リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類の測定方法、ならびに当該方法を利用した測定装置

【課題】 試料に含まれる各リポタンパク中のビタミンE類を測定する方法において、各リポタンパク中のコレステロールも同時に測定可能な方法を提供すること。
【解決手段】 リポタンパクを含む試料をイオン交換クロマトグラフに供してリポタンパクを分離し、分離したリポタンパクを、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液と反応させてコレステロールおよびビタミンE類を遊離させ、遊離させたコレステロールおよびビタミンE類を逆相クロマトグラフに供して分離し、分離したコレステロール量およびビタミンE類の量を測定する、測定方法、ならびに前記方法を利用した装置により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれるリポタンパク(高比重リポタンパク(HDL)、低比重リポタンパク(LDL)および中間型リポタンパク(IDL)、超低比重リポタンパク(VLDL)、カイロミクロン(CM)およびリポタンパク(a)(Lp(a)))中のコレステロールおよびビタミンE類(αトコフェロール、γトコフェロール)の同時測定方法、ならびに当該測定方法を利用した測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化の危険因子として、酸化したリポタンパクが注目を浴び、多くの研究がなされている。一方、リポタンパクが酸化リポタンパクになるのを防ぐための主要な抗酸化物質として、ビタミンE類(主にαトコフェロールとγトコフェロール)が知られている。従って、血液試料中に含まれる各リポタンパク中のビタミンE類の量を分析することは、動脈硬化のメカニズムを理解するうえで重要である。
【0003】
血清リポタンパク中に多量に含まれるビタミンE類の一つ、αトコフェロールについては複数の学術研究が成されている。冠動脈疾患患者の血清LDL中の総コレステロール量に対するαトコフェロール量が健常者のそれに比べて有意に低下していることが報告されており、LDLの抗酸化作用を低下させ動脈硬化の原因の一つになっていると考えられている(非特許文献1および2)。LDL中のγトコフェロールおよびLDL以外のリポタンパク中のビタミンE類についての報告はこれまでにないが、LDL以外のリポタンパク中にもビタミンE類が含まれていることから、各リポタンパク中のビタミンE類の量を分析し比較することで、動脈硬化の進展のメカニズムの詳細を知ることができ、動脈硬化性疾患の予防および治療に結びつけられることが予想される。
【0004】
従来、リポタンパク中のビタミンE類の測定方法として、試料中の各リポタンパクを分離後、リポタンパク中のビタミンE類をヘキサンで抽出し、抽出溶液を乾固して濃縮後、メタノール等により再溶解して逆相クロマトグラフに供する方法が知られている(非特許文献1から4)。また前記測定方法における、各リポタンパクの分離方法については、超遠心分離による方法(非特許文献1から4)、アクリルアミド電気泳動による方法、ゲルろ過クロマトグラフによる方法、イオン交換クロマトグラフによる方法(非特許文献5および6)が知られている。
【0005】
一方、本出願人は以前、
イオン交換クロマトグラフによりリポタンパクを分離し、
有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液と反応させてビタミンE類を遊離させ、
遊離したビタミンE類を逆相クロマトグラフに供し分離し、
分離したビタミンE類の量を測定する、
リポタンパク中のビタミンE類の測定方法を確立している(特開2008−003082号公報:特許文献1)。前記測定方法は、試料に含まれる各リポタンパク中のビタミンE類を簡便に測定できる方法であり、自動化も可能な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−003082号公報
【特許文献2】特開2002−296261号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Haidari Mら、Clinical Chemistry、47、p.1234(2001)
【非特許文献2】Feki Mら、Clinical Chemistry、46、p.1401(2000)
【非特許文献3】Yolanda Bら、Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology、17、p.127(1997)
【非特許文献4】Teissier Eら、Clinical Chemistry、42、p.430(1996)
【非特許文献5】Hirowatari Yら、J.Lipid Research、44、p.1404(2003)
【非特許文献6】Hirowatari Yら、Anal.Biochem.、308、p.336(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1で開示のリポタンパク中のビタミンE類の測定方法は、試料に含まれる各リポタンパク中のビタミンE類を簡便に測定できる方法である。しかしながら、リポタンパク中のビタミンE類の測定値は、試料に含まれる各リポタンパクの濃度によっても変動する。したがって、例えば、患者が異なる場合や、同じ患者であっても時期が異なる場合や、特定の病態を有する患者集団間で比較する場合には、各リポタンパク中のビタミンE類の測定値と、当該リポタンパク中のコレステロール量、タンパク量、中性脂肪量、総脂肪量などとの比率を算出して、比較する必要がある。しかしながら、前記比較を行なうには、特許文献1で開示のリポタンパク中のビタミンE類の測定方法と、各リポタンパク質中のコレステロール、タンパク質、中性脂肪または総脂肪を測定する方法(例えば非特許文献5に記載の方法)とを別個に行なった後、各方法で得られた結果を組み合わせる必要があったため、操作が煩雑であった。また、比率を算出する際、誤差が大きくなる問題があった。
【0009】
そこで本発明は、試料に含まれる各リポタンパク中のビタミンE類を測定する方法において、各リポタンパク中のコレステロールも同時に測定可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するためになされた本発明は、以下の態様を包含する:
すなわち本発明の第一の態様は、
リポタンパクを含む試料をイオン交換クロマトグラフに供してリポタンパクを分離し、
分離したリポタンパクを、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液と反応させてコレステロールおよびビタミンE類を遊離させ、
遊離させたコレステロールおよびビタミンE類を逆相クロマトグラフに供して分離し、
分離したコレステロール量およびビタミンE類の量を測定する、
リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類を同時に測定する方法である。
【0011】
また本発明の第二の態様は、分離したコレステロール量の測定と分離したビタミンE類の量の測定とを、異なる検出器で行なう、前記第一の態様に記載の方法である。
【0012】
また本発明の第三の態様は、前記第一または第二の発明に記載の測定方法で得られた、各リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を算出することで、糖尿病の病態を測定する方法である。
【0013】
また本発明の第四の態様は、前記第一または第二の発明に記載の測定方法で得られた、各リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を算出することで、心筋梗塞の病態を測定する方法である。
【0014】
また本発明の第五の態様は、
リポタンパクを含む試料を一定量導入する試料導入部と、
リポタンパク質を分離するためのイオン交換カラムを有したイオン交換クロマトグラフ部と、
イオン交換クロマトグラフ部から溶出した液の一部または全部と、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液とを混合する試薬混合部と、
前処理液により遊離したコレステロールおよびビタミンE類を分離するための逆相カラムを有した逆相クロマトグラフ部と、
逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるコレステロール量を測定するための検出器と、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるビタミンE類の量を測定するための検出器と、を有した検出部と、
試料導入部で導入した試料およびイオン交換カラムに導入する溶離液を送液する第一の送液部と、
前処理液を送液する第二の送液部と、
逆相カラムに導入する溶離液を送液する第三の送液部と、
を備えた、リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類を同時に測定する装置である。
【0015】
また本発明の第六の態様は、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるコレステロール量を測定する検出器が紫外検出器であり、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるビタミンE類の量を測定する検出器が蛍光検出器である、前記第五の態様に記載の装置である。
【0016】
また本発明の第七の態様は、逆相クロマトグラフ部に有した逆相カラムが二本以上である、前記第五または第六の態様に記載の装置である。
【0017】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の測定方法の測定対象である、リポタンパクを含む試料としては、全血、血清、血漿、血清といった血液試料や、前記試料を適切な溶液に懸濁して得られる懸濁溶液が例示できる。
【0019】
本発明の測定方法で測定するコレステロールは、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液により遊離された遊離コレステロールである。血液中のコレステロールには、遊離型コレステロールとエステル型コレステロールの2種類が存在し、通常コレステロールの測定に用いられる、コレステロールエステラーゼにより試料中のエステル型コレステロールを遊離型コレステロールに変換後、コレステロールオキシダーゼにより遊離型コレステロールを分解して生じた過酸化水素の量を比色法で測定する方法では、遊離型コレステロールとエステル型コレステロールとの総和(総コレステロール量)を測定する。しかしながら、本発明の測定方法では、前述したエステル型コレステロールを遊離型コレステロールに変換する反応を組み入れると測定装置が複雑となることから、遊離型コレステロールのみを測定する。ただし、各リポタンパク中の総コレステロール量と遊離型コレステロール量とは良好な相関関係(後述の実施例1参照)があることから、本発明の測定方法で得られる、各リポタンパク中の遊離コレステロール量とビタミンE類との比率を、病態を測定する際用いる、各リポタンパク中の総コレステロール量とビタミンE類との比率として用いてもよい。
【0020】
本発明の測定方法では、リポタンパクを含む試料をまずイオン交換クロマトグラフに供して各リポタンパクを分離する。イオン交換クロマトグラフは、分離能が高く、種々のリポタンパクを精密に分離することができる。イオン交換クロマトグラフは、分離剤をカラムに充填した態様で実施すると好ましく、また使用する分離剤(イオン交換体)としては、リポタンパクの分離能が高い、陰イオン交換クロマトグラフ用の分離剤(陰イオン交換体)が好ましい。イオン交換クロマトグラフによるリポタンパクの分離操作では、試料中のリポタンパクを分離剤(例えば陰イオン交換体)にいったん吸着させた後、塩濃度の異なる溶離液をステップグラジエントまたはリニアグラジエントで供することにより、電荷の差および疎水性の差に基づいて各リポタンパクが分離溶出される。イオン交換クロマトグラフで使用する溶離液には、カオトロピックイオンを添加すると好ましい(特許文献1)。イオン交換クロマトグラフにおいて使用する、分離剤の量(イオン交換容量)、溶離液の組成、溶離液の流速等の諸条件は、供する試料の種類や量に応じ、後述する実施例で採用した条件、または予備検討により、各リポタンパクを分離し、異なる画分として回収できるような条件を適宜決定すればよい。ステップグラジエントまたはリニアグラジエントの溶出条件は、どのリポタンパク中のビタミンE類を測定するかによって適宜設定すればよい。例えば、血液中の主たるリポタンパクである、高比重リポタンパク(HDL)、低比重リポタンパク(LDL)および超低比重リポタンパク(VLDL)中のビタミンE類を測定することを目的とする場合は、まず試料中のリポタンパクをイオン交換体表面にいったん吸着させた後、最初の溶出条件(ステップ)でHDLを溶出し、2番目のステップでLDLおよび中間リポタンパク(IDL)を溶出し、3番目のステップでVLDLを溶出し、4番目のステップでカイロミクロン(CM)およびリポタンパク(a)(Lp(a)を溶出すればよい。なお、2番目のステップでLDLとIDLを同時に溶出させているが、これは、広義のLDLはIDLも含むこと、またIDLが高値を示す病態がまれであること、から同時に溶出させている。イオン交換クロマトグラフからの溶出液の回収は、例えば、ステップグラジエントの各ステップ毎、または一定容量毎に回収すればよい。
【0021】
回収したイオン交換クロマトグラフからの溶出液は、当該溶出液の全て、または当該溶出液のうちリポタンパクを含む画分に対して、前処理液を一定の容量比で添加することで、リポタンパクからコレステロールおよびビタミンEを遊離させる。前処理液は、コレステロールおよびビタミンE類を溶解するための有機溶媒と、リポタンパク粒子を壊してコレステロールおよびビタミンE類を遊離させるための界面活性剤とを少なくとも含んでいればよく、さらにアスコルビン酸等コレステロールおよびビタミンE類の酸化を防止するための還元剤や、界面活性剤とともにタンパク変性作用によりリポタンパク粒子を壊す効果を有するカオトロピックイオンを含んでもよい。特にイオン交換クロマトグラフにおける溶離液にカオトロピックイオンが添加されていない場合には、前処理液にカオトロピックイオンを含むと好ましい。コレステロールとビタミンE類は、いずれもリポタンパク中に含まれており、かつ両者の疎水性が類似していることから、前処理液の組成は、特許文献1に記載した、リポタンパク中のビタミンE類を遊離させる前処理液の組成と同様の組成としてよい。
【0022】
前処理液との反応により、各リポタンパクから遊離したコレステロールおよびビタミンE類は、リポタンパクと前処理液との混合液として逆相クロマトグラフに供する。イオン交換クロマトグラフにより各リポタンパク画分を分離して溶出させる際、塩を含む溶離液を使用することから、本発明の測定方法では遊離したコレステロールおよびビタミンE類の分離に、塩類を含む試料を精度よく分離できる逆相クロマトグラフを採用している。逆相クロマトグラフは、イオン交換クロマトグラフと同様、分離剤をカラムに充填した態様で実施すると好ましい。前処理液により遊離させたコレステロールおよびビタミンE類を含む試料を、逆相クロマトグラフに供することにより、コレステロールおよびビタミンE類を分離して溶出させ、当該溶出液に含まれるコレステロール量およびビタミンE類の量を測定することで、リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類を同時に測定することができる。逆相クロマトグラフにおける、使用する分離剤の量、溶離液の組成、溶離液の流速等の諸条件は、分析に供する試料の種類や量に応じ、後述する実施例で採用した条件、または予備検討により、適宜決定すればよい。なお分析精度の向上を目的に、イオン交換クロマトグラフによるリポタンパクの分離後、逆相クロマトグラフに供するまでに、δトコフェロールをインターナルコントロールとして添加してもよい。δトコフェロールはビタミンE類の一つであるが、リポタンパク中に含まれるビタミンE類は主にαトコフェロールとγトコフェロールであり、δトコフェロールはαトコフェロールの100分の1程度しか存在しないため、インターナルコントロールとして最適である。
【0023】
逆相クロマトグラフにより分離されたリポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類は各測定対象に適した方法で検出することで、コレステロール量およびビタミンE類の量を測定することができる。ただし、リポタンパク中のコレステロールとリポタンパク中のビタミンE類とを同一の方法で検出すると、クロマトグラムにおいてピークが重なった場合、検出が困難となることから、好ましくは、リポタンパク中のコレステロールの検出と、リポタンパク中のビタミンE類の検出は、異なる方法(検出器)で検出したほうが好ましい。
【0024】
本発明の測定方法で得られる、リポタンパク中のコレステロール量およびリポタンパク中のビタミンE類の量から、リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を算出することで、糖尿病の病態および心筋梗塞の病態を測定することができる。具体的には、
(1)VLDL中のγトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ低い場合は糖尿病の病態を有し、健常人の平均値に比べ低くない場合は糖尿病の病態を有しないとする、糖尿病の病態の測定、
(2)LDL中のαトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ高い場合は糖尿病の病態を有し、健常人の平均値に比べ高くない場合は糖尿病の病態を有しないとする、糖尿病の病態の測定、
(3)LDL中のαトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ高い場合は心筋梗塞の病態を有し、健常人の平均値に比べ高くない場合は心筋梗塞の病態を有しないとする、心筋梗塞の病態の測定、
(4)VLDL中のαトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ低い場合は糖尿病の病態を有し、健常人の平均値に比べ低くない場合は糖尿病の病態を有しないとする、糖尿病の病態の測定、
が例示できる(特許文献1)。
【0025】
本発明の測定方法を用いた、リポタンパク中のコレステロール量およびビタミンE類の量を同時に測定する装置(以下単に、本発明の測定装置とする)における試料導入部は、試料導入部の所定場所に搬入された試料容器等から自動的に一定量の試料を採取し得るものであれば特に制限はなく、AS−8020(商品名、東ソー(株)製)など、通常用いられるオートサンプラーを使用することができる。また試料導入部には、試料容器を前記所定場所に自動的に搬入する装置をさらに有してもよい。
【0026】
本発明の測定装置におけるイオン交換カラムは、各リポタンパクを分離可能なものであれば制限はなく、具体例として、DEAE−NPR、DEAE−5PW(いずれも商品名、東ソー製)があげられる。特に、DEAE−NPR(商品名、東ソー製)といった、分離能力の高いノンポーラス系の陰イオン交換カラムが好ましい。
【0027】
本発明の測定装置における逆相カラムは、コレステロールおよびビタミンE類を吸着可能なものであれば制限はなく、具体例として、ODS−80Ts(商品名、東ソー製)があげられる。なお本発明の測定装置において、逆相クロマトグラフ部による一回の分析には、一定の時間が必要である。後述の実施例2のように、一回の分析に15分程度を要する場合には、そのままだとイオン交換クロマトグラフ部から溶出した各リポタンパクに対する逆相カラムでの分析が完了する前に、他のリポタンパクがイオン交換クロマトグラフ部から溶出してしまう。このため、目的のリポタンパクを溶出させた後、一旦、イオン交換カラムに導入する溶離液の流速を下げるか、溶離液を停止するか、塩濃度の低い溶離液を流す。そして逆相クロマトグラフ部による前記リポタンパクの分析終了後、イオン交換カラムに導入する溶離液の流速を戻す(溶離液の流速を下げるか、溶離液を停止する場合)、または溶離液の塩濃度を戻し(塩濃度の低い溶離液を流した場合)、イオン交換クロマトグラフ部から次のリポタンパクを溶出させ、逆相クロマトグラフ部へ導入する。したがって、本発明の測定装置に備える逆相カラムとして、マイクロカラムのような、分析に要する時間を短縮可能なカラムを用いると好ましいといえる。
【0028】
本発明の測定装置における試薬混合部は、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液の一部または全部と、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液とを混合可能な構成であればよい。後述の実施例2では、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液の全部を前処理液と混合後、その一部を逆相クロマトグラフ部に導入している。ただし、クロマトグラフ条件が一定であれば、イオン交換クロマトグラフ部からの各リポタンパクの溶出時間が予想し得るため、前処理試薬の送液を当該予想時間に合わせて行ない、それ以外の時間は送液を停止する態様を採用してもよく、当該態様により前処理試薬の消費量を節約することができる。イオン交換クロマトグラフ部からの溶出と前処理試薬との混合は、例えば、前処理試薬を送液する配管とイオン交換クロマトグラフ部からの溶出液を送液する配管とを単に合流させるのみでもよいが、合流後に例えばスタティックミキサーC(商品名、東ソー製)のような混合装置を用いて混合したり、合流後に配管内径が太い配管を設け流速を低下させることで混合したり、内壁に凹凸を形成した配管や内径が変化する配管を用いて混合したりすると好ましい。
【0029】
本発明の測定装置における検出部は、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるコレステロール量を測定するための検出器と、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるビタミンE類の量を測定するための検出器とを有している。コレステロール量を測定可能な検出器としては、紫外検出器、質量検出器、蛍光検出器、電気化学検出器を例示できる。この中でも、十分な検出感度を有し、かつメンテナンス等の維持作業が容易な、紫外検出器が特に好ましい。ビタミンE類の量を測定するための検出器としては、紫外検出器、質量検出器、蛍光検出器、電気化学検出器が例示できる。この中でも、十分な検出感度を有し、かつメンテナンス等の維持作業が容易な、蛍光検出器が特に好ましい。
【0030】
本発明の測定装置の一例を図2に示す。図2に示す測定装置は、
リポタンパクを含む試料を一定量導入するオートサンプラー4と、
リポタンパク質を分離するための陰イオン交換カラム5を有したイオン交換クロマトグラフ部と、
イオン交換クロマトグラフ部から溶出した液の一部または全部と、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液6とを混合する、三方混合流路7と混合装置3bとを有した、試薬混合部と、
前処理液により遊離したコレステロールおよびビタミンE類を分離するための逆相カラム10a・10bを有した逆相クロマトグラフ部と、
逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれる遊離したコレステロール量を測定するための紫外検出器11と、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるビタミンE類の量を測定するための蛍光検出器12と、を有した検出部と、
試料導入部で導入した試料およびイオン交換カラム5に導入する溶離液1a・1bと、溶離液1a・1bを送液するためのポンプ2a・2bと、溶離液1a・1bを混合させるための混合装置3aとを有した、第一の送液部と、
前処理液6と、前処理液6を送液するためのポンプ2eと、有した第二の送液部と、
逆相カラム10に導入する溶離液1c・1dと、溶離液1c・1dを送液するためのポンプ2c・2dと、有した第三の送液部と、
イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液と前処理液との混合液をサンプルループ9に充填可能な状態(OFF状態)と、サンプルループ9に充填した混合液を溶離液1cにより逆相カラム10aへ送液可能な状態(ON状態)とを切り替え可能な、流路切り替えバルブ8aと、
サンプルループ9に充填した混合液を逆相カラム10aに充填可能な状態(OFF状態)と、逆相カラム10aに吸着したリポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類を
溶離液1dにより逆相カラム10bへ送液可能な状態(ON状態)とを切り替え可能な、流路切り替えバルブ8bと、
を備えた装置である。
【0031】
図2に示す測定装置では、ポンプ2a・2bの駆動をコンピューター等で制御し塩濃度の異なる溶離液1a・1bの送液量を制御することで、イオン交換カラム5に導入する異なる組成(塩濃度)の溶離液をステップグラジエントまたはリニアグラジエントのいずれのモ−ドでも導入することが可能である。ポンプ2a・2bの具体例としては、DP−8020(商品名、東ソー製)があげられる。なお、図2に示す測定装置では、ポンプ2a・2bにより送液された溶離液1a・1bは、イオン交換カラム5に導入する前に混合装置3aで混合される。混合装置3aの具体例としては、スタティックミキサーC(商品名、東ソー製)があげられる。
【0032】
図2に示す測定装置において、前処理試薬を送液するポンプ2e、および逆相カラムに導入する溶離液を送液するポンプ2c・2dは、前述のポンプ2a・2b同様、DP−8020(商品名、東ソー製)のような、液体クロマトグラフで通常用いられるポンプを使用することができる。なお、図2に示す測定装置では、六方切り替えバルブ8aを備えることで、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液と前処理試薬との混合液、および逆相カラムに導入する溶離液1cを送液するための送液部を簡略化している。
【0033】
また図2に示す測定装置では、逆相クロマトグラフ部に逆相カラムを二本有している。これにより、リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類のクロマトグラムにおける、テーリング(本来のピークの後に尾を引く現象)やリーディング(本来のピークの前に尾を引く現象)の発生が抑えられ、ピーク形状が改善する。その結果、分離性能の向上と、測定再現性および測定精度の向上が期待できる。さらに図2に示す測定装置では、二本の逆相カラムの一方10aを、流路切り替えバルブ8bのサンプルループ上に設けており、逆相カラム10aは、イオン交換クロマトグラフ部から溶出した液と前処理液との混合液に含まれるコレステロールおよびビタミンE類を吸着する一方、当該混合液に含まれる不純物はある程度除去する働きを有する。これにより、例えばリポタンパクを含む試料が患者血液の場合、当該試料に含まれる投与薬物による妨害を受けにくくなる。また、後続の逆相カラム10bの耐久性も向上する。さらに、コレステロールおよびビタミンE類の吸着工程と分離工程とを分けて行なうため、分析時間の短縮にもつながる。
【0034】
図2に示す測定装置による、リポタンパク中のコレステロール量およびビタミンE類の量の測定は、具体的には以下の方法で行なう。
(A)オートサンプラー4を用いて採取したリポタンパクを含む試料を、溶離液1a・1bとともにポンプ2a・2bで送液してイオン交換カラム5に供し、試料中のリポタンパクをカラムに保持させる。
(B)同一組成の溶離液を一定量送液後、ポンプ2a・2bの送液量を制御し、イオン交換カラム5に導入する溶離液の塩濃度を高くすることで、イオン交換カラム5に保持された各リポタンパクを分離して溶出させる。
(C)溶出した各リポタンパクに対し、ポンプ2eにより送液された前処理液6を混合することで、リポタンパクからコレステロールおよびビタミンE類を遊離させる。なお前処理液6の送液量は、イオン交換カラム5から溶出するリポタンパクが希釈されすぎると、後続の逆相クロマトグラフ部における検出感度が低下するおそれがあり、また、前処理液に含まれる界面活性剤の濃度によっては、送液量を多くすると気泡が生じて送液不良となるおそれがあることから、イオン交換カラムから溶出される液量に対して0.2倍から5倍量とするとよく、0.5倍から2倍量とするとさらによい。
(D)流路切り替えバルブ8aをOFF状態に切り替え、遊離させたコレステロールおよびビタミンE類を含む液を、サンプルループ9に導入する。なおサンプルループ9の容量は、後続の逆相カラム10aに導入すべき液量とすればよい。
(E)流路切り替えバルブ8aをON状態、流路切り替えバルブ8bをOFF状態に、それぞれ切り替え、サンプルループ9に導入したコレステロールおよびビタミンE類を含む液をポンプ2cにより逆相カラム10aに導入することで、逆相カラム10aにコレステロールおよびビタミンE類を吸着させる一方、それ以外の不純物を除去する。
(F)流路切り替えバルブ8bをON状態に切り替え、溶離液1dをポンプ2dで逆相カラム10aに導入することで、吸着したコレステロールおよびビタミンE類を溶出させ、逆相カラム10bに導入させる。
(G)逆相カラム10bによりコレステロールおよびビタミンE類を分離溶出を行ない、分離溶出したコレステロール量を紫外検出器11で測定し、分離溶出したビタミンE類の量を蛍光検出器12で測定する。
【0035】
前記(A)から(G)の動作は、各機器をパーソナルコンピュータにつなぎ、自動的に制御することができる。また、測定したデ−タを同じパーソナルコンピュータで取り込み、各リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を自動的に算出させることもできる。
【0036】
図2の測定装置により、イオン交換クロマトグラフによりリポタンパクを4つ(HDL、LDL+IDL、VLDL、CM+Lp(a))に分画し、各リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類を測定する場合、概ね1試料あたりの分析時間は1時間程度となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の測定方法は、リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量とを同時に測定可能な方法である。病態やリスクの評価に用いる、リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を算出する際、従来の方法では、リポタンパク中のコレステロール量の測定方法と、リポタンパク中のビタミンE類の測定方法とを別々の装置で行ない、前記二つの装置で得られた結果から別途比率を算出する必要があった。そのため、リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を算出する場合に、二つの測定方法(測定装置)による試料注入量の誤差等が加算される問題があった。一方、本発明の測定方法では、単一の装置による一回の測定で、リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量とを同時測定できるため、従来の方法と比較し、リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を簡便に算出することができる効果を有している。また、前記比率を算出する際に、試料注入量に関する誤差等が発生しない、という効果も有している。
【0038】
なお、本発明の測定方法を利用した装置において、逆相クロマトグラフ部が逆相カラムを二本以上有し、かつ、そのうち少なくとも一本を不純物除去用とした態様とすると、後続のコレステロールおよびビタミンE類を分離するための逆相カラムにより得られるクロマトグラムにおいて、テーリング(本来のピークの後に尾を引く現象)やリーディング(本来のピークの前に尾を引く現象)の発生を抑えることができる。そのため、測定精度や感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】各リポタンパク中の総コレステロール量と遊離コレステロール量との相関を示す図。(a)はHDLでの、(b)はLDLでの、(c)はIDLでの、(d)はVLDLでの、(e)はカイロミクロンでの結果である。
【図2】本発明の測定装置の一例を示す図。
【図3】実施例2の方法で測定した結果(クロマトグラム)。(a)は蛍光検出器で各リポタンパク中のビタミンE類を検出した結果(クロマトグラム)であり、(b)は紫外検出器で各リポタンパク中のコレステロールを検出した結果(クロマトグラム)である。
【図4】実施例3の方法で測定した結果(クロマトグラム)。(a)は蛍光検出器でHDL画分中のビタミンE類を測定した結果(クロマトグラム)であり、(b)は紫外検出器でHDL画分中のコレステロールを測定した結果(クロマトグラム)である。
【図5】実施例3の方法で測定した結果(クロマトグラム)。(a)は蛍光検出器で(LDL+IDL)画分中のビタミンE類を測定した結果(クロマトグラム)であり、(b)は紫外検出器で(LDL+IDL)画分中のコレステロールを測定した結果(クロマトグラム)である。
【図6】実施例5の方法で測定した結果(クロマトグラム)。(a)は蛍光検出器で各リポタンパク中のビタミンE類を測定した結果(クロマトグラム)であり、(b)は紫外検出器で各リポタンパク中のコレステロールを測定した結果(クロマトグラム)である。
【図7】各リポタンパク中のビタミンE類の希釈直線性試験の結果を示す図。(a)はHDL画分中のγトコフェロール、(b)はHDL画分中のαトコフェロール、(c)は(LDL+IDL)画分中のγトコフェロール、(d)は(LDL+IDL)画分中のαトコフェロール、(e)はVLDL画分中のγトコフェロール、(f)はVLDL画分中のαトコフェロールの結果である。
【図8】各リポタンパク中のコレステロールの希釈直線性試験の結果を示す図。(a)はHDL画分中のコレステロール、(b)は(LDL+IDL)画分中のコレステロール、(c)はVLDL画分中のコレステロールの結果である。
【図9】HPLC法および超遠心法で測定した、各リポタンパク中のビタミンE類の量の相関性を示す図。(a)はHDL画分中のγトコフェロール量、(b)はHDL画分中のαトコフェロール量、(c)は(LDL+IDL)画分中のγトコフェロール量、(d)は(LDL+IDL)画分中のαトコフェロール量、(e)はVLDL画分中のγトコフェロール量、(f)はVLDL画分中のαトコフェロール量の結果である。
【図10】HPLC法および超遠心法で測定した、各リポタンパク中のコレステロール量の相関性を示す図。(a)はHDL画分中のコレステロール量、(b)は(LDL+IDL)画分中のコレステロール量、(c)はVLDL画分中のコレステロール量の結果である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。
【0041】
実施例1
特開2002−296261号公報(特許文献2)の実施例で開示のリポタンパク質の測定方法と同様の方法により、各リポタンパク中の総コレステロール値と遊離コレステロール値を測定した。ただし、カラム(TSKgel DEAE−NPR、東ソー製)のサイズは3.0mmI.D.×15mmとし、流速は溶離液Aと溶離液Bとの合計で0.5mL/minとし、反応液の流速は0.2mL/minとした。溶離液Aと溶離液Bを混合するミキサーはスタティックミキサーC(東ソー製)とし、反応コイルのサイズは0.25mmI.D.×30mとし、反応温度は45℃とした。血清の注入量は1.9μLとした。総コレステロールを測定する反応液としてはTCHO−CL(セロテック製)を用い、遊離コレステロールを測定する反応液としては遊離コレステロールEテストワコー(和光純薬工業製)を使用した。溶離液のステップグラジエントパターンは、0から2分は溶離液Bの割合を17.2%、2分から4分は溶離液Bの割合を21.7%、4分から5.5分は溶離液Bの割合を23.6%、5.5分から7分は溶離液Bの割合を32.6%、7分から8分は溶離液Bの割合を100%、8分から10分は溶離液Bの割合を10%とし、10分で1回の試料の測定が終了するよう設定した。
【0042】
東ソー株式会社東京研究所で同意を得たボランティア20名から採血した血清試料について、前記方法により、血清試料中に含まれるリポタンパク(HDL、LDL、IDL、VLDL、カイロミクロン(CM))を分離し、各リポタンパク中の総コレステロール量と遊離コレステロール量を測定した。各血清試料について測定結果をプロットした結果を図1に示す。いずれのリポタンパクにおいても、総コレステロール量と遊離コレステロール量との相関が良好であることから、各リポタンパク中のコレステロール量当たりのビタミンE類の量を算出する場合、コレステロール量として、総コレステロール量を用いても、遊離コレステロール量を用いても、その結果は同等といえる。以降の実施例では、遊離コレステロールを単にコレステロールとしている。
【0043】
実施例2
図2に示す本発明の測定装置を用いて、各リポタンパク中のコレステロール量およびビタミンE類の量を測定した。装置構成および測定条件を以下に示す。
【0044】
図2の装置構成
溶離液A(1a):
50mM トリス+1mM EDTA2Na(pH7.5)
溶離液B(1b):
50mM トリス+1mM EDTA2Na+500mM 過塩素酸ナトリウム
(pH7.5)
溶離液C(1c):
25mM 過塩素酸ナトリウム+30% エタノール
溶離液D(1d):
25mM 過塩素酸ナトリウム+86.5% エタノール+0.025mM 過
塩素酸
送液ポンプ2a・2b・2c・2d・2e:DP−8020(東ソー製)
混合装置3a・3b:スタティックミキサーC(東ソー製)
オートサンプラー4:AS−8020(東ソー製)
陰イオン交換カラム5:
TSKgel DEAE−NPR(東ソー製)、3.0mmI.D.×15mm
前処理液6:
1% Triton X−100(商品名)+70% エタノール
サンプルループ9:
容量2.5mLのステンレスチューブ(0.8mmI.D.×497.5cm)
逆相カラム10a:
TSKgel ODS−80Ts(東ソー製)、4.6mmI.D.×3.5
cm
逆相カラム10b:
TSKgel ODS−80Ts(東ソー製)、4.6mmI.D.×7.5
cm
測定条件
試料導入:
100μL(導入した試料は、血清試料を(溶離液A:溶離液B=9:1)の溶
液で15倍希釈した試料)
陰イオン交換カラム5への溶離液導入量:
0.25mL/min(溶離液Aと溶離液Bとの合計)
陰イオン交換カラム5のグラジエントパターン:
0分から2分は溶離液B19%+溶離液A81%
2分から5分は溶離液B19%+溶離液A81%から溶離液B10%+溶離液A
90%へのリニアグラジエント
5分から10分は溶離液B10%+溶離液A90%
10分から12分は溶離液B26%+溶離液A74%
12分から15分は溶離液B26%+溶離液A74%から溶離液B10%+溶離
液A90%へのリニアグラジエント
15分から20分は溶離液B10%+溶離液A90%
20分から22分は溶離液B33%+溶離液A67%
22分から25分は溶離液B33%+溶離液A67%から溶離液B10%+溶離
液A90%へのリニアグラジエント
25分から30分は溶離液B10%+溶離液A90%
30分から32分は溶離液B100%
32分から35分は溶離液B100%から溶離液B10%+溶離液A90%への
リニアグラジエント
35分から50分は溶離液B10%+溶離液A90%
前処理液6の流速:0.25mL/min
溶離液C(1c)および溶離液D(1d)の流速:1.5mL/min
流路切り替えバルブ8a・8bの切り替え
0.3分にバルブ8aをOFF、2.3分にバルブ8bをOFF
6.3分にバルブ8aをON、8.3分にバルブ8bをON
10.8分にバルブ8aをOFF、12.8分にバルブ8bをOFF
16.8分にバルブ8aをON、18.8分にバルブ8bをON
20.8分にバルブ8aをOFF、23.3分にバルブ8bをOFF
26.8分にバルブ8aをON、28.8分にバルブ8bをON
30.8分にバルブ8aをOFF、33.3分にバルブ8bをOFF
36.8分にバルブ8aをON、38.8分にバルブ8bをON
紫外検出器11の波長:205nm
蛍光検出器12の波長:励起波長298nm、蛍光波長325nm
1試料当たりの測定時間:50分
東ソー株式会社東京研究所で同意を得たボランティア1名から採血した血清試料を前記条件で測定した結果(クロマトグラム)を図3に示す。蛍光検出器11により、HDL画分中のγトコフェロールおよびαトコフェロール、(LDL+IDL)画分中のγトコフェロールおよびαトコフェロール、VLDL画分中のγトコフェロールおよびαトコフェロール、ならびに(カイロミクロン(CM)+リポタンパク(a)(Lp(a))画分中のαトコフェロールが確認された(図3(a))。また紫外検出器12により、HDL画分中のコレステロール、(LDL+IDL)画分中のコレステロール、VLDL画分中のコレステロール、および(CM+Lp(a))画分中のコレステロールが確認された(図3(b))。
【0045】
実施例3
実施例2に示した装置構成および測定条件のうち、下記内容を変更した他は、実施例2と同様な条件でHDL画分および(LDL+IDL)画分中のコレステロール量およびビタミンE類の量を測定した。
【0046】
変更内容
逆相カラム10a:
TSKgel ODS−80Ts(東ソー製)、4.6mmI.D.×12cm
逆相カラム10b:設けず
流路切り替えバルブ8a・8bの切り替え(HDL画分測定時)
0.3分にバルブ8aをOFF、2.3分にバルブ8bをOFF
6.3分にバルブ8aをON、8.3分にバルブ8bをON
流路切り替えバルブ8a・8bの切り替え((LDL+IDL)画分測定時)
10.8分にバルブ8aをOFF、12.8分にバルブ8bをOFF
16.8分にバルブ8aをON、18.8分にバルブ8bをON
東ソー株式会社東京研究所で同意を得たボランティア1名から採血した血清試料を前記方法で測定した結果(クロマトグラム)を図4(HDL画分)および図5((LDL+IDL)画分)に示す。HDL画分中のαトコフェロールのピーク(図4(a))および(LDL+IDL)画分中のαトコフェロールのピーク(図5(a))において、逆相クロマトグラフ部に二本の逆相カラムを有した測定装置(実施例2)では確認されなかった、リーディング(本来のピークの前に尾を引く現象)が発生した。このため、本発明の測定装置に備える逆相クロマトグラフ部には、逆相カラムを二本以上有したほうが好ましいことがわかる。
【0047】
実施例4
東ソー株式会社東京研究所で同意を得たボランティア3名から採血した血清試料を実施例2の方法で測定した。また、比較対照法として、前記血漿試料を超遠心分離によりHDL、LDL+IDL、VLDL、カイロミクロン(CM)に分画した後、ヘキサン抽出してビタミンE類(αトコフェロール、γトコフェロール)を測定するとともに、遊離コレステロールEテストワコー(和光純薬工業(株)製)により試料中の遊離コレステロールを測定する、超遠心法も行なった。超遠心法における測定条件を以下に示す。
【0048】
超遠心法の測定条件
超遠心分離による各リポタンパクの分画条件
HDL画分:比重1.063g/mL以上
(LDL+IDL)画分:比重1.006から1.063g/mL
VLDL画分:
比重1.006g/mL以下、かつ浮上係数(比重液1.063g/mL)が
20から400
CM画分:
比重1.006g/mL以下、かつ浮上係数(比重液1.063g/mL)が
400以上
各リポタンパクからのビタミンE類の抽出
i)分画した各リポタンパク画分(HDL画分および(LDL+IDL)画分は
75μL、VLDL画分およびCM画分は100μL)に対し、インターナ
ルコントロール溶液(10μg/mLのδトコフェロールを含むエタノール
溶液)100μLを加え、混合する
ii)エタノール600μLを添加し、混合する
iii)2mLのヘキサンを添加し、混合する
iv)1mLのヘキサン層(上層)を取り、窒素ガスを吹き付けて乾固させる
v)エタノール500μLを添加し、再溶解する
液体クロマトグラフの条件
分析カラム:
TSKgel ODS−80Ts(東ソー製)、4.6mmI.D.×15
cm
溶離液:
25mM 過塩素酸ナトリウム+0.025mM 過塩素酸+86.5% エ
タノール
流速:1.0mL/min
蛍光検出器の波長:励起波長298nm、蛍光波長325nm
試料注入量:10μL
実施例2の測定法(HPLC法)での測定値と比較対照法(超遠心法)での測定値とを比較した結果を表1から3に示す。なおリポタンパクのうち、Lp(a)は、HPLC法ではCM画分に含まれ、超遠心法では(LDL+IDL)画分およびHDL画分に含まれる。また、CM画分中のγトコフェロール量およびコレステロール量は感度不足のため、測定が不可能であった。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

一部を除き、試料中に含まれる各リポタンパク中のビタミンE類(αトコフェロール量、γトコフェロール)の量およびコレステロール量の、測定値の比率(HPLC法での測定値に対する超遠心法での測定値の比率)は、100±40%の範囲に収まった。
【0052】
実施例5
東ソー株式会社東京研究所で同意を得たボランティア1名から採血した血清試料(実施例2で使用した血清試料とは異なる)を図2に示す本発明の測定装置を用いて、HDL画分、(LDL+IDL)画分、およびVLDL画分の3つに分画し、各画分中のγトコフェロール量、αトコフェロール量およびコレステロール量を測定した。なお、測定条件は、下記変更内容を除き実施例2と同様である。
【0053】
変更内容
溶離液D(1d):
25mM 過塩素酸ナトリウム+0.025mM 過塩素酸+84% エタノー

陰イオン交換カラム5のグラジエントパターン:
0分から2分は溶離液B19%+溶離液A81%
2分から5分は溶離液B19%+溶離液A81%から溶離液B10%+溶離液A
90%へのリニアグラジエント
5分から15分は溶離液B10%+溶離液A90%
15分から17分は溶離液B26%+溶離液A74%
17分から20分は溶離液B26%+溶離液A74%から溶離液B10%+溶離
液A90%へのリニアグラジエント
20分から30分は溶離液B10%+溶離液A90%
30分から32分は溶離液B33%+溶離液A67%
32分から35分は溶離液B33%+溶離液A67%から溶離液B10%+溶離
液A90%へのリニアグラジエント
35分から45分は溶離液B10%+溶離液A90%
45分から47分は溶離液B100%
47分から55分は溶離液B10%+溶離液A90%
流路切り替えバルブ8a・8bの切り替え
0.3分にバルブ8aをOFF、2.3分にバルブ8bをOFF
6.3分にバルブ8aをON、8.3分にバルブ8bをON
15.3分にバルブ8aをOFF、17.3分にバルブ8bをOFF
21.3分にバルブ8aをON、23.3分にバルブ8bをON
30.3分にバルブ8aをOFF、32.3分にバルブ8bをOFF
36.3分にバルブ8aをON、38.3分にバルブ8bをON
測定結果(クロマトグラム)を図6に示す。蛍光検出器11によりHDL画分中のγトコフェロールおよびαトコフェロール、(LDL+IDL)画分中のγトコフェロールおよびαトコフェロール、VLDL画分中のγトコフェロールおよびαトコフェロールが確認された(図6(a))。また紫外検出器12により、HDL画分中のコレステロール、(LDL+IDL)画分中のコレステロール、VLDL画分中のコレステロールが確認された(図6(b))。
【0054】
実施例6
実施例5で用いた血清試料と同じ試料を用いて、同時再現性試験(n=10)を行なった。測定方法は実施例5と同様である。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】

各リポタンパク画分中のビタミンE類およびコレステロールのCV(%)は、全て10%以内であった。
【0056】
実施例7
実施例5で用いた血清試料と同じ試料を用いて、希釈直線性試験を行なった。具体的には、血清試料を6段階に希釈(溶離液A:B=9:1の溶液で、7.5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、または60倍に希釈した試料)し、実施例5と同様の条件で測定した。各希釈試料を血清試料導入量に換算すると、それぞれ、13.3μL、10μL、6.7μL、5.0μL、3.3μL、1.7μLとなる。結果を図7および図8に示す。各リポタンパク画分のγトコフェロール量およびαトコフェロール量の測定値と希釈試料導入量との相関係数はいずれも0.9以上を示し(図7)、各リポタンパク画分中のコレステロール量の測定値と希釈試料導入量との相関係数もいずれも0.9以上を示した(図8)。
【0057】
実施例8
東ソー株式会社東京研究所で同意を得たボランティア10名から採血した血清試料を図2に示す本発明の測定装置を用いて、HDL画分、(LDL+IDL)画分、およびVLDL画分の3つに分画し、各画分中のγトコフェロール量、αトコフェロール量、およびコレステロール量を測定した(HPLC法)。なお、測定条件は実施例5と同じである。また、比較対照法として、実施例4に示す(ただし、CM画分は使用しない)超遠心法も行なった。
【0058】
実施例5の測定法(HPLC法)での測定値と比較対照法(超遠心法)での測定値とを比較した結果を図9および図10に示す。HDL画分、(LDL+IDL)画分およびVLDL画分、それぞれに含まれるγトコフェロール量、αトコフェロール量およびコレステロール量に関して、HPLC法での測定値と超遠心法での測定値との相関係数はいずれも0.8以上であった。
【符号の説明】
【0059】
1:溶離液
2:ポンプ
3:混合装置
4:オートサンプラー
5:陰イオン交換カラム
6:前処理液
7:三方混合流路
8:流路切り替えバルブ(六方電磁弁)
9:サンプルループ
10:逆相カラム
11:紫外検出器
12:蛍光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポタンパクを含む試料をイオン交換クロマトグラフに供してリポタンパクを分離し、
分離したリポタンパクを、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液と反応させてコレステロールおよびビタミンE類を遊離させ、
遊離させたコレステロールおよびビタミンE類を逆相クロマトグラフに供して分離し、
分離したコレステロール量およびビタミンE類の量を測定する、
リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類を同時に測定する方法。
【請求項2】
分離したコレステロール量の測定と分離したビタミンE類の量の測定とを、異なる検出器で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定方法で得られた、各リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を算出することで、糖尿病の病態を測定する方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の測定方法で得られた、各リポタンパク中のコレステロール量とビタミンE類の量との比率を算出することで、心筋梗塞の病態を測定する方法。
【請求項5】
リポタンパクを含む試料を一定量導入する試料導入部と、
リポタンパク質を分離するためのイオン交換カラムを有したイオン交換クロマトグラフ部と、
イオン交換クロマトグラフ部から溶出した液の一部または全部と、有機溶媒および界面活性剤を含む前処理液とを混合する試薬混合部と、
前処理液により遊離したコレステロールおよびビタミンE類を分離するための逆相カラムを有した逆相クロマトグラフ部と、
逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるコレステロール量を測定するための検出器と、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるビタミンE類の量を測定するための検出器と、を有した検出部と、
試料導入部で導入した試料およびイオン交換カラムに導入する溶離液を送液する第一の送液部と、
前処理液を送液する第二の送液部と、
逆相カラムに導入する溶離液を送液する第三の送液部と、
を備えた、リポタンパク中のコレステロールおよびビタミンE類を同時に測定する装置。
【請求項6】
逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるコレステロールを検出する検出器が紫外検出器であり、逆相クロマトグラフ部から溶出した液に含まれるビタミンE類を検出する検出器が蛍光検出器である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
逆相クロマトグラフ部に有した逆相カラムが二本以上である、請求項5または6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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