説明

リポ蛋白中のビタミンE類の分析方法及び分析装置

【課題】自動分析化が可能な程度にまで簡素化した工程によってビタミンE類を定性し定量できる、リポ蛋白中のビタミンE類の分析方法を提供するとともに、その分析方法を自動的に実施し得る分析装置を提供すること。
【解決手段】リポ蛋白を含む試料をイオン交換クロマトグラフに供してリポ蛋白を分離し、分離したリポ蛋白を有機溶媒及び界面活性剤を含む前処理液と反応させてビタミンE類を遊離させ、次いで遊離したビタミンE類を逆相クロマトグラフに供することを特徴とす
るリポ蛋白中のビタミンE類の分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれるリポ蛋白(高比重リポ蛋白/HDL、低比重リポ蛋白/LDL、中間型リポ蛋白/IDL、超低比重リポ蛋白/VLDL、カイロマイクロン/CMなど)の中に含まれるαトコフェロールやγトコフェロール等のビタミンE類の分析方法と、かかる分析に使用することのできる分析装置に関するものである。さらに本発明は、リポ蛋白中のビタミンE類を指標とする糖尿病の病態、冠動脈疾患のリスク、心筋梗塞の病態といった各種病態の判定方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化の危険因子として、酸化したリポ蛋白が注目を浴び、多くの研究がなされているが、リポ蛋白に含まれる主要な抗酸化物質は、ビタミンE類(主としてαトコフェノールとγトコフェノール)である。従って、血液中にある各リポ蛋白中のビタミンE類の量を分析することは、動脈硬化のメカニズムを理解するうえで重要であると考えられる。特に血清リポ蛋白中に多量に含まれるビタミンE類の一つ、αトコフェロールについては、多くの学術研究において、下記の結果が報告されている。
【0003】
(1)Haidari Mら、Clin Chem、47、p1234(2001)(非特許文献1);健常人に比べ冠動脈疾患患者は、LDL中のαトコフェロール/コレステロールが低値となる。
(2)Feki Mら、Clin Chem、46、p1401(2000)(非特許文献2);健常人に比べ冠動脈疾患患者は、LDL中のαトコフェロール/コレステロールが低値となる。
【0004】
また、糖尿病患者の血液中では、活性酸素(ラジカル)が多く発生し、酸化ストレスが上昇し、細胞を攻撃することにより種々の合併症が発生すると考えられている(Beisswenger PJら、Diabetes、54、p3274(2005)(非特許文献3))。この酸化ストレスは血管の炎症の原因の1つであり、動脈硬化進展のメカニズムの1つでもある(Renard Cら、Diabetes Metab、32、p15(2005)(非特許文献4))。ビタミンE(γおよびαトコフェロール)は、細胞膜の持つ抗酸化物質の1つであり、体内にリポ蛋白を介して輸送される。また、ビタミンE(γおよびαトコフェロール)は、リポ蛋白の持つ重要な抗酸化物質でもある。
【0005】
血液中の各リポ蛋白に含まれるビタミンEと疾患に関する知見は少ないが、上記以外にも下記の結果が報告されている。
【0006】
(3)Yolanda Bら、Arterioscler Thromb Vasc Biol、17、p127(1997)(非特許文献5);健常人に比べ高脂血症患者は、LDL中のαトコフェロール/コレステロールが高値となる。
【0007】
また、血液中のビタミンEと糖尿病や冠動脈疾患などとに関する知見も多くはないが、下記の結果が報告されている。
(4)Salonen JTら、BMJ、311、p1124(1995)(非特許文献6);健常人に比べ糖尿病患者は、αトコフェロール/コレステロールが低値となる。
(5)Reunanen Aら、Eur J Clin Nutr、52(2)、p89(1998)(非特許文献7);αトコフェロールが低下すると、糖尿病を発症するリスクが高くなる。
(6)Sobczak Aら、J chromarogr、730、p265(1999)(非特許文献8);健常人に比べ糖尿病患者は、αおよびγトコフェロールが高くなる。
(7)Mayer−Davis EJら、Diabetes Care、25、p2172(2002)(非特許文献9);糖尿病患者は糖尿病を呈しない患者に比べ、αトコフェロールが低値となる。
(8)Ohrvall Mら、J Intern. Med、239、p111(1996)(非特許文献10);健常人に比べ冠動脈疾患患者は、γトコフェロールが低値となるが、αトコフェロールに有意な変化はない。また、αトコフェロール/γトコフェロール比が高値となる。
【0008】
これ以外のリポ蛋白中のビタミンE類についての報告はまだないが、他のリポ蛋白にもビタミンE類は含まれていることから、各リポ蛋白のビタミンE類の量を総合的に検討することによって、動脈硬化や糖尿病の原因や対処に関する研究が進展する可能性がある。
【0009】
リポ蛋白中のビタミンE類の従来の分析は、各リポ蛋白を分離後、ビタミンE類をヘキサンで抽出し、抽出溶液を乾固して濃縮し、メタノール等により再溶解して逆相クロマトグラフに供する方法が知られている(Haidari Mら、Clin Chem、47、p1234(2001)(非特許文献1);Feki Mら、Clin Chem、46、p1401(2000)(非特許文献2);Yolanda Bら、Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology 17、p127(1997)(非特許文献5);Teissier Eら、Clinical Chemistry 42、p430(1996)(非特許文献11))。各リポ蛋白の分離については、超遠心分離による方法(Haidari Mら(2001)前掲;Feki Mら(2000)前掲;Yolanda Bら(1997)前掲;Teissier Eら(1996)前掲))、アクリルアミド電気泳動による方法、ゲルろ過クロマトグラフによる方法、イオン交換クロマトグラフによる方法(Hirowatari Yら, J.Lipid Research 44,p1404(2003)(非特許文献12);Hirowatari Yら, Anal.Biochem. 308,p336(2002)(非特許文献13))が知られている。
【0010】
各リポ蛋白の分離については、溶離液の組成や分離条件を変えることで電荷の僅かな差を利用して各リポ蛋白を良好に分離可能なイオン交換クロマトグラフが提案されている(Hirowatari Yら(2003)前掲)。しかしながら、各リポ蛋白中のビタミンE類の分析は、前述のように、各リポ蛋白を分離した後、ビタミンE類を抽出し、乾固濃縮し、再溶解し、そして逆相クロマトグラフに供するという複雑な工程を要しており、誤差を生じやすいうえにその実施は労力と時間を要するものであった。また、酸化ストレスとその病態とが密接に関連する糖尿病、冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患では、各リポ蛋白中および血液中のビタミンEの変動を測定し、それらの病態の判定方法の1つとして用いることが重要であるものの、各リポ蛋白中のビタミンEの測定は超遠心分離法を用いる方法しかなく、高価な装置が必要で操作が煩雑で研究が進んでいない。さらに、血液中全体のビタミンEについても、有機溶媒による抽出が必要で、操作が煩雑であり、糖尿病患者の評価結果が研究者によって異なっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Haidari Mら、Clin Chem、47、p1234(2001)
【非特許文献2】Feki Mら、Clin Chem、46、p1401(2000)
【非特許文献3】Beisswenger PJら、Diabetes、54、p3274(2005)
【非特許文献4】Renard Cら、Diabetes Metab、32、p15(2005)
【非特許文献5】Yolanda Bら、Arterioscler Thromb Vasc Biol、17、p127(1997)
【非特許文献6】Salonen JTら、BMJ、311、p1124(1995)
【非特許文献7】Reunanen Aら、Eur J Clin Nutr、52(2)、p89(1998)
【非特許文献8】Sobczak Aら、J chromarogr、730、p265(1999)
【非特許文献9】Mayer−Davis EJら、Diabetes Care、25、p2172(2002)
【非特許文献10】Ohrvall Mら、J Intern. Med、239、p111(1996)
【非特許文献11】Teissier Eら、Clinical Chemistry 42、p430(1996)
【非特許文献12】Hirowatari Yら, J.Lipid Research 44,p1404(2003)
【非特許文献13】Hirowatari Yら, Anal.Biochem. 308,p336(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、自動分析化が可能な程度にまで簡素化した工程によってビタミンE類を定性し定量できる、リポ蛋白中のビタミンE類の分析方法を提供するとともに、その分析方法を自動的に実施し得る分析装置を提供することを第一の目的とするものである。さらにはそのような分析方法や分析装置を利用した結果、本発明者はリポ蛋白中のビタミンE類を指標とすることで、糖尿病の病態、冠動脈疾患のリスク、心筋梗塞の病態といった各種病態を判定できることを見出すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第一の目的のためになされた本発明は、以下のとおりである:
(1)リポ蛋白を含む試料をイオン交換クロマトグラフに供してリポ蛋白を分離し、分離したリポ蛋白を有機溶媒及び界面活性剤を含む前処理液と反応させてビタミンE類を遊離させ、次いで遊離したビタミンE類を逆相クロマトグラフに供することを特徴とするリポ蛋白中のビタミンE類の分析方法。
(2)前記前処理液は、イオン交換クロマトグラフで分離したリポ蛋白と反応させる段階で10から50%となる有機溶媒と0.2から6.0%となる界面活性剤を含むものであることを特徴とする(1)の分析方法。
(3)前記前処理液は、更にイオン交換クロマトグラフで分離したリポ蛋白と反応させる段階で50から150mmol/Lとなるカオトロピックイオンを含むものであることを特徴とする(1)又は(2)の分析方法。
(4)一定量の試料を採取する試料導入部、イオン交換カラムを備えるイオン交換クロマトグラフ部、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液の一部又は全部を試薬と混合する試薬混合部、逆相カラムを備える逆相クロマトグラフ部、逆相クロマトグラフ部からの溶出液について検出を行う検出部、及び、試料導入部で採取した試料及びイオン交換クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部、試薬を送液する送液部、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液と試薬とが混合された液を送液する送液部、及び、逆相クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部を備える分析装置。
【0014】
また我々は、上記分析方法や分析装置を利用し、酸化ストレスとの関連性が高い疾患である糖尿病20例および心筋梗塞17例、対象として健常人20例の血清を測定した結果、以下のとおりのαトコフェロール/コレステロールを指標とする糖尿病の病態、冠動脈疾患のリスク、心筋梗塞の病態といった各種病態を判定する方法を見出すに至った。
【0015】
(5)超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のγトコフェロール/コレステロール値を用いる糖尿病の病態の判定方法。
(6)超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のγトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ低い場合は糖尿病の病態を有すると判定し、健常人の平均値に比べ低くない場合は糖尿病の病態を有しないと判定する、(5)の方法。
【0016】
(7)超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のγトコフェロール/コレステロール値を用いる冠動脈疾患のリスクの判定方法。
(8)超低比重型リポ蛋白(VLDL)コレステロール値が健常人の平均値に比べ低い場合において、超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のγトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ低い場合は冠動脈疾患のリスクを有すると判定し、健常人の平均値に比べ低くない場合は冠動脈疾患のリスクを有しないと判定する、(7)の方法。
【0017】
(9)低比重型リポ蛋白(LDL)中のαトコフェロール/コレステロール値を用いる糖尿病の病態の判定方法。
(10)低比重型リポ蛋白(LDL)中のαトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ高い場合は糖尿病の病態を有すると判定し、健常人の平均値に比べ高くない場合は糖尿病の病態を有しないと判定する、(9)の方法。
【0018】
(11)低比重型リポ蛋白(LDL)中のαトコフェロール/コレステロール値を用いる心筋梗塞の病態の判定方法。
(12)低比重型リポ蛋白(LDL)中のαトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ高い場合は心筋梗塞の病態を有すると判定し、健常人の平均値に比べ高くない場合は心筋梗塞の病態を有しないと判定する、(11)の方法。
【0019】
(13)超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のαトコフェロール/コレステロール値を用いる糖尿病の病態の判定方法。
(14)超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のαトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ低い場合は糖尿病の病態を有すると判定し、健常人の平均値に比べ低くない場合は糖尿病の病態を有しないと判定する、(13)の方法。
【0020】
(15)超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のαトコフェロール/コレステロール値を用いる冠動脈疾患のリスクの判定方法。
(16)超低比重型リポ蛋白(VLDL)コレステロール値が健常人の平均値に比べ低い場合において、超低比重型リポ蛋白(VLDL)中のαトコフェロール/コレステロール値が、健常人の平均値に比べ低い場合は冠動脈疾患のリスクを有すると判定し、健常人の平均値に比べ低くない場合は冠動脈疾患のリスクを有しないと判定する、(15)の方法。
【0021】
(17)血液中のγトコフェロール/αトコフェロール比を用いる糖尿病の病態の判定方法。
(18)血液中のγトコフェロール/αトコフェロール比の値が、健常人の平均値に比べ低い場合は糖尿病の病態を有すると判定し、健常人の平均値に比べ低くない場合は糖尿病の病態を有しないと判定する、(17)の方法。
【0022】
好ましくは、上記(5)〜(18)の方法は、上記(1)〜(3)のいずれかの方法又は上記(4)の装置を用い、行われる。
【0023】
ここでいう、「健常人の平均値に比べ低い」とは、例えば測定したαトコフェロール/コレステロール値が健常人の平均値に比べ、10%低い、好ましくは20%低い、より好ましくは30%低い、尚より好ましくは50%低いことを意味する。
【0024】
また、ここでいう、「健常人の平均値に比べ高い」とは、例えば測定したαトコフェロール/コレステロール値が健常人の平均値に比べ、10%高い、好ましくは20%高い、より好ましくは30%高い、尚より好ましくは50%高いことを意味する。
【0025】
なお、各リポ蛋白中のビタミンE濃度(γおよびαトコフェノール)およびすべてのリポ蛋白中の総ビタミンE濃度は、そのリポ蛋白の抗酸化能力を見ることが主たる目的であるので、リポ蛋白の粒子当りのビタミンEの量を見る必要がある。我々は、リポ蛋白における比較的量の多い含有成分であるコレステロール値により割ることで、リポ蛋白当りのビタミンE量を換算することにした。なお、コレステロールにより割る補正方法は、一般的に用いられている(Haidari Mら(2001)前掲;Feki Mら(2000)前掲;Yolanda Bら(1997)前掲)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の分析装置の第一の例を示す。
【図2】本発明の分析装置の第二の例を示す。
【図3】本発明の分析装置の第三の例を示す。
【図4】実施例1のイオン交換クロマトグラフの分析装置の構成を示す図。
【図5】イオン交換クロマトグラフによる血清試料の分析結果を示す。
【図6】イオン交換クロマトグラフによるHDL試料の分析結果を示す。
【図7】イオン交換クロマトグラフによるLDL試料の分析結果を示す。
【図8】イオン交換クロマトグラフによるIDL試料の分析結果を示す。
【図9】イオン交換クロマトグラフによるVLDL試料の分析結果を示す。
【図10】イオン交換クロマトグラフによるCM試料の分析結果を示す。
【図11】実施例2の逆相クロマトグラフの分析装置の構成を示す図。
【図12】逆相クロマトグラフおよび電気化学検出によるビタミンE標準試料の分析結果を示す。
【図13】逆相クロマトグラフおよび蛍光検出によるビタミンE標準試料の分析結果を示す。
【図14】逆相クロマトグラフおよび電気化学検出によるHDL試料の分析結果を示す。
【図15】逆相クロマトグラフおよび蛍光検出によるHDL試料の分析結果を示す。
【図16】逆相クロマトグラフおよび電気化学検出によるLDL試料の分析結果を示す。
【図17】逆相クロマトグラフおよび蛍光検出によるLDL試料の分析結果を示す。
【図18】逆相クロマトグラフおよび電気化学検出によるIDL試料の分析結果を示す。
【図19】逆相クロマトグラフおよび蛍光検出によるIDL試料の分析結果を示す。
【図20】逆相クロマトグラフおよび電気化学検出によるVLDL試料の分析結果を示す。
【図21】逆相クロマトグラフおよび蛍光検出によるVLDL試料の分析結果を示す。
【図22】逆相クロマトグラフおよび電気化学検出によるCM試料の分析結果を示す。
【図23】逆相クロマトグラフおよび蛍光検出によるCM試料の分析結果を示す。
【図24】電気化学検出によるHDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図25】蛍光検出によるHDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図26】電気化学検出によるLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図27】蛍光検出によるLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図28】電気化学検出によるIDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図29】蛍光検出によるIDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図30】電気化学検出によるVLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図31】蛍光検出によるVLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図32】電気化学検出によるCMの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図33】蛍光検出によるCMの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図34】電気化学検出によるHDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図35】蛍光検出によるHDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図36】電気化学検出によるLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図37】蛍光検出によるLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図38】電気化学検出によるIDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図39】蛍光検出によるIDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図40】電気化学検出によるVLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図41】蛍光検出によるVLDLの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図42】電気化学検出によるCMの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図43】蛍光検出によるCMの中のビタミンEの分析結果を示す。
【図44】HDL中のγトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図45】LDL中のγトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図46】IDL中のγトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図47】VLDL中のγトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図48】VLDL中のγトコフェロール/コレステロール値とVLDLコレステロールとの関連性を示す。
【図49】VLDLコレステロールとVLDL中のγトコフェロール値とが関連性を有しないことを示す。
【図50】CM中のγトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図51】血液中のγトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図52】HDL中のαトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図53】LDL中のαトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図54】IDL中のαトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図55】VLDL中のαトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図56】VLDL中のαトコフェロール/コレステロール値とVLDLコレステロールとの関連性を示す。
【図57】VLDLコレステロールとVLDL中のαトコフェロール値とが関連性を有しないことを示す。
【図58】CM中のαトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図59】血液中のαトコフェロール/コレステロール値を示す。
【図60】血液中のγトコフェロール値の比較を示す。
【図61】血液中のαトコフェロール値の比較を示す。
【図62】血液中のγトコフェロール/αトコフェロール値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
リポ蛋白は血中(血清中)に含まれる。本発明は、血液試料について適用される分析方法であるが、狭義の血液を試料とすることに限定されず、例えば血清、血漿、血液や血清から取得したリポ蛋白画分又は該画分を例えば濃縮等した後に適当な溶液に懸濁した懸濁溶液など、リポ蛋白を含む試料に対して適用することができる。本発明で分析対象となるビタミンE類は、主としてαトコフェロールとγトコフェロールである。
【0028】
本発明における2つのクロマトグラフ工程は、いずれも、各クロマトグラフで使用する分離剤をカラムに充填して実施することが好ましい。本発明では、試料をまずイオン交換クロマトグラフに供し、各リポ蛋白を分離する。イオン交換クロマトグラフは、分離能が高く、種々のリポ蛋白を精密に分離できるものであるが、そこで使用する分離剤(イオン交換体)は、リポ蛋白の分離能が陽イオン交換体に勝る陰イオン用の分離剤(陰イオン交換体)が特に好適である。イオン交換クロマトグラフにおける、使用する分離剤の量(イオン交換容量)、溶離液の組成、溶離液の流速等の諸条件は、分析に供する試料の種類、量に応じ、後述する実施例で採用した条件や種々の予備検討を実施して、各リポ蛋白を分離し異なる画分として回収できるように適宜決定する。
【0029】
イオン交換クロマトグラフにおいて使用する溶離液には、実施例にも示したように、カオトロピックイオンを加えることが好ましい。カオトロピックイオンの蛋白変性作用により、リポ蛋白粒子表面にあるアポ蛋白の高次構造を緩ませ、後述する前処理液との反応の際に、界面活性剤によるリポ蛋白粒子の破壊とビタミンE類の遊離の効率を高めることができるからである。カオトロピックイオンとしては、過塩素酸イオン、尿素、グアニジン、チオシアン酸イオン、ヨウ素イオンなどを例示することができる。添加濃度は各イオンのカオトロピック作用の強弱により異なるが、過塩素酸イオンやチオシアン酸イオンでは、試料と混合された場合に50〜150mmol/L、より好ましくは50mmol/Lとなる濃度である。
【0030】
なお、高濃度のカオトロピックイオン(過塩素酸イオンやチオシアン酸イオンであれば300mmol/L以上)が溶離液に添加されていると、アポ蛋白の高次構造が完全に破壊されてしまい、結果的にリポ蛋白の構造も壊れるために、イオン交換クロマトグラフによる各リポ蛋白の分離に支障をきたすおそれが生じる。そこで、高濃度のカオトロピックイオンを使用する場合には、イオン交換クロマトグラフによって各リポ蛋白を分離した後、各画分に対して高濃度のカオトロピックイオンを添加して反応させるか、イオン交換クロマトグラフにおける溶離液には低濃度のカオトロピックイオンを添加しておき、前記画分に対して追加的にカオトロピックイオンを添加することが好ましい。
【0031】
イオン交換クロマトグラフでは、試料中のリポ蛋白を分離剤にいったん吸着させた後、塩濃度の異なる溶離液をステップ又はグラジエントで供することにより、電荷の差に基づいて各リポ蛋白をステップ溶出又はグラジエント溶出させ、ステップ溶出の場合には、溶出液を例えばステップごとに画分を回収し、グラジエント溶出の場合には、例えば溶出液を一定容量毎に画分を回収する。続いて回収した全画分に対して前処理液一定の容量比で加えるか、又は回収した画分からリポ蛋白を含む画分を選択後、選択された画分に対して前処理液を一定の容量比で加え、リポ蛋白質と反応させる。リポ蛋白と前処理液の反応は、単に両者を混合して放置するのみで良い。
【0032】
前処理液は、ビタミンE類を溶解するための有機溶媒と、リポ蛋白粒子を壊してビタミンE類を遊離させるための界面活性剤を含むが、それ以外にも、ビタミンE類の酸化を防止するためアスコルビン酸等の還元剤や、特にイオン交換クロマトグラフにおける溶離液にカオトロピックイオンが添加されていない場合には、前処理液にカオトロピックイオンを含むことが好ましい。カオトロピックイオンは、界面活性剤とともに、その蛋白変性作用によりリポ蛋白粒子表面にあるアポ蛋白の高次構造を変性させて、リポ蛋白粒子が壊される効率を高めるともに、リポ蛋白画分に含まれる種々のタンパク質が有機溶媒と接触して不溶化するのを防止して、後述する逆相クロマトグラフに供する前に遠心分離操作や微細なフィルターでろ過して蛋白質に起因する不溶化物を除去する操作を省くためである。むろん、イオン交換クロマトグラフにおける溶離液にカオトロピックイオンが添加されている場合であっても、前処理液へのカオトロピックイオンの添加が妨げられることはない。リポ蛋白を含む画分に対する前処理液の混合量は、イオン交換カラムから溶出するリポ蛋白画分が希釈されすぎると後の逆相クロマトグラフにおける検出感度が低下するおそれがあり、また、前処理液に含まれる界面活性剤の濃度によっては、混合量を多くすると気泡が生じるおそれがあることから、画分の量に対して1/5〜5倍量とすることが好ましく、より好ましくは1/2〜2倍量とする。
【0033】
カオトロピックイオンとしては、過塩素酸イオン、尿素、グアニジン、チオシアン酸イオン、ヨウ素イオンなどを例示することができる。その濃度はイオンのカオトロピック作用の強弱により異なるが、過塩素酸イオンやチオシアン酸イオンでは、リポ蛋白と反応させる段階、即ちリポ蛋白を含む画分と混合した場合に50〜150mmol/L、より好ましくは50mmol/Lとなる濃度である。有機溶媒は、ビタミンE類を溶解し得るものであれば特に制限はないが、エタノール、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール又はアセトンから選ばれる1種以上を例示することができる。その濃度は有機溶媒の種類により異なるが、エタノールではリポ蛋白を含む画分と混合した場合に10〜50%、より好ましくは25%となる濃度である。界面活性剤は、単独で又はカオトロピックイオンとともにリポ蛋白を壊し、ビタミンE類を遊離させ得るものであれば特に制限はないが、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、Poly(Oxyethylene)sorbitan monolaulate(Tween 20)、Triton X−100、Brij 35又はデオキシコール酸から選ばれる1種以上を例示することができる。その濃度は界面活性剤の種類によって異なるが、本発明者の検討によれば、SDSでは、リポ蛋白を含む画分と混合した場合に6.9〜208mmol/L(重量%では、0.2〜6.0%)、好ましくは100mmol/L(重量%では2.9%)となる濃度である。前処理液中の有機溶媒、界面活性剤、そして好ましく含まれるカオトロピックイオンの濃度に関する上記開示は参考のためのものであり、実際に選択した有機溶媒、界面活性剤そしてカオトロピックイオンの種類により変更が必要な場合があり得る。従って、本発明に基づくビタミンE類の分析に際しては、前処理液に含まれる各成分の濃度について最適範囲を予備的に検討しておくことが好ましい。
【0034】
前処理液との反応によってリポ蛋白から遊離したビタミンE類を、リポ蛋白を含む画分と前処理液の混合液として逆相クロマトグラフに供する。ビタミンE類の分析自体はガスクロマトグラフ、薄層クロマトグラフ、NMR等により実施可能であるが、イオン交換クロマトグラフにより各リポ蛋白画分を分離して溶出させる際、塩を含む溶離液を使用することから、本発明は、塩類を含む被分析物を精度良く分析できる逆相クロマトグラフを採用するものである。前記の前処理液と混合した試料を有機溶媒が含まれる溶離液を用いて逆相クロマトグラフに供することにより、ビタミンE類を分離して溶出させ、溶出液を検出器で検出して各ビタミンE類を分析する。逆相クロマトグラフにおける、使用する分離剤の量、溶離液の組成、溶離液の流速等の諸条件は、分析に供する試料の種類、量に応じ、後述する実施例で採用した条件や種々の予備検討を実施して適宜決定する。なお、イオン交換クロマトグラフの実施後、逆相クロマトグラフの実施前までに、試料にインターナルコントロールとしてビタミンE類の一つであるδトコフェロールを加えることにより、分析精度を向上することができる。δトコフェロールは、ビタミンE類の一つであるが、リポ蛋白中の存在量はαトコフェノールの100分の1程度と非常に少ないため、インターナルコントロールとして使用することができるものである。
【0035】
ビタミンE類の検出には紫外吸収検出器、質量検出器、蛍光検出器、アンペロメトリック電気化学検出器又はクーロメトリック電気化学検出器等を用いることができるが、十分な検出感度を有し、メンテナンス等の維持作業の容易さから、蛍光検出器、アンペロメトリック電気化学検出器又はクーロメトリック電気化学検出器が好適である。
【0036】
次に、本発明の分析装置について、図1から図3に基づいて詳細に説明する。図1の装置では、試料導入部はオートサンプラー2と配管から構成され、イオン交換クロマトグラフ部はイオン交換カラム1と配管から構成され、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液を試薬と混合する試薬混合部は混合器10とその直前(上流側)に接続された分岐配管22から構成され、逆相クロマトグラフ部は逆相カラム13と配管から構成され、逆相クロマトグラフ部からの溶出液について検出を行う検出部は蛍光検出器14及びアンペロメトリック検出器15と配管から構成され、試料及びイオン交換クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部は溶離液の混合装置3、送液用ポンプ4と5及び配管から構成され、試薬を送液する送液部は送液ポンプ8で構成され、逆相クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部はポンプ16と17及び配管で構成されている。なおこの例では、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液と試薬とが混合された液の送液は、専用の送液ポンプを使用するのではなく、六方切り替えバルブ11を利用することにより逆相クロマトグラフ用溶離液の送液ポンプ16及び/又は17で兼用している(図2の例では、2個の三方切り替えバルブ20及び21を利用することにより、試薬送液用の送液ポンプ8並びに逆相クロマトグラフ用溶離液の送液ポンプ16及び/又は17、そして図3の例では、六方切り替えバルブ11を利用することにより試薬送液用の送液ポンプ8並びに逆相クロマトグラフ用溶離液の送液ポンプ16及び/又は17と兼用)。
【0037】
試料は別途試料容器に保持された状態で試料導入部に搬入される。一方、イオン交換クロマトグラフ用の溶離液は別途溶離液容器6及び7に保持された状態で配管によりポンプ4又は5と接続され、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液と混合される試薬は試薬容器9に保持された状態でポンプ8と接続され、逆相クロマトグラフ用の溶離液は別途溶離液18及び19に保持された状態で配管によりポンプ16又は17と接続される。イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液のうち、逆相クロマトグラフ部に供されたもの以外、及び、検出部での検出を終えた溶出液は、廃液として適当な廃液容器に廃棄される。
【0038】
試料導入部は、試料導入部の所定場所に搬入された試料容器等から自動的に一定量の試料を採取し得るものであれば特に制限はなく、例えば、AS−8020(商品名、東ソー(株)製)など、通常使用されているオートサンプラーを使用することができる。また試料導入部には、試料容器を前記所定場所に自動的に搬入する装置を付加しても良い。
【0039】
イオン交換クロマトグラフ部が備えるイオン交換カラム1は、各リポ蛋白質を分離できるものであれば制限はなく、例えばDEAE−NPR、DEAE−5PW、SP−NPR(いずれも商品名、東ソー(株)製)などを使用することができる。上述したように、特に陰イオン交換カラム(例えばDEAE−NPR(商品名、東ソー(株)製))を使用することが好ましい。一方、逆相クロマトグラフ部が備える逆相カラム13は、ビタミンE類を分離できるものであれば制限はなく、例えばODS−80Ts(商品名、東ソー(株)製)などを使用することができる。
【0040】
逆相クロマトグラフによる一回の分析には、一定の時間が必要である。後の実施例に示したように、一回の分析に40分程度を要する場合には、イオン交換クロマトグラフによって溶出した任意のリポ蛋白溶出画分について逆相カラムでの分析が完了する前に、イオン交換クロマトグラフから他のリポ蛋白が溶出することになる。従って、逆相カラムとしては、マイクロカラムのような、分析に要する時間を短縮できるカラムを使用し、イオン交換クロマトグラフから溶出する各リポ蛋白画分を、順次逆相クロマトグラフに供するようにすることが好ましい。もっとも、実施例に示したように、あるリポ蛋白の溶出画分についての逆相カラムでの分析完了をまって、同一試料を再度イオン交換クロマトグラフに供し、他のリポ蛋白溶出画分を取得して逆相カラムに供する、というシークエンスを繰り返すことにより、各リポ蛋白中のビタミンE類を分析することが可能である。
【0041】
試薬混合部は、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液の一部又は全部を試薬と混合できるように構成すれば良い。本例では、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液の全部に対して試薬を混合し、その一部のみを切り替えバルブ11で採取して逆相クロマトグラフ部に送液するように操作することもできるが、試薬消費量を節約するために、その一部に対して試薬を混合するように構成している。即ち、イオン交換カラムからの各リポ蛋白の溶出時間は、クロマトグラフ条件が一定であれば予想し得るものであるから、その予想時間に合わせてポンプ8による試薬の送液を行い、それ以外の時間には送液を停止するようにしている。試薬の混合は、例えば、試薬が送液される配管をイオン交換クロマトグラフ部からの溶出液が送液される配管と単に合流させるのみでも良いが、本例のように、合流後に例えばスタティックミキサーB(商品名、東ソー(株)製)のような混合装置を用いて混合したり、また例えば、合流後に配管内径が太い配管を通過させ、ここで流速を低下させて両者の混合が図れるようにしたり、また例えば、内壁に凹凸を形成した配管や内径が変化する配管を使用する等しても良い。
【0042】
検出部は、ビタミンE類の検出が可能な検出器を使用すれば制限はなく、例えば紫外吸収検出器、質量検出器、蛍光検出器、アンペロメトリック電気化学検出器又はクーロメトリック電気化学検出器等を例示することができるが、十分な検出感度を有し、メンテナンス等の維持作業の容易さから、上記例でも使用した蛍光検出器やアンペロメトリック電気化学検出器、そしてクーロメトリック電気化学検出器が好適である。
【0043】
試料及びイオン交換クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部は、塩濃度の異なる溶離液6及び7を使用し、送液ポンプ4及び5の駆動をコンピューター等で制御してその送液量を制御すれば、イオン交換カラム1に異なる組成(塩濃度)の溶離液をステップ又はグラジエントのいずれのモードでも供することが可能である。なお混合装置3は、溶離液6及び7を混合するためのものである。送液ポンプ4及び5は例えばDP−8020(商品名、東ソー(株)製)等を使用することができ、混合装置3は例えばスタティックミキサーC(商品名、東ソー(株)製)を使用することができる。
【0044】
試薬を送液する送液部や逆相クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部は、例えばDP−8020(商品名、東ソー(株)製)のようなポンプを使用することができる。なお本例では、六方切り替えバルブ11を使用することにより、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液と試薬とが混合された液と逆相クロマトグラフ用溶離液の送液のための送液部を簡略化したが、例えば図2に示したように、三方切り替えバルブ20及び21を使用することも例示できる。
【0045】
図1の装置によるビタミンE類の分析では、まず、オートサンプラー2で採取された一定量の試料をイオン交換クロマトグラフ用の溶離液とともにポンプ4及び/又は5で送液してイオン交換カラム1に供し、試料中のリポ蛋白をカラムに保持させる。引き続き、同一の溶離液を任意量送液した後、ポンプ4及び5の送液量を制御してカラムに供する溶離液の塩濃度を高くし、カラムに保持された各リポ蛋白を分離して溶出させる。溶出した各リポ蛋白の画分に対しては、ポンプ8により試薬(前処理液)9を送液して混合する。前処理液9の送液量は、イオン交換カラムから溶出するリポ蛋白画分が希釈されすぎると後の逆相クロマトグラフにおける検出感度が低下するおそれがあり、また、前処理液に含まれる界面活性剤の濃度によっては、送液量を多くすると気泡が生じて送液不良となるおそれがあることから、イオン交換カラムに対する溶離液の送液量に対して1/5〜5倍量、特に1/2〜2倍量とすると良い。
【0046】
前処理液との混合によりリポ蛋白から遊離したビタミンE類を、続いて逆相カラム13に供する。六方流路切り替えバルブ11を操作して流路を切り替えることで、送液ポンプ8により前処理液と混合されたリポ蛋白画分をサンプルループ12に導入し、更に六方切り替えバルブ11を操作して流路を切り替えることにより、送液ポンプ16及び/又は17により混合液を逆相カラムに供する。なおサンプルループ12は、逆相カラムに導入すべき混合液の容量とする。ビタミンE類を逆相カラム13に供するにあたり、図2に示したように、2つの三方の切り替えバルブ20及び21を組み合わせて使用する場合には、イオン交換カラムからのリポ蛋白画分の溶出開始から終了までの間、三方切り替えバルブ20を操作して流路を切り替えることにより混合液を逆相カラム13に導入し、三方切り替えバルブ21を操作して流路を切り替えることにより溶離液18及び/又は19を廃棄(Waste)するように制御すれば良い。図3のように、サンプルループを備えない六方切り替えバルブを使用する場合には、イオン交換カラムからのリポ蛋白画分の溶出開始から終了までの間、六方切り替えバルブ11を切り替えることにより混合液が逆相カラム13に導入されるように制御すれば良い。逆相カラムから溶出するビタミンE類は、それぞれ蛍光検出器14及びアンペロメトリック検出器15により検出される。
【0047】
以上に説明したように、ビタミンE類の分析装置として構成した図1乃至3の分析装置は、試料導入部に試料容器を所定場所に自動的に搬入する装置と、各部を制御するコンピューター等を付加すれば、試料を容器に入れて搬入装置に載置等するのみで、自動的にリポ蛋白中のビタミンE類を分析することが可能である。
【0048】
そして、以下の実施例により示すとおり、上記分析方法や分析装置を利用した結果、αトコフェロール/コレステロールを指標とすることで、糖尿病の病態、冠動脈疾患のリスク、心筋梗塞の病態といった各種病態を判定することが可能となった。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、実施例は本発明の一形態を示すものであり、本発明を限定するものではない。
【0050】
実施例1
以下の構成の分析装置(図4)を作製した。
イオン交換クロマトグラフ用カラム1;DEAE−NPR(商品名、東ソー(株)製)、4.6mmID×35mmを2本直列に連結
試料導入部2;AS−8020(商品名、東ソー(株)製)
混合装置3;スタティックミキサーC(商品名、東ソー(株)製)
送液ポンプ4及び5;DP−8020(商品名、東ソー(株)製)
溶離液A6;50mmol/L トリス+1mmol/L EDTA2Na、pH7.5
溶離液B7;50mmol/L トリス+1mmol/L EDTA2Na+過塩素酸ナトリウム 300mmol/L、pH7.5
イオン交換クロマトグラフの流速;0.5ml/min
イオン交換クロマトグラフの溶出条件
;0分から0.05分は溶離液B10%、溶離液A90%
;0.05分から5分は溶離液B38%、溶離液A62%
;5分から11分は溶離液B44%、溶離液A56%
;11分から16分は溶離液B49%、溶離液A51%
;16分から21分は溶離液B56%、溶離液A44%
;21分から29分は溶離液B100%、溶離液A0%
;29分から40分は溶離液B10%、溶離液A90%
分離に要した時間;45分/検体
【0051】
上記装置によるリポ蛋白質の分離を試験した。高脂血症を呈した者から、インフォームドコンセントを得て採取した血清(総コレステロール値159mg/dL、中性脂肪492mg/dL)をイオン交換クロマトグラフに供して分離した画分と、別途同一血清を超遠心分離法によりHDL、LDL、IDL、VLDL、CMに分離したリポ蛋白画分に対して、90mmol/L トリス+80mmol/L ホウ酸+3mmol/L EDTA2Na、pH9.6の緩衝液にParinaric acid(疎水的な物に吸着し蛍光を発する試薬)を1.4ng/mL濃度となるように添加したラベル試薬を流速0.15mL/minで混合してからFS−8020(商品名、東ソー(株)製蛍光検出器、324nm、蛍光波長413nm)で検出した。
【0052】
血清試料を上記装置で分離したものについての結果を図5に、血清試料から超遠心分離法により調製したものについての結果を図6〜10に示す。HDL、LDL、IDL、VLDL、CMが良好に分離されたこと、及び、精製品の分析結果(結果は示していない)との比較からアルブミンや遊離脂肪酸(free fatty acid)はHDLと同じ位置に溶出していることが確認できた。
【0053】
実施例2
以下の構成の分析装置(図11)を作製し、前処理液の有機溶媒、界面活性剤、カオトロピックイオンについて試験を行った。
【0054】
逆相クロマトグラフ用カラム13;ODS−80Ts(商品名、東ソー(株)製)、4.6mmIDx150mm
試料導入部2;AS−8020(商品名、東ソー(株)製)
検出器14;FS−8020(商品名、東ソー(株)製蛍光検出器)、励起波長298nm、蛍光波長325nm
送液ポンプ16及び17;DP−8020(商品名、東ソー(株)製)
溶離液C18;30% エタノール+25mmol/L 硝酸アンモニウム
溶離液D19;85% エタノール+25mmol/l 硝酸アンモニウム
流速;1.0ml/min
溶出条件;0分から5分は溶離液C0%、溶離液D100%
;5分から10分は溶離液C0%、溶離液D100%から溶離液C100%、
溶離液D0%にリニアグラディエント
;10分から33分は溶離液C100%、溶離液D0%
;33分から35分は溶離液C100%、溶離液D0%から溶離液C0%、溶離液D100%にリニアグラディエント
;35から45分は溶離液C0%、溶離液D100%
分離に要した時間;45分/検体
【0055】
健常人からインフォームドコンセントを得て採取した血清(総コレステロール値215mg/dL、中性脂肪97mg/dL)の20μLを実施例1の装置に供し、0分から8分までの分画をHDL画分として、8から13分までの分画をLDL画分として取得した。この溶出画分を用いて、界面活性剤としてSDS、Triton X−100、Tween 20を、有機溶媒としてエタノール、アセトニトリル、メタノールを用いて検討した。
【0056】
まず、HDL画分試料を用いて検討した(表1〜3)。取得した溶出画分500μLに対して前処理液500μLを加え、室温下で3秒間混合後、その500μLを上記装置に供した。SDSを混合後の濃度(以下、終濃度とする)が12.5〜100mmol/Lとなるように加え、その他にリポ蛋白の安定化を目的としてアスコルビン酸を10mmol/Lとリン酸を1%加えた前処理液をHDL画分に加え、装置に供して分析したところ、表1に示したように、SDSが25mmol/Lのときに、γトコフェロールとαトコフェロールのどちらも最大のピーク高さが得られた。これにより、この条件により、効率よく逆相クロマトグラフ用カラムの表面に、ビタミンE類が回収されたことが分かる。
【0057】
SDSが終濃度25mmol/Lの条件下で、エタノールを終濃度として12.5〜35%、アセトニトリルを25%、メタノールを25%となるようにして、その他に試料の安定化を目的としてアスコルビン酸を10mmol/Lとリン酸を1%加えた前処理液をHDL画分に加え、装置に供して分析したところ、表2に示したように、γトコフェロールはアセトニトリルが25%の条件が、αトコフェロールはメタノール 25%の条件において最大のピーク高さが得られた。このことから、SDSを使用する場合には、有機溶媒として、γトコフェロールにはアセトニトリル 25%が、αトコフェロールにはメタノール 25%が最適であることが分かった。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
界面活性剤をSDSの代わりにTriton X−100またはTween 20とし、終濃度として0.5%となるようにして、エタノールが終濃度として0%又は25%となるようにした場合は、表2に示したように、γトコフェノールにはエタノールの効果は確認されなかったが、αトコフェロールについては、どちらもエタノールを加えた場合の方が強いピーク高さが得られた。これらのことから、SDSを使用する場合には、有機溶媒としてアセトニトリル又はメタノールが、αトコフェロールについて分析する場合に、Triton X−100やTween 20を使用する場合には、エタノールが効果的であることが分かった。
【0061】
エタノールを終濃度として25%として、SDSを終濃度として0〜50mmol/Lになるようにして、その他に試料の安定化を目的としてアスコルビン酸を10mmol/Lとリン酸を1%加えた前処理液をHDL画分に加え装置に供して分析したところ、表3に示したように、γトコフェロール、αトコフェロールどちらもSDSが50mmol/Lの条件において最大のピーク高さが得られた。また、SDS 50mmol/Lでエタノールが0%と25%の場合を比べて見ると、γトコフェロールとαトコフェロールのどちらもエタノールがある方が強いピーク高さが得られ、SDS 50mmol/Lの場合のエタノール添加の効果が確認された。
【0062】
【表3】

【0063】
次に血清を用いて、前処理液中に含まれる過塩素酸ナトリウムの効果を検討した(表4)。HDL画分には、イオン交換クロマトグラフで用いた溶離液に由来する過塩素酸ナトリウムが114mmol/L含まれていることから、過塩素酸ナトリウムの効果を確認した。上記の健常人血清を、実施例1の装置におけるイオン交換クロマトグラフに用いた溶離液A又はBで希釈し、エタノールの終濃度が25%又は0%のそれぞれにおいて、SDSの終濃度が125mmol/L、エタノールとSDSの終濃度がそれぞれ25%、SDS 25mmol/Lとなるように前処理液を加え、装置に供して分析した。なお、試料の安定化を目的としてアスコルビン酸を終濃度として5mmol/L加えた。その結果、表4に示したように、すべての条件について、過塩素酸ナトリウムが含まれた場合の方が含まれない場合に比較して強いピーク高さが得られ、更には、エタノール、SDS、過塩素酸ナトリウムのすべてが含まれている場合、最大のピーク高さとなった。
【0064】
【表4】

【0065】
次に、LDL画分試料を用いて検討した(表5)。エタノールが終濃度25%の条件下で、SDSが終濃度として0〜50mmol/Lとなるようにして、SDSが終濃度として25mmol/Lの条件下で、アセトニトリルまたはメタノールが終濃度25%となるようにして、その他に試料の安定化を目的としてアスコルビン酸を10mmol/Lとリン酸を1%加えた前処理液をLDL画分に加え、装置に供して分析した(LDL試料には、イオン交換クロマトグラフに用いている溶離液由来の過塩素酸ナトリウムが132mmol/L含まれている)。この結果、HDL画分を用いたときの検討結果と同様、表5に示したように、γトコフェロールとαトコフェロールどちらも、SDSの濃度が高くなるとともにピーク高さが向上し、そして、アセトニトリルが終濃度25%、SDSが25mmol/Lの条件において最大のピーク高さが得られた。
【0066】
【表5】

【0067】
以上の通り、逆相クロマトグラフに供するリポ蛋白画分を有機溶媒、界面活性剤、カオトロピックイオンを含む前処理液と混合することにより、各画分中のビタミンE類を精度よく安定的に分析可能であり、また、前処理液をリポ蛋白画分とともに逆相クロマトグラフに供しても、その分析に影響を与えないことが分かる。
【0068】
実施例3
高脂血症を呈した者から、インフォームドコンセントを得て採取した血清(総コレステロール値242mg/dL、中性脂肪421mg/dL)の20μLを実施例1の装置に供し、下記のとおり各リポ蛋白の溶出画分を取得してリポ蛋白質の分離を試験した。
【0069】
HDL画分;0〜8分のフラクション
LDL画分;8〜13分のフラクション
IDL画分;13〜19分のフラクション
VLDL画分;19〜24分のフラクション
Chylomicron(以下、CMと記す。)画分;24〜30分のフラクション
【0070】
各リポ蛋白溶出画分の500μLに、前処理液(エタノール50%、SDS250mmol/L、アスコルビン酸10mmol/L、リン酸1%、δトコフェロール0.04μg/mL)500μLを加えて混合し、実施例2の装置に供してγトコフェロールとαトコフェロールを分析した。ただし、実施例2の装置における蛍光検出器14のあとに、アンペロメトリック電気化学検出器(印加電圧600mV)をつなぎ、両方の検出器でクロマトグラムを得た。結果を図12〜23(奇数番号は蛍光検出のクロマトグラムを、偶数番号は電気化学検出のクロマトグラム)に示す。図12と13は前処理液を純水で2倍希釈した溶液を用いて作成した標準試料(δトコフェロール 0.02μg/mL、γトコフェロール 0.1μg/mL、αトコフェロール 0.1μg/mL)のクロマトグラムであるが、これらから明らかなように、δトコフェロール、γトコフェロール、αトコフェロールの順に溶出し、良好な分析結果が得られた。図14及び15はHDL画分、図16及び17はLDL画分、図18及び19はIDL画分、図20及び21にVLDL画分、図22及び23はCM画分のクロマトグラムを示す。CM画分では、インターナルコントロールであるδトコフェロールとαトコフェロールの2つのピークが検出され、γトコフェロールが検出されていないが、その他の画分では、δトコフェロール、γトコフェロール、αトコフェロールのすべてのピークが検出された。蛍光検出器のピーク高さから、血清中の各リポ蛋白中のγトコフェロール、αトコフェロールの濃度を算出した結果を表6に示す。算出に当たっては、前処理液に加えたδトコフェロールをインターナルコントロールとして各分析における回収率を算出し、分析結果を補正し、画分の分離及び前処理液による希釈を考慮してある。なお、血清中のγトコフェロール、αトコフェロールの濃度は各リポ蛋白画分の濃度を合計したものである。
【0071】
【表6】

【0072】
実施例4
高脂血症を呈した者から、インフォームドコンセントを得て採取した血清(総コレステロール値203mg/dL、中性脂肪215mg/dL)の20μLを下記の装置(図4に示した実施例1の装置構成と同じとし、溶離液組成および溶出条件を変更した)に供し、試料導入時から34分まで2分間ごとに17本の溶出画分を取得し、実施例3の装置及び方法により各リポ蛋白中のγトコフェロール、αトコフェロールを分析した。また、それぞれのフラクションのコレステロール濃度をコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを含んだ酵素液(コレステロールEテスト、商品名、和光純薬(株)製)で測定した。
【0073】
イオン交換クロマトグラフ用カラム1;DEAE−NPR(商品名、東ソー(株)製)、4.6mmID×35mmを2本直列に連結
試料導入部2;AS−8020(商品名、東ソー(株)製)
混合装置3;スタティックミキサーC(商品名、東ソー(株)製)
送液ポンプ4及び5;DP−8020(商品名、東ソー(株)製)
溶離液A;50mmol/L トリス+1mmol/L EDTA2Na+100mmol/L チオシアン酸ナトリウム、pH7.5
溶離液B;50mmol/L トリス+1mmol/L EDTA2Na+100mmol/L チオシアン酸ナトリウム+500mmol/L 硝酸ナトリウム、pH7.5
イオン交換クロマトグラフの流速;0.5ml/min
イオン交換クロマトグラフの溶出条件
;0分から24分は溶離液B10%、溶離液A90%から溶離液B50%、溶離液A50%へのリニアグラディエント
;20分から25分は溶離液B50%、溶離液A50%
;25分から30分は溶離液B100%、溶離液A0%
;30分から40分は溶離液B10%、溶離液A90%
【0074】
各溶出画分中のγトコフェロール、αトコフェロール、コレステロールの濃度を表7に示す。フラクション6及び7がHDLに、フラクション8及び9がLDLに、フラクション10及び11がIDLに、フラクション12及び13がVLDLに、フラクション13及び14がCMに相当する。このように、イオン交換クロマトグラフでリポ蛋白をリニアグラディエント溶出した場合でも、良好なリポ蛋白中ビタミンE類の分析を行うことが可能であった。
【0075】
【表7】

【0076】
実施例5
図1に示した本発明の分析装置として、具体的に以下の装置を作製した。高脂血症を呈した者からインフォームドコンセントを得て採取した血清(総コレステロール値203mg/dL、中性脂肪215mg/dL)の20μLをこの装置に供し、ビタミンE類を分析した。なお、本例では一回の試料導入により各リポ蛋白中のビタミンE類を測定するのではなく、合計5回の試料導入を行うことにより、各一つのリポ蛋白中のビタミンE類を分析したものである。
【0077】
イオン交換クロマトグラフ用カラム1;DEAE−NPR(商品名、東ソー(株)製)、4.6mmID×35mmを2本直列に連結
試料導入部2;AS−8020(商品名、東ソー(株)製)
混合装置3;スタティックミキサーC(商品名、東ソー(株)製)
送液ポンプ4及び5;DP−8020(商品名、東ソー(株)製)
溶離液A6;50mmol/L トリス+1mmol/L EDTA2Na、pH7.5
溶離液B7;50mmol/L トリス+1mmol/L EDTA2Na+過塩素酸ナトリウム 300mmol/L、pH7.5
イオン交換クロマトグラフの流速;0.5ml/min
イオン交換クロマトグラフの溶出条件
;0分から0.05分は溶離液B10%、溶離液A90%
;0.05分から5分は溶離液B38%、溶離液A62%
;5分から11分は溶離液B44%、溶離液A56%
;11分から16分は溶離液B49%、溶離液A51%
;16分から21分は溶離液B56%、溶離液A44%
;21分から29分は溶離液B100%、溶離液A0%
;29分から40分は溶離液B10%、溶離液A90%
送液ポンプ8;DP−8020(商品名、東ソー(株)製)
前処理液9;100mmol/L SDS+50% エタノール
混合装置10;スタティックミキサーB(商品名、東ソー(株)製)
前処理液の流速;0.25ml/min
六方切り替えバルブ11;6方電磁弁
切り替えのタイミング(OFFからONへの流路の切り替え)
;HDL溶出画分については7分から2分間
;LDL溶出画分については11分から2分間
;IDL溶出画分については17分から2分間
;VLDL溶出画分については22分から2分間
;CM溶出画分については27分から2分間
サンプルループ12の容量;1.5ml容量
逆相クロマトグラフ用カラム13;ODS−80Ts(商品名、東ソー(株)製)、4.6mmIDx150mm
検出器14;FS−8020(商品名、東ソー(株)製蛍光検出器)、励起波長298nm、蛍光波長325nm
検出器15;EC−8020(商品名、東ソー(株)製アンペロメトリック電気化学検出器、印加電圧600mV)
送液ポンプ16及び17;DP−8020(商品名、東ソー(株)製)
溶離液C18;30% エタノール+25mmol/L 硝酸アンモニウム
溶離液D19;85% エタノール+25mmol/l 硝酸アンモニウム
逆相クロマトグラフの流速;1.0ml/min
逆相クロマトグラフの溶出条件
;当初は溶離液C100%、D0%
;切り替えバルブ11がONになってから5分後に溶離液C100%、D0%に変更
;切り替えバルブ11がONになってから34分後に溶離液C0%、D100%に変更
分析時間;46分/検体
【0078】
HDL溶出画分の分析結果を図24及び25に、LDL溶出画分の分析結果を図26及び27に、IDL溶出画分の分析結果を図28及び29に、VLDL溶出画分の分析結果を図30及び31に、そしてCM溶出画分の分析結果を図32及び33に示す。なお、各図は、偶数番号が電気化学検出のクロマトグラム、奇数番号が蛍光検出のクロマトグラムを示す。各図から明らかなように、各リポ蛋白の画分でγトコフェロールとαトコフェロールが良好に検出された。
【0079】
実施例6
前処理液の組成を50mmol/L 過塩素酸ナトリウム+1% Triton X−100+75% エタノールとした以外は、実施例5と同一の装置及び方法にて分析を行った。HDL溶出画分の分析結果を図34及び35に、LDL溶出画分の分析結果を図36及び37に、IDL溶出画分の分析結果を図38及び39に、VLDL溶出画分の分析結果を図40及び41に、そしてCM溶出画分の分析結果を図42及び43に示す。なお、各図は、偶数番号が電気化学検出のクロマトグラム、奇数番号が蛍光検出のクロマトグラムを示す。各図から明らかなように、各リポ蛋白の画分でγトコフェロールとαトコフェロールが良好に検出された。
【0080】
動脈硬化の危険因子として、酸化したリポ蛋白が注目を浴びている。リポ蛋白に含まれる主要な抗酸化物質は、ビタミンE類(主としてαトコフェノールとγトコフェノール)であるが、本発明のリポ蛋白中のビタミンE類の分析方法によれば、血液中にある各リポ蛋白中のビタミンE類の量を分析することができるから、動脈硬化のメカニズムを理解するうえで重要な知見を得ることが可能になる。動脈硬化とリポ蛋白中のビタミンE類の関係が明らかになれば、本発明の分析方法は、動脈硬化の診断や治療効果のモニターにも好適なものである。
【0081】
また本発明の分析装置は、ビタミンE類の分析等を、自動的に、従って短時間に行い得るものであり、しかも自動的な分析であるために誤差を生じる可能性が少ないものである。
【0082】
イオン交換クロマトグラフを使用してリポ蛋白を分離した後、分離したリポ蛋白を有機溶媒及び界面活性剤を含む前処理液と反応させてビタミンE類を遊離させ、次いで遊離したビタミンE類を逆相クロマトグラフに供するという構成は、従来技術における、各リポ蛋白を分離した後、ビタミンE類を抽出し、乾固濃縮し、再溶解し、そして逆相クロマトグラフに供するという構成と比較して、構成自体簡便であり、しかも誤差を生じる可能性が少ないという特徴を有するものである。詳しくは、従来技術では分離した各リポ蛋白画分のそれぞれについて、手作業でビタミンE類を抽出し、乾固濃縮し、そして再溶解する、という、複雑で誤差を生じやすい手作業の工程が必須であったが、本発明ではこの工程を、事前に調製された前処理液を添加・混合して反応させるという、単純な工程で置き換えているからである。
【0083】
従来の技術では、ビタミンE類の抽出、乾固濃縮そして再溶解という工程が複雑でしかも手作業で実施せざるを得ないものであったため、操作を自動化することは困難であった。しかし本発明の分析方法では、イオン交換クロマトグラフ及び逆相クロマトグラフで使用する分離剤をカラムに充填して実施することが可能で、かつ、ビタミンE類の抽出、乾固濃縮及び再溶解の工程に代わる、イオン交換クロマトグラフにおける溶出液に対して前処理液を混合するという工程を、イオン交換クロマトグラフの溶出液を逆相クロマトグラフに供する過程で自動的に実施することも可能である。この結果、本発明の分析方法は、一定量の試料を採取する試料導入部、イオン交換カラムを備えるイオン交換クロマトグラフ部、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液の一部又は全部を試薬と混合する試薬混合部、逆相カラムを備える逆相クロマトグラフ部、逆相クロマトグラフ部からの溶出液について検出を行う検出部、及び、試料導入部で採取した試料及びイオン交換クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部、試薬を送液する送液部、イオン交換クロマトグラフ部からの溶出液と試薬とが混合された液を送液する送液部、及び、逆相クロマトグラフ用の溶離液を送液する送液部を備える分析装置により、容易に自動化し、分析に要する時間や労力を短縮等することができる。
【0084】
実施例7
17例の健常人(Healthy)、20例の糖尿病患者(Diabetes)、17例の心筋梗塞患者(AMI)の血清中のHDL、LDL、IDL、VLDL、Chylomicron中のαおよびγトコフェロールを実施例3に記載した方法で測定した。また、イオン交換クロマトグラフィー法(Hirowatari Yら、J Lipid Res、44、p1404(2003)(非特許文献12))により、別に各リポ蛋白のコレステロールを測定し、コレステロール当りのαおよびγトコフェロールを算出した。
【0085】
また、すべてのリポ蛋白中のαおよびγトコフェロールを加算することにより、血液中のすべてのリポ蛋白中の総ビタミンE濃度(αおよびγトコフェロール濃度)を算出した。そして、別に各リポ蛋白のコレステロールを測定し、合計して血液中のコレステロールを算出し、コレステロール当りのαおよびγトコフェロールを算出した。結果を図と表に示す。なお、図中のバーおよび四角はノンパラメトリック統計による中心値(50パーセントタイル値)および25〜75パーセンタイル値(IQR)を示す。
【0086】
HDL中のγトコフェロール/コレステロール値(コレステロール当たりのγトコフェロール値)を図44と表8に示した。
【0087】
【表8】

【0088】
糖尿病(平均値1.23mmol/mol)、心筋梗塞(平均値1.00mmol/mol)、健常人(平均値1.20mmol/mol)と、同等の値を示したが、心筋梗塞において、0.5mmol/mol以下と健常人より明らかに低値の患者が見られた。心筋梗塞において、健常人に比べ低値の患者が見られたのは、酸化ストレスによりHDL中のγトコフェロールが分解されたことを示しているのであろう。
【0089】
LDL中のγトコフェロール/コレステロール値を図45と表8に示した。糖尿病(平均値0.40mmol/mol)、心筋梗塞(平均値0.37mmol/mol)、健常人(平均値0.34mmol/mol)と、同等の値を示した。
【0090】
IDL中のγトコフェロール/コレステロール値を図46と表8に示した。糖尿病(平均値3.17mmol/mol)は健常人(平均値6.25mmol/mol)より有意(p=0.007)に低く、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによりIDL中のγトコフェロールが分解されたことを示している。また、心筋梗塞についても、有意差(p=0.218)はないが、平均値4.82mmol/molと健常人より低い値を示し、これも、原因は酸化ストレスによるものである。なお、有意差の有無の判断基準は、健常人の数値と、各患者の数値とで、ウェルチのt検定(非等分散の2標本を対象とするt検定)を行い、p値が0.05未満であれば有意差ありとし、それ以上であれば有意差なしと判定した(以下、同様)。
【0091】
VLDL中のγトコフェロール/コレステロール値を図47と表8に示した。糖尿病(平均値2.39mmol/mol)は健常人(平均値5.05mmol/mol)より有意(p=0.018)に低く、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによりVLDL中のγトコフェロールが分解されたことを示している。このことから、VLDL中のγトコフェロール/コレステロール値を見ることにより糖尿病の酸化ストレスに関した病態を判定することが出来ると言える。
【0092】
また、VLDLコレステロールとの関係を図48に示した。冠動脈疾患である心筋梗塞患者においては、全体としては健常人に比べ低下傾向ではないものの、その分布は健常人より幅が広く健常人の25パーセンタイル値(1.91mmol/mol)より心筋梗塞患者の25パーセンタイル値(1.31mmol/mol)は低値となった。ところで、VLDLコレステロール(Hubert HBら、Am J Epidemiol、125、p812(1987))は冠動脈疾患のリスクファクターとして明らかになっているが、このVLDLコレステロールとVLDL中のγトコフェロール/コレステロール値との関係を調べた。VLDLコレステロールが高値傾向になるとともに、心筋梗塞患者だけでなく、糖尿病患者も健常人についても、急激にVLDL中のγトコフェロール/コレステロール値が低下していることがわかる。なお、VLDLコレステロールとVLDL中のγトコフェロール値に関連性はなかった(図49)。そして、健常人のVLDL中のγトコフェロール/コレステロール値が3mmol/mol以下に該当するものは、VLDLコレステロール値が9mg/dL以上と高値であり、心筋梗塞のリスクの高い人であった。この結果から考えるに健常人の中にも心筋梗塞もリスクの高い人が存在しているのであると推測される。これらのことから、VLDL中のγトコフェロール/コレステロール値は、VLDLコレステロールの比較的低いレベルの時の冠動脈疾患のリスクを正確に判断できるものだと言える。冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患の高いリスクとなることが知られている病態である糖尿病での測定値が健常者より低値であったことも合わせて考えるに、VLDL中のγトコフェロール/コレステロール値により、冠動脈疾患のリスクを判定することができると言える。
【0093】
CM中のγトコフェロール/コレステロール値を図50と表8に示した。糖尿病(平均値11.04mmol/mol)は健常人(平均値17.42mmol/mol)より有意(p=0.047)に低く、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによりCM中のγトコフェロールが分解されたことを示している。心筋梗塞についても、有意差(p=0.637)は見られなかったものの、平均値15.71mmol/molと健常人に比べ低く、これも酸化ストレスによる分解が原因であろう。
【0094】
血液中のγトコフェロール/コレステロール値を図51と表8に示した。糖尿病(平均値0.90mmol/mol)および心筋梗塞(平均値0.97mmol/mol)と有意差(p=0.199およびp=0.584)はないものの、健常人(平均値1.03mmol/mol)より低値を示した。また、図51を見ると、その患者数は多くはないものの、明らかに健常人より値が低値の糖尿病患者および心筋梗塞患者が確認できる。これは、糖尿病および心筋梗塞が有する病態である酸化ストレスにより血液中のγトコフェロールが分解されたことを示している。
【0095】
HDL中のαトコフェロール/コレステロール値(コレステロール当たりのαトコフェロール値)を図52と表9に示した。
【0096】
【表9】

【0097】
糖尿病(平均値7.58mmol/mol)および心筋梗塞(平均値9.30mmol/mol)と健常人(平均値6.09mmol/mol)を比較した場合に、有意差(p=0.072およびp=0.095)は見られなかったが高値傾向を示し、これは、HDLは脂質代謝の中心的な役割を担う重要なリポ蛋白であるので、糖尿病および心筋梗塞が有する病態である酸化ストレスによるダメージの防御として、HDL中のαトコフェロールの含量を増加させたのではないかと考えられる。
【0098】
LDL中のαトコフェロール/コレステロール値を図53と表9に示した。糖尿病(平均値3.33mmol/mol)は健常人(平均値2.01mmol/mol)より有意(p=0.016)に高く、これは、LDLは脂質代謝の中心的な役割を担う重要なリポ蛋白であるので、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによるダメージの防御として、LDL中のαトコフェロールの含量を増加させたのではないかと考えられる。このように、LDL中のαトコフェロール/コレステロール値を見ることにより糖尿病の酸化ストレスに関した病態を判定することが出来ると言える。
【0099】
心筋梗塞(平均値3.94mmol/mol)の場合も健常人(平均値2.01mmol/mol)より有意(p=0.0001)に高く、これは、LDLは脂質代謝の中心的な役割を担う重要なリポ蛋白であるので、心筋梗塞が有する病態である酸化ストレスによるダメージの防御として、LDL中のαトコフェロールの含量を増加させたのではないかと考えられる。このように、LDL中のαトコフェロール/コレステロール値を見ることにより心筋梗塞の酸化ストレスに関した病態を判定することが出来ると言える。
【0100】
IDL中のαトコフェロール/コレステロール値を図54と表9に示した。有意差(p=0.106)は低いものの、糖尿病(平均値15.33mmol/mol)は健常人(平均値20.14mmol/mol)に比べ明らかに低いことがわかる。これは、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによりIDL中のαトコフェロールが分解されたことを示している。心筋梗塞(平均値24.39mmol/mol)は健常人(平均値20.14mmol/mol)に比べ高かったが、心筋梗塞患者の測定値では健常人に比べ、高い患者と低い患者のばらつきが大きかった。実際に、心筋梗塞患者の25パーセンタイル値13.7mmol/molは健常人の25パーセンタイル値15.7mmol/molより低値となった。健常人の中にも酸化ストレスによりIDL中のαトコフェロールが分解している人もいる可能性を考えると、健常人の25パーセンタイル値15.7mmol/molより低値の心筋梗塞患者は酸化ストレスによるIDL中のαトコフェロールの分解が進んでいるのであろう。
【0101】
VLDL中のαトコフェロール/コレステロール値を図55と表9に示した。有意差(p=0.373)はないものの、糖尿病(平均値13.46mmol/mol)は健常人(平均値17.51mmol/mol)より明らかに低く、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによりVLDL中のαトコフェロールが分解されたことを示している。このことから、VLDL中のαトコフェロール/コレステロール値を見ることにより糖尿病の酸化ストレスに関した病態を判定することが出来ると言える。
【0102】
また、VLDLコレステロールとの関係を図56に示した。冠動脈疾患である心筋梗塞患者においては、全体としては健常人に比べ低下傾向ではなかった。しかしながら、健常人の中にも心筋梗塞もリスクの高い人が存在しているのであろうと推測されているので、このような結果になった可能性がある。次に、VLDLコレステロール(Hubert HBら(1987)前掲)は冠動脈疾患のリスクファクターとして明らかになっているが、このVLDLコレステロールとVLDL中のαトコフェロール/コレステロール値との関係を調べた。VLDLコレステロールが高値傾向になるとともに、心筋梗塞患者だけでなく、糖尿病患者も健常人についても、急激にVLDL中のαトコフェロール/コレステロール値が低下していることがわかる。なお、VLDLコレステロールとVLDL中のαトコフェロール値に関連性はなかった(図57)。そして、健常人のVLDL中のαトコフェロール/コレステロール値が7mmol/mol以下に該当する人は、VLDLコレステロール値が15mg/dL以上と高値であり、心筋梗塞のリスクの高い人であることが明らかとなった。このことから、VLDL中のαトコフェロール/コレステロール値は、VLDLコレステロールの低いレベルの場合の冠動脈疾患のリスクを正確に判断できるものだと言える。冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患の高いリスクとなることが知られている病態である糖尿病での測定値が健常者より低値であったことも合わせて考えるに、VLDL中のαトコフェロール/コレステロール値により、冠動脈疾患のリスクを判定することができると言える。
【0103】
CM中のαトコフェロール/コレステロール値を図58と表9に示した。有意差(p=0.190)はないものの、糖尿病(平均値45.37mmol/mol)は健常人(平均値64.73mmol/mol)より低値傾向を示し、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによりCM中のαトコフェロールが分解されたことを示している。心筋梗塞については、有意差p=0.551と糖尿病より更に低かったが、その平均値は55.39mmol/molと健常人の平均値より低く、これも酸化ストレスによる分解が原因であろう。
【0104】
血液中のαトコフェロール/コレステロール値を図59と表9に示した。有意差はp=0.005と、心筋梗塞(平均値6.83mmol/mol)は健常人(平均値4.71mmol/mol)に比べ明らかに高く、これは、血液中の主要なリポ蛋白であるLDLやHDLが、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによるダメージの防御として、αトコフェロールの含量を増加させたのではないかと考えられる。また、糖尿病については、有意差(p=0.136)はないものの、やはり健常人(平均値4.71mmol/mol)に比べて高く、これも、血液中の主要なリポ蛋白であるLDLやHDLが、糖尿病が有する病態である酸化ストレスによるダメージの防御として、αトコフェロールの含量を増加させたのではないかと考えられる。
【0105】
健常人と糖尿病について、血液中のαトコフェロール値とγトコフェロール値の比較を行った(図60、61)。αトコフェロール値は健常人(平均値10.70μg/ml)に比べ糖尿病患者(平均値13.63μg/ml)が明らかに高値を示し、γトコフェロールの平均値は健常人(平均値2.23μg/ml)に比べ糖尿病患者(平均値2.15μg/ml)はやや低いが、全体の分布を見ると健常人に比べ糖尿病患者で高値の人が見られ、中心値はやや高値を示している(健常人;中心値2.07μg/ml、糖尿病患者;中心値2.26μg/ml)。これらビタミンE(αおよびγトコフェロール)が高値となった現象は、糖尿病患者の体内で発生している酸化ストレスに対する防御機構の1つだと考えている。
【0106】
また、αトコフェロールに比べて、γトコフェロールは酸化ストレスにより発生するラジカルにより分解を受けやすいという現象がある。また、αおよびγトコフェロールは小腸から同様に吸収され肝臓また一部分は抹消細胞にカイロマイクロンを介して輸送され、肝臓内ではビタミンE輸送タンパク質により、ある一定の量のαおよびγトコフェロールをVLDL粒子内に含有させて血中に放出することにより体内の抹消細胞に輸送されることが知られている。同様のメカニズムにより小腸で吸収され肝臓から放出されるαおよびγトコフェロールの血液中での比率はほぼ一定であると推定される。これら現象から、γトコフェロールをαトコフェロールの比として算出すれば、糖尿病の酸化ストレスに関する病態を反映する優れた指標と考え検討した。結果を図62と表10に示す。血液中のγトコフェロール/αトコフェロール比は予想通り、健常人(平均値0.22)に比べ、糖尿病(平均値0.17)と有意(p=0.013)と低く、糖尿病の酸化ストレスに関する病態を判定することが出来ると言える。
【0107】
【表10】

【0108】
また、冠動脈疾患において、健常人と比べた場合にαトコフェロールは有意(p=0.061)ではないがやや高値であり、γトコフェロールは有意(p=0.023)に低く、γトコフェロール/αトコフェロール比は有意(p=0.005)に低いという結果は、Ohrvall Mら(1996)前掲の内容とほぼ一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポ蛋白を含む試料をイオン交換クロマトグラフに供してリポ蛋白を分離し、分離したリポ蛋白を有機溶媒及び界面活性剤を含む前処理液と反応させてビタミンE類を遊離させ、次いで遊離したビタミンE類を逆相クロマトグラフに供することを特徴とするリポ蛋白中のビタミンE類の分析方法。
【請求項2】
前記前処理液は、イオン交換クロマトグラフで分離したリポ蛋白と反応させる段階で10から50%となる有機溶媒と0.2から6.0%となる界面活性剤を含むものであることを特徴とする請求項1の分析方法。
【請求項3】
前記前処理液は、更にイオン交換クロマトグラフで分離したリポ蛋白と反応させる段階で50から150mmol/Lとなるカオトロピックイオンを含むものであることを特徴とする請求項1又は2の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【公開番号】特開2013−40969(P2013−40969A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−260060(P2012−260060)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2007−139507(P2007−139507)の分割
【原出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】