説明

リポソーム製造方法および装置

【課題】脂質小胞、特に核酸などの治療薬を被包化する脂質小胞を処方し製造するためのプロセスおよび装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、本発明のリポソームを製造するための装置およびプロセスを提供することにより解決された。第1のレザバに緩衝液、および第2のレザバに脂質溶液を供給することにより、混合室内で緩衝液とともに連続的に希釈される脂質溶液はリポソームを生成する。この脂質溶液は、より低濃度のアルカノールなどの有機溶剤を含むことが好ましい。本発明は、被包化プラスミドDNAまたは小分子薬剤を含む脂質小胞を形成させるために使用することができる。一態様において、脂質小胞は低圧で速やかに調製され、またこのアプローチは完全にスケーラブルである。ある好ましい実施態様において、本プロセスはスタティックミキサーまたは専用の押出装置を含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2002年6月28日出願の米国仮特許出願第60/392,887号の非仮出願であり、この仮出願の優先権を主張するものである。この仮出願は、その全体が、本願明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
リポソーム、ナノ粒子、高分子粒子、免疫複合体およびリガンド複合体、ならびにシクロデキストリンなど、細胞内へ作用物質を投与するための多くのシステムが既に知られている(非特許文献1参照)。リポソームは、一般に、研究室で超音波処理、洗浄剤透析、エタノール注入または希釈、フレンチプレス押出、エーテル注入、および逆相蒸発により調製される。複数の二重層を有するリポソームは多層状脂質小胞(MLV)として知られている。層の間に捕捉された液体のみが、それぞれの膜が劣化するにつれて放出されるので、MLVは持効性薬剤の候補である。単一の二重層を備えたリポソームは単層状脂質小胞(UV)として知られている。UVは小さいもの(SUV)にすることも、大きいもの(LUV)にすることもできる。
【0003】
リポソーム製造のための上述の方法のうちいくつかは、リン脂質原料および被包化された薬剤の変性を引き起こす可能性がある苛酷で極端な条件を課すものである。その上、これらの方法では、多量のリポソームを大量生産するために規模を拡大することは容易ではない。さらに、従来のエタノール希釈による脂質小胞形成では、水性緩衝液中で脂質を注入または滴下しながら添加する必要がある。こうして得られた小胞は、一般にサイズが不均一で、単層状と多層状の小胞の混合物を含んでいる。
【0004】
従来のリポソームは、水性内部空間(水溶性薬剤)または脂質二重層(水不溶性薬剤)中のいずれかに含まれる治療薬を輸送するように処方されている。血流内で短い半減期を有する活性薬剤は、リポソームを介した送達に特に適している。例えば、多くの抗新生物薬剤は、血流中における半減期が短いため、非経口的使用が不適切であることが知られている。しかしながら、血流を介した活性薬剤の部位特異的送達のためのリポソームの使用は、網内系(RES)細胞によるリポソームの血液からの迅速なクリアランスによって厳しく制限されている。
【0005】
本明細書中に参考として援用する、1995年12月26日発行のWheeler他の米国特許第5,478,860号は、疎水性化合物の送達のためのマイクロエマルジョン組成物を開示している。このような組成物には様々な用途がある。一実施態様において、疎水性化合物は薬剤を含む治療薬である。この特許は、疎水性化合物の細胞へのインビトロ内およびインビボ内送達のための方法も開示している。
【0006】
本明細書中に参考として援用する、Knopoy他の特許文献1では、乱流環境(例えば、レノルズ数>2000)を提供するスタティックミキサーによるエタノール注入型プロセスを使用して脂質小胞を調製するための方法を開示している。続いて、小胞形成の後に治療薬を導入してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/05373号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「抗菌および抗癌化学療法における薬剤輸送(Drug Transport in antimicrobial and anticancer chemotherapy)」G.Papadakou編、CRCプレス、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米国特許第5,478,860号および国際公開第05373号の明白な進歩にもかかわらず、脂質小胞、特に核酸などの治療薬を被包化する脂質小胞を処方し製造するためのプロセスおよび装置の必要性が存在する。本発明は前述および他の必要性を満足するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明は、任意に治療薬を含む脂質小胞を製造するプロセスおよび装置を提供する。治療薬としては、例えば、タンパク質、核酸、アンチセンス核酸、薬剤またはその類似物などを含むことができる。本発明は、被包化プラスミドDNAまたは小分子薬剤を含む脂質小胞を形成させるために使用することができる。一態様において、脂質小胞は低圧で速やかに調製され、またこのアプローチは完全にスケーラブルである。ある好ましい実施態様において、本プロセスはスタティックミキサーまたは専用の押出装置を含まない。
【0011】
同様に、一実施態様において、本発明は、リポソームを製造するプロセスを提供する。このプロセスは一般に、第2のレザバの有機脂質溶液と液体流通状態の第1のレザバに水溶液を提供するステップと、さらに水溶液を有機脂質溶液と混合するステップを備え、リポソームを生産するために有機脂質溶液が連続的段階的に希釈される。
【0012】
ある態様において、緩衝液などの水溶液は、リポソーム中の被包化された治療薬などの治療薬を含む。好ましい治療薬としては、タンパク質、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA(小分子阻害(small interfering)RNA)、前濃縮DNA、および抗原などがあるが、これに限定されない。ある好ましい態様では、治療薬は核酸である。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、治療薬を被包化したリポソームを製造するプロセスを提供する。このプロセスは一般に、第1のレザバに水溶液を提供するステップと、第2のレザバに有機脂質溶液を提供するステップを備え、ここで水溶液と有機脂質溶液のうちの一方が治療薬を含んでいる。さらにこのプロセスは一般に、水溶液を有機脂質溶液と混合するステップを含み、ここで実質的に瞬時に治療薬を被包化するリポソームを製造するように有機脂質溶液が水溶液と混合する。ある態様では、治療薬は水溶液に含まれた核酸である。ある態様では、治療薬は親油性であり、有機脂質溶液中に含まれている。ある態様では、最初の治療薬の被包化効率は約90%である。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明は治療薬を被包化するリポソームを製造するための装置を提供する。本装置は、一般に、水溶液を保持するための第1のレザバ、および有機脂質溶液を保持するための第2のレザバを含み、この水溶液と有機脂質溶液のうちの一方は治療薬を含む。本装置は、一般に、混合領域内に実質的に等しい流量で水溶液と有機脂質溶液とを送り込むための機構で構成されるポンプ機構も含んでいる。使用時、有機脂質溶液はこの混合領域内で水溶液と混合し、治療薬を被包化したリポソームが実質的に瞬時に形成される。
【0015】
前述および他の態様は、添付図面および以下の詳細な説明と組み合わせて読むとさらに明らかになるであろう。
【0016】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
治療薬を被包化するリポソームを製造するプロセスであり、前記プロセスは、
水溶液を第1のレザバに提供するステップと、
有機脂質溶液を第2の貯蔵部に提供するステップであって、前記水溶液と前記有機脂質溶液のうちの一方が治療薬を含むステップと、
前記水溶液を前記有機脂質溶液と混合するステップであって、治療薬を被包化したリポソームを実質的に瞬時に産生するように前記有機脂質溶液を前記水溶液と混合するステップと
を備えるプロセス。
(項目2)
前記リポソームが約20%v/vから約50%v/vの有機溶剤濃度を有する溶液中に存在する項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記リポソーム溶液をさらに希釈するステップをさらに含む項目2に記載のプロセス。
(項目4)
前記追加の希釈が緩衝液により行われる項目3に記載のプロセス。
(項目5)
前記リポソーム溶液を希釈する前記追加の希釈が連続的段階的希釈である項目3に記載のプロセス。
(項目6)
前記リポソーム溶液が、希釈後に約25%v/v未満の有機溶剤濃度を有する項目3に記載のプロセス。
(項目7)
最終形態を形成するために前記リポソーム溶液に関連した前記有機溶剤を除去するステップをさらに備える項目2に記載のプロセス。
(項目8)
前記有機脂質溶液が有機溶剤を含む項目1に記載のプロセス。
(項目9)
前記有機溶剤が低級アルコールである項目8に記載のプロセス。
(項目10)
前記有機溶剤が水を含む項目8に記載のプロセス。
(項目11)
前記水溶液が有機溶液を含む項目1に記載のプロセス。
(項目12)
前記水溶液が緩衝液を含む項目1に記載のプロセス。
(項目13)
前記リポソームが直径約200nm未満である項目1に記載のプロセス。
(項目14)
前記リポソームが約60から約80mL/分の速度で形成される項目1に記載のプロセス。
(項目15)
前記水溶液が治療薬を含む項目1に記載のプロセス。
(項目16)
前記治療薬が、タンパク質、プラスミド、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、前濃縮DNA、および抗原から成る群から選択される項目15に記載のプロセス。
(項目17)
前記治療薬が核酸である項目15に記載のプロセス。
(項目18)
前記核酸が、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)、シトシン脱アミノ酵素、キサンチン−グアニンホスホリボシル転移酵素、p53、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、デオキシシチジンキナーゼ、ニトロ還元酵素、チミジンホスホリラーゼおよびシトクロムP450 2B1から成る群から選択されるタンパク質をコードする項目17に記載のプロセス。
(項目19)
治療薬が荷電種である項目1に記載のプロセス。
(項目20)
前記有機脂質溶液が治療薬を含む項目1に記載のプロセス。
(項目21)
治療薬が親油性である項目20に記載のプロセス。
(項目22)
前記親油性製剤が、プロタックスIII、パクリタクソール、タクソール、タクソール誘導体、および脂質誘導体化プロドラッグから成る群から選択される項目21に記載のプロセス。
(項目23)
第1および第2のレザバの一方または両方が温度コントロールされる項目1に記載のプロセス。
(項目24)
第1および第2のレザバの一方または両方がオーバーヘッドミキサーを備えたジャケット付ステンレス鋼容器を含む項目1に記載のプロセス。
(項目25)
混合ステップが、混合環境中に実質的に等しい流量で水溶液および有機脂質溶液を導入することを含む項目1に記載のプロセス。
(項目26)
前記混合環境がTコネクタを含み、互いにほぼ180°対向した流れとして前記水溶液および前記有機脂質溶液がTコネクタへ導入される項目25に記載のプロセス。
(項目27)
混合中、前記有機脂質溶液が前記水溶液の存在下で連続的段階的に希釈される項目1に記載のプロセス。
(項目28)
核酸を被包化するリポソームを製造するプロセスであって、
核酸を含む水溶液を第1のレザバに提供するステップと、
有機脂質溶液を第2のレザバに提供するステップと、
前記有機脂質溶液を前記水溶液と混合するステップであって、実質的に瞬時に核酸を被包化したリポソームを産生するように前記有機脂質溶液を前記水溶液と混合するステップと
を備えるプロセス。
(項目29)
前記リポソームを緩衝液で希釈するステップをさらに含み、前記リポソームをさらに安定させるために前記リポソームを連続的段階的に希釈する項目28に記載のプロセス。
(項目30)
前記リポソームが、約3.5から約8.0のpHを有する溶液中に存在する項目28に記載のプロセス。
(項目31)
前記核酸が、プラスミド、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、前濃縮DNA、および抗原から成る群から選択される項目28に記載のプロセス。
(項目32)
前記核酸が、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)、シトシン脱アミノ酵素、キサンチン−グアニンホスホリボシル転移酵素、p53、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、デオキシシチジンキナーゼ、ニトロ還元酵素、チミジンホスホリラーゼおよびシトクロムP450 2B1から成る群から選択されるタンパク質をコードする項目28に記載のプロセス。
(項目33)
前記リポソームが約50%よりも大きい核酸被包化効率を有する項目28に記載のプロセス。
(項目34)
前記リポソームが約80%と約90%との間の核酸被包化効率を有する項目28に記載のプロセス。
(項目35)
前記リポソームの直径が約150nm以下である項目28に記載のプロセス。
(項目36)
前記リポソームは約100mMから約200mMの塩濃度を有する溶液中に存在する項目28に記載のプロセス。
(項目37)
混合ステップは混合環境中に実質的に等しい流量で前記水溶液および前記有機脂質溶液を導入することを含む項目28に記載のプロセス。
(項目38)
前記混合環境がTコネクタを含み、互いにほぼ180°対向した流れとして前記水溶液および前記有機脂質溶液がTコネクタへ導入される項目37に記載のプロセス。
(項目39)
混合中、前記有機脂質溶液が水溶液存在下で連続的段階的に希釈される項目28に記載のプロセス。
(項目40)
治療薬を被包化するリポソームを製造するプロセスであって、
第1のレザバ中に水溶液を提供するステップと、
第2のレザバ中に約70%v/vから約100%v/v濃度の有機脂質溶液を提供するステップであって、前記水溶液および有機脂質の1つが治療薬を含むステップと、
前記有機脂質溶液を前記水溶液と混合するステップであって、実質的に瞬時に治療薬を被包化したリポソームを産生するように前記有機脂質溶液を前記水溶液と混合するステップと
を備えるプロセス。
(項目41)
混合中に前記有機脂質溶液が約35%v/vから約50%v/v有機溶剤濃度まで連続的段階的希釈される項目40に記載のプロセス。
(項目42)
混合ステップが、混合環境中に実質的に等しい流量で前記水溶液および前記有機脂質溶液を導入することを含む項目40に記載のプロセス。
(項目43)
請前記水溶液が治療薬を含み、前記治療薬がタンパク質、プラスミド、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、前濃縮DNA、および抗原から成る群から選択される求項40に記載のプロセス。
(項目44)
前記有機脂質溶液が治療薬を含み、前記治療薬が親油性である項目40に記載のプロセス。
(項目45)
前記親油性製剤が、プロタックスIII、パクリタクソール、タクソール、タクソール誘導体、および脂質誘導体化プロドラッグから成る群から選択される項目44に記載のプロセス。
(項目46)
前記治療薬がアニオン性種およびカチオン性種の1つである項目40に記載のプロセス。
(項目47)
治療薬を被包化するリポソームを製造する装置であって、
水溶液を保持するための第1のレザバと、
有機脂質溶液を保持するための第2のレザバであって、水溶液および有機脂質溶液の1つは治療薬を含む第2のレザバと、
実質的に等しい流量で前記水溶液および前記有機脂質溶液を混合領域に送り込むように構成されたポンプ機構と、
を備え、混合領域内で前記有機脂質溶液が前記水溶液と混ざって、治療薬を被包化したリポソームを実質的に瞬時に形成する装置。
(項目48)
混合領域を規定するTコネクタをさらに含み、前記水溶液および前記有機脂質溶液が互いにほぼ180°対向した流れとしてTコネクタへ導入される項目47に記載の装置。
(項目49)
治療薬被包化リポソームを受け取るための受容容器をさらに含む項目47に記載の装置。
(項目50)
前記リポソームが第1の濃度の溶液中に存在し、前記装置は、受容容器に接続された濾過システムをさらに含み、前記濾過システムは前記治療薬を被包化したリポソーム溶液の濃度を第2の濃度まで増加させるように構成された項目49に記載の装置。
(項目51)
前記治療薬がタンパク質、プラスミド、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、前濃縮DNA、および抗原から成る群から選択される項目47に記載の装置。
(項目52)
ポンプ機構が蠕動ポンプを含む項目47に記載の装置。
(項目53)
混合中、前記有機脂質溶液が水溶液存在下で連続的段階的に希釈される項目47に記載の装置。
(項目54)
前記有機脂質溶液が治療薬を含み、前記治療薬が親油性である項目47に記載の装置。
(項目55)
前記水溶液が治療薬を含む項目47に記載の装置。
(項目56)
前記治療薬がアニオン性種およびカチオン種の1つである項目47に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による製造プロセスに関するフローチャートを示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態でリポソームを製造するプロセスの模式図を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による装置の模式図を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による限外濾過システムを備える装置の模式図を示す。
【図5】図5は、SPLP平均径およびDNA被包化における最初の脂質溶液のエタノール濃度変化の影響を示す。DNA被包化効率および小胞サイズは、希釈ステップの後に測定した。
【図6】図6は、SPLP平均径およびDNA被包化における初期プラスミド溶液のpH変化の影響を示す。DNA被包化効率および小胞サイズは希釈ステップの後に測定した。
【図7】図7は、pDNA被包化効率における希釈ステップで使用された緩衝液のpH変化の影響を示す。
【図8】図8は、pDNA被包化効率における希釈ステップで使用された緩衝液の塩濃度変化の影響を示す。
【図9A】図9Aは、本発明のリポソームを製造するプロセスの模式図を示す。
【図9B】図9Bは、本発明のリポソームを製造するプロセスの模式図を示す。
【図10】図10は、本発明のあるリポソーム中のサフラニンの被包化を示す。
【図11】図11は、本発明のリポソームを製造するプロセスの模式図を示す。
【図12】図12は、pDNA被包化のための本発明の一実施形態とエタノール滴下法との間の比較図を示す。
【図13】図13はTコネクタおよび一実施形態による関連する流れ動力学を示す。
【図14】図14は、図13のTコネクタ内の流れに関連する種々のパラメータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
(I. 定義)
「核酸」という用語は、少なくとも2つのヌクレオチドを含むポリマーのことを言う。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、およびリン酸基を含む。ヌクレオチドはリン酸基により互いに結合されている。「塩基」は、天然化合物アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、および天然の類似物をさらに含むプリンおよびピリミジン、ならびに、以下に限定されるものではないが、アミン、アルコール、チオール、カルボン酸エステル、およびハロゲン化アルキルなどの新しい反応性基を導入する改質を限定的でなく含むプリンおよびピリミジンの合成誘導体などである。
【0019】
DNAは、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNA部分、前濃縮DNA、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物、ベクター類(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラシーケンス、染色体DNAあるいはこれらの群の誘導体の形態を有し得る。RNAは、オリゴヌクレオチドRNA、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、rRNA(リポソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、siRNA(RNA干渉過程における小さなRNA)、リボザイム、キメラシーケンス、またはこれらの群の誘導体の形態を有し得る。
【0020】
「アンチセンス」は、DNAおよび/またはRNAの機能を妨害するポリヌクレオチドである。このため、発現は抑制される。天然の核酸はリン酸バックボーンを有し、人工の核酸は他のタイプのバックボーンおよび塩基を含む。これらは、PNA(ペプチド核酸)、ホスホチオネート(phosphothionates)、およびその他の天然の核酸のリン酸バックボーンの変異体などである。さらに、DNAとRNAは、一重、二重、三重または四重鎖となっている。
【0021】
「遺伝子」は、ポリペプチドまたは前駆物質(例えば単純疱疹ウイルス)の産生に必要なコード配列を備える核酸(例えばDNA)の配列を指す。完全長または断片の所望の活性、または機能的性質(例えば酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、およびその他同種のもの)が保持される限り、このポリペプチドを完全長コード配列、あるいはコード配列の任意の部分によってコード化することができる。
【0022】
本明細書で言う「水溶液」という用語は、全部または一部に水を含む組成物を指す。
【0023】
本明細書で言う「有機脂質溶液」という用語は、全部または一部に脂質を有する有機溶媒を含む組成物を指す。
【0024】
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルであり、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶であることにより特徴づけられる有機化合物群を指す。それらは、通常、少なくとも3つのクラスに分割される。すなわち、(1)ろうに加えて油脂類を含む「単純脂質」、(2)リン脂質と糖脂質を含む「複合脂質」、(3)ステロイドなどの「誘導脂質」である。
【0025】
「両親媒性脂質」という用語は、部分的に脂質材料の疎水性部分が疎水性相に配向しており、一方、親水性部分は水性相に配向しているあらゆる適切な材料を意味する。両親媒性脂質は通常脂質小胞の主成分である。親水性特性は、炭水化物、リン酸基、カルボン酸基、硫酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびその他の基などの極性または電荷を有する基の存在に由来する。疎水性は、これに限定されないが、長鎖飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、およびこれらに1つ以上の芳香族性、脂環式または複素環式基を置換した官能基(類)をはじめとする無極性基の含めることにより付与することができる。両親媒性化合物の例としては、リン脂質、アミノ脂質、スフィンゴ脂質などがあるがこれに限定されない。リン脂質の代表例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリン、などがあるがこれに限定されない。スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ−アシルオキシ酸のようなリンを含まないその他の化合物も、両親媒性脂質として指定された群に属する。さらに、上述の両親媒性脂質は、トリグリセリドやステロールを含む他の脂質と混合することができる。
【0026】
「アニオン性脂質」という用語は、生理学的pHでマイナスの電荷を有するあらゆる脂質を指す。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N−サクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、および中性脂質と結合したその他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
「カチオン性脂質」という用語は、生理学的pHのような選択されたpHで正味の正電荷を運ぶ複数の脂質種のうち任意のものを意味する。このような脂質には、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチル塩化アンモニウム(「DODAC」)、N−(2,3−オレイロキシ)プロピル−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(「DOTMA」)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチル臭化アンモニウム(「DDAB」)、N−(2,3−オレオイロキシ)プロピル−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(「DOTAP」)、3−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)、およびN(1,2−ジミリスチロキシプロプ−3−イル)N,N−ジメチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(「DMRIE」)などがあるが、これに限定されない。さらに、いくつかのカチオン性脂質の市販製剤を利用でき、本発明の中で使用することができる。これらには、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMAおよび1,2−ジオレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミン(「DOPE」)を含む市販のカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL、グランドアイランド、ニューヨーク、米国)、LIPOFECTAMINE(登録商標)(N−(1−(2、3−オレイロキシ)プロピル)−N(2−(スペルミンカルボックスアミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロ酢酸(「DOSPA」)そして(「DOPE」)、GIBCO/BRL製を含む市販のカチオン性リポソーム)、およびTRANSFECTAM(登録商標)(ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)のエタノ−ル溶液で構成される市販のカチオン性脂質、プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州、米国)などが挙げられる。生理学的pH以下で、カチオン性を示し正電荷を有する脂質は、DODAP、DODMA、DMDMAおよびその類似物である。
【0028】
「脂質小胞」は、限定的ではないが、水性ボリュームが両親媒性脂質二重層によって被包化されているリポソームか、プラスミドのような大きな分子成分を備える内部を脂質が被覆し、水性物が減少しているリポソーム、または比較的無秩序な脂質混合物内に被包成分が含まれている脂質凝集物もしくはミセルなどの物質を送達するために使用できるあらゆる脂質組成物のことを指す。
【0029】
本明細書で言う「脂質被包性」は完全に被包、部分的に被包、あるいはその両方を有する化合物を提供する脂質処方を意味する。
【0030】
本明細書で言う「SPLP」という用語は、安定なプラスミド脂質粒子を指す。SPLPは、プラスミドなどの核酸を含み水性が減少した内部を被覆する小胞を表わす。
【0031】
(II. 概説)
本発明は、脂質小胞を製造するプロセスおよび装置を提供する。このプロセスは、以下に限定されるものではないが、カチオン性脂質、アニオン性脂質、中性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)脂質、親水性ポリマ−脂質、膜融合脂質およびステロールを含んでいる広範囲の脂質成分を保有する脂質小胞を製造するために使用できる。脂質を含む有機溶媒(例えばエタノール)に疎水性活性物を組み入れることができ、また核酸と親水性活性を水性成分に加えることができる。ある態様において、本発明のプロセスを、脂質単層がオイルベースの核を包囲するマイクロエマルジョンを調製するために使用することができる。ある好ましい態様において、本プロセスと装置は脂質小胞、すなわちリポソームを調製するために使用され、リポソームの形成と同時に治療薬がリポソーム内に封入される。
【0032】
(III. 製造プロセス)
図1は、本発明の方法に関する代表的なフローチャート100の例である。このフローチャートは単なる図解であり、本請求の範囲を制限するべきものではない。当業者には、他の変形、修正、変更が分かるであろう。
【0033】
一態様において、本方法は、優良製造規範(GMP)の下で合成された後、有機溶液120(例えばエタノール)中に可溶化される、臨床グレード脂質のような脂質溶液110を提供する。同様に、治療薬、例えば核酸112あるいは他の薬剤のような治療活性薬はGMPの下で調製される。その後、緩衝液(例えばクエン酸塩)を含む治療薬溶液(例えばプラスミドDNA)115は、リポソーム製剤130を形成するために低級のアルカノールに溶解させた脂質溶液120と混合される。本発明の好ましい態様において、治療薬はリポソームの形成と同時にリポソーム中に「受動的に封じ込め」られる。しかしながら、当業者には、本発明のプロセスおよび装置は、小胞形成後の能動的なリポソーム封じ込めすなわちローディングにも同様に適用可能であることが分かるであろう。
【0034】
本発明のプロセスおよび装置によれば、混合室などでの混合環境の中へ連続的に導入される脂質および緩衝液の作用により、緩衝液を含む脂質溶液の連続的な希釈が生じることにより、混合時にほぼ瞬時にリポソームが産生される。本明細書で言う「緩衝液を含む脂質溶液を連続的に希釈する」という表現(およびその変形表現)は、一般に脂質溶液は小胞産生を実行するために十分な効力で、水和プロセスにおいて十分かつ迅速に希釈されることを意味する。水溶液を有機脂質溶液と混合することによって、有機脂質溶液は緩衝液(水性)溶液の存在下で連続的な段階的希釈を受け、リポソームが製造される。
【0035】
本発明のプロセスでは、有機脂質溶液は、低級アルカノールなどの有機溶剤を含んでいることが好ましい。一態様において、その後、リポソームを緩衝液(例えばクエン酸塩)で希釈140し、核酸(例えばプラスミド)の取り込みを増加させる。試料の濃縮160の前に、例えば陰イオン交換カートリッジを用いて、遊離の治療薬(例えば核酸)を除去150する。さらに、アルカノールを除去するために限外濾過ステップ170を使用することによって、この試料を濃縮し(例えば約0.9mg/mLのプラスミドDNA)、アルカノールを除去し、さらに、緩衝液を代わりの緩衝液(例えば生理食塩水緩衝液を含む)と置換180する。その後、試料をろ過190し、バイアルの中に入れる195。ここで、図1で示されるステップを用いて、このプロセスを以下に更に詳細に説明する。
【0036】
(1. 脂質可溶化および治療薬の溶解)
一実施形態において、本プロセスのリポソーム小胞は、安定なプラスミド脂質粒子(すなわちSPLP)製剤である。当業者には、以下の記載が説明のためのものであるにすぎないことが理解されるであろう。本発明のプロセスは、広範囲の脂質小胞型およびサイズに適用可能である。これらの脂質小胞として、多層状脂質小胞(MLV)はもとより、小型(SUV)、大型(LUV)を形成することができる単層状脂質小胞として知られる単一2重層脂質小胞などがあるが、これに限定されない。さらに小胞として、ミセル、脂質核酸粒子、ビロゾーム、またはその類似物などがある。当業者には、その他の脂質小胞の場合にも本発明のプロセスおよび装置が適していることが分かるであろう。
【0037】
本プロセスおよび装置に従って製造されるリポソームの好ましいサイズは、直径約50〜550nmである。ある好ましい態様において、リポソーム製剤のサイズ分布は、平均値サイズが(例えば直径)約70nmから約300nmまで、より好ましくは平均値サイズが、約150nm以下(例えば約100nm)など、約200nm未満である。
【0038】
ある態様では、本発明のリポソーム製剤(例えばSPLP製剤)は、リン脂質、コレステロール、PEG脂質、およびカチオン性脂質という4種類の脂質成分を含んでいる。好ましい一態様において、リン脂質はDSPCであり、PEG脂質はPEG−DSGであり、また、カチオン性脂質はDODMAである。好ましい一態様において、モル組成がおよそ20:45:10:25=DSPC:Chol:PEG−DSG:DODMAである。ある実施形態では、脂質が可溶性となる有機溶剤濃度は、約45%v/vから約90%v/vである。ある好ましい態様では、有機溶剤はより低級のアルカノールである。好ましい低級のアルカノールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、それらの異性体、およびこれらの組み合わせなどであるが、これに限定されない。一実施形態では、溶媒は約50−90%v/vの容量のエタノールが好ましい。脂質は、約1mL/gから約5mL/gの容量を占めることが好ましい。
【0039】
脂質は、例えば適温のオーバーヘッドスターラーを使用して可溶化120される。一態様において、この溶液の脂質濃度の合計は約15.1mg/mL(20mM)である。ある好ましい態様では、治療薬(例えば核酸)は水溶液(例えば緩衝液)に含まれており、終濃度に希釈されている。好ましい一態様において、例えば終濃度は、pH約4.0のクエン酸塩緩衝液中で約0.9mg/mLである。この場合、プラスミド溶液の容量はアルカノール脂質溶液と同じである。一実施形態では、治療薬(例えば核酸)溶液の調製は、オーバーヘッドミキサーを備えたジャケット付ステンレス鋼容器の中で行なわれる。ある事例では脂質小胞形成前の時点で脂質溶液と同じ温度であるが、調製のために試料を熱する必要はない。
【0040】
一実施形態において、治療薬は脂質溶液に組み込まれている。ある好ましい態様では、脂質溶液中の治療薬は親油性である。好ましい親油性薬剤は、例えば、プロタックスIIIおよびパクリタキソール(paclitaxol)、親油性ベンゾポルフィリン、フォスカーネットの脂質プロドラッグであるベルテポルフィン、1−O−オクタデシル−sn−グリセリン−3−ホスホノホルメート(ODG−PFA)、ジオレオイル[3H]ヨードデオキシウリジン([3H]IDU−O12)、iBOC[−L−Phe]−[D−ベータ−Nal]−Pip−[α―(OH)―Leu]−Val(7194)などの脂質誘導化HIVタンパク質分解酵素抑制ペプチド、およびその他の脂質誘導体化薬剤またはプロドラッグなどを含むタキソール(taxol)、タキソール誘導体などがある。
【0041】
(2. リポソーム形成)
溶液、例えば脂質溶液120と水性治療薬(例えば核酸)溶液115を調製した後、例えば蠕動性ポンプミキサーを用いて、それらを互いに混合する130。ある態様では、混合環境内で実質的に等しい流量でポンプで導入されている。ある態様では、混合環境は「T」コネクターあるいは混合室を備えている。この場合、流体ライン、したがって流体フローは、互いに相対的に約180°対向したフローで「T」コネクター内の狭い開口部で出会うことが好ましい。例えば27°と90°の間、および90°と180°の間など、他の相対的導入角度を使用してもよい。混合環境内で溶液フローが、合流し混合すると同時に、脂質小胞は実質的に瞬時に形成される。溶解させた脂質および水溶液(例えば緩衝液)を含む有機溶液が同時に連続的に混合される場合、脂質小胞が形成される。都合のよいことに、また意外なことに、水溶液を有機脂質溶液と混合することによって、有機脂質溶液は連続的段階的な希釈液を経て、実質的に瞬時にリポソームを生成する。ポンプ機構は、高アルカノール環境で脂質小胞を作成する混合環境内で、同等または異なる脂質および水溶液流量を供給するように構成することができる。
【0042】
都合のよいことに、また意外なことに、本明細書に教示する脂質溶液および水溶液の混合のための本プロセスおよび装置は、形成されたリポソーム内で、リポソームの形成と実質的に同時に、約90%までの被包効率を備えた治療薬の被包化を提供する。必要ならば、被包効率および濃縮をさらに改良するために、本明細書に記載する別の処理ステップを使用することができる。
【0043】
好ましい一態様において、本発明のプロセスおよび装置を使用して、完全にスケーラブルな連続的な2ステッププロセスにおいて脂質小胞を瞬時に形成させることが可能である。1つの態様において、膜押出、超音波処理、またはマイクロ流動化(microfluidization)などの高エネルギープロセスによってサイズをさらに減少させる必要のない、平均径約200nm未満の脂質小胞が形成される。
【0044】
一実施形態において、有機溶剤(例えばエタノール)に溶解された脂質が水溶液(例えば緩衝液)と混合することにより、段階的に希釈される場合に脂質小胞が生ずる。この制御された段階的希釈は、Tコネクタなどの開口部内で、水性流と脂質の流れを互いに混合することにより達成される。こうして得られた脂質、溶媒および溶質濃度は、小胞形成プロセス全体にわたり一定に保つことができる。
【0045】
本発明のプロセスの一実施形態を図2に示す。一態様において、本発明のプロセスを使用して、勾配のない2ステージの段階的希釈によって小胞が調製される。例えば、最初の段階的希釈では、高アルカノール(例えばエタノール)環境(例えば約30%から約50%v/vエタノール)中で小胞が形成される。続いて、これらの小胞を、約17%v/vから約25%v/vまでなど約25%v/v以下まで段階的にアルカノール(例えばエタノール)濃度を低下させることにより安定化させることができる。好ましい態様において、水溶液または脂質溶液中に存在する治療薬により、リポソーム形成と同時にこの治療薬は被包化される。
【0046】
図2に示されるように、一実施形態において、脂質は最初に約40%v/vから約90%v/vまで、より好ましくは約65%から約90%v/v、最も好ましくは約80%v/vから約90%v/vのアルカノール環境に溶解される(A)。次に、脂質溶液は水溶液と混合することにより段階的に希釈され、約37.5〜50%のアルカノール(例えばエタノール)濃度で小胞が形成される(B)。水溶液を有機脂質溶液と混合することによって、有機脂質溶液は連続的段階的希釈が行われ、リポソームが産生される。さらにSPLP(脂質粒子)のような脂質小胞は、約25%以下のアルカノール濃度、好ましくは約19〜25%まで小胞をさらに段階的に希釈することによって安定させることができる(C)。
【0047】
あるいくつかの態様において、両方の段階的希釈(A→BおよびB→C)の場合、得られたエタノール、脂質、および溶質濃度は受容容器内で一定レベルに保たれる。これらのより高いエタノール濃度では最初の混合ステップが続くが、より低いエタノール濃度での希釈により形成される小胞と比較して、二重層中への脂質モノマーの再配列はより整然とした様式で進行する。その機序は不明であるが、これらのより高いエタノール濃度は、二重層中のカチオン性脂質による核酸の会合を促進すると考えられる。好ましい一態様において、一連のアルカノール(例えばエタノール)濃度が22%以上の範囲内で核酸被包が生じる。
【0048】
あるいくつかの態様において、脂質小胞が形成された後、別の容器、例えばステンレス鋼容器に回収される。一態様において、脂質小胞は約60から約80mL/分の速度で形成される。一態様において、混合ステップ130の後、脂質濃度は約1〜10mg/mLであり、また治療薬(例えばプラスミドDNA)濃度は約0.1〜3mg/mLである。ある好ましい態様では、脂質濃度は約7.0mg/mLであり、また治療薬(例えばプラスミドDNA)濃度は約0.4mg/mLであり、約0.06mg/mgのDNA:脂質比を与える。緩衝液濃度は約1−3mMであり、アルカノール濃度は、約45%v/vから約90%v/vである。好ましい態様では、緩衝液濃度は約3mMであり、アルカノール濃度は、約45%v/vから約60%v/vである。
【0049】
(3. リポソーム希釈)
図1に戻ると、混合ステップ130の後、遊離のプラスミドの除去に先立ち、脂質小胞懸濁液が随意に希釈140される場合は、治療薬(例えば核酸)被包度を増強することができる。例えば、希釈ステップ140の前に、治療薬被包が約30〜40%であれば、希釈ステップ140後のインキュベーションの後に約70〜80%に増加させることができる。ステップ140において、緩衝液(例えばクエン酸塩緩衝液、100mMのNaCl、1:1、pH4.0)などの水溶液と混合することにより、リポソーム製剤は約10%から約40%アルカノール好ましくは約20%アルカノールに希釈される。このような一層の希釈は、緩衝液により達成することが好ましい。ある態様では、このようなさらに希釈されたリポソーム溶液は連続的な段階的希釈である。希釈された試料は、その後随意、室温でインキュベートしてもよい。
【0050】
(4. 遊離の治療薬の除去)
オプションの希釈ステップ140の後に、治療薬(例えば核酸)の約70〜80%以上は、脂質小胞(例えばSPLP)内に取り込まれており、遊離の治療薬は製剤150から除去することができる。ある態様では、陰イオン交換クロマトグラフィーが使用される。都合のよいことに、高いダイナミックな核酸除去能力を発揮する陰イオン交換樹脂の使用は、使い捨てが可能であり、あらかじめ殺菌され、検認されていてもよく、また完全にスケーラブルである。さらに、この方法により、遊離の治療薬(例えば25%の総プラスミドのような核酸)の除去が好ましく行われる。クロマトグラフィー後の試料容量は不変であり、また治療薬(例えば核酸)および脂質濃度は、それぞれ約0.64、および14.4mg/mLである。この時点では、試料を被包性治療薬について分析し、約0.55mg/mLに調節することができる。
【0051】
(5. 試料濃縮)
ある事例では、例えば限外濾過160(例、平行流透析)を使用して、リポソーム溶液は約2〜6倍、好ましくは約4倍に随意濃縮される。一実施形態において、試料は限外濾過システムの供給貯蔵槽に移され、緩衝液が除去される。限外濾過などによる様々なプロセスを使用して緩衝液を除去することができる。一態様において、緩衝液は、例えば、内径約0.5mm、30,000の公称分子量カットオフ値(NMWC)を有するポリスルホン中空繊維を充填したカートリッジを用いて除去される。リポソームはこの中空繊維内に保持され、溶媒および小さな分子が中空繊維の細孔を通過することにより製剤から除去されるまで再循環される。この手順では、濾過液は浸透溶液として知られている。濃縮ステップが完了すると、治療薬(例えば核酸)および脂質濃度は、それぞれ約0.90および15.14mg/mLまで増加する。一実施形態において、アルカノール濃度は不変のままであるが、アルカノール:脂質比は4倍減少する。
【0052】
(6. アルカノール除去)
一実施形態において、濃縮された製剤は、その後、アルカノール170を除去するために、約5〜15部、好ましくは約10部の水溶液(例、緩衝液)(例、クエン酸緩衝液pH4.0(25mMクエン酸塩、100mMのNaCl)についてダイアフィルトレーションされる。ステップ170の完了時のアルカノール濃度は約1%未満である。脂質および治療薬(例えば核酸)濃度は不変であり、また治療薬被包レベルも一定値を維持することが好ましい。
【0053】
(7. 緩衝液置換)
アルカノールを除去した後、続いて、水溶液(例えば緩衝液)は、別の緩衝液180(例えば、生理食塩水10部、10mM Hepesを含む150mMのNaCl、pH7.4)に対するダイアフィルトレーションにより、置換される。治療薬(例えば核酸)に対する脂質の濃度比は不変を維持すること、不変のおよび核酸被包レベルも一定であることが好ましい。ある事例では、約10%容量の濃縮試料において、カートリッジを緩衝液で洗い流すことにより試料収率を改善できる。ある態様では、その後、このリンス液が濃縮試料に添加される。
【0054】
(8. 無菌濾過)
ある好ましい実施形態では、脂質濃度約12〜14mg/mLにおいて試料の無菌濾過190を任意に実施できる。ある態様において、カプセルフィルターとビーティングジャケット付きの気圧調節された調剤容器を用いて、約40psi未満の圧力で濾過が行われる。試料をわずかに熱することで、濾過の容易さが改善される場合がある。
【0055】
(9. 無菌充填)
無菌充填ステップ195は、従来のリポソーム製剤と同様のプロセスを使用して行なわれる。本発明のプロセスにより、最終製造物中に投入された治療薬(例えば核酸)の約50〜60%という結果が得られる。ある好ましい態様において、最終製造物の治療薬対脂質比はおよそ0.04〜0.07である。
【0056】
(IV. 治療薬)
本発明の脂質ベースの薬剤製剤および組成は、治療薬あるいは生理活性薬の全身または局所送達のために有用であり、また診断検定にも有益である。以下の記載は、一般にリポソームについて言及するものであるが、当業者には、この内容を本発明の他の薬物送達システムにも完全に適用できることがすぐに分かるであろう。
【0057】
以上のように、治療薬は、小胞形成中に脂質小胞に組み込まれることが好ましい。一実施形態において、疎水活性を脂質を含む有機溶剤に組み込むことができ、一方、核酸と親水活性を水性成分に加えることができる。ある事例では、治療薬にはタンパク質の1つ、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、前濃縮DNA、抗原、およびこれらの組み合わせが含まれる。好ましい態様では、治療薬は核酸である。核酸は、例えば単純疱疹ウイルス、チミジンキナーゼ(HSV−TK)、シトシン脱アミノ酵素、キサンチン−グアニンホスホリボシル転移酵素、p53、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、カルボキシエステラーゼ、デオキシシチジンリン酸化酵素、ニトロ還元酵素、チミジンホスホリラーゼ、あるいはシトクロムP450 2B1などのタンパク質をコード化する。
【0058】
ある態様において、治療薬は有機脂質成分に組み込まれている。ある事例では、治療薬は親油性である。好ましい親油性薬剤は、例えば、プロタックスIIIおよびパクリタクソール(Paclitaxol)、親油性ベンゾポルフィリン、フォスカーネットの脂質プロドラッグであるバーテポルフィリン(verteporfin)、1−O−オクタデシル−sn−グリセリン−3−ホスホノホルメート(ODG−PFA)、ジオレオイル[3H]ヨードデオキシウリジン([3H]IDU−O12)、iBOC[−L−Phe]−[D−beta−Nal]−Pip−[α―(OH)―Leu]−Val(7194)などの脂質誘導化HIVタンパク質分解酵素抑制ペプチド、およびその他の脂質誘導体化薬剤またはプロドラッグなどを含むタクソール、タクソール誘導体などである。
【0059】
別の実施形態において、本発明の脂質小胞は、小胞の形成の後に1つ以上の治療薬を導入することができる。ある態様において、本発明を用いて処理される治療薬は、治療すべき疾患の適切な処置として選択された様々な任意の薬剤であることができる。多くの場合、薬剤は、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、カンプトセシン、シスプラチン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、メトトレキセート、ストレプトゾトシンおよびその類似物などの抗悪性腫瘍薬である。特に、制癌薬は、アクチノマイシンD、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスチンアラビノシド、アントラサイクリン、アルキル化薬(alkylative)、白金化合物、代謝拮抗剤、および例えば、メトトレキセートおよびプリンとピリミジンの類似体などのヌクレオシド類似体を含むことが好ましい。さらに、本プロセスによって特定の組織に抗感染性薬剤を送達することが好ましい可能性がある。本発明の組成も、これに限定されないが、局所麻酔薬、例:ジブカイン、クロルプロマジン;ベータ受容体遮断薬、例:プロプラノロール、チモロール、ラベトロール(labetolol);血圧降下薬、例:クロニジン、ヒドララジン;抗うつ薬、例:イミプラミン、アミトリプチリン、ドキセピム(doxepim);抗コンバーザント(conversants)、例:フェニトイン);抗ヒスタミン剤、例:ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、プロメタジン;抗生物質/抗菌薬、例:ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、セフォキシチン;抗真菌薬、例:ミコナゾール、テルコナゾール(terconazole)、エコナゾール、イソコナゾール、ブタコナゾール(butaconazole)、クロトリマゾール、イトラコナゾール、ニスタチン、ナフチフィン(naftifine)、およびアンフォテリシンB;駆虫剤、ホルモン、ホルモン拮抗薬、免疫調節薬、神経伝達物質拮抗薬、緑内障治療薬、ビタミン、麻薬、および像影薬などのその他の薬剤の選択的な送達に使用することができる。
【0060】
(V. 装置)
別の実施形態において、本発明では、本発明のプロセスを実施するための装置を提供する。図3は、本発明の一実施形態による装置300の代表的な模式図例である。この模式図は説明図に過ぎず、本明細書の特許請求の範囲を限定するものではない。当業者には、他の変形、修正、変更が分かるであろう。
【0061】
一実施形態において、それぞれ水溶液および有機溶液を保持するために、本発明の装置は2つのレザバ、水溶液貯蔵部310および有機溶液レザバ320を含んでいる。ある態様において、脂質小胞製剤は低圧(例えば<10psi)で迅速に調製され、また本発明の装置とプロセスは完全にスケーラブルである(例えば0.5mL−5000L)。1Lスケールでは、脂質小胞は約0.4−0.8L/minで形成される。ある好ましい態様において、この装置はスタティックミキサーも、専用の押出装置も使用しない。
【0062】
一実施形態において、混合室340はTコネクタであり、オプションのホース突起を有し、この部位で液体ライン334と336は互いに180°で衝突する。混合角を変更することもでき、約27°から約90°の角度の間、または90°と180°の間で約100nm未満の脂質小胞を形成することもできる。好ましい態様では、フローラインの実質的に等しい流量を使用して、十分規格化され再現性のある平均径を有する脂質小胞が調製される。その他の態様において、例えばいくつかの事例で十分な混合を保証するために、液体ラインの流量を変更することによって十分規定され再現性のある平均径の脂質小胞が調製される。好ましい態様において、流量間の変動は50%未満、さらに好ましくは約25%未満、より好ましくは約5%未満である。
【0063】
図13はTコネクタを示し、一実施形態に従った関連するフロー力学を示す。流量の例とその結果生じる剪断速度およびレイノルズ数(乱流測定)は図14に示され、この後、実施例8でより詳細に説明する。以前のシステムと比較して、本発明はかなり低い(また実質的同等)流量で非乱流と増加した剪断速度を提供する。例えば、本発明は、約0.075から約0.3L/分の間の流量(両方のフローライン)で、剪断速度約500/sと3300/sの間の混合環境中で非乱流(Nre<2000)を都合よく提供する。
【0064】
2種類の液体成分の混合は、例えば、蠕動ポンプ330、容量型ポンプ、あるいは脂質エタノールと緩衝液容器320、310の両者の加圧を用いて実施することができる。一態様において、505Lポンプヘッドの付いたワトソン−マーロー(Watson−Marlow)505Di/Lポンプが使用され、シリコーンチューブ材料(例えばID3.2mm、肉厚2.4mmの硬化処理された白金、カタログ番号913A032024としてワトソン・マーローから入手可能)をポリプロピレンまたはステンレス鋼のTコネクタ(例えば1/8”ID)の中のフローラインに使用できる。脂質小胞は、一般に室温で形成されるが、脂質小胞は本発明に従って、高い温度で形成してもよい。他の現存のアプローチと異なり、緩衝液組成物は一般に不要である。実際には、本発明のプロセスおよび装置は、アルカノール中の脂質を水と混合することにより脂質小胞を配合することができる。ある態様において、本発明のプロセスおよび装置は、直径200nm未満である脂質小胞を形成する。
【0065】
プラスミドDNA(SPLPなど)を含む脂質小胞が調製される場合、カチオン性脂質と対イオンに対するプラスミドの比率を最適化することができる。精製された製剤の場合、混合後の70〜95%のプラスミドDNA(「pDNA」)被包とエタノール除去ステップが好ましい。pDNA被包レベルは、この最初のSPLP製剤を希釈することによって増加させることができる。意外なことに、本発明のプロセスおよび装置は、混合環境の中の溶液(溶液成分のうちの1つは治療薬を含む)を混合することで最大約90%の被包効率を提供する。
【0066】
ある態様において、本発明のリポソーム製造装置300は、レザバ310と320の温度コントロールのための温度調節機構(未表示)をさらに備える。第1の貯蔵部310と第2の貯蔵部320からの液体は、分離開口部で同時に混合室340内に流れ込む。装置300は、混合室の下流にリポソーム回収のための回収レザバ350をさらに備える。さらにある態様では、装置300は、レザバ310と320の一方または両方の上流に、貯蔵容器をさらに備える。さらに、レザバ310と320の一方または両方は、オーバーヘッドミキサーを装備したジャケット付ステンレス鋼容器であることが好ましい。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、本発明のプロセスを行なうために限外濾過システムを有する装置を提供する。図4は、本発明の一実施形態による装置400の代表的な図解例である。この模式図は説明図に過ぎず、本明細書の特許請求の範囲を限定するものではない。当業者には、他の変形、修正、変更が分かるであろう。
【0068】
ある態様において、装置400は多数のレザバを含んでおり、限外濾過システムを装備している。水溶液レザバ440および有機溶液レザバ430は、それぞれ上流に調製用小胞433および425を有する。一態様において、脂質調製容器425は、脂質調製容器と液体流通状態のアルカノール貯蔵容器421を任意に備える。
【0069】
図4に示されるように、限外濾過システムは、回収容器455、交換カラム460、および接線流限外濾過カートリッジ465を備える液体コミュニケーション内にインキュベーション容器450を有する。限外濾過システムは浸透容器470を任意に備える。ある態様において、SPLP試料を濃縮し、続いて緩衝液置換によって製剤からエタノールを除去するために限外濾過が使用される。
【0070】
操作の一実施形態において、希釈されたSPLPは、限外濾過システムの供給レザバに転送される。例えば、内径約0.5mm、100,000分子量カットオフ値(MWCO)を有するポリスルホン中空繊維を充填したクロスフローカートリッジ465を用いて、緩衝液とエタノールを除去することにより濃縮が行われる。SPLPは中空繊維内に保持され、再循環される。一方、エタノールと緩衝液成分はこれらの中空繊維の細孔を通過することによりこの製剤から除去される。この濾過液は浸透液として知られており、容器470によって廃棄される。このSPLPが所期のプラスミド濃度に濃縮された後、SPLPが懸濁されている緩衝液は限外濾過によって除去され、等容量の最終緩衝液と置換される。限外濾過は、通常の透析のような他の方法と交換で
【実施例】
【0071】
VI. 実施例
(実施例)
本実施例は、本発明の一実施形態に従って製造されたSPLPの様々な物理的および化学的特性を示す。
【0072】
(表I:本発明によるプロセスステップにおけるエタノール、pDNA量、および脂質含有量)
【0073】
【表1】

【0074】
*緩衝液置換ステップの後、10%総容積およびSPLP損失を見積もること。
**pDNAの75%が被包化されており、全ての遊離のDNAは除去されていると仮定すること。陰イオン交換カートリッジ上のSPLPの5%損失を見積もること。このステップでは、試料は被包性pDNAのために分析され、濾過ステップ(0.55mg/mlpDNAに調整後の濃度を括弧内に示す)の間のSPLP損失を予測するために、0.55mg/mlに調節される。
***最大5%容量損失および10%までの総SPLP損失を想定すること。
【0075】
表IIは、本発明の1つの態様によって製造されたプラスミドの規格を示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表IIIは、本発明の1つの態様によって製造されたSPLP規格を示す。
【0078】
【表3】

【0079】
(実施例2)
本実施例は、本発明の一実施形態中の多様なプロセスパラメータを示す。
【0080】
SPLPの一実施形態において、個々の脂質成分のいずれもが沈殿しないように、十分高いエタノール濃度が提供されているので、脂質溶解のために最初のエタノール濃度が変化する場合でも、小胞サイズまたはDNA被包化のいずれに対してもほとんど影響を及ぼさなかった(図5参照)。エタノール75%以下では、脂質は55°Cに加熱しても溶解しなかった。55°Cで75%エタノール中で溶解した脂質は、より大きな平均径とより低いDNA被包化を有するSPLPを形成した(図5参照)。
【0081】
初期のDNA対脂質比は、0.048から0.081mgDNA:mg脂質製剤まで変化し、77〜90%DNA被包を有する同様サイズの小胞が形成された。
【0082】
SPLPSは、最初の混合ステップにおいて、約3.5〜6のpH範囲で調製されており、全ての製剤は150nm未満の平均粒径を有し、50%をこえるDNA被包化効率を示した(図6参照)。より高いpHでも同様の小胞サイズの小胞を調製することが可能であるが、DNA被包化効率は低い。
【0083】
ある態様において、本発明のプロセスの1つを使用して調製された空の小胞の平均小胞径は、希釈する緩衝液の塩濃度(例、スフィンゴミエリン:コレステステロールcholestesterol小胞、EPC:EPG小胞)に依存する。緩衝液中のイオン条件を変えると、与えられた脂質のそれ自身を二重層と小胞内に整列させる傾向に影響を及ぼす。
【0084】
あるSPLP製剤の開発中に、希釈緩衝液のpHと塩濃度の両方がDNA被包化効率に重要な影響を及ぼすことが分かった。必然的に、pKaよりも低いpH値を有するカチオン性脂質成分(DODMA)のための希釈緩衝液はより高い被包化値を示した(図7)。興味深いことに、150mMの最終塩濃度もDNA被包には最適であった(図8)。
【0085】
(実施例3)
本実施例は、EPCとPOPC小胞とを製造するための本発明の1つのプロセスの使用例を示す。
【0086】
POPC小胞は膜融合アッセイのためのの「シンク」小胞として有用である。特に、これらを過剰に使用することにより、他のリポソームからPEG脂質を除去することができ、このため、他のリポソームを不安定化させ、所望の膜と融合することができる。EPC小胞は、動脈性プラークからコレステロールを取り除くために有用である。
【0087】
80%の初期エタノール濃縮および10mMの脂質濃度で小胞を調製した。混合および希釈した後、エタノール濃度は20%であり、脂質濃度は5mMであった。EPC製剤はPBSと混合し希釈し、POPCはHBSと混合し希釈した。両製剤とも濃縮し、エタノールを限外濾過カートリッジ、すなわちPBSに対するEPC、およびHBSに対するPOPCを使用して除去した。続いて、両製剤は0.22umシリンジフィルターを使用して無菌濾過を行った。
【0088】
【表4】

【0089】
(実施例4)
本実施例は、pH勾配を有するEPC/コレステロール小胞を製造するための本発明の1つのプロセスの使用例を示す。
【0090】
EPCとコレステロールを含む単層状脂質小胞(LUV)は、一般に、脂質フィルムを水和させ、高圧押出を用いることにより小胞サイズの減少を受ける多層状脂質小胞(MLV)を形成させることにより調製されている。酸性水性内部および脂質二重層を横断するpH勾配により、これらの小胞を調製できることは周知のことである。高い内部濃度において、これらの小胞中に弱塩基性の親油性分子が蓄積することが示された。現在後期臨床試験が行われている種々の薬剤導入リポソームは、このアプローチを利用している(例えば、ミオセット:ドキソルビシン導入小胞)。
【0091】
一態様において、pH勾配などが存在するかどうかを判定するためにサフラニンが使用される。サフラニンは、膜のpH勾配の試験に使用される親油性塩基性染料である。
【0092】
EPC/Chol小胞は、80%の初期エタノール濃縮、および10mMの脂質濃度で本プロセスおよび装置を使用して調製された(図9A〜Bを参照)。混合と希釈の後、エタノール濃度は20%であり、脂質濃度は5mMであった。以下の3つの異なる製剤を調製した。
【0093】
1.PBS(対照群)で混合希釈された製剤。
【0094】
2.150mMクエン酸塩(最終クエン酸塩濃度は94mMである)で混合希釈された製剤。
【0095】
3.300mMクエン酸塩(最終的クエン酸塩濃度は188mMである)で混合希釈された製剤。
【0096】
混合し希釈した後、それぞれの試料を濃縮し、限外濾過を使用してエタノールを除去した。濃縮ステップの後、小胞内に存在する酸性クエン酸塩緩衝液がエタノール除去の中に漏出しないように、それぞれの試料をその希釈緩衝液で透析濾過を行った。全ての試料は、最後的にpH7.4でリン酸緩衝生理食塩水の外部緩衝液により処方された。無菌濾過の後、これらの製剤の平均小胞径は非常に均等であり(90〜92nm)、認容標準偏差とχ2乗値を示した(表V)。
【0097】
透析に続いて、小胞について無限コレステロールアッセイを用いて、脂質濃度の分析を行った。続いて、濾過された10mM原液から得られた5mM脂質と0.2mMサフラニンを含む溶液を調製した。この溶液を37℃、30分間インキュベートした。続いて、それぞれのインキュベート溶液の500ulアリコートを2−mLセファロースCL4Bゲル濾過カラムに通した。遊離の色素を小胞から分離し、脂質を含む分画を捕集し、分析を行った。サフラニン濃度は、516nm励起と585nmの発光にて、試料の蛍光を測定することにより定量した。
【0098】
酸性内部を備えた小胞は、94mMクエン酸塩含有小胞と共にサフラニンが蓄積され、最も高い被包化を示した。対照的に、PBS対照小胞は、きわめて少ないサフラニンで被包化された。188mMクエン酸塩小胞も多少のサフラニンを被包化したが、94mMクエン酸塩小胞ほどではなかった(図10を参照)。
【0099】
【表5】

【0100】
(実施例5)
本実施例は、スフィンゴミエリン/コレステロール小胞を製造するための本発明の1つのプロセスの使用例を示す。
【0101】
スフィンゴミエリン/コレステロール小胞がその耐久性と強度のため好ましい。これらの小胞をpH勾配を用いて、薬剤を被包化するためにも使用することができる。しかしながら、これらのLUVは一般に65°Cよりも高い温度で形成させる必要があり、高圧押出が用いられる。リポミキサー(lipomixer)によりこれらの小胞を形成させるために、エタノール濃度、脂質濃度、および混合・希釈緩衝液の塩濃度などのいくつかの変数を考慮する必要がある。
【0102】
この小胞は、55/45のSM/Chol(mol:mol)比で配合され、一方、混合後の初期エタノール濃度は50〜25%で変動した。試験を行った希釈緩衝液は、PBS、水、10mMクエン酸塩、150mMクエン酸塩、および300mMクエン酸塩を含めた。最終脂質濃度は0.5〜2.5mMの範囲であった。塩(すなわち、緩衝液を使用して)の存在下で配合されたこの小胞は、MLVを示す200〜500nmであった。エタノールを除去し小胞を安定化させるために、これらの試料のアリコートを150mMクエン酸塩および水の両方に対して透析を行った。
【0103】
(実施例6)
本実施例は、カルセインなどの小分子を受動的に被包化する小胞を調製するための本発明の1つのプロセスの使用例を示す。
【0104】
カルセインは、10mMをこえる濃度で自己消光する蛍光色素である。カルセインを被包化した小胞は融合アッセイに使用し、小胞が互いに融合したかどうかを判定することができる。融合は内部カルセイン濃度を減少させ、その結果蛍光を生じる。混合および希釈後に、19%のエタノール濃度とおよび2mM脂質において、DSPC:CHOL:PEG DLG:DODMA(20:55:10:15)で小胞を調製した(図11を参照)。エタノールに溶解された脂質は、20mMクエン酸塩および75mMカルセインを含む溶液と混合し、続いて、得られた小胞を300mM NaClと37.5mMカルセインで希釈した。カルセインは100mM原液より得た。この小胞中の最終カルセイン濃度は37.5mMであった。
【0105】
混合および希釈後、被包化されていない色素を除去するため、この小胞をHBSに対して一晩透析した。遊離色素の全てを除去することに失敗したので、小胞をゲル濾過カラムに通した。脂質分画を回収し分析した。実際に、カルセインは小胞の内部の濃度で自己消光であることが分かった。これは、本発明のプロセスおよび装置を使用して、小分子を受動的に被包化する小胞を調製することができるという明白な証拠である。
【0106】
【表6】

【0107】
(実施例7)
本実施例は、従来の方法に対する本発明の1つのプロセスの使用例を示す。
【0108】
図12を参照すると、脂質を90%エタノール(A)に溶解し、本発明の装置を使用し、実線で示した(「リポミキサーLipoMixer」)ように45%(B)および22.5%エタノール(C)まで段階的に行うか、もしくは点線で示すように攪拌された緩衝液中で、22.5%(C)の最終エタノール濃度まで連続的に滴下することによるいずれかにより、希釈を行った。両処方における最終エタノール濃度は同じであったが、本発明のプロセスによって形成されたSPLPは、85%のDNA被包化を有していた。それに対して、エタノール滴下によって調製された小胞はDNA被包化はわずか5%であった。
【0109】
(実施例8)
本実施例は、本発明によってリポソームを形成するための様々な条件および性質を示す。他の条件およびパラメータを使用してもよく、またここで使用されたものが具体例にすぎないことを認識すべきである。
【0110】
図13および14において、剪断速度、レイノルズ数(Nre)および小胞サイズなどの様々なパラメータを明らかにするため、種々の流量(脂質および水溶液流量の両者は実質的に同等)をモデル化し分析を行った。得られたエタノール溶液の密度と粘度を補正するT−コネクタの出口でパラメータと条件を測定した。2つの流れが互いに対向して出会うことにより生じる余分な乱流も、また流れが90度のコーナーで向きを変える結果生じる余分の乱流も、寄与していなかった。
【0111】
本明細書に記載された実施例および実施形態は説明用ものにすぎず、実施例および実施形態に照らしてなされる様々な修正および変更は、明細書および添付されている特許請求の範囲に含まれるべきものとされる。本明細書に引用された全ての出版物、特許および特許出願は、その内容全体を参照によって本願明細書に引用したものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−184947(P2010−184947A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129251(P2010−129251)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2004−516377(P2004−516377)の分割
【原出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【出願人】(505005924)プロティバ バイオセラピューティクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】