説明

リレー装置

【課題】 圧電体を用いた場合でも、接点の十分な接触圧力を得ることができるとともに、適正な接点の切り換えを行うことのできるリレー装置を提供する。
【解決手段】 支持ベース2に取付けられ先端部に互いに接触可能な接点8が設けられた複数の固定側接点用片6および駆動側接点用片7と、固定側接点用片6または駆動側接点用片7の少なくとも一方の先端部分に設けられた接点ばね9と、駆動側接点用片7が固定され駆動することにより固定側接点用片6の接点8と駆動側接点用片7の接点8との接触を切り換えるための駆動部材12と、支持ベース2に取付けられた圧電体13と、圧電体13の変位を前記駆動部材12に伝達する変位拡大機構14と、を備え、接点ばね9は、金属ガラス材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリレー装置に係り、特に、圧電体を用いた場合でも、接点の十分な接触圧力を得ることができるとともに、適正な接点の切り換えを行うことを可能としたリレー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気的な接点を切り換えるためのリレー装置が多く用いられており、このようなリレー装置においては、従来、電磁石を用いた電磁式のリレー装置が用いられていた。
【0003】
しかしながら、電子式のリレー装置においては、電磁石がコイルや通電により動作される鉄心など大きな部材により構成されていることから、装置が大型化し、重量も重くなってしまうという問題があった。
【0004】
そのため、従来から、電磁石ではなく、圧電体を用いたリレー装置が開発されてきている。このような圧電体を用いたリレー装置として、従来から、ばね機構にスナップアクションさせるアクチュエータとしてPZT をもつ圧電アクチュエータを備え、PZTに並列に抵抗および電磁アクチュエータの電磁石を接続し、圧電アクチュエータの発生力と、電磁アクチュエータの可動磁極片および対向磁極の磁気的な吸引力とで接圧を得るようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−182501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、圧電体の動作と、電磁石による磁気的な吸引力とにより接点の接触を図るものであることから、応答性もよく、十分な接触圧力を得ることが可能であるが、やはり、電磁石を用いることから、装置が大型化してしまい、重量も重くなってしまうという問題を有している。また、圧電体のみで動作させるようにすれば、装置の小型化を図ることができるとともに、軽量化を図ることも可能であるが、圧電体の動作のみでは、接点の接触圧力を十分に得ることができないという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、圧電体を用いた場合でも、接点の十分な接触圧力を得ることができるとともに、適正な接点の切り換えを行うことのできるリレー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るリレー装置は、支持ベースに取付けられ先端部に互いに接触可能な接点が設けられた複数の固定側接点用片および駆動側接点用片と、
前記固定側接点用片または前記駆動側接点用片の少なくとも一方の先端部分に設けられた接点ばねと、
前記駆動側接点用片が固定され駆動することにより前記固定側接点用片の接点と前記駆動側接点用片の接点との接触を切り換えるための駆動部材と、
前記支持ベースに取付けられた圧電体と、
前記圧電体の変位を前記駆動部材に伝達する伝達機構と、
を備え、
前記接点ばねは、金属ガラス材料により形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記伝達機構は、内部に非圧縮流体を充填した伝達配管を備えた変位拡大機構であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記変位拡大機構は、前記伝達配管の前記圧電体側の開口面積は、前記駆動部材側の開口面積に比較して大きく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、圧電体を用いて駆動側接点用片を動作させて接点の切り換えを行うとともに、ばね接点をヤング率の低い金属ガラス材料により形成するようにしているので、圧電体のような駆動力が比較的弱い駆動源を用いた場合でも、接点の十分な接触圧力を得ることができ、接点の良好な接続状態を確保することができる。しかも、金属ガラスは、導電性も高いので、固定側接点用片と駆動側接点用片とを流れる電気抵抗を著しく低減させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、伝達機構を内部に非圧縮流体を充填した伝達配管を備えた変位拡大機構としているので、非圧縮流体により圧電体の動作を駆動部材に適切に伝達することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、変位拡大機構の伝達配管の圧電体側の開口面積を駆動部材側の開口面積に比較して大きく形成するようにしているので、圧電体の少ない変位に対して駆動部材の駆動量を大きくすることができ、圧電体により効率よく駆動側接点用片を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るリレー装置の実施形態における圧電体非動作状態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係るリレー装置の実施形態における圧電体動作状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明に係るリレー装置の第1実施形態を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態のリレー装置1は、支持ベース2を備えており、支持ベース2の両側部には、先端部に雄ねじ(図示せず)が形成された支柱3が立設されている。また、支持ベース2には、箱型のカバー部材4が着脱自在に装着されるように構成されており、カバー部材4を支持ベース2に装着し、このカバー部材4の端面から露出される支柱3の雄ねじに、雌ねじが形成された固定ねじ5を螺合させることにより、カバー部材4を支持ベース2に固定するように構成されている。
【0017】
支持ベース2の一側には、複数の固定側接点用片6および駆動側接点用片7の基端部がそれぞれ互いに所定間隔をもって取付けられており、各固定側接点用片6および各駆動側接点用片7の先端部には、互いに電気的に接触する接点8がそれぞれ設けられている。本実施形態においては、図1において左側には、2つの固定側接点用片6と2つの駆動側接点用片7とがそれぞれ交互に配置されており、これら各固定側接点用片6の接点8と、駆動側接点用片7の接点8とが接触することにより、固定側接点用片6と駆動側接点用片7とが電気的に接続されるように構成されている。また、図1において右側には、一対の固定側接点用片6の間に駆動側接点用片7が配置されており、駆動側接点用片7の接点8がいずれか一方の固定側接点用片6の接点8と接触することにより、駆動側接点用片7といずれか一方の固定側接点用片6とが電気的に接続されるように構成されている。
【0018】
また、固定側接点用片6の先端部は、クランク状に折曲形成された接点ばね9とされており、本実施形態においては、この接点ばね9部分は、結晶金属に比較してヤング率の低い金属ガラス材料により形成されている。この金属ガラスとしては、例えば、Cu97Zr5(銅95%、ジルコニウム5%)などがある。例えば、洋白(銅55%、亜鉛27%、ニッケル18%)のヤング率が、127×10であるのに対して、Cu97Zr5のヤング率は、70×10と低いヤング率となっている。このように接点ばね9部分にヤング率の低い金属ガラス材料を用いることにより、弱い駆動力で各接点8の接触圧力を得ることができるものである
【0019】
また、支持ベース2の他側には、圧電体支持部10が設けられており、圧電体支持部10の一側には、固定側接点用片6の上方部分を固定するための固定部材11が取付けられている。この固定部材11は、固定側接点用片6のみを固定するものであり、駆動側接点用片7は、固定部材11により妨げられることなく、基端部を中心として揺動可能とされている。また、駆動側接点用片7の固定部材11より上方部分には、駆動側接点用片7が連結された駆動部材12が取付けられており、駆動部材12が図1において左右方向に駆動されることにより、駆動側接点用片7を揺動動作させて駆動側接点用片7の接点8と固定側接点用片6の接点8とを接触させることができるように構成されている。
【0020】
また、圧電体支持部10の内部には、通電することにより、図1において、上下方向に伸縮自在に変位する圧電体13が収容されている。圧電体13の変位部には、駆動部材12の一端部に接続される伝達機構としての変位拡大機構14が連結されている。変位拡大機構14は、圧電体13の変位部と駆動部材12の一端部とを連結する伝達配管15を備えており、この伝達配管15の内部には、例えば、油など駆動力を伝達することのできる非圧縮流体16が充填されている。また、この伝達配管15の圧電体13側の開口面積は、駆動部材12側の開口面積に比較して大きく形成されており、圧電体13の変位に対して駆動部材12の駆動量を大きくすることができるように構成されている。
【0021】
また、駆動部材12の他端部には、復帰ばね17が取付けられており、この復帰ばね17により、駆動部材12は、通常状態では、図1において左方向に向けて付勢されるようになっており、圧電体13を動作させることにより、駆動部材12が復帰ばね17の付勢力に抗して図1において右方向に移動できるように構成されている。
【0022】
さらに、支持ベース2の下側には、各固定側接点用片6および各駆動側接点用片7にそれぞれ電気的に接続されている接続端子18が設けられており、支持ベース2の下側には、このリレー装置1の機能別に取付けられる機種ピン19が突設されている。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0024】
本実施形態においては、図1に示すように、圧電体13に通電していない状態では、復帰ばね17の付勢力により、駆動部材12は、図1において左方向に付勢されており、最も左側の固定側接点用片6の接点8と駆動側接点用片7の接点8とが接触するとともに、中央側の固定側接点用片6の接点8と駆動側接点用片7の接点8とは離れた状態に保持され、さらに、最も右側の駆動側接点用片7の接点8は、その左側の固定側接点用片6の接点8に接触された状態に保持されている。
【0025】
この状態で、圧電体13に通電することにより、圧電体13が変位され、変位拡大機構14を介して駆動部材12を復帰ばね17の付勢力に抗して図1において右方向に動作させる。これにより、図2に示すように、最も左側の固定側接点用片6の接点8と駆動側接点用片7の接点8とが非接触状態になるとともに、中央側の固定側接点用片6の接点8と駆動側接点用片7の接点8とが接触状態に保持され、さらに、最も右側の駆動側接点用片7の接点8は、その右側の固定側接点用片6の接点8に接触された状態に保持され、各接点8の切り換えが行われる。
【0026】
このとき、本実施形態においては、接点ばね9をヤング率の低い金属ガラスにより形成するようにしているので、駆動部材12を動作させた場合に、弱い駆動力で各接点8の接触圧力を得ることができ、圧電体13によるあまり大きくない駆動力で各接点8を適正に接触させることができるものである。
【0027】
以上述べたように、本実施形態においては、圧電体13を用いて駆動側接点用片7を動作させて接点8の切り換えを行うとともに、接点ばね9をヤング率の低い金属ガラス材料により形成するようにしているので、圧電体13のような駆動力が比較的弱い駆動源を用いた場合でも、接点8の十分な接触圧力を得ることができ、接点8の良好な接続状態を確保することができる。しかも、金属ガラスは、導電性も高いので、固定側接点用片6と駆動側接点用片7とを流れる電気抵抗を著しく低減させることができる。さらに、拡大変位機構の伝達配管15の圧電体13側の開口面積を、駆動部材12側の開口面積に比較して大きく形成するようにしているので、圧電体13の少ない変位に対して駆動部材12の駆動量を大きくすることができ、圧電体13により効率よく駆動側接点用片7を動作させることができる。
【0028】
なお、前記実施形態においては、固定側接点用片6の接点ばね9を金属ガラス材料により形成するようにしたが、駆動側接点用片7に金属ガラス材料により形成するようにしてもよい。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 リレー装置
2 支持ベース
3 支柱
4 カバー部材
5 固定ねじ
6 固定側接点用片
7 駆動側接点用片
8 接点
9 接点ばね
10 圧電体支持部
11 固定部材
12 駆動部材
13 圧電体
14 変位拡大機構
15 伝達配管
16 非圧縮流体
17 復帰ばね
18 接続端子
19 機種ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ベースに取付けられ先端部に互いに接触可能な接点が設けられた複数の固定側接点用片および駆動側接点用片と、
前記固定側接点用片または前記駆動側接点用片の少なくとも一方の先端部分に設けられた接点ばねと、
前記駆動側接点用片が固定され駆動することにより前記固定側接点用片の接点と前記駆動側接点用片の接点との接触を切り換えるための駆動部材と、
前記支持ベース2に取付けられた圧電体と、
前記圧電体の変位を前記駆動部材に伝達する伝達機構と、
を備え、
前記接点ばねは、金属ガラス材料により形成されていることを特徴とするリレー装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、内部に非圧縮流体を充填した伝達配管を備えた変位拡大機構であることを特徴とする請求項1に記載のリレー装置。
【請求項3】
前記変位拡大機構は、前記伝達配管の前記圧電体側の開口面積は、前記駆動部材側の開口面積に比較して大きく形成されていることを特徴とする請求項2に記載のリレー装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−174611(P2012−174611A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37664(P2011−37664)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)