説明

リンク機構およびカバー部を備えるからみ織り装置

【課題】織り機で使用されるからみ織り装置を提供する。
【解決手段】このからみ織り装置は、第1吊り上げシャフトと、第2吊り上げシャフトと、半シャフト25とを有する。これらシャフトは、いくつかの伝達ユニット30を有するリンク機構を介して互いに連結されている。各伝達ユニット30は、コネクティングバー31と2つの案内ロッド34、35とを有する。操作者の指または手がコネクティングバー31とレバー34、35のうちの1つとの間に挟まれないようにするために、このからみ織り装置は、各伝達ユニット30に対して別体のカバー部40を有する。カバー部は、吊り上げシャフトのうちの1つまたは伝達ユニット30の案内ロッド34、35のうちの1つに、もしくはコネクティングバー31に固定されていてもよい。カバー部40は、操作者がたて糸方向においてコネクティングバー31と案内ロッド34、35との間に入り込むのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、からみ織り生地を製造するために使用されるからみ織り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
からみ織り生地とは、少なくとも2本のたて糸が、互いに対して平行に伸びているのではなく互いの周囲にからみ目をなしている生地である。たとえば、1本のたて糸が、生地を通って直線方向に延在する地たて糸(ground thread)として送り出され、一方、別のたて糸が、からみたて糸(loop thread)として地たて糸の上方または下方で行ったり来たりしながら導かれるとともに、一方の面または他方の面においてよこ糸を受け容れるための上向きまたは下向きのからみ目を交互に形成する。
【0003】
このようなからみ織り装置は特許文献1から知られている。このからみ織り装置は、垂直方向に移動可能に支持されている2つの吊り上げシャフト(ヘルド枠)を備える。これらのシャフトはそれぞれ吊り上げヘルドを担持している。さらに加えて、半シャフトが存在している。この半シャフトは、吊り上げシャフトに対して垂直方向に移動可能に支持されている。この半シャフトは、半ヘルドを担持している。リンク機構が、半シャフトを少なくとも1つの吊り上げシャフトに連結している。リンク機構は、コネクティングロッド継手上の半シャフトに連結されたコネクティングロッドと、結合継手上のコネクティングロッドとシャフト継手上の吊り上げシャフトとに連結された案内ロッドとを備える。
【0004】
このからみ織り装置が運転されているとき、案内ロッドとコネクティングロッドとの間で中間スペースが開放されまた閉止される。この中間スペースは、2つの吊り上げシャフトの位置による。このようなからみ織り装置の運転上の安全性を確保するためには、たとえば光バリア(light barrier)等の監視装置を織り機に設置していた。操作者が吊り上げシャフトの稼働領域に入り込むと、織り機は一時停止する。さもなければ、吊り上げシャフトの速度が高いため、コネクティングロッドと案内ロッドとの間の中間スペースに手や指が入り込み、それに続いてこの中間スペースが再び閉止すると、怪我をする可能性がある。
【0005】
しかしながら、織り装置を停止させようとしても吊り上げシャフトが即座に停止されることはなく、吊り上げシャフトがある程度さらに移動してしまうのを避けることができない、という問題があった。加えて、こうした監視装置は複雑で高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2063007号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、上記の問題を解消し、より高い運転安全性を保証するからみ織り装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このからみ織り装置は、たとえば平坦なプレートとして構成されていてもよいカバー部を備える。カバー部は、吊り上げシャフトの1つと、または、リンク機構の一部、たとえば案内ロッドまたはコネクティングバーとに固定されていてもよい。カバー部をコネクティングバー自体で構成し、それによってカバー部とコネクティングバーが同一材料から成るとともに継ぎ目または非連続部に移行するようにすることも可能である。カバー部は、2つの吊り上げシャフトがどのような位置にある場合でも、コネクティングバーおよび案内ロッドの間の中間スペースを完全にまた少なくとも部分的に覆うようなサイズおよび輪郭を有する。それによって、吊り上げシャフトの延長部の面に対して横断するたて糸方向において中間スペース内に入り込むことができなくなる。カバー部は、からみ織り装置とともに移動する。これによって確かに加速化すべき質量が増加するが、より大きな自由度が得られることになる。からみ織り装置は、追加の安全手段を後から組み付ける必要なくあらゆる織り機で使用することができる。
【0009】
コネクティングバーが、第1案内ロッドを介して第1吊り上げシャフトに、かつ、第1案内ロッドを介して第2吊り上げシャフトに連結されていると有利である。その結果、コネクティングバーの位置、したがって半シャフトの位置は、2つの吊り上げシャフトの相対位置によって決定される。このようにして、2つの案内ロッドの2つのシャフト継手は、吊り上げシャフトの長手延在方向において互いに離間して設けられてもよい。
【0010】
一例としての形態において、カバー部は、2つの吊り上げシャフトのうちの1つのシャフト継手の領域においてシャフトロッドに固定されている。これによって、カバー部は、2つの吊り上げシャフトがどのような位置にある場合でも、吊り上げシャフトの延長面に対して横断するたて糸方向で見て後方に位置するリンク機構を覆う。
【0011】
カバー部は、中央線に対して非対称になるように構成されていてもよい。中央線は、たとえばカバー部が吊り上げシャフトに固定されている場合、垂直方向に延在してもよい。この形態において、カバー部は常に、吊り上げシャフトのうちの1つとともに移動する。そのため、このカバー部は、吊り上げシャフトの2つの端部位置において、リンク機構に対して最大の間隔をおいて様々な相対位置を取る。非対称の形状によって、カバー部のサイズが最少になること、さらに中間スペースまたは各案内ロッドとコネクティングバーとの間の中間スペースを安全に覆うことが保証される。
【0012】
すべての例示的な形態において、カバー部の長さは、吊り上げシャフトのシャフトロッドの長手延在方向で見て、2つのシャフト継手間の距離よりも長くなっていることが好ましい。垂直方向で測定したカバー部の高さは、2つの吊り上げシャフトが垂直方向において同じ位置を占める場合、特に2つの吊り上げシャフトからコネクティングバー継手までの距離よりも大きくなっていてもよい。
【0013】
別の形態では、カバー部は、リンク機構の案内ロッドに回転不能に連結されていてもよい。特に、カバー部は、円の扇形に類似した形状を有していてもよい。このようにして、円の扇形の円弧の中心が、案内ロッドに連結されているシャフト継手の近くに位置するようになる。
【0014】
別の形態では、カバー部は、コネクティングバーに載置されている。コネクティングバーが、たとえば炭素、鋼等の金属または複合材料のような安定材料からなることが好ましい。コネクティングバーは、十分な撓み強さと座屈抵抗性とを示す。コネクティングバーを介して、吊り上げシャフトと半シャフトとの間で力が伝達できるようになっている必要がある。吊り上げシャフトおよび半シャフトの速度が高速化されるため、コネクティングバーは、充分な安定性を保証しなければならない。コネクティングバーに固定されているカバー部は、別の材料、たとえば、コネクティングバーの材料の密度よりも低い密度を有するプラスチック材料または複合材料からなるものでもよい。その結果、全質量が小さくなる。カバー部が、吊り上げシャフトの延在面に対して平行に配向された面において延在していることが好ましい。カバー部は、プレートの形状を有していてもよい。コネクティングバーに連結されるカバー部が、特に2つの案内ロッド間に配置されている。カバー部があるため、コネクティングバーと案内ロッドのうちの1つとの間の中間スペースを通って侵入することができなくなる。
【0015】
カバー部は、既知のからみ織り装置を拡張するための組み込み拡張部分として設けてもよい。
【0016】
上述した様々な形態のすべてにおいて、カバー部は、丸みを帯びた角そして/または丸みを帯びた縁部を少なくとも上側に有しているので、カバー部を上方に移動する間に鋭い縁部で怪我をするリスクが回避される。
【0017】
重量を減らすために、カバー部は、複数の穿孔を有していてもよい。これらの穿孔の形状および/または領域は、指が通り抜けることがないように選択される。
【0018】
さらに、少なくとも部分的に網状またはメッシュ状領域を有するようにカバー部を構成することができる。たとえば、カバー部は、織物材料またはワイヤメッシュ等の織物材料またはニット材料のような網状材料またはメッシュ状材料が保持される枠構造を有していてもよい。
【0019】
上述した様々な形態をそれぞれ組み合わせてもよい。カバー部を備える本発明に係るからみ織り装置は、少なくともたて糸の供給方向における最先端部および/または最後端部にこの種のからみ織り装置をいくつか有する織り機に設けられる。その間に設けられているからみ織り装置は、カバー部なしで設けてもよい。
【0020】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項および明細書の記載から明らかになる。明細書の記載は、本発明を、実施例を参照しながら説明する。記載は実施例の重要な特徴およびその他の与件に限定されている。図面は補足的に参照すべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術のからみ織り装置を吊り上げシャフトの延在面を横断するたて糸方向で見た概略側面図である。
【図2】図1に示すからみ織り装置のリンク機構の図であって、2つの吊り上げシャフトのたて糸方向において異なる視線方向から見た様々な相対位置の1つを示す図である。
【図3】図1に示すからみ織り装置のリンク機構の図であって、2つの吊り上げシャフトのたて糸方向において異なる視線方向から見た様々な相対位置の1つを示す図である。
【図4】からみ織り装置用の本発明に係るカバー部の第1の実施例の概略図である。
【図5】図4に示すカバー部の変形例の概略図である。
【図6】からみ織り装置用のカバー部の別の実施例の概略図であって、案内ロッドに連結されたカバー部を、たて糸方向における様々な側の1つの側から見た図である。
【図7】からみ織り装置用のカバー部の別の実施例の概略図であって、案内ロッドに連結されたカバー部を、たて糸方向における様々な側の1つの側から見た図である。
【図8】からみ織り装置用のカバー部の別の実施例の概略図であって、案内ロッドに連結されたカバー部を、たて糸方向において様々な側の1つから見た図である。
【図9】図6ないし図8に係るカバー部を備えるからみ織り装置の実施例を吊り上げシャフトの長手延在方向に対して横断する方向で切って見た概略断面図である。
【図10】吊り上げシャフトのシャフトロッドに連結されているからみ織り装置のカバー部の別の実施例を、たて糸方向における様々な方向の1つから見た図である。
【図11】吊り上げシャフトのシャフトロッドに連結されているからみ織り装置のカバー部の別の実施例を、たて糸方向における様々な方向の1つから見た図である。
【図12】カバー部の縁部の異なるオプション形態の1つを示す図である。
【図13】カバー部の縁部の異なるオプション形態の1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
図1は、公知のからみ織り装置15の概略図である。このからみ織り装置15は、第1吊り上げシャフト(ヘルド枠)16と第2吊り上げシャフト(ヘルド枠)17とを備える。2つの吊り上げシャフト16、17は、同一形状に構成されており、それぞれ上側シャフトロッド18と下側シャフトロッド19とを備える。これらのシャフトロッドは、長手延在方向Lにおいて整列している。吊り上げシャフト16、17の上側シャフトロッド18および下側シャフトロッド19はそれぞれ、2つの下側長手方向端部において、各側方支持体によってそれぞれ互いに連結されている。側方支持体20は、吊り上げシャフト16、17の移動方向に、したがって垂直方向Vに延在している。2つの吊り上げシャフト16、17は、互いに独立して垂直方向Vに移動可能である。これは、織り装置の不図示のシャフトによって達成される。
【0023】
吊り上げヘルド21は、吊り上げシャフト16、17の不図示のヘルド支持レール上に設けられている。各吊り上げシャフト16、17は、複数の吊り上げヘルド21を担持する。ここで、混乱を避けるために、それぞれ1つの吊り上げヘルド21のみを図1に例示してある。
【0024】
さらに、からみ織り装置15は、半ヘルド26が設けられた半シャフト25を備える。半ヘルド26の数は、2つの吊り上げシャフト16、17のうちの1つにそれぞれ担持されている吊り上げヘルド21の数に相当する。からみ織り生地を製造する過程で、半ヘルド26はそれぞれ、2つの吊り上げシャフト16、17のうちの1つの吊り上げヘルド21と共働する。
【0025】
垂直方向Vにおいて半シャフト25と2つの吊り上げシャフト16、17との間での相対移動を行うために、この例ではリンク機構29が設けられている。リンク機構29は、2つの吊り上げシャフト16、17を半シャフト25に結合する。2つの吊り上げシャフト16、17が垂直方向に移動運動を行うため、リンク機構29を介して半シャフト25が垂直運動を行う。
【0026】
この実施例において、リンク機構29は、2つの伝達ユニット30を備える。長手延在方向Lにおける吊り上げシャフトの長さに応じて、1つ以上の伝達ユニット30を設けることも可能である。伝達ユニット30は同一の構造を有する。各伝達ユニット30は、コネクティングバー31を備える。このコネクティングバーは、コネクティングバー継手32を介して半シャフト25にピン接続されている。コネクティングバー31は、コネクティングバー継手32とは反対側の端部において、結合継手33を介して第1案内ロッド34と第2案内ロッド35とに連結されている。第1案内ロッド34は、結合継手33とは反対側の端部において、シャフト継手36を介して第1吊り上げシャフト16の上側シャフトロッド18に連結されている。第2案内ロッド35が、結合継手33とは反対側の端部において、シャフト継手36を介して第2吊り上げシャフト17の上側シャフトロッド18に連結されている。この構成は、すべての伝達ユニット30において同一である。
【0027】
この実施例の一変形例を考察すると、伝達ユニット30は、吊り上げシャフト16、17の下側シャフトロッド19に連結され、したがって、吊り上げシャフト16、17の下側に位置していてもよい。
【0028】
シャフトロッド18、19の長手延在方向Lにおいて、伝達ユニット30の2つのシャフト継手36が互いに離間して配置されている。結合継手33と2つのシャフト継手36との間には、三角形領域Fが存在している。この領域は、図2において斜線で概略的に示されている。この領域Fでは、コネクティングバー31と第1案内ロッド34そして/または第2案内ロッド35との間で中間スペースZが形成され得る。この中間スペースZは、2つの吊り上げシャフト16、17の位置に応じて、開放されていてもよいし、より大きく形成されていてもよい。そして、2つの吊り上げシャフト16、17の間で逆方向の相対運動を行う場合には、この中間スペースはより小さく形成されていてもよいし、閉じられていてもよい。これが、図2および図3に例示的に示されている。図2では、2つの吊り上げシャフト16、17が垂直方向Vの同じ次元に配置されている。コネクティングバー31は、おおむね垂直方向Vに延在する。2つの案内ロッド34、35は、垂直方向Vと長手延在方向Lとによって画定される面において垂直方向Vと長手方向Lとに対して対角線上に延在している。第2吊り上げシャフト17が垂直方向Vにおいて第1吊り上げシャフト16に対して低い位置にくるとき、この第2吊り上げシャフトは、図3に示される位置を取り得る。このようにして、第2案内ロッド35とコネクティングバー31との間の中間スペースZが完全に消滅する。コネクティングバー31および第2案内ロッド35は、おおむね同じ方向に延在している。このような中間スペースZに不注意にも立ち入ると、操作者の指や手の怪我につながるおそれがある。
【0029】
したがって、本発明によると、カバー部40が設けられる。このカバー部は、2つの吊り上げシャフト16、17の相対位置がどのようなものであれ、コネクティングバー31と伝達ユニット30の2つの案内ロッド33、34との間の中間スペースZを完全に覆う。ここで、完全に覆うということが意味しているのは、指または手がたて糸方向Kにおいてコネクティングバー31と第1案内ロッド34または第2案内ロッド35との間の中間スペースZを通ることが防止されるということである。たて糸方向Kは、垂直方向Vに対して横断するとともに長手延在方向Lに対して横断して延在しており、図1ないし図8ならびに図10および図11では、投影図の面に対して横断する方向に延在している。以下において、カバー部40の異なる実施例を説明する。これらカバー部40は、運転安全性を増加させるために、図1ないし図3に示すからみ織り装置に用いられる。
【0030】
図4は、カバー部40の実施例を示している。このカバー部は、第1カバー部40aと呼ぶ。この第1カバー部40aは、コネクティングバー31に固定されており、連結ラインに沿って見るとコネクティングバー31と結合継手33との間の両方向に延在している。第1カバー部40aは、数ミリ、最大でも2〜3cm程度の厚さのプレート41を備える形状になっている。プレート41は、互いに平行に延在する2つの平坦な側面42を有する。第1カバー部40aは、2つの吊り上げシャフト16、17の間に延在する面に配置されている。
【0031】
力を伝達するために、コネクティングバー31は、撓み強さを有する座屈抵抗性の材料、鋼等の金属、炭素または安定性を有する複合材料からなるのが好ましい。コネクティングバー31は、半シャフト25を移動させるために設けられており、2つの吊り上げシャフト16、17の加速力を吸収しかつ半シャフトに伝達するものでなければならない。これに対して、カバー部40には、ほとんど力がかからない。好適な実施例において、カバー部40は、コネクティングバー31の厚さよりも小さな厚さを有するプラスチックまたは複合材料から成る。したがって、第1カバー部40において、コネクティングバー31は、撓み強さを有する座屈抵抗性のコアであり、このコアに対して、プレート41の形態の第1カバー部40が固定されている。
【0032】
プレート41の第1カバー部40aの場合の形状が図5から明らかである。コネクティングバー31は、上端部に第1孔43を有する。この孔は、コネクティングバー31を結合継手33に固定するために使用される。コネクティングバー31は、下端部に第2孔44を有する。この孔は、コネクティングバー継手32を介してコネクティングバー31を半シャフト25にヒンジ連結するために使用される。2つの孔43、44を通る中央線Mに対して、コネクティングバー31および第1カバー部40aは、軸対称になるように設けられていることが好ましい。結果として、第1カバー部40aは、2つのウィング46を有する。これらウィングは、直径方向におおて中央線Mとは反対側で、かつ、中央線Mの方向から見ると第1孔43と第2孔44との間に延在している。各ウィング46の上縁部45は、第1孔43を有するコネクティングバー31の端部に起端して、中央線Mに対して対角線上に、または代替的に鉛直方向に外方に延在する。上縁部45は、円弧に沿って延在していることが望ましい曲線47を経由して、ウィング46の外縁部48に移行する。この縁部は、中央線Mに対して実質的に平行に延在している。外縁部48は、上縁部45の反対側において、下縁部49へと移行する。この下縁部は、実施例において中央線Mに対して実質的に径方向に延在する。中央線Mの方向において、2つのウィング46の下縁部49から第2孔44までの距離は、第1孔43と第2孔44との間の距離の少なくとも半分の長さである。第1孔43から下縁部49までの距離は、2つの案内ロッド34、35の長さ、すなわちシャフト継手36と結合継手33との間の距離の少なくとも半分の長さである。
【0033】
図5は、第1カバー部40aの追加の変形例の概略図を示す。一変形例において、プレート41は、図5の右側ウィング46について、例としてのみ示す複数の穿孔50を有し得る。これら穿孔は、第1カバー部40aの全面を覆うように設けてもよいし、1つまたは複数の領域に制限して設けることで、カバー部を安定させるために穿孔が存在しない領域、すなわちストリップ53が残るようにしてもよい。穿孔50のサイズまたは外郭は、操作者の指が貫通することがないように選択されている。穿孔50の形状は、環状、スリット状、多角形、またはその他の形状の外郭であり得る。これらの穿孔50によって、からみ織り装置15が操作される際に加速すべきプレート41の重量が減少される。
【0034】
第1カバープレート40aの別の変形例において、このカバープレートは、単体でまたはコネクティングバー31と一緒に第1カバー部40aの開口部を完全に閉じる枠51を備えていてもよい。この開口部には、格子状および/または網状および/またはメッシュ状の挿入物52が挿入される。この挿入物は、枠51内部の開口部を完全に閉止する。挿入物52内に存在するメッシュ状の開口部は、操作者の指が通過することがないように小さくなっている。この実施例では、第1カバー部40aの重量をさらに減少させることができる。第1カバー部40aはそれぞれ1つの挿入体52を有する複数の開口部を備え得るということが理解される。穿孔50と挿入体52を備える開口部とを組み合わせることも可能である。第1カバー部40aがより大きな撓み強さを有する必要がある場合には、枠51は、コネクティングバー31と同じ材料から製造されてもよい。さらに、少なくとも1つのストリップ53、あるいは、それに加えて少なくとも1つの硬化リップまたは補強部材を、プレート41に、そして/または枠51とコネクティングバー31との間に設けることも可能である。このような硬化または補強部材は、第1カバー部40aのその他の部分よりも座屈抵抗性が低く撓み強さが低い材料から形成してもよい。
【0035】
図4の鎖線は、2つの吊り上げシャフト16、17が互いに対して相対移動する際に第1カバー部40aまたはプレート41の位置がどのように変化するのかを概略的に示している。このようにして、プレート41がコネクティングバー31に対して固定されているため、2つの案内ロッド34、35と、その場所を通過して操作者が意図せずに中間スペースに到達するおそれがあるコネクティングバー31との間に、中間スペースが形成されなくなる。
【0036】
図6ないし図9は、第2カバー部40bを示す。図6は、第2吊り上げシャフト17がたて糸方向Kの上流に存在する図である。一方、図7および図8は、反対方向から見た図である。第2カバー部40bは、プレート41としても構成されている。第1カバー部40aとは異なり、第2カバー部40bのプレート41は、第2案内ロッド35に回転不能に連結されている。
【0037】
このように、プレート41は、扇形と類似した輪郭を有している。したがって、側方縁部55は、円の中心がシャフト継手36に隣接している円弧に沿って延在する。このシャフト継手を介して、第2案内ロッド35が、第2吊り上げシャフト17の上側シャフトロッド18に連結されている。第2カバー部40bのプレート41は、たて糸方向から見て2つの吊り上げシャフト16、17の上流側に延在するとともに垂直方向Vおよび長手延在方向Lによって画定される面において延在する。結合継手33の領域において、側方縁部55は、半径56を経由して、シャフト継手36の方向に延在する直線縁部57に移行する。別の直線縁部57が、結合継手33と反対側の側方縁部55からシャフト継手36の方向に延在する。2つの直線縁部57は、径方向に湾曲した縁部分58によって互いにつながっている。結合継手33の反対側の直線縁部57と側方縁部55との間の移行部には、例で示すように、角59が備わる。少なくとも、垂直方向Vにおいて上方を指す縁部移行部が、曲線を描くかまたは円弧状に形成され、それにより、図12および図13に概略的に示すように操作者の怪我のリスクを最小限に抑える。
【0038】
図9は、長手延在方向Lに対して横断する方向で切って示した断面図である。プレート41によって代表される第2カバー部40bが、円弧に沿って延在する側方縁部55上に見えるように示されている。第2カバー部40bと第2案内ロッド35との間の連結は、図に示した例によると、2つのセパレータ60によって達成されている。これら2つのセパレータによって、プレート41として構成されている第2カバー部40bおよび第2吊り上げシャフト17の上側シャフトロッドが、間隙61を形成しながら互いに離間して配置されている。これらセパレータ60は、第2カバー部40bと一体かまたは複数の部品からなるものであってもよく、したがって継ぎ目および継手なしで第2カバー部40bと同じ材料から構成してもよい。セパレータ60は、第2カバー部40bがからみ織り装置15の運転中に上側シャフトロッド18と意図せぬ接触をすることを防ぐ。第2カバー部40bが、たて糸方向Kから見て吊り上げシャフト16、17がどのような位置にある場合でも、第2吊り上げシャフト17の上側シャフトロッド18を部分的に覆い、それにより、操作者の手が上側シャフトロッド18と第2カバー部40bとの間で挟まれないようにすることが好ましい。
【0039】
さらに、図9では、結合継手33の枢動軸Sと、コネクティングバー継手32と、シャフト継手36とが互いに平行に配置され、この例ではたて糸方向Kに整列している。
【0040】
図10および図11も、プレート41の形状の第3カバー部40cを示している。図10では、たて糸方向Kの上流側に第2吊り上げシャフト17が存在している。一方、図11は、反対側から見た図である。2つの実施例40aおよび40bとは異なり、第3カバー部40cは、上側シャフトロッド18のうちの1つ、たとえば第2吊り上げシャフト17の上側シャフトロッド18と緊密に連結されている。図10は、第2吊り上げシャフト17を示す図である。図11は、第1吊り上げシャフト16の方向で見た図である。プレート41は、プレート41の中央を通る長手延在方向Lで見ると中央線Mに対して非対称な形状を有している。プレート41は、実質的に垂直方向Vに延在する第1縁部65と、それに対して平行な反対側に第2縁部66とを備える。垂直方向Vで見ると、第1縁部65は、第2縁部66よりも長い。第3カバー部40cであるプレート41の上縁部67は、おおむね長手延在方向Lに延在する。上縁部67は、第1移行半径68を介して第1縁部65に、かつ、第2移行半径69を介して第2縁部66に連結している。第1移行半径68は、第2移行半径69よりも小さい。
【0041】
第3カバー部40cのプレート41がこのように非対称な形状をしているため、このプレートの表面は可能な限り小さくなっている。同時に、2つの吊り上げシャフト16、17がどのような位置にあってもコネクティングバー31と2つの案内ロッド34、35との間の中間スペースが完全に覆われることが保証される。第3カバー部40cは第2吊り上げシャフト17に対して垂直方向Vにおいて移動不能であるが、第1吊り上げシャフト16に対しては垂直運動を行うようになっているため、非対称の形状が必要である。第1縁部65が、第2案内ロッド35に隣接して設けられている。一方、第2縁部66が、第1案内ロッド34に隣接して設けられている。
【0042】
図11の鎖線は、第2吊り上げシャフト17が第3カバー部40cとともに第1吊り上げシャフト16に対して行う下降運動を示す。図11の点線は、第1吊り上げシャフト16が第2吊り上げシャフト17に対して垂直方向に下降移動する際の第1案内ロッド34およびコネクティングバー31の位置を示す。このようにして、第3カバー部40cは、実線で描かれている位置に留まる。どちらの場合にも、案内ロッド34、35と案内ロッド34、35間の潜在的な中間スペースZとコネクティングバー31とが、たて糸方向Kにおいて吊り上げシャフト16、17がどのような位置にあっても完全に覆われるということが分かる。
【0043】
少なくとも、垂直方向において上方を向いている縁部またはカバー部40の角は、図12および図13に示すように、すべての実施例において丸くなっていてもよい。図13に示す実施例を参照すると、これらの縁部は、プレート41の厚さに対して拡張されており、それにより、肉厚領域70が形成されている。この肉厚領域70は、縁部に沿って怪我をしないような保護ガード部を成している。肉厚領域70は、プレート41の縁部に載置される別体の可撓性部材として構成してもよく、または、図13において鎖線で示すように接着または噴霧またはその他の材料結合によって縁部に設けてもよい。
【0044】
第1カバー部40aに関して説明したプレートの実施例、特に、カバー部40に穿孔50を設けることおよび/または挿入体52を有する少なくとも1つの開口部を設けることは、上述したすべての実施例に関して行うことができる。特に、第1カバー部40aおよび第2カバー部40bは、コネクティングバー31または案内ロッド34または35に対して材料結合、たとえば接着剤によって固定されている。射出成形によってカバー部40a、40bを製造し、射出成形プロセスの間に成形によってコネクティングバー31または案内ロッド34、35にそれらカバー部を直接隣接させることも可能である。
【0045】
長手延在方向Lにおいてみると、カバー部40の長さは、すべての実施例において、長手延在方向Lで見たときの2つのシャフト継手36間の距離よりも長い。2つの吊り上げシャフト16、17が同じ垂直方向位置を占めているときに垂直方向Vで測定したときに結合継手33上のカバー部40の高さは、垂直方向における2つの吊り上げシャフト16、17から結合継手33までの距離よりも大きい。
【0046】
本発明は、織り機で使用されるからみ織り装置15に関する。からみ織り装置15は、第1吊り上げシャフト16、第2吊り上げシャフト17、および半シャフト25を有する。シャフト16、17、25は、いくつかの伝達ユニット30を有するリンク機構29を介して互いに連結されている。各伝達ユニット30は、コネクティングバー31および2つの案内ロッド34、35を有する。操作者の指または手がコネクティングバー31とレバー34、35のうちの1つとの間に挟まれないようにするために、からみ織り装置15は、各伝達ユニット30に対して別体のカバー部40を備える。カバー部は、吊り上げシャフト16、17のうちの1つに固定されていてもよいし、コネクティングバー31に固定されていてもよい。カバー部40は、操作者がたて糸方向においてコネクティングバー31と案内ロッド34および35との間に到達することを防ぐ。
【符号の説明】
【0047】
15 からみ織り装置
16 第1吊り上げシャフト(ヘルド枠)
17 第2吊り上げシャフト(ヘルド枠)
18 上側シャフトロッド
19 下側シャフトロッド
20 側方支持体
21 吊り上げヘルド
25 半シャフト
26 半ヘルド
29 リンク機構
30 伝達ユニット
31 コネクティングバー
32 コネクティングバー継手
33 結合継手
34 第1案内ロッド
35 第2案内ロッド
36 シャフト継手
40 カバー部
40a 第1カバー部
40b 第2カバー部
40c 第3カバー部
41 プレート
42 側面
43 第1孔
44 第2孔
45 上縁部
46 ウィング
47 曲線
48 外縁部
49 下縁部
50 穿孔
51 枠
52 挿入体
53 ストリップ
55 側縁部
56 半径
57 直線縁部
58 縁部箇所
59 角
60 セパレータ
61 間隙
65 第1縁部
66 第2縁部
67 上縁部
68 第1移行半径
69 第2移行半径
70 肉厚領域
F 領域
K たて糸方向
L 長手延在方向
M 中央線
S 枢動軸
V 垂直方向
Z 中間スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に移動可能に支持され、吊り上げヘルドを担持する、第1吊り上げシャフト(16)と第2吊り上げシャフト(17)と、
吊り上げシャフト(16、17)に対して垂直方向に移動可能に支持され、半ヘルド(26)を担持する半シャフト(25)と、
当該半シャフト(25)と少なくとも1つの当該吊り上げシャフト(16、17)とを移動可能に互いに連結させるリンク機構(29)と
からなるからみ織り装置(15)であって、
当該リンク機構(29)は、コネクティングバー継手(32)上で当該半シャフト(25)に連結されるコネクティングバー(31)と、結合継手(33)上の当該コネクティングバー(31)に連結されるとともにシャフト継手(36)上の当該吊り上げシャフト(25)に連結される案内ロッド(34、35)とを備え、
当該からみ織り装置(15)の運転中に、当該案内ロッド(34、35)と当該コネクティングバー(31)との間で開閉する中間スペース(Z)を覆う、カバー部(40)を備えた、
からみ織り装置。
【請求項2】
前記コネクティングバー(31)は、第1案内ロッド(34)を介して前記第1吊り上げシャフト(16)に連結されるとともに、第2案内ロッド(35)を介して前記第2吊り上げシャフト(17)に連結される、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項3】
前記カバー部(40、40c)は、2つの前記吊り上げシャフト(16、17)のうちの1つの前記シャフトロッド(18)に固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項4】
前記カバー部(40、40c)は、中央線(M)に対して非対称になるよう構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項5】
前記カバー部(40、40b)は、前記案内ロッド(34、35)に回転不能に連結されている、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項6】
前記カバー部(40、40b)は、円の扇形に類似した形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項7】
前記カバー部(40、40a)は、前記コネクティングバー(31)に固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項8】
前記カバー部(40、40a)は、前記コネクティングバー(31)に材料結合によって連結されている、ことを特徴とする請求項7に記載のからみ織り装置。
【請求項9】
前記カバー部(40)は、プラスチックまたは複合材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項10】
前記カバー部(40)は、平坦なプレート(41)として構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項11】
前記カバー部(40)は、複数の穿孔(50)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項12】
前記カバー部(40)は、網状またはメッシュ状部分(52)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のからみ織り装置。
【請求項13】
前記網状またはメッシュ状部分(52)は、織物材料またはニット材料からなる、ことを特徴とする請求項12に記載のからみ織り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−251288(P2012−251288A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−121702(P2012−121702)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)