説明

リモートコントロール送信機

【課題】 信号切換用スイッチを有するリモートコントロール送信機において、ユーザが信号切換用スイッチを操作している状態における操作性を改善すること。
【解決手段】 リモートコントロール送信機1のケース上の互いに対向する位置に一つずつ、合わせて二つの信号切換用スイッチ51,52を設け、これらが同時に操作された場合に送信する信号を切り換えることとしたことによって、ユーザが信号切換用スイッチ51,52を操作している状態であっても、グラつくことなくリモートコントロール送信機1を把持でき、また、直感的な動作でドラッグ操作を行うことができるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AV機器などを遠隔操作するためのリモートコントロール送信機に関するものであり、さらに詳しくは、内蔵するモーション検出手段によって、ジェスチャによる入力操作やポインティング操作が可能であり、かつ、送信する遠隔操作用信号に含まれる情報を切り換えるためのスイッチを有するリモートコントロール送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
AV機器などが有する機能の複雑化に伴い、これらの機器を遠隔操作するリモートコントロール送信機の操作性の改善が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているマルチメディアユーザーインターフェイス用のリモートコントロール送信機は、角度感知機能を有し、感知した角度情報からジェスチャを特定して、各ジェスチャに応じた所定の遠隔操作を行うものである。ケース表面側に設けられた親指ボタン205と、ケース裏面側に設けられたトリガボタン210とを備え、親指ボタン205が押下された際には選択されている機能を起動し、トリガボタン210が押下された際には「トリガードラッグ」と称されるドラッグ操作を行うことができる構成としたことで、操作性の改善を図ったものである。(図3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−525844号公報(段落0013〜0018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来のリモートコントロール送信機のように、裏面に設けられたトリガボタンを押下しながらドラッグ操作を行うものの場合は、ユーザーがリモートコントロール送信機をしっかり把持することができないため、リモートコントロール送信機がグラつき、所望する操作を円滑に行えない場合がある。特に、パソコンのカーソル操作などのようなポインティング操作を行うために、このようなリモートコントロール送信機を応用した場合、例えばアイコンをドラッグして所望する場所へドロップする、というような繊細な操作が要求される場面において、その影響が顕著であった。
【0006】
また、裏面に設けられたトリガボタンを押下しながらドラッグ操作などを行うことは、必ずしも直感的に理解できる操作形態ではなく、特に、高齢者などのように、その類の電子機器の操作に不慣れなユーザーにとっては、必ずしも操作性が良好と感じられるものではなかった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、信号切換用スイッチを操作している状態であっても、リモートコントロール送信機をしっかりと把持できるものとすることでリモートコントロール送信機のグラつきを防ぎ、さらには、直感的な動作でドラッグ操作などを行うことができるリモートコントロール送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するために、本発明による請求項1記載のリモートコントロール送信機は、ケースと、当該ケースの移動を検出するモーション検出手段と、当該モーション検出手段によって検出されたモーション情報に基づいた所定の信号を送信する信号送信手段と、ケース上の互いに対向する位置に一つずつ、合わせて二つの信号切換用スイッチが配置されており、この二つの信号切換用スイッチが同時に操作された場合に、送信する信号を切り換えることを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項2記載のリモートコントロール送信機は、前記ケースが直方体状の形状であり、前記二つの信号切換用スイッチがケースの表面と裏面にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明による請求項3記載のリモートコントロール送信機は、前記ケースが直方体状の形状であり、前記二つの信号切換用スイッチがケースの左右側面にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0011】
このように、ケース上の互いに対向する位置に一つずつ、ケースが直方体状の形状である場合には、表面と裏面、あるいは、左側面と右側面に、それぞれ一つずつ信号切換用スイッチを配置したことで、信号切換用スイッチが操作された状態であっても、リモートコントロール送信機のケースを、対向する二方向からしっかりと把持することができるため、リモートコントロール送信機がグラつくことがなく、繊細な操作を要求される場面においても、所望する操作を円滑に行うことができる。
【0012】
本発明による請求項4記載のリモートコントロール送信機は、前記二つの信号切換用スイッチがモーメンタリプッシュスイッチであることを特徴とする。
【0013】
このように、信号切換用スイッチを一般的なモーメンタリプッシュスイッチとすることで、前述のように良好な操作性を有するリモートコントロール送信機を低コストで実現することができる。
【0014】
本発明による請求項5記載のリモートコントロール送信機は、ポインティング操作が可能なものであって、前記二つの信号切換用スイッチが同時に操作された場合に、ドラッグ操作が可能となることを特徴とする。
【0015】
このように、信号切換用スイッチが同時に操作された場合にドラッグ操作が可能となるように構成することで、二本の指でリモートコントロール送信機のケースをつまんだ状態でドラッグ操作をすることとなり、例えば、アイコンをドラッグアンドドロップ操作するような場合、リモートコントロール送信機を指でつまんで動かすことと、アイコンを摘み上げて移動する(ドラッグアンドドロップ)こととの間でのイメージ的な共通性が得られるため、この種の操作に不慣れなユーザーであっても、直感的にドラッグアンドドロップ操作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、信号切換用スイッチを操作している状態であっても、リモートコントロール送信機をしっかりと把持できるものとしたことで、リモートコントロール送信機のグラつきを防ぎ、さらには、直感的な動作でドラッグ操作などを行うことができるため、操作性を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るリモートコントロール送信機の外観図であり、(a)は正面側斜視図、(b)は背面側斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例に係るリモートコントロール送信機の外観図であり、(a)は正面側斜視図を、(b)は背面側斜視図である。
【図3】従来のリモートコントロール送信機の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施例に係るリモートコントロール送信機1について、図1を用いて説明する。
【0019】
リモートコントロール送信機1は、操作面側ケース21と裏面側ケース22とからなるケース2によって形成され、直方体状をなしている。操作面側ケース21の表面には、複数の操作ボタン4が配設されている。操作ボタン4は、シリコンゴムをシート状に成形した公知のラバーコンタクトによって形成されている。操作ボタン4には、被操作機器の電源をオン・オフするためのボタンが含まれている。それぞれの操作ボタン4には、それぞれ対応する信号が予め割り付けられている。いずれかの操作ボタン4を押下することによって、その操作ボタン4に対応する信号がリモートコントロール送信機1から送信され、被操作機器に対して、所望する操作を行うことができるように構成されている。
【0020】
リモートコントロール送信機1の電源は、二本の単三型乾電池である。ケースの内部には、乾電池を収容する電池収容部(図示しない)が設けられている。この電池収容部へ乾電池を挿入する際には、裏面側ケース22とスライド嵌合する電池カバー3を取り外し、乾電池を挿入した後、再び電池カバー3を取り付ける。
【0021】
操作面側ケース21と裏面側ケース22、および電池カバー3は、いずれもABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂を射出成形したものであり、絶縁性のものである。
【0022】
本実施例における送信手段は電波方式である。電波方式はリモートコントロール送信機1の向きに依存せずに信号を被操作機器へ向けて送信することができるため、発光素子を常に被操作機器へ向ける必要がある赤外線方式に比べて、モーション検出手段を有するリモートコントロール送信機1の送信手段として好適である。
【0023】
ケースの内部には、図示しない印刷配線基板が収容されている。印刷配線基板上には、モーション検出手段としての三軸加速度センサと、信号送信手段としての電波信号送信モジュールと、リモートコントロール送信機1の各機能を実行する手段としてのマイクロコンピュータと、第1信号切換用スイッチ51と第2信号切換用スイッチ52のそれぞれに対応するモーメンタリプッシュスイッチなどが実装されている。なお、以下の説明において、第1信号切換用スイッチ51と第2信号切換用スイッチ52とを特に区別する必要がない場合には、これらを信号切換用スイッチ5と総称する場合がある。
【0024】
マイクロコンピュータは不揮発性メモリを有しており、この不揮発性メモリには、各機能を実行するためのプログラムや、各操作ボタン4に対応して割り付けられている送信信号情報などが予め書き込まれている。マイクロコンピュータが担う処理には、三軸加速度センサの出力信号を元に所定の送信信号を生成する処理、第1信号切換用スイッチ51および第2信号切換用スイッチ52のオン/オフ状態を検出して、その状態に基づいて所定の送信信号を生成する処理、押下された操作ボタン4を検出して、予め割り付けられている送信信号情報から、所定の送信信号を生成する処理、生成した所定の送信信号を電波信号送信モジュールへ向けて出力する処理、などが含まれる。
【0025】
本実施例では、操作面側ケース21、すなわち、リモートコントロール送信機1の正面の中央付近に第1信号切換用スイッチ51が、裏面側ケース22上、すなわち、リモートコントロール送信機1の背面の中央付近に第2信号切換用スイッチ52が、それぞれ配設されている。これらの信号切換用スイッチ5の配設位置は、ユーザーがリモートコントロール送信機1を自然に持った際、ユーザーの親指が第1信号切換用スイッチ51に、人差し指が第2信号切換用スイッチ52にそれぞれ触れるように考慮されている。
【0026】
第1信号切換用スイッチ51、第2信号切換用スイッチ52ともに、これらが押下されることに伴って、図示しない印刷配線基板上に実装されたモーメンタリプッシュスイッチが押圧され、モーメンタリプッシュスイッチをオン状態とするように構成されている。
【0027】
ユーザーが、信号切換用スイッチ5が押下されていない状態での操作とは異なる操作を行う場合には、これら二つの信号切換用スイッチ5を同時に押下して操作を行う。マイクロコンピュータは、二つの信号切換用スイッチ5の両方が押下され、両方のモーメンタリプッシュスイッチがオン状態になっていることを検出している間に限って、送信する信号を切り換えるように処理を行う。これによって、ユーザーが信号切換用スイッチ5を押下している状態であっても、表(おもて)面と裏面、すなわち、対向する二面からリモートコントロール送信機1をしっかりと把持した状態でリモートコントロール送信機1の揺動操作を行うことができるため、揺動操作に伴うリモートコントロール送信機1のグラつきが防止され、繊細な操作を円滑に行うことができる。
【0028】
このように構成されたリモートコントロール送信機1を、パソコンの操作に応用した場合に実現することができる操作として、次のような操作を例示することができる。
(1)リモートコントロール送信機1を上下左右に揺動させることでポインティング操作を行って所望するアイコンをポインティングした上で、二つの信号切換用スイッチ5を同時に押下し、押下したまま、再びリモートコントロール送信機1を上下左右に揺動させることで、アイコンのドラッグ操作を行う。
(2)リモートコントロール送信機1を上下左右に揺動させることでポインティング操作を行って所望するアイコンをポインティングした上で、二つの信号切換用スイッチ5を同時に押下し、押下したまま、再びリモートコントロール送信機1を上下左右に揺動させてドラッグ操作を行っている途中で、二つの信号切換用スイッチ5を放すことによって、所定の時間、隣接して配置されているアイコンと連動してアイコンを移動させる。
(3)二つの信号切換用スイッチ5を同時に押下しながら、リモートコントロール送信機1を前方(被操作機器の方向)へ変位させることで表示内容を拡大する。
(4)二つの信号切換用スイッチ5を同時に押下しながら、リモートコントロール送信機1を後方(被操作機器とは逆の方向)へ変位させることで表示内容を縮小する。
(5)二つの信号切換用スイッチ5を同時に押下しながら、リモートコントロール送信機1を、長さ方向を軸として捻る方向へ変位させることで、操作対象ウィンドウの表示内容を回転させる。
【0029】
本発明の第2の実施例に係るリモートコントロール送信機1について、図2を用いて説明する。
【0030】
第2実施例は、第1実施例に対して二つの信号切換用スイッチ5の配設位置を変更したものであり、その他の構成は第1実施例と同じである。第2実施例では、リモートコントロール送信機1の右側面の中央付近に第1信号切換用スイッチ51が、左側面の中央付近に第2信号切換用スイッチ52が、それぞれ配設されている。これらの信号切換用スイッチ5の配設位置は、ユーザーがリモートコントロール送信機1を右手で自然に持った際、ユーザーの人指し指が第1信号切換用スイッチ51に、親指が第2信号切換用スイッチ52にそれぞれ触れるように考慮されている。これら二つの信号切換用スイッチ5を同時に押下することで、左右側面、すなわち、対向する二面からからリモートコントロール送信機1をしっかりと把持した状態で、リモートコントロール送信機1の揺動操作を行うことができるため、第1実施例の場合と同様に、揺動操作に伴うリモートコントロール送信機1のグラつきが防止される。
【0031】
前述の二つの実施例は、いずれも直方体形状であるが、リモートコントロール送信機1が、例えば、円柱状(棒状)である場合には、円柱面上のほぼ対向する位置に二つの信号切換用スイッチを設けることで同様な効果を得ることができ、また、球状である場合には、球面のほぼ対向する位置に二つの信号切換用スイッチ5を設けることで同様な効果を得ることができる。
【0032】
また、前述の二つの実施例においては、いずれも、信号送信手段を電波方式によるものとしているが、信号送信手段はこれに限定されず、例えば、複数の赤外線発光素子を実装することによって、送信する信号の出力指向性が拡大された赤外線方式であってもよい。
【0033】
また、前述の二つの実施例においては、いずれも、モーション検出手段として三軸加速度センサを用いているが、モーション検出手段はこれに限定されず、例えば、ジャイロセンサ、角速度センサ、地磁気センサなどであってもよい。
【0034】
また、前述の二つの実施例においては、信号切換用スイッチ5をモーメンタリプッシュスイッチとしているが、信号切換用スイッチ5はこれに限定されず、例えば、静電容量検出方式によるタッチスイッチや近接スイッチであってもよく、また、押圧力を検出する感圧素子を応用したものなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、AV機器などを遠隔操作するためのリモートコントロール送信機に好適に応用でき、その操作性を改善することに寄与する。
【符号の説明】
【0036】
1 リモートコントロール送信機
2 ケース
21 操作面側ケース
22 裏面側ケース
3 電池カバー
4 操作ボタン
5 信号切換用スイッチ
51 第1信号切換用スイッチ
52 第2信号切換用スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
当該ケースの移動を検出するモーション検出手段と、
当該モーション検出手段によって検出されたモーションの情報に基づいた所定の信号を送信する信号送信手段と、
送信する信号を切り換えるための信号切換用スイッチと、
を備えるリモートコントロール送信機において、
ケース上の互いに対向する位置に一つずつ、合わせて二つの信号切換用スイッチが配置されており、当該二つの信号切換用スイッチが同時に操作された場合に、送信する信号を切り換えることを特徴とするリモートコントロール送信機。
【請求項2】
前記ケースが直方体状の形状であって、
前記二つの信号切換用スイッチが、前記ケースの表面と裏面にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1記載のリモートコントロール送信機。
【請求項3】
前記ケースが直方体状の形状であって、
前記二つの信号切換用スイッチが、前記ケースの左右側面にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1記載のリモートコントロール送信機。
【請求項4】
前記二つの信号切換用スイッチが、モーメンタリプッシュスイッチであることを特徴とする請求項1乃至3記載のリモートコントロール送信機。
【請求項5】
前記リモートコントロール送信機は、ポインティング操作が可能なものであり、前記二つの信号切換用スイッチが同時に操作された場合に、ドラッグ操作が可能となる請求項1乃至請求項4記載のリモートコントロール送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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