説明

リライト印字情報のリカバリ方法

【課題】カードリーダライタの磁気記録機能を削減でき、カードリーダライタの部品及び製作コスト削減やサイズの小型化を図ることができるリライトカードにおけるリライト印字情報のリカバリ方法を提供する。
【解決手段】1次元バーコードB1にてIDデータをカードに印刷し、2次元バーコードB2にてIDデータとポイントデータをリライト印字し、リーダライタ基板上のRAMにIDデータと直前回の取引データを格納しておく、また、顧客分析用、及びクレーム対応のために、さらなるデータのバックアップを外部記憶装置であるメモリカード等にIDデータ毎の全取引データを格納しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポイントカード等として使用されるリライトカードに関し、とくにデータ記憶手段として、バーコードが書換え可能に印字されたリライトカードにおけるリライト印字情報のリカバリ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リライトカードは、例えば、ロイコ染料及び顕色剤が塗布された面(リライト領域)を所定の温度で加熱することにより、ロイコ染料と顕色剤が混合されて発色し、また、このリライト領域を所定の温度で加熱することにより消色する物性を利用したカードであり、商品管理、サービス管理、顧客管理等の目的に応じて様々な産業分野で使用されている。顧客は、このリライトカードに発色表示された可視情報を元に、商品・サービスの購買履歴、金額、報償ポイント数、期限等の情報を視認することができ、また、商品、サービスあるいは顧客を管理するカスタマーは、カードに格納された情報をカードリーダにより読み取り、管理上必要なデータ処理をコンピュータにより行う。そして、カードに発色表示された情報の全部又は一部を書換える場合には、カードリーダライタにより行う。
【0003】
ポイントカードや各種会員券として使用されるリライトカードは、印字面の裏面に磁気層を持ち印字面に可視情報をサーマルヘッドで印字し、裏面の磁気層には、磁気ヘッドにてデジタル情報を記録する。リライト層は、磁気情報の書き換えと同時に熱を再加熱することで印字情報を消去し、再度サーマルヘッドで印字できることが特徴である。リライト層は、加熱により結晶化する材料やロイコ染料を使用することで繰り返し消去・印字できる。例えば、カードの裏面にデータ記憶部としての磁性層を備え、表面にロイコ系塗料層を備えたリライトカードがある。このリライトカードは、磁性層にIDデータ、報償ポイントデータ等の各種情報を磁気ヘッドにて記録・再生でき、記録されたデータの一部を表面のリライト層にサーマルヘッドで加熱を繰り返すことで可視化した表示情報として印字・消去を行い、リテール市場のロイヤリティーシステム、いわゆるポイントカードシステムとして幅広く使用されている。
【0004】
また、リライトカードにID情報等が記憶されたICタグを装填し、あるいはリライト領域以外の部位にこのリライトカードのID情報等が記録された磁気記録層を設ける方法が採用されている。すなわち、ICタグ又は磁気記録層に記録されたID情報をカードリーダにより読み出し、カードリーダに接続されたコンピュータを介してデータ処理を行うものである。
【0005】
しかしながら、リライトカードにICタグを装着する方法では、リライトカードの製造コストが大きく上昇するばかりでなく、ICタグを安定的に装着するために必要なリライトカードの基材の厚みが必要となることからすれば、基材自体のコスト高を招くとともに、カードの保管、廃棄コストを鑑みると様々な制限を受けることとなる。一般的にリライト層に表示情報として印字される情報は、数百回の繰り返し印字・消去使用が可能なものである。例えば、特許文献1所載のようなリライト磁気カードは、反復使用が可能で運用上のカードコストは安価なものになるが、初期導入コストが高いため、小規模なポイントカードシステムのユーザーは、スタンプを押印する方法やサーマルカードに追記印字する方式を採っているのが実状である。
【0006】
一方、低コストカードとして、リライト層のみを備えたカードが広く使用されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このカードでは、大量のデジタルデータを記録・記憶することはできない。そこで、例えば、特許文献3に開示されたカードのように、データ記憶部として「バーコード」を用い、この「バーコード」を書き換え可能領域に印刷・消去可能にされたものが提案されている。ここでの「バーコード」は、カードの搬送方向であるカード長手方向に沿って、単位データ部が複数形成され、単位データ部は、カード幅方向にそれぞれの長手方向が向いており且つカード幅方向に並んで形成された複数のバーを有し、単位データ部の複数のバーのうち、いずれか1つがデータ読み取りのタイミング検出用のバーであり、他のバーが黒バーまたは白バーからなるデータバーとされ、通常の印刷と同様にバーコードをサーマル印刷することで、コストの嵩む磁気部分等を設けなくて済むという利点がある。すなわち、従来、磁気層に記録していたデジタル情報をリライト層にバーコード化して印字することでカードの製造コストを大幅に削減できるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−58937号公報
【特許文献2】特開平10−258533号公報
【特許文献3】特許第4405563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リライト層の印字品質は反復使用により経時劣化する。とくに、それが同一箇所のみに集中して印字・消去される場合に顕著になるのは当然である。したがって、本発明者らは、リライト層におけるバーコードの印字位置を適宜変更させることにより、同一箇所に集中して印字する場合に比べて劣化を抑制し、高品質な印字精度を長期間維持できるものと考察し、先に、リライトカードの新たな使用法として磁気情報を持たずに印字情報を元にリライト情報を消去・印字する新たなリライトカードシステムを提案している(特願2010−198125)。
【0009】
このカードシステムは、加熱することにより可逆的に書き換え可能なリライト層を備えると共に、データを記憶する記憶手段が設けられたリライトカードにおいて、前記記憶手段をリライト層に印字されたバーコードとしたものである。
【0010】
そして、上記の構成により以下の優れた効果を奏するものである。
(1)バーコードにデジタルデータが記録・記憶されるので、通常の可視情報と同様にバーコードを印字すれば、データの記憶ができる。すなわち、磁性層やIC等を設けなくてもリライト面への通常の印字と同様にバーコードを印字すれば、比較的容量の大きなデジタルデータを記録することができる。
(2)一定速度で搬送しなければ正確に読み取れない磁気データと異なり、光センサによる読み取り方式の方が磁気データの読み取りよりも簡便であり、データの読み取りが容易になる。
(3)磁性層を省略することで、カード製造コストを大幅に削減することができる。
(4)リライト面の印字品質は、汚れや繰り返し使用で劣化するが、消去する度に異なる位置に印字することで、劣化を遅延させることができる。
【0011】
しかしながら、リライト層の印字は70℃程度の高温環境下に長時間放置されると希薄化する(劣化する)という欠点を有している。従来のリライトカードでは、このような環境下におかれて印字が薄くなったカードの印字情報も磁気情報を元にして再生が可能であったが、リライト層の印字のみに依頼するリライトカードでは、磁気情報を持つリライトカードと異なり、印字情報が読み取れなくなると情報が喪失してしまう。このためリライトカードの環境劣化や汚れ、薬品による印字劣化等、印字情報の喪失防止対策を要すものである。
本発明は、カードリーダライタの磁気記録機能を削減でき、カードリーダライタの部品及び製作コスト削減やサイズの小型化を図ることができるリライトカードにおけるリライト印字情報のリカバリ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明のリライトカードにおけるリライト印字情報のリカバリ方法は、
(a)リライトカードに印字された1次元IDデータとリライト印字された2次元IDデータを読み取り整合させるステップと、
(b)2次元バーコードに格納されたポイントデータとリーダライタ内部RAMに格納された直前回のポイントデータとを整合させるステップと、
(c)前記各ポイントデータが整合したときにポイン発行するステップと、
(d)データ処理後に2次元データのリライト更新を行うと共に、カードリーダ内部RAM又は外部メモリ内の取引データを更新するステップとからなり、
(e)2次元バーコードに格納されたポイントデータとリーダライタ内部RAMに格納されたポイントデータとが不整合の場合、カードの再発行処理ステップに移行し、
(f)新カードの1次元IDデータと内部RAMのポイントデータを2次元データにリライト更新すると共に、内部RAM又は外部メモリのデータを新カードのIDデータに更新し、前記ポイン発行するステップに移行することを第1の特徴とする。
【0013】
また、内部RAMにIDデータと、当該IDデータによる少なくとも直前一回分の取引データを格納させることを第2の特徴とし、外部メモリ(メモリカード)に、IDデータ毎の全取引データを格納したことを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の構成により本発明は以下の優れた効果を奏する。
(1)バーコードにデジタルデータが記録・記憶されるので、通常の可視情報と同様にバーコードを印字すれば、データの記憶ができる。すなわち、磁性層やIC等を設けなくてもリライト面への通常の印字と同様にバーコードを印字すれば、比較的容量の大きなデジタルデータを記録することができる。
(2)リライトカード上の印字情報が喪失した(消去された)時、内部RAMに格納された直前一回分の取引データを元に印字情報を再生することができる。
(3)バックアップとして格納しておくデータが、各IDデータ毎の直前一回分の取引データのみであるので、記憶媒体容量が小さくて済む、すなわち、個店であれば1000件程度の格納で十分対応できるので、内部RAN並びに外部記憶装置も小型で安価なもので済む。
(4)第1バーコードB1と第2バーコードB2にスクランブルを掛けることで専用のリーダライタ以外では使用できないようにしたので、不正使用が防止できる。
【0015】
参考として、一般的なリライトカードの層構成を説明すると、図3に示すように、コアシート材料としては白色のPETG(非結晶性ポリエステル樹脂)からなるコアシート3を使用し、表面の保護層2として透明樹脂材を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【図1】本発明に係るリライトカードの一実施例を示す平面図である。
【図2】本発明に係るリライト印字情報のリカバリ方法の動作を示すフローチャートである。
【図3】リライトカードの層構成を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
本発明に係るリライトカード1は、カード基材をPETG等の自然環境保護素材(エコロジー素材:焼却可能素材又は生分解性素材)とし、ロイコ染料に代表される加熱することで透明と発色を繰り返す感熱特殊塗料を塗布してリライト層(発色層)4として用いており、カードリーダライタ(図示せず)のサーマルヘッドによって印字を消去及び書き換え可能にされたカードである。
【0018】
すなわち、本発明の要旨は、1次元バーコードB1にてIDデータを予めカードに印刷し、2次元バーコードB2にてIDデータとポイントデータをリライト印字し、リーダライタ基板上のRAMにIDデータと直前回の取引データを格納しておくことを要旨とするが、顧客分析用、及びクレーム対応のために、さらなるデータのバックアップを外部記憶装置であるメモリカード等にIDデータ毎の全取引データを格納しておくことが望ましい。
【0019】
図1に示すように、本実施例に係るリライトカード1(以下、単にカード1と称する)は、書き換え不能な印字エリアA1領域に、第1バーコードB1を印刷し、上述したようなロイコ塗料を塗布した書き換え可能領域に、第2バーコードB2及び文字Cによる可視情報が印字される。すなわち、カード挿入方向に向かって先頭側から順に、第1バーコード印字エリアA1、情報表示印字エリアA2、第2バーコード印字エリアA3に区画にされている。ここで、印字エリアA1には1次元バーコードが予め印刷されるが、印字エリアA2には漢字及びアラビア数字がリライト印字される。印字エリアA3はさらに横方向に三等分に分割された略正方形のマス目A3a、A3b及びA3cの中の一個のエリア内に2次元バーコードがリライト印字される。また、第1バーコードB1と第2バーコードB2にはスクランブルを掛けることで専用のリーダライタ以外では使用できないようにされ、不正使用の防止が図られている。
【0020】
とくに、第2バーコードB2は、書き換える度に異なる位置にリライト印字される。すなわち、印字エリアA3のマス目A3a、A3b及びA3cを巡回するように左枡、中央枡、右枡と輪番に移動しながら消去する度に異なる位置に印字することで、繰り返し使用による印字品質の劣化を遅延させることができる。したがって、本実施例では、同一箇所に印字する場合に比べて単純に約3倍長持ちすることになる。そして、第1バーコードB1と第2バーコードB2の間のスペースには、人が認識できる形式の文字情報やマーク等をリライト可能に印字表示する。ここで、第1バーコードB1と第2バーコードB2との配置は任意であり、本実施例に限定されるものではなく、例えば、これらの印字位置を逆転してもよい。
【0021】
第1バーコードB1は、固定データ、例えばカードホルダーの氏名や生年月日、暗証番号等の不変データのみを記憶させておく記憶手段として用いるものであり、且つカードリーダライタの読み取り開始のタイミングマークとしての機能も付与する。印字エリアA2には、人が認識できる文字Cや数字で、例えば、会員番号、氏名、有効期限、獲得ポイント数、累計ポイント数等の可視情報が印字表示される。このエリアA2の印字内容については、本人以外の第三者は知り得ない情報や生年月日等は表示しないでおくことが好ましい。そして、これらの非表示情報は、第2バーコードB2に記録しておき、カードリーダに挿入したときにこれらの情報を画面等に表示させ、本人の口頭申告と照合することにより本人確認を行なう手段等として有効になる。第2バーコードB2は、ポイント数の増減等の可変データを記録することを主たる目的とするが、カードユーザーの固定データ勿論格納でき、リライト印字情報自体が破壊されたときのバックアップあるいはリカバリ機能を持たせることができる。また、2次元バーコードを使用することで、大量のデータを記録することができるので、例えば、ユーザーの購買履歴やその履歴から導出される商品の嗜好等も記録考察でき、住所録等と連携させてセールスのダイレクトメール等を購買者の的を絞って精度よく発送することができる。
【0022】
図2に、本実施例のリライトカード1におけるリライト印字情報のリカバリ方法の動作フローを示す。先ず、カードリーダライタのカード挿入口にカード1を挿入すると(ステップS1)、リライトカード1に印字された1次元IDデータB1と2次元IDデータB2を読み取り整合させる(ステップS2)、ここでYES、すなわち、整合すると判定されると、2次元バーコードB1に格納されたポイントデータとリーダライタ内部RAMに格納された直前回に処理したポイントデータとを整合させるステップS3に移行する。ステップS2でNO、すなわち不整合の場合、リーダライタのディスプレイ上に「このカードは使用できません」等の表示をし、再生不能エラー処理を行う(ステップS2a)。この場合、カード1はリーダライタから排出しても良いし、ライタ内に収納してしまってもよい。ステップS3はカードの偽造防止機能を付加するステップであり、ここで、YES、すなわち、整合すると判定されると、ポイント発行入力されポイント発行され(ステップS4)、データ処理後に2次元データB2のリライト更新を行うと共に、リーダライタの基板上RAM又は外部記憶装置であるメモリカード内の取引データを更新して(ステップS5)処理を終了する。尚、ステップS3で2次元バーコードB2に格納されたポイントデータとリーダライタ内部RAMに格納されたポイントデータとが不整合の場合、カードの再発行処理ステップS3aに移行し、新カードの1次元IDデータB1と内部RAMのポイントデータを2次元データにリライト更新すると共に、内部RAM又はメモリカードのデータを新カードのIDデータに更新し、ステップS4に移行しポイントを発行して処理を終了する。
【0023】
尚、本実施例で使用したバーコードとしては、現在一般的に知られているJANやCODE39やITF等のように、既成の規格化されたものを使用するが、リライトカードに印字するバーコードとして好適なものを新たに開発してもよい。また、本発明の要旨は、デジタルデータをリライト層にバーコード化して印字することで、従来の情報記憶手段である磁気層やICを省略してカードコストを削減する点にあり、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で改変を施し得るのは勿論構わない。
【符号の説明】
【0024】
1 リライトカード
1A リライト領域
1B リライト不能領域
2 保護層(樹脂材)
3 コアシート
4 リライト層(発色層)
A1 第1バーコード印字エリア
A2 情報表示印字エリア
A3 第2バーコード印字エリア
B1 第1バーコード(1次元バーコード)
B2 第2バーコード(2次元バーコード)
C 文字又は数字

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リライトカードに印字された1次元IDデータとリライト印字された2次元IDデータを読み取り整合させるステップと、2次元バーコードに格納されたポイントデータとリーダライタ内部RAMに格納されたポイントデータとを整合させるステップと、前記各ポイントデータが整合したときにポイン発行するステップと、データ処理後に2次元データのリライト更新を行うと共に基板上RAM及びメモリカード内の取引データを更新するステップとからなり、2次元バーコードに格納されたポイントデータとリーダライタ内部RAMに格納されたポイントデータとが不整合の場合、カードの再発行処理ステップに移行し、新カードの1次元IDデータと内部RAMのポイントデータを2次元データにリライト更新すると共に、内部RAM又は外部記憶装置のデータを新カードのIDデータに更新し、前記ポイン発行するステップに移行することを特徴とするリライトカードにおけるリライト印字情報のリカバリ方法。
【請求項2】
リーダライタのRAM又は外部記憶装置に、IDデータと、当該IDデータによる少なくとも直前一回分の取引データを格納させることを特徴とする請求項1記載のリライト印字情報のリカバー方法。
【請求項3】
外部記憶装置に、IDデータ毎の全取引データを格納したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のリライト印字情報のリカバー方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−248084(P2012−248084A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120623(P2011−120623)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000177346)三和ニューテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】