬物の量(%)。
【0085】
実施例5
ラットにおけるP.エルギノーザ肺感染に及ぼす、リポソームアミカシンの効果
吸入用のリポソームアミカシンの効力につき、リポソームアミカシンを、慢性的な肺感染に関する方法(Cash, Woods等, 1979)を利用して研究した。ここでは、アガロースビーズマトリックス中に包埋させたP.エルギノーザを、ラットの気管に浸透させた。このムコイドシュードモナス動物モデルは、CF患者に見られる慢性的シュードモナス感染に類似するように開発された(Cantin & Woods, 1999)。ラットの肺に、CF患者から独創的に単離された、104CFUのムコイドP.エルギノーザ菌株(ムコイド菌株3064)を接種した。3日後、60mg/kgのリポソームアミカシン(75mg/mL)を、毎日1回、14回に渡り、吸入により(Q1Dx14)あるいは1日おきに7回に渡り(Q2Dx7)、投与(投薬当たり6mg/kg)した。比較のために、トブラマイシンを、14日間に渡りBID吸入により投与した(投薬当たり30mg/kgで、全体として毎日60mg/kg)。塩水投与のコントロール群と比較して、3種全ての治療群において、細菌密度における著しい低下が見られた(図2を参照のこと)。ラットの上記3つの治療群間で、log10CFU/肺の減少における有意な差異は見られなかった。述べておくべきことは、アミノグリコシドの積算用量の半分が効率的に放出される、1日おきに14日間に渡り投与(Q2Dx7)された、リポソームアミカシン(75mg/mL)が、このモデルにおける毎日の投薬治療法と同程度に有効であったという事実である。
【0086】
図3に示したように、このモデルにおいて投薬を28日間に延長した場合、約60mg/kgにて毎日、又は約120mg/kgにて1日おきにリポソームアミカシンの投与を受けた動物に関して、CFUにおける等価な減少が観測された。それにも拘らず、同一のスケジュールで1.5%の塩水の投与を受けた動物と比較した場合、後者の群に関してのみ統計的に有意であると考えられた(夫々、p=0.24及び0.03)。これら2つの場合において、該CFUにおける2 logなる低下をも経験した動物が、該塩水投与コントロール群において、かなりの数で存在した。塩水吸入治療のより長期に及ぶ持続(14日以降)は、ラットの肺感染状態及び恐らく該慢性的感染状態を維持している該寒天ビーズを清浄化する自発的な能力を高めるものと思われた。14日間に渡り毎日約120mg/kgなるリポソームアミカシンの投与を受けたラットを、さらに14日間に渡り観測し、次いで35日目に安楽死させた。これら動物の肺は、28日間に渡り毎日、トブラマイシン60mg/kg(1日当たり2回投与)の投与を受け、次いで安楽死させた動物群における場合と同様に、検出限界以下の細菌を有していた。これらのデータは、本実験において、14日間に渡り1日に1回、120mg/kgなる用量で投与されたリポソームアミカシンが、28日間に渡り60mg/kg/日(1日当たり2回投与)にてトブラマイシンを投与した場合と同様に効果的であることを示している。この結果は、120mg/kgなるリポソームアミカシンによる、より高いAUC及び恐らく延長された抗生物質投与後効果をも示唆している。

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【0087】
(参考文献としての組み入れ)
本明細書において引用された全ての米国特許第及びU.S.公開特許出願を、参考としてここに組入れるものとする。
(等価物)
当業者は、ここに記載した本発明の特定の態様に関する等価物を認識しており、また単に日常的な実験を利用して、これらを確認できるであろう。このような等価物は、添付した特許請求の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における肺疾患の治療方法であって、該患者に、少なくとも1回の治療サイクルに渡り、有効用量の噴霧リポソームアミカシン処方物を投与する工程を含み、
該治療サイクルが、15〜75日なる範囲の投与期間、これに続く15〜75日なる範囲の非-投与期間を含み;及び
該有効用量が、該投与期間中、毎日100〜2,500mgなる範囲のアミカシンを含むことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項2】
前記治療サイクルが、少なくとも2回行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記投与期間が、15〜35日なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記投与期間が、20〜35日なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記投与期間が、約28日間である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記非-投与期間が、15〜35日なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記非-投与期間が、20〜35日なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記非-投与期間が、約28日間である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記非-投与期間が、25〜75日なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記非-投与期間が、35〜75日なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記非-投与期間が、45〜75日なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記非-投与期間が、約56日間である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記投与期間が、約28日間であり、かつ非-投与期間が、約28日間である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記投与期間が、約28日間であり、かつ非-投与期間が、約56日間である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記有効用量が、250〜1,500mgなる範囲のアミカシンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記有効用量が、250〜1,000mgなる範囲のアミカシンである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記有効用量が、約280〜約560mgなる範囲のアミカシンである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記有効用量が、約230〜約330mgなる範囲のアミカシンである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記有効用量が、約510〜約610mgなる範囲のアミカシンである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記有効用量が、約280又は約560mgのアミカシンである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記有効用量が、約280又は約560mgのアミカシンである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記有効用量が、約280又は約560mgのアミカシンである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺感染症、嚢胞性線維症、α-1-抗-トリプシン酵素欠乏症及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記肺の状態が、細菌性肺感染症である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記肺感染症が、P.エルギノーザ感染症である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記肺の状態が、気管支拡張症である、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、前記投与期間中に、約10mcg/mL未満の、アミカシンの血清Cmaxを持つ、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記患者が、痰1g当たり、少なくとも1,000mcgなるアミカシンの痰Cmaxを持つ、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記アミカシンの痰Cmaxが、前記投与期間中に、痰1g当たり、少なくとも1,000mcgである、請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記アミカシンの痰Cmaxが、前記投与後少なくとも15日間に渡り、痰1g当たり、少なくとも1,000mcgである、請求項24記載の方法。
【請求項31】
前記患者が、前記投与期間の終了後少なくとも15日間に渡り、少なくとも0.5なる、肺における前記細菌感染の、log10CFUにおける低下を示す、請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記log10CFUにおける低下が、少なくとも1.0である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、前記投与期間の終了後少なくとも15日間に渡り、肺機能における改善を体験する、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記改善が、FEV1における増大、血中酸素飽和濃度における増大、又はこれら両者を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、前記治療サイクル前のFEV1を少なくとも5%越えて増大する、FEV1を有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記FEV1が、約5〜約50%だけ増大する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記FEV1が、前記治療サイクル前のFEV1を、約25〜約500mLだけ越えて増大する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記血中酸素飽和濃度が、前記治療サイクル前の酸素飽和濃度を、少なくとも1%越えて増大する、請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記患者における、肺の病状再発までの期間が、約20日又はそれ以上である、請求項1記載の方法。
【請求項40】
前記救護治療までの期間が、約20日又はそれ以上である、請求項1記載の方法。
【請求項41】
前記リポソームアミカシン処方物が、脂質及びアミカシンを含み、かつ該脂質対アミカシンの質量基準での比が、約0.3〜約1.0なる範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項42】
前記脂質対アミカシンの比が、約0.5〜約0.7なる範囲内にある、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記脂質対アミカシンの質量基準での比が、約0.6である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記リポソームアミカシン処方物が、エッグホスファチジルコリン(EPC)、エッグホスファチジルグリセロール(EPG)、エッグホスファチジルイノシトール(EPI)、エッグホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水添エッグホスファチジルコリン(HEPC)、水添エッグホスファチジルグリセロール(HEPG)、水添エッグホスファチジルイノシトール(HEPI)、水添エッグホスファチジルセリン(HEPS)、水添ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水添ホスファチジン酸(HEPA)、水添大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水添大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水添大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水添大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水添大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水添大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ-オレイルホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、トコフェロール、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質のアンモニウム塩、グリセライドのアンモニウム塩、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)及びジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロプ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ホスファチジルグリセロール(PGs)、ホスファチジン酸(PAs)、ホスファチジルイノシトール(PIs)、ホスファチジルセリン(PSs)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、及びこれらの混合物からなる群から選択される脂質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項45】
前記リポソームアミカシン処方物が、リン脂質及びステロールを含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記リポソームアミカシン処方物が、DPPC及びコレステロールを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記リポソームアミカシン処方物が、DPPC及びコレステロールを、約2:1なる質量比で含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記リポソームアミカシン処方物が、約0.3〜約1.0なる範囲の、脂質対薬物の質量比を持つ、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記脂質対薬物の質量比が、約0.5〜約0.7なる範囲内にある、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記脂質対薬物の質量比が、約0.6である、請求項48記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−505265(P2012−505265A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532180(P2011−532180)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060468
【国際公開番号】WO2010/045209
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511093270)インスメッド インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】