説明

リング精紡機におけるスピンドルの駆動装置

【課題】区画的なタンゼンシャルベルトを共通の方向転換ローラで案内したり異なる高さで駆動することなく、タンゼンシャルベルトの同期した駆動を達成することが可能な冒頭に記載した様式の駆動装置を提供すること。
【解決手段】リング精紡機における複数のスピンドルの駆動装置であって、前記各スピンドル近傍で個々に駆動される複数のタンゼンシャルベルト2を備えており、該タンゼンシャルベルト2それぞれが1つのモータ3によって駆動されるよう構成された前記駆動装置において、前記モータ3を同期モータとして形成するとともに、供給する電流によって、同一の周波数を前記各モータ3に供給するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング精紡機における複数のスピンドルの駆動装置であって、これら各スピンドル近傍で個々に駆動される複数のタンゼンシャルベルトを備えており、該タンゼンシャルベルトそれぞれが1つのモータによって駆動されるよう構成された前記駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、区画的に設けられた複数のタンゼンシャルベルトによって駆動される精紡機又は撚糸装置の作動装置に対して用いる駆動装置が開示されている。しかし、駆動モータについては何ら言及されておらず、タンゼンシャルベルトの同期した動作に関する問題についても触れられていない。
【0003】
特許文献3には、区画的に設けられた複数のタンゼンシャルベルトを同期モータによって駆動する駆動装置が開示されている。この同期モータは、タンゼンシャルベルトに同一の負荷がかかっていない場合には同期しないものとなっている。しかし、糸の同一な特性を得るためには、各区画においてタンゼンシャルベルトを同期して駆動する必要がある。そして、これは、同期した動作を保証する共通の方向転換ローラを、隣接した区画の複数のタンゼンシャルベルトで巻回することにより達成することができる。
【0004】
ここで、このような方向転換ローラをタンゼンシャルベルトで巻回するためには、それぞれ隣接するタンゼンシャルベルトを異なる平面内で駆動させる必要がある。これには相応の幅のスピンドル用はずみ車が必要であり、その結果として、スピンドルが大きく、使用することが不可能なほどの長さとなってしまう上、タンゼンシャルベルトをスピンドルカラーを介して駆動しなければならなくなってしまう。さらに、これによりスピンドルの軸中心が傾斜し、精紡リングに対して中心が合ったスピンドルの駆動ができなくなってしまう。
【0005】
特許文献4にはリング精紡機が開示されており、このリング精紡機の両側には、それぞれスピンドルを駆動するためのタンゼンシャルベルトが設けられている。また、各部分にはそれぞれ駆動モータが設けられており、これら各駆動モータには、共通の周波数変換器が設けられている。さらに、ここでも方向転換ローラが用いられている。しかし、タンゼンシャルベルトの同期についての問題には言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】東独国特許第287961号明細書
【特許文献2】東独国特許第287962号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3441230号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19625321号明細書
【特許文献5】独国特許第19501626号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、区画的なタンゼンシャルベルトを共通の方向転換ローラで案内したり異なる高さで駆動することなく、タンゼンシャルベルトの同期した駆動を達成することが可能な冒頭に記載した様式の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、独立請求項に係る発明の特徴によって達成される。
【0009】
同期モータに同一の周波数を供給することによって、各タンゼンシャルベルトを互いに機械的に連結することなく、すべてのタンゼンシャルベルトの同期した駆動が達成される。
【0010】
ここで、同一の周波数は、すべての同期モータに給電し、かつ、すべての同期モータに共通の周波数変換器を設けたことで生成される。なお、各同期モータに、個々に周波数変換器を設けてもよい。こうすることで、給電すべき同期モータの数量にかかわらず、周波数変換器をそれぞれ異なる出力レベルに維持することが可能である。すなわち、すべての同期モータに対して、これらの出力レベルなどに対応した周波数変換器を割り当てることができる。
【0011】
また、このような実施形態において、1つの周波数変換器がマスタスレーブ方式で他の周波数変換器を制御するようにしてもよい。
【0012】
さらに、特に同期モータの駆動を確実に確保するために、同期モータの回転角度位置を検出し、かつ、その検出信号を周波数発生器に伝達するレゾルバを設けてもよい。これにより、このレゾルバによって、段階に応じた正確な給電周波数を同期モータに供給することが可能であり、あるいは目標回転数との偏差を小さくするよう制御することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、区画的なタンゼンシャルベルトを共通の方向転換ローラで案内したり異なる高さで駆動することなく、タンゼンシャルベルトの同期した駆動を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リング精紡機におけるスピンドル駆動装置の平面図である。
【図2】他の実施形態に基づくスピンドル駆動装置の平面図である。
【図3】更に他の実施形態に基づくスピンドル駆動装置の平面図である。
【図4】2つの区画的なタンゼンシャルベルトがリング精紡機における他の側にある駆動ディスク又はスピンドル列へ方向転換する箇所を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1にはリング精紡機1の平面図が示されており、このリング精紡機1は、その長手方向に見た両側に、タンゼンシャルベルト2によって駆動される複数のスピンドル(ここでは不図示)を備えて構成されている。各タンゼンシャルベルト2は、モータ3によって駆動されつつリング精紡機1の両側ですべてのスピンドルを駆動する。なお、モータ3は同期モータとして形成されている。
【0017】
このモータ3への供給電流は周波数変換器4によって生成され、この周波数変換器4は、直流中間回路を介して、電源5の周波数を特に可変である所定の周波数の交流(三相交流)に変換する。この給電周波数の制御はスピンドル回転数の形で制御され、このスピンドル回転数は、制御装置6により、インタフェースを介して周波数変換器4へあらかじめ与えられる。特に、制御装置6によって、始動時のスピンドル回転数上昇及び停止時のスピンドル回転数低減が制御される。
【0018】
しかして、給電周波数は給電ライン7を介してすべてのモータ3へ送られ、すべてのモータ3の同期した動作によって、タンゼンシャルベルト2及びスピンドルも同期して動作する。
【0019】
また、モータ3のいずれかに当該モータ3の回転位置(回転角)を検出するレゾルバ9を設けてもよく、レゾルバ9で検出された検出信号は、信号伝達ライン10を介して周波数変換器4へフィードバックされる。そして、この周波数変換器4は、目標回転数との偏差がある場合に、当該偏差を低減するよう給電周波数を調整する。
【0020】
ところで、周波数変換器4によって給電されるモータ3の数量は、リング精紡機1におけるスピンドルの数量に応じて異なる場合があるため、周波数変換器4に複数の異なる出力レベルを設定する必要がある。
【0021】
そこで、図2に示す実施形態においては、常に同じ出力レベルに設定された周波数変換器41,42,43,4Xが各モータ3にそれぞれ1つずつ設けられている。これら各周波数変換器41,42,43,4Xには電源5から給電がなされるとともに制御装置6から信号伝達ライン8を介して目標回転数が設定され、当該各周波数変換器41,42,43,4Xが適当な給電周波数を生成する。
【0022】
図3に示す実施形態においては、制御装置6がリング精紡機1の端部に一番近い周波数変換器41のみを制御するようになっている。すなわち、周波数変換器41が、マスタとして、制御ライン8を介してスレーブである他の周波数変換器42,43,4Xを制御する。
【0023】
また、タンゼンシャルベルト2がモータ3方向へリング精紡機1の内部に案内される箇所の両側において2つのスピンドル11,12を確実に駆動するために、特許文献5においては方向転換ローラ対が設けられている。この方向転換ローラ対は、2つのスピンドル間の間隔を小さく保ちつつタンゼンシャルベルトをモータ方向へ案内するものである。このような方向転換ローラ対13が両スピンドル11,12間に設けられており、この方向転換ローラ対13の間において2つのタンゼンシャルベルト2がリング精紡機1における他方側へ案内される。
【0024】
なお、方向転換ローラ対13は、タンゼンシャルベルト2のスピンドル11,12への圧力を調整できるよう、スピンドルに対して直角に調整可能となっている。
【0025】
本発明は、各請求項に記載されたものに対象が限定されるわけではなく、これら各請求項を互いに組み合わせたものも対象としている。また、当該明細書及び図面において開示した記載及び特徴(特に図面に示された構成)は、各構成自体又はその組合せが従来技術に比して新規なものである限り、本発明固有のものとして権利が要求される。
【符号の説明】
【0026】
1 リング精紡機
2 タンゼンシャルベルト
3 モータ
4 周波数変換器
5 電源
6 制御装置
7 給電ライン
8 制御ライン
9 レゾルバ
10 信号伝達ライン
11,12 スピンドル
13 方向転換ローラ対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング精紡機における複数のスピンドルの駆動装置であって、前記各スピンドル近傍で個々に駆動される複数のタンゼンシャルベルトを備えており、該タンゼンシャルベルトそれぞれが1つのモータによって駆動されるよう構成された前記駆動装置において、
前記モータ(3)を同期モータとして形成するとともに、供給する電流によって、同一の周波数を前記各モータ(3)に供給するよう構成したことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
所定の周波数の供給電流をすべての前記モータ(3)に供給する共通の周波数変換器(4)を設けるとともに、前記周波数変換器から送出する給電周波数を制御装置(6)によって設定するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記各モータ(3)それぞれに1つずつ周波数変換器(41,42,43,4X)を設けるとともに、これら各周波数変換器が送出する周波数を、制御ライン(8)を介して制御装置(6)によって制御することを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御装置(6)によって前記各モータ(3)のいずれかに設けられた前記周波数変換器(41)を制御するとともに、該周波数変換器によって、マスタスレーブ方式で当該周波数変換器以外の周波数変換器(42,43,4X)を制御することを特徴とする請求項3記載の駆動装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記モータ(3)にレゾルバ(9)を設けて当該モータ(3)の回転角を検出し、この検出値を前記周波数変換器(4)に伝達するよう構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記スピンドル近傍から前記モータ(3)の駆動ディスクへの前記タンゼンシャルベルト(2)の導入部と、2つの前記タンゼンシャルベルトがこれと対向する位置にある前記リング精紡機のスピンドル列へ迂回する迂回部との間にそれぞれ一対の方向転換ローラ(13)を設けるとともに、これら一対の方向転換ローラにおける2つのローラの間隔をできる限り小さく設定したことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−521594(P2010−521594A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553951(P2009−553951)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001994
【国際公開番号】WO2008/113504
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】