説明

リンク選択プログラム、リンク選択方法、リンク選択装置、経路探索プログラム、経路探索方法、及び、経路探索装置

【課題】経路探索の信頼性を高めて適切な推奨経路を得る。
【解決手段】地点に対するリンクを選択するに当たって、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する(16A)他、当該全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得し(16B)、当該全体領域内から任意の地点(例えば出発地点や目的地点)を取得する(11A)。そして、障害領域と交差せずに当該地点からアクセスするのに適したリンクを選択する(11B)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には、車両の出発地点から目的地点までの推奨経路を探索するためのプログラム/方法/装置、及び、それらの一部を成すリンク選択のプログラム/方法/装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両を出発地点から目的地点まで誘導する経路探索装置(例えば、車載ナビゲーション装置)は既に周知である。この経路探索装置は、出発地点から目的地点までの最適経路を所定の経路探索ロジックを用いて演算し、この演算結果である最適経路を、ディスプレイやスピーカ等の出力装置を介して画像や音声で搭乗者に案内するものである。
【0003】
かかる最適経路の探索のために、経路探索装置は、道路を、その最小単位のリンクに分解して記憶するとともに、リンク同士の接続点はノードとして記憶している(例えば、特許文献1参照)。また、経路探索装置は、リンクに関するその他種々の情報を記憶している。このような情報に基づいて、例えば、距離や道路種別等を考慮したリンクコストが最小となる最適経路を特定の経路探索ロジックによって算出するのが一般的であり、この経路探索ロジックとしては、例えばダイクストラ法やポテンシャル法が利用される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3869055号
【特許文献2】特開平7−103777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の経路探索装置では、例えば、車両の出発地点(現在位置又は、出発地点として指定した地点)が広大な敷地内にあって、その周辺に複数の公道や河川があるとき、目的地への経路探索を実行すると、河川と交差して最寄りの道路へアクセスするような推奨経路が得られる場合がある。
【0006】
図8は、このような一例を地図上に示す図である。図において、出発地点Pから最寄りの道路リンクAにアクセスする経路が推奨されても、川を横切る形となり、実際には行けない。また、目的地として装置に設定した場所へ、同様の理由によって、道路から進入できない推奨経路が得られる場合もある。
これらの場合には、推奨経路の通りに走行することができず、経路探索の信頼性が乏しい。
【0007】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、経路探索の信頼性を高めて適切な推奨経路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のリンク選択プログラムは、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する機能と、前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得する機能と、前記全体領域内から任意の地点を取得する機能と、前記障害領域と交差せずに前記地点からアクセスするのに適したリンクを選択する機能とをコンピュータに実現させるものである。
【0009】
上記のようなリンク選択プログラムによって各機能を実現するコンピュータは、アクセスを妨げる障害領域と交差せずに地点からアクセスするのに適したリンクを選択することができる。すなわち、コンピュータは、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である障害データも考慮して、アクセスすべきリンクを選択する。従って、現実にアクセス可能な、最適なリンクを選択することができる。
【0010】
(2)また、上記リンク選択プログラムにおいて、障害データには、河川等の水領域、崖、フェンス状建造物の物理的な障害のデータ、並びに、行政区画上の境界、国境その他の法的な障害のデータ、のいずれかに対応して、全体領域内に設定された位置及び形状データが含まれるものであってもよい。
この場合、実際には横切って通過できないこれらの障害を通過するかのような誤ったリンク選択を防止することができる。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)のリンク選択プログラムにおいて、障害データは、ネットワークデータがN次元で表される場合に、(N−1)以下の次元のデータになっていることが好ましい(Nは2以上の整数)。
この場合、ネットワークデータに対して、障害データは少なくとも1次元低いので、比較的コンパクトなデータサイズとすることができる。
なお、点や線で表される情報は1次元、平面的な広がりを持つ情報は2次元、そして、平面的な広がりに加えて高さの情報を持つものは3次元である。従って、道路の単なる1本のリンクデータは1次元、複数のリンクデータを網状に繋ぎ合わせた道路のネットワークデータや、平面情報のみのデジタル地図などの情報は2次元、そして、平面情報に加えて高低の情報が加えられているデジタル地図などの情報は3次元である。
【0012】
(4)一方、本発明のリンク選択方法は、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する他、当該全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得し、前記全体領域内から任意の地点を取得し、前記障害領域と交差せずに前記地点からアクセスするのに適したリンクを選択するものである。
【0013】
上記のようなリンク選択方法においては、アクセスを妨げる障害領域と交差せずに地点からアクセスするのに適したリンクを選択することができる。すなわち、コンピュータは、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である障害データも考慮して、アクセスすべきリンクを選択する。従って、現実にアクセス可能な、最適なリンクを選択することができる。
【0014】
(5)また、本発明のリンク選択装置は、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを有するネットワークデータ記憶部と、前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを有する障害データ記憶部と、前記全体領域内から任意の地点を取得する地点取得部と、前記障害領域と交差せずに前記地点からアクセスするのに適したリンクを選択するリンク選択部とを備えたものである。
【0015】
上記のようなリンク選択装置は、アクセスを妨げる障害領域と交差せずに地点からアクセスするのに適したリンクを選択することができる。すなわち、コンピュータは、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である障害データも考慮して、アクセスすべきリンクを選択する。従って、現実にアクセス可能な、最適なリンクを選択することができる。
【0016】
(6)また、他の観点から見た本発明は、始点から終点までの経路を探索する機能をコンピュータに実現させるための経路探索プログラムであって、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する機能と、前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得する機能と、前記全体領域内から前記始点及び終点を取得する機能と、前記障害領域と交差せずに前記始点及び終点からそれぞれアクセスするのに適したリンクである、開始リンク及び終了リンクをそれぞれ選択する機能と、前記開始リンクから前記終了リンクまでの推奨経路を探索する機能とを、コンピュータに実現させるための経路探索プログラムである。
【0017】
上記のような経路探索プログラムによって各機能を実現するコンピュータは、アクセスを妨げる障害領域と交差せずに始点・終点からアクセスするのに適した開始リンク・終了リンクを選択することができる。すなわち、コンピュータは、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である障害データも考慮して、アクセスすべき開始リンク・終了リンクを選択する。従って、現実にアクセス可能な、最適なリンクを選択して、推奨経路を探索することができる。
【0018】
(7)また、上記(6)の経路探索プログラムにおいて、河川等の水領域、崖、フェンス状建造物の物理的な障害のデータ、並びに、行政区画上の境界、国境その他の法的な障害のデータ、のいずれかに対応して、全体領域内に設定された位置及び形状データが含まれるものであってもよい。
この場合、実際には横切って通過できないこれらの障害を通過するかのような誤ったリンク選択を防止することができる。
【0019】
(8)また、上記(6)又は(7)の経路探索プログラムにおいて、障害データは、ネットワークデータがN次元で表される場合に、(N−1)以下の次元のデータになっていることが好ましい。
この場合、ネットワークデータに対して、障害データは少なくとも1次元低いので、比較的コンパクトなデータサイズとすることができる。
【0020】
(9)また、本発明は、始点から終点までの経路を探索する経路探索方法であって、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する他、当該全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得し、前記全体領域内から前記始点及び終点を取得し、前記障害領域と交差せずに前記始点及び終点からそれぞれアクセスするのに適したリンクである、開始リンク及び終了リンクをそれぞれ選択し、前記開始リンクから前記終了リンクまでの推奨経路を探索するものである。
【0021】
上記のような経路探索方法においては、アクセスを妨げる障害領域と交差せずに始点・終点からアクセスするのに適した開始リンク・終了リンクを選択することができる。すなわち、コンピュータは、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である障害データも考慮して、アクセスすべき開始リンク・終了リンクを選択する。従って、現実にアクセス可能な、最適なリンクを選択して、推奨経路を探索することができる。
【0022】
(10)また、本発明は、始点から終点までの経路を探索する経路探索装置であって、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを有するネットワークデータ記憶部と、前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを有する障害データ記憶部と、前記全体領域内から前記始点及び終点を取得する地点取得部と、前記障害領域と交差せずに前記始点及び終点からそれぞれアクセスするのに適したリンクである、開始リンク及び終了リンクをそれぞれ選択するリンク選択部と、前記開始リンクから前記終了リンクまでの推奨経路を探索する経路探索部とを備えたものである。
【0023】
上記のような経路探索装置は、アクセスを妨げる障害領域と交差せずに始点・終点からアクセスするのに適した開始リンク・終了リンクを選択することができる。すなわち、コンピュータは、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である障害データも考慮して、アクセスすべき開始リンク・終了リンクを選択する。従って、現実にアクセス可能な、最適なリンクを選択して、推奨経路を探索することができる。
【0024】
(11)また、さらに他の観点から見た本発明は、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する機能と、前記全体領域内でリンクへのアクセスをしにくくするための領域であるアクセス制限領域を成す制限データを取得する機能と、前記全体領域内から任意の地点を取得する機能と、前記地点と、その近傍に存在する複数のリンクそれぞれとの近接度を、前記地点から前記複数の各リンクまでの直線の距離に基づいて算出する機能と、算出される前記近接度に基づいて、前記複数のリンクから一のリンクを選択する機能と、をコンピュータに実現させるためのリンク選択プログラムであって、前記直線が前記アクセス制限領域と交差する場合に算出される近接度が、当該リンクが選択されにくいような値となること、を特徴とするものである。
【0025】
上記のようなリンク選択プログラムによって各機能を実現するコンピュータは、アクセス制限領域と交差するリンクの近接度を、選択されにくい値にするので、結果的に、このようなリンクをなるべく避けつつ、地点からアクセスするのに適したリンクを選択することができる。すなわち、コンピュータは、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である制限データも考慮して、アクセスすべきリンクを選択し、しかも、いわば、恣意的に最適な(若しくは賢明な)リンクを選択することができる。
なお、前記近接度とは、前記任意の地点から各リンクまでの直線距離の長さに基づいて算出される指標であり、一般的には、当該距離の長さが短いほど近接度が大きいものとして算出される。本発明では、アクセス制限領域と交差する直線の場合には、例えば、実際の直線距離の長さに対して、所定の定数を加算したり、直線距離を2倍にする処理をしたりすることで、近接度を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のリンク選択プログラム/方法/装置、及び、経路探索プログラム/方法/装置によれば、経路探索の信頼性(物理的な面でのリンク選択の信頼性の他、恣意的なリンク選択の信頼性も含む。)を高めて適切な推奨経路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る経路検索装置を有するナビゲーションシステムの全体構成を示す概略構成図である。
【図2】図1のシステムの機能ブロック図である。
【図3】図1のシステムを利用した経路探索処理のフローチャートである。
【図4】図3のステップS1におけるリンク選択の内容を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS1−1,S1−2に共通の、リンク選択処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートによる処理の概念を地図上で表現した具体例である。
【図7】経路探索の処理、特に、リンク選択の処理の主体を装置として機能的に見たときのブロック図である。
【図8】最寄りのリンクを探す状態の一例(従来例)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
《システムの全体構成》
図1は、本発明の一実施形態に係る経路検索装置(経路探索プログラムや、リンク選択プログラム/装置も含む。)を有するナビゲーションシステムの全体構成を示す概略構成図であり、図2は、同システムの機能ブロック図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態のナビゲーションシステム1は、サーバ装置2と、複数の車両3にそれぞれ搭載された車載装置4とによって構成されている。
なお、本明細書において、「車両」とは、自動車、原動機付き自転車、軽車両及びトロリーバス等のことをいう。また、「車載装置」とは、車両に搭載されており、その搭乗者に対して目的地までの経路を案内するいわゆるナビゲーション装置のことをいう。
【0029】
このナビゲーションシステム1は、予め入会登録された会員(ユーザ)の車両3自体をセンサとして、各車両3からサーバ装置2が情報収集し、メンバー間で相互に情報提供し合って運用することにより、サーバ装置2が各会員に対して有用な交通情報を提供するようにしたものである。
従って、本システム1によれば、通常のVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)情報とともに、このVICS情報に含まれていないより詳細かつ動的な交通情報を、各会員の車両3に提供することができる。
【0030】
本システム1のサーバ装置2は、専用の通信回線を介して交通情報センタ5に接続されており、必要に応じてVICS情報を交通情報センタ5から入手している。また、サーバ装置2は、インターネット網6を通じて携帯電話機8の無線基地局7と双方向で通信可能である。
各車両3の車載装置4は、搭乗者の携帯端末である携帯電話機8を介して、無線基地局7と双方向で通信可能であり、無線基地局7は上記インターネット網8に接続されている。このため、各車両3の車載装置4は、ほぼリアルタイムでサーバ装置2に対して情報を送受信可能となっている。
【0031】
各車両3の車載装置4は、GPS(Global Positioning System)アンテナと、GPS受信機と、道路地図データベースと、入力デバイスと、ディスプレイ及びスピーカ等よりなる出力装置とを備えており、GPS受信機で検出した現在位置をディスプレイの画面上に表示できるようになっている。
また、車載装置4は、入力デバイスで入力された所定の旅行条件に基づいて、旅行ルートを演算可能なルート演算装置(図示せず)を備えている。
【0032】
車載装置4に入力可能な旅行条件としては、出発地点(現在位置又は指定した地点)や目的地点のほか、経由地や優先経路(一般道路優先又は有料道路優先や、距離優先又は道幅優先)等がある。ルート演算装置のメモリには、入力される情報や自身で演算した旅行ルートに加えて、サーバ装置2から提供されたルート探索情報を保存することもできる。
なお、本実施形態の車載装置4は、ETC対応であり、有料道路の料金所等に設置されたETC路側処理装置と無線による路車間通信を行うことができる。
【0033】
《サーバ装置の内部構成》
図2に示すように、サーバ装置2は、ワークステーション等よりなるコンピュータ11と、このコンピュータ11に接続された通信インターフェースよりなる第1及び第2通信部12,13と、各種データベース14〜16とから構成されている。
第1通信部12は、専用回線で交通情報センタ5に接続されている。また、第2通信部13は、インターネット網6を介して前記無線基地局7に接続され、この無線基地局7と車両3の搭乗者の携帯電話機8との間の無線通信を通じて、車載装置4との間で情報の送受信を行う。
【0034】
《会員データベース》
各データベース14〜16のうち、会員データベース14には、当該システム1に参加する登録会員の識別情報が保存されている。
コンピュータ11は、会員データベース14に記録されている特定の登録会員から受信した入力情報(出発地点及び目的地点等)に基づいて、後述する経路探索処理を実行する。
【0035】
《交通情報データベース》
交通情報データベース15には、第1通信部12が受信した交通情報センタ5からのVICS情報が保存される。このVICS情報は、コンピュータ11が交通情報センタ5からのVICS情報を抽出するごとに更新され、ほぼ最新の情報が保持される。
また、交通情報データベース15には、特定の登録会員から受信したリンク番号、リンク進入時刻、リンク退出時刻、リンク旅行時間等よりなる交通情報(プローブ情報)も保存される。
【0036】
この場合、車載装置4は、所定時間毎(例えば、0.1秒毎)又は所定距離毎(例えば、5m毎)に位置を検出しており、各リンクについて、検出位置がリンクの始端の位置を通過(一致)した時刻をリンク進入時刻とし、検出位置がリンクの終端の位置を通過(一致)した時刻をリンク退出時刻とし、リンク退出時刻とリンク進入時刻との差をリンク旅行時間として算出する。
【0037】
更に、交通情報データベース15には、高速道路等の有料道路の料金情報17が含まれている。
この料金情報17は、例えばNEXCOが公表している各IC間の通行料金テーブルよりなり、この通行料金テーブルは、深夜割引、通勤割引及び早朝夜間割等の割引制度ごとに定められた複数のテーブルよりなる。
【0038】
《地図データベース》
地図データベース16には道路地図データが記録されている。この道路地図データには、道路網を構成する単位をリンクとして、各リンクに関する種々の情報が含まれている。例えば、当該情報には、ネットワークデータとしての「交差点データ」と「リンクデータ」とが含まれている。
このうち、「交差点データ」は、交差点IDと交差点位置とを対応付けたデータである。また、「リンクデータ」は、特定リンクのリンクIDに対して、特定リンクの始点・終点(ノード)・補間点の位置、特定リンクの始点に接続するリンクID、特定リンクの終点に接続するリンクID、特定リンクのリンクコスト等、を対応付けたデータよりなる。
【0039】
また、平均速度や渋滞状況については、交通情報データベース15のVICS情報やプローブ情報に基づいて設定される。従って、これらの各情報が更新される度に、リンクデータに含まれる各リンクの平均速度及び渋滞状況も更新される。
また、地図データベース16には、地図上の各道路に対応するリンクが一般道路か有料道路かの道路種別も含まれている。
【0040】
一方、リンクコストは、例えば、特定リンクとその終点に接続するリンクの組み合わせの数だけ用意されており、特定リンクの始点に進入してから当該特定リンクの終点を退出し、次に接続するリンクの始点に進入するまでに要するコスト(時間)を含んでいる。
すなわち、リンクコストには、特定リンクの始点から終点までを走行するのに要する時間コストと、その特定リンクの終点から次のリンクの始点までを走行するのに要する時間コスト、つまり、交差点通過に要する時間コストとが含まれる。
【0041】
上記時間コストは、平日、土曜、日曜及び祝日といった日種別ごとに、現時点から1日先までの5分毎のデータが用意されており、この5分毎のデータは、交通情報データベース15のVICS情報や、特定会員から受信したプローブ情報に基づいて作成される。
【0042】
一方、地図データベース16には、上記のようなネットワークデータの他に、車両通行の障害となる領域(障害領域)を示す障害データとして、当該領域の位置や形状データが格納されている。障害データとは例えば、河川等の水領域(海岸線も含む。)、崖、及び、フェンス、柵、塀その他のフェンス状建造物であり、車両は、これらと交差する経路で通行する(すなわち横切る)ことはできない。
【0043】
また、障害データは、リンクと同様に、特定の障害データ単位IDに対して、始点・終点(ノード)・補間点の位置、始点に接続する他の障害データ単位ID、終点に接続する他の障害データ単位ID等、を対応付けたデータより構成することができる。
【0044】
これらの障害データは、ネットワークデータにより表される道路網が2次元(平面)であれば、1次元の障害線(ポリライン)により表現することができる。また、道路網が3次元であれば、2次元の閉じた面(ポリゴン)からなる障害面として表現することができる。すなわち、N次元(Nは2以上の整数)の道路網に対しては(N−1)次元の障害データとすればよい。この場合、ネットワークデータに対して、障害データは1次元低いので、比較的コンパクトなデータサイズとすることができる。なお、ネットワークデータがリンクアクセス(リンクへのアクセス)や経路探索のための肯定的な情報であるとすれば、障害データは、否定的な情報となるものであり、単なる地図上のグラフィックデータではない。
【0045】
なお、データの次元は、上記の関係に限定される訳ではなく、障害データの次元が、ネットワークデータの次元と同じであってもよいし、ネットワークデータが3次元で障害データが1次元というような、2次元差があっても構わない。すなわち、ネットワークデータがN次元であれば、障害データはN次元以下とすることができる。但し、上記のように、障害データのデータサイズを比較的コンパクトにするためには、ネットワークデータがN次元であれば、障害データは(N−1)次元以下とすることが好ましい。
【0046】
《コンピュータの構成及び機能》
一方、コンピュータ11は、HDDやメモリ等よりなる記憶装置18と、この記憶装置18から各種のコンピュータプログラムを読み出して実行する演算装置19とを含んでいる。
【0047】
このコンピュータプログラムのうちの1つは、車両3が出発地点から目的地点まで走行する場合の推奨経路の探索が可能なプログラムであり、このプログラムには、具体的にはダイクストラ法やポテンシャル法による経路探索ロジックが含まれている。
すなわち、演算装置19は、上記経路探索ロジックを含むプログラムを実行することにより、出発地点から目的地点までの最小のリンクコストとなる経路(推奨経路)を探索する。
【0048】
ここで、ダイクストラ法では、開始リンクから始まるリンクのツリーを構成していくに当たって、あるリンクから複数のリンクに枝分かれする場合に、各枝のリンクの経路コスト(開始リンクから当該リンクに至るリンクコストの総和)の大小を比較し、この経路コストの小さい順に並べ変えて、経路コストの小さいリンクからさらに探索を続けて行くという方法を採用している。
従って、最初に終了リンクに到達すれば、その時点で終了リンクに到達する最小コストの経路が決定される。リンクコストの小さいリンクから順に探索を行うので、真先に終了リンクに到達した経路がそのまま最小コストの経路となるからである。
【0049】
一方、ポテンシャル法では、あるリンクから複数のリンクに枝分かれする場合に、各枝のリンクの経路コストの大小の比較をせずに、すべてのリンクを同等に扱い、各枝のリンクからさらに探索を続けていくという方法を採用している。
従って、最初に終了リンクに到達しても、その時点では、他の経路を通って終了リンクに到達する可能性が残されているため、ネットワークにあるすべてのリンクを探索し終わった時点で初めて、終了リンクに到達する最小コストの経路が決定される。
【0050】
《経路探索処理の内容》
図3は、本システム1を利用した経路探索処理のフローチャートである。
図3に示すように、まず、車両3の搭乗者が車載装置4に対して出発地点と目的地点の設定を行う(ステップS0)。この場合、出発地点の設定がない場合には、車両3の現在位置が出発地点となる。
【0051】
上記出発地点と目的地点は、携帯電話機8(図2)を通じてサーバ装置2に送信され、コンピュータ11によって経路探索処理が行われる。
サーバ装置2のコンピュータ11(具体的には、演算装置19)は、まず、地点に対してリンクを選択するリンク選択の処理を行う(ステップS1)。これにより、出発地点からのアクセスに最適なリンクが開始リンクとされ、かつ、目的地点への到達直前のリンクとして最適なもの(目的地点から見れば、アクセスに最適なリンク)が終了リンクとされる。
【0052】
図4は、上記ステップS1におけるリンク選択の内容を示すフローチャートである。図において、コンピュータ11は、出発地点(始点)に関する開始リンクの選択(ステップS1−1)と、目的地点(終点)に関する終了リンクの選択(ステップS1−2)とを実行する。
図5はさらに具体的に、図4のステップS1−1,S1−2に共通の、リンク選択処理の内容を示すフローチャートである。
【0053】
次に、図5において、例えば開始リンク選択の処理(ステップS1−1)を想定して説明する。また、図6は、図5のフローチャートによる処理の概念を地図上で表現した具体例であり、出発地点をPとする。
【0054】
図5において、コンピュータ11は、まず、最寄りの道路(リンク)を探索するための最近傍距離Lminを初期設定する(ステップS10)。この距離は例えばPから半径2kmである。そして、コンピュータ11は、Pから当該距離内にあるネットワークデータ及び障害データを地図データベース16(図2)から読み込む。このフローチャートの処理の一つの目的は、最短距離にあるリンクを選択することである。そのため、コンピュータ11は、Pから各リンクの最近傍点までに引いた線分の長さを全てチェックし、それらの中で最短となるものを探す。最初の時点では、まだ何もチェックしていないため、コンピュータ11は、ステップS11からステップS12へ進み、次の線分すなわち最初の線分についての処理を行う。
【0055】
ここで、コンピュータ11は、リンクの存在している領域内でいずれかのリンクの最近傍点までに線分を引いて交点Q(図6参照)を設定し、その座標を求める(ステップS13)。さらに、コンピュータ11は、PとQと間の距離Lを求め(ステップS14)、これを最近傍距離Lminと比較する(ステップS15)。ここで、Lmin>Lでなければコンピュータ11はステップS11,S12に戻り、次の線分についてステップS13〜S15の処理を行う。そのうちに、Lmin>Lを満たす距離Lが現れると、コンピュータ11は、線分P−Qが障害線と交差するか否かを調べる(ステップS16,S17)。ここで、障害線とは例えば河川であり、データ的には河川の中央を、複数のリンクを接続して折れ線状に示すものの他、川幅方向の両端を同様の折れ線状に示すものであってもよい。
【0056】
コンピュータ11は、線分P−Qが障害線と交差する場合(ステップS17のYes)には、次の線分のチェックを行う(ステップS11,S12)。このことは、当該線分P−Qの距離を、最近傍距離の更新(ステップS18)の対象としないことを意味し、さらには、当該線分に係るリンクを選択しないことを意味する。言い換えれば、ステップS16,S17の処理を行うことによって、障害線は、リンク選択若しくはリンクアクセスに対する否定的要素すなわち、通過を妨げる要素としての意味を持つ。すなわち、このフローチャートの処理のもう一つの目的は、障害線によってアクセスできないリンクを選択対象から除外することにある。
【0057】
そして、ステップS15においてLmin>Lを満たす距離Lが現れ、しかも、線分P−Qが障害線と交差しないとき(ステップS17のNo)は、コンピュータ11は、当該Lをもって、最近傍距離Lminを更新する(ステップS18)。以下同様に、さらに小さい距離Lが現れ、かつ、障害線と交差しないという条件が満たされれば、コンピュータ11は、最近傍距離Lminを更新する(ステップS18)。全ての線分のチェックが終了すれば、コンピュータ11は、最近傍距離にあるリンクを開始リンクとして選択する(ステップS19)。こうして、地点Pとの距離に相当する線分が障害領域(障害線)と交差しないリンクの中で、最短距離にあるリンクが、開始リンクとして選択される。
【0058】
なお、図6の一例で言えば、単に最短距離にあるリンクAではなく、川と交差せずに最短距離でアクセスできるリンクBが選択されることになる。
開始リンクの選択後、同様にして、終了リンクが選択される(図4のステップS1−2)。なお、選択の順序は逆でもよい。
図3に戻り、コンピュータ11は、前述のリンクデータの中で、開始リンクから終了リンクまでを含むネットワークデータを、地図データベース16から取得する(ステップS2)。
【0059】
次に、コンピュータ11は、取得したネットワークデータに対して前記経路探索ロジックを実行する(ステップS3)。
具体的には、コンピュータ11は、開始リンクから終了リンクに至るリンクを順次加算してリンクのツリーを構成して行き、終了リンクに至るツリーの中で次の式で定義されるリンクコストが最も少ない経路をダイクストラ法又はポテンシャル法による経路探索ロジックにより求めて、推奨経路を特定する(ステップS4)。
【0060】
リンクコスト= (a×リンク旅行時間)
+(b×リンクの距離)
+(c×道路種別)
+(d×通行料金)
+(e×交差点通過時間)
ただし、a〜eはルート計算種別及びユーザごとに設定可能な係数である。
【0061】
特定された推奨経路を示す情報は、コンピュータ11から車載装置4に送信される(ステップS5)。情報提供(ステップS6)を受けた車両3の搭乗者は、自身の判断で推奨経路を選択するか否かを判断する(ステップS7)。
そして、搭乗者が推奨経路を選択する場合には、車両3をその推奨経路に沿って走行させ、目的地点に到着することになる(ステップS8)。
【0062】
上記のような経路探索の処理、特に、リンク選択の処理は、主としてコンピュータ11及び地図データベース16等によって実行することができるが、処理主体を装置として機能的に見れば、図7に示すブロック図で表現することができる。すなわち、コンピュータ11は、地点取得部11Aと、リンク選択部11Bと、経路探索部11Cとを備えている。地図データベース16は、ネットワークデータ記憶部16Aと、障害データ記憶部16Bとを備えている。
【0063】
ここで、ネットワークデータ記憶部16Aは、道路網を構成し、所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを有する。障害データ記憶部16Bは、その全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを有する。地点取得部11Aは、車載装置4(図3)から、上記全体領域内から始点及び終点を取得する。リンク選択部11Bは、障害領域と交差せずに始点及び終点からそれぞれアクセスするのに適したリンクである、開始リンク及び終了リンクをそれぞれ選択する。そして、ステップS2〜S5(図3)に対応する機能部分である経路探索部11Cは、開始リンクから終了リンクまでの推奨経路を探索する。
【0064】
本発明は、上記のような各部の機能をコンピュータ11により実現するプログラムでもあり、また、方法でもある。
上記のような経路探索プログラム/方法/装置、特に、リンク選択プログラム/方法/装置によれば、アクセスを妨げる障害領域と交差せずに地点からアクセスするのに適したリンクを選択することができる。すなわち、コンピュータ11は、ネットワークデータにのみ依存してリンクを選択するのではなく、否定的な情報である障害データも考慮して、アクセスすべきリンクを選択する。従って、現実にアクセス可能な、最適なリンクを選択することができる。また、その結果、経路探索の信頼性を高めて実際の走行に支障のない推奨経路を得ることができる。
【0065】
なお、上記実施形態でのリンク選択の一つのルールは、典型的には、より距離が近いリンクを探すことであるが、これに限定される訳ではない。例えば、アクセスの方向性を選択ルールに含めてもよい。
具体的には、例えば、終了リンクとなる道路から左折して目的地点に達する場合と、右折して目的地点に達する場合とでは、一般には左折の方が簡単であるため、運転者のストレスが異なる。そこで、終了リンクから左折して目的地点に達するような経路探索(リンク選択)をするようにしてもよい。また、目的地点前の道路脇に駐車が可能な場合において、左寄せして駐車し、降車して道路を横切り、右方向の目的地点に向かう場合と、左寄せして駐車し、降車してそのまま左方向の目的地点に向かう場合とでは、便利さが異なる。そこで、目的地点が道路の左方向にあるような経路探索(リンク選択)をするようにしてもよい。
また、有料道路・一般道路のどちらを優先するか、を選択ルールに加えてもよい。
【0066】
《障害データのその他の活用》
なお、障害領域として2次元の領域を登録している場合、通常、当該領域には車両を乗り入れることが不可能である。かかる2次元の領域とは、例えば、そもそも車両の乗り入れを禁止されている歩行者天国や行楽地の敷地内などの走行禁止領域、又は、河川や海などの走行が不可能な領域である。
そこで、障害領域を2次元のデータとして保持している場合には、当該データを用いて以下のような機能を実現することが可能である。
【0067】
例えば、ドライバが指定した現在地、目的地や経由地などが、障害領域内である場合、経路探索をすることができないため、指定された地点が車両の乗り入れ不可能な地域であるために経路探索ができない旨の情報を視覚的あるいは聴覚的な情報としてドライバに報知することができる。なお、ドライバが指定した地点でなくても、GPSによって取得される自車両の現在地がGPSのシステム誤差の影響で障害領域内である場合にも同様に報知することが可能である。
このように、経路探索が不可能な原因をドライバに報知することで、ドライバが条件を変更して経路探索を再試行することが可能となるので、ナビゲーションシステムの利便性を高めることができる。
【0068】
以上のように、単に地図表示画面上に描画するためだけに河川や海等の地形データを記憶しておくだけではなく、走行禁止領域のような障害データをデータベースとして保持しておくことで、当該障害データを、カーナビゲーションシステムの様々な目的に活用することができる。
なお、このような走行禁止領域等の設定においては、当該境界線近辺については、ある程度縮退させておくことが望ましい。これは、地図上でドライバが地点を指定する際の誤差やGPS等による現在位置の取得誤差などに配慮するためである。
【0069】
《その他一般論》
今回開示した各実施形態は本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲とその構成と均等な範囲でのすべての変更が含まれる。
【0070】
《その他変形例1》
なお、上記実施形態では、サーバ装置2と車載装置4との間の無線通信を、携帯電話機8を通じて行っているが、この無線通信は、例えば、光ビーコン、無線LAN、DSRC(Dedicated Short Range Communication )等の比較的エリアの狭い路車間通信で行うこともできる。
また、上記実施形態ではコンピュータ11が経路探索を実行しているが、各車両3に搭載された車載装置4が独自に、当該経路探索やリンク選択を行うことにしてもよい。すなわち、本発明の経路探索装置(リンク選択装置)は、車載装置4の演算装置に組み込むことも可能である。
【0071】
さらに、上記実施形態では、サーバ装置2と複数の車載装置4とからなるナビゲーションシステム1を例示しているが、当該システム1の構成要素は車載装置4以外のものであってもよい。例えば、サーバ装置2とインターネット通信可能な携帯電話機やノートPC等の端末装置を、上記ナビゲーションシステム1の構成要素とすることもできる。
この場合、出発地点や目的地点の設定作業をWEBサイトの入力画面を通じてユーザが行うことにより、その地点情報をサーバ装置2に送信することができる。
【0072】
なお、上記実施形態では車両を対象とした経路探索やリンク選択について説明したが、歩行者を対象とする経路探索(いわゆる歩行者ナビ)等であっても同様である。この場合、障害データとしては同様に河川等を設定することができる。また、例えば、地下街での経路探索であれば、3次元空間のネットワークデータが必要であり、障害データとしては、例えば、地上へ出られる出口以外の地面部分は、上には上がれない障害面として設定することができる。
【0073】
《その他変形例2》
また、以上の実施形態においては、通行不可能な領域である障害領域を設定する例を示したが、通行不可能ではないがアクセスを制限したいアクセス制限領域(当該領域をまたいだリンクの選択がされにくくなるようにするための制限領域)を設定することも可能である。
【0074】
すなわち通常の処理であれば、ある地点を基準として選択されるリンクは、そのリンクまでの直線距離が最も短いもの(最も近接度が高いもの)、となるが、ある特定の地点を基準とした場合に、直線距離が最短のリンク以外のリンクを選ばせたいケースもある。
例えば、行政区画として指定された領域内を走行することを推奨される車両等において、当該行政区画外のリンクを極力選択しないことが望ましい場合等である。このような場合には、通行不可能な障害領域を設定する方法よりも、アクセスを制限するようなアクセス制限領域を、前記行政区画の境界線のところに設けておく方法を採用すると良い。
【0075】
そして、前記特定の地点からその近傍にある複数のリンクまでの直線距離を算出する場合において、各リンクに至る直線がアクセス制限領域を交差した場合には、その交差回数等に応じて直線距離に所定の定数を加算する処理や、直線距離に1より大きい所定の係数(例えば2等)を乗算する処理等(近接度が小さくなるような処理)をすれば良い。
【0076】
このようにすれば、直線距離が短いリンクであっても、実際の直線距離よりも長い距離として算出される(近接度が小さい値として算出される)ため、アクセス制限領域を交差しない他のリンクが選択される確率を高めることができるようになる。
このような方法を用いれば、前記所定の定数等の値の大きさを変えることで、リンクが選択される確率を自由に制御することが可能となり、障害領域を跨いだリンクの選択自体を不可能とする実施形態の方法に比べて、さらに柔軟性の高いシステムを構築することが可能となる。
【0077】
なお、この場合、例えば、絶対に選ばせたくないリンクがある場合には、当該リンクに至るまでに設けられたアクセス制限領域を交差した場合に加算される所定の定数の値を無限大とすれば良い。そうすることで、実施形態において示した障害領域と同じように、実質的に通行不可能な領域を設定することも可能となる。
【0078】
《その他応用例》
なお、上記実施形態では道路網におけるリンク選択について説明したが、本発明のリンク選択プログラム/方法/装置は、道路網以外の各種経路網にも適用可能である。要は、複数のリンクとノードとを含む何らかのネットワークデータについて、適用可能である。
また、障害データとしては、河川、崖、フェンス状建造物その他の物理的な障害のデータの他、行政区画上の境界、国境その他の法的な障害のデータもあり得る。
【0079】
例えば、道路と同様のインフラである上下水道の配管は、経路網を構成するものであり、複数のリンクとノードとを含むネットワークデータとして表すことができる。そして、住宅を新築する際に、どの上水管から水道を引き込み、どの下水管へ汚水を流すかを計画するに当たって、上述のリンク選択の考え方を適用し、アクセスライン上に障害データのない管路(リンク)であって距離最短のもの、を選択することができる。
【0080】
この場合の障害とは、例えば行政区画の境界線である。すなわち、距離的に近いからと言って、隣の市町村の管路を拝借することは基本的にはできないので、かかる「障害」を避けて、自己の管轄エリア内で最も近い等の選択ルールに基づいて、アクセスに最適なリンクを選択することになる。なお、上下水道(特に下水道)の配管は、立体的な経路網として扱うべきものである。従って、障害データも2次元で設定することが好ましい。
また、障害として活断層のラインを設定すれば、これをなるべく通さないことで、大地震に配慮した配管設計も可能である。
【0081】
また、例えば、ある地点から既設の電線や光ファイバにどう繋ぐかという場合にも、リンク単位で構成された配線のネットワーク(経路網)について、上述のリンク選択の考え方を適用し、アクセスライン上に障害データのない接続線(リンク)であって距離最短のもの、を選択することができる。障害としては、例えば、営業管轄の境界線や、高圧線を通せない領域との境界面が考えられる。
【0082】
なお、上記の応用例において障害データによって示される障害領域は、1次元:障害線、2次元:障害面(閉じた面)、3次元:立体形状の障害曲面とすることができる。
【符号の説明】
【0083】
11 コンピュータ
16 地図データベース
11A 地点取得部
11B リンク選択部
11C 経路探索部
16A ネットワークデータ記憶部
16B 障害データ記憶部
A,B リンク
P 地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する機能と、
前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得する機能と、
前記全体領域内から任意の地点を取得する機能と、
前記障害領域と交差せずに前記地点からアクセスするのに適したリンクを選択する機能と
をコンピュータに実現させるためのリンク選択プログラム。
【請求項2】
前記障害データには、河川等の水領域、崖、フェンス状建造物その他の物理的な障害のデータ、並びに、行政区画上の境界、国境その他の法的な障害のデータ、のいずれかに対応して、前記全体領域内に設定された位置及び形状データが含まれる請求項1記載のリンク選択プログラム。
【請求項3】
前記障害データは、前記ネットワークデータがN次元で表される場合に、(N−1)以下の次元のデータになっている請求項1又は2に記載のリンク選択プログラム。
【請求項4】
所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する他、当該全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得し、
前記全体領域内から任意の地点を取得し、
前記障害領域と交差せずに前記地点からアクセスするのに適したリンクを選択する
ことを特徴とするリンク選択方法。
【請求項5】
所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを有するネットワークデータ記憶部と、
前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを有する障害データ記憶部と、
前記全体領域内から任意の地点を取得する地点取得部と、
前記障害領域と交差せずに前記地点からアクセスするのに適したリンクを選択するリンク選択部と
を備えたことを特徴とするリンク選択装置。
【請求項6】
始点から終点までの経路を探索する機能をコンピュータに実現させるための経路探索プログラムであって、
所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する機能と、
前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得する機能と、
前記全体領域内から前記始点及び終点を取得する機能と、
前記障害領域と交差せずに前記始点及び終点からそれぞれアクセスするのに適したリンクである、開始リンク及び終了リンクをそれぞれ選択する機能と、
前記開始リンクから前記終了リンクまでの推奨経路を探索する機能と
をコンピュータに実現させるための経路探索プログラム。
【請求項7】
前記障害データには、河川等の水領域、崖、フェンス状建造物の物理的な障害のデータ、並びに、行政区画上の境界、国境その他の法的な障害のデータ、のいずれかに対応して、前記全体領域内に設定された位置及び形状データが含まれる請求項6記載の経路探索プログラム。
【請求項8】
前記障害データは、前記ネットワークデータがN次元で表される場合に、(N−1)以下の次元のデータになっている請求項6又は7に記載の経路探索プログラム。
【請求項9】
始点から終点までの経路を探索する経路探索方法であって、
所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する他、当該全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを取得し、
前記全体領域内から前記始点及び終点を取得し、
前記障害領域と交差せずに前記始点及び終点からそれぞれアクセスするのに適したリンクである、開始リンク及び終了リンクをそれぞれ選択し、
前記開始リンクから前記終了リンクまでの推奨経路を探索する
ことを特徴とする経路探索方法。
【請求項10】
始点から終点までの経路を探索する経路探索装置であって、
所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを有するネットワークデータ記憶部と、
前記全体領域内でリンクへのアクセスを妨げる障害領域を成す障害データを有する障害データ記憶部と、
前記全体領域内から前記始点及び終点を取得する地点取得部と、
前記障害領域と交差せずに前記始点及び終点からそれぞれアクセスするのに適したリンクである、開始リンク及び終了リンクをそれぞれ選択するリンク選択部と、
前記開始リンクから前記終了リンクまでの推奨経路を探索する経路探索部と
を備えたことを特徴とする経路探索装置。
【請求項11】
所定の広がりを有する全体領域に含まれる複数のリンクとノードとからなるネットワークデータを取得する機能と、
前記全体領域内でリンクへのアクセスをしにくくするための領域であるアクセス制限領域を成す制限データを取得する機能と、
前記全体領域内から任意の地点を取得する機能と、
前記地点と、その近傍に存在する複数のリンクそれぞれとの近接度を、前記地点から前記複数の各リンクまでの直線の距離に基づいて算出する機能と、
算出される前記近接度に基づいて、前記複数のリンクから一のリンクを選択する機能と、
をコンピュータに実現させるためのリンク選択プログラムであって、
前記直線が前記アクセス制限領域と交差する場合に算出される近接度が、当該リンクが選択されにくいような値となること、を特徴とするリンク選択プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−27634(P2011−27634A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175698(P2009−175698)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】