説明

リライトカードリーダライタ

【課題】ロイコ式リライトカードの連続使用による消去・印字による印字情報の品質とデータ喪失を防止することができるリライトカードリーダライタを提供する。
【解決手段】カードリーダライタ1は、カード挿入口2から挿入されるリライトカード10をカード搬送路9で搬送する搬送機構と、リライトカード10に表示されたバーコード10aを読み取る光学式のバーコードリーダであるカメラモジュール5と、リライトカード10に印刷を行う印字ヘッド6とを備える。そして、現在挿入されているカードの印字情報(カードID情報等)と、カードリーダライタ1に記録されている直前の処理カード情報(直前のカードID情報等)とを比較し、同一カード10と判断すれば、カードリーダライタ1内部にカード10をロイコ染料が定着する所定時間の間保持し、当該時間経過後に消去・印字する機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポイントカード等として使用されるリライトカードのデータの読み取りと書換えに際して使用されるカードリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
リライトカードは、例えば、ロイコ染料及び顕色剤が塗布された面(リライト領域)を所定の温度で加熱することにより、ロイコ染料と顕色剤が混合されて発色し、また、このリライト領域を所定の温度で加熱することにより消色する物性を利用したカードであり、商品管理、サービス管理、顧客管理等の目的に応じて様々な産業分野で使用されている。顧客は、このリライトカードに発色表示された可視情報を元に、商品・サービスの購買履歴、金額、報償ポイント数、期限等の情報を視認することができ、また、商品、サービスあるいは顧客を管理するカスタマーは、カードに格納された情報をカードリーダにより読み取り、管理上必要なデータ処理をコンピュータにより行う。そして、カードに発色表示された情報の全部又は一部を書換える場合には、カードリーダライタにより行う。
【0003】
従来、例えば、カードの裏面にデータ記憶部としての磁性層を備え、表面にロイコ系塗料層を備えたリライトカードがある。このリライトカードは、磁性層にIDデータ、報償ポイントデータ等の各種情報を磁気ヘッドにて記録・再生でき、記録されたデータの一部を表面のリライト層にサーマルヘッドで加熱を繰り返すことで可視化した表示情報として印字・消去を行い、リテール市場のロイヤリティーシステム、いわゆるポイントカードシステムとして幅広く使用されている。
【0004】
ポイントカードや各種会員券として使用されるリライトカードは、リライト層(印字面)の裏面に磁気層を持ち、サーマルヘッドを用いてリライト層に可視情報を印字し、裏面の磁気層には磁気ヘッドにてデジタル情報を記録する。また、リライト層には、磁気情報の書き換えと同時に再加熱して印字情報を記録する。すなわち、カードリーダライタによってリライトカードの磁気情報を書き換えると同時にリライト層を再加熱して印字情報を消去し、再度サーマルヘッドで新規情報を印字するようにされている。このように、加熱することで透明と発色を繰り返す可逆的な発色・消色物性を有するロイコ染料等を含有した特殊な塗料が塗布されたリライトカードが、ポイントカード等として様々な産業分野で使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このように、上述したリライトカードは、加熱ヘッドを備えたリーダライタを使用して文字や図柄等を自由に書換えて印字することができる。例えば、カードに磁性テープを貼付したり裏面に磁性層を形成することにより、カード表面には可視可能な印字をし、磁性部にデータを磁気記録再生できるように構成されたリライトカードが存在する(例えば、特許文献2参照)。このように、磁性部を形成したリライトカードでは、磁性部を形成する手間と製造コストが嵩む。そこで、本発明者らは、リライト面にバーコードを印字することで磁性部を省略してもデータの内容が記録できるリライトカードの開発を進めている。一方で、バーコードの読み取り装置が付属したカード印刷装置が提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−258533号公報
【特許文献2】特開2006−58937号公報
【特許文献3】特開平8−332758号公報
【特許文献4】特許第4409606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、リライト層は加熱によりロイコ染料と顕色剤が近接することにより発色し、顕色剤同士が凝集しロイコ染料と分離することによって消色する。しかし、リライト層に使用されるロイコ染料は、消去・印字後の消色又は発色が安定定着するまで少なくとも30秒程度の時間を要する。このため、その定着時間が経過する前に再度消去・印字を行ってしまうと、消去・印字品質が劣化する(例えば、一部消え残り等の発生)という欠点があった。しかし、従来のカード使用において、リライトを即座に連続して行う状況は少なく、また、印字情報は、磁気情報として磁気層に記録されているため、印字情報が読み取り不能な場合でもこの磁気情報を元に印字情報を復元できるため特段の不利益は起こり得なかった。つまり、万一、連続してカードを挿入し、印字・消去が繰り返されたことによってリライト層に描出された印字情報が消失しても、そのカードをロイコ染料の定着が安定した30秒以後に再度リライトすれば、正確な消去・印字ができるためである。
【0008】
一方、リライト層の印字品質は反復使用により経時劣化するという問題があった。とくに、それが同一箇所のみに集中して印字・消去される場合に顕著になるのは当然である。したがって、本発明者らは、リライト層におけるバーコードの印字位置を適宜変更させることにより、同一箇所に集中して印字する場合に比べて劣化を抑制し、高品質な印字情報を長期間維持できるものと考察し、先に、リライトカードの新たな使用法として磁気情報を持たずに印字情報を元にリライト情報を消去・印字する新たなリライトカードシステムを提案している(特願2010−198125)。
【0009】
このカードシステムは、加熱することにより可逆的に書き換え可能なリライト層を備えると共に、データを記憶する記憶手段が設けられたリライトカードにおいて、前記記憶手段がリライト層に印字されたバーコードであることを第1の特徴とし、このバーコードは、初回のみ印字され、その後は書き換えを行わない第1バーコード(固定データバーコード)と、書き換える度に異なる位置に印字される第2バーコード(可変データバーコード)との少なくも2種のバーコードから構成することを第2の特徴とし、また、固定データの格納に1次元バーコード、可変データの格納に2次元バーコードを使用することを第3の特徴とし、さらに、第1バーコードの印字エリアと第2バーコード印字エリアと可視情報印字エリアとを区画して設けたことを第4特徴とする。
【0010】
そして、以上の構成により以下の優れた効果を奏するものである。
(1)バーコードにデジタルデータが記録・記憶されるので、通常の可視情報と同様にバーコードを印字すれば、データの記憶ができる。すなわち、磁性層やIC等を設けなくてもリライト面への通常の印字と同様にバーコードを印字すれば、比較的容量の大きなデジタルデータを記録することができる。
(2)一定速度で搬送しなければ正確に読み取れない磁気データと異なり、光センサによる読み取り方式の方が磁気データの読み取りよりも簡便であり、データの読み取りが容易になる。
(3)磁性層を省略することで、カード製造コストを大幅に削減することができ、また、PETG等の自然環境保護に適した材料をカード基材(原反)とすることで、紙と同様に焼却ゴミとして廃棄処理することができる。
(4)リライト面の印字品質は、汚れや繰り返し使用で劣化するが、消去する度に異なる位置に印字することで、劣化を遅延させることができる。
(5)第1バーコードが擁するIDデータ等を初回のみ印字して固定データとし、第2バーコードが擁するポイント数増減等の可変データと印字位置を区別することで、第1バーコードに記録されたID等の固定データに、万一、可変データの損失やリライト層自体が破壊されたときのバックアップあるいはリカバリ機能を持たせることができる。
(6)カードの裏面全面に渡って文字や画像を描出できるので、広告媒体等として有用である。
【0011】
しかしながら、この発明は、従来の磁気情報を持つ磁気層付きリライトカードと異なり、印字情報が破壊されると再生が不可能になるというおそれがあった。すなわち、リライト層に印字された印字情報、例えば、描出されたバーコードが読み取れなくなると、情報自体が全く喪失することになる。つまり、同一のロイコ式カードを消去・印字した後、ロイコ染料の定着が安定しない所定時間以内に再度消去、印字した場合には印字情報が不明確になり印字情報が読み取り難くなる。こうなると従来の磁気層を持つリライトカードと異なり所定時間経過後にもデータを再生することができないという課題が生じる。
本発明は、このような従来技術の課題に鑑み、ロイコ式リライトカードの連続使用による消去・印字による印字情報の品質とデータ喪失を防止することができるリライトカードリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明のリライトカードリーダライタは、現在挿入されているカードの印字情報(カードID情報等)と、カードリーダライタに記録されている直前の処理カード情報(直前のカードID情報等)とを比較し、同一カードと判断すれば、カードリーダライタ内部にカードをロイコ染料が定着する所定時間の間保持し、当該時間経過後に消去・印字する機能を備えたことを第1の特徴とする。また、現在挿入されているカードが、直前に処理したカードと同一カードであると判断した場合には、連続印字処理する旨のメッセージ報知を行うことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の構成により本発明は以下の優れた効果を奏する。
(1)ロイコ式リライトカードの連続消去・印字によるリライトカード印字情報の品質を保証することができる。
(2)連続印字処理する旨のメッセージ報知を行うことで、使用者に適切な情報を提供し、処理の適正化を図ることができる。
(3)磁気層を備えたカードの場合にも磁気情報でカードの同一性を判断し、ロイコ染料が定着する所定時間の間保持することで印字情報の品質を常に保証することができる。
【0014】
光学式のバーコードリーダを使用することで、磁気記録再生と異なりカードの定速搬送は要求されない。したがって、搬送路の一部を湾曲させることが可能になり、躯体の奥行き長を縮小できる。また、搬送路の一部を湾曲させて、この湾曲部分から立ち上がる立面部に対向させてバーコードリーダを配置し、バーコードが立面部に位置した状態で読み取ることで、高さ方向のサイズを変化させることなくバーコードの読み取り範囲を拡張でき、カード全面を読むことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るカードリーダライタの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のカードリーダライタの正面図である。
【図3】図1のカードリーダライタの平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0017】
本発明に係るカードリーダライタ1(以下、単にリーダライタ1と称する)は、リライトカード10表面に印字すると共に、リライトカード10に表示されたバーコード10aに格納されたデータを読み取る機能を備えている。尚、カード10は、例えば、PETG等のカード基材にロイコ塗料に代表されるような、加熱により透明と発色を繰り返す感熱特殊塗料を塗布してリライト層を形成しており、リーダライタ1のサーマルヘッド6及び消去ヘッド7からなる印字・消去部RWによって文字等が書き換えられる。
【0018】
すなわち、リーダライタ1は、図1乃至図4に示すように、その躯体に、カード挿入口2から挿入されるリライトカード10をカード搬送路9で搬送する搬送機構と、リライトカード10に表示されたバーコード10aを読み取る光学式のバーコードリーダであるカメラモジュール5と、リライトカード10に印刷を行う印字ヘッド6とを備えている。印字ヘッド6では、通常の文字や図柄、勿論バーコードも印字できる。印字ヘッド6は、カード10に所定の熱量を付与することにより発色もしくは消色させるサーマルヘッドであり、例えば、リライトカード10のリライト層に用いられている感熱特殊塗料がロイコ塗料の場合には、消色の際には130℃の発熱量が必要であり、発色の際には180℃の発熱量が必要である。このため、印字ヘッド6は、所定の温度範囲での温度切り換えが短時間且つ確実に制御される必要がある。
【0019】
リライトカード10は、カード挿入口2から挿入されると、先ず、クリーニングワイパー3により表面が清掃される。次いで、カード搬送路9の水平部9a上を搬送機構であるプラテンローラ等により、そのままカード搬送路9の湾曲部Cを通過してカード搬送路9の立面部9bまで搬送される。この立面部9bはカード挿入方向に対して略直角に設けられている。すなわち、リーダライタ1に挿入されたリライトカード10は、先ず、リライトカード10の先頭側部分に表示されたバーコード10aが、カード搬送路9のバーコード読み取り位置8に到達するまで搬送される。つまり、リーダライタ1は、挿入されたリライトカード10を検知すると、駆動モータ12及び13が駆動し、ギア列20を介して駆動ローラ14、15、16、17、18及び19が回転し、これらの駆動ローラ14、15、18及び19に対応するクリーニングワイパー3や従動ローラ15a、18a及び19aと協働して、カード搬送路9を自動にリーダライタ1の奥側に搬送される。
【0020】
カード搬送路9の立面部9bのバーコード読み取り位置8において、リーダライタ1の躯体部分は広く開口されており、この開口部分からバーコード10aが露呈される。そして、この露呈されたバーコード10aに対向配置して搭載されたバーコードリーダであるカメラモジュール5が、バーコード10aに格納されたデータの内容を読み取る。カメラモジュール5は光学式センサであり、バーコード10aをカメラで撮像して、これをリーダライタ1に内蔵されるか又は外部に接続されたコンピュータで解析して内容の読み取りを行う。このカメラモジュール5は、カードリーダライタ1の躯体上、幅方向に掛け渡されたカメラモジュール固定板5aにネジ留め固定される。そして、カメラモジュール5は、この固定板5aごとリーダライタ1の躯体上をカード搬送方向に沿って任意に移動させることが可能であり、カメラモジュール5を読み取られるバーコード10aに対して近接自在にされており、バーコードの位置やサイズに応じて読み取り距離とカード幅方向に読み取り位置が自由に変更できるようにされている。尚、光学式センサとしては、カメラモジュール5の他、レーザースキャナーなども使用可能であり、本実施例には限定されない。
【0021】
バーコードデータが読み取られた後、リライトカード10は逆送され、カード搬送路9の水平部9aに配置された消去ヘッド7と印字ヘッド6(印字・消去部RW)により、カメラモジュール5が読み取ったデータ内容を基に、リライト層に印字されているバーコード10aを含む文字、図形等の古い可視情報を消去するのとほぼ同時に、新しいデータを格納したバーコード10aと可視情報が書き込まれる。尚、これら駆動ローラ14、15、18及び19と、印字・消去部RWのプラテンローラ16及び17の駆動は、駆動モータ12及び13と一体に回転するエンコーダ(図示せず)からの指令に基づいて制御される。
【0022】
リライト層への印字に際しては、リライトカード10が、プラテンローラ16及び17と印字ヘッド6及び消去ヘッド7との間を通過する際、各ヘッド6及び7を所定の圧力で押圧させてリライトカード10を挟持し、各ヘッド6及び7を所定の温度に加熱して、リライトカード10に所定の熱量を付与して、情報の印字(発色)もしくは消去(消色)を行う。一方、印字を行わない場合は、印字ヘッド6の押圧を行わず、リライトカード10の厚さ以上の間隔で印字ヘッド6をプラテンローラ16から離隔させておく。そして、一回前の読み込みデータをメモリしておき、現在挿入されているカード10の印字情報(カードID情報等)と、カードリーダライタ1に記録されている直前の処理カード情報(直前のカードID情報等)とを比較し、同一カード10と判断すれば、リーダライタ1内部にカード10をロイコ染料が定着する所定時間の間保持し、当該時間経過後に消去・印字する機能を備えている。また、特段図示はしないが、現在挿入されているカード10が、直前に処理したカード10と同一カードであると判断した場合には、連続印字処理する旨のメッセージ報知をデイスプレイへの文字表示あるいは音声にて行うことで、使用者に故障ではないことを認識させる。
【0023】
尚、バーコードとしては、現在一般的に知られているJANやCODE39やITF等のように、既成の規格化されたものを使用するが、リライトカードに印字するバーコードとして好適なものを新たに開発してもよい。また、本発明の要旨は、カード搬送路の一部がカードの搬送方向に沿って湾曲させて装置を小型化する点にあり、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で改変を施し得るのは勿論構わない。
【符号の説明】
【0024】
1 カードリーダライタ
2 カード挿入口
3 クリーニングワイパー
4 デコーダ基板
5 カメラモジュール
5a カメラモジュール固定板
6 印字ヘッド(サーマルヘッド)
7 消去ヘッド(サーマルヘッド)
8 バーコード読取位置
9 カード搬送路
9a カード搬送路の水平部
9b カード搬送路の垂直部(立面部)
10 リライトカード
10aバーコード
12 駆動モータ
13 駆動モータ
14 駆動ローラ
15 駆動ローラ
15a従動ローラ
16 プラテンローラ
17 プラテンローラ
18 駆動ローラ
18a従動ローラ
19 駆動ローラ
19a従動ローラ
20 ギア列
C カード搬送路の湾曲部分
RW 印字・消去部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在挿入されているカードの印字情報(カードID情報等)と、カードリーダライタに記録されている直前の処理カード情報(直前のカードID情報等)とを比較し、同一カードと判断すれば、カードリーダライタ内部にカードをロイコ染料が定着する所定時間の間保持し、当該時間経過後に消去・印字する機能を備えたことを特徴とするカードリーダライタ。
【請求項2】
現在挿入されているカードが、直前に処理したカードと同一カードであると判断した場合には、連続印字処理する旨のメッセージ報知を行うことを特徴とする請求項1記載のカードリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−248081(P2012−248081A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120549(P2011−120549)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000177346)三和ニューテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】